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( ☆∀☆)脳血管性痴呆の話


(^ム^)題名:脳血管性痴呆の話

A.               解剖

動脈の分布を便宜上、大脳、小脳、脳幹に分けて述べるとつぎのようになる。

1.大脳:大脳の血管分布には基底区と皮質区が区別される。

1)皮質区:大脳皮質外表面の部位で前中後の3大脳動脈の分布域に区別される。

(1)前大脳動脈の分布域は大脳半球の内側面では前頭葉の全内側面、帯状回、脳梁、透明中隔で、後方は楔前部まで及び、後大脳動脈の枝と交通する。眼窩面では直回および眼窩回内側部、半球の外側面では大体内側面の分布域に相当する半球上縁に近い一小部、すなわち上前頭回、中心傍小葉などの一小部である。

(2)中大脳動脈の分布域は、半球外側面の大部分で、半球上縁に沿う一帯を除き前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉の大部分および島の全部、眼窩面外側部などで、半球周辺部で他の動脈枝と交通する。大脳核の大部分へは前有孔質を通じて入り、前障、レンズ核、尾状核、内包の前部などの基底区に分布する。

(3)後大脳動脈の分布域は海馬傍回、鉤、側頭葉底面の全部およびこれに接する外側面の一部後頭葉の内側面および外側面、脳梁膨大、歯状回などである。なおこの動脈は後有孔質を通じて、赤核、黒質、中脳被殻、中脳蓋、松果体、大脳脚、第3脳室脈絡叢、尾状核、視床などにも枝を与える。

2)基底区:大脳基底部より脳実質に侵入するもので前中後の3大脳動脈および前脈絡叢動脈初部から出る枝である。これらの枝は前・後有孔質およびそのまわりを通じて大脳に入り、基底部、特に尾状核、レンズ核、外包、内包、視床などを養う。尾状核およびレンズ核は主として中大脳動脈の枝により、視床は主として後大脳動脈によって養われる。これらの基底区内に分布する動脈はみな機能的には終動脈である。

 

2.小脳

1)小脳半球下面

(1)前下小脳動脈

脳底動脈の初部より出て、脳幹部、下小脳脚、小脳虫部の底面の前部、小脳半球下面に分布する。

(2)後下小脳動脈

椎骨動脈が頭蓋窩に入るとただちに分枝し、延髄側方部、下小脳脚下部、小脳下面に分布する。

2)小脳半球上面

(1)上小脳動脈

小脳テントの高さで、動眼神経、滑車神経の近くで後大脳動脈より分枝し、小脳の上面で内側枝と外側枝に分かれ、前者は中脳、橋、小脳内側面および小脳諸核を支配し、外側枝は小脳外側面に分布する。

3)小脳核:上小脳動脈が密な毛細冠毛を形成し小脳核を支配するが、これがしばしば破れ、中心性小脳出血をきたす。

 

3.脳幹

1)延髄:椎骨動脈、脳底動脈および下小脳動脈よりの枝が根動脈となり脳神経の根に沿って脳実質の中に分布し、それぞれの脳神経核にまで至る。このほか前脊髄動脈より起こり、舌下神経核、副神経核へ、椎骨動脈が脳底動脈に合する部より始まり迷走神経核、舌咽神経核、内耳神経核へ、脳底動脈より出て顔面神経核、外転神経核、三叉神経核へいくものを核動脈という。

2)橋

(1)橋腹側部(橋底部):椎骨動脈および脳底動脈よりの枝で支配される。

(2)橋被蓋:上小脳動脈由来の枝が分布する。

(3)中脳:後大脳動脈が脳底動脈から出るとすぐ脚間窩で多数の中心枝を出し、中脳被蓋(四丘体)にいく。また後交通動脈や後大脳動脈が後脚を廻るときに、大脳脚、黒質、赤核、中脳被蓋、第4脳室脈絡叢(後脈絡叢枝)、脳梁膨大にいく。また上小脳動脈が上随帆や上小脳脚へいく。

3)間脳

後大脳動脈、後交通動脈、および中大脳動脈よりの枝で支配される。松果体、第3脳室脈絡叢は後脈絡叢枝より、視床は後大脳動脈、後交通動脈、後脈絡枝よりの枝、乳頭体、灰白隆起、漏斗、下垂体、視床下部は大脳動脈輪よりの枝、視索は前脈絡叢動脈、後交通動脈、内頚動脈の枝により、視交叉または前交通動脈、前大脳動脈、内頚動脈の枝より支配されている。

B.画像所見

1.X線CT所見:脳の萎縮に加え、いろいろな血管病変の所見を呈する。また、側脳室下角の拡大が著明である。

2.MRI所見:前頭葉、側頭葉を中心とする脳溝の拡大、側脳室の拡大が認められ、いろいろな血管病変の所見を呈する。また、海馬の萎縮も特徴的であり、海馬周辺の側頭葉内面の萎縮も著明である。

3.PET所見:一次感覚野・運動野の血流・糖代謝は保たれるものの、頭頂連合野、側頭葉、

側頭・頭頂・後頭移行部の血流・糖代謝の低下が特徴的で、前頭葉の代謝の低下も場合があるが、基底核に小梗塞を有する場合が少なくなく基底核の代謝の低下することが多い。また、梗塞の部位によって遠隔効果による代謝の低下が、反対側の小脳や同側の脳半球に認められることも少なくない。このように脳血管性痴呆の糖代謝のパターンは側頭・頭頂・後頭移行部の低下を基礎にするものの局所の異常が強く左右非対称性のことが多く多様性である。海馬の萎縮と大脳皮質の糖代謝には関連が認められる。

4.SPECT所見:基本的にはPETと同じ所見が得られる。

5.脳波:動脈硬化症と似た広汎性α波に加え、α波の周波数の減少と波形の不規則化を伴っていることが多い。また、α波の振幅が増加していることがしばしばあり、高振幅鋭波様のα波を呈することもある。速波の出現量は不変か、または増加していることが多い。病状が進行すると、θ波の混入が見られるようになる。さらに局所異常の出現頻度も高くなり、鋭波、突発性胃常波などを伴うこともある。脳血管性痴呆の脳波像はアルツハイマー型痴呆に比べて多彩であることも1つの特徴である。

C.主な脳動脈の閉鎖・血流障害とその症候

 

1.内頚動脈閉塞

内頚動脈の閉塞した場合の臨床症候は多彩で、全く無症状のことから急速に死に至る重症例まで様々である。

無症状の場合には、Willis動脈輪を通じて反対側内頚動脈や脳底動脈から十分血液の供給を受け、血管の完全閉塞にもかかわらず閉塞側脳半球に重篤な血流低下が生じなかったと考えられる。

何らかの症状を呈する場合は、後述する中大脳動脈病変の臨床症状を示すことが多いが、時には前大脳動脈閉塞の症候や、中大脳動脈の分枝の閉塞症候のみを示すこともある。また、内頚動脈の枝の1つである眼動脈の血流障害により、閉塞側の視力低下ないし喪失(一過性黒内障;amaurosis fugax)を生じることがある。

また、臨床的に症候がない症例でも画像診断を行うと、前・中あるいは中・後大脳動脈、その他の分水界梗塞(watershed infarction)または境界領域梗塞(borderzone infarction)と呼ばれる。

 

2.前大脳動脈閉塞

1)Heubner(反回)動脈より末梢の閉塞

(1)Heubner(反回)動脈動脈領域のみの閉塞

反対側顔面・舌および上下肢(上肢近位筋に麻痺が強い点が他の前大脳動脈閉鎖の場合と異なる)の運動麻痺、筋痙直、また優位半球側の障害で超皮質性運動失語が起こるころがある。

(2)脳梁縁動脈領域の閉塞

反対側下肢に強い片麻痺、反対側下肢に強い感覚障害、上肢のGegen-halten、強制把握、吸引反射、共同偏倚、尿失禁(両側または優位半球病変の場合が多い)、さらに優位半球の前頭葉内側面の病変に脳梁部の病変が加わると、利き手のalienn hand徴候、道具の強迫的使用や失語がみられることがある。

(3)脳梁周動脈領域の閉塞

左上肢の失行症、左手の失書、左手で触知したものの名前が言えない触覚性呼称の障害などからなる半球間離断症候群がみられる。脳梁前半部に病変が及ぶと優位半球と同側のalienn hand徴候がみられcallosal alien hand徴候と呼ばれる。この場合は、強制把握や道具の脅迫的な使用がみられることは稀である。

2)前大脳動脈主幹部の閉塞

下肢に強い反対側痙性片麻痺、下肢に強い反対側半身感覚障害、強制把握、吸引反射、意欲減退abulia・失見当などの精神徴候、尿失禁(両側または優位半球病変の場合が多い)、時に病巣側をにらむ共同偏倚や失語(優位半球病変)がみられる。

両側閉塞の場合には、強い精神徴候に加えて両側の運動麻痺、感覚障害、痙性偽球麻痺が出現する。無動性無言が起きるとする報告もある。

 

3.中大脳動脈の領域の閉塞とその症候

1)中大脳動脈穿通枝の閉塞

レンズ核線条体動脈の閉塞でいわゆるラクナ梗塞のみならず、大きい梗塞も生じる。これは線条体内包梗塞と呼ばれるもので、反対側上肢に強い片麻痺、時に反対側半身感覚障害、共同偏倚、失行、失認などの皮質症候がみられるが、恐らく二次的な皮質血流低下のためと考えられる。

2)大脳動脈皮質枝の閉塞

(1)眼窩前頭動脈、前頭前動脈

反対側強制把握、精神徴候が出現する可能性がある。

 

(2)中心前動脈

反対側舌・顔面、時に上肢の運動麻痺(感覚障害はない)、優位半球障害ではBroca失語。

(3)中心動脈

反対側上肢、時に舌・顔面の運動麻痺。下肢の麻痺はあっても軽い。反対側皮質性感覚障害(立体覚、位置覚などの障害)も生じうる。

(4)前・後頭頂動脈

単独に閉塞するのは稀で、角回動脈、側頭動脈などと一緒に傷害されることが多い。反対側皮質性感覚障害・同名半盲または1/4盲とともに、劣位半球障害では反対側の半側空間無視、着衣障害、優位半球障害では伝導失語、観念運動性失行が生じる。

(5)角回動脈

優位半球病変でGerstmann症候群(手指失認、左右障害、失書、失計算)が生じるとされるが、この症候群は他の部位の障害でも生じ得るという意見もある。優位側障害では失読も生じる。ほかに視野欠損、皮質性感覚障害など。

(6)頭頂後頭動脈

優位半球障害でWernicke失語が多くは一過性に出現する。

(7)前・中・後側頭動脈

反対側同名半盲・上1/4盲、優位側病変でWernicke失語が生じる。

3)中大脳動脈主幹部の閉塞

顔面・舌を含む反対側片麻痺、反対側半身の感覚障害・同名性半盲を呈し、さらに意識障害や病巣に向く共同偏倚を伴うこともある。優位側では重篤な全失語、劣位側では半側空間無視などが出現する。

 

4.前脈絡叢動脈領域の閉塞とその症候

内頚動脈の後交通動脈分岐部より末梢で、中大脳動脈分岐部との間により分枝するこの血管が単独で閉塞することは比較的稀である。この血管の閉塞により反対側片麻痺、半身感覚障害、同名性半盲が生じる。劣位側閉塞で左半側空間無視が生じた症例もある。

5.後大脳動脈領域の閉塞とその症候

1)後大脳動脈穿通枝の閉塞

(1)正中中脳枝

病側動眼神経麻痺に加えてその反対側の片麻痺(Weber症候群)が診られたり、反対側不全片麻痺と振戦様不随運動、あるいは脳脚幻覚症、ヘミバリズムなどが出現する。

(2)後傍正中視床動脈

両側の閉塞により、眼球の垂直性注視麻痺、動眼神経麻痺、痴呆、無動性無言、種々の意識障害などを呈する。この血管は1本の分岐としてでることが多く、脳底動脈末梢部の中脳動脈閉塞などでも同じ症候が生じる。

(3)視床膝状体動脈

反対側半身の感覚障害(とくに深部感覚障害や立体覚障害)、痛覚鈍麻があるのに刺激により耐えがたい疼痛を感じるanesthesia dolorosa、不完全片麻痺、運動失調などの視床症候群がみられる。また、反対側同名性半盲やヘミバリスム、感覚障害が反対側手と口周囲に局在するsyndorome sensitive à topographie chéiro-oraleがみられることもある。

2)後大脳動脈皮質枝の梗塞

反対側同名半盲または1/4盲、変形視、優位側梗塞で失読、視覚失認が生じる。また、両側性の鳥距動脈の閉塞により、Anton徴候が、両側側頭後頭葉の障害で色覚異常、視覚失認、相貌失認が出現する。

海馬動脈の閉塞は両側あるいは優位側の障害で持続的、ないし一過性の記銘力低下を生じ得る。脳梁膨大部動脈は脳梁後1/2を還流し、この病変により脳梁離断症候群が生じる。

3)後大脳動脈主幹部の閉塞

後大脳動脈は吻合枝が多く、主幹部での閉塞でも穿通枝+皮質枝閉塞の症候が出現するとは限らず、各種症候が様々の組み合わせで出現する。

6.脳底動脈領域の閉塞

脳底動脈主幹部閉塞は閉塞レベルにより出現する症候が多少異なるが、一般に激しい回転性めまい(稀に難聴で初発)、嘔気、嘔吐で発症し、眼振、意識障害、四肢麻痺、球麻痺、呼吸障害、ちょうどの縮瞳、瞳孔不同、斜偏倚、ocular bobbing、ocular dipping、locked‐in症候群、発熱、高血圧などを呈する。

眼底動脈先端症候群では中脳動脈、後大脳動脈などの還流域にに梗塞が生じ、四肢の運動麻痺はないが、眼球運動障害、瞳孔異常、傾眠、幻覚やせん妄、健忘、Bálint症候群、視力

ないし視野障害を生じる。以下にその分枝の閉塞症候を示す。

1)上小脳動脈

嘔吐、めまいとともに病側小脳症候、眼振、Horner症候群、反対側顔面を含む半身温痛覚障害、病側の聴覚障害を呈する。

2)橋傍正中枝・短周辺動脈

橋下部内側に血流を送っているので、反対側上下肢運動麻痺に加えて病巣側末梢性顔面麻痺(Millard Gubler症候群)や、これらの2症候に病側への注視麻痺が加わったFoville症候群が生じる。また、内側縦束症候群、One – and – a half症候群、病側小脳失調、病側顔面の感覚障害や反対側上下肢の触覚・温痛覚・深部感覚障害を呈する場合もある。

3)前下小脳動脈

眼振、めまい、嘔吐に加え病巣側末梢性顔面神経麻痺、病側への側方注視麻痺、病側の難聴、耳鳴り、運動失調、Horner症候群、稀に顔面感覚障害が生じ、反対側四肢・体幹の温痛覚障害を伴う。

 

7.椎骨動脈領域の閉塞

一側の椎骨動脈が心臓側で閉塞しても症候は通常出現しない。反対側椎骨動脈から十分な血液の供給がある場合が多いからである。しかし一側の椎骨動脈の後下小脳動脈分岐部付近、または後下小脳動脈自体、あるいは外側延髄動脈などの閉塞では延髄外側症候群(Wallenberg症候群;回転性めまい、嘔吐、嚥下障害、嗄声に加えて病側顔面の感覚障害、運動失調、Horner症候群と反対側体幹上下肢の温痛覚障害)やしゃっくり、稀に病側味覚障害を呈する

また椎骨動脈、前脊髄動脈などの血流障害により延髄内側症候群(Dejerine症候群;病側舌半分の萎縮・麻痺と反対側上下肢運動麻痺・感覚および深部感覚障害)が生じる。

 

D.アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆の各特徴

アルツハイマー型老年痴呆    脳血管性痴呆
原因 不明 脳血管性病変
時期 65歳以上 55歳~65歳
性別 女性 男性
発症 極めて緩徐 特発的で片麻痺やパーキンソン症状、仮性球麻痺、尿失禁などが出現
初期症状

 

記憶障害

見当識障害

感情障害

Windscheidの三徴候

失神

四肢のしびれ

不眠

易疲労

精神症状 感情障害や情緒障害が広汎に出現 比較的よく、喜怒哀楽も表現できるまだら痴呆
人格 早期より崩壊 比較的保たれる
病識 消失 比較的よいが、多少うつ的な傾向あり
神経症状 少ない 多い
経過 直線的に徐々に進行 動揺性で段階的に進行
治療 特になし 脳梗塞などの再発予防

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