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(*´∀`)バランスの話


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1.はじめに

リハビリテーションでは、バランスを必要とする起居、移動動作、日常生活動作などの動作能力の修得や向上、姿勢保持能力の改善を大きな目標としている。バランスの評価は、その治療プログラムの遂行上の目安であり、転倒防止のリスク管理でもある。

 

2.バランスとは

バランスは、重力を始めとする環境に対する生体の情報処理機能の帰結・現象を指している。運動学的には支持基底面に重心を投影する機能であり、平衡に関わる神経機構に加えて、骨アライメント、関節機能、筋力などの要素が含まれる。

 

3.姿勢制御における運動課題の定義

姿勢制御の運動課題には、安定性と定位という二重の目標に関して空間中の身体位置を制御することが含まれる。姿勢定位は、運動課題に関与する身体の複数の体節間同士の関係、および身体と環境との間の関係を適切に保持する能力と定義される。ほとんどの機能的運動課題において、我々は身体を鉛直に定位している。身体を鉛直に保持する過程において、重力(前庭系)、支持面(体性感覚系)、身体と環境にある目標物との関係(視覚系)を含む複数の感覚基準を用いている。姿勢安定性は、身体の位置、特に身体質量中心(COM)の位置を、安定性限界とよばれる特定の範囲内に保持する能力と定義される。安定性限界は、身体がその支持基底面を変化させることなく自分自身の位置を保持できる平面的領域の限界である。安定性限界は固定的な境界ではなく、運動課題、個体個々の生体力学的状態、種々の環境に応じて変化する。安定性という用語はバランスあるいは平衡と同義語として使われる。安定性には、安定性を崩す力と安定性を保持する力を平衡させるという内容が含まれる。

 

4.立位姿勢制御

姿勢制御にとって重要な運動機構についての最初に、安静立位にある身体の微小運動を制御するのに関わる筋緊張と姿勢緊張の役割について考えていく。それに続いて、安定性が崩れたときに安定性を取り戻す助けとなる運動戦略と、その基礎に存在する協同収縮筋について検討する。

 

●勢制御のための運動機構

姿勢制御では、筋力を発生し、それを適当な大きさにして協調させる必要がある。そのような力により、空中間で身体位置を制御するのに効果的な運動が作り出される。神経系はどのようにしてその運動系を組織し、安静立位時の姿勢制御を確実に行うのであろうか。安定性が崩れたとき、その組織はどのようにして変化するのであろうか。

 

●安静立位時の運動制御

安静立位の行動特性はどのようなものであるのか、また安静立位時あるいは安静座位の間に体幹を鉛直な状態に保てるのは何によるのであろうか。安静立位には、特徴的な自発性微小姿勢動揺がある。この状態における安定性には、多くの要素が関与している。第一に、身体アライメントが身体を中心からずらそうとする重力の影響を最小にしている。第二に、筋が緊張することで身体が重力の作用により崩れてしまわないようになっている。安静立位時には、次の3つの主要な要素が背景となる筋緊張に寄与している。

①筋自体の硬さ

②背景の筋緊張:一般に神経系の作用によりすべての筋に存在する。

③姿勢緊張:安静立位時の抗重力筋活動

 

●アライメント

アライメントは、どのように姿勢安定性に寄与しているのだろうか。完全に安定した姿勢アライメントでは、重心の鉛直線は次の各項目の中央を通る。

・側方のバランス:後方から見て、つぎの5指標が矢状面にあって、垂直であるとき側方バランスがよい。

①後頭隆起

②椎骨棘突起

③殿裂

④両膝関節内側の中心

⑤両内果間の中心

・前後方向のバランス:側方から見て、つぎの5指標が前額面において、垂直であるとき、前後方向のバランスがよい。

①耳垂のやや後方

②肩峰

③大転子

④膝関節前部(膝蓋骨後面:膝前後径の前1/3)

⑤外果の前方。なお踵―重心線間距離の支持基底前後距離に対する比率は約40%(外果―重心線間距離では5~6㎝)である。

理想的アライメントにある立位では、内部エネルギーの消耗を最小にして身体平衡を保つことができる。

 

●筋緊張

筋緊張とはどんなものであり、バランスをとるためにどのように作用するのであろうか。筋緊張は筋が伸展されるのに対して抵抗する力、すなわち筋の硬さである。筋緊張を臨床的にテストするには、患者の四肢をリラックスさせた状態で受動的に伸展したり屈曲したりして、その筋に生じる抵抗を感じとる方法がよく採られる。神経関与および非神経関与のいずれの機構も、筋緊張すなわち筋の硬さに関与する。ある程度の筋緊張は、正常で覚醒状態にあるリラックスした者にみられる。しかし、弛緩した状態での健常者の骨格筋において、電気的活動は全くないことが筋電図でわかる。この結果から研究者は、神経の関与しない筋緊張は筋線維中にある微量のフリーカルシウムが低レベルの持続的な連結橋の再使用を起こしている。筋緊張すなわち筋の硬さには神経の関与もあり、これは筋の伸張に抗する伸張性反射により生じる。筋長の変化は筋紡錘により検知される。この求心性情報は運動ニューロンに送られ、筋力を望ましい長さに変えるために必要な大きさの力を得るように発火状態を変化させる。このようにして、伸張反射ループは持続的に筋の長さをある一定の値に保持している。正常な筋緊張に寄与している伸張反射の役割は、極めて明確である。しかしながら、直立姿勢の制御における伸張反射の役割は明確ではない。ある理論によると、伸張反射は姿勢保持においてフィードバックの役割を果たしているという。そのために、この理論では、立位中に身体を前後に揺らすと足関節の筋が伸ばされ、伸張反射が起こると考えられている。その結果、筋の反射的短縮が起こり、続いて前後方向の動揺制御が行われる。ある研究グレープでは、伸張反射は姿勢を保持するのに重要であるとしているが、安静立位の制御における伸張反射の役割に疑問をもつ研究者もいる。立位における伸張反射の量は非常に小さいという報告があり、そのため、研究者によっては伸張反射の動揺制御への関与に疑問を発している。

 

●姿勢緊張

立位になると、いくつかの抗重力姿勢筋においてこの背景となる活動レベルが変化し、重力と平衡する。抗重力筋におけるこのような活動レベルの増加状態を、姿勢緊張という。この姿勢緊張に関与する要素は何であろうか。

姿勢緊張には多くの要素が影響を及ぼす。実験から得られた事実から、脊髄の錐体路(感覚系)が傷害されると姿勢緊張が減少することがわかり、これにより姿勢緊張は体性感覚系からの入力により影響を受けることが示されている。これに加えて、足の踵にある皮膚感覚神経が活性化されると、踏み変え反応を起こすことが古くから知られている。つまり、踏み変えが起こると足は支持面に向かって自動的に伸展し、これにより伸展筋における姿勢緊張が増加する。頭部の定位に変化が生じると頸部からの体性感覚入力が活発となり、これもまた体幹と四肢における姿勢緊張の分布に影響を与える。これは緊張性頸部反射と呼ばれる。

視覚系と前庭系からの入力もまた、姿勢緊張に影響を与える。前庭入力は頭部の定位変化により賦活され、頸部と四肢における姿勢緊張の分布に変化をもたらす。そして、これは前庭迷路反射と前庭脊髄反射とよばれてきた。

臨床に関する文献では、これらの反射が姿勢制御に関わることがかなり強調されてきた。しかし、正常な神経系や運動系をもつ人の姿勢制御にも、それらの反射が多くの影響を与えていることを知るべきである。神経学的に障害を受け、反射経路以外に多くの問題をもつ人では、反射経路が姿勢制御への命令においていっそう重要な役割を果たしている。

また、姿勢緊張の概念が重力に抗して身体を保持する主要な機構として強く強調されている。特に、多くの臨床家は、体幹筋の姿勢緊張が健常者の直立位における姿勢安定性を正に制御する鍵となるものであると述べている。安静立位における筋活動を調べた筋電図学的研究とこの仮定は、どれほど一致するのであろうか。

複数の研究者が、安静立位時に身体の多数の筋が緊張性の活動を行っていることを見出している。

①重心線が膝関節と足関節の少し前を通る状態でのヒラメ筋と腓腹筋

②身体が後方へ動揺した場合の前脛骨筋

③中殿筋と大腿筋膜張筋(大殿筋は除く)

④股関節の過伸展を防ぐ腸腰筋(ハムストリングと大腿四頭筋は除く)

⑤重心線が脊椎の前を通るので、体幹部にある胸部の脊柱起立筋(腹筋群の間欠的な活動を伴う)

これらの研究から、体幹部の筋のみではなく身体全体の筋が安静立位時に緊張性の活動

を行い、狭い鉛直肢位範囲に身体を保っていることがわかる。いったん質量中心が理想的なアライメントと定義された狭い範囲を出てしまうと、安定な位置へ回復するためによりいっそう多くの筋収縮が必要となってしまう。この状態では補償型姿勢戦略がとられ、重心を支持基底面内の安定した位置へ戻す。

 

*外乱動揺下立位での運動戦略

立位バランスの矢状面に関する安定性を取り戻すための運動パターンには、足関節戦略、股関節戦略、踏み出し戦略がある。健常者の場合には、1つの運動戦略から他の戦略へと比較的速く運動戦略を変えることが可能である。

 

■足関節戦略

足関節戦略とそれに関連する協同収縮系は、直立時動揺の制御方法として第一のパターンに同定される。足関節戦略では、主に足関節を中心とした身体運動を介して、質量中心を安定な位置に回復する。前方向へバランスが崩れた場合に、それを修正するのに伴う典型的な協同収縮筋活動と身体運動がある。プラットフォームが後方へ動くことにより、被験者は前方へ動揺する。筋活動は外乱動揺の開始後およそ20~30msec後にハムストリングの活動が続き、最後に脊柱起立筋の活動となる。

腓腹筋の活動は足関節の底屈トルクを発生し、身体の前方への運動を弱め、その後反対に動かす。ハムストリングと脊柱起立筋の活動は、股関節と膝関節を伸展位に保持する。ハムストリングと脊柱起立筋の協同収縮活動なくしては、腓腹筋の足関節トルクが間接的に近位の身体節に影響し、下肢に対して相対的に体幹を前方へ移動させるであろう。

後方への動揺に対抗して安定性を取り戻すときに用いられる協同収縮筋活動と身体運動がある。筋活動は遠位筋の前脛骨筋に始まって、大腿四頭筋と体幹筋へと続く。

足関節戦略は、平衡に対する影響が少なくて支持面がしっかりとしている場合に、最も一般的に用いられている。足関節戦略を用いる場合には、足関節の可動域と筋力が正常でなければならない。バランスを阻害する外乱動揺が大きい場合、あるいは足関節筋を用いて力を発生できない状態では、どんなことが起こるのであろうか。

 

■股関節戦略

科学者は、身体動揺を制御するもう1つの戦略である股関節戦略を見出した。この戦略では、股関節に大きくてかつ迅速な運動を発生することで質量中心の動きを制御するが、同時に足関節の回旋は逆位相となる。股関節戦略に伴って生じる典型的な協同収縮筋活動がある。プラットフォームが後方へ移動する場合も、被験者は前方へ動揺する。同じ前方動揺でも被験者が細い棒の上に乗った状態で通常応答する筋と、平らな面に立っているときの応答で活動する筋とは異なっている。外乱動揺の開始後およそ90~100msecで体幹筋の活動が始まり、そのあとに大腿四頭筋が活動する。後方動揺に対して股関節戦略で修正を行う場合のそれに伴う筋パターンと身体運動がある。股関節戦略が用いられる応答条件は、外乱動揺が大きかったり速かったりする場合、あるいは支持面が柔らかいものであるか、あるいはまた棒の上のように足より狭い面に立っている場合である。

 

■踏み出し戦略

姿勢の外乱動揺がかなり大きくて、質量中心が足の支持基底面より外に出てしまうときには、踏み出しあるいは足飛び(踏み出し戦略)を用い、身体のアライメントを補正して支持基底面を質量中心の下にもってくる。

ここまでに示した戦略とそれに伴う協同収縮系は独立した性質のものとして存在するので、神経系に異常のない者は、立位状態で前方や後方への動揺を制御するときにはこれらの戦略を取り混ぜて用いていることが研究からわかってきた。

 

*運動戦略の適応

健常者では、1つの姿勢運動戦略から他の戦略へと、比較的迅速に変えられることがわかってきた。たとえば、細い棒の上に立つように指示されると、ほとんどの被験者は平均して15回以内の試行で足関節戦略から股関節戦略へと戦略を変えていた。そして、再び普通の支持面に戻されると、6回の試行で足関節戦略に移っていった。ある戦略から次の戦略へと遷移する間に被験者は複雑な運動戦略を用いるが、それらはこれまでにあげた純粋な戦略の組み合わせであった。

中枢神経系には異なる複数の戦略が内在しており、それは戦略が安全に使用できる空間にある境界との関連において表現されているのであろうと、科学者は理論づけている。すなわち、中枢神経系は空間での身体運動とその運動を制御するための戦略との関係を、地図としてもっているようである。境界は動的なものであり、運動課題と環境条件の要求に従って遷移する。たとえば、硬くて平坦な面に立っているときに用いる股関節戦略、足関節戦略、および踏み出し戦略での境界は、細い棒の上に立っている場合の境界とは異なるであろう。

力を協調的に働かせ空間の身体位置を制御する能力は、姿勢制御にとって本質的な部分である。機械的に結合している複数の関節にある協同収縮筋が中枢神経系により活性化されることはわかっている。これによって、バランスを制御する際に、1つの関節に生じる力が身体の他のいかなる部分をも不安定にすることがないようになっている。中枢神経系は、行動戦略を参考にしながら、空間における身体位置の表象を内部的にもっている。これは運動を制御するために効果的である。しかしながら、これら行動戦略の内部表象形態が、協同収縮筋として存在するのか、運動戦略として存在するのか、あるいは力戦略として存在するのかは明らかではない。

 

【姿勢に関連した感覚機構】

姿勢制御を効果的に行うためには、空間の身体位置を制御するために力を発生し、それを用いる能力があるだけでは不十分である。身体位置を回復するための力を、いつ、そしてどのように発生するのかを知るために、中枢神経系は身体が空間のどこにあるか、そしてそれが保持状態にあるのか動いている状態にあるのかを正確にとらえていなければならない。中枢神経系はいかにしてこれを行っているのであろうか。

 

*姿勢制御に寄与する感覚

中枢神経系が空間の身体位置を知るためには、その前に身体全体の感覚受容器からの情報を組織化しなければならない。普通は、視覚系、体性感覚系(固有受容器、皮膚受容器、関節受容器)、前庭系からの末梢入力が、重力および環境との関係で身体位置と運動を検知するために働いている。身体の位置と運動について、個々の感覚がそれぞれ特定の情報を中枢神経系に提供している。このようにして、各感覚は姿勢制御における異なる基準についての枠組みを提供している。

 

■視覚入力

視覚入力は周辺にある物体との関係において、頭部の位置と運動に関する情報を提供している。

窓やドアなど、我々を取り巻いている物体は鉛直方向に設置されているので、視覚入力は鉛直方向に対する相対的な情報を提供する。さらに頭部が前方へ動くと周りの物体は反対方向へ動くので、結果的に視覚系により頭部の動きの情報が提供される。視覚入力には周辺視野情報と中心窩情報との両方が含まれる。

視覚情報は脳により誤って解釈される可能性がある。視覚系は、外来性運動とよばれる目標物自体の運動と、内在性運動とよばれる自己運動とを区別するのが困難である。

 

■体性感覚入力

体性感覚は中枢神経系へ空間の身体位置に関する情報を送るが、これは支持面を基準とした位置と運動の情報である。これに加えて、全身からの体性感覚により身体節相互の位置関係についての情報を得る。体性感覚には関節と筋の固有受容器、皮膚感覚、圧感覚の受容器が含まれる。

正常な状態で、しっかりとした平坦な面に立っている場合には、水平面に関する自分の身体位置と運動に関する情報が体性感覚受容器により与えられる。しかし、たとえばボードのように、自分自身と一緒に動いている面や、水平でない坂などの面上に立っている場合には、その面を参考として鉛直方向の定位を維持するのは容易ではない。これらの状況では、立位面を基準とした身体位置に関する入力情報の報告は、鉛直方向の定位を確保するにはあまり助けとならない。

 

■前庭入力

前庭系からの情報もまた、身体の定位に関する情報の重要な源である。前庭系により中枢神経系は頭部の位置と運動についての情報を得る。これは重力と慣性力を基準とした情報で、姿勢制御についての重力―慣性系の基準枠が与えられている。

前庭系には2種類の受容器があり、それぞれ頭部の位置と運動に関する異なる側面を検地している。

《半規管》

頭部の角加速度を検地している。半規管は特に頭部の速い運動に感受性が強く、滑ったり、ふらついたり、転んだりしたときのように、歩行中やバランスを崩したときに生じる頭部の運動に対応する。

《耳石》

並進運動における位置と加速度の信号を出す。重力は空間における自分自身の並進的な位置と運動に関して検地されるので、この耳石は重力を基準とした頭部の位置についての情報源として重要となる。耳石は、立位動揺時に生じるような頭部の緩やかな運動に最も反応する。このようにして前庭系からは頭部の位置と運動の報告が得られるので、外来性運動と内在性運動を識別するために重要なものとなっている。

 

前庭系からの信号のみでは、空間で動いている身体の状態について真の姿を中枢神経系に提供することができないことは興味深い。たとえば、中枢神経系は前庭入力だけでは、単にうなずいたのか(固定された体幹に対する頭部の相対的な運動)、あるいはお辞儀をしたのか(体幹の運動と一体となった頭部の運動)を区別できない。

中枢神経系はこの感覚情報をどのようにして姿勢制御に組織しているのであろうか。安静立位時の姿勢要求は、静的バランス制御とよばれることも多い。この姿勢要求は、それ以上に動的な制御を必要とする立位時の外乱動揺にさらされる場合や、歩行中の姿勢要求とは異なっている。

 

■安静立位時の感覚戦略

全身の体性感覚入力が、安静立位時のバランス制御に関与している。フランスの研究者のRollらによる研究では、閉眼状態で立っている被験者の眼周囲筋に振動を加えると被験者に動揺が生じ、その動揺方向は加振する個々の眼周囲筋に依存していることを発見した。身体動揺はまた、頸部の胸鎖乳突筋あるいは脚のヒラメ筋の加振によっても惹された。このことは、全身の固有受容入力のすべてが、安静立位の姿勢保持に重要な役割を果たしていることを示唆している。

安静立位における視覚の影響を調べた初期の研究では、開眼状態と閉眼状態での動揺の大きさを検査し、健常被験者では閉眼時に動揺が有意に増加することを見出している。このようにして、視覚は安静立位時のバランス制御に能動的に関与していると結論づけられた。開眼と閉眼での身体動揺の比は、ロンベルグ指数とよばれてきた。

 

■外乱動揺下立位での感覚戦略

視覚系、前庭系、体性感覚系入力は、不連続な外乱動揺からバランスを回復する間、姿勢制御にどのように寄与しているのであろうか。

視覚的手がかりを介して送られる動揺に関する信号への筋応答の潜時は、200msec程度でありたいへん遅い。これは支持面の水平移動に反応して発生する体性感覚への応答(80~100msec)とは対照的である。このように支持面の移動により生じる体性感覚の応答は、視覚により起動される応答よりかなり速い。そのために、支持面が急激に移動して身体が不安定となったときに動揺を制御する場合、神経系は優先的に体性感覚に依存していると研究者は考えてきた。

前庭系は、支持面が外乱同様を起こす場合の姿勢応答に対して、相対的にどのくらい寄与しているのであろうか。Dietzらによる実験では、前庭系の寄与は体性感覚系に比べはるかに小さいことが示された。ある程度の加速度に対して、前庭系からのっ信号への筋の応答は、足部の移動により生じる体性感覚の応答に比較して1/10であった。この結果は、前庭系入力が、支持面を水平方向に移動した場合の姿勢の回復制御においてわずかな役割しか果たしていないことを示唆している。

運動課題にかかわらず、いずれの感覚であってもそれ単独ですべての環境において空間にある身体の位置と運動に関する正確な情報を中枢神経系へ提供できるものではない。

 

■姿勢制御への感覚系の適応

ある感覚が、身体位置を最適な情報あるいは正確な情報として提供できない環境では、定位情報の源としてその感覚に与えられる重みは減少する。一方、相対的に正確な他の感覚に対する重みは増加する。定位にとって有効な感覚が冗長性をもつことと、中枢神経系が姿勢制御に関する感覚の相対的重要性を修正する能力をもつことによって、変化に富む環境下で安定性を保つことができる。

姿勢制御には多重感覚入力を姿勢定位のための感覚戦略へと組織化する要素が含まれる。この過程には、感覚に関する基準枠の階層的な順位が含まれる。そのためにも、最も適切な感覚が環境と運動課題に関して選択される。感覚戦略とは、すなわち感覚に与えられる相対的な重みを意味し、年齢、課題、環境に依存して変化する。正常な状況下での姿勢制御に関して、神経系は視覚系、前庭系入力以上に体性感覚情報の重要性に重みをつけているのである。

 

【予測姿勢制御】

予測姿勢制御とは、膵胃運動の際に主導筋に先行して生じる筋活動を含んだフィードフォワード系の姿勢制御であり、外乱が生じた後にみられる反応的姿勢制御とは区別される。

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