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(≧▽≦)大腸癌の話


(~_~メ)題名:大腸癌の話

■解剖生理

●大腸の構造

大腸は、小腸よりも太く、全体で1.5mほどの長さがある。右下腹部の盲腸から結腸に続く。結腸は、右腹部の上行結腸、上腹部の横行結腸、左腹部の下行結腸、下腹部にまわるS状結腸と続き、骨盤内の直腸となって肛門に開く。

盲腸の先端には、長さ6cmほどのミミズのような形の虫垂がついている。大腸では、小腸で消化吸収された残りから水分などを吸収し、固形状の糞便を作る働きをする。糞便は、消化されないで残った食物の残渣や腸上皮、腸内細菌、およびその産生物からなる。

横行結腸の壁の一部を切り開いて、結腸の内面と外面を示す。結腸には、3条の縦走する結腸ヒモがある。

1)盲腸と虫垂

盲腸は、回盲弁より下にある短い袋状の部分(長さ6~8cm)で、腹腔後壁に癒着している。虫垂は、盲腸の左後壁から出る鉛筆くらいの太さの突起で、長さ(2~20cm、平均6.5cm)も位置も個人差が激しい。虫垂の粘膜にはリンパ組織が豊富にあり、免疫系の一部をなす。青年期には細菌感染により虫垂炎をおこしやすく、マックバーネ点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の臍から2/3の位置)に圧痛を生じる。

2)結腸

結腸は、大腸の大部分を占め、上行・横行・下行・およびS状結腸の4部に分かれる。

上行結腸は、右下腹部の盲腸から続き、腹壁後壁の右側縁を上行して肝臓下面にある右結腸曲までをさす。横行結腸は、そこから左に曲がって胃の深層を横切り、脾臓の下の左結腸曲までをさし、下行結腸はここから下方に向かい、左腸骨窩までをさす。S状結腸はそこから大きくうねり、骨盤に入って仙骨(第3仙椎)の前面までであり、そこで直腸に移行する。上行結腸と下行結腸は腹腔後壁にくっついているが、横行結腸とS状結腸は、短い腸間膜によってぶら下げられている。

結腸では、壁を作る平滑筋のうち縦走する筋が3箇所に集合して結腸ヒモをつくっている。結腸ヒモの間の部分は、外に向かってふくれだして結腸膨起となり、内面には半月ヒダをつくる。結腸の外面には、腹膜垂という脂肪を含む房がぶら下がっている。結腸ヒモやこれらの特徴は、手術のときに大腸と小腸を区別する手がかりとなる。

3)直腸と肛門

直腸とは、骨盤内で仙骨前面にそって下行し、尾骨の先端を越えたところで後下方に急に向きを変え、肛門に達する。内腔の広い部分が直腸膨大部、そこから急に細くなった部分が肛門管である。直腸の内面には横走するヒダが2~3本あり、とくに大きいコールラウシュヒダが肛門から約6cm上の右側にある。直腸の前方には、男性では膀胱・前立腺・精嚢があり、女性では子宮・膣がある。

肛門で粘膜と皮膚の境には、痔帯(肛門櫛)という輪状のかたまりがある。その上縁には、8~10本の肛門柱という縦方向のかたまり(ヒダ)がある。この一帯の粘膜下には、内腸骨静脈の枝につながる直腸静脈叢が、よく発達しており、痔による出血がおこりやすい原因となっている。

肛門では、輪走の平滑筋層がよく発達して内肛門括約筋をつくり、その外方に骨格筋の外肛門括約筋があって、意識的な排便の調節を行うことができる。

4)大腸の壁

大腸の壁は、小腸と同じように、粘膜と平滑筋層を備えているが、少し違いがある。大腸の粘膜には、輪状ヒダも腸絨毛もなく、腸線だけが備わっている。平滑筋層は、内輪・外縦の2層からなるが、結腸では外縦の筋が3箇所に集まって結腸ヒモをつくる。大腸では、消化はほとんど行われない。栄養素もほとんどが小腸で吸収されるため、大腸では水と電解質のみが吸収される。しかし、大腸の吸収能は高いため、肛門から大腸内に挿入して薬剤を吸収させる坐薬などに利用される。

 

●大腸の機能

口から摂取した食物は、口腔、胃、小腸を進む間に消化され、栄養素が吸収される。そして消化できなかった食物繊維やその他の残渣が大腸に入る。大腸には絨毛はなく、水と電解質を吸収して糞便を形成する。

◆運動:

大腸の運動は主として分節運動であり、内容物の移動速度は遅い。ただし、食事のあとには、大腸の蠕動運動が亢進し(胃大腸反射)、結腸の内容を急激に直腸に送る。この強い蠕動運動を大蠕動ともよぶ。朝食後に便意を感じるのはこのためである。

◆腸内細菌叢:

大腸内には大腸菌や腸球菌、ビフィズス菌など、100種類以上の細菌が常在している(これらの細菌群は腸内細菌叢とよばれる)。その数は膨大で、大腸内容物1mlあたり1000億~1兆個の細菌が存在する。これらの腸内細菌は、消化液では分解できなかったセルロースなどの植物性の繊維を分解してくれるため、草食動物にとっては非常に重要な意味を持つ。人体にとっては、セルロースの分解はほとんど意味はないが、腸内細菌によるビタミンKの産生は、1日の必要量をまかなえるほどの量に達しており、重要である。また、外来の病原微生物の定着・増殖を防ぐという意味でも効果がある。一方、腸内細菌の存在によって、老化が促進される、寿命が短縮する、発癌の原因となるなど、不利な点も知られている。

◆排便:

直腸は、通常は空虚であるが、大蠕動により糞便が直腸に送られ、直腸壁が伸展されると便意を生じる。肛門周囲には副交感神経性の骨盤神経に支配される内肛門括約筋と、体性神経である陰部神経に支配される外肛門括約筋があり、通常は収縮して肛門を閉じている。

排便反射の中枢は仙髄にあるが、通常は大脳皮質からの神経線維により抑制されている。大脳皮質からの抑制がなくなると(つまり排便の準備が整うと)、骨盤神経を介して直腸の収縮と内肛門括約筋の弛緩を生じる。このとき、外肛門括約筋は一時的に収縮するが、意志によって排便開始を始めると陰部神経を介して弛緩が起こる。息を吸い込んだ状態(吸息位)でとめ、腹筋を収縮させて腹腔内圧を上昇させることで排便は促進される。

*直腸壁が糞便による伸展刺激を受けると、便意が生じる。排便の準備が整うと、骨盤神経により直腸の収縮と内肛門括約筋の弛緩が引き起こされる。排便が始まると、陰部神経により外肛門括約筋の弛緩が引き起こされる。

 

■病態・原因

大腸癌の頻度は増加傾向にある。組織学的には腺癌が多く、発生部位はS状結腸・直腸が最も多い。尚、男性に多く発生する傾向がある。

大腸癌の発生と食事との関係は古くから指摘されており、脂肪は大腸癌の発生を促進するといわれている。わが国における大腸癌発生の増加は、食生活の西欧化が一因とされている。

最近では、大腸癌の発癌メカニズムが分子生物学的に解明されつつある。すなわち、遺伝子異常が多段階におこり、その蓄積によってがんが発生したり転移が起こるとされている。

家族性大腸線腫症や遺伝性非ポリポーシス大腸癌のように、大腸癌が遺伝的に発生する家系があり、これらの疾患の原因遺伝子も同定されている。

 

■肉眼的分類

大腸癌の肉眼的分類は、「大腸癌取り扱い規約」によって次のように分類されている。これは基本的には、胃がん分類と同じである。

0型:表在型

1型:隆起腫瘤型

2型:潰瘍限局型

3型:潰瘍浸潤型

4型:びまん浸潤型

5型:分類不能

 

■進行度(ステージ分類)

H0,M0,P0

H1,H2,H3,M1,P1,P2,P3

N0

N1

N2,N3

M1(リンパ節)

SM

MP

Ⅲa

Ⅲb

SS,A

SE

SI,AI

<壁深達度>

M:がんが粘膜下にとどまる

SM:がんが粘膜下層までにとどまる

MP:がんが固有筋層までにとどまる

漿膜を有する部位

SS:がんが固有筋層をこえて浸潤しているが、漿膜表面に露出している

SE:がんが漿膜表面に露出している

SI:がんが直接他臓器に浸潤している

漿膜を有しない部位

A:がんが固有筋層を超えて浸潤している

AI:がんが直接他臓器に浸潤している

<リンパ節転移>

N0:リンパ節転移をみとめない

N1:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が3個以下

N2:腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が4個以上

N3:主リンパ節または側法リンパ節に転移をみとめる

NX:不明

<肝転移>

H0:肝転移がない

H1:肝転移巣4個以下かつ最大径が5㎝以下

H2:H1,H3以外

H3:肝転移巣5個以上かつ最大径が5㎝をこえる

HX:不明

<腹膜転移>

P0:腹膜転移がない

P1:近傍腹膜のみに播種性転移をみとめる

P2:遠隔腹膜に少数の播種性転移をみとめる

P3:遠隔腹膜に多数の播種性転移をみとめる

PX:不明

<肝以外の遠隔転移>

M0:遠隔転移がない

M1:遠隔転移を認める

MX:不明

 

■症状

発生初期には自覚症状のない場合が多い。初期には便潜血反応が陽性になるだけで、発見が遅れがちである。

腫瘍が大きくなると症状が出現するが、右側と左側では症状が異なる。右側結腸、とくに盲腸や上行結腸は腸管内腔が広く、腫瘍が大きくなるまで腸管狭窄症状をおこさない。したがって、右側結腸がんでは、軽度の腹痛や下痢と便秘の交互の出現などが初発症状となる。がんからの出血によってしだいに貧血や体重減少が起こり、腫瘤を触知するようになる。回盲弁付近のがんでは、小さくても腸閉塞をきたす場合がある。

左側結腸や直腸は内腔が狭く、便は水分が吸収されてかたくなっているため狭窄症状が出現しやすい。この部分のがんでは、まず便秘となり、腸の蠕動不穏や下痢と便秘の交互の出現、腹部膨満感などがあらわれ、最終的にはイレウスとなる。なお、腫瘍は触れないことが多い。中年以上で手術既往がなく、イレウス症状をきたした患者では、左側結腸がんを念頭におく必要がある。

S状結腸がん・直腸がんでは、腫瘍が肛門に近いため、下血が主訴になることも多い。上部直腸がん・S状結腸がんでは便に血が混ざっている場合が多いが、下部直腸がんでは新鮮血の下血だけがおこる場合もある。

 

■診断

問診によって症状の経過を聴取する。また、①直腸内指診・肛門鏡検査、②直腸鏡検査、③注腸造影、④大腸内視鏡検査などが行われる。

注腸造影では、がんの存在部位を正確に判定できる。また、不規則な隆起や潰瘍の存在、大腸壁の不整像や硬化像などからある程度の進行度診断まで可能である。大腸内視鏡検査では、大腸の狭窄・隆起と潰瘍の状態を観察する。また、直視下に生検を行い、組織学的に確定診断をつけることも可能である。

これらの検査は前処置として下剤の服用が必要であるが、強い狭窄やイレウスが疑われるような症例では下剤の服用によって腹痛が出現したり、閉塞症状が悪化する場合があるので注意が必要である。

近年では、注腸造影や大腸内視鏡の器具や技術の進歩によって早期がんが発見される頻度が増加している。早期がんの多くはポリープ型のものであるが、陥凹型の早期がんも存在する。早期がんでは壁深達度を判定するために超音波内視鏡検査を行い、治療方針を決定する。

 

■治療

腺腫内癌とは、ポリープ型の早期がんで腺腫のなかに一部癌が認められる状態をいう。腺腫内癌を含む粘膜内癌は、リンパ節転移を起こさないので、内視鏡的に完全に除去が行われれば治療は完了する。

陥凹型早期癌で手術前に粘膜内癌と診断された場合には、内視鏡的内膜切除術(EMR)やストリップバイオプシーが行われる。これは、病変の周囲の粘膜下層に生理食塩水を注入して病変を隆起させてから切除する方法である。

切除した標本は病理組織学的に正確な深達度診断を行い、癌が粘膜下層に強く浸潤している場合やリンパ管・静脈などに浸潤がみられた場合には、手術的に追加切除を行うほうが安全である。

手術前に粘膜下層に浸潤していることが明らかな症例では、最初から手術を行うべきである。大腸癌では腹腔鏡下手術の技術が進歩しており、早期癌では腹腔鏡下手術が腫瘍の占居部位にかかわらず行われる場合が多い。また、腹腔鏡下手術でリンパ節郭清を行うことも可能である。

進行がんに対しては、広範囲にリンパ節郭清を伴った腸管切除が行われる。これは通常の開腹手術で行われる。腹腔鏡下手術を導入している施設もあるが、まだ一般的ではない。リンパ節の番号および郭清程度と切除範囲は「大腸癌取り扱い規約」によって定められている。

切除不能例では、通過障害の解除のためにバイパス術や人工肛門造設術が行われる。直腸がんに対しては、放射線療法もある程度は有効である。

補助化学療法では、腺癌ではフルオロウラシル(5-FU)やその誘導体が用いられ、肛門にみられる扁平上皮癌ではブレオマイシンなどが用いられる。

他臓器に癌が浸潤していたり、肝臓や肺に転移した症例であっても切除可能であれば予後が期待できるため、可能なかぎり外科的治療を選択すべきである。

 

■定型手術

□結腸癌の手術

盲腸癌では回盲部切除術、上行結腸癌・右側横行結腸癌では結腸右半切除術が行われる。がんが横行結腸の中央部にある場合は、横行結腸切除術を行う。

左側横行結腸癌・下行結腸癌では、結腸左半切除術が選択される。S状結腸癌では、S状結腸切除術を行う。癌の進行度に合わせてリンパ節郭清を行う必要がある。

□直腸癌の手術

直腸S状部、上部直腸のがんでは、直腸切除術(高位前方切除術あるいは低位前方切除術)が施行される。低位直腸がんでは、がんから歯状線までの距離が2cmあれば直腸切除術を行う。それより下位の直腸がんでは腹会陰式直腸切断術(マイルズ手術)となり、永久人工肛門造設が必要になる。

低位直腸癌ではリンパ流の問題から、排尿や性機能をつかさどる神経を切離する場合があり、排尿障害や勃起障害をきたす場合があるので、手術後の排尿訓練やカウンセリングが重要である。最近では自律神経温存術式が発達し、これらの障害のおこる頻度も減少している。

また、最近では腹腔鏡下手術の技術が進歩し、リンパ節郭清を伴った大腸癌手術が行われる施設も増加している。

□人工肛門造設術

人工肛門造設術(ストーマ造設術)とは、手術によって大腸を完全長瘻として腹壁に固定して便を排出させる手術のことをいう。

①単孔式人工肛門:腸管を切断し、その口側断端を腹壁に固定する方法である。肛門側断端は直腸切断術の場合には摘除される。その他の場合は閉鎖して腹腔内に埋没する。

②双孔式人工肛門:腸管を切断せずにループ状に体外に出して腹壁と固定し、露出した腸管の先端に穴を開けて皮膚と縫合する方法である。皮膚には口側、肛門側の両者の腸管粘膜が露出する。超低位前方切除術での一時的人工肛門や、大腸癌による腸閉塞に対する人工肛門造設術など、将来、人工肛門を閉鎖する予定のある場合に行われることが多い。

 

■大腸癌患者の看護

<手術前の看護>

病変部位からの持続的な出血による鉄欠乏性貧血や腹痛・便秘などの狭窄症状、持続的な下痢などの症状は、栄養状態に影響を及ぼしている可能性がある。低栄養状態は、創傷治癒過程や手術後の回復に影響を及ぼすため、手術前から栄養状態をととのえることが大切である。

また、手術後の創部感染や縫合不全などの予防には、手術前の腸管準備が重要である。腸管準備の処置は苦痛を伴うため、できる限り患者が安全・安楽に処置を受けられるように配慮することが重要である。

□アセスメント

(1)全身状態:バイタルサイン、顔色、貧血症状の有無、皮膚の状態

(2)疾患に伴う症状

①腹部症状:腹痛(部位・疼痛の種類)、吐き気・嘔吐・腹部腫瘤の有無、腹部膨満感、直腸癌では肛門痛や肛門の違和感の有無

②排便状態:便の性状(下血・血便・粘血便)、便柱の変化、便通異常(便秘と下痢の繰り返し)、テネスムス(しぶり腹・裏急後重)の有無

③他臓器への浸潤による症状:性器出血の有無、排尿異常(排尿困難)

(3)栄養状態

①1ヶ月の体重減少率

②食事摂取量の変化

③食事の嗜好:脂肪や残渣(繊維)の多い食品の摂取量

(4)検査データ

①手術前の一般的検査、感染症の有無、胸部単純撮影、心電図、肺機能検査、腎機能検査

②電解質バランス異常:ナトリウム・カリウム・塩素

③栄養状態:総タンパク・アルブミン・コレステロール・総リンパ級数

④貧血状態:赤血球数・ヘモグロビン

⑤疾患に関する検査:便潜血反応、直腸診、肛門鏡検査、大腸内視鏡検査、注腸二重造影

⑥転移や浸潤に関する検査:腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)、腹部CT・MRI、胸部CT、膀胱内視鏡検査、点滴尿路造影(DIP)、超音波内視鏡検査、内診

(5)既往歴

(6)嗜好品:喫煙暦・飲酒の有無・香辛料

(7)治療方針・麻酔法・予定術式

(8)身体的機能障害の有無

(9)患者の生活背景・生活像:患者の家庭や職場における役割、疾患や入院生活が役割に及ぼす影響、経済的問題

(10)疾患・手術に対する患者の認識:疾患や術式・治療方針の説明に対する理解、疾患や手術に対する不安の程度

(11)手術に対する対処行動:手術や治療方針の説明に対する反応、術前オリエンテーションや術前検査などに対する反応や取り組み

(12)疾患・手術に対する家族の反応と支援体制:患者の疾患や手術に対する家族の理解、不安の程度、患者の支援体制

□看護目標

(1)腹部症状が軽減する。

(2)栄養状態が改善する。

(3)術前の処置・検査の必要性を理解し、協力出来る。

(4)術後合併症を予防するための訓練に積極的に取り組める。

(5)手術に対する不安や葛藤が緩和する。

(6)家族が患者を支援するための方法について考えることができる。

□看護活動

◆症状の軽減:

腫瘍による閉塞症状が強い場合には、少しでも症状を緩和するために、イレウスチューブを挿入したり、経肛門的に減圧チューブを挿入することがある。チューブからの排液が多い場合には、脱水や電解質異常が生じることもあるため、一般状態やバイタルサイン、水分出納バランスなどの観察を行うとともに、チューブ挿入に伴う不快感を和らげるよう配慮する。

◆栄養状態の改善:

集団検診などで、がんが早期に発見された場合には、腹部症状はなく栄養状態が保たれていることが多いが、進行癌では、出血に伴う貧血や頻回な下痢による電解質異常や脱水、または吸収障害などで栄養状態の低下をきたしていることがある。

貧血や電解質異常に対しては、成分輸血による補正や静脈注射による電解質の補正が行われる。

栄養状態の低下に対しては、栄養評価を行ったうえで栄養状態を改善するための治療が必要と判断されれば、患者の状態に応じた栄養補給の必要性や投与経路が決定される。多くは消化管の安静を保ちながらの栄養補給として中心静脈栄養が行われるため、投与速度や血糖値に注意するなど、中心静脈カテーテル挿入中の管理に準じたケアを行う。

◆腸管前処置:

大腸の手術においては、手術前に腸管の前処置が行われる。その目的は、腸管内の細菌数を減らし、術中感染を最小限にとどめ、また腸管の内容物を排除し手術操作を容易にするためである。

最近では手術前日に経口洗腸法を実施するのが主流となっている。経口洗腸法を実施しているときは多量の水分を摂取するため、吐き気・嘔吐などの症状が出現する可能性がある。また、頻回な下痢に伴う腹痛や脱水症状・疲労感・肛門周囲皮膚の疼痛などにも注意を払う。排泄行動に伴う転倒事故防止のためにはポータブルトイレの設置など、環境を整えることも大切である。手術前の検査でイレウスが確認された場合には、経口洗腸法を実施しないことがあるため、実施の有無を必ず医師に確認する。

 

腸管術前処置の一例

1.機械的な腸内容物の排除(経口洗腸法)

・経口腸管洗浄剤(ニフレック)1袋を水に溶解し約2000mlを溶解液とする。

・通常、成人の場合、1回の腸管前処置につき、溶解液2000~4000mlを1時間あたり約1000mlの速度で経口投与する。

*ただし、排泄液が透明になった時点で投与を終了し4000mlをこえての投与は行わない。

2.経口的抗生物質の投与

・硫酸カナマイシン(カナマイシンカプセル)(250mg):9カプセル

・メトロニダゾール(フラジール)(250mg):3錠

分3(13:00、14:00、就寝時)内服

<手術後の看護>

大腸癌の術後合併症として、頻度の高いものは、縫合不全や骨盤腔内の膿瘍、創感染、イレウスなどである。手術前の低栄養状態・糖尿病・肝機能低下などの既往や腸内容物の残存による手術中の汚染などによって、これらの合併症が発生するリスクが高くなる。手術後は、合併症の早期発見のため、十分な観察を行うこと、呼吸・循環動態の改善を促し、早期離床を目指した援助を行うことが重要である。

結腸の手術ではドレーンが留置されないことも多いが、縫合不全や後出血などの可能性がある場合には情報を得るために留置されることがある。ドレーンの留置される位置は切除部位や吻合部位によって異なり、吻合部近傍・ダグラス窩・横隔膜窩・モリソン窩などに留置される。手術後の合併症の早期発見には、これらのドレーンからの排液の性状や量などの観察が重要である。

□アセスメント

(1)手術に関する内容

①大腸の切除範囲と再建方法およびリンパ節の郭清の程度

②隣接臓器への浸潤の有無、合併切除の有無

③麻酔・手術時間

④手術中の出血量と水分出納、循環動態の変化

(2)全身状態:麻酔からの覚醒状態、バイタルサイン、水分出納、呼吸状態

(3)手術創部およびドレーン・チューブ類の状態

①手術創部の部位、浸出液の量と性状、出血の有無

②ドレーンの種類と挿入部位、排液の性状・量

③経鼻胃管の挿入位置と固定状態、排液の流出状態・性状・量

④バルーンカテーテルからの尿の流出状態・性状・量

(4)創部痛:疼痛の程度、鎮痛薬の種類・使用量・投与経路

(5)腹部状態:腸蠕動音、排ガス・排便の有無、腹部膨満感・吐き気・嘔吐の有無

(6)術後合併症の徴候

①肺合併症:発熱(熱型)、酸素飽和度、咳嗽の有無、呼吸困難感

②創部感染:創周囲の発赤・熱感・硬結・疼痛の有無、創部哆開の有無、発熱(熱型)、血液検査データ(白血球数・C反応性タンパク)

③術後イレウス:腹痛とその程度、腸蠕動音(強弱・金属音の有無)、腹部単純X線撮影(二ボー像の有無)

④縫合不全:発熱(熱型)、腹膜刺激症状、ドレーンからの排液の性状、血液検査データ(白血球数・C反応性タンパク)

⑤排尿障害の有無

⑥深部静脈血栓症・肺血栓症:下肢の疼痛・浮腫の有無、呼吸困難・胸痛の有無

□看護目標

(1)呼吸機能・循環機能が安定する。

(2)痛みやドレーン類の留置による不快感が緩和する。

(3)手術創部の感染や術後合併症の発現がない。

(4)早期離床ができる。

□看護活動

◆手術直後の看護:

手術直後はまだ麻酔から十分に覚醒していないので、覚醒状態を確認するために意識レベルを経時的に観察する。また麻酔からの覚醒を促すため、バイタルサインの測定のたびに深呼吸を促すようにする。

生体は外科的侵襲を受けると、恒常性を保とうとして非特異的な神経内分泌反応とサイトカイン誘発反応を示す。これに伴って手術直後には、血圧上昇、尿量現象、基礎代謝率の上昇に伴う発熱、血糖上昇などの反応が見られる。また手術中に投与された薬剤の影響などにより、とくに手術後24時間は循環動態が不安定である。

このような手術後の状態に対し、水・電解質バランスを正常に保つことを目的として輸液管理が行われる。また呼吸器系はガス交換が正常に行われ、低酸素症を起こさないこと、肺合併症を予防・早期発見することを目的として管理が行われる。呼吸・循環動態を経時的に把握し、異常を早期発見することが重要である。

呼吸状態を把握するためには、呼吸のリズムの観察、呼吸音および異常呼吸音(副雑音)の有無の聴診、パルスオキシメータを用いた酸素飽和度のモニタリングを行い、気道分泌物がある場合には性状を観察する。呼吸音の聴診を行う際、下葉は無気肺が最も発生しやすいため、前胸部からの聴診だけでなく、背部からの聴診を怠ってはならない。

循環動態を把握するためには心電図によるモニタリングを行い、血圧・脈拍数の測定、水分出納バランスの観察を行う。

急性腎不全を予防するためには毎時1ml/kgの尿量を維持することを目標とする。尿量が少ない場合には、可能であれば輸液の滴下速度を調整して様子をみるが、医師により滴下速度が指示されている場合や循環器系の疾患が気負うにある場合などは医師に相談する。

血圧は外科的侵襲に対する生体反応として生理的に上昇するが、そのほかにも疼痛がコントロールされていない場合、疼痛により呼吸が抑制されて低酸素血症になっている場合、バルーンカテーテルの屈曲や閉塞のために膀胱に尿がたまっている場合などに上昇するので、原因を明らかにして対処する。またドレーンから出血している場合や、腹腔内で出血している場合は血圧が低下するので、注意を要する。

◆ドレーン類の挿入時の管理:

①経鼻胃管:手術後は腸管麻痺があるため、消化管内の減圧目的で低圧持続吸引を行う。挿入位置と固定を確認し、排液の流出状態・排液量・性状などの観察を行う。通常、排液量が約200ml以下であれば、不必要な長期留置は避け、手術翌日には抜去される。

②腹腔内ドレーン:吻合部近傍に留置されたドレーンから血性の排液が見られれば、吻合部出血を疑う。出血量によっては再手術の可能性もあるため、血圧や脈拍などバイタルサインと合わせて出血量を観察する。手術後1週間前後の発熱は縫合不全の可能性があり、縫合不全が生じた場合には、ドレーンからの排液の性状は混濁し、便汁様で悪臭がある。排液の性状・量を観察することが重要である。

◆術後合併症の早期発見と予防:

①術後合併症:肺合併症の予防には、手術前からの呼吸訓練が有効である。手術後の深呼吸の必要性の理解を促すとともに咳嗽や深呼吸のしかたについて訓練しておく。手術後は、痛みをコントロールして早期離床を促し、たんが多い場合には、体位ドレナージや吸入療法を実施して排痰を促す。

②術後イレウス:開腹手術の場合は手術操作による機械的刺激により、腸管の麻痺が通常は2~3日続く。それ以上経過しても、腸蠕動や排ガス・排便がみられず、さらに腹部膨満感などの症状がある場合には、麻痺性イレウスの可能性がある。術後のイレウスの予防には、手術直後から体位変換を頻回に行い、早期離床を促すよう伝える。

③吻合部縫合不全:縫合部の血行障害または、吻合部の緊張過多によって生じることが多い。手術後の早期離床により腸蠕動の回復を促すことによって、吻合部にかかる圧の軽減を図る。また、栄養状態の低下も一因としてあげられるため、手術前の栄養状態の改善も重要である。微細な縫合不全であれば、ドレナージを継続し、栄養管理・感染対策を行いながら保存的に治療がおこなわれる。

④深部静脈血栓・肺塞栓症:手術や長期安静臥床による血流のうっ滞から血栓が生じることがある。肺塞栓は深部静脈血栓に続発して生じ重篤な状態に陥ることもあるため、下肢の疼痛・浮腫の有無、呼吸困難、胸痛の有無などの観察が必要である。下肢の静脈のうっ滞を防止するためには、床上での下肢の運動や早期離床を促す。血栓症のリスクが高い場合には、手術中から弾性ストッキングの着用や弾性包帯、間欠的空気加圧法などを用いる。

◆経口摂取と排便に対する援助:

腸蠕動の回復が確認され腹部症状がなければ、経口摂取を開始する。手術後3日目ごろから流動食を開始し、5分粥・全粥へと、患者の腹部症状を観察しながら段階的に食事内容を変更する。大腸切除後は、食事が始まると一時的に軟便や下痢がみられ、便意を頻回に感じることがある。ある程度の下痢は薬剤でコントロールが可能なことや、時間の経過で症状が改善することを患者に説明し、不安の軽減に努める。

<回復期の看護>

回復期には、手術後の身体状態の観察や合併症の予防的な援助を行う一方で、退院に向けての準備を開始し、スムーズな社会復帰を促すように援助を行う。とくに、直腸切除後は、便の貯留機能が失われるため、少量ずつの便の排泄がある。このような手術後の身体機能の変化への対処方法を獲得し、少しでも快適な日常生活が送れるように、患者自身が工夫できるように指導する必要がある。

□アセスメント

(1)身体状態の把握

①術後イレウスの症状:腹痛・吐き気・嘔吐・腹部膨満感・排ガスの有無

②排便状況:回数、1回の便量と性状、排便に要する時間と時間帯、残便感の有無

③肛門周囲の皮膚の状態:肛門部痛・発赤・びらんの有無

④排尿障害:排尿量、排尿間隔、残尿感の有無、膀胱の緊満、残尿測定

(2)患者の疾患や治療方針に対する認識と理解

(3)退院後の日常生活についての患者の認識と理解

(4)家族の支援体制

□看護目標

(1)排便状態や肛門周囲の皮膚に状態が評価でき、それに応じた対処ができる。

(2)予測される合併症について理解し、発症したときの対処法が理解できる。

(3)食事指導の内容が理解できる。

(4)社会復帰についての不安が軽減する。

(5)家族が支援すべき内容を具体的に理解できる。

□看護活動

◆排便障害に対する援助:直腸切除後に、便の貯留機能が失われることに伴う排便障害の症状は、少量ずつの頻回な排便や頻発する便意、肛門周囲痛などである。また逆に、骨盤神経や下腹神経の損傷によって便の輸送能が低下し、便秘が生じることがある。少量ずつの頻回な排便や頻発する便意は手術直後が最も強く現れるが、時間の経過とともに、吻合した結腸の代償作用がある程度得られるようになれば、排便回数は減少する。

排便に関する相談は人にしづらいこともあり患者は不安に陥りやすいため、手術後の経過を説明する際には、排便状態の回復についても説明する。また、排便回数を減少させるためには、腹圧をかけないようにしながら肛門括約筋を収縮させる骨盤底筋運動を指導し、肛門括約筋の強化が図れるようにすることも有効である。

肛門周囲痛は、アルカリ性の便が頻回な排便や便もれで皮膚に付着する科学的刺激と、便をふき取る際の物理的刺激によって皮膚障害を生じるためにおこる。排便後はシャワーなどで洗い流し、肛門周囲を清潔に保つ方法について指導し、便の付着を予防するために油性の軟膏類、パウダーを使用する。

◆排尿障害に対する援助:

手術後の排尿障害には、排尿や蓄尿にかかわる自律神経の切除や損傷が影響していることから、できるかぎり自律神経を温存する手術が行われるようになってきた。しかし、直腸癌の手術後には、ある程度、尿閉や尿の排出困難・尿失禁など排尿障害が生じることがあり、バルーンカテーテルを抜去したあとは、排尿量・排尿間隔、尿意や残尿感の有無などを観察する。残尿測定によって残尿が50ml以上ある場合には、尿路感染を防ぐために間欠的自己導尿を指導する場合もあるが、自律神経が温存されていれば時間の経過とともに回復する。

◆日常生活についての指導:

①食事指導:大腸の機能が回復すれば、基本的には、制限しなければならない食物はなく、栄養のバランスがとれた食事内容を考えればよい。以前の食習慣と排便習慣との関連や、食べると下痢や便秘を生じやすい食品などを参考に、患者自身が具体的な調整方法を検討できるように指導する。

下痢の場合には次のことを指導する。

(1)腸蠕動の亢進を助長しないように、冷たい食事や飲み物、コーヒーや炭酸飲料、アルコール、香辛料などを避ける。

(2)脂肪の少ない食品を選択し、良質で吸収のよいタンパク質(卵・とうふ・白身魚・ささみなど)を摂取する。

便秘の場合は、通常は繊維を多く含む食事と水分摂取をすすめ、あわせて適度な運動や規則的な排泄習慣などを指導する。腹部膨満。吐き気などの腹部症状があり排泄がない場合には、イレウスの可能性もあるため受診するように指導する。

②職場復帰と運動:イレウス予防のためにも、適度な運動を行うようにすすめる。職場復帰は手術後の体力の回復の程度にもよるが、1ヶ月程度を目安とする。職場復帰に際しては、通勤途中や職場でのトイレの確保や確認など、患者が具体的に対策を考えられるように指導しておく。

③生活習慣:生活のリズムは排便の状態にも影響を及ぼすため、食事や睡眠など規則正しい生活習慣を取り入れることや、過度の緊張状態を避け、疲労時は休息をとるように心がけることを指導する。

④治療方針についての理解:退院後の治療方針について患者がどのように理解しているかを確認し、今後の治療に積極的に取り組めるように話し合う。

 

■ストーマ造設術を受ける患者の看護

□消化管ストーマの分類

期間・目的による分類 ・永久的ストーマ

・一時的ストーマ

部位・臓器による分類

・結腸ストーマ             盲腸・上行結腸ストーマ

横行結腸ストーマ

下行結腸ストーマ

S状結腸ストーマ

・回腸ストーマ
開口部の数による分類 ・単孔式ストーマ
・双孔式ストーマ       係帝式(ループ式)ストーマ

分離式ストーマ

二連銃式ストーマ

完全分離式ストーマ

機能による分類 ・禁制(制御性)ストーマ

・非禁制(非制御性)ストーマ

 

<手術前の看護>

□アセスメント

(1)疾患に伴う症状

①腹部症状:腹痛(部位・疼痛の種類)、吐き気・嘔吐、腹部腫瘤の有無、腹部膨満感

②排便状態と肛門の症状:便の性状(下血・血便・粘血便)、便柱の変化、便通異常(便秘と下痢の繰り返し)、テネスムスの有無、肛門痛や肛門の違和感の有無

(2)検査データ

①手術前の一般的検査、感染症の有無、胸部X線検査、心電図、肺機能検査、腎機能検査

②電解質バランス異常:ナトリウム・カリウム・塩素

③栄養状態:総タンパク・アルブミン・コレステロール・総リンパ球数

④貧血:赤血球数・ヘモグロビン

⑤疾患に関する検査:免疫学的潜血反応、直腸診、肛門鏡検査、大腸内視鏡、注腸二重造影

⑥転移や浸潤に関する検査:腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)、腹部CT・MRI、胸部CT、膀胱内視鏡検査、点滴尿路造影(DIP)、超音波内視鏡検査、内診

(3)多臓器への浸潤による症状:性器出血の有無、排尿異常(排尿困難)

(4)全身状態と栄養状態

①バイタルサイン

②顔色、貧血症状の有無、皮膚の乾燥の有無

③1ヶ月の体重減少率

④食事摂取量の変化

⑤食事の嗜好:脂肪や残渣物(繊維)の摂取量

(5)既往歴

(6)嗜好品:喫煙歴、飲酒の有無、香辛料

(7)治療方針・麻酔法・予定術式

(8)セルフケア行動に必要な身体機能:麻痺の有無、視力低下の有無、指先の巧緻性、指先の振るえの有無

(9)患者の家庭や職場における役割、疾患や入院生活が役割に及ぼす影響、経済的問題

(10)疾患・手術に対する患者の認識と不安の程度

①疾患や術式・治療方針・ストーマ造設の必要性についての説明に対する理解

②ストーマ造設についての受け止めや反応

③手術に対する対処行動:手術や治療方針の説明に対する反応、術前オリエンテーションや術前検査などに対する反応や取り組み

(11)疾患・手術に対する家庭の認識とサポート体制:患者の疾患や手術に対する家族の理解、不安の程度、キーパーソン、患者への支援体制

□看護目標

(1)腹部症状が軽減する

(2)栄養状態が改善する

(3)手術前の処置・検査についての必要性を理解し、協力できる

(4)ストーマサイト-マーキングの重要性を理解し、協力できる

(5)ストーマ造設後の生活についてイメージすることができる

(6)術後合併症を予防するための訓練に積極的に取り組むことができる

(7)手術に対する不安や葛藤が緩和し、手術への準備ができる

(8)疾患に対する家族の理解が得られ、家族が患者を支援するための方法について知ることができる

□看護活動

◆術前オリエンテーション:

術前オリエンテーションは、患者の手術後の適応を促すために行われる。ストーマ造設術を受ける患者の場合には、ストーマ造設の告知により心理的な衝撃が大きい場合がある。このような状態の患者は、効果的に学習を行うための準備状態が整っておらず、教育的なかかわりが効果的でないことが多い。このため患者の心理状態や身体状態をアセスメントし、患者がオリエンテーションを受ける準備状態にあるかどうかを確認する必要がある。患者が現実的に問題を解決する必要性について認識しはじめると、学習への意欲も高まり、効果的な学習を促すことができる。

術前オリエンテーションの内容は、ストーマ造設後の排泄経路の変化やストーマ機能についての説明、ストーマ造設後の局所管理の必要性についての説明などである。これらについて図を用いてわかりやすく説明を行う。また、実際に装具を提示したり、パンフレット・ビデオを使用し、手術後の経過やストーマ造設後の日常生活(衣類・食事・入浴方法・仕事・運動・性生活など)について説明を行い、患者が具体的なイメージを持てるように促す。

◆ストーマサイト‐マーキング:

ストーマの位置決め(ストーマサイト‐マーキング)は、患者がセルフケアしやすい位置を選定し、また、皮膚障害やストーマ傍ヘルニアなどの合併症を予防するために手術前に実施される。

ストーマの位置は、手術後の患者のQOLに影響を及ぼす。患者にとってよりよい位置を決定するには、看護師・医師が患者と情報交換しながら実施していくことが重要である。また、ストーマサイト‐マーキングにおいて、患者の位置に関する自己決定を促すようにはたらきかけることは、患者にとって、ストーマを受容していくためのよい機会ともなる。ストーマサイト‐マーキングを施行する際には、ストーマ造設や位置決めの必要性などについて説明がなされていることが原則である。

①ストーマサイト‐マーキングの方法:ストーマの位置決めには、腹部で最も安定して装具が貼用できる部位を選択する。一般的にはクリーブランドクリニックの原則が位置決定の基準に用いられることが多い。

クリーブランドクリニックの原則

①臍より低い位置

②腹部脂肪層の頂点

③腹直筋をつらぬく位置

④皮膚のくぼみ・しわ・瘢痕・上前腸骨棘の近くを避けた位置

⑤本人が見ることができ、セルフケアしやすい位置

この基準は標準体重の患者には適用できるが、肥満などの体型によっては、適さない場合もある。そのため、体型や職業などの患者個別の条件を考慮してマーキングを実施することが大切である。

ストーマサイト‐マーキングの手順

①必要物品(マーキングディスク〔小児用:直径6.0cm、成人用7cm、肥満者用7.5cm〕、マジック〔水性・油性〕メジャー、腹部清拭用タオル類など)を準備する。

②患者に仰臥位になってもらい腹壁の状態や瘢痕などを観察する。水性ペンで、臍を中心に水平線と正中線、肋骨弓下縁に印をつける。

③患者に東部を挙上し、腹部に力を入れてもらい、腹直筋外縁を探し、印をつける。腹直筋を確認する場合には、患者の腹壁に垂直に手の側面をあてて確認する。

④臥位のまま、マーキングディスクを腹部にあて、安定する位置を選び、水性ペンで印をつける。

⑤座位で、腹壁の脂肪層の変化やしわの入り方に注意しながら、臥位でつけた位置を修正していく。

⑥前屈位や身体を側方にねじるなど、様々な動作をとってもらい、しわに影響されず安定した平面が得られ、患者が最も見やすい位置に修正をしていく。

⑥立位でスカートやズボンなどを着用してもらい、印をつけた位置が実際のベルトラインに影響を受けないかを確

認する。

⑦患者とともに決定した最終的な位置を医師に確認してもらい、油性マジックで印をつける。

⑧決定した位置の正中線からの距離、臍の高さからの距離、腹直筋外縁からの距離などを測定し記録する。

②パッチテスト:皮膚科の領域ではアレルギー性接触性皮膚炎の原因を特定するための検査方法にパッチテストがあるが、この方法を応用して、手術後に使用する数種類の皮膚保護剤の一部を造設予定部位とは反対側の腹部や上腕内側、背部などの皮膚に貼用し、接触性皮膚炎の可能性があるか無いかの検査を行う。皮膚保護剤を48時間貼用し、その後、除去したときの皮膚の反応をみて判定をする。

パッチテストの判定

判定

除去直後

除去1時間後

除去24時間後

陰性

(―)

(―)

(―)

除去反応

(+)

(―)

(―)

一次刺激

(+)

(+)

(―)

アレルギー

(+)

(+)

(+)

<手術後の看護>

□アセスメント

(1)手術に関する内容

①大腸や直腸の切除範囲とストーマ造設部位

②リンパ節の郭清の程度

③隣接臓器へのがん浸潤の有無、合併切除の有無

④麻酔・手術時間

⑤手術中の出血量と水分出納、循環動態の変化

(2)帰室後の全身状態

①麻酔からの覚醒状態、バイタルサイン、水分出納、呼吸状態

②手術創部・会陰創の状態と出血の有無、滲出液の有無と量・性状

③ストーマの状態:ストーマの色、浮腫の有無、創の哆開の有無、粘膜壊死の有無、ストーマ周囲の皮膚の状態、ストーマ装具の装着状態

④ドレーン・チューブ類の種類と挿入部位、固定状態、排液の性状・量

⑤経鼻胃管の挿入位置と固定状態、排液の流出状態・性状・量

⑥バルーンカテーテルからの尿の流出状態・性状・量

(3)創部痛:疼痛の程度、鎮痛薬の種類・使用量・投与経路

(4)腹部の状態:腸蠕動音、ストーマからの排ガス・排便の有無、腹部膨満感・吐き気・嘔吐の有無

(5)術後合併症

①肺合併症:発熱(熱型)、酸素飽和度、咳嗽の有無、呼吸困難感

②創部感染:創周囲の発赤・硬結・疼痛の有無、創部哆開の有無、発熱(熱型)、血液検査データ(白血球数・CRP)

③術後イレウス:腹痛とその程度、腸蠕動音(強弱、金属音の有無)、腹部単純X線撮影(二ボー像の有無)

④排尿障害の有無

⑤深部静脈血栓症・肺塞栓症:下肢の疼痛・浮腫の有無、呼吸困難・胸痛の有無

□看護目標

(1)呼吸機能・循環動態が安定する

(2)疼痛およびドレーン類の留置による不快感が緩和する

(3)手術創部の感染や術後合併症の発現がない

(4)ストーマの早期合併症がない

(5)早期離床ができる

(6)ストーマを見ることができ、ケア方法の学習が必要であることを認識できる

(7)家族が患者のストーマを造設された状態を受け入れ、サポート方法を具体的に考えることができる

□看護活動

◆手術直後の装具の選択:

 腹会陰式直腸切断のような待機手術で、下行結腸もしくはS状結腸に造設されているストーマであれば、手術前の腸管準備によって腸管の内容物を排除しているため、腸管の機能が回復し排便が見られるのは手術後3~5日ころであるが、上行結腸・横行結腸の場合は、これよりもやや早く排便が見られ、回数も多い。

 手術後はストーマや粘膜皮膚縫合の観察が必要であり、毎日装具交換を行うため、原則的には手術直後の装具には、皮膚に負担がかからないカラヤガム系の皮膚保護剤を用いた面板を選択することが多い。また、カヤラガム系の皮膚保護剤は柔軟性があり、浮腫があってもストーマを傷つけにくく、静菌性が強いため、粘膜皮膚縫合部を排泄物の汚染から保護する作用が期待できる。

 そのほか、手術直後に適している装具の特徴としては、①皮膚保護製があり刺激が少ないもの、②ストーマおよび排泄物の観察が可能である透明なストーマ袋、③ストーマ袋の開口部が広く、やや長めのもので、開口部から手を入れて操作しやすいもの、④やわらかくストーマを傷つけにくい面板、⑤二品型のものではフランジが浮動型のもので、装着時に疼痛がないもの、などである。

 手術後の装具交換においては、浮腫があるストーマは傷つきやすいため、面板のホールカットをストーマより3~4mm大きくし、露出した皮膚と粘膜皮膚縫合部には粉状の皮膚保護剤を用いて、腸粘液や排泄物の汚染から保護する。

 粘膜皮膚縫合部の創や皮膚に問題がなく、排便がみられるようになれば、社会復帰の装具に変更していく。なお、緊急手術で腸管準備が行われなかった場合や、小腸ストーマの場合は、手術後早期に排便の可能性があり、排泄物の量も多い。したがって、手術直後から耐久性があり粘着力の強い、社会復帰用に用いられているCMC(カルボキシルメチルセルロース)系の皮膚保護剤を選択する。

◆ストーマとストーマ周囲皮膚の観察:

①ストーマの観察:造設直後のストーマは、浮腫が見られることが通常である。外観は、赤色でみずみずしく、弾力性に富んでいる。手術手技により軽度の血流障害がある場合には、暗赤色で弾力性に欠けているように見える。血流障害がより重度であれば粘膜壊死となりストーマの再増設を行う場合もあるため、異常を早期発見しなければならず、ストーマのサイズ・色・出血の有無・浮腫の有無や弾力性などの観察は継続的に行わなければならない。

②粘膜皮膚縫合部の観察:粘膜皮膚縫合部の合併症は、血流障害や感染などなんらかの原因で、粘膜と皮膚との癒合が阻害された場合に生じる。ストーマの壊死や出血、粘膜皮膚離開、創感染、膿瘍形成の有無について観察する。これらの粘膜皮膚縫合部の合併症によって、瘢痕が形成された結果、ストーマの狭窄や陥没を招き、管理困難なストーマとなることがある。

③ストーマ周囲の皮膚の観察:ストーマ近傍および装具を装着している部分の皮膚について観察をする。皮膚の発赤・発疹・掻痒感・びらん・疼痛の有無などの症状を観察し、皮膚障害が装具装着部分や排泄物の付着と一致しているかどうかなどを見る。皮膚障害がある場合はその原因を追究し原因を取り除くように管理を行う。

◆疼痛緩和と早期離床の促進:

 手術後の正中創や会陰創の疼痛、ドレーン・チューブ類挿入による疼痛・不快感などに対して、硬膜外腔に留置したチューブから鎮痛薬を持続的に投与し、コントロールすることが多い。開腹手術の場合には、腹部に力がかかる体位などで疼痛が強くなることが多いため、離床前に予防的に鎮痛薬を投与し離床をすすめる。

 体動時の疼痛軽減策として、仰臥位から側臥位になり、上体を上肢でささえてから起き上がることの指導や、点滴や死腔に挿入されたドレーン類を整理し歩行しやすい環境を整えるなどの援助を行う。また、会陰創がある場合には座位で疼痛が増強するため、座位時にはやわらかいクッションや円座の使用をすすめる。

◆心理的援助:

 患者はストーマを造設したという事実を手術直後に認識する。手術前にストーマ造設を納得していても、事実に直面して再び喪失感に襲われる。このような心理状態は「まだ、ストーマをみることができない」などという言葉や行動にあらわれるため、このときに、無理やりストーマを見せるというようなことはしてはならない。患者の言葉を傾聴し、共感的な態度で接する。

 この時期には看護師が装具交換を行い、必要に応じて情報提供をする程度にとどめる。装具交換時にはプライバシーを保持することはいうまでもないが、そのほか、においへの配慮や装具交換を手際よく行い、ストーマケアが大変であるというようなイメージを与えないよう注意する。手術後の疼痛が軽減し、身体的な疲労から回復してくると、少しずつ患者はストーマに対して関心をいだけるようになり、ストーマを見ることができ、特別な学習が必要であることを認識できるようになる。

<回復期の看護>

□アセスメント

(1)身体的状態

①腹部の状態・術後イレウスの徴候:腸蠕動音、排ガスの有無、腹部膨満感の有無、腹痛の有無、吐き気・嘔吐の有無

②排便の状態:排便の性状・回数・タイミング

③食事の摂取量:食欲・食事摂取量

(2)合併症(排尿障害)に伴う症状:排尿回数、1回排尿量、残尿感の有無、尿の性状

(3)ストーマの状態

①ストーマ:色、大きさ(横径・長径・高さ)、浮腫、粘膜皮膚縫合部、出血

②ストーマ周囲の皮膚:発赤・湿疹・びらん・掻痒感・硬結・疼痛・熱感

(4)心理状態とセルフケアの状況

①ストーマについての受容:患者のストーマに対する反応、ケア参加への態度

②セルフケアの状況:装具交換の手順の理解度、手技の自立度

(5)社会復帰後の生活についての理解と認識:退院後の生活に関する具体的なイメージ

(6)家族やキーパーソンの支援体制

□看護目標

(1)ストーマおよびストーマ周囲の皮膚の正常と異常について理解できる

(2)排泄物の処理や装具交換がひとりもしくは家族などの援助を受けてできる

(3)社会復帰や退院後の生活について具体的にイメージすることができる

(4)合併症の発生や異常時の対処について理解できる

(5)家族が支援体制について具体的に理解できる

□看護活動

◆セルフケア指導:

 排泄物の処理を失敗するということは、患者にとっては「恥」の経験となり自尊感情の低下につながる。このような経験が避けられるように、装具交換の方法が習得でき、退院後は患者自身もしくは家族の援助を受けて装具の交換ができるように指導しなくてはならない。装具交換の方法を習得するには、患者とともに段階的に計画をし、チェックリストなどを用いて順次、もれなく習得できるように工夫する。

段階的セルフケア指導

ステップ1

看護師が装具交換しながら、実施してみせる。

ステップ2

患者ができる部分は実施するが、看護師が傍らで説明し、できない部分を援助する。

ステップ3

準備から片付けまで患者が主体的に実施する。看護師は見守り不足している部分を補う。

装具交換の手順(二品系の場合)

①必要物品をそろえる(装具・はさみ・ビニール袋・石鹸・清拭用タオル・ガーゼなど)

②貼付している装具をはがす。          ③排泄物をふき取り、石けんを

片手で剥離する部分の皮膚を            泡立てて、ストーマ周囲の皮

押さえながら、もう片方の手            膚を清拭する。そののち、石

で皮膚保護剤をはがす。はが            けんの成分を十分ふき取る(シ

した皮膚保護剤の接着面の溶            ャワー浴が可能ならば、シャ

解やストーマ周囲の皮膚を観            ワーで洗浄する)。

察する。

④ストーマの大きさや形状に合わせて、面板の中央をカットする(実際のストーマより2~3mm大きくカットする)。皮膚にしわやくぼみがあるときは、切り抜いた面板の切片や練り状の皮膚保護剤で補填し、もれを防止する。

⑤ストーマの位置を確認                ⑥二品系の装具の場合は

 しながら面板が密着す                 採便袋を取り付ける。

 るように貼用する。

*単品系の場合も基本的に同様の手順で装具交換を行う。単品系では③ののち、装具をストーマに合わせて貼用する。

◆社会復帰に向けた装具の選択:

 近年、装具の質は目覚しく向上し、形態のバリエーションもふえているため、患者が装具を選択できる幅が広がったといえる。社会復帰に向けて装具を選択する場合の条件は①防臭性があり排泄物がもれない、②皮膚障害が予防できる、③患者にとって取り扱いやすい、④日常生活が制限されず、外観上も目立ちにくい、⑤経済的である、などである。排泄物がもれないように、腹壁の硬さやしわ、瘢痕の有無、ストーマの形状によって、装具の形態や皮膚保護剤の性質を考慮し選択する。また高齢者で視力の低下がある場合や手先の巧緻性が衰えている場合には、既製孔がある製品でカットを必要としないものをストーマサイズにあわせて選択することも検討する。

◆装具交換の注意点:

(1)装具交換は排泄物がもれる前に行う。交換の目的は皮膚保護剤をはがしたときに、皮膚保護剤のふやけや溶解の程度をみて判断する。交換する目安は溶解の程度が5~8mmで、1cmをこえているようであれば、皮膚保護剤の緩衝作用の効果が低下し皮膚障害を招く可能性が高くなるため、交換頻度を1日早くする。

(2)装具交換時は皮膚を観察する。皮膚に発赤・発疹・びらんなどの皮膚障害がある場合には、原因を排除するためにその範囲を観察する。ストーマの近接部に皮膚障害があり皮膚保護剤の溶解と一致していれば、排泄物の付着によるものと考え、皮膚保護剤の交換間隔やカットの大きさを検討する。皮膚障害が皮膚保護剤貼用部と一致するようであれば、接触性皮膚炎の可能性が高い。通常は交換頻度を変更したり、保清を行うなどして様子を見るが、びらん・発疹・掻痒感が強い場合には皮膚科の受診をすすめる必要がある。

◆排尿障害への援助:

 手術後の排尿障害は、手術時に骨盤神経・下腹神経・陰部神経などの、蓄尿や排尿にかかわる神経を損傷することで生じる。排尿障害の症状は、尿閉、尿の排出困難、尿失禁、尿意の低下などである。尿失禁に対してはタイプによって治療方法が異なるためタイプを見極めるための評価を十分に行う必要がある。

 排尿困難があり、排尿後、残尿が50ml以上ある場合や腹圧を強くかけないと排尿できない場合などは、間欠的自己導尿を指導する。自己導尿を必要とする患者は。ストーマケアを習得する努力に加え、自己導尿の手技をも習得しなくてはならず、ストレスが増大するため、患者の心理面でのサポートも考慮しながら指導をすすめる。手術後の排尿障害は半年~1年が経過して回復することも多いため、患者をはげましながら援助する。

◆日常生活の指導:

①日常生活の指導を行うための情報収集:個別的な日常生活の指導を行うためには前もって以下の項目について情報を収集しておく。

(1)家庭におけるトイレや風呂などの設備に関する情報

(2)日常生活の状況(食事・衣類・入浴方法・運動・職業や職業環境など)

(3)経済状況

②日常生活についての退院指導:食事や仕事などの日常生活について、以下に示す指導を行う。

(1)食事:原則的に制限しなくてはならない食べ物はない。規則正しく食事をとり十分に咀嚼すること、栄養のバランスを考えることなど、食生活の基本をおさえておけばよいことを指導する。ただし、回腸ストーマの場合はフードブロッケージ(繊維によるつまり)予防のために、繊維を断ち切る調理の工夫を行い、水分補給や電解質のバランスに注意するように指導する。

(2)衣類:ストーマを強く圧迫するような衣類は避ける。ストーマ装具が目立たず、おしゃれも楽しめる工夫について話し合う。

(3)入浴:手術前の入浴習慣を維持するようにする。コロストミー(大腸のストーマ)の場合は装具をはずし入浴することも可能ではあるが、退院直後は不意は排便を避けるため、装具を装着したまま、袋を折りたたみ入浴するように指導する。公衆浴場では装具を装着していることはマナーであり、ストーマ袋が気になるようであれば、入浴用の装具や肌色のコンパクトなストーマ袋などを紹介する。

(4)運動・旅行:適度な運動は必要であり、スポーツが患者の趣味や楽しみであれば奨励すべきである。ただし、身体が激しくぶつかるラグビーや格闘技のようなものは、ストーマ粘膜の損傷をきたし出血する可能性があるため避けるべき種類の運動である。また、重量あげのような過度に腹圧がかかるような運動は、ストーマ傍ヘルニアの危険性もあるため避けるべきである。旅行も心身が回復し、体力に問題なければ可能である。旅行の日数と装具交換の頻度から持参装具の数を検討し、必ず1~2組の予備を加えて持参する。

(5)仕事:体力が回復すれば、職場に復帰することも可能である。事前に情報収集しておいた仕事の種類や職場環境での対応を具体的に相談する。最初は無理をしないように仕事のペース配分などにも注意する。職場においては、信頼し、サポートしてもらえる人がいる場合には、ストーマ保有者であることを話し、協力をあおげると心強い。

(6)セクシュアリティ:ストーマを造設したことによるボディイメージの変化は、患者の女性や男性として自尊感情に影響を及ぼすこともある。入院中のかかわりでストーマが造設されても女性や男性としての魅力や家族のなかでの性役割にはなんら影響を及ぼすものではないことを患者がみとめられるように話し合う。性機能障害がおこる可能性については、手術前から説明することが多くなってきている。患者がパートナーと性的なかかわりについて話し合うことができていれば理想的である。退院後の性行為については、ストーマへの圧迫や摩擦を避ける体位、装具カバーを使用するなどの工夫について説明する。性行為に関する心配は退院後の生活でより具体的になることが多いが、患者は相談する場がないと考えがちである。退院後は、ストーマ外来などが相談窓口になることを説明しておくことが大切である。

◆ストーマ外来でのフォローアップ:

(1)ストーマ外来:ストーマ外来は、ストーマ保有者がストーマ造設前と同じような生活が維持できるように、個別的かつ専門的に援助することを目的にしている。以下のような内容で長期間継続的に支援を行う。

・セルフケア状況の評価

・ストーマとストーマ周囲の皮膚の評価と問題に対する対応

・体型や腹壁の変化に応じたストーマケア方法の指導

・装具に関する情報提供

・排尿障害・セクシュアリティ・性機能障害に関する相談と対応

・社会保障制度の紹介

・患者会の紹介

・訪問看護ステーションなど他施設との連携

(2)灌注排便法:灌注排便法とはストーマから残存結腸内に微温湯等を注入し、結腸の圧を上昇させて大蠕動を促し、強制的に便を排泄させる方法である。灌注排便法の利点としては、排便の時間帯や間隔がコントロールでき、装具装着の必要がなくなることである。欠点としては特別な用具を必要とし、排泄に時間を要し、トイレを占拠することである。灌注排泄便の適応となる条件は、S状結腸や横行結腸に造設された単孔式ストーマで、狭窄や脱出ヘルニアなどの合併症がなく体力があることなどである。

 ストーマの排泄方法の基本は、面板とストーマ袋による自然排便法であるが、このような灌注排便法の適応となる患者には、排便方法の選択肢として紹介する必要がある。

◆社会保障:

 ストーマを造設した患者が利用できる社会保障制度の1つに、「身体障害者福祉法」による身体障害者手帳がある。これを申請することによって様々なサービスを受けることができる。とくに、補装具(採便袋・採尿袋)の交付制度が利用できることは、ストーマ保有者の経済的負担を軽減する。そのほかにも各市区町村などの各自治体で助成制度を設けている場合もあるため、居住地域の福祉事務所に問い合わせるよう指導する。

“(-“”-)”参考文献

医療学習レポート.


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