スポンサード・リンク

(´д`|||)呼吸器疾患と評価の話


( ^)o(^ )題名:呼吸器疾患と評価の話

呼吸器疾患の検査・測定および評価

1.視診 *1 呼吸不全

 

1)姿勢

・円背で肩甲骨は外転、上方回旋していることが多い。

・この姿勢が長期にわたると前胸部の肋問筋や大胸筋、小胸筋が短縮し深吸気運動が制限される。この他脊柱の側彎症や後側彎症も換気障害の原因として重大。

 

2)胸郭変形

・高度の肺気腫では胸郭の前後径が拡大して洋樽変形が見られる。胸郭の換気運動が制限されているばかりでなく吸気筋、特に横隔膜の効率を低下させ不利な力学的条件での仕事を強いられる。

・胸骨が陥没した状態の漏斗胸や突出した状態の鳩胸もみることがある。

 

3)換気運動パターン

①部位の異常

・正常では吸気時に胸部と腹部が同時に拡張する。

・もしも吸気時に横隔膜だけが働くと胸郭の拡張と同時に腹部も突出する。しかし横隔膜が働かずそれ以外の筋だけが働くと、胸郭の拡張につれて胸腔内圧が低下し腹部は内方へ引き込まれる。

=胸部と腹部の換気運動パターンを観察することにより横隔膜の活動状態をある程度推測することができる。

・一般に重度の症例では胸部、特に上胸部の運動が大きく腹部の運動は小さいか、逆に引き込まれることが多い(フーバー徴候)。

・この場合、吸気時に一致して副呼吸筋の強い緊張を伴う。

・病変が左右肺のどちらか一方に偏りがあると換気運動パターンに左右差が生じる。

・このような差は胸郭で観察されることが多いが、一側横隔膜神経麻痺や一側横隔肋骨洞の癒着では腹部でも容易に観察される。

 

②深さと数の異常

・換気の深さと数の異常の組み合わせは右        表.換気量と換気数の異常の組み合わせ

のようである。

VT

換気量

浅呼吸

深呼吸

頻呼吸

徐呼吸

過呼吸

低呼吸

・また睡眠時の異常として睡眠時無呼吸がある。

これは7時間の睡眠中10秒以上の換気停止が30回以出現し、NREM期にも反復するものと定義されることが多い。

・これは種々の疾患でみられ、昼間の傾眠や頭痛、抑うつなどの身体的精神的症状を呈する。

・肺胞低換気性呼吸不全から肺性心へと進行する可能性を持つ.

 

③特殊なパターンをとるもの

・胸部の運動では吸気開始時に内方へ縮小し、次いで拡大する型がもっとも多い。

・小脳疾患を合併する場合は失調性呼吸をみることがある。

・CPや脊損、特に頸損では予備呼気量が無いか、極めて少ない型となる。

・チェーン・ストークス呼吸やビオー呼吸は重篤な症例に起こる。

 

4)チアノーゼ

・毛細管血が外から観察されるところ=口唇,爪,耳たぶなどでよく認めることができ,血中の還元Hb(ヘモグロビン)の量が100m/中に5g以上になると現れる.

・その際は酸素飽和度が75%以下であることが疑われる.

・貧血があるとHbの絶対量が少なくなるので現れにくい.反対に赤血球増多症では還元Hbも増加して現れやすい.

 

5)ばち状指

・爪のつけ根を側方からみると正常では約160°に陥没している.この部分が隆起して180°以上になった状態をばち状指という.

・さらに進行すると指全体が太鼓ばち状に膨らむ.慢性気管支炎,気管支拡張症,肺気腫症,肺癌などの肺疾患の他にうっ血性心不全や肝硬変など他臓器の疾患でも見られる(→課題1参照)

 

6)喘鳴

・気道の狭窄により生じ,喘息の発作時の喘鳴は呼気時に聞こえる.

 

7)その他

・動作や会話中の様子から息切れの程度や咳・痰の有無などの情報を得る.

 

2.問診 *1,3 呼吸不全pp98,ハンドブックpp469

1)呼吸困難(息切れ)

・患者の抱える最大の問題の一つは呼吸困難.

・         呼吸困難とは…呼吸時に感じる不快感であり,

①     換気が増えていることを自覚した時,

②     換気が困難であることを自覚したとき,

③     換気が必要であることを自覚したとき  に起こる.

・機序についてはいくつかの仮説が提唱されているが,呼吸困難を最もよく説明するものとして長さ-張力関係不適合説がある.

・呼吸困難の情報探知装置として吸気筋内の筋紡錘が考えられている.

…呼吸中枢からの刺激はα線維を経て吸気筋に伝えられて収縮が起こる.このとき同時にγ線維を経て筋紡錘の内封筋収縮が起こる.両者の間の肺,胸郭の容量または筋の長さの変化と胸郭内圧,筋張力の間に均衡がとれていれば呼吸困難は起こらない.

ところがなんらかの理由で増大した換気への要求に実際の換気が追いつかない事態が生じ一定の筋の長さの変化より大きな収縮が必要となる.そのとき両者の関係の変化を筋紡錘が探知し,脊髄を介してα線維により吸気筋の収縮を増強しようとする.と同時に筋紡錘からその不均衡の情報が求心刺激として呼吸中枢へ伝達され呼吸困難として知覚されるというもの.

・呼吸困難は多くの場合,異常に気付く最初の徴候.

…普段は異常ないが駅の階段を一気に昇れないといって病院を訪れる例も多い.また重症化につれて身体的のみならず精神的にも深刻な問題となり正常な日常生活を不可能にしてしまう.

=このように重要な症状にも関わらず正確な客観的評価方法はない.

・換気機能その他のいわゆる肺機能検査結果や動脈血ガス分圧値が同程度でもある例では呼吸困難が軽度なのに他の例では重度であったりする.

・また客観的な諸データには変化がなくても呼吸困難が改善することは日常経験するところである.

…問診による主観的な評価方法が今のところもっとも適当てあり,問診に当たってはいつどのような状況でどの程度呼吸困難が起こるのかを具体的に尋ねる.

ただし質問の内容を共通にして比較ができるようにすべきである.

・比較的広く利用されている分類…Hugh-Jonesの分類.

=長所として,日常生活の運動強度を利用した分類の原則は簡便でわかりやすい.

短所は段階づけが大きすぎて少しの変化や個人差の表現が困難なこと.

 

表.Fletcher-Hugh-Jonesの息切れ分類

 

Ⅰ:息切れなし     :健常者と同様

Ⅱ:軽度の息切れ    :平地=健常者同様だが,坂,階段では同様には行かない

Ⅲ:中等度の息切れ   :平地も健常者並みに行かないがマイペースなら1.5Km以上歩行可能

Ⅳ:高度の息切れ    :休み休みでなければ45mを歩けない

Ⅴ:きわめて高度の息切れ:身の回りのことをすると息切れ

2)咳、喀痰

・咳が出るかどうか。出るとしたらどのような時どのくらい出るか。

・乾いた咳(乾性)か喀疾を伴った咳(湿性)か。

・痰はどれほどの量出るのか。

・効果的な咳で容易に喀出できるか。

・痰の性状はどのようか.

・粘稠かどうか.色や臭いはどうか.等について尋ねる.

・ただし咳については実態と自覚に差のある場合も少なくないので注意.

 

3)胸痛

・痛みの性質,程度,部位,時間,体位や換気運動との関係,放散の有無などについて問診.

・気管支炎では気管支病変部位とほぼ一致した頸部や前胸部に現れる.

・肺炎では肺実質に痛覚がないため病変が他部に及ばないかぎり疼痛はないが,肺癌の初発症状として出現することがある.

・気胸では肩から胸部にかけて現れ,体動や咳で増強することが多い.

・肋間神経痛も比較的頻度は高いが,原因の追求が大切.

・その他,狭心症や心筋梗塞,肺塞栓症や大動脈痛など心臓血管系の可能性も忘れてはならない.

 

4)既往歴

・肺炎や肺結核などの既往,咳や痰などの症状,副鼻腔炎にかかりやすいかなど,びまん性

汎細気管支炎では高率に副鼻腔炎の既往がある.

5)家族歴

・慢性閉塞性肺疾患の家族は低酸素,高二酸化炭素刺激に対する換気応答が有意に低下している.

6)その他

・喫煙の量,生活習慣,家族構成,生活環境,肥満の有無など.

 

3.検査 *1,2 呼吸不全pp104,内科学pp104

1)換気機能

・検査による患者の精神的身体的負担は少なくない.できるだけ最少の検査ですむように検査種目を選択.

・データがあればそれを利用し理学療法の定期的な評価のための検査もできるだけ少ない負担で多くの情報を得られるものを選択.

・換気障害が拘束性か閉塞性かを判断するうえで肺活量と1秒量の測定は欠かせない.

1.肺容量区分

・RVとFRCを除く各値はスパイロメーターで測定する.

・量の異常(特に減少)と同時に組み合わせの異常も評価し各位置で働く主な力も考慮して治療プログラムを立てる…例えば安静呼気位は呼吸筋が働いておらず肺の弾性収縮力と胸郭の弾性拡張力の均衡のとれた位置である.

・肺気腫では前者が減少し後者が増加して,より吸気位で平衡していると考えられる.また気道抵抗は動的場面での抵抗である.最大呼気(吸気)位の現象に関しては拘束性換気障害である.

 

2.肺活量

・臨床的の最も重要な指標の一つ.ボールドウィンの予測式で標準値を求め比較する.

予測肺気量 : 男 (23.63-0.112×Y)×身長

女 (21.78-0.101×Y)×身長

…比較して80%異常を正常範囲としている.

 

3.残気量

・RV以外の肺容量はスパイロメーターで測定されるが,RVは直接測定できない.

・RVはTLCとの比(=残気率)で表すことが多い.

・残気率は若年者では30%位であるが,加齢とともに増加する.予測式を以下に示す.

男性RV/TLC(%)=0.343×年齢十16.7

女性RV/TLC(%)=0.265×年齢十21.7

 

4.努力性呼気曲線 1秒量(FEV1.0)

・最大吸気位から1秒間に呼出できた量.

・0.5秒量も用いられる.絶対量の他にVCとの比である1秒率(FEV1.0%)を用いる.

FEV1.0%(%)=(FEV1.0/VC)×100

・正常範囲は70%以上.

・VCを予測VCとして計算したものを予測肺活量1秒率指数(指数)といい身障者福祉法で障害の基準に用いられている.

・1秒率について注意しなければならないことはVCとの比だということで,FEV1.0が変化しなくともVCの変化によって大きくなったり小さくなったりしてしまう.FEV1.0%を見るときは必ずVCの変化も同時に見る.

5.フローボリューム曲線(F-V曲線)

・直径が2㎜以下の末梢気道は正常では全気道抵抗の20%以下である.この部の病変を抵抗の変化として捉えることが困難なため無音帯と呼ばれる.

・努力性呼気曲線の傾きでもこの変化をある程度評価することができるが,F-V曲線も有効./

・F-V曲線はX軸に肺容量(V),Y軸に流量(V)をとって記録したものである.

・努力性呼気は肺気量が大きいとき(75~80%VC)は努力により胸腔内圧を高くするほど大きな流量が得られる

…しかし肺気量がある程度まで小さくなるといくら胸腔内圧を高くしても同一肺容量では一定以上の流量は得られなくなる.この由線を等肺容量圧流量曲線と呼び,そのときの流量を最大呼気速度(Vmax:ブイドットマックス)と呼ぶ.努力により呼気速度が変えられる部分を努力依存性といい,Vmaxの現れる部分を努力非依存性という.Vmaxは胸腔内圧のため気道が圧縮されるために起こるもので,その変化は末梢気道の病変を反映.

・このフローボリューム曲線から疾患によって肺気量・1秒率が特徴的な形態を表す.

 

2)運動負荷試験

・運動を負荷する場合にはエルゴメーターやトレッドミルを用いることが多い.しかしもっと簡便で道具も使わずどこででも実施できる方法があるとよい.

・歩行距離や歩行スビードを目安にしたものが多く利用される.条件をより一定にする意味からあらかじめ決められた運動を行わせることもできる.

・測定の際,パルスオキシメーター併用で運動中のHR,SpO2のモニタリングを行い,運動時の

低下の程度,不整脈の出現の有無を確認.

・呼吸困難感の視標としてボルグスケールを用いる.

 

表.Borg指数

旧指数

修正指数

6

7 very, very light(ほとんどどうもない)

8

9 very, light(少し感じる)

10

11 fairly light(中くらいに感じる)

12

13 somewhat hard(ややきつい)

14

15 hard(きつい)

16

17 very hard(非常にきつい)

18

19 very,very hard(もうだめ)

20

0 nothing at all(何ともない)

0.5 very, very weak(ほとんどどうもない)

1 very, weak(非常に弱いが感じる)

2 weak(少し感じる)

3 moderate(中くらいに感じる)

4 somewhat strong(ややきつい)

5 strong(きつい)

6

7 very strong(非常にきつい)

8

9 very, very strong maximal(もうだめ)

10

 

 

①漸増運動負荷試験

・トレッドミル,エルゴメーターを用いて負荷量を正確に設定.

・呼気ガス分析が行えて,運動中の呼吸・循環動態がきめ細かく観察可能.

 

②6分間歩行テスト

・6分間に最大限の努力で歩ける距離を測定する方法.

・VO2maxや種々の呼吸生理機能よく相関していることから呼吸・循環機能をはじめ全身持久力=耐久力の評価が出来る有用なテスト.

 

③シャトルウォーキングテスト

・テープによる標準化された漸増負荷で,6分間歩行テストの欠点を補ったもの.

・9mおきにコーンを立て,その周囲約10mを発信音に合わせて歩調をとり,1分毎に12段階(1.8~8.53km/分)に歩行速度を上げ,その最大距離を測定.

 

3)換気運動

・胸部,腹部が換気運動でどのくらい動いているか,どのくらい大きく動かせるか検査.

・マグネットメーターやレスピトレースなどの機器を利用できればよいが,テープメジャーによる計測でも役に立つ.

・胸部は腋窩・胸骨剣状突起,第10肋骨の高さで測定.腹部は臍を目安にする.

・それぞれの位置でメジャーを軽く張って吸気と呼気の周径の差を計測.

・最大の換気運動を行うことによりそれまで潜在していた異常が現れたり,もともとの異常が強調されたりする.

 

4)ROMあるいは伸展性

・胸郭および肩甲帯の可動性,伸展性の低下は換気量を低下させるだけではなく換気の仕事量を増加させるので必ず評価.四肢に二次的なROM制限が起こる.

 

5)筋力

・臨床的には簡便な口腔内圧測定器を用いて代用することが多い.また仰臥位で腹部に重りを載せて腹式呼吸を行い,全可動域にわたって何kgまで持ち上げることができるかを見る.

・その重さによっておおよその横隔膜筋力を評価することもできる臨床の場では徒手で腹部や胸郭の運動に抵抗を加えておおよその判断を下す.

・四肢や体幹の二次的・一次的な筋力低下がないかも検査.特に二次的な筋力低下は呼吸機能低下に目を奪われて見落としやすい.

・横隔膜運動の効率に重要な役割を果たす腹筋の筋力も忘れずに検査.

・それ以外にも腹式呼吸の習熟度・獲得度を把握するために行う腹式呼吸のグレード評価法がある.

 

表.腹部隆起力よりみた横隔膜筋力の評価(宮川らによる)

 

グレードⅠ

重度低下

隆起可能な重錘  0~5㎏未満

最大口腔内圧  22.2±8.5cmH2O

グレードⅡ

中等度低下

隆起可能な重錘  5~10㎏未満

最大口腔内圧  40.2±7.7cmH2O

グレードⅢ

軽度低下

隆起可能な重錘  10~15㎏未満

最大口腔内圧  57.3±14.0cmH2O

グレードⅣ

正常

隆起可能な重錘 %


スポンサード・リンク