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( ☆∀☆)脳血管障害と評価の話


(~_~;)題名:脳血管障害と評価の話

●問診

1)主訴、本人のニード

2)医学情報

①現病歴:

1)前駆症(脳虚血発作の既往) 2)発作時刻 3)意識障害 4)その他(頭痛、嘔吐、嘔気、痙攣) 5)発病経過

②既往歴:

1)高血圧 2)一過性脳虚血 3)てんかん 4)心疾患 5)腎疾患 6)糖尿病 7)その他

③家族歴:

1)脳血管障害者 2)高血圧患者 3)心疾患患者

④処置事項 ⑤画像所見 ⑥理学的所見 ⑦禁忌事項 ⑧注意事項 ⑨薬物の内容、服用期間 ⑩合併症・随伴症の有無 ⑪看護上の情報 ⑫ベッド周囲の環境:点滴、各種チューブ類、ベッドマットの種類、ギャッジ角度等

3)環境情報

社会的背景

①趣味 ②嗜好(喫煙、飲酒他) ③習慣 ④パーソナリティ、人生観、行動パターン

家族的背景

①本人・家族の生活歴 ②家族構成、近況 ③家族のニードと協力性 ④キーパーソン

環境的背景

①家屋の間取り ②家屋周辺の環境

経済的背景 保険の種類、特定疾患の認定の有無、障害者手帳、介護保険、本人の収入状況、財産など

4)職業情報

①職種 ②職務内容 ③通勤環境 ④職場のニーズ

 

●全身徴候、検査測定

1)意識状態

①May-clinic法

(清明)、傾眠、昏迷、半昏睡、昏睡の4段階で記録、評価。

 

②Glasgow Coma Scale

開眼(4段階)、言語(5段階)、運動機能(6段階)の項目について、最大刺激による最良反応をもって評価する。

合計点数により意識障害の重症度を評価する方法。

最も軽症:15点 重症例:7点以下 最も重症:3点

 

Glasgow Coma Scale

 開眼(E)4:自発的に 3:言葉により 2:痛み刺激により 1:開眼しない

最良言語反応(V)

5:見当識有り 4:錯乱状態 3:不適当な言葉 2:理解できない言葉 1:全くなし

最良運動反応(M)

6:命令に従う 5:疼痛部へ 4:逃避する 3:異常屈曲 2:四肢伸展 1:全くなし

 

③Japan coma scale

意識障害の程度を客観的に評価する簡単な方法であり、覚醒状態により3桁点、2桁点、1桁点の3段階に分類し、さらにそれぞれを刺激に対する反応性によって3段階に分類している。

意識清明を0とすると、計10段階に分類される。

 

Japan Coma Scale

刺激しないでも覚醒している状態(1桁点)
1:だいたい意識清明だが,今ひとつはっきりしない.

2:見当識障害がある.

3:自分の名前,生年月日が言えない.

刺激すると覚醒する状態-刺激をやめると眠り込む(2桁点)
10:普通の呼び掛けで容易に開眼する.合目的な運動(右手を握れ,離せ)をするし,言葉も出るが,間違いが多い.

20:大きな声または体を揺さぶることにより開眼する.

30:痛み刺激を加えつつ呼び掛けを繰り返すと辛うじて開眼する.

刺激をしても覚醒しない状態(3桁点)
100:痛み刺激に対し,はらいのけるような動作をする.

200:痛み刺激で少し手足を動かしたり,顔をしかめたりする.

300:痛み刺激に反応しない

 

2)バイタルサイン

バイタルとは生きている、サインとは徴候の意味で、人間が生きているという状態を示す徴候(生命徴候)をいう。生きている場合には、心臓が拍動して血圧が一定値以上に保たれ、呼吸をし、体温を維持し、排尿・排便し、意識状態に応じて反応し、かつ特定の脳波パターンを示す。通常、バイタルサインの測定という場合には、血圧、脈拍、呼吸、体温の測定をさす。

①体温

②Blood pressure(BP:血圧)

ⅰ)計測時の注意点

・衣服をできるだけ脱がせ、直接マンシェットを皮膚の上に巻く。

・マンシェットは下縁が肘窩の上方2~3cmにくるように巻く。

・マンシェットとチューブは上腕動脈に平行になるように巻く。

*上腕動脈は肘窩部で、上腕二頭筋腱よりもやや内側において触知できる。

・聴診器(ステート)は局所の圧迫を避けるためマンシェットには入れず、上腕動脈に的確にあてる。

ⅱ)触診法

・マンシェットの巻き方及び、空気圧の加え方は変わらないが、健側の橈骨動脈を触診することで、最高血圧を測定することができる。→周囲が騒がしい場合に有効。

ⅲ)アンダーソンの基準を改訂した土肥の変法

・拡張期血圧120以上、収縮期血圧200以上。

・安静時脈拍数120/分以上。

*上記に当てはまる場合は、筋収縮を行う検査や訓練を行わない。

③Pulse rate(脈拍数:PR)

成人正常者の脈拍数は60~85拍/分、平均72拍/分である。

ⅰ)触診法

・示指、中指、薬指の3指で触知する。

・母指で触知しようとすると、自らの母指動脈の拍動と間違えることがあるので母指は触知には用いない。

・一般的には15秒間の拍数をとり、それを4倍して1分間に換算する。

ⅱ)脈拍数の変化

・頻脈…1分間に100拍以上。

・徐脈…1分間に60拍以下。

ⅲ)リズムの変化

・整脈(regular,pulsus regularis)

・不整脈(irregular,pulsus irregular)

→不整脈をもつ患者の場合は、1分間しっかり計測する。

*一分間に6回以上の不整脈の出現は治療の対象となる

④発汗状況

⑤皮膚の状態

⑥排尿  …無抑制膀胱、尿閉、排尿困難

⑦排便  …便失禁、便秘

3)呼吸の評価

①Cheyne-Stokes呼吸 ②周期性呼吸 ③中枢性過呼吸 ④失調性呼吸 ⑤CO2ナルコーシス

ⅰ)呼吸困難の有無 :Fletcher Hugh-Jonesの息切れ分類

ⅱ)呼吸パターン :呼吸数、規則性、吸気・呼気比(呼吸サイクル、正常の吸気時間は呼気時間の半分)呼吸運動(横隔膜呼吸、胸式呼吸努力呼吸かどうか)

ⅲ)胸郭 :筋量、胸郭の拡張性(腋窩、剣状突起、第10肋骨部での周径)、胸郭の柔軟性

胸郭の形状・左右差・大きさ、胸壁運動の触診

ⅳ)呼吸音 :気管音、気管支音、肺胞音を聴診

ⅴ)肺機能検査 :肺気量分画の測定(%VC)、フロー・ボリウム(1秒率、曲線の形)、最大換気量

ⅵ)血液ガス分析 :SPO2、PaO2、PaCO2

 

●包括的評価尺度

1) National Institute of Health Stroke Scale(NHSS)

Goldsteinらが紹介したNIHの脳血管障害の評価法は意識、運動、感覚、協調性、高次脳機能などに3~4段階の点数を配して観察することによって、急性期から病巣の範囲と重症度を判断し、その経過を観察できるようにしたものである。信頼性を示すKappa係数ではやや低い検査項目もあるが、急性期から活用できる簡便な方法として注目できるものである。

2)  Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)

脳卒中片麻痺患者を対象とした総合的な機能評価尺度で、上肢・下肢合計5項目の運動機能、腱反射、筋緊張、感覚機能、関節可動域、疼痛、体幹機能(坐位、腹直筋筋力)、高次脳機能、言語、非麻痺側大腿四頭筋筋力、握力などの22項目について、4~6段階で評価している。

項目を多くしている代わりに、1項目1課題評価(single task assessment)にすることで簡便性を求めている。

3) Fugl-Meyer評価法

上肢・下肢の運動機能について脳卒中片麻痺の回復に沿った5段階による条件を与え、さらに手関節、手指機能と協調性を含めた運動機能について、0(none)、1(partail)、2(complate)の3段階による配点で評価を行うものである。その他、バランス、感覚機能、関節可動域(range of motion、ROM)、関節運動痛など評価項目は非常に多い。運動機能が100点満点、その他を含めて226点を満点としている。欧米では片麻痺の機能評価法として利用頻度は高いが、日本ではほとんど利用されていない。その理由としては、他の評価法と比較して詳細に検査を行うことが可能であるが、その反面長時間を要するため難をようしてしまうこととなる。

わが国では、一部の指標を除いて、ほとんど利用されていないのが実情であり、問題点を検討するにあたって全国のリハビリテーション施設を対象に調査を行っている。この結果によると、「測定指標に関する知識が不足している」と「時間的に利用する余裕がない」とする回答が半数以上を占めていた。

 

●運動機能障害の評価尺度

1)筋力に着目した運動機能評価尺度

① Demeurisseによる運動機能指標

Danielsらの徒手筋力検査法の基準に拠りMedical Research Council(MCR)を用いて点数化を図り、ピンチ、上肢、下肢の合計6つの運動機能指標を考案した。非常に簡単で、急性期の評価で患者および検者に負担をかけないことが利点としてあげられる。

2) 痙性の評価尺度

片麻痺にみられる痙性の評価方法は、必ずしも納得できる結果はえられていない。そもそも臨床における痙性の定義が不明瞭であり、その評価をすることに無理があるともいえる。また、筋緊張は運動器系のみならず、さまざまな要因に影響されているものであり、従来のような評価の概念では筋緊張を評価することはできないとも指摘されている。

①Ashworthによる痙性尺度

5段階に分けて痙性の程度を評価する方法である。

②Bohannonによる改変痙性尺度

Ashworthの評価基準を修正して、6段階に分けて痙縮の評価方法を考え、その信頼性と有用性を唱えている。

③深部腱反射と病的反射

痙性には深部腱反射の亢進と病的反射の出現が臨床的特徴として認められている。筋の他動的伸張時の抵抗感や姿勢、運動パターン、その他の反射結果などと合わせて解釈していく必要がある。

消失(-)、正、やや亢進(++)、亢進(+++)、非常に亢進(++++)というような尺度が示されているが、程度は筋によってまちまちで、判断の多くは検者の主観に依存していることとなる。

病的反射も錐体路障害を知る診断学的意味合いが強く、理学療法に直結する内容は少ないため、積極的に行う意義はない。しかし、表在刺激や伸張刺激に対して敏感であるか否かという情報は提供してくれるので、その程度をー、+、++の3段階評価で記録しておく。

①各部位の検査方法

ⅰ)深部腱反射

・上肢の反射

biceps reflex:上腕二頭筋反射

中枢 C5~C6・筋皮神経

検査法:上肢軽度外転、肘やや屈曲位、前腕回内外中間位。上腕二頭筋の付着部近くに母子を当て、そのうえを叩打する。

判定:肘の屈曲起これば反射出現(+)

障害:亢進は錐体路障害

 

triceps reflex:上腕三頭筋反射

中枢 C6~C8・橈骨神経

検査法:前腕部つかみ、肘を軽く屈曲位。肘頭上部の上腕三頭筋腱部を直接叩打する。

判定:肘の伸展が起これば反射出現(+)

障害:亢進は錐体路障害

 

brachio reflex:腕橈骨筋反射

中枢 C5~C6・橈骨神経

検査法:手首つかみ、肘軽く屈曲位で前腕回内外中間位かやや回内位。橈骨下端を垂直に叩打する。

判定:肘の屈曲、前腕の回外運動が起これば反射出現(+)。

障害:亢進は錐体路障害

 

・体幹の反射

pectoralis reflex:胸筋反射

中枢 C5~Th1・前胸神経

検査法:上腕軽く外転、大胸筋の上腕骨付着部に母子を当て、そのうえを叩打する。

判定:上腕の内転と軽い内旋が起これば反射出現(+)。正常では弱く、収縮を指で感じる程度。

障害:亢進は錐体路障害

 

abdominal muscle reflex:腹筋反射

中枢 Th6~Th12・肋間神経

検査法:背臥位にして腹筋を叩く。

1.上部(肋骨骨膜反射)

乳頭線上で肋間縁部を叩打。判定:ヘソが叩いた方の肋骨縁に偏位すれば反射出現(+)。

2.中部(狭義の腹筋反射)

ヘソの高さで腹筋自身の上に手掌あるいは指を当て、そのうえを叩打する。判定:腹筋収縮起これば反射出現(+)

3.下部(恥骨反射)

恥骨結合部の中央より1~2cm上のところを叩打する。判定:下部腹筋収縮し、ヘソが叩いた方の下方に偏位すれば反射出現(+)。ときには大腿内転筋の収縮も起こす。

 

・下肢の反射

knee reflex:膝反射

patellar reflex:膝蓋腱反射

quadriceps reflex:四頭筋反射

中枢 L2~L4・大腿神経

検査法:背臥位と坐位の方法がある。

1.背臥位検査

背臥位にし、膝を軽く屈曲し立てる。膝蓋腱部を触知し、その腱部を叩打。

2.坐位検査

高めの椅子またはベッドに腰掛けさせ、足先が床に着かない程度にし、膝蓋腱部を触知し、その腱部を叩打。

3.増強法⇒ふつうの方法では減弱ないしは消失しているときに行う。

Jendrassik法は両手を組ませ左右に引くように命じ、その間に膝蓋腱部を叩打する方法。

あるいは腰掛座位で下垂した下腿部を手指で軽く押しこみ、それに対し、抵抗して前方に下腿を押し出すように命ずる。その間に膝蓋腱部を叩打する。

判定:膝の伸展が起これば反射出現(+).

障害:亢進は錐体路障害

 

Achilles tendon reflex:アキレス腱反射

中枢 S1~S2・脛骨神経

検査法:背臥位と膝立ち位の方法がある。

1.背臥位検査

・背臥位にし、両下肢の股関節を軽度屈曲、外転、外旋位にし、膝関節を軽度屈曲させて両踵をつける。足関節を背屈位にアキレス腱を叩打する。

・背臥位にし、一側下腿の前面に検側下腿を乗せ、足関節を背屈位にアキレス腱を叩打する。

2.膝立ち位検査⇒反射が出にくいときに行う。

ベッドの上に膝立ち位または四つ這い位にし、足首より先をベッドの縁より出す。足関節を背臥位にしてアキレス腱部を叩打する。

判定:足の底屈が起これば反射出現(+)。

障害:亢進は錐体路障害

 

ⅱ)病的反射

・上肢の反応

手指屈筋反射

中枢 C6~Th1

ホフマン反射

検査法:手関節を軽く背屈位にして、検者は患者の中指中節部を示指と中指ではさみ、検者の母指で患者の中指爪のところを鋭く手掌側にむけてはじく。

判定:刺激により母指の内転が起これば陽性。

トレムナー反射

検査法:手関節を軽く背屈させ、手指をやや屈曲させておく。検者は左手で患者の中指中節を支えて、右手の示指または中指で患者の中指末節掌側面を強くはじく。

判定:刺激により母指の内転が起これば陽性。

ワルテンベルグ反射

検査法:肘を軽く屈曲させ前腕を回外位にして手背を膝の上におき、手指を少し屈曲位にする。検者は示指と中指を患者の4指先端掌側面に横に当て、その上をハンマーで叩打する。

判定:刺激により母指と4指の屈曲が起これば陽性。

障害:一側のみ陽性は錐体路障害。

 

・下肢の反射

バビンスキー反射

この反射は病的反射の中ではもっとも代表的な反射である。

検査法:患者を背臥位にし、両下肢を伸展させる。気持ちを楽にさせ緊張をとるように指示する。先のとがったハンマーの柄や腱などで、足底の外側を踵から足先に向けて強くこする。

判定:刺激によって母指がゆっくりと背屈すれば陽性(母指現象または伸展足底反射-extensor planter response).ときには他の4指が開く(開扇現象-fanning sign)。正常では足底反射により母指の屈曲が起こる。

注意:刺激は初め弱めに与え、反射でにくいときは強めに加える。片麻痺患者では、顔を麻痺側に向かせると出やすくなる。

バビンスキー反射の変法

バビンスキー反射の他に母指の背屈現象を起こさせる反射

オッペンハイム反射

検査法:脛骨内側縁を上から下に指でこすり下ろす。

クローヌス

膝クローヌス

検査法:患者を背臥位にして下肢を伸展位し、母指と示指で膝関節をつまみ、それを強く下に押し下げる。

判定:刺激により膝関節が上下に連続的に動けば陽性。

足クローヌス

検査法:患者を背臥位にして膝を軽く屈曲させる。左手で膝を支えて、右手で足先を持って、足部を急激に背屈させる。

判定:刺激によって下腿三頭筋の間代性痙攣が起こり、足部が上下に連続的に動けば陽性。

 

3)回復段階に注目した運動機能評価尺度

①Brunnstromによる回復段階

上肢、手指および下肢の運動機能の回復を6段階にわけた評価法である。臨床的によく観察された結果として結実したものであり、優れた評価法である。ただし、理学療法の前後でstageが異なるくらいの変化をみせることもあるので、その変化に十分注目すべきであり、最大限の運動遂行ができる条件を見出しおくことが大切である。

②上田による機能評価12段階法

Brunnstromの評価尺度を基礎にして、1977年に上肢および下肢の1985年には手指の詳細な回復段階を示した評価尺度を考案した。わが国ではBrunnstromと上田12段階が定着している。

 

4)運動失調の評価尺度

脳血管障害が椎骨動脈系で小脳や脳幹に起こると典型的な運動失調を伴う。視床を中心とした大脳の障害でもみられる。なかでも脳幹の病変によって起こる障害の要因は多岐に及ぶ。

①筋緊張異常

小脳障害によって、多くに筋緊張の低下が見られ、腱反射の消失を見る。他動運動による抵抗感で判断する。

②体幹失調

小脳虫部の障害によって主に体幹に協調障害がみられる。坐位や立位などの抗重力姿勢で平衡をうまく保つことができなくなる。

③立位における平衡障害

小脳および脳幹の障害によって平衡障害が著しくなる。片麻痺で麻痺側にみられるバランス障害も、視床や脳幹の障害では活動に伴って非麻痺側へバランス障害として出現することもある。

 

上記のことを検査する方法として以下のものをあげる.

①筋緊張の異常

腱反射でみることが可能である。

ⅰ)廃用性筋萎縮、頭頂葉性筋萎縮の評価

ⅱ)検査法:視診、触診、打診、四肢周径の測定

②筋緊張の検査

深部腱反射

筋緊張

亢進

正常

低下

亢進

固縮痙性

固縮

rigidospastic

rigidity

正常

痙性

正常

spastic

低下

一見弛緩様

弛緩

quasi-flaccid

flaccid

 

 

筋緊張と深部腱反射との関係

②、③体幹失調、立位における平衡障害

ⅰ)立位、座位、(基本姿勢保持テスト)

体幹失調があると、起立は不安定、千鳥足歩行、バランスをとるため開脚する。

失調強いと両足をそろえて立つことできない。

ⅱ)Romberg’s Sign

開眼状態で両足のつま先をそろえて立たせ、閉眼させる。

陽性:閉眼させるとすぐに、体の動揺が増強する。

脊髄の後索や後根の疾患(脊髄ろう)による深部感覚障害

ⅲ)Mann’s Test

両足を一直線上に一方の足のつま先と他側のかかとがつくように並べる。まず開眼した状態で安定性をみて、次に閉眼させて立っていられなくなるまでの秒数を計る。(左右)

正常:10秒以上立ってられる。10秒以下は失調症を疑う。

ⅳ)片足立ち(左右)

筋力低下や失調症があると困難。筋力低下がないのに閉眼片足立ちが5秒以上できない時は失調症を疑う。

ⅴ)上肢偏位試験

立位or座位で上肢を前方に水平挙上させ、人差し指を伸ばし、あとの4指は曲げさせておく。次に閉眼させ、そのままの状態を維持させる。

末梢前庭障害:上肢は平行して患側に偏り、患側に倒れやすい。

中枢性の前庭迷路障害:患側の上肢のみが側方に偏位する。

(脳幹の前庭神経核とその脳内の神経路の障害)

※小脳性片麻痺の場合は,ⅴ,ⅵあわせてよると良い。

ⅵ)閉眼足踏み試験

一側性末梢神経障害:病変側に回転していく。

ⅶ)つぎ足歩行(tandem gait)

かかととつまさきを交互につけながら、一直線上を歩かせる。

一側性の迷路障害:病変側に倒れやすい。

ⅷ)しゃがみこみ試験(squatting test)

正常:普通にしゃがんだ場合、かかとが上がる。

小脳障害:かかとをあげないでしゃがみこんでいる。

 

*記載事項*

・ 出来る出来ない+パフォーマンスの内容も記載

・ 陽性or陰性

・ 異常のとき秒数記載。10秒以上は正常。

・ 方向、パフォーマンスの内容

・ 回転方向、何歩目、何秒目(すぐでるのか、など)

・ 方向、距離、何歩(メジャーやテープの上で計る)

・  動作の観察(かかと上がっているor上がっていない)

 

④四肢失調

ⅰ)指鼻試験:一側の上肢を側方に伸ばし、そこから人差し指を鼻先につけては元の位置に上肢を伸ばす動作を繰り返して行う。最初は開眼で行い、次に閉眼で行う。

陽性-目標がずれる(測定障害dysmetria)

目標に近づくと手がふるえる(企図振戦intention tremor)

目標物に近づいたときに一瞬動作が遅くなる(終末運動緩慢bradyteleokinesia )

ⅱ)指耳試験:上肢を側方に伸展した状態から、人差し指を自分の耳たぶにもっていく動作を繰り返させる。

ⅲ)指指試験:左右の上肢を側方に伸展し、胸の前方で人差し指同士を合わせる動作を繰り返させる。

ⅳ)膝打ち試験(変換運動障害):座位で、手掌と手背交互に自分の膝を叩かせる。一側ずつ最初はゆっくり、次第にできるだけ速く行わせる。

陽性-動作はのろく、不規則。叩く場所も一定しない。

ⅴ)手回内回外試験:手をできるだけ速く回内回外させる。

※肘伸展位は肩の回旋になるのでだめ

※肘90°屈曲で脇しめると、静止振戦でるかもしれないので注意

陽性―不規則で遅い。⇒dysdiadochokinesia

ⅵ)かかと膝試験:仰臥位で両下肢を伸展した状態から、一方の下肢を持ち上げ、かかとを他側の膝にのせ、むこうずねに沿ってすべらせるようにまっすぐ下降させる。足背についたら元の位置に戻させる動作を2、3回繰り返させる。

小脳障害時-かかとが膝の真上に乗らず、すねに沿ってまっすぐスムーズに動かせない。

ⅶ)かかと膝打ち試験:仰臥位で、かかとで膝の上をスムーズに繰り返して叩かせる。

小脳障害時-同じ場所を打つことができず、かかとを上げる高さやリズムも一回毎に不規則。かかと膝試験より敏感。

ⅷ)書字試験:紙の上に書かれた2本の垂直線の一方から他方まで、水平線を引かせると、その線より行き過ぎてしまう。矯正しようとすると線の手前で止まってしまう。

ⅸ)点打ち試験:一点の上に点打ちさせる。

正常-ほぼ一点を打つことが可能。

小脳障害時-打つ点が一定しない。

ⅹ)アシネルギー(共同運動障害)…シネルギー(共同運動)〔=ある一つの動作を構成するいろいろな動きを同時に行う能力〕が障害された状態。

検査法―起立位:起立状態で体を後ろに反らせる。

健常者―膝が曲がる。

小脳障害時-膝が曲がらない。

歩行時:歩行させる。

小脳障害時-上肢が下肢の動きについていかない。

臥位:臥位で起き上がるように命じる。

小脳障害時-起き上がる際に異常に下肢を挙上する。障害が強いと、下肢を持ち上げることしかできない。

 

5)感覚機能評価

主観的な側面が強いために尺度の利用による客観的な評価法を開発しにくい領域である。四肢に荷重を加えたり運動した後では深部感覚や複合感覚が変化することもあるので、その変化の把握を忘れないように配慮しておく。

①感覚機能評価尺度

SIASなどの包括的評価法に含まれる感覚機能評価尺度に基づいて行うことで障害の程度と変化を把握しやすい。

②表在感覚検査

筆などを用いて触角や痛覚を検査する場合、5回の同じ刺激を何回判別できるか、手掌や指を主な対象として行う。

ⅰ)触覚

使う道具:柔らかい筆や脱脂綿

方法:軽く触れて、分からない時にはなででみる。左右を比較しながら、顔面・頚部・上肢・体幹・下肢を調べる。

患者への指示:触れたらすぐにはいと言って下さい。

※よくわからない時は、ときどき触れないで触ったかどうか質問してみる。

ⅱ)痛覚

使う道具:安全ピンや針

方法:皮膚を軽くつっつくか、ピン車で皮膚の上をころがして痛みを感じるかどうか調べる。左右同じ刺激になるように注意。

痛覚鈍麻がある場合-障害部位から正常の方に向かって検査した方が境界を求めやすい。

痛覚過敏がある場合-正常の部位から障害のある方に向かって検査するとよい。

※意識障害のある患者-左右の同じ部位をつねったりして強い刺激を与え、その際の手足の動きや顔の反応をみて推測する。

ⅲ)温冷覚

※痛覚の線維と同じ経路を通るため、省略されることが多い。

使う道具:試験管に40~45℃位のお湯と、10℃位の冷水を入れたガラスの試験管

方法:3秒くらいの間、2本の試験管を順に皮膚にあて「温かいか冷たいか」か答えさせる。左右差を比較。

③深部感覚検査

ⅰ)関節覚(位置覚・運動覚)…関節の屈曲・伸展,およびその程度に対する感覚

・位置覚(position sense)

…視野などの手がかりなしに、身体各部位の相対的位置を感知する感覚。

四肢の関節の位置を受動的に動かした時、その方向を認識する能力。

方法:閉眼させ手関節や手指または足指の一本ずつを一定の位置に保ち、患者にその位置を言わせる。

 

・運動覚(kinesthesia)、(sense of movement)

…運動に伴って,関節の筋の内部や周囲の受容器が刺激されて生ずる感覚.

方法:手指や足指の関節を被動的に上下に動かしてその動かした方向が分かるかどうか調べる.

※     位置覚と運動覚はほぼ同義なので,通常運動覚のみ行う.

方法:母指と人差し指で患者の指を側面よりはさみ,上下に動かしてその位置がわか

るかどうか調べる.最初は大きく速く動かし,徐々に動かす範囲を小さく,スピードを遅くする.

→屈筋・伸筋つかんでしまうと表在感覚が入ってしまうから,側面ではさむ.

肘関節では,一側を動かし他側を同じ位置に動かしてもらうよう指示する.

ⅱ)振動覚…骨膜への刺激.

方法:C128音叉(一秒間に128の振動数をもった音叉)を振動させ,皮膚の下に骨が

ある部位にあてて,振動が感じられなくなるまでの時間を計る.左右や健常部

位と感じ方を比較する.※高齢者でも10秒前後は分かる.

部位―手首,足首の内顆・外顆

 

6)複合感覚検査

表在感覚がほぼ正常(前提条件)の場合,見ないでも物に触れただけで何であるかがわかるような感覚.過去の経験と照らし合わせて判断するため,「知覚」と「認知」= (大脳辺縁系・連合野)も関わっている.

ⅰ)立体覚…みないでも、手で物に触れることによってその形や材質がわかる感覚

使う道具:日常使っている身近にある物を握らせる。

方法:閉眼させ、日常使っているのもを握らせて物品名、材質が何であるかを言わせる。

ⅱ)書画感覚…皮膚に書かれた数字・文字・図形などを、見ないで判断する感覚。

使う道具:ハンマー等の柄の先端

方法:閉眼させる。手掌、前腕、大腿などの皮膚の上に、数字や○×△などを書き、それを当てさせる。

ⅲ)2点識別覚…皮膚の2点を同時に触れて、2つの刺激を識別できるかどうかの検査。

使う道具:コンパス(両方とも針のもの)

方法:体の体軸方向に沿って「同時に」2点に触れ、答えが正解なら徐々に2点間の距離を狭めていく。1点と区別できない最小の長さを調べる。

*距離が近い=識別覚や触覚のセンサーが多い.末梢の方が多い.そのため,中枢より末梢の方が障害される率が高くなる.よって,左右差だけでなく,同側の近位・遠位も分けて考える必要がある.

ⅳ)局在覚(部位覚)…皮膚に触れたとき、見ないでどの部位が触れられたかを正確に判断する感覚。

 

 

7)姿勢反射検査

 

①脊髄レベルの反射

・交差性伸展反射

体位:背臥位で頭部を中間位にし,一側下肢を屈曲し,他側を伸展する.

刺激:伸展した下肢の足底部を刺激するか,屈曲させる.

陽性反応:刺激した下肢は逃避反射で屈曲し,他側下肢は屈曲位置から伸展する.

反応期間:2ヶ月→陽性反応

2ヵ月以後→反射成熟の遅滞.

 

②脳幹レベルの反射

・汎在性静的反応

非対称性緊張性頸反射(ATNR)

ATNRは中枢神経の遅滞を意味するが,正常人においても潜在的に残っている.

体位:背臥位で頭部を中間位にし,上下肢を伸展位にする.

刺激:頭を一側に回旋する.

陽性反応:顔を向けた側の上下肢の伸展が起こり,反対側の上下肢の屈曲が起こる.

反応期間:4~6ヶ月→陽性反応

6ヶ月以後→反射成熟の遅滞.

対称性緊張性頸反射(STNR)

体位:四つ這い位か,膝の上に腹這いの姿勢にする.

刺激:頭部を前屈させるか,後屈する.

陽性反応:頭部の前屈時で,上肢を屈曲するか,屈筋緊張度が優位になり,下肢は伸展するか,伸筋緊張度が増す.

反応期間:4~6ヶ月→陽性反応

6ヶ月以後→反射成熟の遅滞.

緊張性迷路反射(TLR)

[背臥位]

体位:頭部を中間位で背臥位にする.

刺激:背臥位自身が刺激.

陽性反応:上下肢を他動的に屈曲させると伸筋の筋緊張度が優位となり,上下肢が曲がりにくい.

反応期間:4ヶ月→陽性反応

4ヶ月以後→反射成熟の遅滞

[腹臥位]

体位:頭部を中間位で腹臥位にする.

刺激:腹臥位自身が刺激.

陽性反応:上下肢の屈筋緊張度優位となり,上下肢を伸ばそうとすると抵抗感じる.

反応期間:4ヶ月→陽性反応

4ヶ月以後→反射成熟の遅滞

連合反応

片麻痺,脳性麻痺などの中枢神経障害のあるときは開放現象として患側肢のコントロール障害である連合反応が出現.

体位:背臥位にする.

刺激:一側手(麻痺側では健側手)で物を強く握らせる.

陽性反応:反対側の手に同様の動作が出現するか,反対側の他の部位の筋緊張度が増す.

 

局在性静的反応

陽性支持反応

体位:患児を立位にし足底を床から離して保持する.

刺激:足底を床につける.

陽性反応:下肢の伸筋の筋緊張度が増し,下肢全体が突っ張る.

反応期間:4ヶ月→陽性反応

4ヶ月以後→反射成熟の遅滞.

陰性支持反応

体位:立位にして足底を床につけて保持する.

刺激:足底部が床から離れて,患児を空間に保持する.

陽性反応:下肢における伸筋緊張の消失と屈筋の筋緊張度の増加による下肢屈曲傾向.

反応期間:4ヶ月→陽性反応

4ヶ月以後→反射成熟の遅滞.

 

③中脳レベルの反射

頸の立ち直り反応

頸部の運動により,頸筋中の固有受容器が刺激されることにより,頭部と体幹の位置関係を正すように働き,体全体として正常な姿勢に立ち直らせる反応.

体位:患児を背臥位で頭部を中間位にし,上下肢を伸展位する.

刺激:自動的または他動的に頭部を一側に回旋する.

陽性反応:体全体を頭部と方向に回旋させる.

反応期間:1~6ヶ月→陽性反応

6ヶ月以後の陽性反応,

1~6ヶ月の陰性反応→反射成熟の遅滞

身体に対する立ち直り反応

頭の回旋により,非対称性に体表面に加わる接触刺激が誘発となって肩甲帯の回転,骨盤帯の回転がそれぞれ別個に分節的に起こる反応.

体位:背臥位で頭部を中間位にし,上下肢を伸展位する.

刺激:自動的または他動的に頭部を一側に回旋する.

陽性反応:頭部の回旋につづき,両肩の回旋が起こり,最後に骨盤が回旋し,身体を分節的に動かす.

 

 

反応期間:6ヶ月→陽性反応,生涯継続

6ヶ月以後の陰性反応→反射成熟の遅滞

頭部に対する迷路性立ち直り反応

迷路で受容された空間的感覚が誘発となり,体の位置が空間でいかに変化しても,頭部の位置を正常に保持しようとする反射である.

体位:患児に目隠しをし,腹部を支えて腹臥位にするか,背部を支えて背臥位にするか,骨盤を支えて垂直にし,空間で保持する.

刺激:空間における腹臥位自体, 背臥位自体,あるいは左右への体の傾斜が刺激となる.

陽性反応:頭部を正常な体位に持ち上げ,顔面を垂直にする.

反応期間:[腹臥位]1~2ヶ月

→陽性反応,生涯継続

[背臥位] 6ヶ月

→陽性反応,生涯継続

[左右への体傾斜]6~8ヶ月

→陽性反応,生涯継続

いずれも陽性反応時期になっても陰性反応は反射成熟の遅滞

 

 

 

8)四肢周径

表は評価表一覧と一緒になっています.

9)関節可動域検査

表は評価表一覧と一緒になっています.

10)筋力の評価(Muscle Manual Test)

表には評価表一覧と一緒になっています.

Ⅵ 各神経の診かた(脳神経機能検査)

1)嗅(Ⅰ)神経

方法:閉眼させ,一側鼻口を押さえて,対側に嗅覚刺激(タバコ,コーヒー粉など)を近づけ,内容と強さを尋ねる.

※アンモニア,アルコール,酢酸は三叉神経・舌咽神経を直接刺激するので不適当.

解釈:①両側低下…鼻粘膜障害(鼻炎,副鼻腔炎)が多い

※ただし,頭部外傷(頭蓋底骨折),前頭開頭手術後(前交通動脈瘤,下垂体腫瘍)では両側の嗅覚鈍麻がおこる.

②一側低下…嗅球,嗅策を侵す前頭蓋窩・前頭葉底部病変(炎症・腫瘍・膿瘍など)

腫瘍(髄膜腫,前頭葉グリオーマ)→Foster kennedy症候群

*Foster kennedy症候群…病巣側の嗅覚消失,同側の視神経萎縮反対側のうっ血乳頭

2)視(Ⅱ)神経

方法:①視力(注視したときの識別力)

ⅰ)指数弁…眼前の指数が分かる

ⅱ)手動弁…手の動きが分かる

※ⅰ)でもⅱ)でも分からなかった場合

ⅲ)光覚弁…光が分かる(ペンライトを使って眩しいか)

②視野―視野測定

ⅰ)中心視野

ⅱ)周辺視野…対座法(confrontation test)

→患者は検者と向かい合って座り,自分の手で一眼覆い,検者を注視して動かさない.検者は両手の人指し指を動かしながら視野の周辺から中心に向かって移動させ,患者に見え始める点を言わせる.

正常…外側100°,上・内側60°,下側75°

※この方法で同名半盲(homonymous hemianopsia)などが判定できる.

解釈:視野障害

・半盲狭窄(hemianoptic constriction)…視交叉またはそれより中枢側の視覚路病変

により,両目に一定形式の視野欠損が起こる.

図7: 視野欠損と責任病巣

水平方向:外直筋または内直筋

3)動眼(Ⅲ)・滑車(Ⅳ)・外転(Ⅴ)神経       上方視:上直筋と下直筋

方法:MMT等                    下方視:下直筋と上斜筋

①眼位・眼球運動…6つの外眼筋     内方視で上方視:主に下斜筋

内方視で下方視:上斜筋

外方視で上方視:上直筋

外方視で下方視:下直筋

②瞳孔

③眼裂

図8 麻痺の記載法

解釈:①中枢眼球運動障害

ⅰ)共同偏視(conjugate deviation)…注視中枢の障害によって,両眼が一方に向かう

もの.中脳・橋などの障害と考えられる.

中枢刺激による偏位より,機能欠落(共同注視

麻痺)による偏位の方が多い.

側方注視の最高中枢:前頭葉(眼球を反対側へ)・後頭葉(眼球を同側へ)

下位中枢:橋の傍正中部網様体(PPRF)・外転神経核

垂直注視の最高中枢:不明

下位中枢:中脳の視蓋前域,後交連付近

走行:外転神経核→すぐに交叉→対側の内側縦束→動眼神経核

※よって,病変部位が橋か,それより上かによって,偏視の方向が逆になる

 

ⅱ)共同注視麻痺(conjugate paralysis)…垂直注視,側方注視の中枢or経路が障害

されると起こる.

Parinaud症候群:垂直注視障害(とくに上方注視障害)

(パリノ-)   病変部位は四丘体付近が多い.通常抑制されている現象.

陽性-人形の目現象(doll’s eye phenomenon)…眼球運動の核上性障害

一側のみ…核・核下性麻痺

検査法①:頭部を上下・左右に速やかに回転するとき,両側眼球が回転と反対

方向に向かう現象.

②:視標を追視させたとき,一定方向へは動かないが,固定した視標をみつめさせたまま頭部を回転すると眼球運動が可能になる.

②眼振(nystagmus)…眼球が反復性に水平または垂直方向に偏位を繰り返すもの.

てんかんを持つ患者さんにみられる.

③瞳孔異常…虹彩異常(外傷,緑内障)または瞳孔支配神経の障害によって起こる.

瞳孔径を支配するのは,交感神経(瞳孔散大筋)と副交感神経(瞳孔括約筋)である.

瞳孔径-5mm以上:散瞳, 2mm以下:縮瞳,

左右差0.5mm以上:瞳孔不同

ⅰ)Horner症候群…一側の縮瞳,眼裂狭小,顔面・前胸部の発汗低下.

同側の交感神経障害で起こる.眼球に達する交感神経は,視床・

視床下部から3つのニューロンを介する.

④眼瞼下垂

原因:ⅰ)動眼神経麻痺(上眼瞼挙筋麻痺).高度では散瞳を伴う…一側性

ⅱ)Horner症候群.下眼瞼も軽度上昇…一側性

ⅲ)ミオパチー…両側性,ある程度の左右差

ⅳ)重症筋無力症…両側性,ある程度の左右差

*通常,眼球運動障害は神経内科のDr.が診察するが,これらが理学療法においてどの様に関わりをもつか.

→ADLの問題をみつけることができる.(ex.視野狭いと,外歩くのは危険)

行動に必要な視覚情報が得られるかどうか,視覚障害による行動の問題点はあるかどうか評価する.

4)三叉(Ⅴ)神経

①感覚…3枝に分かれ,顔面,鼻・口腔粘膜の感覚を支配する.

※橋レベル

第1枝(Ⅴ1):眼神経

第2枝(Ⅴ2):上顎神経

第3枝(Ⅴ3):下顎神経

②運動

ⅰ)閉口…咀嚼筋(側頭筋,咬筋,内・外翼突筋4対):下顎神経(Ⅴ3)

ⅱ)開口…舌骨上筋・下筋群:顔面・三叉・舌下神経

方法:・強く歯を噛み合わすように命じ,側頭筋・咬筋の収縮を調べる.

・開口から閉口の運動を妨げ両筋の筋力をみる.

・顎を左右に振らせて内・外翼突筋の筋力をみる.

左右の咀嚼筋は大脳半球の両側支配

解釈:中枢性感覚障害

ⅰ)タマネギ様感覚障害(onion-skin pattern(dejerine))

頚髄空洞症から延髄空洞症に進行するような上行性障害→顔面の周辺から中心に向かって感覚障害が進行し,玉ネギ様分布を示すことがある.

ⅱ)温痛覚障害のみを示す解離性感覚障害

Wallenberg症候群(外側延髄症候群)のように一側の三叉神経脊髄路と外側脊髄視床路が侵される病変→病巣側の顔面と反対側の頚部以下に温痛覚障害が現れる.

ⅲ)全身半側知覚障害

視床・内包後脚の障害→顔面を含む反対側の全感覚障害

ⅳ)手・口症候群

視床・頭頂葉の部分的障害→同側の手掌と口周囲に限局するしびれ感

中枢領域の支配域が似ているため.

5)顔面(Ⅶ)神経

①運動

ⅰ)顔面の非対称の観察

ⅱ)運動検査…顔面筋の運動を調べる.

・前頭筋:額に皺を作る筋.上方視を命じ,額の皺の左右差,収縮の強さを診る.

・眼輪筋:強く閉眼させ,収縮力を調べる.

正常-睫毛がほぼ眼瞼に隠れる,麻痺-睫毛が残ってみえる.(睫毛徴候)

高度の麻痺では,目が閉じられず白目がみえる.(兎眼)このとき生理的反

応により,眼球が上転する.

・頬部の筋:歯をむき出しに,頬を膨らますように命じて頬部の筋を調べる.大きく

開口させると,麻痺側では開口不良のため「斜め卵形の口」を示す.

・口輪筋:強く閉口させ,筋力を調べる.麻痺-口角が健側に引かれる.

頬を膨らませたのち,検者が指で頬を突くと,口角から空気が漏れる.

口唇音(パ行)の発音が不明瞭になる.

・広頚筋:下口唇を下方に引くように命じる.正常では頚部に広頚筋の収縮がみえるの

で左右差を比較する.

解釈:①中枢性運動障害

中枢性支配:上部顔面筋…両側性,下部顔面筋…一側性 (神経科学p298参照)

このため,個人差はあるが,顔面神経核の一側核上麻痺(一側内包障害など)では,運動麻痺はふつう下部顔面筋のみに現れる.

②末梢性運動障害

上・下部顔面筋ともに侵されるが,麻痺の強さは上・下部で必ずしも一様でない.

最も多い原因はBell麻痺である.

 

図 10:右顔面神経麻痺

ⅰ)Bell麻痺

…急性に一側の末梢性顔面神経麻痺が起こるもの.

ふつう耳後部の自発痛が先行するが,病変部位によって運動麻痺のみのことも

あり,涙液・唾液分泌障害,聴覚過敏を伴うこともある.

原因:単純ヘルペスなど種々のウィルス

ⅱ)Ramsey Hunt症候群(またはHunt症候群)

…帯状ヘルペスによって末梢性顔面神経麻痺が起こるもの.耳介,外耳道,鼓膜

に疱疹が現れる.

Bell麻痺とされる例でも,疱疹を伴わない帯状ヘルペスによる場合がありうる.

通常のBell麻痺よりも回復が劣ることが多い.

6)聴(Ⅷ)神経

方法と解釈:①Weber試験

…振動させたC音叉(128Hz)の先端を額の中央部にあてる.低音が聞こえることを確認したのち,左右のどちら側に偏って聞こえるか尋ねる.

正常―正中部  右伝音性難聴―右に偏る(lateralized to the right)

②Rinne試験

…振動させたC音叉の先端を乳様突起にあてる.音が聞こえなくなったのち音叉を同側の耳に近づけて,なお聞こえるかどうか尋ねる.

正常―気導は骨導よりも長く続き,耳からの音は骨導のさらに約2倍の長さで聞こえる.(+)不完全な感音性障害では,+であるが,聞こえる時間が短い.

伝音性障害―気導に障害があると,耳から音が聞こえない.(-)

7)舌咽(Ⅸ)・迷走(Ⅹ)神経

方法:患者に「アー」と発声させ,口蓋・咽頭・舌の左右差を診る.

一側麻痺…口蓋弓が下垂,健側に引かれる.

咽頭筋の健側斜め上方に向かう筋収縮認められる.(カーテン徴候)

両側麻痺…口蓋弓は弛緩性に下垂したままで,発声時にもほとんど挙上しない.

咽頭筋の動きも観察されない.

図11:球麻痺

 

表3: 球麻痺,仮性球麻痺,筋原性麻痺の鑑別

球麻痺 仮性球麻痺 筋原性球筋麻痺
構音障害発声障害

嚥下障害

情動失禁,尿失禁

軟口蓋・咽頭反射

舌顎反射

口とがらし反射

舌萎縮

舌繊維束性収縮

弛緩性

-~+

   +

   -

消失

正常~消失

   -

   +

   +

痙性

   +

   +

しばしば+

消失

亢進

   +

   -

   -

  弛緩性

  -~+

    +

     -

消失

正常~消失

     -

     +

     -

※末梢性神経性球筋麻痺を含む

 

*構音障害において,球麻痺―弛緩性,仮性球麻痺―痙性になる理由は.

→      〔球麻痺〕             〔仮性球麻痺〕

核・核下型麻痺             核上型麻痺

(責任病巣)中枢.核(延髄)そのもの       延髄より上のレベルの両側皮質延髄路

両側性の末梢性麻痺であり,     つまり,錐体路障害だから.

延髄障害により,構音,嚥下に    ※咽喉筋は大脳半球の両側性支配のため,

関わる筋(咽喉頭筋・舌筋=球筋)    一側皮質延髄路障害では麻痺が起こらない.

が麻痺するから。

*情動失禁、尿失禁において、球麻痺は-、仮性球麻痺は+になる理由は

→両側皮質延髄路の障害は、前頭葉の障害持ってる可能性が高いから。

*顔面・体幹は両側性支配か、一側性支配か

→両側性支配

8)副(Ⅺ)神経:上部頚神経(C3,4 )と共に,胸鎖乳突筋・僧帽筋を支配する.

9)舌下(Ⅻ)神経

*運動神経のみを含み、舌筋(外舌筋・内舌筋)を支配する。

舌の位置を変える(舌の挺出、左右への運動)――外舌筋

舌の形を変える――内舌筋

方法:①舌を前方に突き出させる。十分に挺出可能か、左右偏位・萎縮・繊維束性収縮があるか調べる。正常者でも細かい舌筋の振戦が認められることもあり、線維性収縮との区別が難しい。→口腔内の安静状態で観察。なお収縮が認められたら異常。

②舌尖で人中をなめるように命じる。

異常―麻痺側へ舌尖・舌下面の縫線の偏位

③挺出した舌を最大限側方へ移動させて、左右差を比較する。または、舌先で口中より頬部を押し出すように命じ、検者は外から抵抗を加え筋力を調べる。

一側麻痺―反対側へ移動させる力が低下する。(舌を右に動かすのは左の筋)

患者に与える情報①視覚…実際に自分がやってみる。

④聴覚…大きな声で指示

⑤触覚…患者さんに触れて指示

・舌下神経のみの障害の責任病巣は→ 一側の皮質延髄路.

解釈:①中枢神経障害

…舌は両側性支配だが、舌下神経は核上性に一側支配を受ける。このため、大脳半球・中脳・橋の一側障害では反対側の麻痺が起こる。

舌の挺出-麻痺側に偏位。※筋萎縮は見られない。

発語-舌音が不明瞭 ※嚥下障害は起こらない。

②末梢性運動障害

…一側麻痺-麻痺側の舌筋萎縮。線維束性収縮を示す。

両側麻痺-運動ニューロン疾患、Kennedy-Alter‐Sung症候群、Guillain‐Barre症候群、サルコイドーシスなどで起こる。

舌の挺出、左右への運動-困難

発語-きわめて不明瞭

高度の麻痺は運動ニューロン疾患でみられ、舌は薄く口腔底に沈んだまま(筋力低下)。

 

Ⅶ 基本動作障害

1)片麻痺基本動作テスト

2)片麻下肢基本動作レベル

3)床上動作障害

①寝返り、起き上がり(背臥位、仰臥位からの)、四つ這い、立ち上がり(床、椅座位からの)において

・動作遂行の安定性の観察

共同運動障害(アシネルギー)の有無、上肢による支持基底面のとり方、軀幹の回旋運動の程度

・運動パターンの観察、動作の持久性、所有時間の測定

②床上運動の評価

膝歩き、四つ這い、いざりにおいて

・3mをできる限り速く移動したときの所要時間

・四肢のコンビネーションの評価

4)移動、歩行障害

・歩行能力分類…平行棒内・杖・杖なし、介助・監視・自立、屋内・屋外

・10m歩行の所要時間および歩行率(steps/min)

・6分間歩行テスト、3分間歩行時のPCI

・安定性(歩行時、方向転換時)

・歩行の観察…体幹の揺れ、下肢外転、歩幅、立脚相での着地の様子、左右の対称性、上肢の振り

進行方向の変位など

・応用歩行での歩容の評価…継ぎ足歩行、8の字歩行、膝屈曲位歩行、階段昇降など

5)立ちしゃがみ動作の障害…立ち上がり、立位保持、かがみ込み等

⑤片麻痺上肢能力テスト

6)上肢基本動作障害

ⅰ)物に手を届かせる、引く、把握、離すなどの質的評価

ⅱ)上肢用、体幹・下肢用運動年齢テスト(MAT motor age test)

 

7)高次脳機能障害

これについては、今後の課題で詳しく行うので省くこととする。

A)失語 B)失行 C)失認 D)痴呆

 

8)局所的合併症

肩亜脱臼(逆拘縮)、拘縮、筋の廃用萎縮、骨粗鬆症、異所性骨化、褥瘡

種々の疼痛症状(肩手症候群など)、静脈血栓症、末梢循環障害、浮腫

 

Ⅷ 能力障害の検査・測定

1)ADL自立度の評価

①改変新Barthel index

ⅰ)10項目の総得点が100点になるように各項目に配置されている。

ⅱ)項目:排尿・排便自制、トイレ動作、食事、更衣、椅子とベッド間の移乗、入浴、移動、階段昇降

ⅲ)点数は、時間、および患者がその活動が行えず、実際に必要とした身体的介助量に基づく。

ⅳ)介助なしでの可能度を表すものであるが、一人で生活できるという意味ではない。

ⅴ)食事作り、家事、社会との接触などは除外されている。

ⅵ)利点:簡便さ…患者に関わるすべての人々に容易に理解され、各項目を理解すれば誰でも迅速に採点可能な点。

ⅶ)欠点:機能の変化(改善や低下)に対する感度がやや鈍い。

身体のどこに欠陥があるかを表示する意味は持っていない。

介助の度合いがわかりにくい。

実際に行っているADLを表しにくい。

②FIM(機能的自立度評価法 Functional Independence Measure)

自立度と介助の必要度合いを主とする7段階評価尺度を用い、コミュニケーションと社会的認知機能を含む18項目を7段階で評価する。

ⅰ)利点:総合得点(満点126点)で全体としての自立度および介助度を評価できる。

障害者の実生活におけるADLの特性を評価するに適してきる。

FIMの1点は1.6分の介助時間に相当するといわれている。

ⅱ)欠点:判定の難しさ、評価に時間がかかる。

③Kats Index of ADL

ⅰ)入浴、更衣、トイレ、移動、排尿・排便自制、食事の6項目の行為におけるすべての遂行が要約されたもの。

ⅱ)この6項目について、それぞれ自立と介助を区分し、自立の項目がいくつあるかによってAからG(A:すべて自立、G:すべて介助)までの程度が決定される。

ⅲ)A~Gのグレードは、人間の発達過程と似ており、ADL能力の向上(低下)には一定の順序性があるとの概念を取り入れている。

④PULSES Profile

ⅰ)慢性疾患に対しての、医学的・身体的・精神的・社会的因子にわたる包括的生活機能尺度。

ⅱ)身体状況、上肢機能、下肢機能、感覚的要素、排泄機能、支援要素の6項目からなり、それぞれに4段階の評点を行う。障害が重度になるほど高い点数となる。

ⅲ)16点以上は極めて重度の障害を持つことを意味し、満点の24点は全介助状態を意味する。

2)体力の評価

①酸素摂取量測定…片麻痺患者では動作遂行上の問題がある。

②高齢者用の体力バッテリー…比較的運動麻痺が軽度な場合に適応

③片麻痺患者用の体力評価例

 

Ⅸ 社会生活・生活環境に対する評価

1)住環境の実地調査を行う(家屋内、家屋外)

2)LawtonのIADLスケールによる評価

①電話の使用、買物、食事の支度、家屋の維持、洗濯、外出時の移動、服薬、家計管理の8項目からなり、それぞれ3~5の小項目から構成されている。


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