スポンサード・リンク

(*´∀`)多発性硬化症と運動療法の話


o(^▽^)o題名:多発性硬化症と運動療法の話

Ⅰ 時期別の理学療法アプローチ

文献により、急性期・慢性期や、経過上急性期・亜急性期・慢性期や、増悪期・寛解期・維持期(急性期・回復期・慢性期)などと分け方は様々であったが、今回は急性期・回復期・慢性期に分ける。

全期を通じて温熱に対する非寛容性と易疲労性に十分配慮することが重要である。

1)急性期(増悪期)の理学療法

急性期には症状は時間の単位で増悪することもあり、数日間で増悪することもある。急性期における医師サイドの療法(薬学的)は、副腎皮質ホルモンが短期間に大量投与されることが多く、プレドニゾロン経口、メチルプレドニゾロンのパルス療法が用いられる。免疫抑制剤投与、血漿交換療法が行われることもある。

理学療法は良肢位保持、2時間後との体位変換、関節可動域訓練を基本として行う。急性の増悪期を過ぎると、関節可動域訓練、筋力増強・維持・持久性獲得訓練へと移行し、許される範囲内で早期離床を促す。また移乗動作訓練、基本動作訓練も早期から開始するが、いずれにしても疲労を伴わない程度としなければならない。

①安静と廃用症候群

発熱性疾患があれば、その治療と体温を下げ、脱髄部の炎症症状が安定するまで患者は安静を必要とする。疲れや精神的ストレスを軽減させるように精神・身体的安静が望ましい。

しかし、長時間の安静は廃用症候群を引き起こすおそれがある。理学療法のかかわりは、可能なかぎりこの廃用症候群を予防することにある。1つの廃用はさらなる廃用を引き起こす誘因となる。

 

安静による二次的合併症

1.局所的  ・筋萎縮 ・筋力低下 ・骨萎縮 ・疼痛 ・関節拘縮 ・褥瘡 ・尿路感染症 ・尿意低下 ・便秘 ・浮腫 ・血栓性静脈炎 ・肺炎(沈下性,嚥下性)

2.全身性  ・起立性低血圧 ・体力低下 ・脱水症 ・浮腫

3.精神的  ・モチベーション低下 ・食欲低下 ・睡眠障害 ・知的能力低下 ・行動異常

また死因としては、尿路感染症、呼吸器感染症、褥瘡からの感染などの二次的合併症が多く、これらに対する予防的アプローチが重要であることも示唆される。

 

②関節可動域訓練

拘縮・筋萎縮の予防や組織の血液循環などを目的として関節の他動運動や筋伸張が有用である。これは良肢位保持や体位変換のためでもある。

③過用症候群(overuse syndrome)

過度な運動は過用症候群(overuse syndrome)を引き起こし、筋組織の破損による筋力低下や筋痛の原因となり、脱神経筋の回復を遅延させるばかりでなく、過労や身体的・精神的ストレス、体温上昇などによる多発性硬化症の再発・増悪の誘因となることに注意しなければならない。

そのためにも運動療法は少量から開始し、運動後、また翌日の身体疲労や筋痛や体温上昇を確認してから徐々に量、質とも増加させていくことが望ましい。身体状況の変化を見落とさない十分な観察が大切である。

2)回復期(寛解期)の理学療法

発症前のADL・QOLを目標としたゴール設定をし、プログラムを作成する。

対麻痺、運動失調などの主症状に対する機能回復訓練を積極的に行う。この際に疼痛・疲労・体温上昇に十分注意する。比較的混雑する部屋では室温上昇の可能性も高く、視覚障害によるリスク・感染などの可能性も生じる。

関節可動域保持および筋力維持訓練が行われる。その筋力に応じてpassive関節可動域訓練、active assistive 関節可動域訓練、active関節可動域訓練が行われる。

3)慢性期(維持期)の理学療法

獲得された機能、ADL、QOLを維持する練習が主体となる。

機能の回復が認められるときは、生活全般の活動性を考慮した運動量の調整が必要となる。実際の生活環境場面に合致した指導が必要になる(入院ならば病棟環境,通院ならば家庭環境)。また身体機能が著しく低下している状態では、個々の筋力、運動麻痺の回復運動やバランス練習ではなく、能力障害への直接的な働きかけが最も重要となる。装具や福祉用具も積極的に活用する。

また、理学療法プログラムは各障害と主たる障害部位に対して立てられる。

・脊髄障害での痙性対麻痺、四肢麻痺、排尿障害が主であれば、脊髄損傷プログラム

・脳障害が主であれば、脳血管障害における片麻痺やパーキンソンプログラム

・小脳の障害が主であれば、小脳性運動失調症プログラム

・脊髄小脳路の障害が主であれば、脊髄小脳変性症プログラム

に準じている。ただ組み合わせの多様性のため疾患に代表されるような明確なプログラムとなる場合は少なく、個々の障害に個別のプログラムを余儀なくされる場合の方が多い。

①リハビリテーションプログラムの特異性

長期的なリハビリテーションプログラムの中で考慮しておかなければならない点も多い。

ⅰ)巣症状に応じたリハプログラムと重複障害(運動障害と視覚障害の併発など組み合わせの多様性)

ⅱ)効果的、効率的な訓練(疲労を起こさせない)

ⅲ)体温上昇への注意(入浴・温熱などでの症状の悪化が少なくないので、それらを治療に使う場合、または季節、時間帯、訓練などにも注意する)

ⅳ)視覚障害への配慮(完全失明は少ないが、照明を明るくしたり、盲人杖を与えたり、通路の障害を除き、手摺りのとりつけなどの環境の整備をし、安全に気をつける)

ⅴ)心理サポート(不安、焦燥感などからくる感情変動への対応)

ⅵ)原因が分からなく、症状の変動をみることがある。

ⅶ)性のサポート(若年成人が罹患することが多く、結婚あるいは性についてのカウンセリングなどリハビリテーション・プログラムが必要)

ⅷ)就職訓練、職場環境の設定(若年成人が多く、職場復帰、職業訓練、あるいは自動車の運転訓練などが重要なことがある)

 

Ⅱ 理学療法施行上での問題点

慢性期の理学療法プログラムは、多発性硬化症によって生じた障害の治療、改善、身体機能の獲得と維持、心理的・社会的自立への支援、さらには廃用性・過用性症候群の予防、合併症の防止などにあるが、その障害の多彩性から多くの問題が挙げられる。

 

多発性硬化症の問題点リスト

①筋力低下

②痙性

③協調運動障害(振戦、バランス障害)

④知覚障害、視覚障害(視神経炎)

⑤疼痛

⑥疲労

⑦記憶・認識障害

⑧セルフ・ケア障害

⑨膀胱・直腸障害

⑩性機能障害

⑪構音障害

⑫嚥下障害

⑬精神障害(抑鬱、意欲低下等)

⑭合併症(褥瘡、栄養失調、呼吸器感染、尿路感染、痙攣、深部静脈血栓症)

1)温度変化

運動を行うと、体温は上昇するが、これは運動の強度に応じて体温の設定温度が高温側に移動するためであり、運動に対する積極的な適応と考えられている。Lindは、運動時の深部温は、環境条件に関係なく運動強度によって決定され、その臨界温は作業強度が高いほど低くなると報告している。

①神経興奮伝達の遅延・ブロック

脱髄により興奮伝導障害が生じている神経線維に、外的因子が加わることによってさらに遅延やブロックが進行・増大することが知られている。特に体温の上昇は理学療法を行ううえで重要な因子であり、温度上昇についてわずか1℃以内の変化でも症状の変化や誘発電位の遅延・ブロックが報告されている。

また、訓練や運動に起因する症状の悪化(Uhthoff’s phenomenon)も体温上昇の影響と考えられている。

正常な神経線維では、43℃以上で神経伝導ブロックが起こり、脱髄した神経線維の実験では37℃で神経伝導ブロックが報告されている。また、発熱・入浴・暖房などの体温上昇因子が症状悪化を招くことは明らかで、高温下での入浴や高い室温は筋力低下や機能低下を引き起こしやすく、疼痛や痙性筋などに対する温熱は禁忌と考える。

②体温変化と適温

多発性硬化症に許される体温変化は、0.8~1℃であるとされている。理学療法における温熱療法と運動療法は、共に体温上昇因子であるが、温度上昇に伴う症状悪化は数十分で回復するところから絶対的禁忌ではないとの見解もあるが、やはり注意を要するところである。運動療法を行う場合の温度的条件は、室内25℃以下が提唱されている。

また、Gehlsenらは25℃から27.5℃のプールで毎週1時間の水泳(フリースタイル)と水中運動3セットを10週間行った結果、上下肢筋力、筋持久力が開始前と比べ優位に増加し、疲労しなくなったことを述べ、水温調節下での運動の可能性を示唆している。

また、比較的外気温が上がらない時間帯の午前中の訓練が望ましい。

2)易疲労性と疲労感

易疲労性の原因ははっきりしてはいないが、①脱髄巣の血管障害、脱髄周囲の神経伝導に関わるエネルギーの喪失によるもの、あるいは②持続する中枢神経系の炎症によるものと考えられている。

これに運動(活動)量、筋力低下、痙性、神経伝導障害などの因子が加わって、軽い疲労感からADL困難に至る機能障害までのさまざまな様相を呈すると考えられる。精神的な影響も見逃せない重要な側面である。

また運動療法による疲労は治療訓練の継続を困難とする。Frealらは多発性硬化症患者(656名)のうち疲労症状を訴えた78%(512名)の中から、309名に対して調査を行った結果以下のことが得られた。

・疲労の69%が毎日午後か夕方に起こり、90%が暑い環境下で起こっていた。

・きつい(vigorous)訓練後に83%が、中程度の訓練で64%が疲労を訴え、症状が悪化した。

・疲労軽減に薬や冷湿布で効果がみられた。

以上のことから、易疲労性には、体温調節に注意しながら適度な運動量、時間、訓練中の休息、環境温を計画的に組み、考慮することが必要であり、さらに医療機関のみならず、家族や職場の理解も不可欠である。

3)持久力強化方法

筋力増強訓練による過負荷で症状を悪化させることが考えられる。Petajanは多発硬化症群と健常群に、最大酸素摂取量(VO2max)が増加するトレーニングと等尺性収縮による筋力増強訓練を15週間行った結果、上下肢筋力は有意に増強したが、EDSSや疲労の程度は変化しなかったことを報告し、エアロビックトレーニングが症状を悪化させずに必要とする筋力を増強できることを示唆した。

4)QOLの向上

退行疾患である多発性硬化症のQOLを向上させることは非常に困難であると考えられる。

Rudickらの調査によると、多発性硬化症(68名)、炎症性腸疾患(164名)、リウマチ(75名)に対して、QOLの面接を行ったところ、多発性硬化症のQOL得点は他の2疾患より有意に低く、特に視力の問題とQOLは高い相関を示したことから、長期慢性疾患でも視覚機能に問題がある多発硬化症は罹患の影響が大きく、QOL向上に関する指導の必要性を報告している。

同様にfabioらは、多発硬化症患者の外来でのリハビリテーションプログラム(バランス、巧緻性、歩行、移動、持久性、関節可動性に関する訓練)の実行群と非実行群に対するQOL評価で実行群の改善を示し、退院後の治療継続の必要性を述べている。

 

Ⅲ 各障害に対するアプローチ

多発性硬化症の障害構造は複雑であり、それぞれの障害に対する対応が必要である。

 

多発性硬化症の障害構造  

1)痙性麻痺

不随意な筋収縮を伴う痙性麻痺は、身体活動を制限するばかりではなく、患者の疲労や筋痛を増強させる。

①痙性の強さの変化

痙性の強さは身体に対する以下のような侵害刺激によっても変化を示す。

ⅰ)疼痛刺激や便秘などの腹部症状

ⅱ)疾患由来または廃用症候群に伴う尿路感染や褥瘡

ⅲ)発熱や不眠

これらのような身体状況を遂次把握することが必要である。

②痙性筋への働きかけ

多発性硬化症では、下肢筋の痙性が高く、歩行の際に下肢のコントロールに制限を受ける場合が多く、そのアプローチは重要である。

痙性筋に対しては、筋弛緩剤などの薬物療法に併用してリラクゼーション、起立台による持続ストレッチング、その他の痙性筋に対しても徒手によるストレッチング、寒冷療法、低周波治療による痙縮のコントロールを試みる。どれも目的動作に必要な治療・訓練を行う。

また、リラックスした肢位をとらせることは、精神的・身体的な安静・安楽状態であり、不安・焦燥感を軽減させると共に、筋緊張の抑制、効率的ストレッチング、異常姿勢反射の抑制などの効果が期待でき、結果的には痙性抑制に影響を与える。ストレッチングと関節可動域訓練は、直接的な痙性筋の抑制のみならず、関節可動域の維持・拡大、血行の改善、拘縮の予防に有効である。

③装具療法

下肢の補装具は、機能性、支持性さらに変形防止に用いるが、軽い材質で作成されたプラスチック装具は下腿三頭筋の痙性による底屈拘縮の防止と歩行のためよく用いられる。

杖は装具と対で用いられる場合が多く、一般T字杖からロフストランドや松葉杖が用いられる。

2)筋力低下

筋力低下は、上位運動ニューロンの脱髄によって生じた多発性硬化症本来のものと、廃用性のものに分けられる。

※脱髄による神経伝達障害:伝導遅延やブロックであり、筋へのインパルス到達が妨げられた状態である。したがって筋は時間的(収縮頻度)にも空間的(筋線維)にもインパルス不足となり結果的に筋力低下に至る。

脱髄による神経伝達障害により筋力低下に至ると、必然的に筋活動量が低下し、それに伴って廃用性の筋力低下が加わるという悪循環が生じる。

①過負荷と負荷量

理学療法では選択的筋力増強運動や基本動作練習に伴う筋活動の促進を行う。しかし筋力増強訓練では、過重負荷原理により筋に一定の負荷を持続させなければならないが、過負荷によるoveruse weaknessには十分注意しなければならない。しかし筋力、疲労、負荷に対する反応、症状の変化、訴え、さらには生化学検査などのデータを的確に把握する努力がなされ、十分な医学的管理下であれば高い負荷を与えても好成績を得る可能性も示唆されている。

それでも正常人における筋力訓練の有効領域以上に、多発性硬化症における効果的な訓練結果を得られる期間と負荷量は限られており、病状の進行と変化の中で適量の負荷量を決定してゆかなければならない。負荷量は、一日の活動量からも決定する必要があり、サイドベックスやキンコムなどのトレーニングマシンは、定量的負荷、休息時間の面からも効率的である。徒手、鉄アレイ、重錘などで負荷を与え場合、短時間ごとの多休憩を心がける必要がある。

発汗状況や自覚的な疲労感、当日の身体状況を考慮し、画一的な運動療法ではなく、そのつど運動量などを調節することが望ましい。

3)基本動作能力障害

多発性硬化性の基本動作能力障害は、疾病による一時的な筋力低下、痙性麻痺、失調症、感買う障害、視覚障害などが複合したものばかりでなく、時間的な多発による障害の荷重現象や廃用症候群、罹患期間の長期化による高齢化などにも大きく左右される。さらに疾患に特異的な易疲労性や温熱非寛容のように環境変化にも影響を受ける。したがって、耐久性(持久力)を重視した訓練から、安全性や省エネルギー性を重視したものまでを、各種杖、下肢補装具、歩行器、車椅子などを組み合わせることによって移動能力の獲得・向上・維持を目指してゆかなくてはならない。

①直接的な基本動作練習

日常生活へ直接反映されやすいため、患者自身も目標を設定しやすい。そして、生活場面での活動性の向上は体力の維持・改善をもたらすことにつながる。運動療法の際には患者とともに日常生活場面での短期目標を設定し、それを獲得していくことで練習効果や達成感を再確認していくとよい。

②様々な運動療法

立位練習では立位時間の長さや立ち上がる台の高さ、歩行練習時には具体的な距離や歩数など数値として目標設定すると感覚的にも目標をとらえやすく、理学療法士も運動量の確認、調整を行いやすい。また、立位時の支持性を高めるために原則として軽量のプラスチック製下肢装具を使用する。また靴装具として立脚後期の蹴り出しを容易にするためロッカー靴(rocker shoe)を用いることもよい。この靴は、底屈15°以下の者に対し踵補高と、第1中足骨より近位約2㎝靴裏にバー装着して歩行させる装具である。バランス訓練では四つ這い、膝立ち位、立位などの姿勢保持訓練を行い、重心移動時の身体の動揺に対処できるように平衡機能維持訓練を行う。

③転倒の危険性

活動量が多くなるにつれて転倒の危険性も高まる。特に多発性硬化症患者は小脳失調や感覚障害、筋痛や筋の脱力感により転倒しやすく、薬物の副作用ともあいまって骨折の危険性も高い。骨折は長期臥床へのとながり、身体機能を著しく低下させるため、転倒防止として膝・足関節装具による支持性の向上や歩行介助用具の導入も検討すべきである。

4)ADL障害

セルフケアの動作は急性期では全介助を必要とするが回復期、慢性期に移行するに従い、その1/3は通常の生活が可能であるが、2/3はなんらかの形で介助を要する。また年齢や罹患期間に比例して次第に動作に時間がかかるようになり、介助量が増していく。したがって、ADL訓練は、病棟、家庭、職場といった患者の個別的な環境と障害の程度に応じたものを想定して行い、必要に応じて環境設定、家屋改造、安全と効率性などを考慮し、獲得させることは、在宅生活への移行をスムーズにするとともに、患者本人の目標設定を容易にし、意欲の維持向上に結びつく。また、実生活場面における移動を中心とした日常生活動作が確実に行われ、疲労を考慮した生活パターンを築いていくことが重要である。

訓練としては、起居動作訓練、四つ這い移動やつかまり歩行などの移動動作を行う。

また、退院後、復職が可能であれば、運動障害の程度、体力に応じた通勤の手段や経路選択、職種の変更などを検討する。在宅が中心となれば、家屋環境などを十分に評価し改造を行う。改造内容は退院時の機能に合わせるよりも、さらに機能が低下することを想定して計画すべきである。退院指導として日常生活に役立つ動作訓練や廃用症状を防止する訓練内容などが考えられる。

長期的なかかわりとなることが多い多発性硬化症患者の家庭内や社会における役割、立場を把握し、自立性を重んじたかかわりをもち、日常生活動作の障害度に合わせた介助、介護を含めた家族の役割分担を明確にしていくことが患者・家族のQOLにつながる。

5)協調性運動障害

脊髄小脳路、小脳の障害で生じる協調運動障害(失調)に対しては、直接それを改善させる方法はないが、Frenkel体操、PNF、四肢末梢への重りなどが主として用いられている。

しかし、Frenkel体操は視覚的フィードバックが必要なため、視覚障害の程度によっては無理なことがある。視覚の障害を伴う場合は、PNF(slow reversal 、rhythmic satabilization)が多用され、主動筋と拮抗筋の同時収縮を引き起こすことによって、協調性の改善が図られている。

協調運動障害のうち上肢の振戦に対しては、重りが活用され、日常用いる生活用品も少し重めにすることで、ADL向上につながることがある。しかし疲労が生じると思われるときは軽負荷とする。

四つ這い位、膝立ち位、片膝立ち位、立位などでのバランス訓練は、平衡感覚機能改善の訓練として用いられるが、動的バランスの獲得に主眼をおくべきである。

6)疼痛

四肢の自動・他動運動や過呼吸をきっかけに生じる疼痛を伴った四肢の痙攣(有痛性強直性痙攣)は、急性期から回復期にかけての症状である。これは頻度が高く強い疼痛にはカルバマゼンピン製剤と共に寒冷療法が用いられる。全身的なものでは29℃程度の全身浴、シャワー、局所的なものではアイスパック、クリッカー、アイスマッサージなどが用いられるが、可変温度シャワーもしくはアイスパックがもっとも実用的で効果的である。

7)視覚および感覚障害

急性期における視覚障害は多いが、比較的回復しやすく、視力の面で理学療法の障害になる場合は少ない。しかし失調、深部感覚障害に対する視覚の代償機能は重要であり正確な評価を必要とする。ただ、複視に対してガーゼや眼帯で片眼を遮蔽しなければならない場合は、ADLにおける遠近感に対する慣れを要する。

異常感覚や錯覚感といった感覚障害への対応よりも、深部感覚とりわけ関節位置覚、運動覚に対するアプローチが重要であり、関節固有受容器へ促通手技も有効である。

 

Ⅳ 廃用症候群の理学療法

多発性硬化症においてもっとも重要な内科的合併症としてMaloneyは①褥瘡②栄養失調③呼吸器感染症④尿路感染症⑤痙攣⑥深部静脈血栓を挙げている。ほとんどの合併症は、理学療法の対象になりうるが、とりわけ廃用性筋萎縮、関節拘縮、褥瘡、深部静脈血栓、肺呼吸器機能低下、意欲の低下といったものには積極的な理学療法が必要である。

廃用性筋萎縮による筋力低下と、神経伝導障害による筋力低下を区別することは困難である。

また深部静脈血栓の防止とこれら筋力低下に対するアプローチとoveruse weakness 、overwork weaknessとは背中合わせであり、訓練、運動の頻度と負荷量、その筋の運動許容量、痙性の程度などを考慮しながら、初期からの対応が望ましい。

褥瘡は痙性、関節拘縮にも影響を与えるため、体位変換と局部的な徐圧さらには清潔な皮膚および軟部組織の血行改善によって防止可能である。

関節拘縮は、関節可動域訓練はストレッチングを常用するが、下肢の場合は荷重という方法もあり、長期臥床には起立性的血圧の防止もあり傾斜台の使用も用いられる。

心肺機能については、急性期における肺痰療法、呼吸管理から慢性期の運動における心肺機能改善といった面までの幅広い対応となる。

「多発性硬化症と運動療法」の画像検索結果

(゚∀゚)参考文献

医療学習レポート.多発性硬化症と運動療法


スポンサード・リンク