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(*´∇`*)脳血管障害とADLの話


( ^)o(^ )題名:脳血管障害とADLの話

動作やADLの実際の方法や特徴(介助方法を含む)

 

今回のレポートを書くのにあたり、急性期を発症から2週~1ヶ月,回復期を2週~1ヶ月から6ヶ月,維持期を6ヶ月以降としたが,リハビリテーションプログラムはこのようにはっきり分けることは難しい。個々の患者にあわせて行っていくので、あくまで目安として以下に述べる。

 

Ⅰ.急性期:発症から2週~1ヶ月

・肢位  - 股関節外旋、肘関節屈曲、内反尖足 → 良肢位保持

・仰臥位

①肩甲帯や骨盤周囲の緊張は低く、麻痺側の肩甲帯と骨盤がベット側に落ち込む

②股関節外旋位 →下肢そのものにも問題はあるが、骨盤が麻痺側に沈み込むために重力によって股関節が外旋位をとってしまう。  (ハンドブックより)

③多関節筋優位 →分離した運動が出来ない

④非麻痺側で支持面を押したとき、体幹は麻痺側に回旋(股関節外旋により患側方向への回旋力が作用) →健側の膝を立て(脊柱と骨盤のねじれをほぐしている)無意識に代償

 

・体幹の構造

腹直筋は背柱から遠く離れてついているので効率よく屈曲できる。

体幹は頭部,胸部,骨盤というしっかりした梓橋造の部分をグニヤグニヤに動く頸椎あるいは腰椎で結合している。構造的な不安定を補うのが筋である。しかし腹部は筋も障害されやすく不安定になりやすい。

 

・寝返り - (脳循環動態、バイタルサインの安定が得られたら)

非麻痺側を下にするように!(患側肩関節の亜脱臼を防ぐため)

①     非麻痺側下肢を患側下肢の下に入れ、なるべく深く足を組むようにする。

②     非麻痺側上肢で患側の手首を持ち、腹部の上に置くようにする。

③     顎を引き顔を非麻痺側に向け、肩甲帯の回旋から体幹を回旋させ、非麻痺側に寝返える。(頸部の立ち直り反応利用)

 

※介助して数回行い、徐々に介助量を減らし習得させる。

※介助のコツ:頸部の立ち直り反応利用

※この方法で困難な場合には非麻痺側の手でベッド柵を引っ張るようにして側臥位になる方法もある。

・座位保持 -(脳の循環動態が安定したら)血圧・脈拍をチェックしながら、ギャッチ座位の角度を増していく。(90°まで)

※起立性低血圧予防。 座位のバランスと耐久性をはかる

※弛緩性麻痺患者では、肩の亜脱臼防止のため、患側上肢をクッションなどで支えるように指導する。

座位

・骨盤後傾(身体の一部の重量を後方へ移動する)、麻痺側をわずかに浮かせている

・全体的円背

・顎を前方に突き出した姿勢をとりやすい(身体の一部の重量を前方へ移動する)

・・・骨から骨に起始・停止しない腹部の筋は、機能を発揮しにくく、体幹の下部を中間位で

安定できない →筋では十分な安定性が得られないので、機械的な安定性を得るための代償である。

※伸展筋の活動が不十分で体幹を抗重力伸展できないためではない

・座位姿勢

a.屈曲姿勢

顎を前方につき出してバランス

をとっている。顎部,胸郭上部の

筋緊張が高くなる。

 

b.右片麻痺

非麻痺側へ圧の中心を偏任させ

て患側をうかし、この重量と非麻

痺側の筋活動で左・右方向の動き

 

C.左片麻痺

麻痺側殿部の支持性不十分で骨

盤が傾いている.非麻痺側がバラ

ンスを取るために働いて常に硬く

なっている.

 

・入浴 - 清拭

・排尿 - カテーテル

・排便 - おむつ、摘便、浣腸 (便秘になりやすい)

・食事 - 自助具の活用(非麻痺側にて)

・更衣 - 病院の浴衣などを着用 (ベッド上で介助ありで行う)

・整容

※意識障害の可能性あり ウェルニッケマン肢位

※筋緊張は弛緩状態。または連合反応の出現。(BRSⅠ,Ⅱあたり)

 

Ⅱ.回復期:2週~1ヶ月から6ヶ月

※筋緊張 - 痙性、共同運動。協調性

※姿勢反射や平衡反応の利用

・座位保持 →(車いす移乗 → 車いす駆動)→起き上がり →座位移動→立ち上がり →立位 →平行棒内歩行 →杖歩行(常時2点歩行、2点1点歩行) →独歩自立

・起き上がり(ベッド上)… 座位保持可能になってから

①     寝返りの要領で側臥位になる。

②     非麻痺側で下腿部をベッド端から下ろす。

③     非麻痺側上肢を伸ばし上体を起こす。(殿部を支点にてこの原理を利用すると少ない筋力で起き上がりが可能になる。)

 

(介助方法)

①     患者の前方非麻痺側寄りに立ち、下腿部をベッド端から下ろし、同時に直接あるいは脇の下から手を入れ、背中を支える。

②     足の重さを利用して上体を起こすように肘を伸ばさせながら介助する。

③     端座位では、両足底を床につけるようベッドの高さに気をつける。

④     目を離さないことなどによって、転倒を防止する。

 

・立ち上がり(ベッドサイド)

①     起き上がり(ベッド上)の要領で起き上がる。

②     非麻痺側上肢でベッドを押し、ベッドの端に上体を移動させ、浅く腰掛ける。

③     非麻痺側下肢をベッド側に引きつけ、上体を前傾させる。

④     非麻痺側下肢に力を入れ、ベッドを押して立ち上がる。(患側の回復の度合いに応じて、患側も同様にベッド側に引きつけ、患側にも力を入れる。初期ではベッド柵を持って立ち上がるのもよい。)

 

(介助方法)

患者の前方に立ち、患者の腰あるいは腰に回した紐を持ち、

自分の両膝で患者の非麻痺側膝あるいは両膝を前方で支え、

膝折れを防止する。

※     患者の状態に応じて介助量を加減する。

・起き上がり(床から)

①     非麻痺側を下にして寝返る。

②     非麻痺側上肢の肘で床を押し付けて上体をわずかに起こす

③     肘を伸ばし、さらに上体を起こす。

④     同時に非麻痺側膝を軽く曲げる。

・座位移動

1)前方移動

①床からの起き上がりの要領で長座位になり、非麻痺側下肢を患側下肢の下に入れる。

②非麻痺側上肢を体側後方に置く。

③非麻痺側上下肢に体重を乗せ、膝を屈曲させながら体を前方に移動する。

④非麻痺側上肢を体側に移動する。

 

2)後方移動

①非麻痺側に重心をかけた長座位になる。

②非麻痺側下肢を患側下肢の下に入れ、膝は屈曲させる。非麻痺側上肢を斜め後方に置く。

③非麻痺側上下肢に体重を乗せ、膝を伸展させながら、身体を後方に移動する。

 

3)側方移動

①長座位になる。

②非麻痺側下肢を患側下肢の下に入れる。

③非麻痺側下肢を移動方向にし、

⑤     体側に置いた非麻痺側上肢に体重を乗せ、殿部を移動させる。

・床からの立ち上がり

①     長座位から、非麻痺側上肢を前方について、腰をひねり、両膝立ちになる

②     患側下肢を前方に出し、非麻痺側片膝立ちになる。

③     患側下肢と非麻痺側上肢で体重を支え、非麻痺側下肢を前方に引き出す。

④     立ち上がる。

※     初期は台やテーブルなどを利用して、非麻痺側上肢を高い台の上に置いて立ち上がると安全である。

 

(介助方法)

後方に立ち、介助する。

※     患側下肢の回復の状態により、患側片膝立ちをすすめる場合もある。

立位

・股関節屈曲、体幹前傾、臀部後方、頭部前方

・腹部と股関節の安定筋の活動が不十分で多関節筋が優位に働いている

(脳卒中の理学療法より)

・     体重は健側下肢にかけている

 

[立位姿勢]

腹部と股関節の安定筋の活動が不

十分で多関節筋(推進筋)が優位に

働いている姿勢

 

Ⅳ.代償運動

歩行

(異常歩行パターン)

1.共同運動によるもの

・分まわし歩行(股関節における屈筋共同運動)

・・・股関節の屈曲のみを行うことが出来ず、股関節外転・外旋が伴うために、足先はななめ外前方に振り出される

・トレンデレンブルグ歩行(伸筋共同運動)

・・・立脚期の内反・尖足(股関節に内転が加わるため健側の骨盤が下がる)

・階段を降りる時の股関節内転・内旋(しばしば患側が健足の直前に降り、邪魔になる)

・足指のclawing

2.その他の中枢性麻痺の特徴によるもの

・膝のこわばり

・・・体重を支えて強力な活動をした伸筋共同運動パターンが直ちに(振り出し期にお

こるはずの)屈筋パターンに交代することが出来ない。(筋緊張の持続傾向、交

代運動のスピード低下)

・振り出し期における内反尖足

・逆に屈筋パターンが立脚期に及んでいることもある(膝伸展不十分)

 

3.末梢運動器の異常を媒介としたもの

・反張膝・・・固定した尖足のまま歩かせたため

・外反母趾・・・体重負荷時の扁平足・外反足の結果

4.姿勢そのもの異常

・患側凹の脊椎側弯

 

・立位から床へ座る

①     立位から徐々に前かがみになり、前方に手をつく。

②     静かに非麻痺側の膝をつき、片膝立ちになる。

③     腰を回して、殿部を床につける。

・杖歩行 -患側下肢の支持性とバランスが改善されるに従い、移行する。

常時2点後ろ型→常時2点揃い型→常時2点前型→2点1点交互支持歩行

(介助方法)

患者の患側後方に立って行う。

※患側下肢の支持性やバランスに応じて適切な杖や歩行形態を選択する。

・階段昇降 -上段に非麻痺側下肢を置くことにより、膝屈曲位での体重支持を安定させる。

※     はじめは手すりを用いて練習すると安全である。

 

a.前昇り:非麻痺側 → 杖 →患側   b.前降り:杖 →患側 →非麻痺側

 

(介助方法)患者の後方に立つ         (介助方法)患側後方または患側から介助

 

・移乗動作 -ポイント:移動する側に非麻痺側がくるようにする。

必ずブレーキをかける。

介助の注意点:①患者の膝折れと足の滑り出しの防止

②立ち上がり時に腰を落とし、患者を前傾させ、重心を足部に移動させる

1)ベッドから車いすへ

①     非麻痺側がわに車椅子を斜めにつける。(フットレストを上げておく。ブレーキ確認。)

②     ベッドの端に端座位になり、少し前方に移動する。足を平らに床につける。

③     車いすのアームレストを非麻痺側で持ち、床に立つ。

④     非麻痺側下肢を軸足として体を90°回転して、車いすに座る。

 

1)車いすからベッドへ

①     非麻痺側がベッド側にくるように車いすを斜めにベッドにつける。

②     ブレーキをかけ、フットレストをあげる。

③     アームレストを押さえ、立ち上がる。

④     ベッドに手をつき、一歩非麻痺側を出し、体を回転してベッドの端に腰を下ろす。

2)車いす駆動 -片手・片足駆動 ※シートは床を蹴ることが出来るように低めにする。

前進:非麻痺側上肢で後輪を前方に回転、同時に非麻痺側下肢で床を後方に蹴る。

後進:その逆

・起き上がり - 非麻痺側の肘を使って上体を起こす

・立ち上がり - ①能力障害への対応:非麻痺側の足を手前に引き、非麻痺側の力を利用して立つ。

②機能障害への対応:患側の足を手前に引き、患側に力を入れて立つようにする。

・食事 - ナイフフォーク、フォークスプーンなどがある 白p162

問題点:口までものが届くのか →自助具(長い柄、太い柄、曲がった柄、食器側の固定等)

                  白p93  青 p85、86

  上肢の機能を中心に評価。(麻痺、ROM、MMT、痛み、姿勢、意欲、両手動作or片手動作、把持具)

→肩を挙上して固定する機能、肘の屈伸、手指の把持機能、肩の外転、肘の強い屈曲・前腕回内外、

MPの屈曲、母指の対立が特に重要! +外的要因(食物の形状、食器など)

① 利き手が麻痺側の場合

軽症か、回復が良好な場合を除いて、利き手交換が必要。フォーク、スプーン、あるいは適当な自助具(フォークナイフ、フォークスプーン)を使うように指導するほうが効果的で実用性がある。

麻痺した利き手が、利き手として残るための必要条件は、Brunnstrom stageが腕、手指ともに6あるいは正常であること、深部感覚障害、小脳性失調や不随意運動がないことなどである。

 

② 非利き手が麻痺側の場合

廃用の場合、ある程度回復が良好 → 茶碗、汁碗などを無理に持たせるより、容器に工夫を凝らしたり自助具を用いたりして机上に安定して固定するほうが実用性が高い場合がある。

3)仮性球麻痺の場合

痙性麻痺性構音障害、嚥下困難 → むせやすく、こぼれやすく、ふき出しやすい

対策として言語療法の一部として行う一連の練習(発声持続、吸う、咬む、飲み込む、吹くなどの運動に加えて、舌の運動、頬の運動など)が食事動作にも役立つ。

※一度に大量に食べ物を口の中に入れない、落ち着いて食べる、水分の多い食事はむせやすいので避ける、液体を口にする場合はストローを用いるなどに留意。

 

4)自助具の利用

 

・排泄 - ポータブルトイレ → 洋式トイレ

※トイレットペーパーの片手きり方

トイレットペーパーの設置場所は健側上肢が十分届きうる場所。

紙を切り取る方法は中指、薬指で切り取り用カバーをおさえながら、母指、示指で紙を挟

んで切り取る。

・局所の清拭については片手で便器に腰掛けたまま行うことが可能。

・フラッシング(flushing)は健側手が楽に届きうる場所に設置。一般に便器から立ち上がる

前にフラッシングを行ったほうがやりやすい。

 

・整容 - (整髪、爪きり、髭そり、化粧、洗顔、手洗い、歯磨き)

      ※洗面所までの移動が必要

      ※ほとんど片手動作で代償可能

① 爪の管理:非麻痺側の手の爪切りは工夫が必要(自助具)

② 皮膚の管理:廃用部位や感覚障害部位に対しては十分な注意が必要

③ 髪の管理:ブラッシングは問題なし(柄の長いもの)

洗髪は女性では介助を必要とする場合が多い

④ひげの管理:使用後の掃除のため、ひげそりの先端部分は押しボタン式でバネで開く形式のものが片手動作ではやりやすい。

 

・入浴 - 浴槽の出入り(ボード、板を利用-浴槽壁と同じ高さ)

      座位保持(シャワーチェアー利用)

      洗髪、洗体→非麻痺側上肢の洗体には工夫が必要(サクション付きブラシ、非麻痺側下肢

を泡立てこすって洗う)

 

患側前腕をループに通す

・更衣 -座位バランス(必要条件)、高次脳機能障害が影響する。

衣類はゆるめで伸縮性があるものを選ぶ。ボタンは避けてベルクロ、(ジッパー)

自助具の使用も考える。

1)かぶりシャツ

着衣時: ①患側→非麻痺側→頭         ②患側→頭→非麻痺側

 

脱衣時: 頭→非麻痺側→患側

 

2)上衣

着衣時:患側→非麻痺側

脱衣時:(患側の肩を脱がせてから)非麻痺側→患側

 

(3)ズボン

 

着衣時:患側を非麻痺側の上に組む→患側股関節部まで引き上げる→患側下肢を下ろす→非麻痺側大腿部まで引き上げる→立位が取れる場合は立位で、取れない場合は背臥位で(腰を持ち上げることができない場合は左右の寝返り様のロール動作を行いながらズボンを引き上げる)→ベッドに腰かけ、ボタン・ジッパー操作を行い、バンドを締める。

 

脱衣時:立位または背臥位のロール動作で大腿部まで脱ぎ→座位で非麻痺側下肢を先に抜き→

患側を抜く。

※ボタンをあらかじめ止めて、かぶりの着方で着ても良い

※患側がずり落ちないように非麻痺側足関節を底屈させる。

※下衣:片足で若干立てる →立位で履く

立位が保てない →座位で足をいれた後で立って腰まで上げる or

座位または臥位のまま左右交互に繰り返し、腰を浮かせながら腰ま

で少しずつ上げていく

 

Ⅲ.維持期:6ヶ月以降

・協調性

※“できるADL”をやらなくなることが多い。“できるADL”を“しているADL”に高める必要がある

①     近隣への移動

病院内との違い

・     必ずしも平坦ではない(凸凹、溝、坂など)

・     雨でぬれていたり、水たまりの場合あり

・     自転車、自動車、人ごみなど障害が多い(自分のペースで歩けない場合あり)

・     信号

・     広いスペースを歩くことによる不安、緊張(痙性↑)

②     調理

自助具の使用(片手用まな板など)

③     整理・整頓

最低限必要なもの

・     家庭内のそうじ

・     衣類の整理整頓 など

④     洗濯

⑤     1本杖歩行パターン

a.常時2点支持歩行(杖→患→健)       b.2点1点交互支持歩行(杖と患→健)

 

⑥     階段昇降

2足1段法・1足1段法

⑦     交通機関の乗り降り

段差が大きい場合は2足1段法

・バスの乗降

乗る:①手すりを持ち、非麻痺側をステップに乗せる。

②患側をステップに乗せる。

降りる:①手すりを持ち、患側をステップに乗せる。

②非麻痺側を下ろす

・エスカレーターの乗降

スピードにあわせて一歩を踏み出すのが難しいため、歩行が安定し、一定のスピードがあることが前提になる。

 

乗る:①非麻痺側の手でベルトを押さえ、非麻痺側下肢をはじめのステップに乗せる

②患側下肢を同じステップに乗せる。

降りる:杖がすぐ使えるように準備しながら、非麻痺側下肢から降りる。

・自動車の乗降

乗る:非麻痺側から乗り込む。シートまたは窓枠に手をかけ、非麻痺側下肢を車に入れ腰を下ろす。

向きを変え、患側下肢を車にいれる。

降りる:向きを変え、非麻痺側で患側下肢を介助して車外に下ろし、上体を車外に出して立ち上がる。

 

Ⅳ.代償運動

1)分類

①走行が似ている筋の代償

例:歩行での患側下肢の振り出し時、股関節を外旋位にする

→股関節屈筋群に代わり股関節内転筋群で下肢の振り出しを行う

②腱の作用(tenodesis action)

例:手関節掌屈で手指を伸展させ、手関節背屈で手指を屈曲することにより、つまみ動作を遂行す

③重力を利用する代償

例:机上に置かれた物品に向かって手をリーチする場合、肘屈筋群の痙性による筋緊張がさほど高

くない

④関節のモーメントアームを調節する代償

(モーメントアームを短くする代償)

肢節にかかる重力を小さくすることにより、運動を容易にする。

例:患側上下肢の屈筋共同運動パターンにおける肘、手指、膝などの屈曲は、可動関節のモーメントアームを短くして、肩関節、股関節の挙上や屈曲運動を容易にしている。

(モーメントアームを長くする代償)

例:背臥位にて、患側上下肢を非麻痺側上下肢での把持や引っかけにより上方に挙上することでモーメントアームを長くし、それらを非麻痺側方向に傾けることで、身体内部に回旋モーメントを発生させ、寝返りを容易にしている。

⑤固定筋を活用した代償

例:分回し歩行の際、股関節外転の固定筋である腰方形筋、腰部の脊柱起立筋群、広背筋などを用い、骨盤の引き上げを起こすことで股関節外転を代償する。

⑥作用させる筋を伸張させる代償

例:弱化した股関節屈曲筋群に対し、胸を張り股関節を伸展方向に運動させることで、同筋群を伸張させ、これにより股関節屈曲力を高め、歩行時の下肢の振り出しを容易にしている。

⑦筋のreverse actionによる代償

例:背臥位において、非麻痺側でベッドの柵を把持して、肘屈筋群、大胸筋などの筋の起始部(肩甲骨、胸郭)を停止部に近づけることにより、寝返りや起き上がりを容易にする。

⑧関節の支持機構を利用する代償

例:立位時、患側膝関節完全伸展位にlockingを起こし、膝関節の軟部組織である腱や靭帯による固定力にて体重を支える。

⑨非麻痺側上下肢、骨盤、臀部への寄りかかりによる代償

例:支持力が低下した患側上下肢では体重が支えられないので、非麻痺側への寄りかかりで姿勢を保持している。また、患側下肢においては、非麻痺側に寄りかかることで、足部が宙に浮かされ、コントロールしやすくなる。

⑩正常とは異なる肢位を強いられることでの代償

例:尖足位で拘縮のある症例では、患側下肢先行型の歩行パターンとなり、振り出しでは相対的に脚長が非麻痺側下肢より長くなるので、幾通りかの代償が生じる。

⑪身体の重心に働く偶力の関係でおこる代償

非麻痺側上下肢主体に運動を行う場合、身体の重心の周りで非対称な力が作用するため、偶力が発生する。効率的な運動動作を行うためには、ベクトル方向において、常に力を作用させる点、非麻痺側上下肢、身体重心、患側上下肢の順番で置かれる方が都合が良い。

例:片麻痺患者が行う運動、動作においての肩甲帯、骨盤帯を後方に引き込む代償を行う。

⑫抗重力活動に代わっての上肢の押し上げによる代償

例:側臥位により肘をついて起き上がる場合、頸部の屈筋や腹筋群の筋力が弱化してくると、いったん顔面や胸郭をベッド面に向け、非麻痺側上肢の伸展力を用いて体幹を押し上げて起き上がる。

⑬補助具利用による代償

例:手すり、補助具、重りなどを用いることで代償する。

 

2)移動動作でみられる代償パターン

 

1.背臥位

患側股関節外旋位 →下肢、骨盤を介して脊柱に対しては、患側方向の回旋力が作用する。

これは、違和感、腰痛を招く。

非麻痺側の膝縦位をとり、脊柱と骨盤の捻りをほぐす行動を無意識に起こす

(対応)この代償は、様々な動作やバランス保持に影響を与えるので、極力早期から回避させる努力が必要である。患側の肩甲帯、骨盤帯の下方への落ち込みを防ぐために、タオルなどを折り畳んで挿入する。

2.寝返り(背臥位から非麻痺側方向への)

患側の上下肢が患側体幹の側方に残ってしまっており、それが重りとなって非麻痺側方向への寝返りが起こせない。 →上肢を体幹前面に引き出しておく必要がある。

→このため、非麻痺側手で患側上肢をつかみ非麻痺側方向へ誘導したり、アームスリング屋前腕固定ベルトを用いて、あらかじめ体幹前面に固定しておこうとする。下肢は、非麻痺側下肢で患側下肢をすくいあげ、非麻痺側方向へ誘導する。

(対応)麻痺の程度が重度なほど、感覚障害を合併している者ほど、早期から指導されるべき代償である。

(非麻痺側方向への回旋力を高める手段)

①身体全体に非麻痺側方向への回転モーメントを高める代償

頭部は前屈し枕より浮かせ、患側上下肢は非麻痺側上下肢により屈曲方向へできるだけ挙上させることにより、矢状面で、頭部、上下肢の最高部にある部分を非麻痺側方向へ傾けることで容易に身体全体は非麻痺側方向への寝返りを遂行する。

(対応)患側上下肢の触・圧覚を介しての運動・位置覚のフィードバックを高めるのに適しており、患側上下肢および腹筋群の筋再教育、非麻痺側上下肢の筋力強化に適している。

②非麻痺側手で非麻痺側のベッド柵をつかみ、上腕ニ頭筋、肩関節屈曲筋群、大胸筋などのreverse action によって体幹上部の非麻痺側方向への回旋力を高める

3.ベッド上移動

片麻痺患者では、背臥位姿勢からの頭部および足部方向への縦方向移動と患側への横移動が困難である。

頭部方向への移動 →帯をベッドに取り付けると便利。帯を非麻痺側手でつかみ、非麻痺側下肢のブリッジ動作に合わせて体を引き上げる。

※このとき患側上肢の屈筋共同運動、下肢の伸筋共同運動といった連合反応が起こりやすい。このことが他の動作に影響するようであれば、控えるべき代償となるかもしれない。

4.ベット端での起き上がり

ハムストリングス筋や腰背部の筋群の筋緊張亢進や短縮がある場合は、長座位への起き上がりは困難であるので、あらかじめ両下腿をベッド端から垂らし、端座位へ起き上がろうとする。

いずれも非麻痺側肘立て位を介して起きてくるが、2パターンある。

①頸部・体幹とともに、起き上がっていく方向に立ち直り反応を出現させて起きていく方法。

→手すりを用いる場合は、手すりをつかむ位置は少しベッドより高めが好ましい。

②腹筋群の活動が低い症例においては、顔面・胸郭をベッド面に向け、非麻痺側上肢で上体を押し上げていく方法。

→手すりがない場合に多く見られ、手すりを用いる場合は、手すりをつかむ位置はベッド面に近い低めの位置が好ましい。

頸部・体幹の筋の活動性が極端に低いような場合には、この方法での指導も試してみるとよい。

また、効率よく腹筋群を使うために、両足首に重りを負荷したり、介助者が徒手的に大腿部を固定することで、起き上がりが容易になる。

5.端座位保持

片麻痺患者で座位保持ができないケースのほとんどが、患側よりにバランスを崩して倒れてしまう。

→患側股関節が外旋位にあり、足部が内転方向に移動しているため患側の支持基底面が狭くなっている。患側大殿筋の筋緊張低下や萎縮により骨盤自体が患側に傾いてしまう。

→このため、患側方向に傾きやすい患者は、非麻痺側手にてベッド縁か手すりに掴まって何とか保持しようとする。

 

6.起立動作

非麻痺側足部をより後方に引き、非麻痺側下肢で体重を支持しやすい状況を作る代償を行う。

膝関節伸筋群に比し、股関節伸筋群の筋力が弱いケースでは、骨盤を斜め後上方に押し上げるような形で立ち上がる場合もある。

→この時には、あえて体幹の前傾は促さずに、手すりは通常の高さより高くするか、縦手すりの方が都合が良いかもしれない。

7.立位保持

代償:片麻痺患者のほぼ全てのケースが、非麻痺側下肢主体に体重をかけて立っている。

→下肢を浮かせた側である患側腰背部の脊柱起立筋群と肩甲帯下制筋群には持続的な筋収縮が出現する。(非麻痺側に傾いた頭部・体幹を患側に立ち直らせる反応)

→この筋収縮は、やがて患側の骨盤挙上、肩甲帯下制といった異常姿勢をもたらす。

対応:日常生活上、非麻痺側下肢主体に体重をかけて立つことは必然的であり、これを制することは、かえって効率面や安全面からも問題となるが、異常姿勢を強化しないために、一日に一回程度は、患側下肢に努めて多くの体重をかける時間をとらせることが必要である。

8.歩行

①患側下肢体重支持期

代償:膝折れを防ぐ目的で、非麻痺側を振り出す際に、患側より前方に接地させない。

(非麻痺側下肢揃え型、後ろ型歩行)

患側膝関節では、関節を完全伸展位にし、関節軟部組織の支持機構で固定させる(locking)ように、矢状面において、前方より足部、膝関節、股関節の順に置かれる位置関係を堅持し

ようとする。

→そのために、患側の骨盤が常に後ろに引けた状態で立っている。

対応:反張膝変形予防には、短下肢装具および膝装具が適応となり、尖足の強いケースでは、踵部分への補高が必要となる。

②患側下肢の遊脚期

代償:(患足を床から離すため)

・非麻痺側に体を傾ける

・手すりや杖に寄りかかる

・非麻痺側下肢で爪先立ちとなったり(vaulting歩行)

・患側の骨盤を引き上げるなどの方法をとる など

(患側を床から離しその足を振り出す)

・股関節内転筋群により振り出す方法(股関節が外旋位にあり、内転筋群の運動方向が振り出そうとする方向に一致するために使われる)

・引き上げた骨盤を非麻痺側下肢を軸に前方回旋を起こさせて振り出す方法(分廻し歩行)

・振り出しの際、股関節屈曲位では効率よく振り出せないので(股関節屈曲筋・内転筋群の緊張が緩んでしまう)、患者は自ずと胸を張り、股関節をできる限り伸展位に近づけようとする。

→高さが高い手すりや、杖も長いものを好むようになる。

対応:補助具により振り出しを容易にできる場合もある。

杖と患側に1~2kgの重りを負荷する。

→杖への重り負荷・・・杖での支持が安定し、安心して杖に寄りかかれるようになる

足首の重り・・・振り子の反動を利用して、振り出しやすくなる。

※振り出しが困難なケースのほとんどが、非麻痺側に体重を移動できないからであり、振り出そうとする下肢にまだ体重が負荷されている。

→介助者による極端なまでの体重移動の操作が必要となる。

非麻痺側杖および手すりに寄りかからせ、患側肩関節前方においた手で患側肩甲帯を非麻痺側斜め後方に引き寄せる。これにより、患側下肢は斜め前外側に浮かされ、浮いたと同時に、患側肩甲帯を今度は前方に押し出すことで、患側足部は前方に振り出される。この操作は行うタイミングが難しく、かなりの熟練を要する。

患側下肢の振り出し動作は、身体のうちで一番思い部分を動かす動作なので、患側上下肢においては過剰な筋収縮が引き起こされ、異常姿勢を強める危険性があるため、発症初期から努力させての振り出しはあまり行なわないほうがよい。歩行開始当初は、患側下肢の振り出しは他動的に行なってよい。筆者は、非麻痺側下肢での立位保持能力が向上するにつれて、自然と患側下肢の振り出しは行なえるようになっていくものであるとしている。


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