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(´・c_・`)脳卒中片麻痺患者とADLの話


(~o~)題名:脳卒中片麻痺患者とADLの話

Ⅰ.片麻痺患者ADL障害の特徴

①上肢の残存能力とADLは関係あるが比例はしない

②患側上肢が利き手か否かで影響を受ける

③健側上下肢の機能は必ずしも正常でない

→ 随意的および反射的な諸動作に素早く反応して働く四肢や体幹の機能が障害され、上肢の作業能力や歩行などに支障(能力障害)が生じる

④失語症・構音障害はコミュニケーションに支障をきたす

⑤高次脳機能はADLに最大の支障をきたす

→ 運動障害に平衡機能障害や感覚障害、あるいは高次脳機能障害による認知・理解力障害などが加われば、さらにADL獲得が困難を来すことになる

⑥老齢による他の因子により、病前のADLが既に制限されている場合が少なくない

→ パーキンソン病、内臓疾患、循環不全、大腿骨頚部骨折など

⑦60歳以上の患者の多くは社会的活動に対するニーズは無くなり、身の回り動作の自立がゴールとなることが多い

 

1.精神機能障害

【問題点】

・痴呆による意欲の低下

・コミュニケーション障害

→ 失語症や仮性球麻痺などによる重度の麻痺性構音障害

・高次脳機能障害(失認・失行など)では、左半側を無視したり、着衣が困難になるなど、身の回り動作や作業能力の障害を来たすことが多い

 

2.歩行障害

【歩行障害する最大の因子】

平衡機能の低下

→ 一側下肢の痙性麻痺のみであれば、重度でも長下肢装具を着用すれば何とか歩行可能であるが、平衡機能の障害があるものでは杖や歩行器に依存せざるをえない

しかし、杖のみでは不安定であり、上肢の障害が重度であれば歩行器の使用も困難となり、車椅子生活が余儀なくされる

平衡機能障害が軽度でなければ、屋外歩行の実用性を獲得することは困難

関節覚を含めた感覚障害も、歩行能力の低下を招く一因

 

3.作業能力障害

【問題点】

痙性片麻痺では、上肢・手指の機能障害が重い

・共同運動パターンから離脱することが出来ずに廃用手か、補助手レベルに留まることが多い

・一部共同運動パターンから脱したとしても、感覚障害が強く、運動覚や位置覚の低下が著しいことも稀ではない

・共同運動パターンから離脱し、感覚障害も表在に限られている場合においても、巧緻作業の実用化という点では限界を感じることも多い

上肢の残存能力とADLは関係あるが比例はせず、患側上肢が利き手か否かで影響を受ける

[もう一つの問題]

下肢・体幹の筋力も重要

→ 姿勢の保持・維持のため

上肢機能の予後予測

(1)発症1ヶ月で腕・手指ともにBrunnstrom stage Ⅲに達しないものは廃用手に終わる

(2) 4-4の法則

・発症4ヶ月で腕・手指ともにstage Ⅳに達しないものは廃用手に終わる

・補助手以上に達するための条件

(3) 1-3-5の法則

・実用手になるための必須条件として、3ヶ月までにstage Ⅴ以上に達していることである

・出来れば1ヶ月でstageⅤに達していることが望ましい

(4)実用手になるためには深部感覚、小脳失調、振戦、不随意運動があってはならない

 

Ⅱ.指導と介護

≪ADL訓練の目的≫

≪基本動作訓練の原則、注意点≫

①残存機能の利用

②非麻痺側の活用と麻痺側の取り扱いを熟知させる

③過剰な努力をさせない

→ 痙性の助長へとつながる

④介助を行う場合は、介助者は麻痺側に位置

→ 麻痺側の支持性・随意性は乏しいので、転倒への対応と運動の方向付けを覚えさせるために位置する

⑤補助、手助けの種類

→ 装具、杖、車椅子など

⑥介助の種類

人的介助(全介助 ⇒ 部分介助 ⇒ 自立)

物的介助:人的介助 ⇒ 物的介助

⑦介助量・スピード・タイミング

量:常に最小限 →患者の現状の見極め重要 少モチベーション↓、多機能↓

スピード:痙性がある場合にはゆっくりと

タイミング:患者がその動作を行っている感じを与える →患者各々に合わせる

⑧他のADL遂行に必要な一連の基礎動作として指導する

→ 重心移動は方向付けが必要になってくる

⑨立位で行う動作はバランス面で不安定なため、転倒等のリスク面に注意

⑩動作遂行に必要な筋とROM、平衡機能についてトレーニングしておく

 

≪片麻痺のADL障害の対策≫

①二次的合併症の防止

→ 関節拘縮や精神機能低下など

②能力障害を引き起こす機能障害について、障害構造を明らかにする。

③残存能力の有効利用に心がけ、代償機能の発達を促す。

④一度獲得したADLの低下防止に努める。

⑤必要に応じて生活環境(住宅・段差など)の改善を図る。

⑥障害レベルに合わせて自助具などの機器を利用する。

⑦生活の中で実際に行なえる機能的なADL獲得を目指す。

⑧本人と家族へ障害についての教育を徹底する。

≪指導の留意点≫

①動作の手順をセラピストが身をもって示す

②能力の限界を知って指導する

→ 可能な動作を段階的に行い自信を持たせる→ 苦痛を持たせない

③可能になったADLのフォローアップとチェックも必要

→ 忘れてしまったり、自己流に変えてしまったりする

④強制してはならない。激励し、時には手伝う

⑤急がせない。十分、ゆとりのある場所で行う

→ 転倒の恐れ

⑥指導法、時間などに流動性を持たせる

→ 身体的にも精神的にも日内変動がみられやすいため

⑦自助具など、患者の状況に応じて取り入れる

⑧退院後、同居する人達にもADLについて一連の教育を行う

→ 患者ができる行為は手伝わない

⑨退院後の患者各々の生活環境の違いにも目を向け、指導の拡大を図る

→ 例)土間と床の段差に踏み台を設置

⑩こちらの話をどれだけ理解しているかの確認

→ そのために、理解し易く、ゆっくり、ジェスチャーを交え話す。確認は相手の表情・動作等から

⑪リスク管理に十分留意する

⑫関連部所との密接な連携

⑬自立に向け効果的な動作付けを行う

→ 例)負荷の具合、重くても軽くてもダメ!適切な見極めが必要

 

≪具体的な方法≫

1.起居動作

a)寝返り

【原則】

非麻痺側方向への寝返り(麻痺側の肩関節損傷に注意)

【方法】

(1)麻痺側の手関節中枢部を非麻痺側で把持して行なう方法

(2)非麻痺側の手でベッド柵をつかんで寝返る方法

※この際、非麻痺側の足部を麻痺側の踵部に入れ交叉させる

【指導ポイント】

感覚障害の程度によって交叉動作に困難を生じるので、膝窩部から足部を挿入させ、踵部へ滑らせながらすくい上げる方法で可能になる場合がある

寝返る際には頸を前屈しながら非麻痺側へ回旋させ、さらに体幹の回旋運動を充分取り入れて行なう

【介助ポイント】

肩甲帯部や殿部を軽く押すと寝返りやすくなる

 

b)起き上がり

ア.床上での起き上がり

【方法】

①寝返りと同様に非麻痺側へ寝返りしながら、手を床について肘を伸ばし起き上がる

②この際、頸部屈曲・体幹の屈曲と回旋を行い、床の上についた肘と手への荷重移動がなされる。

【介助ポイント】

肘と手に充分な荷重をかけるように介助者が前腕部を固定し、他方の手で肩甲部を保持して起き上がる

イ.ベッド上での起き上がり

【方法】

①寝返る側のベッドスペースを充分確保して、麻痺下肢を非麻痺下肢ですくい挙げる

②寝返りを行いながら、下肢をベッドから外側に下ろし、肘を伸ばしながら起き上がる

【介助ポイント】

・下肢のすくい挙げを行なった後、肩甲部を保持し片肘支えに誘導

・バランスを保ち転倒に注意する

 

c)ベッド上移動

【上方への移動】

非麻痺側の下肢を膝屈曲位で保持、次に殿部を持ち上げ、頸伸展と非麻痺側の膝伸展力を利用し、上方へ移動する

【下方への移動】

下方へは頸の伸展で上体をずり下げ、殿部を浮かして最後に膝屈曲に力を入れ下方へ移動する

【左右への移動】

左右へは膝屈曲位で両肩を浮かしながら頸屈曲位をとり、移動する方向に上体を横移動して両肩を移動、次いで殿部を浮かし同方向に動かして移動する

 

d)床上移動

ア.前方いざ這い移動

【方法】

麻痺側の下肢の膝下に非麻痺側の下肢を差し入れ、体をやや非麻痺側に回旋するようにしながら上肢で支え、殿部を浮かすとともに反動をつけて非麻痺側の膝を屈曲する力で前方へ進む

【指導ポイント】

体を少し後方にすると殿部が浮きやすく移動しやすい

 

イ.後方いざ這い移動

【方法】

ア)の逆の方法で、体を前方に少し前傾することによって後方へ移動が行いやすい

※通常は麻痺側への移動が難しい

 

e)立ち上がり動作

ア.ベッドおよび椅子からの立ち上がり

【動作開始前に】

①両下肢が床面に充分接地することを確認

②必要に応じてベッド柵や特製の手すりを使用

【方法】

①椅子に座るようにベッドの端に腰掛ける

②健側上肢をベッド上に置き、肘を伸展させながら(プッシュアップ)殿部を健側にずらし、やや浅めに腰掛ける

③健側上肢でベッド柵を掴み、健側下肢を出来るだけベッド端に引きつける

④体幹を前屈させながら、健側上肢でベッド柵を押して立ち上がる

 

座る時は、ゆっくりと椅子を確認しながら行なう

【介助ポイント】

①患側足部が前方あるいは内側に辷り出たり、患側の膝折れがみられるので、麻痺側膝の保持をしっかり行なう

②一度に立つことが困難な場合には半立位にとどめ、繰り返し行っていくことで、漸次立位まで導く

 

f)立位から床へ座る動作

【方法】

※基本的には立ち上がりの逆の動作である

①立位から徐々に前かがみなり、手を床面に着く

②非麻痺側の膝を先に着いて片膝立ち位になる

③体を回旋させ殿部をゆっくり床に降ろす

⇒ 転倒に充分注意する。

 

2.移乗動作

a)移乗(ベッド ⇔ 車椅子)

【方法(ベッド ⇒ 車椅子)】

①車椅子をベッドに対して斜めに近づける(健側)

②ブレーキ操作の確認を行なう

③フットレストを挙げ、殿部を前方へ移動する

④健側上肢でベッド柵か、車椅子の近位側のアームレストに掴まって立ち上がる

⑤車椅子の遠位側のアームレストに持ち替え、健側下肢を軸に回転して乗り移る

※転倒と麻痺下肢の捻れに注意する。

【方法(車椅子 ⇒ ベッド)】

①健側から斜めにベッドに近づく

②アームレストを掴んで立ち上がる

③健側上肢をベッド上に置いて身体を支えるか、ベッド柵に持ち替え、健側下肢を軸に回転して移乗する

(※ 車椅子のブレーキは必ず掛けておく)

 

【介助ポイント】

①立ち上がりの時と同様に、患者の膝に介護者の膝をあて、手前に引くようにして立ち上がらせる

②健側下肢を軸に回転させて車椅子に座らせる

(※ 患者の骨盤が後退しやすいので、前方に引き出すように介助する)

③移動動作

a)車椅子操作

歩行の出来ない片麻痺患者では、健側の上下肢で車椅子を駆動することが現実的な移動方法である

※ 原則的に非麻痺側の上下肢を利用

上肢 ⇒ 駆動力

下肢 ⇒ 方向転換+駆動力

健側下肢で舵をとりながら床を蹴り、かつ片手で車椅子を駆動する

 

【問題点】

【対策】

〇敷居などの数cmの段差でも、力不足で乗り越え困難 スロープ化など(スロープを上がる場合は車椅子をバックさせるほうが容易である)
〇家屋内における車椅子走行→ フットレストやハンドリムをドアや家具にぶつけることが多い

(特に、半盲や半側無視などの高次脳機能障害がある場合はその確率が高くなる)

狭い出入口などには床上15cm程度までフェルトでカバーすると良い

 

 

b)歩行

杖歩行

・家屋内で実用性のある歩行は、T字杖+短下肢装具で安定した歩容を有することである

・短下肢装具は、室内用の両側支柱付のもの、プラスチック製のものなどがあるが、内反・尖足が著しくない限り、裸足での歩行が最も現実的といえる

・玄関やトイレ、浴室・寝室などの出入口には段差がある上、ドアの開閉動作を伴うことが多いので、手すりの設置は必須である

・転倒の危険があればいつでも手すりに掴まれるように、杖についている紐リンクに手を通してから杖を持つように指導することが大切である

・毛足の長い絨毯、敷居の段差などはできるだけ取り除き、夜間、足元が見えにくい場所には足灯などを取り付けることも重要である

 

つたい歩き

・平衡機能の悪い重度障害者では、上肢の麻痺も重度であることが多く、歩行中にバランスを崩した場合に上肢のパラシュート反応(保護伸展反応)が出ず、患側の腰から床に落ちて大腿骨頸部骨折を生じ易い

・安全な移動方法としては、ベッド柵・テーブル・壁・手すりなどをつたいながら歩くか、介助による歩行が実用的である

・家具は固定性が良いことが大事で、廊下などはかえって狭いほうが安全で、たとえバランスを崩しても、患側の壁に一度ぶつかってから床に崩れ落ちることで、骨折を避けることができる

 

c)階段昇降

【原則】

“健側から昇り、麻痺側から降りる”

例外)①患側筋力は残されているが、知覚障害が重度な場合

②降段時に麻痺側の踵がつかえて、下段に振り出しにくい場合

③患側下肢を振り出すと、健側との交叉現象がみられる場合

【方法】

二足一段昇降(1段づつ昇降)

一足一段昇降(交互に昇降)

【問題点】

降りに恐怖を感じる場合、手すりを用いて後向きに降りる場合もある

日本家屋の階段は急で狭い場合が多く、手摺り設置する位の改造は出来ても、傾斜や幅までの改造は不可能な場合が多い   [対策]階段昇降機の設置

≪条件≫ 屋内歩行が可能 + 経済的余裕   不可能なら1階での生活

 

3.セルフケア

1)食事

【指導ポイント】

利き手で食べる場合  → 箸利用して自立することが多い

非利き手で食べる場合 → スプーン・フォーク

・発病後、最も早くから訓練すべきADLで、ギャッジベッドで座位がとれるようになれば、食事の時間に合わせて座位訓練と健側上肢による食事訓練を同時に行うのが効率的である

・最初は、肉や魚などをすくいやすい大きさにあらかじめ切っておく配慮が必要であるが、利き手交換・片手動作訓練を行うことで、漸次必要無くなる

・多発性脳梗塞などで仮性球麻痺のために嚥下障害がある場合には、むせて吹き出すことが多いので、トロ味をつける・柔らかくする・水分を多くし咽越しをよくする・水分はストローを利用することが大切である

・食後、義歯の人も含めて口すすぎと歯磨きで口腔内清潔を指導する

 

2)整容動作

【整容動作のADL的意義】

・洗面や整容動作は、人としての尊厳や衛生面から重要である

・各動作に必要な上肢機能(随意性・筋力・可動域)および移動能力の向上を図る

・顔面に関係する動作では鏡を設置することが望ましい

・顔を拭く、電気カミソリで髭を剃る、髪をとかすことは、

片手でも容易に可能であるため、生活のリズムを整えることでも重要であり、痴呆の予防にもなる

 

a)歯磨き

・普通の歯ブラシや電動歯ブラシを固定する工夫(固定台の作成など)を行い、チューブハミガキを含んでから磨く方法もある。

・直接口にハミガキを含んでから磨く方法もある。

・義歯の清潔は食事後義歯を外して口腔をすすぐ習慣や、洗浄剤の利用によって行う。

 

b)洗顔

・タオルを濡らして拭くか、水を容器にためて片手で行う

・車椅子の場合は、洗面台の高さが重要である。

 

c)整髪

・頭皮を傷つけないよう適度の硬さのブラシを選択する。また、握りやすさも大切である。

 

d)髭剃り

・カミソリ刃は肌に傷を創りやすいので、電動ひげ剃りが安全かつ便利である。

 

e)爪切り

大きめの爪切りを利用する。

・麻痺側は非麻痺側で行う。

・非麻痺側は麻痺側の機能が良好であれば可能。不良の場合は爪切りを固定する自助具を利用する。

・深爪に注意する。

 

3)更衣

【原則】

着る時は患側から、脱ぐ時は健側から行うこと

ベッド端に安定して腰掛けられること

【指導ポイント】

最初はできるだけ大き目の衣服を選び、ボタンはないかあっても片手で操作できる大きさで、ベルトはゴム製のものが適当である。伸縮性のある生地のものが更衣しやすい

かぶりシャツの着脱

①膝の上に背中部分が上にくるようにシャツを広げる

②健側上肢で背中部分を一まとめにする

③患側上肢、健側上肢の順で袖を通し、シャツを患側上肢の肘上まで手繰り上げる

④シャツの後部を一まとめにして頭を通す

⑤シャツの前後を下に引っ張って衣服を整える

 

ズボンの着脱

①患側下肢を健側下肢の上に交差して組ませる

②患側下肢からズボンを通し、ズボンは患側下肢を他動的に持ち上げながら、出来るだけ上まで引き上げる

③患側下肢を床上に下ろし、健側下肢を他方のズボンの脚に入れ、出来るだけ上まで引き上げる

 

立ち上がりが可能であれば …

④健側上肢でズボンを持って立ち上がり、健側を腰部まで引き上げる

⑤引き上げた後に肘でズボンを固定し、患側のズボンを引き上げる

⑥再びベッド上に座って前のボタンをとめ、ベルトを締めてチャックを上げる

立ち上がりが不可能であれば …

④この時点でベッドに仰臥し、片方の腰を持ち上げながらズボンを腰部まで引き上げる

⑤前のボタンをとめ、ベルトを締めてチャックを上げる

 

靴下の着脱

・ズボンと同様の肢位にて、健側上肢の指で靴下の履き口を広げて、足先に被せて引っ張り上げる

 

靴・装具の着脱

【靴】

靴紐をベルクロのものに変えると着脱が容易になる

【装具】

麻痺下肢を非麻痺下肢の上に組んで行う

※ いずれの装具も痙性の程度と装具の種類により装着に難しさがあるので、装着しやすい高さの足台(20cm前後)を利用して行うと容易である

[長下肢装具]

①先に大腿部を装具に入れ込み大腿部ベルクロを軽く止める

②ついで足部の入れ込み固定し、最後に全体を締める

[短下肢装具]

①下腿部に装具を差し入れて下腿部ベルクロを止める

②次に足部を差し入れて全体を締める

 

4)排泄動作

【トイレ動作のADL】

便器への移乗、ズボンや下着の上げ下ろし、局所の清拭など、比較的ダイナミックな動きが求められ、在宅生活においても入浴と並んで自立に対するニーズの最も高い行為である

【便器への移乗】

移動しやすくなるため、便器の高さに工夫を加える。(通常の便器に補高便座を設ける)

歩行可能者

健側の壁に取り付けたL字型手すり、正面の壁に取り付けた横手すりを使用すれば便器へのアプローチは可能である

車椅子使用者

移乗動作可能な位置に車椅子をつけられれば問題ないが、家屋構造の現状から、現実的には、トイレの入口で立ち上がった後に数歩進む、というパターンが多い.そのため、掴まり立ち・数歩でも歩ける、ことが自立のための条件といえる

【ズボンや下着の上げ下ろし】

立位と座位の2つの方法がある

立位のほうが一般的である(座位の方が安全で確実ではあるが・・・).

そのため立位バランス保持が重要で、実際には壁に寄り掛かることが多い

【排尿・排便の後始末】

①切り取りカバーに抵抗がかかるように工夫を加え、片手でペーパーの切り取りが楽に行えるようにする

②後始末は、殿部を前後どちらかに移動して行う

③女性の清拭は、尿路感染防止のために前方から後方に向けて行う

④水を流すレバーの操作方法については工夫を要する

⑤ウォシュレト(洗浄・乾燥機能付き)便器を使用する

 

5)入浴

【入浴動作のADL】

セルフケアの中で最もダイナミックな動きを必要とする難しい行為であり、浴槽への出入が困難な場合は『力』の介助が必要であるため、リフターや家屋改造などのニーズも高い

 

【浴室・浴槽への移動】

立ち上がることが出来ない場合

車椅子のまま浴室へ出入できるように段差を解消し、浴室用のリフターを取り付けて出入を援助する

立ち上がりが出来る場合

手すりとシャワーチェアー、あるいはバスボードを利用して浴槽へ出入りするのが一般的である.浴槽縁の高さが40~50cmでなければ腰掛けることができないため、スノコで調節するか、埋込み式の浴槽ということが条件となる

【入浴動作】

手すりに掴まって椅子に座るか、浴槽縁またはバスボードに座る

●椅子を使う場合

・体の向きを浴槽と並行にし、浴槽側の手すりに掴まって、回転しながら健側下肢を浴槽に入れ、次いで健側上肢で患側下肢を持ち上げながら浴槽内に入れる

●浴室の縁やバスボードを使う場合

・浴槽のある正面の壁にL字型の手すりを取り付け、バスボードを置く側の壁には手すりなどを設置しない

・バスボードに座り、本人の後方(浴槽正面)の手すりに掴まって健側下肢を浴槽内に入れる

※これらの方法であれば、患側下肢を持ち上げて浴槽内に入れるだけで済むことが多く、『力』の介助を要ることはない

※浴槽内に座り坂、浴槽外に浴槽と同じ高さの台を設けることによって、安全な出入りが可能となる

※手すりや浴槽の縁を利用し、滑り込まないように注意して湯に浸かる

※湯の中では身体が浮きやすく不安定になるので、体を固定する

 

4.生活関連動作 Instrumental active of daily living(IADL)

・IADLはAPDL(active parallel of daily living)に相当すると考えられる

・ADLを身の周り動作という基本的動作に限定したことにより生じた、それ以外の応用動作である.また、ADLスケールのみでは自立生活可能を意味しない

・IADLは 「 個人としての生活 」 と 「 社会人としての生活 」 の中間に位置し、手段・項目も多種多様に列挙され社会的習慣などによっても影響を受ける

 

【IADLを評価に加えることによる利点】

①早期に簡便で客観的な治療計画の評価に利用(ケースワーク、訓練や指導の補助資料)

②施設入所やサービス計画の資料

③追跡調査における生命的予後に関して重大要因である

【IADL訓練にあたっての指導】

①人的援助及び環境の整備や活動補助機器の利用を考慮

②危険予測の習得

③器具や機器の利用については使えるか理解力のチェックが必要

 

1)近隣への外出

外出の分類

①社会的外出(通勤・通学etc)

②心理的・身体的外出(心身のリフレッシュ)

③ADL的外出(買い物etc)

脳血管障害などの高齢者

・年齢的要素が外出を妨げる一因で、障害に拍車がかかりがちになる

・日中、引きこもっているため、気分が滅入る

屋外の道路状況

・凸凹が多く、溝・坂道・未舗装の道路がある

・自転車、自動車、人混みなどの障害

・信号に従う必要性があり、自分のペースで歩けない

・路肩が中央より低いため、片麻痺患者の車椅子操作で麻痺側が低い場合に舵取りが大変

・雨で路面が濡れていたりする

・電柱脇は車椅子が通れる幅がない

・休憩が取りにくい

※ 不安感・緊張感・恐怖感を受け、それらの心理的影響により痙性UP

訓 練

・屋内、平地の歩行を十分体得し、屋外歩行のシミュレーションを行う

・麻痺側が道路側の場合、非麻痺側に比べ恐怖感が増強する

・屋内歩行は問題無いが屋外では凸凹の為、杖を持っていく(外出先での杖の忘れ物に注意を促す.杖を渡す時に名前の記入とストラップをつける)

 

2)調理

・姿勢、バランスの保持、手の機能(力の巧緻性)が必要

・耐久性が必要

・理解力と判断処理などの認知・知的機能も重要

・真っ直ぐなキッチンの生活動線は長くなり非効率的であるが、L字型・アイランド型キッチンの生活動線は三角形になり短くなる

訓練

・利き手が麻痺側の場合 ―→ 評価し必要に応じて利き手交換を行う

自助具の使用

①水道・ガス栓の操作

・レバー式蛇口、ワンタッチ式ガスコンロ

②まな板の上で切る動作

・まな板の上に釘(錆びない素材)の先端が出ているものを使用(釘を下から打ち先端を出す)

③ボウル・鍋の中のものを混ぜる

・滑り止めマットを使用(濡らした布巾でも代用可)、木枠を作る

④ビン蓋の開閉、栓抜き

⑤食器洗い

・乾燥機付き食器洗い機の普及

・自分で拭く場合は、袋状のタオルで拭く(割れる恐れあり)、実際は自然乾燥

3)整理・整頓・洗濯

・上肢の力、移動距離、リーチ範囲、耐久性、持久力も要求される(調理動作よりも要求される)

・掃除機のスイッチ操作には、若干の巧緻動作が必要

・ハードな家事項目である

【掃除】掃除機の普及、リース方式の雑布

【縫い物】現在では必要性は低い

【整理・整頓】戸棚などの構造、数などにも左右される

・開き戸より引き戸を選択することで、立ち位置の移動がなくても大丈夫

・引き出しは深く、幅が狭く、容易に作動できる(ローラー付)ものが良く、片麻痺なので両手を使用する幅の広い引き出しは困難

【洗濯】洗濯機の設置場所の段差解消を工夫し、車椅子使用者は洗濯機を埋め込み高さ調整(550~650 mm出す)

全自動洗濯機や乾燥機を利用し、干す場合は、干し場や干す器具の工夫(スロープ、手摺りなど)

※ 干す動作には肩の運動能力が必要(肩を挙上させ、それを目で追うのは難しい)

 

4)交通機関の乗り降り

・遠出の場合は、障害者対応車両が少なく、事前の情報収集と計画が必要

・安定した立位、一定の歩行スピードがなければ困難

<チェックと指導のポイント>

①介護を受ける対象者の状況判断

②社会のルールの把握状況

③基本的マナーの理解度  など

 

バス

・昇降は二足一段法

・降段の際バスステップの高さによっては後向きに降車

・車椅子使用者患者の場合、社内の座席に坐るようにすることで安全性が増す

電車

・複雑なプロセスを呈す

・危険を伴うのでエレベーターの使用を勧める

・電車とプラットホームの隙間に注意が必要

<チェック事項>

・人の流れに乗った金銭、切符の出し入れ

・車両の乗降

・荷物を運搬しての利用

・雨天時の利用

【車椅子患者の場合】

・利用する駅に事前に連絡することで、駅員の協力が得られることがある

・電車の乗降は患者一人では困難なため、介助者や周囲の人に協力を求める

・乗車時に車両とホームの間で脱輪しないように注意

・乗車後は電車と車椅子を直角になるように停める.また、ドアの近くが適当である(移動距離少なく、手摺り・柱があるため)

・車椅子に乗車したまま乗降できない場合は患者を抱き上げ車内の座席に坐らせる

タクシー

・昇降はドアや車両の支持できる箇所を利用して行う

・的確な指示が出せるかどうかを確認

【移乗ができない車椅子患者の場合】

・介助者が患者を抱き上げて車シートや車椅子に坐らせる

・乗降車とも頭や足を車体などに当てないように気をつける

 

5)言語

・失語症、構音障害などの言語障害についての知識を持っていることが必要であり、家族は痴呆と誤解することがあるため(最近無視するようになったなど)、言語聴覚士から指導を受ける

・各部所との連携を計り、チームアプローチを行う

・発語が困難な場合は自助具なども利用する

(ボードを指さしての会話、キー入力で音声を出力しての会話)

 

6)社会活動

・人の目を気にすることで精神的刺激作用を図る

 

社会活動に参加 ⇒ 健康や機能を維持する上で重要な条件(障害等で社会との接触が乏しい)

外出する機会を設ける ⇒ デイサービスの利用

・同年代とのコミュニケーション(話が合う)

・施設や制度などの情報の入手が必要(特に近隣の施設)

 

7)まとめ

【留意点】

・脳卒中は身体の障害に加えて精神・心理的障害を伴っており、それがADLを左右する因子となる

・高齢者は適応能力が乏しいことを配慮したプログラム立案

●前回の訓練で出来ていた事でも、次回の訓練では少し難易度は戻って行う

●住宅の急な改造を行うことは不安が増大する

・実生活場面を想定した継続可能な方法で具体的・実践的なホームプログラムを立案

 

【効果(ADL訓練を段階的に行うことで得られる効果)】

①人間的生活の獲得

②安全かつ効率性の高い動作の獲得

③自立精神の獲得、及びQOLと役割の復活

④活動範囲の拡大(閉じこもりからの離脱)

⑤機能維持と応用性の獲得

(゜-゜)参考文献

医療学習レポート.脳卒中片麻痺患者とADL


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