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( ´_ゝ`)新生児と発達の話


( 一一)題名:新生児と発達の話

早期治療を実施していく資質の向上の為に考慮しておかなければならない点の一つとて、養育者が新生児に与えた特定の介入の結果を、新生児が養育者にどのように意思疎通しているのかを識別す能力があげられる。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、新生児、特に未熟児が子宮外環境と相互作用する方法をする為に「新生児行動機構の共生発達理論」を提唱した。

これによると、新生児は五つの行動下部機構を通して環境と相互作用していると提唱している。

五つの行動下部機構とは、「生理性(自立性)」、「運動」、「覚醒状態」、「注意」、「自己調整」であり、それらは順次各々が相互に関係し、共生的に発達している。

生理的あるいは自律的下部機構により、乳児は自律神経系機能の制御が可能となる。

乳児は運動下部機構により、運動活動、筋緊張、姿勢の制御を行う。

覚醒状態下部機構により乳児は、「深い眠り」から「泣く」までの様々な段階の意識(覚醒状態)を経験でき、さらに一つの覚醒状態から他の覚醒状態へ滑らかに変化させる事ができる。

注意的下部機構により乳児は、外環境からの刺激に対して敏活で、注目し、反応する事が可能となる。

自己調節下部機構により乳児は、他の下部機構を制御(維持)し、調整する事が可能となり、その結果、ストレスに満ちた、あるいは混乱した状況にさらされた自分を鎮めることができるようになる。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らによれば、この下部機構は、階層的パターンで発達する。

生理的(自律的)下部機構は最も未熟で、最初に機能的となり、全機構の安定のための基盤もしくは核と考えられている。

それぞれの下部機構は、発達において互いに相互作用している。

新生児は階層的に高い段階の下部機構における行動を組織化させる為に、より低い段階の下部機構が安定しなければならない。

新生児は適切な運動制御を達成する前に、生理的下部機構を安定させなければならない。

行動覚醒状態の調整を可能にする為には、生理的下部機構と同様に、運動下部機構と同様に、運動下部機構を安定させなければならない。

同様に、相互作業能力を得る為に、行動覚醒状態、運動、生理的下部機構の全てにおいて安定性を持たなければならない。

最適な自己調整は、他の全ての下部機構において適度な安定がある時にしか起こらない。

健康な満期産児が環境との間で協調的で、滑らかで、調和が取れ、ストレスがほとんどない状態で相互作用できるのは、この行動機構複合体が成熟し、統合している結果である。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、この過程を「神経行動機構」と呼んだ。

満期前に生まれた新生児は、しばしば下部機構の一部分(または全体)に成熟と安定を欠いており、この神経行動機構を環境と適度に相互作用させる事ができない。

下部機構の安定と制御を欠いた新生児がその下部機構での反応を要求されると、直下の下部機構に不安定徴候が現れやすくなる。

もし新生児が「不安定性」の初期徴候にもかかわらず、反応を要求され続けると、不安定性は機構の階層的発達の逆の順序で増悪しやすくなる。

これが起こると、新生児は最も低い段階である生理的不安定状態に達する危険が起こり、結果として新生児の健康や生命までも脅かすかもしれない。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、様々な下部機構の安定段階に影響が生じていることを示唆する新生児の一連の典型的行動を述べている。

このような行動は、介入に対する乳児の反応を何らかの徴候を監視することによって評価しようとする介護者に手がかりを与える。

ストレスに対する乳児の反応が常に監視され、そして介入が乳児の行動能力に沿って計画される場合、有害な段階まで新生児に過剰なストレスがかけられる確立が最小限となる。

以下に、未熟児やハイリスク児の典型的な自己調節行動やストレス反応についてのべる。

 

Ⅰ.感覚刺激に対する反応

1.乳児の個性、手がかり、養育への影響

感覚刺激入力刺激にさらされている乳児が示す行動は、刺激の受け入れ方によって異なってくる。

新生児が感覚刺激にさらされると、三つの現象のうちいずれか一つが起こる。

まず乳児が刺激に対して非ストレス状態であると判断すると、行動下部機構の安定性に影響を与えることなく適切に刺激に反応する。

二番目の可能性としては、乳児は刺激にさらされるとストレスを経験するが、ストレスを経験するが、ストレスの影響を減らし下部機構の安定性を保持しながら行動を組み立てる事ができるのである。

三番目の可能性としては、ストレスの影響に打ち勝つ事ができなくなるほどの刺激が乳児に重圧を与えることである。

この場合、神経行動機構の安定性が危険にさらされる。

この刺激のストレスに対する三つの可能性に応じて、乳児は次の三つの行動様式を示す。

①自己調節に向かう合図

②自己調節に対処する合図

③ストレス(または回避)反応

二つの自己調節は、乳児が刺激に耐え、機構を維持できていることを示しているが、「耐処徴候」は刺激が多少乳児の神経行動機構にストレスを与えていることを介護者に知らせる手がかりになっている。

後者において、刺激によって引き起こされるストレスの程度によって、乳児が神経行動機構の恒常性を維持するためには適応反応が必要であり、より一層の感覚刺激にさらされることは、乳児の耐久性の限界を超すことになる。

「ストレス反応」は、刺激が乳児のストレスへの耐久性の限界を超え、神経行動機構が不安定状態に突入したことを表している。

もし介護者の適切な介入が神経行動機構の再安定の為に与えられなければ、ストレスの増加に伴い、乳児の自己調節能力は減少する。

もし「一時中断」の合図が表れるなら、乳児が過刺激の徴候を発しているとみなされる。

介護者による刺激を「打ち破る」形式(coping)の介入によって、神経行動機構は再構築する事ができる。

介護者の介入が行われず、ストレスが続けば、ストレス耐久性段階の限界を超え、乳児はストレス反応を示し始める。

乳児は最初に、相互作用的あるいは注意的下部機構のストレス反応を見せる。

これは、行動覚醒状態や運動、最終的に生理的行動下部機構のストレス反応や不安定へと進行する。

自己調節に向かう合図は、乳児が制御を維持しており、機構が十分働いていることを示している。

乳児が介護者の相互作用を受け入れていくような行動を示すため、「向かう」という用語が用いられた。

典型的な自己調節に向かう合図は以下のものがある。

①微笑んだり口をもぐもぐさせる

②驚いた表情(「OOH」)

③クックッとのどを鳴らして喜ぶ

④四肢のくつろいだ状態

⑤最小限の運動活動、滑らかな身体運動

⑥覚醒

⑦穏やかでくつろいだ顔の表情

自己調節に対処する合図は、乳児のストレス耐久性が最大段階に到達しているという警告信号として解釈されなければならない。

この時点での乳児は、ストレスの結果として起こる不安定性を補うために、自己構築能力をまだ持ち合わせている。

自己調節行動の出現はどのような状況でも起こっている。

一般的には、乳児は自己調節行動の遂行の為に、より安定した下部機構の援助を受けなければならない。

しかしこの過程が長引くと、ストレスが長くさらされた場合と同様に、下部機構が不安定となり、乳児はもはや代償させる事ができなくなり、結果ストレス反応が出現してしまう。

したがって、対処する形式の自己調節行動は、乳児がまだ制御された状態にあることを暗示しているけれども、乳児の自己制限の限界を超えないように監視しておかなければならない。

この自己調節に対処する合図の典型例は次のような物である。

①下肢を突っ張る

②手を顔へもっていく

③吸啜

④手や足を握りしめる

⑤把握

⑥強く拳を握りしめる

⑦屈筋パターンを示す

⑧ベッドに沿って身体を突っ張る(境界を探索する)

⑨下位の行動覚醒状態へ移行する(うとうとした状態や浅い眠り)

未熟児やハイリスク児、医学的合併症を持つ乳児はストレス耐久能力が欠如しているので、ストレス反応を示す行動様式が優位となっている。

ストレス反応とは、感覚刺激の重圧が乳児の代償能力を超えているということを意味している。

未熟性や神経行動機構の混乱の結果、あるいは過剰な刺激の結果として、ストレス反応は起こる。

乳児が示すストレス徴候は、どの下部機構がストレスにより影響を受けているかによって異なる。

ストレス反応は影響を受ける下部機構に応じて、明確に、生理的、運動的、行動覚醒状態的、注意/相互作用的階層に分類されている。

ストレス徴候は、一般的に障害程度に呼応して出現する。

最軽度のストレス反応は注意下部機構のものであり、最重度のストレス反応は生理的下部機構に起こる。

後者は、自律神経が不安定となる時に起こる。

影響を受ける下部機構により分類した以下のストレス反応は、虚弱な新生児において共通している。

①注意/相互作用的ストレス徴候

・加えられた感覚刺激入力に対して社会的に相互作用する統合能力の欠如

・社会的相互作用の回避

②行動覚醒状態的ストレス徴候

・注視を嫌う

・注視の固定

・どんよりした眼

・過敏さ

・覚醒の欠如

・散漫な睡眠状態

③運動的ストレス徴候

・宙に浮いたような座位

・敬礼する

・指を斜めに外へ広げる

・身もだえ、もがく

・半狂乱の、無秩序な運動

・体幹の反り返り

・舌突伸

・ポカンと口を開けた表情

・全身の低緊張

④生理的(自立的)ストレス徴候

・あくび

・ゲップ

・しゃっくり

・嘔吐

・つばを吐く

・クシャミ

・皮膚色の変化(蒼白、斑点、潮紅、チアノーゼ)

・生命維持徴候の変化(心拍数、呼吸数、経皮酸素飽和度)

ストレス防止は、虚弱な乳児への治療的介入計画の中核要素としなければならない。

乳児が示す手がかりを認知し、効果的に反応できるような資質は、虚弱な新生児を対象として働く療育専門家にとっては必須の基本条件である。

 

2.乳児のストレス調整と行動制御の援助

近年の研究では、感覚刺激の過負荷や神経行動機構へのストレスを防ぐために厳重に監視された未熟児が、「Bayly精神発達および心理運動発達指数」や標準化された神経心理学的検査において高い得点を示し、少なくとも生後36ヶ月までの発達において良好な結果を示すことが示唆されている。

このような乳児は、探索遊びにおいて行動機構の改善もみせ、また人工換気装置、酸素吸入、経管栄養から早期に離脱する。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、出生直後から系統的な行動観察と個別養育計画を行った二十人の未熟児と、新生児集中治療管理室における通常の看護を受けた対照群とを比較する研究を行った。治療群(実験群)は、脳室内出血と慢性肺疾患の発生率が低く、入院期間が短く、低費用であり、生後二週と九ヶ月での発達結果が良好であった。この実験群と対照群には、脳内の電気生理学的活動の形式にも違いがあった。この結果は、刺激に対する反応に従って養育を受けた乳児が、通常の看護を受けた乳児より早く集中治療管理期間を乗り越え、なおかつ非常に良好な予後をみせていることを示唆している。

Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、「新生児個別発達的養育および評価計画」(NIDCAP)を開発させてきた。これは、神経行動機構やストレスに対する反応を基礎としてハイリスク新生児への介入を個別化するために、観察技能を高めさせることに焦点を当てている。欧米では個別的養育の有益さが認められてきて、多くの新生児療法士がNIDCAPの研修資格をもちつつある。様々な施設でNIDCAPの研修会が実施されている。

新生児療法士は、乳児の発達予後を促進するために、個別的発達援助養育の基本的概念を熟知しなければならない。これは、自己調節行動(接近や対処)のような乳児の手がかりや合図、またストレス反応の識別や乳児の合図に対して反応する介護者の適切な介入などが含まれている。

虚弱な乳児のストレスを調節し、行動を制御させる援助を実現させるために、介護者は接近行動の発達を促進し、ストレス(回避)反応を防止しなければならない。後者のためには、刺激入力を一時中断する休息時間を与えることで最善の結果がえられ、乳児が神経行動機構の恒常性を再獲得させ、自己調節行動を再び獲得するために必要な安定性を回復させるようにする。

 

 

Ⅱ.神経運動発達

1.反射発達

反射の発達は、子宮内において原始反射の出現として始まる。大部分の正常乳児は、出生時に全ての原始反射が出現している。しかし、未熟児は神経系が未熟であるので、いくつかの原始反射が出現しないことが多い。

原始反射の出現時期に関するする文献には、いくつかの相違点がある。反射の発達を解明するための多くの研究が未熟児において行われてきた。近年、超音波エコーを用いた反射の胎内発達に関する興味が高まってきている。

早産児の反射および姿勢に関する最も包括的な研究は、Dargassiesによって行われた。Dargassiesは、修正23週の健康な早産児と病弱な総産児の両方を研究した。この研究の批評の大部分は、幾人かの乳児が致命的なほど病弱で、検査後非常に短い時間しか生きていなかったという事実に関する物である。従って、このような乳児の行動は必ずしも健康な早産児や胎児と比較できない。

2. 筋緊張の発達

未熟児の特徴的な運動パターンや姿勢の発達に関して、いくつかの論争が起こっていた。未熟児の典型的な姿勢と、健康な満期産新生児の姿勢が異なることはよく知られている。満期産新生児が、全身を屈曲優位で保持するのに対して、未熟児では満期産児で見られる生理的屈筋筋緊張が欠如しているように見える。

未熟児の年齢が若ければ若いほど、屈筋緊張は低下していくという見方が衆目の一致する所でもあるにもかかわらず、この項目は討議され続けている。Dargassiesが実施した研究では、未熟児が典型的な姿勢をとる傾向があると提言している。反対に、Prechtlは未熟さを除いてはほとんど「完璧に」健康な未熟児に対して非常に厳重な研究を行いDargassiesの所見を確認する事ができなかったとしている。この2つの研究所見の差は、研究した乳児の類型の違いと関連しているように思われる。Prechtlの所見がほとんど「まったく健康な」乳児であるというのが事実であるけれども、Dargassiesの研究に賛同する強力な論拠は、新生児療法士が「まったく健康な」乳児の治療にほとんど携わらないことと、Dargassiesの研究の対象児が恐らく新生児療法士の治療する典型的な未熟児に近いということである。Amiel‐TisonとGrenierは、Dargassiesの研究に基ついて未熟児における筋緊張の発達を分析した。彼らは、受動的筋緊張(乳児が示す受動的姿勢)と能動的筋緊張(評価者の取り扱いに対する乳児の反応)を区別していた。Amiel‐Tisonによれば、在胎28週以前の未熟児は屈筋筋緊張の欠如があり、典型的な弛緩性伸筋姿勢をとる傾向がある。在胎28週から40週の乳児では受動的屈筋筋緊張が尾‐頭方向に向かって発達し始めている。つまり、屈筋緊張は上肢に出現する前に下肢に現れる。彼らは、28週から40週の間で、能動的筋緊張においても同様の尾‐頭方向への発達があると述べている。Ameiel‐TisonとGrenierによれば、未熟児は下肢の立ち直り反応を示し始める。そしてこの伸筋の制御は体幹方向に進み、最後には頭部や頸部へと広がる。このように、未熟児は体幹あるいは頸部の姿勢制御を獲得するよりも早い在胎週数で、下肢への体重負荷が可能となる。Dubowitz夫妻もまた、「早産新生児および満期産新生児の神経学評価」の開発のための研究において同じような尾‐頭方向への発達を見出した。多くの臨床的な証拠によって、特に「それほど健康でない」未熟児に関するこのような所見が確認されている。きわめて病弱な未熟児においては、能動的筋緊張や受動的筋緊張の発達はしばしば遅れるが、一度出現し始めると通常上述の様な尾‐頭方向へ発達をたどる。

これまでの著者により示唆発達の方向性は、既存の認知された概念ではない。他の理論家は、新生児で見られる屈筋筋緊張の増加を、筋緊張そのものの発達的増加というよりも、むしろ長い期間子宮内において屈曲肢位を強いられることから起こる神経学的偏位の結果として説明している。満期産児の生理的屈筋筋緊張の増加は、出生後すぐに乳児が筋紡錘の屈曲への偏向に強いられないで動き始めることにより、消失する。そして、これはAmeiel‐TisonやGrenierが述べているように、筋緊張そのものの発達的減少の結果ではない。この点に関する論争は続ずくであろうが、以下の重要な点は覚えておくべきである。

①       未熟児は筋緊張の減少を経験する。

②       筋緊張は早期産児が修正40週に近ずくにつれて増加する。

③       未熟児は出生後、尾‐頭方向に筋緊張の発達を見せる。

④       子宮内で経験するのとは異なった姿勢環境のため、未熟児が修正週後40週までに発達させる姿勢パターンは、満期産児がみせる姿勢パターンとは異なっている。

⑤       未熟児が満期産児に似た筋緊張を発達させるために、子宮内姿勢に良く似た姿勢に維持して援助しなければならない。

Amiel‐TisonやGrenierによれば、乳児は修正40週後に、(伸筋筋緊張が出現し始めることにより)受動的屈筋筋緊張の減少を経験し始める。そしてこれは、尾‐頭方向の発達よりもむしろ頭‐尾方向へ発達していく。同じ現象が能動的筋緊張の発達にも起こり、最初頭部の制御が発達し、続いて体幹から下肢の制御へと続いていく。

 

3.運動活動の発達

満期産児がみせる運動活動も、未熟児の通常の運動活動とはずいぶん異なっている。の未熟児は満期産児よりもうよく動き、一般的には不活動期間はほんのわずかである。満期産児の運動は、体幹の適切な(大体は高い)筋緊張の枠内で構成されている。これは、満期産児の運動がより調節されており、遠位部の運動を制御するために、必要な体軸の筋緊張が欠如している未熟児より低頻度であることを示している。

一般的に運動活動は、年齢に伴い驚愕や伸張を除いて減少していく(運動活動が年齢に応じて減少していくのは、出生後と同様に子宮内においても起こっている)。未熟児で観察される運動量は、出生後の年齢よりも修正在胎週数と関連している。修正胎在週数34週以前は、下肢の運動が優位である。34週以降、乳児の生活年齢にかかわらず、上肢の運動が基本的に変化しないのに対して、下肢の運動が減少し、顔面の運動が増加する。

未熟児は全睡眠時間の80%以上の間、運動活動を示している。未熟児における運動活動は、行動覚醒状態に関連している。浅い眠りでの運動はより非協調的で限局しているが、浅い眠りでは驚愕や全身的相運性運動が優位となっている。未熟児は全睡眠時間のほとんどを浅い眠りに費やすので、限局した運動が全般的に優位を占めることとなる。

いくつかの議論があるにもかかわらず、未熟児は特定の刺激に対し大変洗練された意図的運動を行うという、一般的に信じられている説がある。未熟児は、最初は知らない刺激に対し、逃避的に反応する。つまり防御反応としてその刺激から離れていく。神経系の成熟に伴い、未熟児は恐れるべき刺激ではないと解釈した後に反応するようになる。このように、より小さい未熟児においては逃避的運動パターンが優勢であるが、大きな早産児や満期産児は接近行動が優位となっている。自己調節行動と呼ばれるこのような運動は、年齢に伴い増加し、乳児の機能的能力、成熟段階、ストレスへの適応能力を反映している。早産児がみせる最も一般的な運動パターンは、手を口へもっていくこと、手を顔に持っていくこと、吸啜、把握、手や足をしっかりと握ること、ベッドに向かって身体を押しつけること、微笑む、口をもぐもぐ動かすことなどである。満期産新生児と健康で週数の大きい安定した未熟児は、週数の小さい病弱な乳児よりも環境との相互作用が有利に行える。

 

4. 哺乳の発達

哺乳は、乳児が子宮内で準備してきたもう一つの機能である。妊娠後期の最後の3ヶ月間に経験する子宮内の空間の制限が、乳児の吸啜や嚥下の能力を高める屈曲パターンの発達を促進する。子宮内の包み込みにより、手を口へもっていく活動が増え、それが乳児に多くの口腔運動反射を経験させ、また実際に拇指を口へ入れ非栄養的吸啜を経験している。同様に、胎児は羊水を嚥下することで子宮内において哺乳の練習を繰り返していいる。

出生時に効率的な吸啜、嚥下ができるために、乳児は成熟した探索、吸啜、嚥下反射、正常な口腔運動筋緊張、強力な頬脂肪体、屈筋筋緊張、呼吸/嚥下の協調性を持ち合わせていなければならない。ほとんどの満期産新生児は、苦もなく出生後すぐに哺乳を始める事ができる。対照的に、未熟児は哺乳において非常に不利な状態である。未熟児は哺乳に必要な屈筋筋緊張を欠き、頬脂肪体が小さく、必要な口腔運動反射が未熟なままである。伸筋群の緊張の亢進と抗重力屈曲活動の欠如により、下顎の開口と後退を助長し、結果として口唇での閉じが不十分で、効率の悪い吸啜となる。未熟児の哺乳の問題は、もし挿管の必要があると、さらに悪化する。挿管中の乳児は、口腔の過敏性と頬部、肩の後退を発達させ、それが哺乳を阻害してしまう。加えて、不規則な呼吸をする乳児は、律動的な吸啜・嚥下の協調性を確立するのが困難である。吸啜、嚥下、呼吸が強調されないと、結果として無呼吸を起こしてしまう。そのうえ、未熟児は哺乳の為の適切な覚醒状態に到達したり、維持するのが困難である事が多い。感覚刺激の過負荷を防ぐために、より下位の行動覚醒状態へ移行することで環境刺激に対して反応しようとする乳児において、この問題は特に重大となる。屈曲パターンの促進、頸部や肩の後退の防止、環境刺激の減少、口腔の過敏性の減少によって、未熟児の哺乳の発達は高められていく。乳児の哺乳の能力を高めるために、適切なポジショニング、環境の調整、口腔運動介助方法を家族に指導しなければならない。

 

Ⅲ. 覚醒と相互作用行動の発達

1.感覚行動

新生児治療の為に学習すべきもう一つの重要な要素は、どのような時が乳児に介助できる最適な行動学習状態であるかを判断することである。この章では新生児の異なる意識状態(神経行動学習状態)について述べ、比較し、様々な介入様式に最適な行動覚醒状態を確認する。新生児の神経行動覚醒状態の分類は少なくとも3つある。Brazeltonの行動覚醒状態の分類が現在最もよく使われており、「深い眠り」、「浅い眠り」、「うとうとした状態」、「静かで覚醒している状態」、「運動を伴う覚醒状態」、「泣く」という6つの行動覚醒状態に定義ずけられている。

乳児は神経系の成熟の結果、神経行動機構を発達させ、意識状態を制御できるようになっていく。適切な神経行動機構をもつ健康な満期産児は全ての行動覚醒状態を示し、混乱なく一つの行動覚醒状態から他の行動覚醒状態へと滑らかに移行する事が可能である。早産児は、成熟の程度によるが、行動覚醒状態の制御に大なり小なりの困難さを持っている。多くの研究者は、早産児が修正在胎週数36週以前では行動覚醒状態の制御を獲得していないということで一致している。乳児が在胎37週以降に覚醒して集中する能力を発達させる。未熟児は満期産児と比較して長い睡眠時間をとり、その眠りの特徴として活発な動きを伴う。また覚醒期間は短く、突発的である。2つの睡眠状態の時間の割合は乳児の成熟につれて変化する。未熟児は、混乱した状態の浅い睡眠が睡眠時間の約80%を費やすのに対して、満期産新生児はそれぞれの睡眠状態を約50%ずつ費やしている。乳児が神経行動機構を獲得するにつれ、浅い睡眠の割合が減り、覚醒の持続期間の増加に変わっていく。

未熟児の行動覚醒状態が、範囲や領域が不明確で、混乱した状態になりやすいことは、よく知られている。ほとんどの文献で、未熟児が36週以前に明確な行動覚醒状態の違いを持っていないことを示唆している。Als(筋萎縮性側索硬化症)らは、未熟児の行動覚醒状態の評価の為にBrazeltonの行動覚醒状態の分類を改正し、開発させた。この行動覚醒状態の分類は、伝統的基準を緩和し、そういった伝統的基準から少し逸脱した「騒々しい」行動覚醒状態や「不明確な」行動覚醒状態を評価できるような方法を確立させた。Als(筋萎縮性側索硬化症)の尺度は、前者のBrazeltonの6つの行動覚醒状態(「B」覚醒状態分類)による十分秩序だった行動覚醒状態の採点が可能となるだけではなく、同時に7つの、不明確で混乱した行動覚醒状態(「A」覚醒状態分類)をも含んでいる。この尺度は「早産未熟児の行動評価(APIB)」の一部を構成している。

新生児の行動覚醒状態の評価は、以下の物を含むべきである。

①       乳児が示せる行動覚醒状態の範囲の識別

②       各々の行動覚醒状態の質、特に覚醒の質

③       行動覚醒状態の変化の頻度

④       乳児が一つの行動覚醒状態から他の行動覚醒状態へ移る時の円滑さ

⑤       行動覚醒状態間の移行の際の乳児の生理的労力

⑥       乳児が経験するイライラ(混乱)の程度

 

2.治療介入に最適な行動覚醒状態

新生児治療を行う際に、静かで目覚めている状態が最適な行動覚醒状態である。この行動覚醒状態で、乳児は最高の相互作用/注意能力をみせることができる。活動的な覚醒状態は、たとえ乳児が目覚めても、乳児が自らの運動活動から受け取る固有感覚受容器へのフィードバックの為に、相互作用能力を阻害するので、介入は効果的にならない。運動活動が頻繁に起こるので、介入する目的と競合してしまう。

介入のためには、特に深い眠りから乳児を目覚めさせるのは可能なかぎり避けるべきである。介入は、理想的には哺乳の直前あるいは直後に予定すべきである。これは、より目覚めているときが有益であるのと、乳児の行動覚醒状態パターンの混乱を最小限にする為である。乳児が自発的に目覚めることが困難な時、覚醒状態へ引き上げる様々な方法がある。この方法のいくつかは、場合によっては乳児を混乱させるかもしれない。以下は、乳児を目覚めさせる為の最も一般的な方法である。

①       明かりを薄暗くしたり、遮る。

②       乳児を抱き上げる。

③       ゆっくりとさすったり、軽くたたく。

④       立て抱きにして、乳児に上下(垂直方向)の前庭刺激を用いる。

⑤       抱っこされている乳児を下ろしたり、抱かれていない乳児を抱っこしたりする。

療法士は、乳児にとって混乱が最小限ですむ方法で始め、必要な行動覚醒状態に到達するまで徐々により強い刺激方法を試みていかなければならない。行動覚醒状態を外部から促通することに対する生理的反応は、注意深く監視しておかなければならない。

 

3.相互作用および注意能力

早産児は神経系の成熟とともに社会的相互作用の能力を発達させる。Gorski,DavidsonとBrazeltonは、この過程を「神経社会行動発達」と呼んだ。彼らによれば、未熟児が効果的に社会相互作用をするのに必要な下部機構の安定性を獲得していくのは、3つの発達段階段を通して進んでいくと述べている。その段階は「引きこもり」、「活動開始」そして「相互関係」である。

新生児療法士は、ハイリスク児の治療時に神経社会行動発達の段階に配慮しなければならない。「引きこもり」段階にある乳児との社会的相互作用は、避けるべきである。「活動開始」段階にある乳児は、注意深く計画した社会的相互作用には耐えうることはできるが、もし乳児が環境や養育者に対して能動的に関わろうとする時は、社会的相互作用は自粛しなければならない。最終段階の「相互関係」では、乳児は安定し、適切な量の社会的相互作用に安全に耐えうることができる。

Ⅳ. 生理機能(自律神経機能)の発達

 生理的(自律神経系)組織は最初に機能が完成する組織系の一つである。在胎週数が満期(38週から40週)まで健康な乳児は、母親から独立して生命維持に必要な全ての組織系の働きを完了させている。出生時、健康な満期産児は以下のような機能を自立させることができるようになっていなければならない。

①       年齢相応の代謝機能

②       体温調節機能

③       心臓血管系機能

④       呼吸系機能

⑤       胃腸系機能

⑥       腎臓を含めた排泄機能

ここでは新生児の介入に直接関係する自律神経発達の基本構成要素について述べる。

1. 体温調節

乳児は体温調節を化学機構や代謝機構を通して行う。また同時に身震いという身体反応でも体温調節の状態を示している。この自律神経系機構は在胎36週から38週までに成熟する。

体温調節の欠如は、早産児が

出生時に直面する非常に重大な問題の一つである。未熟児は、寒さに対する代謝反応が未発達であり、身震いによって寒さに反応する能力を持たない。保育器導入以前は、未熟児の新生児期死亡原因は体温調節能力の欠如によるものが第一であった。保育器は、こういった乳児が生きていくために非常に必要な体温調節を援助する役割を果たした。

温度調節援助の範囲は乳児の未熟性の程度に左右される。生後4日間は適切な体温を維持するために次のような温度環境が必要である(おおよその基準)。出生時体重1200g未満の乳児は34~35.5℃、1200~1500gの場合は33~34.5℃、1501~2500gの場合は32.5~34℃である。2500g以上の新生児は肌着を着たり薄い毛布をかけていれば普通の温度環境(28~31℃)で通常問題がない。最初の新生児期

 


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