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(*^▽^*)頚髄損傷と心理の話


(~_~;)題名:頚髄損傷と心理の話

突然の受傷は身体機能面に大きな変化をもたらすばかりでなく、心理面にも多大な影響をもたらし、リハビリテーションの円滑な進行を妨げる要因として心理面の問題が指摘される場合もある。その際各脊髄損傷者がどのように障害を持った自己をとらえ、どのような価値観をもって新たな生き方を見い出そうとしているのか理解に努めながら援助していくことが重要である。

 

1)障害受容とは

一般的には、自己の障害を正しく理解し、またその障害を持った自己をあるがままに受け入れながら、社会とのかかわりの中で現実に即した新たな生き方を積極的に実践していくことができる状態をいう。しかし、心理的には揺れ動きながらも、社会の中ではおおむね適応した生活を送っているというのが多くの現実のようである。リハビリテーションプロセスにおいて障害受容を考えるとき、まず重要なことは、障害受容に至っているか否かというよりも、その人がそのときどのように障害を持った自己を受け止めているかを理解することである。

2)受容の過程

ある日突然障害を受けてから障害受容に至るまでの過程は、さまざまな要因の影響を受けるため、決して一定の明確な道筋をたどるわけではないが、方向性をもって進んでいくと考えられる。その過程をリハビリテーションの流れに即して述べていく。

①急性期―ショック―

心理的にショック状態にあり、現実の自分からは引き離されたように感じ夢うつつの状態であったり、認知は体制化されず思考が断片的で洞察力を欠いたりする。また、翌日の仕事の段取りばかりを口にするなど、受傷までの生活の延長上で先の行動を述べようとするステレオタイプ的な言動が目立つこともある。

②急性期後期―回復への期待―

急性期の治療を終えるこの時期、手足が麻痺していること運動、排尿、排便、性などの機能の消失が日々の生活の中でどのような意味を持つかに気づき始めるが「完治する」と確信または期待を持って毎日を送る。完治という目標を持っているため、治療には協力的である。しかし、スタッフ側のリハビリテーションの目標と患者側のそれとは大きく異なることに留意しなければならない。

③ADL訓練を中心とした機能回復訓練期―混乱―

この時期に主治医から障害の告知が行われることが多く、永遠に続く障害の存在に直面せざるをえなくなる。それまで抱いていた回復への期待は打ち砕かれ、心理的には混乱に陥りやすい。この状態は長期にわたって続くこともあり、さまざまな反応がみられる。周囲からの声かけに返事があいまいとなり感情的な起伏が見られなくなること(感情鈍麻)や、将来の希望や自尊感情が失われ生きている価値の無い人間と考えふさぎ込むこと(抑うつ反応)もある。自殺思慮を抱くのもこの時期が多い。またやりきれない悔しさからささいなことで身近にいる家族に攻撃を向けたり、スタッフの指示に従わないといった行動(攻撃行動)や幼少期に戻ったかのように周囲に依存的になったり(退行)、責任を転嫁したりしてもっともらしい理由で現実に直面する事を避けようとしたりする事(合理化)もみられる。こうした状況のもとでは、周囲の人間によるこれまでどおりの一貫した支援が重要であり、それによって他者から変わらず受け入れられている自分に気づくようになり、障害の受容に向かっていく促進剤ともなる。

④ADL訓練を中心とした機能回復訓練期―再適応への努力―

訓練室や病棟の中で同じ障害を持った人やより障害の重い人が訓練に励む姿を見かけたり、彼らとの交流が深まるにつれ、訓練に対する抵抗感を持ちつつも「自分もやらなければならない」という気持ちが現れるようになる。さまざまな情報ももたらされ、目標指向的な行動をとるようになる(再適応への努力)。そして、訓練の進行とともに徐々に車椅子などによって行動範囲が拡大し、身辺が自立するようになると、新たな自己評価がなされ始める。さらには、復学、復職などの具体的な将来設計への取り組みが開始される。一方で、この取り組みにおいて、受傷前と比較されるのを嫌い以前からの知人との交流を避けるといったことが見られる場合もある。こうした過程の中で、自己概念の再構築が行われていくと考えられる。受傷によってそれまでの自己概念が崩壊し、「生きている価値の無い、愛されない存在なのではないか」などという疑念がわきアイデンティティが見失われることもある。それが友人、家族らの変わらない支援や訓練の成果、同じ障害を持った人との交流などを通して新たな自己概念が徐々に構築されていく。

⑤慢性期(職業訓練、地域生活の開始)―適応―

ADL訓練が終了に近づくと、自動車免許取得、住宅改造、復学や復職の調整、職業訓練施設への入所手続きなど具体的な将来設計がなされ、退院時期を見ながら次の段階に向けての準備が開始される。退院後はそれぞれの将来設計にもとづいて家庭、地域の中でその一員としての生活が始まる。初めはさまざまな不安を抱えながらも、そこで自分の役割が見い出すにつれ、障害を過大視することなく、自分の持つ特性のひとつに過ぎないものとしてとらえられるようになる。そして障害の有無に関わらず、さまざまな人との対等な交流が可能となってくる。しかし、地域社会での実際の生活においては、予想以上の困難な場面に直面したり自分の役割が見い出せず、心理的混乱を招き、心理面への援助を必要とする事例も見られる。

3)受傷後の心理に影響を及ぼす要因

脊髄損傷者の受傷後の心理に複雑に絡み合いながら影響を及ぼすと考えられる要因の中の主なものについて述べていく。

①受傷時の年齢

幼少時の受傷では、養護学校や施設生活を送る場合が多く、その環境下では障害の存在を意識することは比較的少ないが、学校卒業を控え進路選択の時期になると、青年期の課題でもあるアイデンティティ確立の問題や現実社会への適応の問題に直面する。青年期以降での受傷では、すでに持っている社会的役割に対する影響も考慮しなければならない。社会的役割に関連して解決すべき課題が多いと考えられる年代での受傷では、心理面での援助とともに経済的・社会的観点からの援助も重要である。

②受傷原因

事故による場合、自損か他損かによって受傷後の心理に差が見られることがある。自損事故のほうが、諦めが早い場合が多い。一方、他損事故の場合は加害者に対する恨みの念が強く、賠償問題の解決に時間がかかることもあり、心理面への影響はより大きいといえる。また、自殺企図による受傷の場合の受傷後の心理経過は個人差が大きい。十分な観察を行い、再発の防止に努めなければならない。

③障害の程度

身辺自立が可能であれば、障害の軽重による大きな差は見られない。男性の場合は、性機能の状態によって心理面に影響を及ぼすこともある。身辺自立の困難な場合は、毎日の生活を家族などの介護者に頼らなければならない上、職業的自立はなかなか困難であり、ある期間経過しても将来への不安や無気力感を訴えることが多い。この点はさらに社会的要因とも関連してくる。

④合併症

脊髄損傷に伴う合併症によりリハビリテーションの進行が妨げられることがあり、さらには心理的影響をもたらすこともある。なかでも褥創は長期間ベッド上での安静を必要とするため、ストレスを増大させる。訓練が中断され、周囲から一人取り残されたという不安感や焦燥感を招きやすい。

⑤受傷前の性格、価値観

受傷前の性格や価値観の影響も見逃せない。例えば、神経質な人の場合、より強い劣等感を抱き、なかなか受容できない事例も見られる。また、障害者に対する偏見の強かった場合には、自分の状況に対する戸惑いも大きく、自己受容に時間を要したり、あるときは脊髄損傷者以外の障害者を蔑視することで心理的安定をはかろうとする事も見られる。

⑥家族

家族による適切な支援は、きわめて重要である。前述の通り、変わらない支援によって、他者から受け入れられている自分を見い出し、自己受容、さらには障害受容に向かっていく事が可能となる。しかし、過保護的な態度や本人の状況に比して高い目標達成を要求するような言動が見られるときには、スタッフ側からの働きかけが必要である。また、家族の一員の受傷は、家族にも大きな心理的打撃を与える。悲嘆(これからどうしたらよいのか分からない)と、周囲から期待される家族としての役割遂行(しっかり看病しなくては)の狭間で心理的葛藤が引き起こされることもある。リハビリテーションプロセスにおいては、家族に対する心理的援助も忘れてはならないのである。

⑦経済的・社会的要因

年金や所得の有無など経済的な要因や地域社会におけるサービスの内容、地域社会の理解度、物理的環境などによっても大きな影響を受ける。

(・_・;)参考文献

医療学習レポート.頚髄損傷と心理


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