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(*´▽`*)急性期脳卒中とリハビリテーションの話


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●目的と基本的態度

急性期では救命、再発や病巣の拡がりの防止、合併症の予防、その他、不慮の事故の防止など、病型、病態に合わせて慎重にリスク管理をしながら理学療法を進めていかなければならない。

急性期の理学療法の主な目的は廃用症候群の予防と新たに起こる合併症の防止、そして早期離床である。

拘縮や筋力低下を中心とした運動器系の廃用症候群と、起立性低血圧や呼吸器感染をはじめとする呼吸循環器系への対応や褥創の予防、精神機能面への配慮などが必要である。

早期離床は廃用症候群などの予防ばかりではなく、そのことを背景に早期退院や積極的な社会生活への展開が期待されるなど、様々な効果をもたらす反面、大きなリスクも伴う。

血腫や浮腫が拡大したり、血栓がさらに伸展し、病態が進行することもあるので、意識障害をはじめ症状の変化に細心の注意を配る。

画一的な対応はリスクを大きくしたり、逆に消極的態度を助長して機能向上の芽を摘むことにもなりかねないので、個々の病態や環境に合わせた適切な対応が必要である。

また、急性期では患者自ら自覚症状や異変を訴えることはないので、顔色や表情、欠伸などの注意深い観察、バイタルサインのチェック、頻回の呼びかけとそれに対応する反応のチェックが必要で、なおかつ、それらの情報について的確で速やかな判断と対応が求められる。

 

●理学療法の内容

1.ポジショニング

褥創、肺炎、拘縮、疼痛、浮腫などの予防を目的に体位変換と適切なポジショニングを看護師と協力しながら行う。

ポジショニングでは安楽に休めることが原則ではあるが、将来的に起こる可能性が高い拘縮、浮腫、肩の痛みなどを想定した肢位を選択する。

麻痺側の筋緊張低下のために骨盤や肩甲帯が麻痺側に崩れていることに対して、たたんだタオルを挿入して体幹の対称性を保つ。

クッションや枕等を利用して麻痺側手は体幹よりも高めに保持する。

側臥位や半側臥位で上肢が後方に置き忘れられ、肩の痛みにつながったり、麻痺側上肢の無視を助長することのないように配置する。

屈曲した麻痺側下肢が外側に倒れたまま放置され、ベッド柵に当たった膝に褥創ができるようなことがあってはならない。

この時期は筋緊張が低いため、クッションなどで体を優しく受け止めて、二次的な問題が起きないようにしっかり保護しなければならない。

そのために、起こりうるさまざまな問題を念頭に入れながらポジショニングを考えていく。

筋緊張が低くても、体幹を動かすことによって麻痺側の上下肢は瞬間的に動くことがある。

そこでは重力に任せたままの肢位になり、逆に戻すことはできず、麻痺側全体が重力方向に引かれる好ましくない状況に陥る。

頻回の観察と体位変換がなされるようにチームで協力していく。

 

2.呼吸管理

ポジショニングを行うことは呼吸管理にも大切である。

早期起座、早期離床を心がけることも呼吸機能の維持、感染症の予防に効果的である。

意識障害がなく、自力呼吸が可能であれば、早期離床を進めることで呼吸器系の新たな問題を起こすことは防止できる。

意識障害があったり、人工呼吸器に依存している患者では呼吸機能が低下したり、呼吸器系の感染につながることが多くなる。

意識障害があるということは広範囲の脳の障害があるか、自律神経や呼吸の中枢である視床下部、脳幹の障害であることが考えられる。

上肢や下肢の麻痺と同様に呼吸機能も重大な障害を受ける。

褥創の予防や上肢、下肢の介助運動を行うような視点で呼吸機能にも目を向けていきたい。

頻回の体位変換と、人工呼吸器のリズムにあわせて呼気介助などを行う。

 

3.関節可動域の維持

中枢神経障害の病態によって関節可動域の制限は異なる。

閉じ込め症候群などの例外を除き、急性期では筋緊張が低いことが多く、筋緊張の問題で関節可動域が制限を受けることは少ない。

むしろ、過度なあるいは不適切、不用意な運動で二次的障害を生む可能性が高い。

特に肩関節では近い将来、痛みや可動域制限を伴うことが多いので慎重に対応する。

股関節や膝関節では異所性骨化を惹起する可能性もある。

異常のことを考えると、大きな関節の他動運動は愛護的に、しかも全可動域に拘らないで行ったほうが賢明のようである。

むしろ積極的に早期離床に導くことで可動域の維持を図る方がよい。

また、四肢に浮腫を伴う場合、関節構成体の線維化が拘縮につながる可能性をもっている。

特に麻痺側の末梢、すなわち手関節、手指、足関節と足部である。

これらの部位ではポジショニングやマッサージなどによる浮腫の除去と丁寧な他動運動を行う。

筋緊張による制限ではなく、関節構成体の問題であることを考え、関節運動学的視点から他動運動を行うべきである。

 

※閉じ込め症候群(ロックドイン症候群)

意識は清明で精神活動は正常であるが、眼の随意運動、つまり開閉眼、垂直眼球運動、輻輳(近い対象を注視するとき、両眼が内転し、両眼の視線が注視点で交叉すること)以外に意志を伝える方法がなく、無言、無動で閉じ込められた状態をいう。

本症では眼球の水平運動の経路が橋上部で障害されるため、左右への眼球の随意運動ができなくなる。

脳波はほぼ正常である。

原因疾患は脳底動脈血栓症が多い。

 

4.座位練習

血圧、脈拍などのバイタルサインが安定していること、神経症状の進行が止まっていること、意識レベルがJCSで1桁であることなどが座位ヘ移行する基準にしているようであるが、早期離床を進めるために移行時期を少し早めに設定しているICU(集中治療室)もある。

特に脈拍や血圧は年齢や発症前の状況も参考にされるべきである。

Andersonは神経症状の進行が48時間なければ座位に移行すると述べている。

脳梗塞では通常発症後2、3日から座位を開始するが、軽症であれば1、2日からの開始も考える。

皮質枝などの主幹動脈の閉塞、心原性脳梗塞、狭窄などによる血行力学的脳梗塞が考えられる場合などでは安静期間が少し長くなる(皮質枝系の梗塞は傷害域が大きいから)。

脳出血では脳梗塞よりも1、2日遅く座位を開始することが一般的であるが、血腫の増大がないことが前提となる。

脳血流量の低下、浮腫や血腫による圧迫などによる神経症状の進行がみられないか、きめ細かい観察を行いながら座位練習を行う。

座位耐性訓練の基準ではギャチアップを行うことになっているが、穿通枝の小さな閉塞では初日から端座位を行うことも多い。

特に体力的に問題がなければ積極的に行ってもかまわない。

静的な座位では麻痺側の体幹が崩れることが多いので、クッションや理学療法士の支持で対称性に保つようにする。

また、麻痺側殿筋群の筋緊張低下によって骨盤は麻痺側後方へ崩れていることが多いので、患者に協力してもらいながら修正し、保持する。

静的座位を安定するためにも端座位を早く行うように進める。

端座位を開始した当初は患者は混乱期にあり、目を離した隙にベッドから転倒という事故が比較的多い。

起き上がってすぐは患者の麻痺側に体を近づけて座り、安定性を促した上で患者の身体から身を離すくらいの慎重さが求められる。

また、座位が安定するまではその場を離れる必要がないように、周到な準備をして端座位の練習は行う。

端座位では骨盤の前傾後傾方向、側方拳上、それらの動きを合わせた骨盤の分回し運動を自動介助運動として行う。

それに伴った体幹の動きにも注目し、理学療法士の体を患者に密着させて一緒に同じ動きをしながら患者の骨盤、体幹の動きを徐々に誘導し、動的座位バランスの向上を目指す。

無鉄砲に外乱刺激を加えても、脳自体が混乱している患者は外乱刺激への対応でさらに混乱する。

結局、恐怖感のために体を硬化させるだけであり、二足動物としてのバランス再獲得の導入としてはふさわしくない。

座位は20~30分を目標にすることが一般的であるが、比較的安定すれば椅座位や車椅子座位ヘ移行する。

そのほうが次の段階、すなわちADLをイメージさせやすい。

 

5.神経筋再教育

運動麻痺によって上下肢の動きが確認できないときでも、体幹筋は比較的活動できる状況にある。

しかし、筋緊張は低く、重力に逆らって半側臥位を保ったり、非麻痺側方向へ寝返る動作は困難であることが多い。

空間で骨盤や体幹を保持するための筋緊張が不足しているためであるが、屈膝臥位または半屈膝臥位で骨盤の左右回旋を介助運動で繰り返すことによって、緊張を高めることができる。

屈膝臥位で麻痺側下肢を内外側に倒さないように保持することがうまくできない場合も、同様の繰り返しで固定できるようになることがよくある。

体幹や股関節周囲の筋緊張の低さから骨盤は麻痺側後方へ崩れており、股関節のコントロールをさらに難しくしている。

前述の回旋運動の繰り返しで、体幹筋や股関節周囲筋の活性化と骨盤を中心としたアライメントの適正化を図っている。

さらに麻痺側あるいは非麻痺側を下にした任意の位置での半側臥位を保持したり、自ら崩して再び保持するような運動を繰り返す。

患者は静的な状態が続けば身体状況をうまく認知できないが、動くことによって身体状況を認知し、さらにそれに合わせて自動的に動こうとする。

幸いに体幹筋の麻痺は上下肢に比べると軽く、初期からの誘導を心がけていくことで運動学習しやすい。

上下肢の動きにのみ目をとらわれると、重心の移動に沿って細かい動きを伴った固定を求められる体幹や骨盤周囲の筋活動が学習されないまま、将来ダイナミックな運動や動作を求められることになる。

結果的に過剰な努力を強いられ、連合反応が惹起しやすい環境を身体内部に作ってしまうことになる。

今後の運動学習の導入部分として体幹、骨盤周囲の動的固定能力を少しずつ求めていく。

それに引き続き下肢を拳上位で保持(滞空)したり、麻痺側に十分荷重してブリッジを行う。

過度な努力にならないように、必要に応じてタッピングを加えたり、介助を行う。

また背臥位では、肩90°位での肘伸展位保持は比較的簡単な運動である。

手掌からの圧縮やタッピングなどで促通する。

座位では体幹の正中位保持を心がけ、麻痺側への体重移動では麻痺側上肢の支持を合わせて行って上部体幹からの抗重力活動も促す。

座位の練習で述べたような骨盤や体幹の動きも積極的に行い、感覚運動統合として身体イメージを築いていく。

 

6.非麻痺側筋力維持・増強運動

若くて活動性の高い患者であれば、少々廃用症候群に陥っても比較的短期間で改善するが、高齢者で受動的な患者では、廃用性の問題を起こすとその改善に難渋する。

筋力低下もその一つである。

麻痺側の筋力低下も当然のように起こってはいくが、急性期では運動麻痺や筋緊張の問題が大きく、この時点で筋力低下のことを問うものではない。

片麻痺が反対側にある以上、活動時に非麻痺側の筋力は発症前以上のものを求められるのは当然である。

バランスにはこの筋力も大きな要素になる。

非麻痺側に余裕のない片麻痺患者には立位になっても恐怖感や混乱のためにうまくバランスを保つことができない。

しかし、非麻痺側に余裕のある片麻痺患者では、たとえ麻痺側足部が接地できなくても平行棒を持って平気で立位を保つことができる。

非麻痺側のみにアプローチするのは問題があるとしても、全身へのアプローチの一環として非麻痺側筋力を維持、改善していくことは重要なことである。

ベッド上でできることは限られているが、できれば寝返りや起き上がり、ブリッジ、立ち上がりなどの日常的な動作の中で筋力を動員できるようなアプローチが好ましい。

非麻痺側の筋力増強を考えるということは、立ち上がりで非麻痺側のみを使って立つという極端なことを求めているのではない。

両側に均等に荷重するつもりで立ち上がったとしても、麻痺がある以上は非麻痺側主導であり、その繰り返しは非麻痺側の筋力増強につながっていく。

 

7.ADL訓練

ベッド上での寝返りや起き上がりを行う場合、単にその動作を行うだけでは適切な方法とはいえない。

寝返るためにも固定するためにも筋緊張が不足している。

動作の始まりの場面で必要な筋緊張が伴うように、前述したような準備を十分行い、不足した筋緊張には適当な介助を与えるべきである。

固定すべき部分が崩れたままで動作を行うことは、非合理的な動きを強いられることになり、その後の運動学習に良い影響は与えない。

ベッドから立ち上がる場合も同じで、直前に足底を床につけて骨盤を動かしたり、体幹を数回前傾して抗重力筋を活性化しておく。

座位が取れ、経口食に移行できるようになったら車椅子や椅子で自ら食事を摂るようにしたい。

ベッドという環境は全ての身を任せるだけでなく、精神的にも依存的になりやすい道具である。

食事は誰もが日常的に行うものであり、かつ、自らの意思で食べたいものを食べたい順番に自ら摂って口に運ぶ行為である。

脳血管障害者は依存的になりやすい傾向であるが、自身の人生を自己決定していくその糸口がここにあるといっても過言ではない。

できるだけ早期にベッドからの独立を促し、実際の生活環境に近い場面を提供していく。

この行為は歯磨き、洗面、整髪、更衣などに結びつき、社会性を築く基盤となる。

 

8.精神面への配慮

「鉄は熱いうちに打て」ということわざがある。

前述で述べた食事や身だしなみのことは正にその意味を受け止めている。

初めて車椅子でICU(集中治療室)から理学療法室へ行くときに、さりげなく鏡を覗かせたり、寝着のままであることへの疑問と羞恥心に気づいてもらうことが大切である。

最初が肝心である。

ベッドから離れることができたことは患者には勿論、不安で見守ってきた家族にも大きな喜びであろう。

そのときに更衣や身だしなみの相談があっても当然のように受け入れられる。

しかし、時が過ぎて気持ちが落ち着いてくると、更衣の相談があっても、患者にも、家族にも面倒な行為としての存在に変わっている事が多い。

煙たい存在には疎遠になるのが一般的である。

理学療法室で寝着のまま理学療法を受けている多くの患者を見ることができる。

そして、家族と会ったことがないという信じがたい話にもなっていく。

病棟は直接的な生活の場であり、それ以外はそれを取り巻く社会である。

「人間は生活を営む社会的動物」であって、そういう人間として適した人に再び戻ることこそがリハビリテーションである。

理学療法士は主に運動機能への関わりを通してその援助をする担い手である。

感動的な場面の多いこの時期にこそ、患者、家族との信頼関係を構築できるように努力したい。

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