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(//∇//)消化器系手術と術後管理の話


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( ^)o(^ )題名:消化器系手術と術後管理の話

 手術が終わって病室に戻った患者は、待っていた家族にも会い、「手術が無事に終わった」という一種の安堵感をもつ。一方、損傷の加わった術後の生体内には、種々の変化がおきる。それは、手術の侵襲に対して、恒常性を保とうとする力が働くためである。損傷した局所の修復はもちろんのこと、全身的にも生体のストレスに対する防御反応があらわれる。疼痛の出現もその一つと考えられる。すなわち、”術後”とは、手術は”終わった”が治癒過程の”始まり”ととらえるべきであろう。術後の看護は、手術の侵襲による生体反応を知って、その人の回復力を補い、強化することである。
創傷の治癒の促進、合併症の予防と機能の回復、社会復帰を目的として順調な回復過程をたどれるよう、身体面・心理面・社会面からのアプローチを心がける。とくに現在では高齢者の手術が増え、また広範囲の手術が可能になったため手術の適応が拡大し、合併症予防の困難な手術も増えている。手術侵襲によって急激にひきおこされる生体反応のメカニズムを理解し、おこりうる合併症を予測した経時的なチェック、異常の早期発見に努めるとともに、医師と連絡をとりながら早期に適切な処置を講ずれば、術後の経過を順調に導き、早期回復を可能にする。

検査

  • 動脈血ガス分析
  • 血液一般検査
  • 血糖測定
  • 尿糖・尿生化学検査
  • 尿比重測定
  • 心電図
  • パルスオキシメーター
  • 胸部および腹部X線検査
  • 消化管透視・造影
  • CT
  • 培養

術後の経過と管理

 MOOREは、手術後の回復過程を4つの段階に分けている。それによれば、第1相は、障害期で、手術後2~3日続く。(侵襲の大きさにより、この時期は変動する。)第2相は、変換期で、1~3日続く。これら第1、第2の2つの相は、手術侵襲に続いておこる異化相であり、その後の同化相とは異なった生体の反応過程を示すと考えられている。この急性反応期間中は、生体反応が刻一刻と変化するため、注意深い観察と適切な管理が必要である。第3相は、筋力回復期で、術後7日目頃より始まり2~5週間持続する。この時期は、神経・内分泌・代謝系の機能が手術前の状態にまで回復しており、体蛋白の合成の亢進にともない体力がついてくる。第4相は、脂肪蓄積期で、手術後1ヵ月ごろより始まり2~5ヵ月間持続する。この時期は、体蛋白の合成は停止し、脂肪の合成が開始され体重が増加する。

1.精神的サポート

 消化器系の手術をうけた患者は、これまで食べられなかったことに加え、術後も経口摂取開始までに長期間を要したり、経口摂取が開始となっても食生活の変化を余儀なくされるため精神的負担は大きくなる。不安の内容や程度、表出の仕方などは個人によって異なるため、患者各人の訴えを判断していくことが大切である。手術を受ける際には、術式や病名を説明した上で手術に臨むが、時として癌の場合など告知をしていないこともあるため、医師からの説明内容を把握し、言動の統一を図っていくことが重要である。また、患者にとっての重要他者の存在を把握し、協力を得るとともに、かかる負担の軽減を図る。術後の疼痛や輸液ルート、ドレーンなどによる拘束感、不眠、機器からの音、環境の急激な変化により精神のバランスを失い不穏状態に陥ることがある。精神の安定を図るために、鎮静剤などの薬剤投与や、生活にリズムをつけ早期離床、ルートの整備など環境の調整をはかる必要がある。

2.疼痛の管理

 手術後の疼痛は、手術形式、麻酔法により異なり、また個人差も大きい。特に高齢者の場合、疼痛は心肺機能に負担をかけ、血圧の上昇や不整脈を誘発したり、疼痛のため深呼吸を拒否し、無気肺や肺炎を起こしたりする。そのため患者には疼痛を我慢させずに十分な除痛を行う必要がある。最近では、手術時に硬膜外カテーテルを留置し、術後に持続的に麻酔薬を注入することで疼痛の緩和を図っている。硬膜外カテーテルが留置されている場合は、刺入部からの出血の有無や麻酔薬の残量などを確認する。また、留置後は一過性の排尿障害が起こり得るため膀胱内留置カテーテルの抜去は見合わせることがある。術後合併症の一つである創感染は、術後36~48時間頃から創痛が再び強くなる。このことから疼痛は合併症の警告であるといえる。

3.呼吸器系の管理

 長時間に及ぶ麻酔の影響や痛みによる呼吸抑制により、低酸素状態に陥りやすいため、ピューリタンマスクや、フェイステント、経鼻カニューラにより酸素投与が行われる。また、気管内挿管麻酔では気道内分泌物が増加する。この影響により、術後気管支が閉塞し無気肺をおこしたり、無気肺や吐物の誤嚥が原因で肺炎を招いたりと肺合併症をおこすことがある。術後は肺合併症の予防と呼吸の安定をはかるため、深呼吸を促すとともに、呼吸状態の観察(数、深さ、リズム、呼吸音、咳、痰、喘鳴の有無)、胸部X-Pによる肺野の確認、動脈血ガス分析のデーターの把握を行い、適切なケアにつなげていかなければならない。手術侵襲が大きく、呼吸循環動態が不安定であれば、人工呼吸器装着による呼吸管理を行う。この場合、患者は発声ができないので、筆談や文字盤を用いたコミュニケーションの工夫が必要となる。

4.循環器の管理

 術中の出血や体液喪失により、術直後は循環系機能は抑制される。その後、代償機序(主としてカテコールアミンの作用)が働き、心拍出量は増加し、末梢血管抵抗は減少する。さらにこの時期には、アルカローシスがみられ、この為に酸化ヘモグロビン解離曲線が左方へ移動し(PO2の低下)、血液は末梢組織で酸素を放しにくくなる。そこで組織への血流を増やすために代償的に心拍出量が増加する。第1相では心臓をはじめ、循環器系に負荷がかかりやすい状態にあること理解し、高齢者や高血圧、心疾患の既往のある患者では心電図モニター、水分出納(in-out)、中心静脈圧、電解質、血液pHなどを経時的に観察する。また、低血圧、低酸素血症、高炭酸ガス血症による迷走神経の刺激により不整脈がみられることがある。不整脈や1分間に数個の危険な不整脈があるときは医師に連絡し、必要に応じて抗不整脈剤が投与される。時間毎の尿量測定は、術後患者の循環血液量、心肺機能、腎機能などの状態の判断基準となるため正確に測定し、0.5~1.0ml/kgまたは医師の指示量を確認し、異常の早期発見に努め循環血液量が維持されなければならない。

5.輸液・輸血の管理

 術後は手術野、腸管内液などサードスペースの増加、コラーゲン線維ゲル化による水とNa吸着、血管外に浸出した膠質の水分かかえこみ、細胞内外でのNa-Kポンプ機能低下による細胞内の水とNaの増加による有効細胞外液量(循環血液量)の減少がおこる。第1相では循環血液量の維持(循環動態の安定)を第一義的に考えて、水・電解質の生理的喪失の補充と血液pH、膠質浸透圧の維持に重点を置く。なかでも、Kは心筋に重篤な影響を及ぼすため、心電図のモニタリングや、血液データーの把握、バイタルサインや患者の自覚症状に注意する。第2相に入るとサードスペースに貯留されていた水分、Naが循環血液中に戻ってくるため、管理上輸液量を減らす。輸血を行う際は、輸血の照合(患者名、型、期限、番号)を二人で行うこと、凍結血漿は落下の衝撃で容易に破損すること、37℃で解凍して使用すること、また、感染予防や副作用の軽減を目的として赤血球製剤は照射処理したものを使用すること、末梢の単独ルートから滴下し、必ず血液型を表示するプレートを一緒にさげておくなど取り扱いに注意を払う。滴下開始後も副作用の有無や患者の状態を把握する必要がある。

6.栄養管理

 侵襲で分泌増加した副腎皮質刺激ホルモンの作用を受け、糖質コルチコイドの分泌が高まる。また、交感神経の興奮は、膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌を抑制、α細胞からのグルカゴン分泌を促進する。それらの働きを受け、肝のグリコーゲンの分解によりグルコースが、筋蛋白質の分解によりアミノ酸が、貯蔵脂肪の分解によって、遊離脂肪酸が供給され、肝での糖新生が促される。そこで、相対的なインスリン作用不足から耐糖能の低下、尿中窒素排泄増加を特徴とする外科的糖尿病の状態となる。この際、浸透圧利尿により多尿となるため、その後の脱水に注意を要する。一般の患者では回復期には、インスリン分泌抑制は急速に回復し、耐糖能の改善とともに必要なインスリン量が減少してくるので、低血糖を起こしやすく注意を要する。また、糖尿病の患者ではインスリンの不足が遷延する一方、抗インスリン各ホルモンの相乗効果は著しく、高血糖、尿糖、ケトアシドーシスや高浸透性昏睡へと進展する危険性が生じ得る。血糖あるいは尿糖測定を行い、スライディングスケールに沿ったインスリンの投与や医師の指示による処置が行われる。肝臓では、糖新生のほか各種のホルモンや血液凝固因子、創傷治癒、免疫物質などの産生に必要な蛋白の合成を促し、侵襲生体の細胞機能を維持している。

7.中心静脈栄養法(IVH)の管理

 術後(あるいは術前より)は栄養状態や体液バランスを改善、維持するため末梢静脈栄養法(DIV)やIVHが併用される。エネルギー価を高めるには高濃度を要するので、溶液の浸透圧が血漿の4~5倍になる。そのため、末梢静脈では血管痛や静脈炎を起こすので、大量の血液が流れる太い静脈(通常は鎖骨下か内頚静脈)から、必要な栄養素(高張・高浸透圧の糖質液、アミノ酸剤、脂肪乳剤)を輸液によって補う方法である。DIVのように毎回針を刺入する必要が無く、長時間の固定に耐えなくてもよいが、24時間持続で行われることでの拘束感や、血栓形成、細菌感染による合併症を起こしやすい。したがって、輸液を正確に血管内に入れるとともに、刺入部の消毒、輸液セットのフィルター(微生物や輸液調整時の異物注入を防ぐ)の定期的な交換などに留意する必要がある。滴下速度により血糖値の変動やその他の代謝障害を起こすため定時的に見回り、必要時血糖、尿糖をチェックし血糖値の維持をはかる。意識障害のある患者は、無意識にカテーテルを抜こうとしたり、カテーテルの存在を無視した行動をとる危険があり、十分に管理される必要がある。

8.経管栄養法(EN)の管理

 食道癌根治術のように、食道との吻合部をしばらく安静を必要とする場合、術中に空腸内に留置した細いシリコンチューブを介して栄養を送り込む方法である。利点としては、代謝経路が生理的で、吸収を通じ全体の調節を受ける、消化管粘膜が生理的状態に保たれ、粘膜萎縮によるエンドトキシンなどの侵入を防げる、手技・管理がIVHに比べ容易、などが挙げられる。人工経腸栄養液には、窒素源としてアミノ酸、糖質としてデキストリンを含む成分栄養剤がよく用いられる。排ガスをみてから開始するが、吻合部への逆流防止のためファラー位~座位にて注入する。頻発する症状として腹満・腹痛・下痢があり、初回投与時に患者に説明し、異常の早期発見に努める。なかでも、下痢はもっとも難渋するが、栄養液の量・濃度・速度・温度を工夫することで改善されることも多い。いずれにしてもその発現には高浸透圧や細菌汚染が関与している可能性が強く、いったん溶解した栄養液を長時間で投与する場合には腐敗に十分注意する。規定量を規定時間に滴下するために、チューブ内腔の残渣に対する白湯通し、定期的なパック交換が必要である。また、IVHとのルートを区別するために、三方活栓の色分けなどの工夫と注意が払われなければならない。

9.経口栄養法の管理

 胃管抜去後、胸焼け、吃逆などが無く、腸蠕動が聴取され、排ガスをあれば、また透視で縫合不全がないことを確認してから、まず少量の水を与え、体温上昇や誤嚥がないことを確認する。異常が無ければ、1回量を少なくして頻回に分けて与え、徐々に増量していく。ファウラー位をとり、食物が重力によって腸管内に移行するようにする。術後の経口摂取量は術前を下回るのが普通であることを患者に理解させて過剰に摂取しないように注意する。食道切除後の嚥下困難や胃切後のダンピング、腸切後の下痢・便秘など、消化器系手術後には後遺症を残すことが多く、それらの観察と対処が必要となる。疾患別パンフレットに沿った指導と、理解度を確認し、個人の嗜好、これまでの食生活を踏まえて、個別的なアドバイスを行う。食事は、食欲という生理的欲求を刺激として味覚・嗅覚・視覚など大脳の働きに支配を受けて行われており、おいしいものを楽しく食べることは、高次のニーズを充足させることにつながる。

10.ドレーン管理

 開腹術におけるドレーンの留置目的は、治療的ドレナージと予防的ドレナージがある。用途に応じデュープル、ペンローズ、フィルムドレーンなどが使用される。治療的ドレナージは腹膜炎などによる腹腔内濃汁および浸出液の排除や手術で大きな死腔が形成された場合に用いられる。予防的ドレナージは術後出血の危険、縫合不全が危惧される場合などに用いられる。術後出血は48時間以内におこるため、ドレーン留置時は排液の色、量、性状を観察する。また、排液によりルートが閉塞しないよう適宜ミルキング、誘導が必要である。貯留液の有無や性状の観察のため、二重管を使用して低圧持続吸引が行われる。設定圧で吸引されているか、ブルーラインは開放されているか、ルートの屈曲やエアリークも確認する。

 開胸術後には胸腔ドレーンが留置される。その目的は、胸腔内を正常陰圧の状態し、肺の再膨張を促す、死腔を小さくする、浸出液の排除、膿胸・気胸を治療する、である。ドレーンは生体に与える刺激が少なく、柔軟性があるシリコンチューブが利用される。ドレーン先端は手術によってできた死腔で、術後の体位から血液や空気が貯留しやすい部位に達するよう挿入する。ドレーンは抜去しないよう胸壁にしっかりと固定する。長さは、体位変換に支障がない程度に延長する。空気や排液が胸腔内へ逆流するのを防ぐため、常にドレーン鉗子を2本ベッドサイドに設置し、パック交換や体位変換、患者の移動時にはドレーン閉鎖し吸引を停止した状態にしてから実施する。しかし、エアリークがある場合はドレーンを閉鎖せずウォーターシールにする。吸引中は排液量やその性状を経時的に観察する。排液は術直後は新鮮血であるが、暗血性からしだいに漿液性になってくる。いつまでも新鮮血の流出が続いたり、200ml/時以上の出血がある場合は医師に報告する。ドレーン抜去は、排液の量や性状、X線写真による残存肺の膨張程度などを参考にして決定される。抜去は気胸を防ぐため深呼吸をさせ、呼吸を止めた状態で手早く行い、ドレーン孔は縫合閉鎖する。

11.胃管の管理

 術前、術中に留置された経鼻胃管は術後、消化液の胃内貯留の防止と吻合部の減圧を図るため留置開放されている。胃管は消化管運動が再開し、排液量が減少したら抜去する。自然流出してくる場合もあるが、ほとんどの場合ルートの誘導、浣腸器での吸引が必要である。ただし胃切の場合など吸引が禁であることもあるため、医師に確認をしておく必要がある。また、胃管からの血性排液が持続しておる場合には消化管出血を起こしている可能性が強く、バイタルや患者の状態把握を行い直ちに医師へ連絡する。術後消化管出血は吻合部と断端閉鎖部から起こるのが大部分である。自然排ガス後も200~300ml/日以上の排液があれば吻合部の狭窄か、大量の腸液の排出があれば術後イレウスが考えられる。胃管は種々の合併症のインフォメーションとなるためその排液の量、性状の観察が重要である。胃切の場合、胃管を抜去し、再挿入するときは吻合部の穿孔を起こすことがあるため、透視下で行われる。長期にわたる胃管の留置は、水分や胃液内の塩酸を喪失することになるため、電解質のバランス、水分出納の観察も重要となってくる。

12.創部の観察

 術中操作や術後処置による感染や、糖尿病や低栄養状態にある患者などは免疫能の低下をきたし、創の感染を起こす場合がある。創感染を起こすと、術後36~48時間頃に創痛が再び強くなり、創の発赤や腫張、硬結や圧痛を認めるようになるため、ガーゼ交換時の創の状態観察が必要である。また、体温上昇や脈拍数の増加、白血球の増多が現われてくるため、バイタルサインの変動の有無、血液データの把握が必要である。”膿”には皮膚損傷をきたす蛋白分解酵素が含まれている。化膿したら創口を十分に開いて排膿させ、ガーゼやドレーンを挿入したり、洗浄を行ったりする。起炎菌はブドウ球菌・連鎖球菌・大腸菌・緑膿菌などである。培養感受性テストで抗生物質が選ばれるが、耐性菌も少なくない。創感染の存在や、咳・嘔吐などによる腹壁の強い緊張、腹腔内圧の上昇、低蛋白血症を要因として体表面での創の離開を起こすことがある。この場合、腸管の露出に気付いたら、とりあえず滅菌のガーゼで創部を広く覆い、幅の広い絆創膏で多少圧迫するように固定し、医師に連絡して処置を待つ。

13.清潔保持

 口腔ケア: 術後、経口摂取ができない場合、唾液分泌が低下し、口腔が乾燥状態となり、舌苔(舌の上に生じる白色ないし黄色のリンパ球、上皮細胞などによる苔状のものであり、細菌感染を起こしやすいとされている)が付着し、さらに口臭が強くなる。口腔内の清潔を保つということは、唾液の自浄作用など生理的機能を保持したり、細菌の繁殖による二次感染を予防するだけでなく、生活リズムを整え、爽快感を与えるなどQOLの向上を目指すケアであるといえる。方法としては、歯ブラシによるブラッシング、含嗽、清拭法、洗浄法などがある。患者の自立度に合わせ体位、方法を工夫し援助する。

 目、耳、鼻の清潔ケア: 小さいながらも、鋭敏で重要な器官であり、これらの器官の汚れや不調は人間の神経をいらだたせ、不快または苦痛を伴うことが多い。本来、器官自体が常に浄化するような仕組みをもっているが、術後にこれまでの清潔行為が遂行できなくなった場合、看護援助が必要になる。視覚補助具(眼鏡、コンタクトレンズなど)や、聴覚補助具(補聴器など)の普及により、これらを用いている人も多く、看護者はこれら補助具の取り扱いや、手入れの仕方を習熟することも大切である。胃管留置中であれば、チューブの刺激により鼻粘膜の分泌作用が亢進し、分泌物が増える。分泌物で鼻腔が閉塞することもあるので毎日確認し、閉塞があれば蒸しタオルや綿棒で拭き取る。また、鼻腔粘膜常在菌による感染の予防にイソジンゲルを塗布する。胃管や挿入チューブを固定している絆創膏は、汗や皮脂で剥がれやすい。一日に一回は絆創膏を貼り替える。

 体幹・四肢の清潔ケア: 身体を清潔にするということは、老廃物を排泄するという皮膚の機能を促進させるだけでなく、人間としての「その人らしさ」を尊重することでもある。側臥位がとれればどのような患者であっても体幹・四肢の清潔は維持できる。患者がどれだけ清潔ケアを必要としているかという視点でとらえ直さなければならない。ケアにあたってはポイントを押さえた皮膚の状態:皮膚温(循環・呼吸障害、体温調節の異常がある場合)、皮膚の緊張度(栄養障害、脱水などのある場合)、皮膚の色(肝・胆道系の障害などがある場合)、皮膚の損傷(ドレナージの実施、免疫力の低下などがある場合)、皮膚の外観(発赤、発疹などがある場合)、を観察する。褥瘡を形成した場合、グレードによっては、創治癒以上に時間を要することがあり、その予防と早期発見、対処が重要となる。

 陰部の清潔ケア: 全身麻酔下の手術ではほとんどの場合、膀胱留置カテーテルが挿入される。侵襲の大きな手術や、腎機能が低下している高齢者、泌尿器系や骨盤内域の操作を伴う手術の場合ではカテーテルを長期留置せざるを得なくなる。カテーテル留置中、外部から細菌が侵入しやすいのは、外尿道口周囲、留置カテーテルと集尿パックのつながる管との接続部位、そしてバッグの尿流出口であるといわれている。そのためカテーテル留置中は各接続部位を不用意にはずさないよう、また、カテーテル交換時の無菌操作はもちろんのこと、陰部洗浄や清拭による恥垢や分泌物の除去、外尿道口のイソジンゲル塗布によって、上行感染を予防するよう努める。つねに尿の性状を観察し、培養の検査結果にも注目する。

 足浴: 簡便な方法で入浴気分に近付ける。清拭が、比較的皮膚の清潔を目的として実施されるのに対して、足浴は、保温効果、リラクゼーションを目的として実施されることが多い。その目的に応じて、洗浄剤・入浴剤を選択し、湯の温度や量を調節する。

 洗髪: 頭部には脂腺とアポクリン腺が存在し、一定面積あたりの脂腺量は他の皮膚よりも多いため汚れやすい。発熱により発汗したときや、床上安静で長期臥床をしていると、汚れの付着を増すとともに、患者自身のセルフケア能力が低下するため汚れがひどくなる。放っておくと、この汚れに常在菌が付着して悪臭を発生させたり、頭皮を刺激し掻痒感を起こし、さらに毛孔をふさぎ皮膚呼吸を困難にする。頭髪は人目につくものであるから美容上の意義も大きく、その清潔が保たれることは精神的安定にも重要な役割を果たす。患者の清潔習慣とニーズを把握し、自立度を踏まえ、安全・安楽な実施に留意する。

14.術後ベッドの作成

 予定されている手術の方法や病状から、術後の状況を予測して、器械やベッドその他、必要となる物品を備え、安全で快適な環境を整えておく。侵襲の大きな手術ほど術後の可動域が制限されるため、褥瘡予防にエアマットが必要となる。術直後は医療者が処置しやすいベッドの高さで、離床に合わせて電動ベッドや低床ベッドへと交換してゆく。ベッドは術創からの浸出液や、出血・吐物・含嗽液・排泄物などで汚れる可能性があるので、ケアシーツで覆っておく。ベッド柵やナースコールも点検し、安全が保てるように準備しておく。帰室時間に合わせて寝具を暖め、術後の末梢循環の改善に備える。覚醒不十分な患者の場合、保温用の湯タンポも熱傷の原因になり湯の温度と置く場所に気をつける。ME機器は安全に使用されなければならない。この場合、患者への安全はもちろんのこと、看護者の安全も考慮する必要がある。機器の設置環境の調整、使用前後の点検、扱う者の教育の重要性はいうまでもない。ME機器を使用している患者は多かれ少なかれ機器の使用に対して不安を抱いている。わけのわからない機械、その機械に身を委ねなくてはならない事実、機械にばかり注意をし、自分を人間としてみてくれない医療者など、さまざまな思いが不安を形成している。1人の人間として尊重されているという実感をもてるように接することが重要で、機器使用に対する十分な説明と、質問や不安の訴えにはいつでも耳を傾けるという姿勢を示すことが大切である。

15.早期離床

 早期離床は合併症を予防し、全身の機能を活発にし、術後の回復を促す。呼吸器系へは、酸素需要量の増加により、呼吸数・深さが増大し、肺合併症の予防となる。循環器へは、心拍出回数・量の増加により毛細血管への血流が増加し、創傷治癒を促進する。腎血流が増加し、腎機能が促進され、排尿が自立する。また、循環の促進は化学的刺激物の除去へと作用し、創部痛を軽減する。さらに、脳の酸素供給量増加は精神運動を活発化し、各機能の回復や注意力の上昇に伴い意欲の増大がみられる。消化器への作用は、腸蠕動を亢進させ、ガスの排出を促し、腹部膨満を軽減する。離床や運動は患者の意志によるところが大きい。離床の効果を説明しながら支えていく。はじめての離床時は、めまいや足のふらつきもあるので、転倒を予防して付き添う。高齢者や合併症の出現で離床がおくれる場合は、マッサージや他動運動によって、能力低下を予防するようにする。

術後合併症

1.肺合併症

 手術創が特に上腹部の場合は、呼吸時の創痛が強度となり、浅い呼吸を続け十分な肺の拡張がみられないことや、長時間の麻酔の影響で気道分泌物が増加する一方、喀痰の粘調度が増し、創痛のため十分に痰の喀出ができないなどで痰が貯留し、無気肺から肺炎を併発しやすい。

2.術後出血

 結紮糸の脱落、あるいは収縮していた血管が手術後に動脈圧が正常に回復したことにより、血管や切離面から術後48時間以内に起きる一次的出血と、術後1週間前後に生じる出血とがある。創部出血と胸腔内出血、腹腔内出血、消化管出血がある。血液凝固機能障害のある患者、長期ステロイド使用患者、閉塞性・肝細胞性の黄疸のある患者は後出血を起こしやすい。留置してある各ドレーンからの血性の排液がインフォメーションとなる。

3.術後感染

 微生物・病原体が生体内に侵入、増殖し生体内に病的変化を与える。感染部位は自然治癒しにくく、治療を加えないと化膿、壊死をもたらし、重篤な場合には死を招くこともある。手術内容やドレーン、チューブ類挿入による上行感染、栄養不良や糖尿病患者などで起こしやすい。バイタルサイン、熱型、疼痛、創、ドレーンからの排液・性状の観察とアセスメントを行う。

4.縫合不全

 縫合部位に一時治癒が営まれず、縫合線に破綻をきたす場合をいう。縫合不全には、手術に起因し、術後3日目以内に現われるものと、それ以降に現われるものがある。後者は局所の血行障害、消化管内圧の亢進、局所感染に基づく消化管壁の壊死、脱落によって生じる。縫合不全の部位や術式、高齢、栄養状態、合併症を有する場合は限局した炎症にとどまらず、重篤な経過をたどる。バイタルサインの変化、ドレーン排液の性状・量、ドレナージが有効であるかどうかの観察、管理を行う。発熱、白血球増多、頻脈、腹膜炎症状などの臨床症状が術後1週間前後に出現したらまず第一に縫合不全を疑う。

5.消化吸収障害

 胃の形態変化による貯留機能の低下と消化吸収力の低下、大腸広範囲切除後の水分吸収能低下、消化管切除後の消化液の分泌不足などにより起きる。特に脂肪の消化・吸収障害を起こしやすい。これらは、胃内容の排出時間の短縮や胃液・膵液の分泌量の減少、迷走神経切除に関連した障害が多い。ダンピング症候群は、胃貯留機能の消失または低下により高張な食物が腸内に入った結果、小腸の拡張と蠕動亢進が起こり循環血液量が減少し、血糖の上昇、血清Kが低下することによって起きるといわれている。消化吸収能力の低下は迷走神経本幹の切離により小腸の吸収能力の低下、胆汁・膵液消化ホルモンの分泌低下、減酸による蛋白の吸収低下、鉄・ビタミンB12・Kの吸収低下によって起きる。

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 術後ケアの目的は、手術による侵襲から早期に脱却し、その治癒過程を促進させるように、術前の全身状態の評価に注目し、術後の合併症が併発せず、手術の目的を効果的、かつ確実に達成することにある。良性ではなく悪性であったり、早期癌ではなく進行癌であったり、進行が著しく根治術ができなかったり、術中に予期せぬ変化が起きたりなど、術前の予測と異なった状態で術後を迎えなければならないこともある。手術室からの申し送りや手術経過記録をもとに、術後も全体像を見なおし、看護上の問題を明確にして、その人にあった個別の援助方法を計画する。術後みたされない基本的ニーズの充足は、呼吸・循環・栄養、水・電解質バランス、創部、安楽・安全、機器管理であるが、成人病を合併する中高年者や、身体諸機能の低下した高齢者では、より厳密な観察、管理が必要となる。姑息的手術となった場合には、患者と家族とは違った説明がされることがあり、患者のみならず家族の反応を継続的にみて、支えていく必要がある。

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(*´з`)参考文献

医療学習レポート.消化器系手術と術後管理


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