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(´・_・`)進行性筋ジストロフィーとADLの話


(´;ω;`)題名:進行性筋ジストロフィーとADLの話

Ⅰ.はじめに

進行性筋ジストロフィーとは、「骨格筋の変性、壊死を主病変とし、臨床的には進行性の筋力低下と筋萎縮を示す遺伝性の疾患である」と定義される。

したがって遺伝子異常に基づく何らかの病的過程が筋細胞変性壊死を生じさせると考えられるが、その本体については今なお不明であり、治療法も確立されていない。

筋ジストロフィーの病型別の頻度はおおよそDuchenne型 60%、肢帯型 30%、顔面肩甲上腕型 10%でとなっている。

一般に筋萎縮性疾患と呼ばれるものの中には数多くの病名や病型が含まれる。

疾患の原因が筋肉組織にある筋原性のものが筋ジストロフィー症であり、神経原性のものが筋萎縮症である。

筋ジストロフィー症は遺伝形式によって分類され、さらに特徴のある病態・経過によって細分類される。

 

●病型と遺伝形式

遺伝形式

病型

性染色体劣性遺伝 ①Duchenne型筋ジストロフィー症②Becker型筋ジストロフィー症
常染色体劣性遺伝 ③肢帯型筋ジストロフィー症④遠位型筋ジストロフィー症(三好型)

⑤先天性筋ジストロフィー症(福山型)

常染色体優性遺伝 ⑥顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー症⑦筋緊張性ジストロフィー症

 

●筋ジストロフィー症各病型別の症状と経過

病型

症状および経過

①Duchenne型 4~5歳で動揺性跛行を認め,8~15歳で歩行不能となる.障害の進行は急速で20歳前後で呼吸不全症状を生じる.
②Becker型 仮性肥大や中枢筋の筋力低下はDuchenne型に似ているが発症が少・青年期と遅く,進行は緩徐である.30歳後まで歩行可能である.
③肢帯型 肩甲帯および骨盤帯筋の筋力低下が著明で,動揺性跛行やものを挙上することが困難である.発症も遅く,進行も極めてゆっくりしていて高齢になってもADLが自立している症例も多い.
④遠位型(三好型) 15~40歳まで20歳代に発症することが多い.腓腹筋,筋力低下による歩行障害,つま先歩行困難,階段昇降困難などの初期症状を呈する.進行は比較的早く,筋萎縮は四肢の遠位のみならず大腿,腰部にも及ぶ.
⑤先天型(福山型) 生下時より全身の筋力低下が著明で,いわゆるfloppy infantを示す.首が長期にわたり安定せず,坐位姿勢の保持も困難である.立位保持歩行が可能な症例は少ない.知能障害を合併することが多い.
⑥顔面肩甲上腕型 10歳前後より顔面,肩甲帯,上腕に筋力低下が認められ,翼状肩甲を認める.顔面の筋力低下の為口笛が吹けない,風船がふくらませない,目をしっかり閉じられないなどの症状がある.進行は極緩徐である.
⑦筋緊張性 20歳前後より症状が顕著となる.ものを強く握ると急に手を開くことができないgrip myotoniaがみられる.若禿,白内障,精巣萎縮,心筋伝導障害,脊柱異常骨化,発声異常などの合併症を認める.

Ⅱ.Duchenne型筋ジストロフィー症(DMD:Duchenne muscular dystrophy)

筋疾患の代表的存在でもあるDMDは、仮性肥大、男子、登攀性起立の3主徴を示す疾患であり、PMDの中の重症型で最も頻度が高い(13~33/100000男児)。

遺伝学的には性染色体劣性遺伝形式で男児のみに発症するが、突然変異が多く1/3を占める。

残りの2/3はDMD疾患の遺伝子をもつヘテロ接合体の母親が保因者となっている。

その内の1/2は母親の遺伝子に突然変異が生じたもので、残りの1/2は異常遺伝子を母親が受け継いだものであるとされている。

極稀に,ターナー症候群の女児やX染色体と常染色体の転座のある女児にも発症することがある。

遺伝子レベルでの解明が進み、X染色体の短腕Xp21上のジストロフィン蛋白遺伝子の異常が原因であると、1985年に米国のKunkelらによって報告されたが、根本的な治療方針は確立されていない。

ジストロフィン蛋白遺伝子の完全欠損ではDuchenne型となり、不完全欠損ではBecker型の筋ジストロフィ症が生じる。

DMDの筋病理所見は筋線維の破壊による壊死と再生であり、壊死に陥った筋線維の多くは再生するが、壊死の進展が再生のスピードに勝るために筋線維は徐々に消失し、消失した筋線維は結合組織や脂肪組織に置換される。

筋線維は組織学的にtypeⅠ線維(白筋)とtypeⅡ線維(赤筋)に分類されるが、DMDにおける筋線維の壊死・変性では両方が障害される。

 

Ⅲ.臨床症状

運動発達(頸定、起き上がり、立ち上がり、歩行など)の遅延で発症するが、出生後1年以内は異常に気付くことは少ない。

歩行開始は遅延するが大多数は1年6ヶ月頃までには歩行可能となる。

歩行開始後に走行が出来ない、ジャンプが出来ない、転倒しやすいなどの症状が出現してくる。

下腿三頭筋の仮性肥大は2歳頃から認められる。

幼年期は運動発達が病勢の進展に勝る為、運動能力の向上がみられ一時的に症状も軽くなったようにみられるが、6歳頃を頂点として低下に転じる。

床から立ち上がる際に両大腿部に手をつく登攀性起立(Gowers徴候)や、両足を広げて腰椎前彎を伴った尖足立位をとり、腕を振るようにして歩く動揺性歩行(waddling gait)を示す。

階段の昇降は手すり使用なしで可能であったものが、片手、両手で手すりにつかまるようになり、ついには昇降が不能となる。

また床や椅子からの立ち上がりも出来なくなり、平均して10歳前後で歩行不能となり、車いすでの生活となる。

車いす生活に移行すると、運動量の急激な減少のために肥満が出現したり、傍脊柱筋群の筋力低下のため脊柱側彎が急速に進行する症例が多く見られる。

上肢の筋力低下は下肢に比べて遅れるため、歩行が不可能となった直後は四つ這いやずり這いは可能な場合が多いが、これらも次第に不可能となる。

さらに進行すれば車いす操作や自力坐位保持も不可能となり、最終的には臥床生活となる。

死亡時期は呼吸管理が導入される以前では平均20歳であり、感染症、呼吸不全が主な死因であったが、感染症治療や人工呼吸器の積極的な導入による呼吸管理技術の進歩によって著明な延命が見られるようになった。

近年では40歳前後まで生存する患者も珍しくなく、死因に占める心不全の割合が増加しつつある。

 

●厚生省障害度分類

障害の進み方

ステージ     内容 主な過程    年齢
1   階段昇降可能 処女歩行    17~18ヶ月
2   階段昇降可能,手すり要 動揺性歩行   3~4歳
3   椅子からの立ち上がり可能 階段昇降不能  8歳
4   歩行可能
5   起立歩行不能,四つ這い可能 歩行不能    9~11歳
6   四つ這い不能,いざり可能 装具歩行不能  13歳
7   いざり可能,坐位保持可能
8   坐位保持不能,臥床状態 坐位保持不能  15歳

 

 

 

 

 

Ⅳ.DMDにおける障害の進み方

1.筋障害、筋症状

DMDではtypeⅠ、typeⅡの両方が筋原性筋萎縮を生じ、これにより筋線維の破壊と結合組織、脂肪組織への置換が起こり、結果として筋力低下が起こる。

筋障害は一定の順序で進み、拘縮・変形とともに運動機能の喪失をもたらす。

筋力減弱には左右差があり、また一般に伸筋群の方が屈筋群よりも減弱程度が大きい。

当初、高値を示す血清CK値(CPK値)は歩行不能となる10歳ごろに低下し、以後ADLの低下と並行して推移する。

運動負荷量に応じて増減し、訓練量や強度を決定する為の指標として有用である。

頸屈筋、肩伸展筋、股伸展筋、大腿内転筋などは早期から筋力低下が進むが、四肢末梢側の筋群は初期では障害が軽く、後脛骨筋や手指固有筋などは長く温存される。

また、筋ジストロフィ症では一般に筋痛は無いとされるがDMDでは長く歩いた後に、腓腹筋の疼痛を訴えることがある。

上に示した脂肪組織や結合組織への置換、すなわち仮性肥大は筋は肥大して見えるが実際の筋力は減弱、低下していることであり、腓腹筋に見られるばかりでなく、症例によっては咬筋、腹筋、舌筋などにも見られ、車いす生活の初期の頃には前鋸筋などにもみられることある。

 

2.関節拘縮、変形

拘縮、変形の発現には筋力不均衡、重力の影響、姿勢、筋の過使用・不使用、習慣、痛みなどが関係し、その進展には一定の順序があり、ハムストリングス→大腿筋膜張筋→腓腹筋→足内反筋→頸部伸筋の順に短縮がみられる。

上肢の拘縮は障害度Ⅴ以降にみられ、肩屈曲制限・内転拘縮、肘屈曲拘縮、前腕回内拘縮、手指のスワンネック変形が多い。

脊柱変形はADLの低下、呼吸障害の増悪、局所の圧迫、介護度の増加などをもたらし、生活全般に大きな影響を与える。

歩行能力喪失後、車いす生活となる頃から変形の増悪がみられる。

 

※変形の進展

初期には通常、筋緊張が低下し、各関節の可動域は過度におよび、立位で足部は扁平外反足となる。

筋の萎縮、変性の進展とともに、筋力の減弱に筋・筋膜・腱などの退縮、重力、生活習慣などが加わり、四肢、体幹に種々の拘縮、変形がみられるようになる。

 

1) 下肢変形

①早期より足関節に尖足拘縮がみられ、stageⅣ~Ⅴに至ると内反拘縮が加わり、歩行が不能となると固定的な尖内反拘縮へと進展する。

②膝関節では早期より屈曲拘縮がみられ、歩行が困難、さらに不能になるに従い、急速にその程度を増す。Stageの進行に伴い、可動域は低下する。

③股関節では早期より屈曲拘縮がみられ、足・膝関節と同様に歩行が困難、さらに不能になるに従い、急速に拘縮の程度を増し、外転・外旋拘縮が加わる。Stageの進行に伴い可動域は低下し、歩行が不能になると、背臥位で下肢を矢状面で保持する為には介助を要する程である。

 

2)上肢変形

(1)肩甲帯筋、肩関節伸展筋、内旋筋とともに肩関節屈曲筋などがまず減弱する。可動域については伸筋は制限されるが、屈曲はstageⅤでも制限されない場合が多い。このような筋力の減弱によって肩関節は不安定となり、上肢挙上は困難となり、体幹筋を代償させて上肢を後方にあげ、反動を利用して挙上する仕草がみられる。可動域は漸次、屈曲・伸展ともに制限され、内転制限が加わり、拘縮様となる場合が多い。

(2)肘関節では初期には屈曲・伸展域がともに過度におよぶが、stageの進展に従って制限され拘縮様(特に屈曲拘縮様)となる。しかし過伸展がstageⅤ、Ⅵにおいてもみられる場合が少なくない。

(3)前腕では初期には回内、回外がともに過度に及ぶが、stageの進展に従い両者ともに特に回外が制限され回内拘縮様となるものが多い。逆に回内の制限が強く回外拘縮様となる場合もある。

(4)手関節では初期には掌屈、背屈がともに過度におよぶ。Stageの進展に従い掌屈は制限されるが、背屈はなお過度にわたり、拘縮様となり過背屈(過伸展)の状態を示す場合が多い。

(5)手指ではstageⅢ当たりの早期より、伸展時に母指、手指に種々の変形がみられるようになり、stageの伸展に従って多様な拘縮、変形がみられるようになる。

 

3)体幹変形

体幹の変形は後弯、前弯の形で発現する。歩行可能なstageですでにその徴候が認められ、歩行が困難、不能になるに従って明らかとなる。以後、側弯度が10°~20°にとどまり増悪の様相を示さないものと(多くは前側弯)、著明な後側弯に進展するものとに大別される。増悪する後側弯では著明な骨盤傾斜を伴い、構築性となりcollaps spineがみられるようになる。当初、カーブパターンは胸椎カーブを示すが、増悪とともに胸腰椎Cカーブパターンに移行する。なお、非進行群では胸椎カーブを示すものが多い。

このような側弯脊柱変形は胸部の変形を惹起し、心肺機能障害を倍化させる。側弯度が40°以上に及ぶと%肺活量は50%以下となり著明な低酸素血症をもたらし、予後に重大な影響を与える。変形、拘縮については筋の萎縮・変性の進展に伴う筋力の弱化(特に拮抗筋相互間における減弱のimbalance)、筋・筋膜・腱などの退縮、筋の不使用・過度使用、重力、習慣化した肢位などが相互に関係し発現するものと言える。

 

3.呼吸・心機能障害

DMDでは呼吸筋力の低下による拘束性換気障害を起こし、肺機能低下はADLの持久力低下、易疲労性をきたし、摂食動作にも影響をおよぼす。肺機能は一般的に14~15歳ごろまで増加傾向にあるが、以後は著明に低下して肺胞性低換気の慢性呼吸不全に移行する。死因の80%は呼吸不全のため肺機能の推移は重要であり、%肺活量(%VC)が最も良い指標となる。17歳頃になると%VCは50%以下になってきて、さらに進行するとPaO2、CO2、特に夜間睡眠時のSaO2などの値が重要な指標となる。血液ガス所見によって呼吸不全は判定されるが、側彎、胸郭変形などは肺機能の低下をより強くする。側彎の強い者は側彎のない者より平均して2年の短命となる。

心機能も病理学的に左室後壁の線維化が特徴で、心収縮力、拍出量の低下など心予備力が問題となる。14~15歳頃から問題となるので、心電図、心機図、心エコー図、胸部X線(CTR値)などの検査を定期的に実施し、リスク管理に努める必要がある。

 

Ⅴ.注意すべき合併症

1.呼吸不全

生命的予後を左右する重要な合併症。呼吸筋の筋力低下や脊柱や胸郭の変形、栄養状態の悪化によりその症状は徐々に増悪してくる。初期症状としては早期の頭痛、目覚めの悪さ、倦怠感、顔色不良、入浴後易疲労感、さらに進むと冷汗、頻脈、下顎呼吸、鼻翼呼吸、排痰困難、粘性気管分泌物の増加、摂食動作困難、ナルコーシスなどの症状が出現してくる。著名な呼吸不全の症状が持続的に認められるころになると、人工呼吸の手段を考慮する必要が生じてくる。

 

2.急性胃拡張症

原因は明確ではないが合併症として頻発するもの。症状としては腹部が膨満してきて、少量ずつの嘔吐をみる、急性胃拡張はやせ型で脊柱変形の著しい症例に多いことが認められている。

 

3.便秘などの消化器症状

腹筋力の低下や腸管運動の低下、水分摂取不足、排便習慣不良などにより便秘傾向を生じやすい。また症例によっては腹部の冷えや精神的ストレスによって下痢を繰り返す場合もみられる。

その他の消化器症状として巨舌を合併していることで、嚥下困難を生じたり、鼓腸や便秘などで腹痛を訴えることもある。各種の原因で栄養摂取・吸収不良となると貧血なども合併してくる。

 

4.心不全

第2の死亡原因となり得るもの。DMDにおいては心筋にも変性が生じ、一般にその変性は左室後側壁より生じると言われている。症状としては体動時の胸の苦しさ、心悸亢進、唾液分泌の亢進、泡沫状の痰排出、頻脈、チアノーゼ、浮腫、尿量減少が生じX線写真により心肥大を認める。

呼吸不全・心不全においては風邪症候群の発熱、咳、喀痰増加がそれぞれ憎悪因子になるので注意を要する。また、体力が低下している時には肺炎まで進行しやすく合わせて心不全の急性増悪状態になることがある。

 

5)関節捻挫、骨折

下肢筋力低下、内反尖足変形、股・膝関節の伸展制限などにより歩行は不安定となり、易転倒性を示す。その際、足関節の捻挫や大腿または下腿骨や上腕・前腕骨の骨折をしばしば生じる。骨折が生じるとしばらく安静保持が必要となり、この安静により歩行能力を喪失することがしばしばみられる。

 

6)肥満とるい瘻

患児の肥満発生頻度は健常児に比較して高率(約30%)である。一般に歩行不能に陥る11~12歳ころより肥満が増加する。生命的予後は軽度の肥満傾向の方がよいと言われているが高度の肥満は歩行・四つ這い移動能力の低下・側彎増強やその他の障害の進行を早める原因となる。

呼吸不全の症状が生じる程度まで疾患が進行すると摂食不良になり、るい瘻が生じる。るい瘻が重度になると心肺機能も低下し、また蛋白質栄養状態が不良になると感染症に対する抵抗力も低下し、さらに体位変換が困難になると褥瘡を合併することもある。

(´Д`)参考文献

医療学習レポート.進行性筋ジストロフィーとADL


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