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(´∇`)脳梗塞とリハビリテーションの話


( *´艸`)題名:脳梗塞とリハビリテーションの話

●早期坐位

基本的リハビリテーションの中で最も早く始めなければならないのは、坐位耐性(sitting tolerance)の訓練である。アメリカでは脳卒中でも意識がしっかりしていて状態のよい患者であれば、直ちに車椅子に坐らせるのが普通であり、医師が「ベッド上安静」という指示を出さない限り看護婦の判断で車椅子に乗せることになっている。

わが国ではこれまでの習慣で一挙にそうすることに抵抗があるが、なるべくそのような方向にもっていくべきである。発作時に意識障害がなく、あるいは極めて軽く、生命徴候が安定していれば(このような例は少なくとも2~3割はある)2~3日目から起こし始める。そのような場合は、ギャッチベッドまたはバックレストで45度、5分くらいから始める。それより重症な場合でもできるだけ早く始めるが、慎重にした方がよいと思われれば30度、5分から始める。いずれの場合も毎日角度(10度ずつ)と時間(5~10分ずつ)を交互に増していく。

順調に行けば10日ほどで80度、30分に達する。その後は1日の回数を増やし、3食の前後各1時間坐っていられるようにするのを第1の目標とする。自宅療養の患者、ギャッチベッド、バックレストのない病院などでは介助者がしっかりと支えながら、はじめから坐位にする。時間は2~3分から初め、様子を見ながら徐々にのばしていく。途中から坐椅子に切り換えてもよいが、目を離してはならない。坐位訓練の前後には脈拍、血圧を見、途中は顔色を見、話しかけ、気分が悪くなったのを見逃さないように注意する。

 

●坐位バランス

ある程度の時間、直立位に近い坐位を取っていられるだけの坐位耐性がついたら、直ちに平行して坐位バランスの練習に移る。始めはギャッチベッドにもたれていた背をちょっと離し、自力でその姿勢を保つことから始める。健側の手はベッドの手すりにつかまらせ、左右に倒れそうになるのは介助者がある程度助けてやりながら、なるべく自力で腰掛け坐位を保たせる。はじめは短時間しかできないが、次第に安定性もよくなり、時間も長くなってくる。

そうなったら、今度はベッドの縁に腰掛けさせる。そのためにはベッド自体が、低くて、腰掛けて足の裏が床に楽につくものであることが望ましい(普通のベッドの足を切り、マットレスを薄めのものにする)。それが不可能であれば、足台を置き、足底がつくようにする。はじめは健手で手すりにつかまっていてもよいが、なるべくつかまらずに坐れるようにする。この時から、肩の亜脱臼を防ぐために、患側の肘を健手で支えるか、三角巾・アームスリングで固定するようにする。このような静止的バランスがある程度しっかりしたら、ひき続いて、よりバランスを強化するために、積極的にバランスを崩し、それを取り戻す訓練に入る。これは坐位における平衡反応の強化であり、同時に体幹筋のコントロールの訓練及び筋力の回復・増強である。それもはじめは他人の介助で行い、次第に自分自身で行うようにしていく。

 

●ベッド上訓練

坐位訓練とならんで、ベッド上でできる訓練を始める。その主目的は体幹と健側上下肢の筋の廃用萎縮の予防と筋力強化である。これは積極的な運動であるのでわずかな血圧上昇などは伴うが、臥位である為、休み休み行えば負荷としてはわずかなものであり、かなり早期から始められる。これはまた、安静によって低下した全身体力の回復にもよく、次の段階の準備として役立つ。念のため、訓練の最初と最後には血圧と脈拍を測定し、途中でも適宜脈拍をチェックする。

各動作とも、はじめは介助して正しいやり方を覚えさせ、次第に介助を減らして自力でする量を増やしていく。

この時期には麻痺肢は低緊張状態(弛緩-flaccid、または一見弛緩様-quasiflaccidの状態)にあることが多いので、上肢では肩の亜脱臼に注意する。しかし、一部の患者で上肢全体(手先にも及ぶ)の筋緊張亢進と、それに伴う肩甲帯の後退(retraction)と肘屈曲があらわれ始めることがあり、その場合にはBobathがすすめるように、健手と患手とを組み合わせ(その時、患手の母指の外転が十分に起こるように、患手の母指の方が上になるようにする)、肘を十分に伸ばして前方につき立てた肢位を常時とらせるようにするのがよい。特にブリッジ、その他下肢に力を入れるに時、上肢に連合反応で屈筋共同パターンが起こりやすい場合には肘の伸展位保持が重要である。

 

●移乗動作と車椅子

移乗動作(トランスファー、transfer)は日常生活動作の基本的なものとして重要である。車椅子を基本としてベッドと車椅子との間、椅子や腰掛け便器と車椅子との間などの移乗(乗り移り)がスムーズにできるように練習する。これは基本的には健手でつかまって健足で立ち上がることさえできればよく、かなり早期からでもできる動作である。もちろん最初は介助者が前に立って助けるが、段々に介助量を減らし、自力でできるようにもっていく。介助者にとって患者を抱きかかえて乗り移らせることに較べればはるかに楽であり、患者にとっては健側の廃用萎縮を防ぐのにも役立つ。

片麻痺の際の移乗動作の基本は健側の斜め前方に向かって動くことである。そのためベッドから車椅子に移る時とその逆とではベッドと車椅子との位置関係がまったく逆になることに注意する。トイレのような狭い場所ではこの原則が守れないこともあり、その時はより難しくなる。

移乗がスムーズに行えるためには車椅子のシート面とベッド・椅子・便座などの高さが同じであることが望ましい。ベッドは普通高すぎて足を切る必要があり、便座は逆に低すぎることが多い(病院の車椅子用トイレでは便器を約10cm床部で高くした方がよい)。

初期の移乗では立ち上がりはほとんど健側上下肢だけで行われるが、下肢の麻痺の回復を促進するためには、危険がない範囲で患側下肢にも少しは体重をかけ、力を入れさせるのがよい。そのためには患足を健足よりもやや引き気味にし、上半身をやや前かがみにし、両下肢に体重がかかるようにするのがよい。

車椅子(wheelchair:w/c)片麻痺患者では普通は標準型でよい。健手でハンドリムを回し、健足を床につけてこいで移動することは、ちょっと練習すればすぐできるようになる。はじめは床をけってバックする方が容易だが、危険なので前方移動を早く習得させる。体の小さい人にはシートの低い片麻痺用車椅子がよいが、立ち上がりはそれだけ困難になる。

 

●マット上訓練

従来は車椅子に乗って訓練室に来られるようになったら、直ちに平行棒の中で立つ訓練に入り、そのまま歩行へと進めて行くという考え方が強かったようである。確かに全身の体力の乏しい老人の患者などで、一度にたくさんの訓練はできず、またぐずぐずしていると体力を低下させてしまい、結局立てなくなってしまう恐れの大きい例では、そのようなアプローチの方が現実的である。また麻痺が非常に強く、下肢の伸展パタ-ンすら十分に出てこないような場合にも長下肢装具、あるいは膝装具を用いて早期に立位にもって行く方が伸展パターンを促通することができ、うまく行けば歩行にもって行くことができる。そうしないでいて時機を失すると、このような患者は結局歩行不能のままになってしまう。しかし、以上のような例でない、体力もかなりあり、下肢の麻痺も中等度(グレード5~7)には回復してきている(そして下肢の固縮がひどくない)例では、立位・歩行を急がずに、基本的なマット訓練を行って、体幹の運動機能やバランス、下肢の機能をある程度高めてから立位・歩行に移ったほうが結局より良い安定した歩行パターンが得られる。もちろんマット動作が完成しないうちは歩行訓練に移ってはならないというように機械的には考えてはならず、適当な時期に歩行訓練に移り、マット訓練も平行して進めて行くような柔軟なやり方をすべきである。

マット訓練を始める基準は、車椅子上の耐久性(トレランス)が30分以上(続けて30分以上腰掛けていられる)とする。

 

●上肢の回復訓練

従来の片麻痺のリハビリテーションの指導書では、上肢の回復について悲観的な空気が強く、可動域訓練と日常生活動作(ADL)訓練(健側片手による)だけは詳しく述べられていても、患側上肢そのものの機能回復訓練にはほとんど触れられていないものが多かった。

確かに上肢の回復は下肢に較べやや遅れ、特に手指の機能回復にはかなり限界がある。また、これまで強調されてきたように、ほとんどの日常生活動作は片手でも遂行可能であり、リハビリテーションの立場からは、早期からそれを教え(必要な自助具を与え)、「失ったものを悲しみ嘆くのではなく、残されたものをいかに活用するか」という積極的な姿勢に早くもっていくことも重要である。とくに障害の受容の促進のためには、早期にADL上の自立(能力障害の軽減)を達成し、さらにできれば復職・家庭内の役割の再確立などハンディキャップの軽減を達成することが重要であり、早期からこの方向での努力が始められなければならない。

しかし上肢にも手指にも一定の回復の可能性があることは確認されており、一部には実用手まで回復するものもある。また補助手にとどまるとしてもできる限り高い能力をもつ方がADLの両手動作が容易となり自立性が高まる(例えば自助具が不要になる)。その意味で回復の可能性が残されている限り、健手でのADL訓練と平行して患手の機能回復訓練を行うべきである。ここでは主にBobathの考え方に立って一部改変した初期の上肢機能の回復訓練の例をあげた。

 

●立位バランス

マット上訓練で述べたように、患者の状態(老齢、重度の麻痺など)によっては、一刻も早い歩行にもっていかなければならないが、その場合にも最低限の立位バランスの訓練は不可欠である。

それほど急がなくても良い場合には、立位バランスと立ち上がり動作を十分練習し、基礎をかためてから歩行訓練に入ったほうがよい。運動学的にみて、歩行とはいわば「絶えずバランスを崩し(倒れかかり)、同時に絶えずバランスを取り戻すことの連続」であり、また「高度に組織化された平衡反応の連鎖」ともみることができる。すなわち、立位バランスは歩行の安定性(それは同時に安定性でもある)の基礎である。よい立位バランスの前提は、これまで練習してきた坐位バランスであり、坐位バランスが完成しないうちに立位に移るのは適切でない。両膝立ち、片膝立ち位でのバランスもなるべくならすでに十分練習してあることが望ましいが、これには共同運動からの分離の程度などバランス以外の因子も影響し、立位バランスと比較しての難易度もケースによって差がある。特に片膝立ちは立位よりも難しいことが少なくない。したがって、これらが不十分であっても立位バランスの練習に入ってよい。しかし、立位と平行してこれら膝立ちのバランスの練習をも続けるべきである。

片麻痺でのバランス不良の原因には次のようなものが考えられている。

①患側下肢の麻痺

②体幹の麻痺

③平衡反応の障害

④体力の低下、健側下肢の筋力低下(廃用萎縮)

⑤空間認知の障害

特に坐位でも立位でも、患側に体幹が傾き易く、矯正してもすぐまた傾いてしまうような場合には⑤が最も疑われる(特に左片麻痺で半側空間失認を伴っている例に多い)。立位バランスは、バランスそのものの練習として行われるが、前記のような原因がはっきり確認できる場合には個々の原因に対する訓練に戻って(または平行して)行うのがよい。

 

●立ち上がり訓練

立ち上がりの時にはバランスを失いやすく、概して立位保持も難しい。

したがって普通は立ち上がり動作は歩行訓練と平行して行い、場合によっては歩行がほぼ完成する頃に行われる。立ち上がり訓練は、はじめは平行棒または手すりにつかまって行うが、最初は介助も必要である。介助や平行棒・手すりに頼ることを徐々に減らしていき、つかまらずに立ち上がれるようにもって行く。もちろん杖歩行の患者では杖をついて立ち上がるほうがよい(安全である)が、訓練としては手を放して立ち上がることも練習する。この際、はじめは椅子の高さよりも高いところから立ち上がるほうが楽であり、次第に高さを低くしていく。

西洋式の生活なら最低限、椅子の高さから立ち上がればよいが、わが国の生活様式ではしゃがみ位または畳上の坐位から立ち上がれるところまで行かなければ実際上ADLが自立したとはいえない。病院は椅子とベッド(と様式便器)の生活であるため、この問題に気付かず退院し、自宅に帰って初めて畳からは立ち上がれない(したがって歩けない)ことが分かってまた病院に舞い戻ってくるといった笑えない例が決して稀ではない。したがって、退院までには畳からの立ち上がり(台を利用して、あるいは手をついて)を十分に練習し、実用性のある状態にまでしておかなければならない。

立ち上がり訓練にあたっては転倒を防ぐため、はじめは患者の腰に転倒防止バンドをつけ、介助者は患者の患側に立ち、転倒防止バンドに手を添えて行う。(立位バランス、歩行なども同様である)。

 

●平行棒内歩行・階段昇降

これまで述べたように、多少逆説的に聞こえるかもしれないが、老人で重症な患者ほど長下肢装具や膝装具を用いての歩行練習を急ぐ必要があり(のんびりしていると歩けなくなってしまう)、余力のある患者ほど時間をかけて歩行準備の訓練を積上げて来ているはずである。

前者の場合には健足の筋力が十分あって健足で体重を支えることができ、装具(長下肢装具または膝装具と足関節部の弾力包帯固定-写真)を用いれば患足でも短時間は立てることが歩行訓練の条件となる。後者の場合には、なるべく装具なしで立てる(著名な内反尖足や膝折れ、または反張膝がない)ことが望ましいが、弾力包帯または訓練用短下肢装具(写真)で尖足・内反尖足を矯正すれば立てるのでもよい。長下肢装具・膝装具でようやく立てる場合でも、いつまでもその状態でいることは少なく、立位(患足への体重負荷)により伸筋共同運動パターンが促通され強化されて、やがて短下肢装具(尖足の矯正)だけで十分になってくることが多い。

階段昇降は平地歩行より難しいが、手すりを用いての歩行という点では、杖歩行より易しい面もある。

そのため訓練としては杖歩行と平行して開始してもよい。階段昇降なはじめは2足1段で、昇りは健足から、降りは患足から(体重を昇降させるのは健足)にする。

 

●杖歩行訓練

平行棒内歩行が安定したら杖歩行に移る。平行棒と杖との違いは、平行棒は引張っても横方向に力を加えても安定しているが、杖は上から下に押すこと以外は役に立たないところにある。横方向への安定性はロフストランド杖(Lofstrand crutch,肘で支える)や4点支持杖では普通のT字杖よりずっとよいが、これらも上方に引張ったのでは全く無力である。したがって、杖歩行の準備としては平行棒内歩行を平行棒を握らずに、手指を開いて手掌で棒を押えただけでもできるようにする必要がある。この目的のために、握ることができない、幅の広い平らな板面でできている平行棒も市販されているが、わざわざそれを備えなくても指導をちゃんとするだけで十分である。

歩行練習の初期には転倒防止バンドを患者の腰につけ、介助者が患者の患側に立って転倒しないように気を付ける(平行棒内歩行も同様である)。杖歩行も平行棒内歩行と同様に、はじめは3動作歩行(常時2点支持歩行)から始めるが、健足で立ったときの片足立ちバランスが良くなるにつれて2点動作歩行(2点1点歩行)に移っていき、健側が患足より前に出るか否かで決まる「後型」→「揃い方」→「前型」という点でも進歩していく。

以上のほか、一部例外的には杖→健足→患足ひきずり、という「ひきずり歩行」の型もある。この際に患足下肢は股関節で外旋位をとり、骨盤帯も患側が後方にくる(健側が前方になる)ようにねじれる(体幹全体がその方向に斜めに構えていることも多い)のが普通である。これは下肢の麻痺が重い場合が多い。

杖の長さは個人の身長、上肢の長さで決まってくる。また杖歩行の練習の初期にはロフストランド杖を用いるのがよく、それに馴れてからT字杖(T-cane)に移る。老人、肥満者、その他バランス不良の場合には3点支持杖(tripod cane)または4点支持杖(quadripod cane)を用いるのがよい(イギリスでは老人にはほとんど例外なく、これを処方している)。

杖歩行は、まず平地から練習する。初めは距離やスピードよりも安定性に重点を置いて練習し、安定性が向上して(転倒の危険がなくなって)から、徐々に耐久性(休まず歩ける距離)、次いでスピードに訓練の重点を移していく。平地歩行が実用的になったら、斜面(普通登りよりも降りの方がバランスが取りにくい)、階段(手すりにたよらず杖をついて昇降する練習)、溝またぎ、敷居越えなどの応用歩行を練習し、一部の患者では、さらにできれば杖なし歩行にもっていく。

( `ー´)ノ参考文献

医療学習レポート.脳梗塞とリハビリテーション


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