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(´д`|||)肝移植の話


「肝移植」の画像検索結果

( ゚Д゚)題名:肝移植の話

1.肝移植の現状

肝移植はアメリカ合衆国において研究がはじまり、1980年代に免疫抑制剤の進歩とともに末期肝臓病に対する治療として確立されてきました。

肝移植という治療法については、これまで主として海外で多数行われてきた脳死肝移植という方法と、日本で症例が重ねられてきた生体肝移植という方法があります。

日本では脳死ドナーの不足という問題があることから、血縁者あるいは配偶者から提供された肝臓の一部を用いる生体肝移植が主流になっています。

こうして生体肝移植が1989年に我が国で施行されて以来、本格的に導入され現在では生体肝移植は末期的肝疾患に対する最終治療手段として根づいてきました。

2.生体肝移植の手術:レシピエント

レシピエントの手術は、開腹・肝摘出・血管吻合・胆道再建・閉腹の段階で進められます。

レシピエントの肝を摘出する際には、下大動脈を温存しなければいけない点や肝静脈、門脈、肝動脈の各々の枝を可及的に肝の近部で切断し、血管自体をレシピエント側に長く残さなければならない点で手術手技が難しいです。

また、胆道閉鎖症術後などのレシピエントの場合、移植前にすでに開腹手術が行われているため腹壁と肝、腹壁と腸管、肝下面と腸管の癒着が強固であり開腹と肝摘出時に腸管を損傷しないように注意を要します。

3.生体肝移植の手術:ドナー

ドナーの手術は、ドナーの安全性とグラフト機能を同時に確保しなければならないです。

全ての手術局面で、丁寧で確実な操作が求められます。

ドナーから摘出するグラフトの容量は、レシピエントの標準肝容量に応じて決定します。

肝切除術式は外側区域、拡大外側区域、左葉切除が主に選択されるが必要に応じて右葉切除も行われます。

肝臓は、他の臓器と異なり再生する能力がきわめて高く、正常の肝臓は、最大3分の2を切除しても残存した肝臓で機能を維持することができ、数週間以内にもとの大きさに回復する能力があります。

肝移植の適応

1.肝移植の適応疾患

1)胆汁うっ滞性肝疾患(先天性胆道閉鎖症、PBC、PSC、アラジール症候群など)

2)先天性代謝異常症(ウィルソン病、家族性アミロイドポリニューロパチーなど)

3)肝硬変症

4)急性肝不全(劇症肝炎)

5)原発性肝腫瘍

6)肝静脈血栓症(バッド・キアリ症候群)

7)その他の末期肝疾患

2.レシピエントの選択基準

1)進行性肝疾患の末期状態で予後不良と考えられ、内科的治療が奏功しない場合

2)肝不全状態ではないが、静脈瘤からの出血を頻回に認めるなどクオリティ・オブ・ライフの著しく制限された状態で、肝移植によってその病態の改善が見込まれる場合

3)肝以外の悪性腫瘍の合併や重篤な感染症がないこと

4)重篤な他臓器の障害を伴なわないこと

5)年齢は原則として60歳以下

3.ドナーの選択基準

1)他人から強制されることなく自発的な臓器提供の意志がある

2)肝移植の手術法、成績、ドナーの手術の危険性、術後合併症について説明を十分理解できていること

3)レシピエントの血縁者(4親等以内)または配偶者が基本

4)年齢が20~60歳前後

5)血液型が一致または適合すること

6)肝機能、腎機能、心肺機能などが正常(重篤な合併症や感染症がない)

7)レシピエントに必要なグラフトサイズが得られること

用語の定義

肝移植:本文では全て生体肝移植をさす

レシピエント:臓器受容者

ドナー:臓器提供者

グラフト:移植肝

タクロリムス値:免疫抑制剤の薬物血中濃度

病態アセスメント

1.レシピエント

肝移植後、レシピエントは血栓症・出血・拒絶反応・感染症などのさまざまな合併症が起こる可能性があります。

これらの合併症の予防・早期発見に努めるために術前から患者の状態を把握し、適切な観察と対処を行うことが重要です。

また、入院期間が長期にわたる場合が多いため、メンタルケアも必要となります。

2.ドナー

生体肝移植は臓器を提供する健康なドナーが必要なため、ドナーは手術に伴う危険性を負うことになります。

そのためドナーは自発的で自由な意思表示によって決定され、ドナーの安全の保証と将来の生活に支障がないことが必要不可欠です。

また、ドナーは選択から手術、退院までめまぐるしい状況の変化によって精神的にも不安定になりやすいため身体面だけでなくメンタルケアが重要となってきます。

検査

1.レシピエント
基本的には、レシピエントの条件を満たしているかどうかの検査が主体となります。

全身状態を評価する検査、疾患の状態や進行度を評価する検査、肝移植後の管理の参考とするための検査などが含まれます。

  1. 術前一般検査
    身長、体重、体表面積、検尿、尿生化学、便潜血反応
  2. 血液学的検査
    (1)血算
    WBC、RBC、Hb、Ht、Plts
    (2)生化学
    BUN、Cr、Na、K、Cl、Ca、Mg、P、ZTT、TTT、T-Bil、D-Bil、I-Bil、ALP、γ-GTP、AST、ALT、
    LDH、ChE、TP、Alb、T-Cho、TG、HDL-Cho、IgG、IgA、IgM、HbAlc、NH3、FBS、総胆汁酸
    (3)出血・凝固
    出血時間、PT、APTT、Fib、HpT
  3. 感染症、ウイルス抗体価検査
    HA-Ab、HBs-Ag、HBs-Ab、HBe-Ag、HBe-Ab、HBc-Ab、HCV-Ab、CMV(IgG、IgM)、EBV(VCA IgG、VCA IgM)、
    HTLV-I、HIV、TPHA、抗核抗体、抗Mit抗体、抗Mit抗体M2分画
  4. 移植免疫関連検査
    血液型(ABO型、Rh型) HLA、リンパ球クロスマッチ
  5. ECG、心エコー
  6. 呼吸機能検査、血液ガス
  7. クレアチニンクリアランス
  8. 培養検査
    尿、鼻腔、咽頭、喀痰、便、胃液
  9. 画像診断
    胸腹部X線撮影、超音波検査、CT、血管造影検査、肝アシアロ、GTF

2.ドナー
ドナーの条件を満たしているかどうかの検査が主体となる。ドナー手術の安全性に関する検査と、グラフトの大きさや機能に関する検査が含まれる。

  1. 術前一般検査
    身長、体重、血液型(ABO型 Rh型)、一般血液検査、検尿、尿生化学、ECG、呼吸機能検査、血液ガス
  2. 感染症、ウイルス抗体価検査
    レシピエントの術前検査に準ずる
  3. 移植免疫関連検査
    HLA、リンパ球クロスマッチ、全血クロスマッチ
  4. 画像診断
    胸腹部X線撮影、超音波検査、CT、血管造影検査、肝アシアロ、GTF

治療

手術療法

肝移植に際して、標準肝容量(SV)に対するグラフト容量(GV)の比率(GV/SV比)が大きければ、代謝性、合成能の面からより理想的であるが、ドナーの安全性より考えて摘出可能なグラフトの大きさに限界がある。

肝移植が可能なGV/SV比は最低40%、グラフト/レシピエントの体重比は1%以上は必要とされる。

肝左葉をグラフトとする移植はドナーの安全性を優先するが、最近の成人間生体肝移植は、肝左葉より大きな肝右葉を用いる場合が多い。

免疫抑制療法(パルス療法、OKT3など)

術後の経過と管理

1.レシピエント

1) 疼痛の管理

呼吸状態、循環動態に十分注意しながら疼痛管理をおこなう。一般的にペンタジン、ソセゴンとサクシゾンを併用する場合が多い。

2) 呼吸器系の管理

高度の肝硬変により術前から水分、Na貯留傾向の状態にある。それに加え長時間の手術、移植肝への血流維持などに対して術中の輸液、輸血により肺水腫を併発しやすい。術後は気管内挿管のまま帰室するが、人工呼吸器使用中は胸腔内圧が陽圧となり肝血流が減少することと、挿管チューブからの感染予防のため、十分な自発呼吸が回復次第抜管する。抜管後は深呼吸、喀痰を促し酸素飽和度をモニターしながら無気肺の予防に努める。

3) 循環器系の管理

手術侵襲が大きいことや、免疫抑制剤の副作用による高血圧等で循環動態が不安定である。血圧・脈拍・中心静脈圧等をチェックし、輸液・輸血・降圧剤・昇圧剤の使用を確実に行なう。

4) 水分・電解質管理

手術時間が長く出血量も多いので水分出納をこまかく計算し補正する。術直後は利尿がつきにくいので輸液量は必要量の80%程度から始める。術後早期には2時間ごとに水分・電解質出納のバランスを見るとともに、12時間ごとに体重を測定し変化を追う。腹水・胸水など浸出液が多い場合にはさらに頻回にチェックする。電解質では、術中に新鮮凍結血漿(FFP)を多く使うため、Naが貯留傾向にあり基本輸液は電解質を含まない5%糖液とし、血清、尿、腹水等の電解質測定を行い必要量を計算して追加する。特に肝細胞の活動開始と共にKと糖の急速な上昇が起きるため頻回に測定し、特に低K血症に注意する。術直後はステロイド剤や免疫抑制剤の使用により耐糖能異常になりやすいので頻回に血糖、尿糖を測定し、必要に応じてインシュリンを投与する。

5) 輸血の管理

FFPの投与については過剰な凝固因子投与が血栓症の誘因となる可能性があることから、全身状態を考慮のうえ慎重に行わなければならない。腹水・胸水などの体液喪失にともなう凝固因子や抗凝固因子の低下が著しい場合に限り、喪失液の組成や量に応じて適宜投与する。投与中は全血凝固時間等を測定しながら抗凝固療法を行う。また、FFP投与により低Cl性アルカローシスきたしやすいので、血液ガス分析でBEを±3.0以内に維持できるように高Clアミノ酸製剤を併用する。
肝移植後は血液の粘性を抑えて血栓を予防する目的で、Htが25%前後となるように管理する。輸血を必要とする場合には、白血球除去赤血球(LPRC)か保存血を使用し、X線照射後輸血する。

6) 血栓症予防管理

肝移植後には抗凝固能の回復が凝固能の回復よりも遅れるため、術後1週間までは凝固亢進状態になるといわれており、血栓症を合併する可能性が高い。そのため、術後2週間は抗凝固療法を実施するとともに、1日に最低2回は超音波カラードプラを行いグラフト肝の血流を確認する。

7) 感染予防管理

移植後には免疫抑制療法を行なうため、感染症が起こると重篤となり、致死的となる場合もある。定期的に培養検査(鼻腔、咽頭、痰、尿、便、ドレーン排液)、各種ウイルス抗体検査を実施し、結果に応じて抗生剤を変更する。細菌感染のみならず、真菌、ウイルス感染にも注意する。術後3週間は個室管理とし、手洗い、マスクの着用を実施。点滴、ドレーンは閉鎖とし、逆行性感染をふせぐ。食事は6ヶ月間、加熱食、生物禁。レシピエントの手洗い・含嗽等は水道水でよいが、飲み水は市販のミネラルウォーターとする。市販のものなら殺菌処理が施されているため、ゼリーやジュースの摂取は可能である。

8) 拒絶反応

移植後は拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤が投与される。主にタクロリムスとステロイドの2剤併用である。急性拒絶反応は術後5日~1ヶ月が好発時期であり、この間はタクロリムスの血中濃度を高値に保つ。術直後は静脈内投与し、経口開始と共に内服に切りかえる。タクロリムスは食事の影響をさけるため、食後2時間後の決まった時間に確実に投与する。また、タクロリムスはグレープフルーツにより血中濃度が上がるので禁止する。

9) 中心静脈栄養法の管理

感染機会を減らす目的で、輸液を一包化して交換回数を減らすとともに可能な限り点滴ルートの減少に努める。ルート側菅よりの一括注入もできる限り減らし、やむを得ない場合は無菌操作下に十分注意しておこなう。また、原則として一週間毎にカテーテル交換を行う。

10) 経口摂取の開始

経口摂取は門脈血流を増加させ、移植肝にはよいといわれている。そのためできるだけ早期に開始するが、腸管蠕動運動の回復が遅延している場合や腹水貯留がある場合には腹満が増強するので腹部の所見に注意が必要である。

11) 精神的サポート

通常レシピエントは術前より肝不全状態で入院治療あるいは集中治療をうけている場合が多く、これに移植手術に対する不安も重なることから多大な精神的ストレス下にあると考えられる。術後も集中治療が続くことからストレスは増大し、放置すれば術後せん妄へとつながり、治療上大きな支障となる。したがって精神的サポートが移植手術を成功へと導くうえで非常に重要であり、覚醒後はAV機器を積極的に用いてリラックスするように努めるとともに、家族面会等により精神の安定をはかる必要がある。また、ドナーの経過がレシピエントにとって最大の不安要因になっていることが多いことから、可能な限り早期にドナーとの面会をおこない不安要因の除去につとめることが重要である。また、ドナーにとってもレシピエントとの面会は精神的サポートとして大きな位置を占めるものである。

12) 清潔保持

免疫抑制療法により、易感染状態であり、身体の清潔保持は重要である。全身清拭・更衣は毎日行い、洗髪・手足浴もできる限り行なう。陰部洗浄は排便ごとに行い、尿路感染に注意する。患者自身にも感染予防の必要性を説明し、手洗い・イソジン含嗽を励行する。歯ブラシは柔らかい豚毛を使用し、歯肉からの出血・感染を予防する。

13) 離床

術直後は移植肝の偏移を予防するため、右葉グラフトの場合は左側臥位禁、左葉グラフトの場合は右側臥位禁を術後1週間守る。それ以降は徐々に拡大していく。

2.ドナー

1) 疼痛の管理

持続硬膜外麻酔を術後3日間おこない疼痛の緩和につとめる。血圧低下や呼吸抑制がみられた場合は躊躇なくこれを中止し、ペンタジン、ソセゴン、サクシゾンを用いて疼痛コントロールをおこなう。術後日数が経過し状態が安定していればボルタレンを用いてもよい。

2) 呼吸器系の管理

術後早期はSpO2をモニターし、定期的に動脈血ガス分析をおこなう。喀痰排出を促し、無気肺、肺炎の防止に努める。まれに右胸水を合併することがあり必要ならば胸腔穿刺をおこない排液する。また、肺塞栓に注意し、これが疑われた場合にはただちに必要な検査および処置をおこなう。

3) 循環器系の管理

術後早期は心電図モニターを装着し、定期的に血圧を測定しながら異常の早期発見に努める。

4) 輸液・輸血の管理

末梢静脈からの輸液を原則とし、水分出納に基づいて輸液計画を立てていく。基本的に正常肝の切除であるため、肝硬変の合併症例のように厳密な管理をする必要はないが、採取するグラフトサイズによっては切除量が大きくなるため注意が必要となる。術前に希望時は自己血を採取してあるため、それが用いられる。

5) 栄養管理

術後早期より経口摂取が可能となるため中心静脈栄養など特別な栄養管理は必要としない。絶食期間は5~10%ブドウ糖液を基本とした末梢静脈栄養で十分である。

6) ドレーンの処置

術後出血、胆汁漏のモニターとして肝切離面にドレーンを留置する。胆汁漏は術後一週間目あたりから現れることがあることから、この時期を過ぎて問題がない場合一度の短切ののち抜去する。

7) 経口摂取の開始

腸管蠕動運動が回復次第経口摂取を開始する。持続硬膜外麻酔期間中は蠕動運動が低下しているので終了後より開始するのが無難である。特に問題がなければ術後一週間目で全粥摂取とする。

8) 精神的サポート

ドナーはレシピエントのキーパーソンであることが多く、ドナーへの負担が大きい。また、自身の回復以上にレシピエントの術後状態に心を遣うため、精神的にもかなりのストレスが加わる。ドナーの心理的葛藤のひとつに「手術後ブルー」がある。手術後の家族の関心がレシピエントに集中することで、自分には用がないように感じるのである。ドナー手術が安全に行なわれ、社会復帰できてこその生体肝移植である。ドナーの精神面を理解し、ドナー以外の家族のサポートも受けられるよう配慮していく。

9) 清潔保持

(注)「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照

10) 早期離床

術後合併症など、特に問題がなければ早期離床を心がける。基本的には術翌日から離床をすすめる。

術後合併症

1.レシピエント

1)吻合血管の合併症

肝移植では、動脈・静脈・門脈と3種の血管を吻合する。そのため移植後に吻合血管の血流を良好に保つことは絶対不可欠であり、血流の低下・消失を認めたときは一刻も早く対処しなければならない。

 1. 血栓症

移植後早期には凝固亢進状態となり、遅れて抗凝固系因子および線溶系が回復するため、術直後から1週間目までの間に血栓症を起こしやすい。そのため、術後1週間目まで抗凝固療法を施行するとともに、超音波ドプラ法で各血流を確認する。

 2. 吻合部狭窄

血管吻合部狭窄は吻合の際の技術的な問題のほかに移植肝の再生肥大にともなう血管のねじれによって生じることがある。各血管の吻合部に狭窄を生じた場合、放置すれば血栓形成、閉塞の原因となる。肝動脈、門脈がともに狭窄している場合は肝血流が減少するためただちに拡張術を施行する必要がある。通常IVRにて試みるがうまくいかない場合は再吻合をおこなう。肝静脈が狭窄した場合はいわゆるバッドキアリ症候群を呈し肝のうっ血と大量腹水を生じる。この場合も経皮経肝的あるいは経静脈的にバルーン拡張術を施行し狭窄の解除をはかる。

 3. 出血

肝移植後はドレーン出血のみならず脳内出血や消化管出血など出血をきたしやすい。原因としては、長期黄疸患者は吸収障害によりビタミンK欠乏状態にあり出血傾向があること、移植後もすぐには門脈圧が下がらないため食道静脈瘤のある患者は出血の可能性があること、手術のストレスとステロイドの使用、吻合血管の血栓予防として抗凝固療法を行なっていること、免疫抑制剤の副作用で高血圧になりやすいこと等があげられる。

2)胆道系の合併症

生体肝移植では、グラフトの胆管とレシピエントの挙上空腸あるいは遺残胆管を吻合する。移植術後はステロイドを投与するため吻合は脆弱であり、これに移植肝の血流障害とくに肝動脈血流低下や遺残胆管の血行不良をともなうと胆管吻合部の縫合不全や狭窄・閉塞をきたす。縫合不全は術後3週間以内が好発時期であり、この間は胆管吻合部近傍ドレーンと胆管チューブを留置し慎重に経過を観察する。吻合部狭窄・閉塞は術後数ヵ月後に発症する。

3)肝機能障害

グラフトにはさまざまな原因で障害が起こる。グラフト肝の血流再開後にGOT、GPTは300~400まで上昇し、2日目以降徐々に低下するのが一般的であるが、高値が続くまたは再上昇が認められた場合はその原因を追求し対処が必要である。最も頻度の高い移植後の肝障害は薬剤性の肝障害である。移植後5日目以降にT-bilやγ-GTPなど胆道系酵素の急激な上昇が認められた場合には拒絶反応も疑い、必要ならば肝生検を行う。

4)腎機能障害

術前高度な肝障害のある場合はすでに腎機能障害も合併していることが多い。免疫抑制剤や他薬剤の副作用によって腎機能をさらに悪化させることがあるため、水分出納、尿量などに注意する。

5)肺合併症

多くの症例で術前から水分、Na貯留傾向にあることから、術後肺水腫を併発しやすい。また、移植肝の転位を防止するため術後早期には体位制限をおこなうが、これにより喀痰の排出が不十分となり無気肺、肺炎を合併することがある。厳密な水分出納の管理と膠質浸透圧の維持、さらに積極的な肺理学療法が重要である。

6)感染

肝機能低下に伴う免疫能の低下により感染症の宿主になりやすく、さらに免疫抑制剤の使用により易感染状態になっている。肝移植を必要とする患者は、肝不全による免疫能の低下のうえに長期にわたり抗生剤や利胆効果を目的としたステロイドを服用している場合が多く、術前よりMRSAなどの薬剤耐性菌の保有率や真菌およびウイルス感染症の合併率が高い。移植直後に発生する感染症は術前に保有していた細菌や真菌が原因となりやすく、術後の感染症対策には術前からそれらをコントロールすることが肝要である。

7)腹水

肝移植術後においては、手術による腹膜損傷や感染症、拒絶反応、さらには移植肝うっ血等様々な原因で腹水が認められ、時には1日数リットルにもおよぶこともある。その原因を究明し適切な治療をおこなうのは言うまでもないが、大量腹水症例では脱水から循環不全をおこす場合があり、その性状を十分に把握したうえでの水分補正が大変重要である。

8)免疫抑制剤の使用による合併症

生体肝移植における急性拒絶反応は一般に術後5日目から1ヶ月が好発時期である。そのため、この間は免疫抑制剤の血中濃度を高値に保つ必要があるが、安全域が狭く副作用も多いことから厳密な心電図監視が重要である。適正濃度にもかかわらず副作用が強い場合には薬剤の変更を考慮する。また、不幸にも感染症を合併した場合には免疫抑制剤を減量あるいは中止したうえで適切な治療をおこなわなくてはならない。

2.ドナー

1)出血

術後2~3日目までは結紮あるいは凝固止血した肝動脈、門脈、肝静脈等から出血する場合がある。パイロットドレーンから出血量をチェックし、100ml/時をこえた場合にはためらわずに開腹止血をおこなう。過度の輸血は肝機能の低下をまねき全身状態の悪化につながるからである。

2)胆汁漏

術直後から一週間目までに出現することが多く、その間は肝切離面ドレーンを留置しておく必要がある。通常胆汁漏を合併しても2~3週間程度で治癒することが多い。

3)感染

主として術創部、腹腔内で認められる。感染が疑われた場合は適切な抗生剤の投与と排膿処置をおこなう。

4)肺炎

喀痰排出不良による肺炎が最も多い。早期離床を促し、理学療法を積極的におこなって喀痰排出に心がける。

5)腹水、胸水

肝切除量が多い場合や腹腔内感染をおこした場合腹水を合併することがある。肝再生や感染治癒にともない消失するが、この間慎重な輸液管理が必要である。胸水は右側に認められることが多く、肺の虚脱をともなう場合には穿刺排液する。

6)肺塞栓

離床直後に発生することが多い。ときに致命的になることがあることから深部静脈血栓に対する予防処置を怠ってはならない。また、離床の際には十分に観察をおこない、万一これが疑われた場合にはただちに必要な検査および処置をおこなう。

7)腸閉塞

肝切除では通過障害をおこすような腸管癒着は通常認められないが、まれに腸閉塞を合併することがある。予防策としてなによりも早期離床促すことが重要である。

8)上部消化管出血

ドナーには精神的ストレスが大きく、胃十二指腸潰瘍が併発しやすい。胃管からの排液の性状に注意し、必要に応じてH2ブロッカーを投与する。

9)肝不全

安全範囲内の肝切除量であっても右葉切除など限界に近い肝切除を行った場合に前述の諸合併症を併発すると肝臓に多大な負荷がかかり肝不全に陥ってしまうことがある。いったん肝不全を合併すると血漿交換等様々な高度集中治療を行っても救命しえない場合があることからドナーの術式の選択には慎重の上にも慎重を期さなければならない。ドナーの安全が第一である。

看護計画(術前)

Ⅰ.病態アセスメント(術前)

肝移植患者は、原疾患により入院などの経過や治療は異なってくる。どの疾患においても、肝臓は移植を選択する状況におかれており、機能も十分でなく、様々な症状が現れた状態であり、時には緊急を要することもある。そのため術前は少しでも良いコンディションで手術を迎えられるよう身体的、精神的にフォローする必要がある。

看護計画(術後)

Ⅰ.病態アセスメント(術後)

肝移植後には手術手技に関連した合併症、拒絶反応、感染症、薬剤による副作用など様々な病態への対応が必要である。術後管理の基本は小児例と成人例で大きな相違はない。しかし、成人の場合に様々なグラフトの障害により、過小なグラフトの有効な予備能がさらに低下する可能性に留意する必要がある。また、臓器の提供に伴う人間関係が円滑にいくように援助していくことも求められている。

看護計画(ドナー術前)

Ⅰ.アセスメントの視点

 生体肝移植では、健康体であるドナーに肝切除という手術的侵襲を加えなければならず、手術の安全性の保証と将来の生活に支障がないことが必要である。とはいえ、100%安全の保証はない。ドナーの選択に関しても、組織適合性や血液生化学検査だけでなく、既往歴や本人の希望によって決定される。また、高額であり家族にとっても問題である。

看護計画(ドナー術後)

Ⅰ.アセスメントの視点

 健康体であるドナーは、100%安全とは誰もが断言できない手術に対して不安を抱く一方で、レシピエントを救命するという使命感を持ち、葛藤の中で手術に臨み、術後もさまざまな不安を抱え、常に不安定な心理状態に置かれている。そのため、周手術期にわたり心理的サポートに重点をおく必要がある。また、健康人であるドナーの意思と健康は最優先に守られる必要があり、術後の全身状態の評価は慎重に行われる必要がある。

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(#^^#)参考文献

医療学習レポート.肝移植


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