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(≡^∇^≡)脊髄損傷と解剖生理からリハビリの話


( ^ ^)題名:脊髄損傷と解剖生理からリハビリの話

1)脊髄

脊柱は身体の中軸をなす骨格部で、体幹の支持と運動に役立つ器官でもある。また各椎体の後方に椎弓を有し、椎孔の連続によって生じた脊柱管によって中枢神経である脊髄を保護し包含している。脊柱管内は内側より外側に向かって軟膜、クモ膜、硬膜の3層に分かれている。脊柱管内は骨と脊髄との間に約5㎜の隙間がある。脳脊髄液は脊柱管内でクモ膜と軟膜との間のクモ膜下に存在し脊髄の保護と栄養などを司っている。

脊髄は前後にやや長い扁平な柱状を呈し、長さ約40cm、太さは小指ほどで直径1cmの軟らかいゼラチン状をした白色の器官である。胎生3ヵ月までは脊柱管と脊髄は同じ長さであるが体肢の発育に伴い、脊柱と脊髄の両者間の発育に差を生じ、上端は第1頸神経根を境として延髄につらなり大後頭孔に始まる。上端はその位置に変化はないが、下端はしだいに上方に引き上げられるため成人では第I-II腰椎の高さで円錐状に終わり、それ以下で馬尾神経といわれる神経根の集まりとなる。

 

2)脊髄節

脊髄は頸髄8髄節、胸髄12髄節、腰髄6髄節、仙髄6髄節、尾骨1髄節からなる。各髄節からは前根、後根よりなる左右各1対の神経根が椎間孔を通り、脊柱管外に出て末梢神経となり、身体各部に分布する。脊髄は肢体の発達のために頸髄および腰髄部では上肢や下肢に神経を送る部分が膨大している。これをそれぞれ頸膨大および腰膨大とよんでいる。頸膨大部は第3頸椎から第2胸椎の高さにある。腰膨大部は第10胸椎から第1腰椎の高さである。

このように脊柱に比べて脊髄の長さが短いため脊髄の髄節番号と脊椎の棟突起番号の位置にはずれが生じ下部にいくにつれて番号のずれが大きくなる。これらは脊髄障害の高位診断においてもとくに留意すべき点である。

一般にその関係は次のとおりである。

 

内部構造

脊髄は横断してみると、内部にある。灰白質とその周囲をとり囲む白質とからなる。

(1)灰白質

脊髄を横断してみると、中心にきわめて細く狭い中心管がある。灰白質は中心管を囲みH状(蝶形)を呈する。

灰白質で前方に突出する部を前角、後方の突出部を後角という。前角と後角は、立体的にみると、柱状となっているので前柱・後柱とも呼ばれる。前角と後角との間にある灰白質を中間質外側部といい、H状の灰白質の横脚にあたる部を中間質中心部と呼ぶ。中間質中心部は中心灰白質ともいわれ、左右両側の灰白質を結び、中心管を囲んでいる。

 

(2)白質

白質は主として縦走する有髄線維からなり、前索・側索・後索の3部が区別される。

前索は前正中裂と前角との間にあり、側索は前角と後角との間にある。後索は後角と後正中溝との間にある。後索は、下等動物では発達が悪いが,ヒトでは良く発達している。白質では、生理的に同じ機能をもつ線維は集まって束をつくり縦走する。このような線維束を神経路といい、投射(神経)路と連合(神経)路とに、大別される。

投射路は脊髄と脳とを結ぶ神経路で、脊髄から脳に向かう上行性神経路と、脳から脊髄に至る下行性神経路とがある。上行性神経路は主として後索と側索の辺縁部とにあり、下行性神経路は前索と側索の中央部とにある。

連合路は脊髄の種々の高さ(分節)を結ぶ比較的短い神経路で、多くは灰白質に接して走り、固有束といわれる。

 

●脊髄損傷の原因

(1)外傷:外傷性脊髄症

開放性…切創、刺創

非開放性…骨折、脱臼、血腫

(2)炎症:背髄炎、膿腫、ポリオ

(3)変性疾患:筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症

(4)腫瘍:脊髄内腫瘍、脊髄外腫瘍

(5)脊椎疾患:変形性脊椎症、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症

 

●脊髄損傷の評価

1)概説

脊髄損傷者に対する医学的リハビリテーションの最終ゴールは日常生活活動能力の自立とQOLの獲得にある。脊髄損傷者の場合は機能的予後のほとんどが損傷レベルや程度などによって、ほぼその到達目標が推測できる。それに種々の阻害因子が加わると,さらに日常生活活動能力の自立への道を困難なものとする。そのなかでもとりわけ頸髄損傷者は、わずか1髄節の差が大きく機能的予後を決定するため慎重に評価しなければならない。

評価は理学療法開始にあたってチームの一貫した体系のもとに患者の状態を的確に把握し、たんに医学的側面から障害程度を決めるだけでなく、その背後に隠されている可能性を発見するため心理的・杜会的背景をも含めた、いわゆる全人間的見地から評価カがなされる。そのためには評価の目的を明確にし、それに従って可能な限りの情報収集を行い、治療目標(短期および長期目標)を設定し,治療計画を立案する必要がある。

 

2)障害評価

脊髄損傷の理学療法の評価目的や手順については他疾患と異なるものではない。しかし病体像の相違から評価項目の細部には脊髄損傷に特有な項目がある。それは脊髄が障害されることによっておもに起こってくるimpairment(機能障害〕とdisabi1ity(能力障害〕について着目すれば理解できる。脊髄が障害されて起こってくるimpairmentについては一次的障害と二次的障害がある。前者は脊髄そのものが障害されることにより起こってくるものであり、後者は前者を基礎として起こってくる廃用性症候群などである。disabilityについてはhandicap(社会的不利〕をつねに念頭においてdisabi1ityの改善に努めることである。それにはADLを中心とした基本動作能力と応用動作能力および生活関連活動等を考慮にいれた評価をしなければならない。

 

3)情報収集と評価項目

1情報収集

患者の全体像を中心として障書の程度・種類あるいは社会的背景などを把握するために行うものである。

評価をする前にはあらかじめ他部門から間接的にできる限りの情報収集をしておくことである。

そのおもな情報は以下の5つである。

1)個人的情報(患者自身に関する情報)

2)医学的情報(疾病,障害に関する情報あるいは身体機能に関する情報)

3)社会的情報(生活環境や生活状況に関する情報)

4)職業情報(職業に関する情報と職場環境に関する情報)

5)その他

 

2評価項目

(1)形態測定

①身長

補助装具、家屋の改造設計などの事前の目安になる。

②体重

ADL能力を予測するため

③痙性

ADL能力をどれほど障害しているかを調べる。

④胸囲

胸筋の発達状態、換気能力、胸郭の柔軟性の指標になる。

⑤周径

筋の発達具合、筋萎縮、腫張などの程度を知るための指標

腫張や萎縮度が1ヶ月に1cm以下であれば補装具処方可能である。

⑥四肢長

上肢長は座高、体重との関係からpush up能力を予測する。

下肢長は補装具処方の目安になる。

 

(2)身体機能評価

⑦ROM検査

可動範囲や拘縮あるいは痙性の有無を検査する。

⑧筋力検査

健常部:廃用性筋力低下の程度を測定

境界部:病的状態の筋力の程度を測定する

麻痺部:残存筋の有無を確認する。

⑨粗大運動機能テスト

握力、背筋力、ピンチ力、push up能力

⑩筋の持久力

⑪協調性テスト

タイミング、段階的位置づけ、正確さ、時間をみる

⑫ADLテスト

基本的動作能力、生活関連活動能力:時間、質(安全性・動作分析・実効性・効率性)を観察する。

(3)生理機能評価

⑬感覚テスト

表在感覚:触覚、痛覚、温度覚など

⑭深部感覚

骨、筋、関節から伝えられる知覚を調べる

⑮複合感覚

⑯反射

髄節レベルを調べる

 

●高位診断

1損傷高位の診断

Michadis,L.S.)によると次のとおりである。

機能的レベル:健全な最も末節の髄節番号をもって表現する。つまり、機能残存最下位髄節で示す。リハビリテーション医学では残存機能を重視するため、残存機能髄節で表すものが最も適していると考えるからである。

 

2機能的レベルの決定

神経学的に正しく判断するため、高位診断の補助として実施する。

脊髄高位(局在)の診断は次のものがある。

1)知覚障害…皮膚知覚脊髄支配図(dermatome)

2)運動機能…骨格筋脊髄支配図(myotome)

3)反射…深部反射、表在反射(ref1ex)

4)X線検査…単純、断層、CT、MRI、造影などがある。

皮膚節:これは単一脊髄節により支配を受ける皮膚の知覚領野を検査する。つまり、知覚を評価し知覚障害部位を判定する。知覚障害は表在知覚(触覚、温度覚、痛覚)や深部感覚(振動覚、圧覚、運動覚、位置覚)そして複合知覚(2点識別覚)などを丹念に調べなければならない。

損傷レベルの評価にさいして、初期には完全横断障害の場合、触覚、痛覚はほぼ同一レベルであるが、症状固定期になると痛覚に比例し触覚、温度覚は上位からの代償によって下降することがあるため、レベル診断に最も適するのは痛覚検査である。

この知覚障害の評価には皮膚知覚脊髄節支配図を参考にする。

 

3損傷高位の判定

1)知覚障害(dermatome):皮膚知覚レベルを高位別に検査する。

2)筋節(myotome):運動機能の診断に重要なものとしてmyotomeがある。これは単一脊髄髄節によって支配を受ける筋群を検査するため筋力(運動機能)を評価し損傷レベルを判定するものである。この筋カテストを行って、Zancol1iの分類を改良したものからグループ、細分類、判定基準となる機能をみる。筋の支配は運動機能に関係し直接ADLにつながるため、最も重要である。皮膚髄節支配および反射は補助的な手段として利用する。

しかし、骨格筋は多髄節支配であり、個人差もあるため必ずしも解剖学書にある脊髄髄節支配と完全に一致しないことなどから、機能レベル診断にはまったく問題がないわけではない。そのため個々の筋力評価よりも筋群の機能テストを実施することを推奨している。簡便棒査法として機能的に実用性のある各髄節の主要髄節とそれによる運動を以下に示す。

3)反射(ref1ex):深部反射および表在反射そして病的反射などもレベル診断の補助として利用されている。脊髄反射の評価は皮膚を擦過したり、腱を叩打して誘発される筋の随意収縮を判定する。脊髄ショック期には損傷部以下に中枢をもつ脊髄反射はすべて消失する。

この本態はまだよくわかっていないがBastianの法則と称し、上行性、下行性伝導路の遮断、運動ニューロン、介在ニューロンのシナプス機能が脱落する脊髄ショックによって起こると考えられている。ショック期を過ぎれば障害部を除いて反射が出現する。そのため痙性、深部反射、病的反射などが充進してくる。

その他、ホルネル症候群:T1損傷以上で出現する。C6以上で核上型、C7、C8で核型といわれている。これまで述べた脊髄損傷レベルあるいは残存機能レベルの診断は残存能力を知るための基礎になる。

損傷レベルの診断は次のものを総合的に判定する。

①皮膚の髄節支配 ②筋の髄節支配 ③反射などである。

それによって神経学的にどのレベル(部位)が損傷(または罹患)されているかを判断することができる。

 

●脊髄不全損傷の特殊型

 脊髄の部分的な損傷により障害部位に特有な神経脱落症状を呈する。

(1)脊髄前部障害

原因は主として頚椎後方より頚椎前部に圧迫あるいは直接破壊を受けることにより生ずる症候群である。

 症状は受傷直後より高度の四肢麻痺を生ずる。そして損傷部以下の運動麻痺(弛緩性麻痺)と損傷髄節支配域の知覚(温度覚・痛覚)消失そして膀胱直腸障害などを呈する。しかし、後索に由来する深部感覚である振動覚や位置覚および表在知覚である触覚などは温存される。

(2)中心性脊髄障害

 原因は主に頚椎の過度伸展により頚髄の弱い中心部に強い機械的因子(外力など)に加えて血管分布部の循環障害などの関与により脊髄灰白質と、それに隣接した白質の出血による脊髄中心部の破壊によって起こるとされている。中心性脊髄障害の症状は種々の程度の四肢麻痺や膀胱直腸障害を呈し、下肢よりも上肢に運動麻痺が強く、運動覚あるいは位置覚が保たれ、振動覚は部分的に障害される。痙性麻痺も強く現れることが多いが、知覚は軽度ないし正常である。この型はX線上骨傷を認めないものも多く、一定時間経過後、改善する傾向にある。

(3)脊髄後部損傷

後部脊髄障害は前部脊髄障害に比べてまれであり、側索障害を伴いことが多い。症状は触覚と深部感覚の障害が主体となり、温度覚、痛覚が温存した解離性知覚脱出を伴うものである。

(4)脊髄半側障害

 脊髄を正中線で二分した半側の障害である。このような定型的な半側障害は髄外腫瘍や椎間板ヘルニア初期像などで典型的なものがみられるが外傷では認めにくい、この症状は脊髄の障害側で損傷髄節支配筋に運動障害が起こり、脊髄の前角障害による弛緩性麻痺と、それ以下の錐体路障害による痙性麻痺、深部反射亢進、病的反射が見られ全知覚脱失(触覚、深部知覚麻痺)を示す。反対側は温痛覚消失するが、運動機能は良好である。

●脊髄完全損傷

受傷から24時間経過してもまったく回復の徴候がない場合完全麻痺とみなしてよい。この場合は機能回復の望みはない。

Michaelisは受傷直後完全損傷の臨床像を示すparaplegiaの場合は3週間、quadplegiaの場合は6週間は神経学的回復が望まれるとしている。また受傷直後に不完全損傷の臨床像を示す場合には、少なくとも6ヶ月を経過した後に損傷程度を決定するのが賢明であるとしている。

脊髄の完全損傷の主な症状

(1)自動運動は完全に消失し、しかも対称的である。

(2)知覚は脱失し、しかも横断性で上界の左右差はない。

(3)早期に鼓腸ないし水様便の失禁がある。

(4)運動麻痺は弛緩性である。

(5)腱反射は消失する。

(6)麻痺域に浮腫が現れる。

(7)排尿・排便障害が強く、持続的である。

(8)早期に褥瘡を形成する

 しかし、頚髄損傷では麻痺域の上界に左右差がみられる場合もある。

 

●自律神経障害

 自律神経は交感神経と副交感神経とに分けられ、相互に拮抗作用がある。交感神経の中枢は脊髄の胸腰部側角(Th1~L2)にあり、脊髄前角を通り皮膚、血管、内蔵などに分布している。

 副交感神経は、脳神経の一部(動眼、顔面、舌咽、迷走)に含まれ、胸部および上腹部臓器に達するものと、仙髄(S2~S4)から骨盤臓器(膀胱、直腸、生殖器など)に達するものがある。

 すなわち交感神経は脊髄の胸腰部側角(T1~L2)から、副交感神経は脳神経の一部ならびに仙髄から機能する。このため脊髄損傷では、血管運動神経麻痺、発汗障害、排尿・排便障害、性機能障害など種々の自律神経障害が起こる。

1)自律神経過反射と集合反射

 これは第5,6頚髄以上の脊髄損傷者において損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。その発生機序は不明であるが、主に膀胱や直腸の膨満といった骨盤内臓器の緊張刺激が原因として誘発される。

 症状は頭痛、発汗、発作性高血圧、徐脈、呼吸困難、動悸、鳥肌立ち現症など。

 対策は促通刺激となる刺激を取り除くことである。頻回の発作は排尿管理に問題がある場合が多い。

2)体温調節障害

 第6胸髄以上の脊髄損傷者は放熱面において発汗機能障害のため不汗部位が存在し、産熱面において筋収縮力の喪失および熱摂取量や基礎代謝の低下などからバランスが崩れ体温調節機能に以上をきたす。

 皮膚温は外界温度に左右されるようになり、低体温あるいは高体温という変温性を示す。特に夏季の暑熱により発汗機能障害(頭部を含めた全身の汗腺はT1~L2で支配されている)のためうつ熱を生じることがある。体温調節機能は受傷後数年を経過しても改善がみられない場合もある。

 対策は四季を通じての配慮と、特に夏季には物理的手段として人工冷房の有効性は大きい。

3)血管運動障害

 第5胸髄以上の脊髄損傷者は初期に腹部臓器や下肢の交感神経系の支配が断たれ、障害領域における血管運動神経麻痺などのため起立位をとらせると腹部内蔵の血管に血液が停滞し血流配分の不均衡を生じ、起立性低血圧を起こす。

 対策は早期からの呼吸訓練、体位変換、腹帯の利用、坐位、移動、起立位、車椅子動作、歩行などにより反射性血管収縮への脊髄反射機構の再適応を促進させることである。

●合併症

1)褥瘡

 褥瘡の原因は圧迫による阻血性壊死であり、発生頻度の高い合併症である。脊髄損傷における好発部位は仙骨部、坐骨部、踵部、大転子部など、皮下組織が少ない骨隆起部である。特に脊髄ショックにより血管運動反射が回復していない時期は発生しやすい。

 褥瘡は難治性であり、日ごろからの除圧、スキンケア、皮膚チェックによる予防管理が基本となる。

2)異所性骨化

 麻痺部の関節周囲に新生骨の増殖がおこる疾患である。そのため、ROM制限を起こしADLの障害をきたすことも多い。

 好発部位は、下肢では股関節周辺、膝関節、上肢では肘関節に多い。初期症状として腫脹、熱感、他動運動時の抵抗感があるため、理学療法士が最初に症状に気がつくことが多く、注意が必要である。

 治療について大切なことは早期発見であり、異所性骨化が疑われる場合には薬物(エチドロン酸二ナトリウム)の投与が骨化予防として有効である。

3)関節拘縮

脊髄損傷の場合は、麻痺と安静による不動化、麻痺境界部の筋力の不均衡、痙性による筋肉の短縮により関節拘縮が生じる。頚髄損傷の場合は、肩甲骨の下制筋群の麻痺により僧帽筋の挙上力が優位となり肩甲骨の体幹に対する挙上位拘縮が臥床期に生じる。

肘関節は上腕二頭筋が上腕三頭筋よりも優位である場合が多く、屈曲拘縮をきたしやすい。これらの肩甲骨、肘関節の拘縮は、頚髄損傷のリハビリ開始後、プッシュアップ動作の大きな阻害因子となる。

手関節は屈伸の拘縮をきたす。中手指節間関節は良肢位固定を行わないと容易に伸展拘縮をきたし、指節間関節は屈曲拘縮をきたしやすい。これらの拘縮を起こすと手関節背屈による機能的腱固定効果が不良になる。

体幹、下肢で頚髄・胸髄損傷ともに、長期臥床により脊柱の可撓性が失われ、坐位バランスが不良になる。

ハムストリングスの短縮は起こりやすく、長坐位で膝関節の屈曲が起こり、バランス不良の原因となり、床上動作に支障をきたす。

車椅子坐位をとる慢性期では、股関節の屈曲拘縮、膝関節屈曲拘縮、股関節内転筋の痙性による内転拘縮が起こりやすい。

 

4)肩手症候群

 外傷性の交感神経機能障害である反射性交感神経性ジストロフィーのなかの肩手症候群は中高年の頚髄損傷患者に多い。

症状は両上肢での疼痛、腫脹、皮膚の色調不良、関節拘縮である。早期治療が重要であり、理学療法としては温熱やレーザーによる星状神経節への照射を主とする物理療法と、頻回奈関節可動域運動が中心である。

 

5)疼痛

 軟部組織に由来するもの、損傷脊髄に由来するもの、心因性のものなどが考えられる。

 軟部組織性に由来する疼痛は局所的な痛みであり、運動痛である。特定の動作で訴え、リハビリの阻害因子として問題になるが、対象動作を控えたり、湿布、鎮痛剤投与でおさまる。外傷に伴う骨折や軟部組織損傷に伴う疼痛と考えられ、通常の外傷後の運動開始時にみられるものと同様と考えてよい。

 損傷脊髄に由来するものは、損傷レベルの帯状の疼痛、麻痺域の疼痛や強い痺れ感を訴え、運動や体動とは関係がない。季節、天候で変動することもあり、難治性である。

 心因性のものは特に損傷脊髄由来のものと結びついていることが多い。将来の不安、障害の受容困難が反映していることもある。 治療には鎮痛剤や温熱療法が用いられる。

 

●痙性麻痺

脊髄は受傷直後の脊髄ショック期には弛緩性麻痺を呈する。数日から数週(ときに数カ月)・後に脊髄ショックから回復し痙性麻痺に移行するが、なかには弛緩性のままで終わるものもある。痙性麻痺は運動麻痺が完全あるいは不完全を問わず出現するが、麻痺域がより高位(頸髄および上位胸髄)で、しかも不完全麻揮のほうが強い痙性を示す傾向がある。痙性は上位中枢からの抑制制御機構を消失したまま、反射弓のみが機能しはじめることと、その他の要因が加味されて異常反射活動が高まることによる.そのため内因的要素として身体面や精神・心理面と外因的要素として内因的要素以外のもの、たとえば外部から加わる機械的、化学的、光、温度の変化などの刺激によって痙性を誘発する。それは他動的運動に対する抵抗の増大、他動運動のスピード、共同運動、連合反応、姿勢反射の影響、温度の変化、などである。痙性を有する患者の多くは脊髄節によって弛緩性麻痺と痙性麻痺を呈する部分を合わせもっている。脊髄がショックから回復しても弛緩性麻痺を呈したままの患者は馬尾や脊髄神経のような二次ニューロン以下での損傷あるいは脊髄の長軸に沿った広範囲な損傷や病巣などを有する場合である。それによって円滑な運動動作が阻害されるだけでなく、種々の程度の拘縮,疼痛,変形などをもたらし日常生活活動の範囲を狭める結果となる。この対策として初期にとらせた肢位によって痙性のパターンが決まる(屈曲または伸展共同運動パターン)というように急性期からの処置が重要である。

1)痙性の評価

痙性は内因的および外因的要素によって影響を受けやすく、それによる異常反射活動が高まると連合反応を誘発する。そのため単関節運動は困難となり、伸筋群あるいは屈筋群のいずれかのグループの筋群が1つのパターンとなって働き、それぞれ1筋ずつ分解した量的検査は困難となることがある。そのさいには次に示す検査法が必要となる。

次にその質的および量的な評価方法の概略を示す。

 

痙性の一般的見方

狭義には筋緊張異常充進の状態をみる.筋緊張の状態は次の3つで判断する。

1)安静時筋緊張

2)姿勢時筋緊張

3)運動時筋緊張

そのなかでも(2)姿勢時(3)運動時の異常筋緊張は狭義には、共同運動や連合反応の形で出現するため、罹患筋に筋緊張の不均衡をきたす。また広義には、上記に加えて反射異常として表在反射、深部反射、病的反射、姿勢反射などが出現する。そのため実際の訓練や日常生活活動のなかで痙性を分析し総合して全体的にとらえるという方法で評価を進めている。その他にも次に示す諸家による痙性の程度の評価法などを用いている。Ashworthは痙性筋群を他動的に引き伸ばし、その間に起こる低抗を以下のように段階付けている。

0=正常な筋緊張

1=筋緊張のわずかな増加で,肢を動かすと引っかかりカミある

2=筋緊張のはっきりした増加であるが,肢は簡単に屈曲する

3=筋緊張の相当な増加

4=肢は伸展または屈曲位で固定される

 

●急性期の肺理学療法

脊髄損傷の肺理学療法は広義の意味では器械呼吸、薬物療法、酸素療法、呼吸ならびに排痰訓練などが含まれる。狭義には呼吸ならびに排痰訓練を意味する場合が多い。

急性期における頸髄および上部胸髄損傷者は、損傷髄節支配域以下の呼吸筋麻痺による重篤な呼吸障害を伴うため、①救命のための呼吸管理と②予防的な肺理学療法が重要となる。ここでは、呼吸の病態、評価、呼吸管理、呼吸ならびに排痰訓練の実際についてその概略を紹介する。

(1)呼吸の病態

頸髄および上部胸髄損傷における呼吸障害の特徴は基礎疾患がない限り呼吸筋麻痺による拘束性障害となる。これに閉塞性障害が加わると呼吸管理は大変困難なものとなる。

頸髄および上部胸髄損傷者は呼吸筋麻痺による換気量低下により、喀痰の自力排出困難となり、分泌物貯留をきたす。また交感神経損傷により、交感神経遮断状態となるため副交感神経(迷走神経)が緊張状態に陥り、気道内分泌物の増加をきたし、末梢気道を収縮させる。さらに腸管麻痺による鼓腸のため横隔膜の運動制限が加わり、肺胞換気量が低下し、肺でのガス交換が障害されて呼吸不全を起こしてくる。この改善のため肺理学療法が治療の有力な補助手段として、その効果を直接期待できるのは換気機能である。肺胞機能や肺循環に関しては間接的効果を期待するのみである。積極的には人工呼吸器や薬剤などを併用し、その回復をはかるのである。そして二次的に発生してくる運動機能障害の予防と改善や心理面のサポートも同時に行わなければならない。

 

(2)呼吸訓練の目的

1)肺機能の維持、改善

2)呼吸効率の改善

3)呼吸器合併症の予防と改善

4)身体機能の維持、改善

5)心理的サポートなどである

 

(3)口乎吸訓練

1)オリエンテーション(患者教育)

これは意識があれば呼吸訓練前に、もしなければ、回復後に訓練の目的、方法、効果についてわかりやすく説明し、患者に協力する意欲をもたせる。

2)腹式呼吸

腹式呼吸にさいして、気道の分泌物が多いものは呼吸訓練前に気道を清浄にしておくこと。呼吸不全を伴う頸髄損傷患者は呼吸予備能力が低下し、呼吸数が多く、浅い呼吸のため、予備呼気量が不足する。それに対しては、呼気を長く延ばす訓練が重要となる。そのため腹式呼吸や部分呼吸の指導を行う必要がある。

 

(4)腹式呼吸の訓練法

この方法は以下のとおりである。初期は受傷部位の保護と呼吸補助筋の参加を抑制するため介助者が両肩を軽く下方に押し下げて固定する。

1)患者は背臥位で摩の下に三角台などをおき股’膝関節’を屈曲しておく。

2)上肢は体側につけ肘関節を全屈曲し,テコの腕を短くしておく。

3)吸気は鼻から吸って、呼気は口をすぼめて吸気の2倍の長さでゆっくり呼出させる。吸気が進むにつれて、患者は上肢を外転させる。

4)次いで患者は呼気に合わせて上肢を内転させ・セラピストは呼気の終わりに素早く腹部を圧迫し、固有受容器をストレッチして反射的に吸気の誘発をはかる。この一連の動作を繰り返す。

 

(5)体位排痰法

体位排痰法は痰の貯留部位を支配する気管支の末梢が上になる体位を取らせて重力の作用で太い気管支に分泌物がでやすい特定の体位をとらせる方法である。脊髄損傷の急性期やその他の事情で目的の体位がとれない場合はそれに近い体位で行う。

排痰前の注意事項は次のとおりである。

1)徒手圧迫や振動が損傷部位を動揺させたり,損傷部の固定性を損なわないこと。

2)体位によって損傷部と体幹のアライメントを崩さないように注意すること。

3)急激な圧迫で肋骨骨折を起こさないよう,あらかじめ胸郭の弾力性を確認しておくこと。

4)疼痛や可動域制限の部位を確認しておくこと。

5)食後30~60分間は行わない。

 

(6)評価

1)意識レベル

2)触診

3)聴診、胸部X線像にて分泌物の貯留の有無,部位,音,程度および横隔膜の偏位などを確認しておくこと。

4)可動性・柔軟性

5)痛み

6)疲の量(1日何ml)

7)痰の色

8)喀出力などである。

 

(7)体位排痰療法の手技

1)バイブレーション

最大深吸気位から呼気に合わせて痰の貯留部位を中心に用手バイブレーションを加える。バイブレーションは喀痰の粘度を低下させ、気管支壁から喀痰を遊離させることにある。用手バイブレーションは1秒間に6回以上振動させ1回2~3分程度で行う。

2)タッピング

この手技は重症の胸部疾患や人工呼吸中の患者には困難である。その方法は手をカツプ状に軽く屈曲し、軽く手首でリズミカルに交互に軽打する。排痰部位に対して最大深吸気位から“呼気”に合わせて1分間150~200回程度の速度で2~3分間行う。

3)ハッフィング

これはカッフィングの前に1~2度行い喀疾を細気管支から太い気管支へ移動させるのを助ける。この方法は最大深吸気位から口を大きく開けて声門を開き「ハァー,ハァー」と短く’強く、それほど努力せずに呼出させる方法である。

4)カッフィング

深呼吸を数回繰り返させた後、最大深吸気位から、呼気と同時に腹の底から咳をさせる。1回の呼出で2度、咳嚇させる。これを3~4回繰り返させて排痰させる。休みを入れて数回試みる。

 

(8)胸郭拡張訓練

頸髄損傷者は全身の活動件の低下から肺活量および胸郭運動の減少をきたす。そのため肺および胸郭の可動性は低下し呼吸に要するエネルギー消費も多くなり、非常に効率の悪い呼吸となる。

頸髄損傷者の胸郭可動性の維持訓練は以下の方法で行われている。

1)徒手胸郭ストレッチング

①肋骨の捻転

②体幹の捻転

③体幹の側屈

④背部過伸展

(・_・)車椅子訓練の話

(1)損傷レベル別の車いすの特徴

その特徴は下記のとおりである。

C4:電動車椅子でバックレストはフルリクライニイグ式で安全ベルトをつけておく。アームレストは着脱式にする。レッグレストはエレベーティング式で着脱式にする。駆動操作の力源は口、顎、呼気などを利角する。最近では多機能車椅子も利用されている。

C5:電動車椅子は同上である。室内では手動式車いすを使用することがある。その特殊アタッチメントは次のとおりである。アームレストはデスクタイプで着脱式にする。レッグレストとフットレストはスイ’ングアウトで着脱式とする。ブレーキは延長ブレーキレバーをつける。ハンドリムにはすべり止めをつける。患者はすべり止めの手袋や除圧用のクッション類を使用する。

C6:車いすと同じ高さのベッド、便器、浴槽などへの水平移動は可能である。アームレストはデスクタイプ、レッグレストはスイングアウトで着脱式となっているが必ずしもその必要はない。延長ブレーキレバー、すべり止めの手袋などを工夫すれば平地での車いす操作は可能である。

C7:とくに器具を便用しなくても10cmぐらいの上下差の移乗動作も可能である。アームレストはデスクタイプかタイヤすれすれで着脱式でなくてもよい。ブレーキ、レッグレストとも着脱式でなく標準型でよい。

C8:上下移動のトランスファーが可能である。車いすはスポーツタイプも可能である。したがってバックレストは腰部の高さでもよい。近年は家具が車いすの移動・移乗に支障のないように設計されているため、アームレストやレッグレストは着脱式あるいはスイングアウトなどの必要はなく、固定式となっている。

 

(2)車いす前輪あげ訓練

後輪のみでバランスをとり、キャスターをあげる訓練である。それが可能になれば前輸をあげたままで移動する訓練に進める。これは縁石、不整地、坂などでの車いす操作に必須の訓練である。

 

(3)移乗動作

1)車いすからペッドとその逆への移動

四肢麻痺でC6以上の損傷では車椅子の座面と同じ高さのベッドがよい。C7以上の損傷では上腕三頭筋が完全に有効筋として働くため座面の高さが多少異なっても問題はない。

 

●理学療法(治療訓練)

(1)治療訓練

急性期は救命のための医学的管理を優先するが、それと同時に将来の機能回復のための準備としてベッドサイドより理学療法を開始する。急性期からの適切な医学的処置や早期からの理学療法は、一次的障害を最小限にくい止め二次的障害を予防し改善することにある。脊髄損傷者にとって二次的合併症の予防・と改善は受傷直後から生涯怠ることのできない問題であり、治療より予防が大切であることはいうまでもない。

 

(2)理学療法の目的

1)一次的障害を最小限にする

2)二次的障害の予防

3)脊髄中枢神経系への働きかけ

4)精神・心理面に対する援助

5)リハビリテーションの円滑な実施

 

急性期における理学療法(2ヵ月前後)

(1)全身状態の管理

受傷直後より約6-12週間前後は受傷部位の整復、固定(一次的障害の治療)と二次的合併症の予防にとって重要な時期である。このうちとくに1-2週間は危急期であり救命のための医学的管理と看護が優先する。一般的には6週間過ぎれば軟部組織が安定しはじめ、8-12週間経過すれば骨傷が安定する。

頸髄損傷者で骨折脱臼を伴う多くの症例は受傷後数日以内に手術の対象となる。術後数日以内に全身状態が安定し、起立性低血圧の危倶がなければ、頸椎カラーを装着してベッド上での坐位訓練を開始する。その1-2週間後には理学療法室での本格的な訓練を開始する。そのさい、リハビリテーションチ一ムのプログラム内容を把握し、患者の全身および局所状態の改善と二次的障害の予防に努め、早期に身体機能を取り戻し将来の自立に備えるための理学療法を開始する。

(2)変形・拘縮肢位とその予防

上肢は損傷レベルによって特有な肢位をとるため、その防止に努め、変形・拘縮を予防しなければならない。その特有な肢位は以下のとおりである。

C4:肩甲骨挙上位での拘縮。

C5:肩甲骨挙上位、肩関節外転位、肘関節屈曲位、前腕回外位拘縮。

C6:肩関節外転・外旋位、肘関節屈曲位、前腕回外位、手関節背屈位・手指屈曲位拘縮(背臥位で手を頭上におく肢位)。

C7:手指伸展拘縮(肘関節は中間位屈曲位で上肢は胸の上に乗せていることが多い)。

などである。

 

弛緩期の運動療法

弛緩期の運動療法の考え方

急性期の脊髄ショック時期には、反射活動が停止しているため該当筋は弛緩状態にある。この弛緩性麻揮の原因は次のことが考えられる。第一の原因として脊髄は受傷直後、通常ショック状態にあり、損傷部の1-2髄節あるいはそれより遠位の上下に出血、浮腫が広が反射活動は低下して池緩性麻痺となる。第二の原因は損傷された脊髄がショックから回復しても損傷髄節が馬尾や脊鑓神経の二次ニューロン以下の損傷あるいは脊髄の長軸に沿った広範な損傷により弛緩性麻痺になる。

この時期は、骨傷のあるものでも、まだ骨癒合が完成されていないため損傷部の安静、安定を守りながら慎重に運動療法を開始する。この時期は他動運動が主体となるが、可能なら自動介助運動も行う。

 

痙性出現期からの運動療法

脊髄がショックから回復しはじめて約1-6週間後から痙性期に移行する。痙性は上位損傷(頸髄、上位胸髄)の完全、不完全を問わず、また下位損傷でも不完全なものに多いとされている。

痙性出現期以降は強い痙性に対抗するのでなく次の点に注意して実施する。

①患者をリラックスさせる。

②姿勢反射の利用とキーポイントでのコントロール。

③運動速度の調整。

④最初は全介助でもしだいに介助量を軽減し、自動介助から自動運動へと進める。

⑤正常な運動動作パターンを促通すると同時に異常な運動動作パターンを抑制する。

⑥運動発達段階の利用などである。

 

回復初期から回復後期(3ヵ月前後一6ヵ月)

この時期は臥位・坐位訓練期であり、このころから四肢麻痺で骨傷のあったものは、骨傷部に負担がかからない程度から、伸張運動や低抗訓練を開始する。脊髄損傷者は少ない残存機能をより有効に生かすため身体的条件(身体機能や精神心理面)の強化だけでなく外的条件(補装具や環境面)の関与により、最小限の援助で最大限の日常生活活動能力の拡大をはかることである。

身体条件としては

①関節可動域の維持・改善

②残存筋力の強化

③姿勢感覚の再獲得

④代償作用の獲得

⑤協調動作の獲得

⑥体重減量(肥満者)

⑦合併症の予防などである

外的条件に関しては

①環境・社会面の整備と改善

②家屋改造

③補装具や環境制御機器

④自家用車の利用などがあげられる.

 

回復初期から回復後期(3ヶ月前後―6ヶ月)

 この時期は臥位・坐位訓練期であり、このころから四肢麻痺で骨傷のあったものは、骨傷部に負担がかからない程度から、伸張運動や抵抗運動を開始する。脊髄損傷者は少ない残存機能をより有効に生かすため身体的条件(身体機能や精神心理面)の強化だけでなく外的条件(装具、環境面)の賦与により、最小限の援助で最小限の援助で最大限のADL能力の拡大を図ることが目的となる。

 身体条件としては、①関節可動域の維持・改善、②残存筋力の強化、③姿勢循環反射の再教育、④姿勢感覚の再教育、⑤代償作用の獲得、⑥協調動作の獲得、⑦体重減少、⑧合併消の予防などである。

 外的条件の賦与に関しては、①環境・社会面の整備と改善、②家屋改造、③補装具や環境制御機器の賦与、④自家用車の利用などが挙げられる。

1)臥位訓練期

(1)伸張 (他動的伸張および自動的伸張)運動(臥位訓練期)

 ベッド上での長期臥床中に、全ての関節に対して他動運動を実施しているにもかかわらず多関節筋が短縮することがある。それは多関節にまたがっている筋に対して、単関節運動に主眼がおかれている場合、拮抗筋の麻痺による筋群のアンバランスや活動性の低下などから生じることがある。その対策としては伸張運動などを実施し、その予防に努めなければならない。伸張運動は他動運動の項で述べたと同様のことを遵守し注意深く実施しなければならない。

 全身状態や損傷部の安定性が確認されれば、プールや廃用性バードタンクなどの温浴中(38~39℃)で上・下肢のROM訓練や伸張運動を開始する。

 寝返りや介助坐位が可能になれば自力での関節可動域訓練を各関節にまんべんなく行うことを指導する。たとえば背臥位での股関節・膝関節・足関節のROM訓練などである。

(2)筋力維持および強化(自動介助、自動運動、抵抗運動)訓練(臥位訓練期)

安静臥床期間が長くなり、廃用性筋力低下を起こしやすいため可及的早期より筋力維持

および筋力増強運動を開始する。

それには運動する意欲をもたせること。特に肉体的な阻害因子に加えて心理的因子が大きく影響する。肉体的な阻害因子として重要なものは疼痛や異常感覚、筋力低下、受傷部位の状態が考えられる。これらは、不快なものであれば不安、苦痛による精神的な安定性、集中力、気力などが低下し全身的な反応をより強くすることがある。こうした肉体的あるいは心理的な面も含めて注意深く評価、観察し訓練の障害になる阻害因子を可能な限り排除しておくことである。

頚髄損傷者の場合はとくに1髄節の差が機能的予後を決定するため、たとえ弱い1筋でも随意収縮を認めればその髄節支配の筋力低下を実施する。脊髄損傷者の上肢は麻痺した下肢に代わって日常生活活動を行ううえで充分に役立つだけの筋力を養っておく必要がある。

次に必要な訓練について述べる。

C6上位型の場合:体幹、上肢については肩甲帯筋、rotator cuff、大胸筋そして上腕二頭筋、腕橈骨筋などが完全に有効筋であるため、その自動介助、自動運動は以下の方法で実施する。

肩関節屈曲、外転運動は筋力テストの段階に応じたfunctional rangeでできるだけ肩関節外旋し肘関節伸展にて行う。

肘関節屈曲・伸展運動、代償作用、リラクゼーションをさせる。

肩関節と同様の方法での運動、体幹や肩と肘の慣性の応用による運動動作、代償動作としては上腕三頭筋なしで肘関節のlocking mechanism(肩外旋、前腕回外での肘伸展)の活用。背臥位にて肩関節外旋位でprotractして、重力を利用したリラクゼーションをさせる。

手関節の屈曲・伸展の運動は肘伸展位で行う。手関節背屈時には手指屈曲、手関節掌屈と背屈時には手指伸展の運動を行う。手関節の背屈は前腕回外と手指伸展で可能になること、テノデーシスアクションの活用と強化の実施である。

 

(3)抵抗運動

抵抗運動は初期には、受賞部位に負担をかけない程度から実施する。

痙性出現期からの抵抗運動は効果的に残存機能の強化を行うように心がけるべきである。全身状態や損傷部の安定性が確認されば抵抗訓練を開始する。

筋力強化訓練は1日1~2以上実施するが、常に患者の状態に合わせ、有効な丁香料を与えることが重要である。抵抗運動は、はじめセラピストの徒手抵抗が最善の方法である。徒手抵抗はひとつの筋を個別に強化する方法とPNFによる筋群の強化などが行われている。

これらをさらに発展させた自主的な訓練として重錘やエキスパンダー、プーリーなどを用いた漸増抵抗運動やバイオフィードバックによる正しい量的訓練方法を指導し、より効果的な筋力増強訓練を実施しなければならない。

1.背臥位での上肢機能の強化訓練:伸展痙性の強いものに対しては股・膝関節を十便に屈曲した肢位でおこなう。

2.坐位での上肢屈曲訓練:同じ上肢機能訓練でも姿勢・肢位と体幹の介助の有無によって、重力などの影響により共同筋、拮抗筋、補助筋などの働きが異なる。

四肢麻痺は初期に上肢のみの筋力維持および強化訓練を行うが骨傷が安定すれば頚部あるいは上肢より下降性に行う。その重要な筋である頚部筋群、体幹上部の筋群、上肢筋群の筋力の維持、強化に努める。その中でも特に頚髄神経節で支配されている僧帽筋や広背筋は体幹のバランスや坐位での移動そして下肢の振り出しに働く重要な筋であるため充分に鍛えておかなければならない。

対麻痺の場合にも全身状態が安定すれば骨傷部が動揺しないように留意し自動介助運動および自動運動を実施する。

一般的に脱臼骨折、破裂骨折に対しては前方・後方固定術を受傷後数日以内に実施し、術後4~5日経過後に坐位訓練を開始する。その1週間後に軟性コルセットを装着して訓練台での起立訓練からはじめ、1週間以内に筋力強化訓練なども可能になる。

受傷後、約3ヶ月経過すれば骨傷部は安定する。その後積極的な抵抗運動を行いながらX線での骨傷部の監視のもとに徐々に装具の装着時間を短縮する。

骨傷部の十分な癒合を認めれば装具を除去する。

対麻痺の筋力は上肢の下制筋として働く広背筋、僧帽筋、大胸筋、前鋸筋、上腕三頭筋そしてトランスファーや立位保持と骨盤の引き上げに必要である広背筋、腰方形筋、腹筋群、背筋群、腸腰筋などの強化が重要である。

次に筋力維持・増強訓練プログラムについてHein-SФrensenのプログラムを紹介する。

<肩関節>

2週間:手に1-2kgの重りをつけて肩関節90°までの対称性の外転運動。

3週間:手に1-2kgの重りをつけて肩関節170°までの対称性の外転運動。

4週間:手に3kgの重りをつけて肩関節170°までの対称性の外転運動。

8週間:重りなしで、肩関節90°までの愛小星の前方挙上運動、すみやかにおもりなしで肩関節170°までの前方挙上運動へと進める。

9週間:手に1-2kgの重りをつけて肩関節170°までの対称性の前方挙上訓練。

手指、手関節、肘関節、足関節に対する拘縮や血栓予防のための訓練と同様に筋力増強訓練は受傷後2、3日後に可能であれば積極的になされる。

 

(4)物理療法

 物理療法はおもに運動療法の前処置として使用する。低周波は不全麻痺筋に対する。筋再教育訓練によく使用する。そのほかに循環の改善、痙性や疼痛、浮腫の軽減などにも使用している。

 マッサージは循環の改善、痙性、浮腫、疼痛の軽減、筋の弛緩(リラクゼーション、短縮筋の弛緩など)、拘縮の改善などに対して行うことがある。

 ホットパックは非麻痺部位の改善、痙性、浮腫、疼痛の軽減、関節拘縮の改善などに利用する。

 水治療法は水の浮力、抵抗、圧力、温熱などの効果を目的として用いる。そのほかにも循環の改善、痙性、浮腫、疼痛の軽減、関節拘縮の改善などに利用する。

2)坐位訓練期

 坐位保持は、はじめベッド上、ついで車椅子やマット上で行う。この自立が将来のADLを大きく左右するため十分時間をかけて獲得させることである。

(1)姿勢循環反射と姿勢感覚の再教育

 脊髄損傷者は自律神経の障害あるいは長期臥床による麻痺筋の緊張低下や血管収縮反射の低下などによって起立性低血圧を起こしやすい。その対策として初期には脊柱を保護する頚椎カラーや体幹コルセットなどを装着し、ベッド上での介助坐位(ギャッジベッドなど)からはじめ、ついで介助立位保持(起立台)へと進め、積極的に姿勢循環反射や姿勢感覚の再教育を行う。

 その訓練方法は、30°、5分くらいから毎日、角度(10°ずつ)と時間(5~10分ずつ)を増し、約1時間で80°、30分の坐位あるいは立位保持を目標とする。

 この開始前あるいは訓練中もバイタルサインをチェックしながら脳貧血症状であるチアノーゼ、めまい、悪心、嘔吐などの症状が出現すればただちに水平位に戻し、起立性低血圧の回復を図らなければならない。

 この訓練中に、同時に呼吸訓練やPNFなどの積極的な運動療法を加えることによって、より長く坐位または立位保持が可能となる。

 介助坐位が80°、20分以上可能になればマット上あるいは車椅子上での坐位訓練を開始する。また2時間以上可能になればスポーツ訓練へと進めることができる。

(2)残存機能の強化と代償動作の獲得

 脊髄損傷者は損傷レベルが高位であればあるほど当然ながら残存機能そのものにも限界がある。その少ない機能を生かすため、身体的条件と外的条件を満たすことが必要となる。

 身体的条件とは身体および精神的機能のことであり、その援助と強化が必要である。それにはいかのものが挙げられる。

 ①残存筋力の強化、②平衡感覚機能の再獲得、③代償作用の獲得、④協調動作の獲得、⑤可動性・柔軟性の獲得、⑥体重減少(肥満者)、⑦合併症の予防などである。

 外的条件とは身体機能を高めるために身体に賦与する補装具類や環境面の改善である。

①環境、社会面の整備と改善、②家屋改造、③補装具や環境制御危機の賦与、④自家用車の利用などである。

 基本動作は運動のスピード(時間)、正確性、巧緻性、安全性、効率性などが要求される。これは臥位から立位、歩行までと、その逆に立位から臥位までの運動動作について行うが、必ずしもこの順序に従うのではなく、その患者のレベルに適したところから行う。

 臥位から立位・歩行訓練の目的は以下のとおりである。

 ①重心の移動の獲得、②抗重力メカニズムとバランス反応の獲得、③体幹、四肢の感覚・運動面の再教育、④協調動作とco-contractionの獲得、⑤残存筋または筋活動の強化、⑥関節可動域の改善、柔軟性の獲得、⑦痙性の軽減(又は抑制)、total patternの分離、mucsle tone or postural toneのアンバランスの調整、⑨立位、歩行動作の獲得、⑩より難易度の高い動作へのステップアップなどが期待できる。これらはADLの獲得を目指して行う。

 脊髄損傷者の背臥位から立位・歩行までの基本動作とその訓練について述べる。

(1)背臥位

  ①寝返り

 寝返り動作は患者の状態や脊損レベルによっても異なるため、その開始姿勢を選ばなければならない。

 各損傷レベル別の寝返りの方法を以下に述べる。

 C4は多くの場合で寝返りは全介助となる。

 C5上位型、(0):上腕二頭筋は完全な有効筋である。そのため上腕二頭筋による上肢のひきつけ機能を効かせて補助具(紐、ベッド柵、重錘など)や介助者の手に前腕を引っ掛け、上腕二頭筋で引きつけ、身体を回旋させて寝返ることができる。

 C5下位型、およびC6上位型:両者とも部分的に肩甲帯筋、rotator cuff、大胸筋が働き、それに完全な有効筋として上腕二頭筋そして前者は腕橈骨筋、後者は長橈側手根伸筋が働くため、次に述べる寝返りの方法が期待できる。

ⅰ)寝返るときの上肢の投げ出し機能の利用:上肢全体の慣性を利用した重力方向への投げ出しで寝返る。そのさいに投げ出す手を目で追わせ、同時に頭部、体幹を数回にわたって反動をつけて回旋し、その勢いで寝返る方法。

ⅱ)上肢の前方突き出し機能と頭部、体幹の回旋機能の利用:側臥位または半側臥位で背部に枕をあてておき、肩関節は80°屈曲位とし肘関節伸展位になるようにセラピストが上肢を保持する。患者に上肢を目で追わせ前方に反復して突き出させる。それに対抗してセラピストは患者の手掌部から上肢の長軸で中枢方向に向かって軽い反復する抵抗を加えながら寝返る方向へ上肢挙上と体幹の回旋を誘導し寝返る方法である。

ⅲ)回旋筋とテコ作用の利用:ⅰの方法で側臥位に寝返り、一方の手は肘関節屈曲位で前腕に顎(側頭部)をのせ、その手をテコに腹臥位になるように回旋させると同時に、他方の手は前腕屈側をベッドの端あるいはスリングなどに引っ掛けて、引きつけることによって腹臥位になる。

ⅳ)上腕二頭筋のreverse actionによる寝返り:大胸筋の筋力が0(zero)でも上腕二頭筋、三角筋の筋力が4(good)有れば可能になる。

ⅴ)大胸筋のreverse actionによる寝返り:大胸筋の筋力が4(good)以上あれば前腕部に重錘やベッド柵を引っ掛けて寝返る方法である。

C6下位型、C7上位型、C7下位型:完全に有効な上肢帯筋と部分的に有効な上腕三頭筋(C6では完全な有効筋)の働きにより自力での寝返りや起き上がりは実用的になる。

②背臥位から坐位まで(起き上がり)

寝返り動作についで背臥位から坐位までの起き上がり動作の獲得。

背臥位から坐位までの起き上がり動作と同時に、その逆の坐位から背臥位に戻る往復動作を指導する。

 背臥位から坐位にいたるまでの、損傷レベル別の主要筋群と運動およびADL到達度について。

 C4での主要な筋群は頭頚部筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、横隔膜である。その運動はおもに頚の運動、肩甲骨挙上、横隔膜運動などである。そのため起き上がり動作は多くは全介助となる。

 C5の主要筋群は肩甲帯筋、三角筋、上腕二頭筋などである。運動は主に方の運動と肘の屈曲である。そのため部分または全介助となる。

 C6の完全な有効筋は長・短橈側手根伸筋、部分的に有効な筋は上腕二頭筋、円回内筋、橈側手根伸筋などである。この筋群のおもな働きは手関節の伸展である、それを利用して 独立するもの、あるいは一部介助を要するものに分かれる。

 C7以下の主要筋群は上腕三頭筋、手関節屈筋群などである。運動は主に肘関節の伸展と手関節背屈であり、寝返り動作は自立可能なレベルである。

次に背臥位から坐位までの起き上がりについて対称的な方法と体幹の回旋による方法を述べる。

(2)対称的な起き上がり方法

  ①C4、C5上位型

 自力での起き上がりは不可能である。介助により上腕二頭筋の引きつけ機能を利用しての起き上がりは可能である。

  ②C6、C7型

 ⅰ)背臥位で両上肢は肘伸展、前腕回外位で殿部の下に両手掌を置き、その姿勢から頭頚部と体幹上部の振り上げ機能(振幅の速い屈曲、伸展の反復運動)による反動と上肢の引き上げ機能とを共同して働かせon elbowの型で半坐位になる。そこから反動で体感を回旋し交互に肘を伸展して長坐位(long sitting)となる。

 ⅱ)背臥位で両上肢を外転(約80°)、肘屈曲、前腕回外位からⅰ)と同様の方法で起き上がる。

(3)体幹の回旋運動による起き上がり

2つの方法がある。

 ①背臥位または側臥位から補助具(ループ、紐など)を用い一方の手で引きつけ、他方の手で押し上げ機能(push up)を利用し坐位となる。

 ②背臥位から寝返った側に側臥位になり、一方の上肢(右)と他方の上肢(左)は頭部の押し付け・回旋機能と共同して働かせ下肢の方へ体幹を近づける。そこから右上肢を大腿下部(膝窩部)に前腕屈側を引っ掛け、引きつける。同時に左上肢で体幹の押し上げ支持機能(肘を伸展し上肢で体幹を押し上げる機能)を生かすため、頭部と体幹の反動を利用して、素早く左上肢をon elbowにして、上半身を支える。次いで左上肢はon handとなり、長坐位で体幹を十分屈曲させてon handとなり、長坐位で体幹を十分屈曲させて長坐位となる。

 以下の方法以外にも紐などを引っ張って対称的に起き上がる動作もあるが、患者の努力量や姿勢反射などの影響により連合反応が現れやすいため痙性の強い患者には注意を要する。

(4)all four’s(四つ這い)

 この訓練中には膝や肘にサポーターを使用し、皮膚の損傷や褥創の予防に努める。

 訓練方法は以下のものがあげられる。

  ①静的訓練

 ⅰ)術者の介助による四つ這い位

 ⅱ)ロールによる四つ這い位(ロールの前後移動による重心移動やバランス獲得)

 ⅲ)自力での四つ這い位保持である。

  ②動的訓練

 ⅰ)あらゆる方向から抵抗を与える

 ⅱ)PNFの利用

 ⅲ)重錘などの利用

 ⅳ)四つ這い移動

 ⅴ)四つ這い⇔横座り⇔膝立ち

 ⅵ)四つ這い⇔片肘立て、両肘立て

 以上の動作は四つ這いを中心に上位の動作(膝立ちまで)と反対に下位の動作(片肘て位、両肘立て位)までを繰り返し指導する。

(5)3点支持

  ①静的訓練

 ⅰ)PTの介助による同肢位(3点支持)

 ⅱ)ロールによる同肢位

 ⅲ)ロールの前後移動による重心移動やバランス獲得

 ⅳ)自力での同肢位

  ②動的訓練

 ⅰ)同肢位にて上肢に重錘をつけた動きの中でのバランスや筋力強化を図る。

 ⅱ)あらゆる方向から抵抗を加える。

 ⅲ)PNFの利用など。

3点支持は次の効果がある。

 ⅰ)左右いずれかへ体重負荷し、同時収縮やバランスを鍛える。

 ⅱ)右手を挙上すると、左手と左足により体重がかかる(左手を挙上するとその反対)、これは体幹の回旋と伸展を伴う協調動作訓練でもあり、同時に筋力増強訓練にもなる。

 ⅲ)バランス訓練は同時に保護伸展反射訓練にもなる。

 ⅳ)四つ這い移動の前準備でもある。

(6)2点支持

この訓練の順序や効果は三点支持で挙げた項目と同じである。

 all four’s⇔kneeling:これはall four’sとkneelingの動的訓練として行う。この訓練の目的は基本動作であげた項目と同じである。

(7)坐位保持訓練

 これは、はじめベッド上で、次いで車椅子あるいはマット上で行う。この訓練は活動の重要になる筋と残存機能として麻痺部位と非麻痺部位の機能を相互に生かせるように指導すべきである。

 初期のバランス訓練は、麻痺部位の皮膚および深部感覚の障害を残存能力で補うためはじめは鏡を使用し、視覚などのフィードバックを利用する方法や筋、靭帯、骨性などの固定、そして頭頚部や上肢機能を代償させたバランスのコントロールを総合的に強化すべきである。

 この訓練ははじめは開眼で行い、慣れてくれば閉眼でもバランスが保持できるように訓練する。訓練方法としてははじめは低いレベルから次第に高いレベルのバランス機能を獲得させる。これは同時に保護伸展反応を鍛え、とっさの転倒による不慮の事故防止と転倒に対する恐怖心を取り除くためにも重要な訓練である。

 各レベルにおける坐位保持機能と訓練は次のとおりである。

C4とC5上位型:このレベルの活動の重要な筋である僧帽筋は麻痺部位と非麻痺部位を

 結ぶbridge muscleとして体幹バランスの感覚に働くsensory receptorでもある。横隔膜は腹圧を高め体幹の支持性を助ける。そして骨性、靭帯のlocking mechanismによる体幹の安定性をはかり、さらには頭頚部、上肢帯などの働きによるバランスのコントロールなどを使用した訓練を行う。これらは実用化されないが全身調整訓練として非常に有効である。

C5下位型とC6上位型:弱いながら肩甲帯筋やrotator cuffが有効であり、上腕二頭筋筋力が4(good)以上あって上腕三頭筋がまったく動かなくても、肩甲骨の内転固定、肩関節軽度外転・外旋と前腕回外による肘関節伸展位での固定が可能であれば、両上肢で支持した坐位保持やpush upも可能になる。

C6下位型:広背筋はこのレベルで部分的な神経支配を受け、これと共同して働く僧帽筋の神経支配は完全である。

 このレベルでの重要な筋である広背筋はbridge muscleとしてbalance sensorにも役立ち、体幹の支持性と伸展などの働きをするがそれのみで坐位保持は不十分である。

 上司機能は活動の重腰筋である大菱形筋、三角筋、上腕二頭筋、短橈側手根伸筋の筋群のうち大菱形筋、と三角筋が方の固定と挙上に働き、その力源に支えられて、上腕二頭筋、短橈側手根伸筋などの機能が生かされる。またそれらの上肢機能を生かして上肢支持に似よる坐位保持をとることができる。

C7上位型:このレベルの坐位保持は活動の重要筋である大胸筋胸骨部、上腕三頭筋、前鋸筋、広背筋が機能的に作用し、C6より坐位保持は容易となる。これらの筋群のうち大胸筋と広背筋は体幹支持の代償としての働く筋であり、その他の筋群と上腕三頭筋が共同して上肢での体重支持を十分のものにする。

C8上位型、C8下位型:坐位保持は脊柱の支持、伸展筋である僧帽筋と広背筋が完全な有効筋であり、上肢は手の内在筋群を除いて関前位機能するため坐位保持は安定する。このように四肢麻痺の坐位保持は体幹筋のみによる固定だけでは不十分である。そのため残存能力である頭頚部や肩甲帯、上肢機能による重心のコントロールや四角、皮膚感覚、固有受容器などの残存機能、そして非麻痺部位と麻痺部位とを結ぶbridge muscleでありバランス支持に役立つsensory receptor筋など活用あるいは麻痺部位では腹圧や骨性および靭帯による固定などを利用した安定性と支持性による坐位保持を獲得させなければならない。

a.坐位バランス

バランス訓練は運動・感覚面も再教育として各種の立ち直り反応、保護伸展反応、平衡反応に加えて脊柱、骨盤の可動性、固定性を増し、さらに頭部、体幹、四肢の機能を獲得させることである。

坐位バランスは次の順序で指導する。

①静的坐位バランス

長坐位、端坐位、横座りなどを指導する。

 はじめは開眼で行い、慣れてくれば閉眼で行う。

 ⅰ)坐位バランス訓練前に体幹の柔軟性とROMを獲得させておくことが重要である。

 ⅱ)PTの介助のもとに上腕二頭筋やテノデーシスアクションを利用して自力で体幹を十分屈曲した肢位とやや体幹を起こした肢位で保持する訓練を行う。

 ⅲ)PTの介助なしでⅱの内容を行う。

 ⅳ)上肢支持による坐位保持バランス訓練。

 ⅴ)上肢挙上:上肢の挙上は一側上肢の挙上からはじめ、次いで両上肢をあらゆる方向に挙上する訓練へと進める。そのさい、セラピストは患者の転倒に備えて背後からコントロールすることによって静的坐位バランスを獲得させる。

上肢の前方挙上、上肢の側方挙上、頭上への挙上など。

  ②動的坐位バランス

 次の方法で行う。

 ⅰ)重錘バンドまたは鉄アレイでの上肢の挙上(前方、側方挙上、PNFパターンなど)を利用した方法。

 ⅱ)バルーンを前後左右に移動させての動的坐位バランス保持訓練

 ⅲ)ボールの投捕:これはボールの大きさや重さ、投げるスピード、投げる方向など球種を変える。

 ⅳ)プーリーなどの理由によるPNF

 ⅴ)セラピストは各方向へ緩急をつけて患者のバランスを崩す。これにより保護伸展反応も同時に鍛えることができる。

 ⅵ)その他:坐位から立位までの各運動動作によるバランスの獲得。

b.坐位でのプッシュアップ

 プッシュアップとは両上肢で体幹を鉛直方向へ挙上し腰部を後方に引き上げたあとに再び元に戻す一連の動作である。この動作は褥創予防だけでなく移動、移乗動作の基本となり、ADLの範囲を拡大するためにも重要な訓練である。

 プッシュアップに働く主要筋群と機能について以下に述べる。

 ⅰ)頚部筋群はプッシュアップでの体移動に伴う頚椎屈曲位での伸び挙げ機能やバランスの代償あるいはプッシュアップ補助筋として働く。

 ⅱ)僧帽筋はプッシュアップにさいして両上肢を体側に固定し、頭部、体幹を前屈させて肩甲骨外転位で固定する。このなかで僧帽筋下部線維は肩甲骨を引き下げる働きをする。

 ⅲ)広背筋はプッシュアップに際して体幹を前屈させて骨盤を後方に引き上げる。同時に僧帽筋下部線維で肩甲骨を引き下げ、大胸筋下部線維、広背筋などの共同作業によって両上肢を支点にして腰部を引き上げる。

 ⅳ)前鋸筋は大胸筋とともに働き、肩甲骨外転・外旋位固定し僧帽筋下部線維とともに体幹の引き上げに役立つ筋である。

 ⅴ)三角筋は移動動作時にrotator cuffや僧帽筋とともに肩固定に有効な筋である。

 プッシュアップがある程度可能になれば、プッシュアップでの移乗・移動動作や応用動作として耐久性、滞空時間、移動距離、離床時間などを評価し、訓練を行う。

(8)膝立ち(kneeling)

 膝立ち動作は重心の位置が高く、支持基底面も狭くなるため、より高次のバランス機構と運動感覚の協調性などが要求される。この訓練はバランスが安定するまで訓練台の利用やセラピストが介助することから開始する。その際に異常パターンは抑制し正常パターンを促通することである。

膝立ち訓練としては以下のものが考えられる。

  ①静的訓練

 ⅰ)kneeling position

 ⅱ)同肢位への各方向からの抵抗訓練。

 ⅲ)同肢位でのrhythmic stabilization(PNF)

  ②動的訓練

 ⅰ)同肢位の左右上肢の交互挙上

 ⅱ)同肢位で手首に重錘をつけての左右上肢の交互挙上。

 ⅲ)同肢位で頭部、体幹、上肢に対してPNF訓練。

 ⅳ)同肢位であらゆる方向へバランスを崩す。また同肢位からの転倒訓練。

 ⅴ)同肢位でボールの投捕。

 ⅵ)同肢位で両手使用あるいは左右上肢の交互挙上を必要とする仕事を与える。

 ⅶ)同肢位を中心とした上位の動作、つまり片膝立ちまでと下位の動作としてside sittingまでの往復動作の訓練を行う。

 C6以下の頚髄および脊髄損傷者の多くは膝立ちまで可能になる。

回復期後

1)立位訓練と歩行訓練

 (1)立位と歩行の意義

  ベッド、マット上における姿勢循環反射や姿勢コントロールが確立すれば、立位および歩行訓練へと移行する。

 その意義は運動機能のみならず生理機能面や精神面の改善にも役に立つ。

 (2)介助方法と抵抗

介助は大きく次の2つの方法に分けられる。1つの方法は一方の手を骨盤、他方の手を肩に置く方法である。

もう一つは両手とも骨盤に置く方法である。この両者の方法は患者の損傷レベルや訓練課程によって使い分け、それぞれの運動。動作を阻害しないように目的にかなったスムーズな動きを援助しなければならない。

2)四肢麻痺の立位訓練

四肢麻痺の立位訓練は歩行前準備訓練として実施するのではなく、残存機能の強化、合併症の予防と改善、あるいは生理機能面の再調整とADL向上などを目指して行う。四肢麻痺の立位保持は起立台で80°の傾斜角で20分以上になれば平行棒内で立位訓練を開始する。

立位訓練に際して患者の損傷レベルや程度、リスクなどの評価を十分に行っておくことである。

頚髄損傷のレベル別の立位訓練は起立台か作業用テーブルなどを利用する。

立位時に腹筋麻痺による横隔膜下降からくる呼吸困難や起立性低血圧などを伴いやすいため、十分な監視のもとに慎重に立位時間を延長し、1回45分以上、週に2回以上、立位姿勢をとらせることで残存機能の強化、合併症の予防と生理機能面の改善が期待できる。

第6頚髄損層の立位訓練は、初期に肘関節の伸展固定が不十分なものは起立台などを利用して立位をとらせることからはじめる。しかし、肩甲帯の筋力が発揮できるようになり、上肢の内転と外旋、そして前腕の回外により肘関節を伸展固定できるようになれば、近位監視のもとに長下肢装具を装着平行棒内での立位保持が可能になるものもいる。

第7頚髄損傷以下の立位訓練は肘関節の伸展固定が可能であるため、C6よりさらに安定した立位がとれる。立位時に長下肢装具を装着して平行棒内または平行棒外にて松葉杖を使用し、平地での引きずり歩行が可能となるものもいる。しかし前述したように頚髄損傷者の起立訓練は歩行の再獲得が目的ではなく、残存機能の強化、合併症の予防と生理機能面の改善が目的なので、実用的な歩行とはなる可能性は極めて低い。

3)対麻痺の立位、歩行訓練

 一般に脊髄損傷者(成人)の立位姿勢は下肢装具を装着し、腸骨大腿靭帯などで股関節を過伸展位に固定させ支持基底面内に重心線が落ちる肢位で保持する。決して過度に腰椎を前彎させた姿勢をとらないようにする。

 その立位姿勢の重心線は耳垂→肩峰→股関節の後方→踵と中足骨頭の中間を通るときに尤もバランスが保たれているものと推定できる。

立位訓練の実際は次のとおりである。

(1)平行棒内訓練

①静的バランス

 ⅰ)上肢支持での立位

姿勢矯正:両手で平行棒を握らせないようにし、押し付けるようにさせる。松葉杖の場合は腋窩受けのもたれかからないように注意する。両側の足に均等に体重をかけてバランスをとる。

初期には鏡などを利用して視覚による姿勢コントロールを利用する。次第に残存筋の緊張などから立位感覚を習得させる。杖歩行の前段階として行う訓練である。

 ⅱ)プッシュアップ(骨盤引き上げによる広背筋、腰方形筋などの強化)

肩甲骨を下制、肩関節屈曲、肘伸展位から体幹を持ち上げ、体幹の押し上げと同時に両足を床から離す動作である。ジャックナイフ様運動を同時に行えばより効果的である。

着床時には肘をゆっくり曲げながら身体をおろし、踵から床に下ろすと同時に肩をそらせ骨盤を前傾位にして股関節を軽度過伸展位にした立位姿勢に戻る。

屈筋痙性のある患者は着地時に股関節が屈曲・内転し転倒する危険性があるためセラピストは患者の股関節を過伸展させ骨盤を前傾するように介助する。

この訓練は上肢、肩甲帯の筋力やバランス感覚の強化になる。ADL面では大振り、小振りなどの杖歩行や段差、階段昇降動作時に骨盤のコントロールに役立つ訓練である。

 ⅲ)骨盤片側挙上

 歩行パターンを指導する前に腰方形筋が残存するものは、それは中心に広背筋、背筋、腹筋などによる骨盤挙上と片足の離床訓練を行う。

患者は挙上側の肘関節伸展と肩甲骨下制を行うと同時に骨盤を挙上する。セラピストは患者の後方から反対側の骨盤を固定し、挙上側の骨盤挙上を介助する。

②動的バランス

ⅰ)方向転換

平行棒内の立位姿勢から両肘を伸ばし体幹を押し上げ、右へ90°回転してゆっくり肘を曲げて踵から着地する。次いで左手は右手と同じ側の平行棒を握り、そして左手を後方に移して反対側の平行棒を握る。これを繰り返して方向転換を行う。この訓練は杖歩行や階段での方向転換に役立つ訓練である。

ⅱ)上肢挙上

平行棒内での立位から上肢を左右交互に前方、後方、側方、頭上に挙上させてバランス能力を養う感覚である。これは杖を前方に運ぶ動作の練習にもなる。

ⅲ)片手あるいは両手の前後運動

平行棒内または両杖で片手あるいは両手を体幹の前後に移動させて身体を支える運動である。慣れてくれば、大きくそして素早く重心移動させる。

この訓練は保護伸展反応や機敏性そしてバランス感覚を養い転倒に備えるものである。

(2)平行棒内歩行訓練

 (a)前進:6とおりの歩行がある。

 交互引きずり歩行、同時引きずり歩行、小振り歩行、大振り歩行、4点歩行、2点歩行である(歩行様式は杖歩行の項を参照)。

 (b)後退:前進と逆のパターンで行う。

 (c)側進

(3)杖歩行(松葉杖、ロフストランド杖歩行)

 (a)前進

  ①交互引きずり歩行

 この歩行は歩行初期のやさしい歩行である。歩行に必要な腹筋、腰方形筋の筋力が低下あるいは欠如していても広背筋でこの歩行を行うことができる。

 立位姿勢から片手ずつ前方に置き、床面の両下肢を引きずって前へ移動する。この動作の繰り返しで前に進む。

 ②同時引きずり歩行

立位姿勢から両杖を前方に平行に置き、床面上の両下肢を引きずって前方へ移動する。この歩行が可能になれば小振り歩行を指導する。

 ③小振り歩行

 この歩行は腰方形筋の筋力が無くても広背筋にて可能である。歩行速度は遅いが安定性がある。方法は立位から両杖を前方に平行に置き、体幹を持ち上げ両下肢を前方に振り出し、両手の手前で着地する。着地してすぐに両手を前に出し、前述の繰り返しで前進する。損傷レベルがC8~Th1でも可能であり、Th12~L1以下の場合は実用的である。

 ④大振り歩行

 杖歩行の中では最も速度が速く、交通量や人通りの少ない舗装道路そして屋内の広い廊下などに適している。

 この歩行は小振り歩行の可能な者に指導を行う。前方に平行に置いた両杖に体重をかけ、ジャックナイフ様運動を利用し、一気に体幹を持ち上げる。両下肢は振り子様に前方に振り出され両杖を超えて着地する。着地時の姿勢は股関節過伸展位で腹部を前に突き出した格好となる。前進するには着地後の勢いを利用して前方に両杖を移動、再びジャックナイフ様運動を利用して両下肢を振り出し着地する。この繰り返しで前進する。

実用的になるのはL1レベル以下の機能が必要。

 ⑤四点歩行

 右手を前方に置き、体幹を右前方に傾ける。そして、左下肢を腰方形筋を使って前方に振り出し着地する。片方の下肢も同じ方法で振り出し着地する。この繰り返しで前に進む。

この歩行は骨盤挙上筋力があれば股関節屈曲筋力ゼロ(zero)でも可能である。実用歩行はTh12レベル以下の機能が必要となる。

 ⑥二点歩行

 右手を出すのと同時に、左下肢を腰方形筋を使って前方に振り出し着地する。片方の下肢も同じ方法で振り出し着地する。この繰り返しで前進する。四点歩行同様、股関節屈曲筋群が働かなくても腰方形筋の作用があれば体幹の回旋を利用して可能である。

実用歩行はL2レベル以下の機能が必要。

(4)転倒と起立訓練

 実用歩行の獲得には転倒と起立の方法を獲得しなければならない。

 転倒訓練の一例を述べる。

 両杖を腋窩から外して、両腕を外旋、前腕回外にて外側に投げ出す。同時に体幹と股関節を屈曲し両手を床について高四つ這いとなり、両上肢で身体を支える。そこから腹臥位となる。

 床からの立ち上がり(両松葉杖使用)

①腹臥位で二本の松葉杖をまとめて、ハンドグリップを頭側に向けて膝関節のあたりにくるように置く。

②体重を両手にかけ、両手を足の近くまで寄せて高四つ這い位となる。

③片手で杖を持ち、同側の肩に杖を当てて支柱とする。このとき、杖はやや外側につく。

④同様に他方の手で杖を持ち方にあてて支柱とする。

⑤松葉杖の上方を次第に把持し、身体を起こす。

●排尿障害

1)排尿の基礎

排尿に関する基本的な神経・筋の構成要素は膀胱排尿筋、骨盤神経(副交感神経)、とその運動細胞核がある仙髄(S2~S4)の排尿筋反射中枢であり、この3つの要素から排尿筋反射弓を形成する。また排尿反射弓とは別に膀胱のコックの役割をする尿道括約筋(S1~S3)がある。

脊髄損傷では、仙髄(S2~S4)の排尿筋反射中枢より上位の損傷で排尿筋反射のおこる核上型膀胱かそれ以下の損傷で排尿筋反射弓に麻痺があり排尿筋反射のおこらない核・核下型膀胱となる。脊髄ショック期には核上型膀胱においても膀胱尿道筋は無緊張状態であるため、核・核下型膀胱と同様に閉尿となる。

 

2)排尿訓練

排尿を促進するため間欠導尿あるいは自己導尿を実施する前に下腹部の叩打、あるいは手圧、腹圧を加える。

核上型の損傷では反射性膀胱になるため下腹部の叩打やトリガーポイント(皮膚-膀胱反射)を刺激して排尿反射を誘発する。

その方法として咳、マッサージ、自律神経過反射などを利用する。刺激部位は陰茎、陰嚢、陰唇、恥骨結合部、大腿内側、仙骨部、肛門周囲をマッサージ、押す、つまむなどの求心性刺激を与えることで排尿筋の収縮を試みる。

核・核下型膀胱は反射弓がないため自発的収縮は期待できない。したがって膀胱へ尿が300-400mlたまれば下腹部を腹圧、手圧による排尿をさせる。

 

●手術

脊髄損傷の治療として手術が適応されるケースは少なく、原則として牽引での整復といった保存療法が選択される。理由としては、①一度は解された脊髄の神経組織は早期に形成される瘢痕組織によって再生が阻まれるので骨を再生しても神経の再生には直接結びつかない、②保存療法でも脊柱は十分に安定性を取り戻せる¹⁾ 、③脊柱を強固に固定しすぎることにより社会生活上不便となることが起こりうる、などである。

しかしまったく手術を行うケースが無いわけではなく、以下の理由はあると手術の適応となる。

①加重される骨傷(椎骨の脱臼、骨折など)変形によって麻痺が進行するとき

②神経根が圧迫されて激しい痛みが予想されるとき

③脊柱が著しく不安定なとき

④看護上、その他の社会的因子があるとき

次に各術式について記す。

 

Ⅰ主に頚椎に適応となる手術

環軸椎固定術:環軸関節脱臼に適応となる。方法は前方からは開口位、後方からは椎間弓にワイヤーを使用して骨移植を行う。

脊柱管拡大術:後縦靭帯骨化症などの脊柱管に狭小がある場合に行われる。

頚椎前方固定術:骨片の摘出と脊柱のrealigment,ならびに固定を確実に行うという利点のため、頚椎に不安定性がある場合は前方固定術が用いられることが多い。前方固定術の方法はSmith-Robinson法やCloward法、Bailey and Badgley法、Simmons法などがある。

椎体の破壊が高度な場合には椎体の全摘出を行い、固定する場合もある。

 

Ⅱ主に胸椎に適応となる手術

ワイヤー固定法:脱臼した関節突起を切除し、後方に骨移植とワイヤー固定を行う。

プレート固定法:関節突起を切除して整復後、棘突起間に彎曲したプレートで固定後、後方の椎弓に骨移植を行う。

Harrington法:強固な固定が得られるため広く用いられているが、多関節固定のために躯幹の可動性が制限され、ADL訓練場好ましくない。

Pedicle screw法:後方から椎弓根にスクリュー固定を行うものであり、胸腰椎移行部に多く用いられる。

金田式前方固定術:前方から進入し、3椎体を図のように固定することでHarrington法ほど可動性を奪うことはない。

(‘ー’*)参考文献

医療学習レポート.脊髄損傷と解剖生理からリハビリ


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