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(⌒▽⌒)関節リウマチと手術療法の話


(⌒▽⌒)題名:関節リウマチと手術療法の話

1.手術療法の必要性

RAは全身の疾患である。貧血やγグロブリン血症はそのことを裏付けるものであり、実際に全身性の血管炎を呈することがあるのがよく知られた事実である。したがって、本来内科的に治療すべき疾患であるが、残念ながらその効果は不完全かつ不十分であり、現在の治療法をもってしては病変の進行を止めることは不可能であるといってよい。したがって多くの患者は早晩関節機能に異常が起こり、いろいろな程度の身体障害者になるというのが実状である。このような患者に対しては各種理学療法やリハビリテーションを行い、機能回復をはかるのはもちろんであるがその効果にも限界があり、すべての患者が機能を回復するわけではない。ここで外科的アプローチの必要性が生まれてくる。日本リウマチ友の会が行ったアンケート調査によると身体障害者手帳を有するRA患者は全体の55.6%に達し、そのうち1、2級の重度障害者が61%を占めている事実はRA患者にとって身体障害がいかに重大であるかを物語っている。上記のような場合少なくとも機能再建のために手術が必要な症例といってよいがこの他にも手術を薦める場合がある。予防手術ないし消炎手術として滑膜切除術がある。その対象いかなる内科的疾患よっても持続性の疼痛が軽減しない場合、滑膜の肥厚が持続する場合である。すなわち、この場合も内科的には万策尽きてお手上げの状体であることであるが、ただ最近は新しい薬剤が数多く開発されてきてこのような症例は少なくなってきている。さらにRAの自然経過は実にまちまちでいかなる薬剤も無効でどうしようもないと思った症例でもいつのまにか好転してくることもあり、どのくらいの期間をみて手術に踏み切る判断をすべきか難しいところである。ともあれ、強力な内科的治療にも関わらず全然それに反応しない例が少数ながらあることは事実でこれも手術の適応になる。

2.外科的療法の適応

外科療法の適応は痛みの原因が炎症ではなく主として機械的破損である場合となる。今日では多種の人工関節が考案され、患者のADL改善に貢献しているが、長期的にみれば、感染、弛みなどの合併症も少なく、よい結果が約束される期間の判定には今しばらく時間が必要である。外科療法の適応のあるような患者では1ヶ所の関節だけではなく多関節に障害があることが多く、また、当初の小関節の障害だけのようでも疾病の経過とともに他の関節にも破壊が拡大することが普通なので適応決定にあたっては慎重に患者の将来像を予測することが肝要である。患者の将来像の見通しについては確実な方法がないが患者の薬剤に対する反応性、患者の年齢、体力、合併症、患者の置かれた家族的・社会的環境などを参考にする。なお、外科的療法に踏み切る前に際して最も大事な留意点はその関節の機能改善が最終目的なのではなく、その患者のADL改善が目的であるという点にある。

(1)関節リウマチの手術適応

関節リウマチの適応

絶対的適応
A:絶対的適応患者の生命敵予後に危険を及ぼす状態①頸椎不安定に伴う脱臼・亜脱臼②顎関節の強直(食事摂取不能)B:変形のためにADL上介助が必要な場合

①股関節の高度な内転変形

②膝関節の高度な屈曲変形

③両肘関節の伸展位強直(拘縮)

C:滑膜炎により恒久的に損傷された関節、神経、腱などに対する場合などの場合である

相対的適応
A:保存治療に抵抗性の軟部の炎症(関節滑膜炎、腱鞘滑膜炎、粘液包炎)B:保存的療法に抵抗性の持続する疼痛C:関節の可動域制限がる。関節に動揺性があるD:非機能的肢位での関節拘縮(強直)などの場合である

 

(2)関節リウマチの手術の非適応

RAの場合一般に貧血があったり長期にステロイドを使用したりしていたりしているので術前に十分な全身のチェックが必要である。しかし、貧血があっても輸血などで補正すれば十分に手術は可能である。RA患者の非適応は以下の通りであるが手術の規模や侵襲の程度により考慮すればよいと思われる。

関節リウマチの手術の非適応

重篤な合併症
心循環系に重大な病変、肺線維症などの重篤な肺疾患、重症糖尿病、中枢神経系に重大な血管や病変、高度のるい痩などことに後療法の遂行に非協力的なもの、重症ステロイド中毒、高齢者、一定のlife expectancyのないものなど重篤な合併症がある症例に対して無理に手術療法を行う必要性のないのは当然である。
B:協調性の欠如
手術療法を選択する以上術後の後療法が必要になる。関節機能の再建は手術だけでなく術後の機能訓練を行ってこそ可能である。したがって患者の意欲や医師、理学療法士などとの意志疎通が大切である。
C:全身性の炎症活動性の亢進
隣接する関節の炎症が強い場合、術後の訓練が十分にできなければ手術を行ってもその効果が十分に得られないことがありうる。
D:感染、化膿創の存在
既往歴に感染があたり、他の部位に化膿巣がある場合は人工関節置換術は慎重に行うべきである。
E:高度のmutilans型
高度のmutilans型は手術成績も良くないし、また変形が著名でもそれなりに日常生活を送っているので手術の適応となる場合が少ない。
F:高度の骨粗鬆症
高度の骨粗鬆症は外傷と同じく手術療法が禁忌となる場合が多い。しかし、長時間の臥床などで廃用性萎縮となっているものに人工関節置換術を行って起立歩行を可能にすると骨変化が改善する場合もある。
G:変形が著名でもその機能が十分に発揮されているもの

 

3.外科的療法の管理

(1)術前管理

術前のチェック項目とその以上に対する対応策は以下の表3にまとめて記す。

①炎症性疾患であるRAでは貧血がみられることが多く、術前輸血でHb値を10g/dl程度に戻すことが望ましい。Hb値が急速に低下していて、8g/dl以下の場合、消化管出血を考え内視鏡検査を行う。

②白血球数は一般的に増加(10,000/mm3程度)していることが多いが12,000mm3を超える場合は感染があることが多く、術前の治療を要す。3,000/mm3以下に減少しているときは骨髄抑制を疑い、薬剤のチェックなど原因の究明を行う。

③非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)により血小板凝集が抑制され出血時間が延長することがあり、術前の休薬を要す。特にアスピリンには注意が必要である。免疫調整剤、免疫抑制剤も休薬したほうがよい。

④補充を要すような低アルブミン血症は少ない。低下がひどいときはネフローゼ症候群や腎アミロイドーシスを考える。

⑤肺機能はメトトレキサートや金製剤による間質性性肺炎や、RA肺病変自体によりしばしば障害される。一般に拘束性障害の場合が多い。麻酔選択に影響するので術前にチェックが必要である。

⑥藤森らは部検例の53%に血管炎を認めており、死因でも循環器障害の比率が高い。榎本によれば、ECG上の異常は対象群の2倍にのぼる。また、RAによる弁膜障害に起因する潜在心不全もみられ、術後顕在化する例がある。

⑦尿所見異常、血清クレアチニン・クリアランスの低下はよくみられる。入交らは、血清クレアチニン2.0mmg/dl以上、GRF50ml/分以下の腎機能障害がある場合は内科医に相談することを勧めている。

⑧手術の既往例では肝機能、肝炎の、ステロイド内服例ではDMのチェックが必要である。

(2)術中管理

①麻酔上の管理

麻酔管理上の問題点は以下の表にしるす。下肢手術では硬膜外麻酔が頻用されるが関節拘縮のあるRA患者にとって一定姿勢を持続することは苦痛であることに留意する。全身麻酔で第1の問題は挿管困難である。現在では気管視鏡を使用した挿管が一般的である。RAでは多数回手術例が多く、輸血が問題になる。工藤によるとエリスロポイエチンあるいはステロイド(プレドニゾロン10mg/日)投与により自家血貯血を行い、手術例の60%で他家血輸血を回避しえている。人工関節術ではメチルメタクリレートモノアーによる血圧低下や心停止を生ずることがあり、注意を要する。

②体位・肢位の変換

手術を必要とするRA患者では、多かれ少なかれ関節拘縮や骨粗鬆症を合併しており、望みどおりの体位・肢位をとりにくく、いったん麻酔が入り、痛みが取れると術中操作の中で体位や肢位の変換に際してわずかな強制位が骨折や軟部組織損傷を引き起こす。また皮膚・血管も脆弱なため、圧迫による損傷を起こしやすく、体重のかかる部位や圧迫固定部位などはスポンジでカバーする必要がある。

③駆血帯について

四肢の手術に際しては駆血帯の使用は必須となっているが、時には術後の術側肢麻痺や循環障害に悩まされることがある。駆血により筋肉乳酸が増加して解除後に血中に流出されるが駆血時間が長いと乳酸量が高まり締めた局所組織の細小血管の血栓形成、循環障害を招く。一定時間駆血を解除したら局所の窒息状態を防ぐために駆血帯を解除してしばらくの間酸素を補給して呼吸をさせる(breathing period)必要がある。その時間は2時間駆血で15~20分といわれている。また、駆血帯解除時に一時的な血圧低下をみることがあるので注意する。圧は部位と年齢・肥満度により異なるが術野が出血をみない最小限を目安としている。圧は部位と年齢・肥満度により異なるが術野が出血をみない最小限を目安としている。

④骨セメント

骨セメントを使用した場合、低血圧、心虚脱、肺毛細血管塞栓、まれに心停止などの副作用をきたすことがある。すなわち、これらの変化は骨セメント挿入後(30秒~2分)脂肪や骨髄成分の塞栓により心血管系に病変が生じ、血小板やフィブリンが凝集して組織のトロンボプラスチン産物の肺循環への遊離が起こるためと考えられている。多くは一過性のことが多いが術中の血圧、心電図に注意すること。

⑤感染

経過が長いRA患者や障害度の高いRAでは、感染に弱いことが一つの特徴でもある。それは、RAが免疫を背景とした疾患であること、高齢者が多いこと、ステロイドや免疫抑制剤の使用が感染への抵抗を減弱させることなどが原因とされている。また、骨セメント使用の際の重合熱による組織の部分壊死も感染を誘発しやすいと言われている。

⑥創治癒障害

RAでは長期療養者の皮膚は一般に菲薄化し、血管も脆弱化している。特にステロイド剤や免疫抑制剤の治療を受けた患者では血行障害や術創の創緑壊死も来たしやすいので皮膚は真っ直ぐに術後の血腫形成を避けるなどの配慮が必要である。

(3)術後管理

A全身的な問題

①合併症

●肝炎

手術を要するRA患者の大半は術前に貧血があったり、術中・後に輸血を必要とするものが多く、術後合併症のうちでも輸血後肝炎の発症率は高いほうである。近年、HBs膠原スクリーニング法の改良、各種検査の徹底や輸血法の検討(冷凍血、自家血、人工血など)などにより輸血後のB型肝炎は激減し、一般外科手術での発症率の10%、関節外科でも4.3~10%との記載が多い。その多くは輸血後の非A非B型肝炎で占められている。肝炎が起こるか否かを予測するのは困難であるため本来なら①できるだけ輸血をひかえること②術前の貧血の回復を待ってから手術を行う③濃厚赤血球の使用④全血の代用(冷凍血液、自家血、人工血液など)免疫グロブリンの使用などが考えられる。輸血後肝炎であるか否かの鑑別は早急に行わなければならないが①薬物性肝障害②慢性肝疾患③B型肝炎④非A非B型肝炎の鑑別が重要である。また、麻酔に用いるハロセンガスなど一部のものに肝障害を引き起こす可能性があるので頻回の全手術にはこの点も注意しなければならない。

●消化管潰瘍

外科的手術、外傷、ショック、敗血症などの各種ストレスによって上部消化管出血を来たすことはいぜんからよく知られておりRA患者によく用いられるステロイド、アスピリン、ブダゾン系薬剤、インドメタシンなどの抗炎症剤、抗生剤、経口糖尿病薬なども潰瘍の発生因子としてあげられている。診断上は急激な発症で心窩部痛、悪心、嘔吐、吐血があり、X線での証明が難しく1週間以内の原因となるストレスが関係し、致命率も高いとされている。

●血栓性静脈炎、肺塞栓

股関節など大関節の手術後に深部静脈の血栓を生じて循環障害による末梢部の腫脹、疼痛、発熱をみることがある。場合によっては致命的にもなるので重大であるが、幸い日本では諸外国ほど頻度は高くない。

●腎障害

通常RA外来でみられる蛋白尿・血尿は5~10%と言われているが①抗RA剤による尿細管直接障害、膜性腎症②非ステロイド抗炎症剤により腎でのプロスタグランジンの合成阻害、腎血流量・糸球体濾過量の低下、浮腫・乏尿の将来③RAに特異的な糸球体腎炎④2次性アミロイドーシスが原因とされている。たとえ無症候であってもこうしたRAにおけるリスクに加えて手術、麻酔をする場合に術後の出血、不適切な輸血、感染、心不全などによる血圧の低下、脱水、ショック、腎毒性物質などにより術後急性腎不全を引き起こしやすい。臨床的には乏尿ないし、無尿、BUN・血清クレアチニンの上昇、血清Kの上昇、血液pHt値の低下、Pco2の上昇などが現れついには尿毒症になる。それゆえ早期の診断が大切である。

②ステロイドカバー

副腎皮質機能に低下がみられる場合、術前・術後のステロイドの使用によって種々の合併症が予防できる。これをステロイドカバーという。

手術を受けるRAかんじゃでは副腎皮質ステロイド(SC)剤の使用者の頻度も高く、間脳-下垂体-副腎皮質系(HAPaxis)機能低下が考えられ、手術時に放出されるべき内因性のステロイドの分泌が少なく、急性副腎不全となる危険性をもっている。こうした例に対しては基本的には術前から術後のステロイドカバーで対処して問題は起こっていないが、術後早期にHAPaxis低下による血圧降下をきたしたときはhydrocortisoneを200~400mg静脈投与で対応することが望ましい。

・withdrawal症候群外科的治療が必要のないRA患者では多くの場合CS剤の長期連用をやむなく行っている例が多く、また離脱もしばしば困難である。これが副作用への心配その他の理由で不用意にまたは患者が勝手に減量・中止するとreboundまたはwithdrawal症候群をきたし不幸な場合はショック・死亡する場合もある。

B局所的な問題

①感染

RAにおける関節手術後の感染率が高いことはこれまで多くの指摘がなされたところである。その理由は様々で、

  1. 関節は最近にとって好適の培地であること
  2. RAが免疫異常を背景とした疾患であること
  3. 高齢者の多い疾患で免疫機能が低下していること
  4. 薬物と特にCS剤や免疫抑制剤の連用により感染への抵抗が減弱していること
  5. 種々の合併症を持つ例が多いこと
  6. 人工関節、骨セメントなど大量の異物が感染を誘発しやすいこと
  7. 無菌手術室・病室の清潔化が完璧でないこと

などがあげられる。手術創に感染が起これば全身発熱、頻脈、局所発赤・熱感、運動痛が症状として現れるので抗生剤の大量投与、場合によっては再手術のなど問題が大きい。それゆえ、あくまで慎重な予防対策が必要で徹底した無菌手技、頻回の創内洗浄、ドレナージによる血腫形成防止、貧血・低蛋白の是正などが感染治療に勝る処置である。

②神経障害

可動域の大きい股関節・膝関節・肘関節などの再建手術時に坐骨・大腿・閉鎖・腓骨神経、尺骨・後骨間神経などに傷害をみることが多い。原因としては術中の直接損傷、神経の過伸展、脱臼や異物による圧迫、関節内嵌入、周辺軟部組織との癒着など様々でまれには肺塞栓治療のためにヘパリン注入による神経内血腫で骨神経麻痺をきたすこともある。部位別にみると股関節では後方脱臼や高位脱臼・強直例を強引に整復した場合、アライメントを矯正した場合や人工関節による圧迫、余分の骨セメント片による圧迫・包埋などによることが多く、坐骨神経、大腿神経、閉鎖神経の順に多いようである。膝関節では高度な屈曲拘縮や外反変形の矯正後に過伸展による腓骨神経麻痺を起こすことがある。肘関節では術中操作中の圧迫、関節内嵌入、周辺軟部組織との癒着などによる尺骨・後骨間神経麻痺を来たすことが多い。

③脂肪塞栓

整形外科手術に伴う合併症のうち頻度は高くないが重篤なものとして脂肪塞栓がある。その多くは骨折治療で髄内釘手術時のリーミングなどにより起こった報告で頻度は0.5~3.6%ぐらいとされ、THR(近年人工関節全置換術)後の発症例も発見されている。

発症原因は外傷局所に遊離された脂肪滴が血中に入り肺の毛細血管床を経て大循環に移行する流入説と血中脂質の析出によるとする説もある。診断基準は下の通りである。

脂肪塞栓の診断基準(Gurd,1970)

大症状

①紫斑様皮疹②呼吸症状+両肺野X線異常③頭部外傷その他と無関係の大脳症状

小症状

①頻脈②発熱③網膜変化(脂肪または小血斑)④尿路変換(無尿、乏尿、脂肪球)

⑤ヘモグロビンの急速低下

⑥急速な血小板減少

⑦赤沈値亢進

⑧喀痰内脂肪球

 

臨床症状の主なものは

①点状出血(眼瞼、網膜、頸部、鎖骨上窩部など)

②呼吸器症状を伴う両肺野性X線病変

③脳神経症状

④動脈血酸素分圧(PaO2)の低下

⑤末梢血ヘモグロビン値低下

⑥発熱・頻脈

⑦尿中脂肪滴

⑧血沈促進、血小板減少

など多彩な病像を呈する。臨床的分類で電撃型や定型的では死につながる可能性が高いため、手術操作ではできるだけ組織に損傷の少ない無血手術で骨髄脂肪や骨屑を除き、骨髄圧の上昇を防止するように心掛けたい。術後は持続的吸引やショック対策を十分に行う。

もし本症候群が起こった場合は

①呼吸管理―酸素テント、ネブライザー、体位変換、レスピレーターなど

②薬物療法―副腎皮質ステロイド剤、トラジロール、リポスタビル、ヘパリン、低分子デキストラン

などで対応する。

本症候群による死亡率は以前には10~20%くらいと言われていたが近年では対処の如何により、また最近の治療法の進歩によりその率は低くなっているものと推測されている。

(4)手術成績を左右するもの

手術成績が外科医の技術や手術材料などにさゆうされるのはもちろんであるが、それと同時に患者自身の状態も大きく関与するものと思われる。いかにその問題点を身体面と精神面にわけて記す。

①身体面

全身状態のよいほどよい結果をもたらすのは当然である。すなわち体温正常で、貧血もなく、血清蛋白正常で、栄養良好、体重不足に過不足なく、心、肺、肝、腎機能に異常がなければ申し分ないが、実際にはこのような例は極めてまれで、大部分の患者は何らかの異常を持つのが常である。特に手術を要するような症例は異常の頻度も程度も大きいものが多い。しかし、なるべく正常に近づけるように異常を少なくするように努めるべきであり、また全身状態が悪くなることが予測される場合にはそうなる前に手術を勧めることも必要な場合があろう。

局所の炎症が強くても、また血沈やCPRが異常でも全身状態さえよければ手術の妨げにならないとされるが、全身状態に影響を及ぼすような急性期増悪期には手術を控えるのが当然であろう。梁瀬らはLan-sbury指数が100以下になるまで手術は見合わせるといっている。

血管炎を伴ういわゆる悪性関節リウマチも救命のために手術は必要であるが、一般の関節リウマチはやはり控えた方が無難と思われる。

ステロイド剤は場合によって全身状態をよくするために使うこともあるかもしれないが、一方では骨粗鬆症を促し、血管をもろくするのでその使用は十分慎重でなければならない。

局所の状態は全身に左右されるので、別々に論ずることはできないが、筋肉と骨の状態は手術に際して最も重要と思われる。すなわち、筋力は術後のリハビリテーションにとって重要であるし、骨がもろいと支持組織として頼りないと思われるからである。実際にこの2つは術後の成績を大きく左右すると思われるので、栄養と運動には術前から十分に注意すべきであろう。活性型ビタミンDや蛋白同化ホルモンなどはその意味で多少とも効果が期待できるかもしれない。

②精神面

手術の成功には患者の積極的な協力が絶対必要であろう。嫌がる患者、無関心な患者、期待も希望も持っていない患者ではうまくいかないのは当然である。したがって患者自ら手術を希望するように持っていく、そのように動機づけをすることが大切である。

4.一般的な手術の種類

RAの外科的治療法を大きく分けると関節の手術、骨の手術、腱の手術、神経の手術などがある。そしてこれらが単独に行われる場合もあれば同時に行われる場合もある。RAに対する手術療法は大きく二つに大別できる。その一つは関節の破壊を食い止め、炎症病巣の除去を主目的とし鎮痛を得ようとする関節滑膜切除術である。RAの関節破壊に、炎症肉芽化した滑膜が強く関与していることは多くの研究から明らかになっている。その滑膜を切除することで関節の炎症を抑え、破壊の進行を止めようとする方法である。病的滑膜を切除することで今までの病勢のコントロールが急に可能になる現象はよく見られることである。こうした面で滑膜切除術はRAの治療の中でも特別な地位を占めている。

もう一つの大きな分野は滑膜切除術と炎症によって骨・軟骨が破壊されたことによる関節機能再建としての関節機能再建術である。この中に含まれる手術には腱断裂の修復から、関節形成術、関節固定術、人工関節置換術、腱形成術、脊椎固定術にいたる多くの種類があり、その手術侵襲も小さいものから大きなものまで多用である。しかし、いずれにせよもし患者が生活上でその痛みや不便さに困っているのならば四肢機能を取り戻せる唯一の方法がこの外科的機能再腱術である場合が多い。しかし、RA特有の曲がった指を持っているからといって患者がそれで十分に生活に利用しているならば手術療法の適応はない。股関節や膝関節のような荷重関節では、手術の適応になることが多い。

RAで多用される手術(部位別に分類)

脊椎 脊椎固定術、椎弓切除術
肩関節 人工骨頭(関節)置換術、切除関節形成術
肘関節 滑膜切除術、切除関節形成術、人工関節置換術
手関節 滑膜切除術、切除関節形成術、関節固定術、(人工関節置換術)
指関節 切除関節形成術(CM,MP,PIP)、関節固定術、人工関節置換術(CM,MP)
股関節 人工関節置換術、カップ関節形成術
膝関節 滑膜切除術、人工関節置換術
足関節 滑膜切除術、関節固定術、人工関節置換術
趾関節 切除関節形成術
腱鞘滑膜切除術、腱縫合術、腱制動術
神経 神経剥離術

 

RAで多用される手術(障害別)

機能障害や疼痛に対する手術
X線所見で骨破壊や関節裂隙の狭小化が認められ滑膜炎が進行するもの⇒滑膜切除術
変形に対する矯正手術
関節の高度破壊に対するsalvage的な手術⇒人工関節置換術、切除関節形成術など
C:腱鞘炎に対する手術
保存療法により抵抗性の腱鞘滑膜炎を放置すると腱の自然断裂を起こすことがある。したがって、腱断裂を防止する意味からも比較的早期の滑膜切除術が必要となる。
アライメントの異常に対する手術
膝の内反変形や外反変形および種々の関節の屈曲拘縮または不良肢位強直などは患者のADLの改善をいう目的で矯正骨切り術、人工関節置換術、腱形成術などがある。
絞扼性神経障害に対する手術
肘関節(後骨間神経麻痺)、手関節(手根管症候群)、足関節(足根管症候群)などで滑膜増生ために絞扼性神経障害を来たすことがあり、疼痛が持続したり神経麻痺症状が出た場合は手術適応となる。
腱の滑動障害または断裂に対する手術
滑膜増生に伴うtrigger wristやVaughan-jackson症候群などによる腱断裂は手術療法の適応となる。
環軸椎の亜脱臼に対する手術
環軸椎間には軸椎歯突起と環椎前弓との間、および歯突起と後方からこれを支える十字靭帯の間に滑膜関節があるためにRA患者による頸椎病変はこの部位に好発する。このレベルでの脊柱管狭窄(14mm以下)があって装具などによる保存療法を3ヶ月行っても不安定性が改善しなければ脊髄症状の有無にかかわらず脊椎固定術が必要である。

 

(1)滑膜切除術

RAの特徴的な臨床症状である関節の腫脹は関節水腫や滑膜の著しい増殖、関節包の肥厚によって起こる。特に関節の滑膜がRAの炎症の場であると言われている。したがって、保存的療法で局所の炎症症状が消退しない場合に滑膜切除術が行われてきていた。しかし、最近では抗リウマチ剤や非ステロイド系鎮痛消炎剤の進歩、ステロイド剤などの関節注入によってほとんどの滑膜の炎症は軽快するため早期の滑膜切除術はほとんど必要なくなってきている。

RAにおける滑膜切除術は炎症性滑膜や病的肉芽、関節内遊離体、米粒体などを切除することで局所の関節炎の沈静化や関節破壊の防止、さらには薬物療法との相互作用によって全身の炎症性変化を抑制することが期待できる。切除する深さによりいわゆる狭義の滑膜切除術である滑膜のみを切除する方法と関節包ごと切除する方法(capsulosynovectomy)とがある。また、切除する滑膜の範囲で全滑膜切除(total synovectomy)と部分的滑膜切除術(partial synovectomy)にわけられる。厳密にはこれらを区別することはできないが切除範囲、切除量の違いが治療効果を左右する可能性がある。

滑膜切除術の効果は下のとおりである。

滑膜切除術の効果

①鎮痛効果②消炎効果③外科的リハビリテーション効果④骨軟骨病変進行防止効果

⑤腱断裂防止効果

⑥心理的効果

 

以上のことなどがあげられる。鎮痛効果に関しては多くの臨床報告でその有用性が述べられている。消炎効果についても滑膜の炎症が主たる原因のためこれを切除することで炎症の場が排除される。これらによってもたらされる鎮痛消炎効果は患者のリハビリテーションへの意欲を増大させることになる。

腱鞘滑膜切除術は腱断裂の防止効果があることについては多くの報告がある。

 

Ⅰ滑膜切除術の種類

A:外科的関節滑膜切除術

滑膜切除術といえば一般に外科的滑膜切除術を意味している。このうち狭義の滑膜層(stratum synovialis)のみ切除する方法と関節包の全層を切除する方法とがある。森は後者の方法、いわゆるcapsulosynovectomyがぜひとも必要でさもなければ術後の消炎鎮痛、機能改善、水腫の絶滅などが期待できないと述べている。しかし、広畑らは森の術式を評価しながら関節機構の荒廃を促進するような侵襲はよくないとも述べている。

また切除する範囲によって全滑膜切除と広範囲(可及的)切除および部分滑膜切除に分けられる。たとえ関節包滑膜切除術でなくても滑膜切除術を行うからには徹底して滑膜組織をとることが重要である。ただし、人工関節置換術に際しての滑膜切除術は滑膜よりも軟骨組織を残さないことが重要である。それは滑膜組織の残存が軟骨組織を破壊するからである。また、術後の可動域を温存するためにも関節包は切除しても周囲の筋や靱帯を損傷させないようにすべきである。

B:外科的腱鞘滑膜切除術

StraubらやNalebuffらは腱鞘滑膜の炎症が直接腱内に進入して腱断裂を引き起こすと述べ、Wilkesは伸筋支帯の圧迫が炎症の慢性化を引き起こし断裂の原因になると述べている。他に炎症肉芽がvinculaの血管を途絶させ腱の脆弱化をきたすとか、変形した骨などによる磨耗などが原因ではないかといわれている。以上のようなことから腱鞘滑膜の切除が必要であると述べている。

C:化学的滑膜切除術

①オスミウム酸など化学的薬剤による方法

組織固定剤であるオスミウム酸を関節内に注入する方法がvon Reisらによって紹介され、その後Berglofがステロイドを併用して副作用を減弱させてから慢性関節炎の治療に用いられてきた。オスミウム酸は強力な酸化作用を有し、脂質や蛋白質と結合してこれらを凝固壊死させる作用を有している。炎症性の滑膜に対するオスミウム酸は0.2~1mmの深さまで浸透して滑膜表層を凝固壊死させる。

化学的滑膜切除術は内科的治療を行っても関節腫脹が持続し、X線学的にはSteinbrockerのstageⅠまたはⅡのless erosive typeものに適応としている。変形の高度なものや不安定性の強い例では適応とはならない。

RAの場合深層の血管周辺に浸潤するimmunoreactive cellの絶滅をはからねばならず本法で表層細胞層の壊死に陥らせても表層化の細胞による炎症の場が無傷であれば再発することになる。本法の治療効果はオスミウム酸の組織内の浸潤がどの程度なのかがかぎとなるので注入前にウロキナーゼによりフィブリンを溶解して関節内をよく洗浄することが重要である。

②放射性同位元素によるもの

ステロイドの関節内注入が無効な例に半減期の短い放射性同位元素(RI)を注入すると水腫が持続的に軽減し、副作用もほとんど認められないことがAnsellらによって報告された。

使用上の注意は染色体への影響や発育障害など問題により適応年齢を40歳以上に限定するのが安全といわれている。投与量は注入量が多すぎると関節内圧を高め皮膚火傷や軟骨のradionecrosisの危険もある。

本法は放射性同位元素を取り扱うために特殊な設備や注意が要るために手軽な方法とはいえない。

D:酵素的滑膜切除術

関節内にウロキナーゼを注入し、滑膜表層の廓清を目的とした方法である。そ作用は廓清というよりもプラスミノーゲンを流性化したフィブリンを溶解することにあるので滑膜切除術という言葉をつけるのは適当とはいえない。本法の他にUTI(urinary trypsin ihibitor)を用いた治療もあり、こちらは組織タイプのプラスミン活性のみを阻害する方法であり理にかなった手術法であるがRAに対する効果よりむしろ変形性関節症の初期の関節水腫に対して有効である。

E:関節鏡視下滑膜切除術

RAの局所の関節炎症変化に対して関節鏡視を行うことは炎症の主病変をされている滑膜変化や関節構成体の炎症変化の程度を直視以上に細部まで観察でき、大きく内部を開かない、つまり健常な部分を最小限にしか傷をつけないで行うことのできるという利点がある。

RAの臨床経過は単周期型、多周期型、進行型などと分類されており、ある時点で病型、病期を判断することは困難なことが多い。したがって一般的には以下のような場合に適応となる。

関節鏡視下滑膜切除術の適応

①全身的にも炎症が落ち着いているにも関わらず局所の著しい関節痛が持続する時②頑固な関節水腫が持続する時③関節全体の著しい腫脹および滑膜増殖がある時④ステロイド剤の関節内注入が無効である時

⑤X線所見で関節破壊が少ないとき

⑥罹患関節が少ない時

⑦全身的には炎症の沈静化しているものの局所で関節炎が強い時

⑧間節破壊が著名であるが人工関節を施工するには年齢が若い時

現在、鏡視下滑膜切除は肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節などで行われている。鏡視下滑膜切除術は切除範囲に限界はあるが、病的滑膜と思われる個所は可及的に切除する。また関節構成体自体の観察を行い、病態を正確に把握する。

 

①パンチによる切除法

関節鏡やモニターの発達によりパンチを用いて切除を行い良好な成績が得られている。しかし、パンチのみでは高率が悪く、最近では電動、または気動式シェーバーを併用して滑膜を切除することが多い。滑膜炎が強く視野が悪い症例ではまずパンチで視野を確保し、十字靭帯のような微妙な手術を要する部位の滑膜を切除してからシェーバーを併用すると効果的である。

②シェーバーによる切除

吸引しながら病的滑膜を切除することができる。切除する範囲に応じて種々のシェーバーがあり、最近では軽量化、自働的に最適適度とトルクが維持されるものもある。一般に靱帯、関節軟骨や半月板などを損傷することなく切除が可能である。しかし、切除範囲が深すぎると靱帯などの損傷や術後関節内血腫、疼痛の原因にもなる。

③レーザーによる切除法

Nd-YAGレーザー、CO2レーザーは熱メスとし

て病的滑膜を焼却する。熱変性が残った滑膜、関節包にも影響が及び炎症を抑える利点がある。Argon-dyeレーザーとヘマトポルフィン誘導体を利用すると選択的滑膜切除が可能となる。ヘマトポルフィンじゃ炎症性滑膜に選択的に高濃度に長時間分布するが正常滑膜ではすぐに代謝されてしまう。これを利用して関節鏡視48時間前にヘマトポルフィリンを静注し炎症状態にある滑膜のみをヘマトポルフィリンが集積Angon-ayeレーザーを照射して炎症滑膜のみを破壊する。

④高周波電流切除法

高周波電流を用いる電気メスを装着した高周波電流切除鏡で滑膜の切除を行う。術前12時間前に1%オスミウム酸と局麻剤を注入し滑膜表層を灰黒色に変色させて行うと効果的とされる。灌流液は無電解質液を使用するが関節内に貯留させて内圧が高くなると生体への影響も考えられるので少し刺入口を大きく切開して潅流液を垂れ流すような工夫が必要とされている。

 

Ⅱ滑膜切除術の問題点

①関節軟骨の栄養

関節滑膜は軟骨の栄養という点で重要である。滑膜切除術により軟骨の栄養物質が欠乏することにより脆弱化した軟骨が容易に変性、消失し、術後に滑膜炎は寛解するにもかかわらず、関節裂隙の狭小化、関節癒合が起こることもある。

②滑膜の切除範囲と炎症の再発

手術または化学的に滑膜切除を行っても術後一部残存した炎症滑膜より滑膜炎が再発することは多くある。しかし、全滑膜切除が必要か否かについては議論のあるところであるが一般的には部分切除術の有効性には否定的な意見が多い。滑膜切除術後の同部の腫脹が再発なのか、すでに変形性関節症のための水腫なのかははっきりしていない。しかし、なかには4~50%の腫脹または水腫の再発があるという報告もある。関節軟骨の栄養の問題と炎症の場の除去という相反する問題もあり、各症例に応じて適応を決定すべきかと思われる。

③滑膜切除術後の関節可動域

術後の可動域の改善は人工関節置換術に比べるとあまりよくない。しかし、広畑らはこの可動域の減少は手術手技拙劣で他の関節構成体に損傷を与えた結果であると述べ、術前の症例の選択、手術手技および術後の機能訓練が術後成績を左右していると強調している。一方で正田は肘関節の滑膜切除術で54%に可動域の改善は得られているものの、大幅な可動域の改善が得られなかったと述べている。手術適応となる症例は中高齢者が多く、変形性関節症などの加齢変化なども加わるため滑膜切除術の術後長期観察結果が一律に本術式の評価につながるわけではない。

④骨関節破壊の防止効果

stageⅢやstageⅣの晩期滑膜切除術後に関してはあまり骨関節破壊の進行防止効果は得られない。滑膜切除術後のX線変化については手術期の如何に問わず骨変化の進行はほとんど防止できないようである。

⑤合併症

滑膜切除術の合併症

①関節軟骨、靱帯など関節構成体損傷②術後関節血腫、術後関節水腫③皮切部腫脹および知覚障害④術後感染

⑤器具破損

⑥交感性異栄養性骨萎縮

Ⅱ関節機能再建術

RAの病変が進行し関節に変形、拘縮、不安定性などが生じると患者の日常生活動作(ADL)に大きな影響が出てくる。障害の程度が強い場合には以下に述べるような手術を行って機能の回復を図ることになる。術式の優先順位は表の通りである。

関節機能再建術の選択

関節 第1選択 第2選択 第3選択
人工関節 Double osteotony 固定術
人工関節 関節形成術
手首 固定術 関節形成術 人工関節
指(PIP) 固定術 人工関節 関節形成術
指(MCP) 人工関節 関節形成術
人工関節 関節形成術 固定術
人工関節 関節形成術 固定術
足首 固定術 人工関節
足趾 関節形成術 固定術 人工関節

Ⅰ関節機能再建術の種類

A:関節固定術

RAにおいて関節固定術が適応となるの場合はごく限られている。適応としては不良肢位で可動域制限や疼痛、動揺性などがある手関節、指関節、足関節などである。これ以外の関節は切除関節形成術や人工関節形成術の方が適している。手関節の場合装具を装着しておいても強直となる場合がある。本法は関節を良肢位に固定する手術であるので関節の動きは消失するが完全な無痛性と良好な支持性(安定性)が得られるようになる。しかし、RAは本来、多関節罹患であるため1つの関節を固定したときに他の関節による代償的な運動が得られにくいし、場合によっては他の関節に悪い影響が及ぶことも考えておかなければならない。このようなこともあって一般にRAでは固定術は上記のように手関節、指関節、足関節などの末梢の小さな関節に対してしばしば行われる。肩、肘、股、膝などの中枢側の大きな関節に対してはほとんど行われていない。

B:切除関節形成術・中間挿入膜形成術

本術式は関節端の骨を切除して再形成することにより変形や拘縮を矯正し、除痛、可動域の改善を目的としている。その際、肘関節ではシリコン膜など中間挿入膜を使用することもある。一般に下肢の荷重関節ではこの術式の成績は不良で(特にRAでは)最近では行われていないが例外として前足部の変形に対する中足趾節(MTP)関節の切除形成術は今もなお広く行われており、また成績もよい。上肢では肘、手首、中手指節(MCP)関節で行われ、よい成績が得られる場合もあるが一般的には成績は不安定で、またRAでは骨端部で時の経過とともにしだいに骨吸収が起こってくるのが問題とされている。以上のことより本術式が適応となる関節は肘関節、手関節、指関節、趾関節などで、疼痛が持続し可動域制限が著名な例が適応である。特に若年でstageⅢの関節変形の著名な上肢関節がよい適応である。他に胼胝形成が著名な例が適応である。股関節のような荷重関節での適応は少ないが、人工関節感染後や弛緩摘出後なども本法の適応となることがある。非適応としては術後の後療法に非協力的な例や15歳以下の小児、および重量物挙上などをしなければならない例などである。

C:人工関節置換術

現在のところ、股関節と膝関節に対しては人工関節が極めて優れ、また安定した成績を示している。これらの人工関節を用いることによって今まで歩行がまったく不可能であった患者が再び歩行可能になるまで回復することが珍しいことではなくなった。人工関節が他の手術法に比較して有する最大の利点は無痛性、安定性(支持性)、可動性(機能的な可動域)の3者を同時に回復し、獲得させる点にある。しかし、一方で問題点として

①RA患者では骨萎縮が強いために人工関節を支える骨が弱く、磨耗やゆるみ(loosening)を起こす可能性がある。

②変形性関節症に比べて骨粗鬆化が著名で、bone stockも少ない

③RAでは感染率が他の疾患と比べてやや高い

④などがあげられる。しかし、最初の問題はRA患者が疾患そのものから来る制約によってあまり身体活動により人工関節への負担をかけない傾向を有することで相殺されるかもしれない。また、第2の問題も手術を行う時の注意を徹底することで感染率を減らすことができる。したがって、現在では人工関節の有する利点が欠点をはるかに上回っていると考えてよい。最近では肩、肘、足首などの関節でも人工関節を用いられ良好な成績が得られるようになってきた。また、人工関節はその固定に骨セメントを用いない方向へ現在向かっているが、これは人工関節のデザインの改良、生体材料として生体親和性の良い金属の使用とそれに伴う手術法の応用、骨移植の積極的な利用などが大きく関与している。ただ、RAでは前述の様に骨萎縮が強い例が多いため骨セメントの使用が必要である場合が少なくない。しかし比較的若年者の患者では骨萎縮も少ないので骨セメントを用いない固定法も応用可能である。

D:脊椎固定術

脊椎のRA病変の多くは頸椎で起こっている。RA脊椎病変の手術目的は整復位での安定性の獲得と神経系の除圧が目的となる。通常亜脱臼、変形の整復にても除圧が達成されるために整復位での脊柱固定術が主体となる。非整復位、脊柱管内病変を有している場合には脊柱管拡大、椎弓切除など積極的な除圧が適応となる。環軸椎亜脱臼に対する治療としては脊髄症状(四肢のしびれ、痙性麻痺、膀胱直腸障害であり、上肢の巧緻運動障害、痙性歩行障害が主体)のない場合は頸椎カラーなど装具を装着させて保存療法を行うべきである。しかし、同部での不安定性が改善されず同じレベルでの脊柱管狭窄(14mm以下)があれば突然死などの危険性も考えられるので脊髄症状の有無に関わらず手術をすべきである。手術の絶対的適応としては延髄症状(VS、AASなどの上位頸椎病変にて延髄が圧迫されて呼吸不全、構音、嚥下障害など)、脊髄症状が明らかな場合、また後頭頚部痛が激烈で立位、坐位が保てない場合である。相対的適応としては脊髄症状、神経根症状の激しい場合である。一方、症状は軽度であってもX線上の亜脱臼、変形が強い場合(ADI10mm以上、脊柱管前後径11mm以下など)も脊髄症状増悪の危険性が高いため患者の同意が得られれば相対的適応となる。

E:腱移行術

RAの場合、慢性化した滑膜炎などで腱の皮下断裂が起こることが多い。この場合は断裂端同士を縫合したり、隣接腱と端側を縫合することにより機能回復を得ることができる。

F:腱制動術

腱を切離、または移行後固定する方法。矯正が十分に保たれる反面、力を入れづらくなるなどの影響が大きい。

G:骨切り術

RAでは関節面の破壊や軟骨の病変は全体的に起こっているために骨切り術によって荷重軸や荷重関節面を移動することによる効果が期待できない。変形性関節症ではしばしば用いられるこの手術がRAでは行われないゆえんである。例外的なものとして英国のBenjaminがRAの肩の頑固な痛みに対してdouble osteotomyという方法を推奨しているがまだ確立した評価は得られていない。

Ⅱ関節機能再建術の合併症

関節機能再建術によって起こる合併症は前述以外に様々で、術式の違いでも合併症の種類が異なる。下記の表に合併症の一覧を下に記す。

関節機能再建術の合併症

・術後感染・関節可動域制限・筋の萎縮・腱の癒着

・術後の脱臼、骨折

・骨頭壊死

・関節の変形

・神経麻痺

・皮膚の萎縮、血行障害⇒手術創の治癒不全、皮膚の壊死

・血栓性静脈炎

 

5.手術後に

手術の成績は術後のリハビリテーションに影響される部分が大きい。したがって術前にもましてリハビリテーションに努めるように指導しなければならない。患者は新しい事態に順応するまでしばらく混乱してかえって悪化したように感ずるかもしれないが、訓練を続けるうちになれてくるであろう。

結果がうまくいかなかったからといって手術医を責めるべきでなく、他科の医師、スタッフや患者と一緒になりその後の対策を考えるべきである。それは手術を勧めた者の責任である。また外科医は手術をする以上、一生その患者の面倒をみる気持ちがなければならない。

術後に痛みがなくなったからといって急にステロイドを中止するのは良くないようである。プレドニゾロンにして3.75mgを服用していた患者が両膝関節の全置換術によって疼痛が消失したため、ステロイドを中止したところ、withdrawal症候群を呈し、約2週間の経過で死亡した例の報告がある。

RAは全身性の疾患であり、炎症が関節に限局しているといっても炎症関節の数が多いので手術療法はあくまでも対症的なものであり、根治治療的なものではない。しかし、現状のように不完全な治療法しかない時代には患者の日常生活活動を助け、生活の質(quality of life)を向上させるためにはなくてはならない治療法である。その価値を正しく評価し、適切に応用するのは内科側のいしにとっても外科側の医師にとっても大切な責務である。それが患者のとって最大な幸せにつながるからである。その意味でお互いに手術に対する偏見を捨て、虚心に話し合って、患者のために最善を尽くすように努力すべきである。RAにおいてチーム医療が必要かつ重要なゆえんである。

(^_^;)参考文献

医療学習レポート.関節リウマチと手術療法


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