スポンサード・リンク

(。>д<)パーキンソン病と解剖生理からリハビリの話


( ・_・)ノ題名:パーキンソン病と解剖生理からリハビリの話

振戦、無動、固縮、姿勢反射障害の4徴を示す代表的な錐体外路疾患でその他には起立性低血圧などの自律神経障害がある。中脳黒質線状体系におけるドーパミン代謝障害が主因。発症は40代以降でやや女性に多く振戦から始まるものが多い。

中脳黒質のドーパミンの神経細胞死が原因で、四肢の振るえ、こわばり、緩慢な動作、小股・前屈み歩行などの錐体外路性運動機能障害をきたす疾患である。責任病巣は中脳黒質緻密層と青斑核に存在するメラニン色素含有神経細胞の変性・脱落(細胞死)とレビー小体の多発である。神経細胞は黒質では神経伝達物質のドーパミンを産生し、大脳基底核の線状体(被殻、尾状核)に投射しているため、患者の線状体ではドーパミン欠乏が生じ運動機能障害を呈する。また橋被蓋部の青班核神経細胞ではノルエピネフリン(=ノルアドレナリン)を産生しているため、この欠乏が自発性の低下や、うつ症状と関連している可能性が推定されている。

現在の治療では病変の進行を抑制できないが、近年L-dopaをはじめとする優れた治療薬の開発によって、長期間社会生活を送ることが可能な疾患となってきた。しかし、通常経過10年を超えると薬効の低下、効果の不安定、幻覚・妄想の出現などで薬物治療が困難となり、やがては要介助状態に陥り、骨折、誤嚥性肺炎、悪性症候群(向精神病薬の治療中、抗パーキンソン薬中断時などに出現する。高体温、著しい錐体外路症状と自律神経症状、特徴的な精神症状が主症状。悪性高熱に近いが経過はそれより緩徐で関連性が議論されている※①P4)などを契機に臥床状態となり、平均13年で死の転帰をとる。

またパーキンソン病は運動障害にほかに、便通障害、起立性低血圧などの自律神経障害、自発性の低下を特徴とするうつ症状などの精神障害を伴うことが多い。パーキンソン病の特徴は徐々に発症し数ヶ月~数年の単位で進行し歩行、起居、会話などの基本動作に障害をきたすが、錐体路障害と異なり筋麻痺がないことである。この運動機能障害は、安静時振戦、仮面様顔貌、前傾姿勢、小股歩行など特有の症状であることからパーキンソニズムと呼ばれている。人工の高齢化と薬物治療の進歩によって増加しており、治療や介護に携わる機会も増加しつつある。病因は単一の素因ではなく、遺伝素因と環境因子に加齢が重なった複合因子によるものと推定されている。すなわち黒質ドーパミンニューロンは加齢とともにその数は減少するが、パーキンソン病患者ではこの過程が病的に促進されており、この病因として遺伝素因と環境因子の相互作用が推定されている。

疫学的には日本では人口10万人当たり約100人にみられ、男女差はない。発症は50~60歳代が多いが、20~80歳代まで幅広く起こりうる。一般に遺伝性は認められないが、約5%に常染色体優性または劣性遺伝性のものがみられる。

臨床像として、片手または両手の振戦で発症する例が約7割を占める。ほかに片手の動作緩慢、片脚の引きずり歩行で発症することもある。進行とともに反体側にも症状が現れるが、症状の左右差は引き続き見られる。

検査所見として、髄液中のドパミンの最終代謝産物であるホモバニリン酸の低下がみられる。脳CT/MRIでは進行期に前頭葉に萎縮を認めることがある。

予後として、本病は進行性であるが、合併症がなければ15年前後、日常生活動作(ADL)が保たれることが多い。また進行度に個人差があり、一般に若年に発症するほど進行は遅い。40歳代で発症した患者が30年以上、歩行が可能なこともまれではない。

病期による問題点として、a.病初期では症状は軽く薬剤の効果は良いが、振戦が強い場合、問題となることが多い。b.病中期では発症から5年を過ぎたころ、ウエアリングーオフ現象、ジスキネジー、すくみ足などが出現しやすく、ADL障害を引き起こす。

c.進行期では発症から10~15年過ぎたころ、無動や歩行障害が進行し、精神症状もみられることがあり、介助量が増加しやすい。

禁忌事項としては、症状がある程度進行した患者において、抗パーキンソン病薬の中断や急激な処方内容の変更により悪性症候群が起こることがある。高熱、意識障害、四肢の硬直、イレウスなどの自律神経症状などがみられ、血清CK値が高値を示す。十分な補液と全身管理が必要である。

 

●症状の話

振戦、無動、固縮、姿勢反射障害の4大徴候と起立性低血圧などの自律神経障害を示す。

(1)振戦(tremor)

4~6Hzの運動(屈伸、前腕の回内・回外)、母指と中指や示指をすり合わせるような反復運動(丸薬丸め運動pill rolling 図1参照)、下肢、口唇にも出現し、睡眠中には停止する。初期には一側上肢または下肢に安静時振戦がみられるのが大部分であるが、病状が進行すれば、口唇、舌などに及ぶこともある。また振戦が強いと安静時のみならず動作時にも振戦(姿勢振戦)が出現し、随意運動を障害するようになる。

(2)固縮(rigidity)

他動的屈伸で抵抗があって、鉛管様現象(筋を受動的に伸張したとき、まるで鉛パイプを曲げるように受動運動の初めから終わりまで検者の手に一様の連続した抵抗を感じる現象※①P47)、歯車様現象(筋固縮でみられ、四肢関節の受動的屈伸時に歯車のように断続的な強弱を繰り返すリズミカルな抵抗を感じる現象※①P481)通常は、手関節、肘関節、頚部を他動的に動かして判定する。筋固縮は四肢、頚部にみられるが、屈筋群と回内筋群優位のために頚部は前屈し、肘関節や膝関節は屈曲し、母指は内転位をとり特有の姿勢をとりやすい。

(3)無動、寡動

動作の開始、遂行が遅くかつ運動の乏しいのが本症例の特徴であり、緩徐さを表現する用語として寡動、運動領の減少に対しては無動が用いられるが、区別することが困難なために、まとめて無動と記載されているものが多い。動作開始の遅さ、運動遂行の遅さ、速い変換運動の障害、小刻み歩行、仮面様顔貌、小声で早口な構音障害が特徴的な臨床症状である。特に表情筋の無動と筋固縮によって生ずる仮面様顔貌や共同運動障害による歩行時の腕の振りの消失は安静時振戦とともに本症例の特徴的な症状である。無動に関連した症状にすくみ足があり、すくみ足(frozen gait)とは、狭い場所や緊張時に多い現象で、歩行の開始時または歩行中に足底があたかも床面にへばりついたようになって歩けなくなる状態を指す。しかし、足前に跨げる程度の障害物があると、容易に踏み出すことができる。また号令をかけたりする聴覚刺激によってもすくみが回避されることもあり、このような現象を矛盾運動と呼ぶ。

(4)姿勢反射障害

立ち直り反射障害は早期では見られない症状であるが、病期が進むにつれて顕著となる。坐位の患者を押すと立ち直りができずに倒れそうになる。立位の姿勢は頚部はやや伸展、上半身はやや前屈の屈筋優位の姿勢をとる(図1参照)。立位の患者を押すと、倒れそうになりながら小刻みに数歩足を送ったり(突進現象)、歩行中に徐々に加速し小走りになる(前傾突進歩行)症状が見られる。

(5)自律神経障害

1)便秘

消化管平滑筋の運動障害と抗パーキンソン病薬(特に抗コリン薬)による副作用  によって生じる。

2)脂顔

皮脂腺の分泌亢進により、脂顔、ふけが多くなる。

3)多汗

頭、顔、頚部の発汗が亢進する。また腋窩、手掌、足底などのアポクリン腺の発汗亢進がみられる。

4)起立性低血圧

中枢性の血圧調節障害がみられ、血圧は変動し起立性低血圧をきたす。またL-dopa薬、ドーパミン受容体アゴニストにより低血圧を生じやすい。

5)四肢循環障害

外界の温度が下がると主に四肢(特に下肢先端部)も循環障害をきたし、冷汗や時にしびれ感を訴える。特に運動症状に左右差の明らかな患者では、通常、筋固縮や無動の強い側で、循環障害もより強い。

(6)精神症状

抑うつ、不安焦燥、痴呆、幻覚、せん妄

(7)会話・言語障害

音量は減少し、抑揚が乏しく単調となる。リズム感の低下により歌が下手になったり、電話での会話が聞き取れないなどで本症例と気づかれることもある。どもったり、早口でしゃべったりして聞き取れなくなる。これは言語におけるすくみ現象や下側現象によるものとされている。

(8)書字障害

振戦による字の乱れと、文字が最初は普通の大きさに書けるのに無動と筋固縮のために次第に小さくなる現象で、小字症と呼ばれる。

 

●パーキンソニズムを呈する疾患

(1)特発性パーキンソニズム

a.特発性パーキンソン病(パーキンソン病)

b.若年性パーキンソン病

(2)症候性パーキンソニズム

a.脳炎後パーキンソニズム

b.中毒性パーキンソニズム(一酸化炭素中毒、マンガン中毒によるもの)

c.薬剤性パーキンソニズム

d.脳血管性パーキンソニズム

e.正常圧水頭症に伴うパーキンソニズム

f.脳浮腫に伴うパーキンソニズム

g.頭部外傷に伴うパーキンソニズム

h.その他

(3)連合性パーキンソニズム

a.線条体黒質変性症

b.オリーブ橋小脳変性症

c.シャイドレーガー症候群

d.進行性核上性麻痺

e.ヤコブ病

f.パーキンソニズム・痴呆症候群

g.運動ニューロン病を伴うパーキンソニズム

 

●評価項目

(1)機能障害の評価

1)振戦

振戦の有無・部位を観察する。

4~6Hzの交代性振戦が安静期にみられる。

多くは手指、前腕、下腿遠位部にみられる。

手指では丸薬丸め運動pill rollingがみられる。

2)固縮

被動検査での抵抗の種類と程度を部位別に検査する。

鉛管現象:四肢を他動的に動かした場合、鉛管を曲げるような一様の抵抗感を感じる現象。

歯車現象:四肢を他動的に動かした場合、ガクガクと歯車様の抵抗感を感じる現象。

3)無動

姿勢変換の運動開始時間や運動遂行速度の評価を行う。

小字症のチェック。

4)リズム形成障害

歩行など日常的な動作のなかでリズム障害の有無と程度を観察する。

5)姿勢調節障害の評価

前屈姿勢や後方突出現象の有無、立ち直り反応について評価を行う。

立位での立ち直り反応のチェックの際には突進現象に注意する。

機能的上肢到達検査:課題に対して最大に対応した際のパフォーマンスを評価する。

6)反射検査

深部反射:

腱や骨の突端を急に叩くことによって引き起こされる。

同じ反射で左右差を確認する。

病的反射:

筋肉の伸張や皮膚表面の刺激により引き起こされる。正常者では原則として認められない。臨床的には錐体路障害の重要な徴候。

マイヤーソン徴候

眉間をハンマーで軽く叩くと、正常では両側眼輪筋の収縮をみる反射を眉間反射といい、パーキンソン病ではこの反射が、何度繰り返してもよくこの反応が出る。

7)関節可動域検査

変形や拘縮の起こる可能性の関節をチェックする。

膝関節の屈曲拘縮、足関節の底屈拘縮、体幹の回旋について検査する。

8)筋力検査

筋力低下部位を中心に、四肢・体幹を粗大筋力で検査する。

9)呼吸機能検査

胸郭拡張収縮差や肺活量などの呼吸器をチェックする。

10)歩行能力検査

すくみ足、小刻み歩行、開始時つまずき、加速歩行、手の振り、体幹の回旋などを評価する。

階段昇降などの逆説動作。

11)精神症状(改長谷川式簡易知能評価・WAIS-R)

抑うつ傾向、自発性欠如、不安、幻覚症状について観察したことを記録する。

末期では知能の低下をみることもある。

12)自律神経障害の評価

脂顔、流涎、過剰発汗、便秘、排尿障害、陰萎、起立性低血圧などについて評価する。

(2)活動制限の評価

臥位から立位までの動作分析とそのパターンについて評価する。

評価基準では、時間的要素、距離的要素、正確性、巧緻性、安全性、実用性などの要素を考慮する。

・最大歩行速度(MWS):平坦路に設定された一定の区間を最大速度で歩行した際のパフォーマンスに着目した指標

・Timed Up and Go test:立位や歩行における動的バランスを評価する。

チャートを使う場合はBarthel index、FIMなどを用いて評価する。

特に無動や姿勢反応障害による障害が強い。

(3)参加制約・環境因子の評価

家屋構造や社会交流、家族構成、経済状況、判断能力、就労あるいは家庭および地域の役割について。

(4)その他

1)UPDRS(パーキンソン病統一スケール)

精神機能、日常生活動作、運動機能検査、治療による合併症の項目別に分類し点数化したもの。

パーキンソン病の総合的評価として利用できる。

2)Japan Parkinson’s disease rating scale

ADLと機能障害、症状を統合した評価であり、各項目を4段階評価するもので薬物療法の評価尺度として作成されたもの。

薬物療法の影響の項目があり、総合的な評価として利用できる。

3)厚生省特定疾患・神経変性疾患調査研究班が作成した診断基準がある。また海外ではCalneの診断基準や英国Brain Bankの診断基準がよく使用されている。他にも外科治療の評価のため作成されたものや、病理所見を含めた確定診断など目的によって診断基準が作られている。これらを参照するとパーキンソン病と診断するための要点は

a.主症状(安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)のうち少なくとも2つが存在すること、

b.頭部CTまたはMRI所見に原則として明らかな異常を認めないこと、

c.感染、薬物や中毒などによるパーキンソン症候群を除外できること、

d.L-ドーパまたはドパミンアゴニストにて明らかな症状の改善を認めること,

である。

 

●障害の進行過程と代償能

低運動による二次的機能障害やその他の合併症が存在しないことを前提にすれば、機能障害は時間の経過とともに一貫して低下していくのに対し、ADLは一定期間維持されたのち,段階的に低下していく傾向がある。ADLが機能障害と平行して低下しない理由は,生体が運動機能不全をある程度受容できる予備能と数多くの代償機構を備えているからである。このような代償能の発現過程は、障害進行に沿って以下の3段階に区分できる。

a.自立期:代償を利用しなくてもADL自立が達成できている段階

b.代償期:代償を利用してどうにか自立している段階

c.介助期:代償を利用しても自立困難な段階

理学療法によって機能障害としての運動や呼吸機能を維持・改善することも重要であるが,病状の進行が避けられない以上,代償期になれば残存機能を活用した代償方法を指導し、代償機能を高めていくことも必要である。代償機構は、進行していく病状によって失われつつある能力を発達過程と逆行した動作パターンに退行させることで防衛する側面と、困難な動作を円滑にし、エネルギーの効率的利用をはかるという合理性を合わせもつ.それは残存機能の活用と再編,環境整備によって成立するが、およそ代償動作は習慣性を有するものであり、あとで述べるように、問題視せざるをえない過剰代償の場合でもその修正は容易ではない。次に Parkinson病によく観察される事象についてまとめる。

(1)ボディメカニクスを利用した代償

1)より障害の少ない運動器の利用

残存機能の分布に差がある患者に観察される。すなわち、Parkinson病患者が体幹などの近位部に比べ機能が残存する上肢遠位部で、マットレスの縁につかまりながら寝返ることなどがその典型例である。

2)慣性力の利用

背臥位をとるParkinson病患者は、両下肢を挙上し、振り下ろす両側性対称パターンによって生じる慣性モーメントを利用して起き上がろうとする。また腰掛け座位からの立ち上がりが困難な場合、体幹の前屈動作を何回か繰り返して(rockingmovement)前方荷重を促すのもその一種である。

3)ワイドベース

身体のバランス機能が低下すると、歩行や四つ這い移動時に四肢を外転し、支持基底面を広くとる方略で、動揺する身体の安定性を補償する。ただし、立位が不安定なParkinson病患者の多くはワイドベースをとらない。これは股関節内転筋群の緊張亢進がもたらす現象と考えられ、立位バランスの低下と支持基底面の拡大は必ずしも相関するとは限らない。

4)関節ロッキング

関節ロッキングとは、骨・関節包・靭帯・筋など関節周囲の支持機構を利用した関節固定化現象である。Parkinson病患者の場合、代表的には腹部低緊張を代償する脊柱後考現象などがあげられる。これらロッキング現象の原因は、当該関節周囲に限局した問題,たとえば筋力低下や筋緊張の異常のほかに全般的な抗重力機能の低下や協調運動害であったりする。ロッキング現象は、関節連動制御にかかわる筋群の筋力低下を進行させ、靭帯や関節周囲組織の伸張・疼痛・一部筋群の過剰負担などをもたらす。

5)動作パターンの変換

Parkinson病患者は運動計画の選択に柔軟性を欠き、体軸内回旋の乏しい動作パターンに陥りやすい。たとえば寝返り動作は運動性の乏しい体幹機能は用いられず、両膝を屈曲して膝を立てた姿勢(crook lying)から下肢を側方に倒し下部体幹を回旋させ、上側下肢の伸展動作による床面を蹴る動作(kicking)を利用しがちである。これは主に腹筋群にかかる負担を下肢機能などにより代償した結果である。しかし、こうした代償動作も体幹や骨盤帯が沈み込むような柔らかいマットレスでは十分発揮されず、固めのものが適し、環境との調整がポイントになる。

6)多感覚刺激による代償

Parkinson病のすくみ足(frozengait)に対し、ラインや敷居をまたぐといった視覚的手がかりを利用して解除したり、号令や掛け声・マーチなど音楽による聴覚的刺激により運動開始を円滑化したりする場合が多感覚刺激による代償に当たる。

7)壁や手すりなど周辺環境を利用した代償

a.中枢部の固定

主に身体近位部を壁や家具に寄り掛かったりして、抗重力位をとる身体を支持または固定する.これにより身体の中枢部を固定し、いわばアンカーを形成することで、姿勢の維持と他肢の運動性を確保する。

b.末梢部の固定

主に手掌を中心とした把持動作で遠位部を固定あるいは支持することによって、姿勢保持や他肢の運動性を確保する。たとえば、座位の安定性が得にくいParkinson病患者がベッドの柵につかまったり、ベッドの縁や柵をつかんで体幹を引き寄せることで寝返る,手すりにつかまって移動するなどがこれに該当する。いずれも残存する上肢機能を生かした起居・移動動作で、把持する村象物を堅固に固定することが重要である。

c.座面の高さを調節する

しゃがみ位や腰掛け座位からの立ち上がり動作が困難なParkinson病患者などに適用される方略である。和式便器を洋式に、また補高便座や昇降式便座を使用することによって、立ち上がり動作に要求される膝伸展トルクの軽減をはかる。また浴槽から立ち上がりやすいように底に低い腰掛けを設置したり、肘掛け付きのいすやポータブルトイレを使用すると、上肢のプッシュアップによる押し上げも利用できる。

d.杖・歩行器などよるバランス補助

すべての症例に杖や歩行器が必ず奏功するとは限らないが、身体の不安定性に対し、立位バランスの補助や姿勢維持に利用することがある。このほか、転倒時の身体保護に頭部保護帽や膝サポーターを装着することも、リスク回避の手段としそ有効である。

8)過剰代償について

上述した代償機構も変化した身体環境への適応といえるが、なかには過剰適応ともいえる代償が存在することも確かである。必要以上に手すりや残存部位に依存した動作を行ったり、退行した動作パターンを多用しているケースは珍しくない。つまり自立期の代償を利用しなくともADLが達成可能な段階で,患者が問題のある動作を習慣化させていた場合、本来有しているはずの機能の減退をまねいてしまう。自立期では可能なかぎり代償に頼らず、広可動域にわたる正しい運動感覚刺激を神経系に学習させる指導を行い、代償期でこれまで述べた代償機能を参加させ、安全で確実性のある動作に比重をおくよう切り替えていく。

 

●基本方針

代償期に移行しつつある運動障害への予防効果を期待して、Parkinson病患者にとってネガティブになりやすい運動要素、すなわち仝可動域にわたり不使用になりがちなdisusepatternを促通・強化していく。これによって、可能なかぎり代償に頼らず、残存する立ち直りや姿勢制御系の正しい反応を引き出すことで神経系の再学習を促す。

(1)関節可動性の改善:

運動性を阻害する固縮や筋短縮による可動域制限(特に頚部、胸郭、脊柱、下肢)の改善をはかる。

(2)抗重力伸展活動の促通:

代償運動パターンである定型的な屈曲パターンからの分離・抑制をはかり、頚部・体幹を中心とした抗重力伸展活動を高めていく。

(3)動作開始時の筋張力増強:

頭部から尾部へ向かう失われやすい長軸方向の分節的回旋を伴う立ち直り反応を、寝返り動作や起き上がり動作を行うなかで誘導し、運動初期の十分な筋張力の発生と持続を学習していく。

(4)動作パターンの多様性獲得:

運動計画(motorplan)の選択に柔軟性が失われ、多様な動作パターンの遂行が困難になるため、日常生活では経験しにくい重心位置の大きな移動を伴う、仝可動域にわたる動作を経験させる。これによって支持基底面の変化、特に体軸内回旋を伴う動作を運動場面で展開していく。

(5)部分的姿勢コントロールから全体へ:

動作の開始が困難な症例には、一連の動作のうち中途に当たるポジションのコントロールから獲得していく(たとえば、寝返り動作では側臥位、起き上がり動作では片肘位での姿勢コントロールを課題とする)。

 

●運動療法

(1)各関節・脊柱の可動性確保

関節可動域運動やモビライゼーションテクニック(mobilizationtechnique)を用いて、頚部・上部体幹・胸郭・下肢の運動性を確保する。視覚と協応した運動はほとんど眼球と頚部の運動が先行し、後者が著しく損なわれると患者は主に眼球運動で代償しようとする。頚部や上部体幹の可動域制限は運動発現の円滑性に大きな影響を与える。

(2)側臥位までの寝返り動作

臥位から側臥位までの寝返り動作が困難な場合、まず他動的に側臥位となるよう援助する。そして上側骨盤をやや後方へ引いた位置から、下部体幹の回旋による半臥位から側臥位までの運動を促す。Parkinson病患者が失いやすい体軸内の回旋要素も、正中位からの回旋を求めるより回旋位から正中位へ減捻する方向のほうが反応を得やすい。したがって、骨盤に対し抵抗を加えながら上側肩甲帯の前方突出(protraction)を同時に求め、頭部から尾部へ向かう分節的回旋を促し、より臥位に近い姿勢から側臥位までの動作を段階的に行い、寝返り動作を実現していく。また、固有受容性神経筋促通法(PNF)の上肢屈曲一内転一外旋パターンを利用した両側性リフティングパターンを用いた寝返り動作練習も有効である。

(3)起き上がり動作

Parkinson病患者が背臥位から起き上がると両膝を屈曲し、下部体幹の回旋と上方下肢の伸展動作による床面を蹴る動作を利用して側臥位まで寝返り、次に上肢による押し上げを利用した代償パターンをとりがちである。disusepatternとなる背臥位から片肘位までの頚部・体幹の回旋を伴う体幹屈曲運動を両股・膝関節屈曲を抑制しつつ練習する。

(4)座位一体幹立ち直り運動

腰掛け座位をとる患者に両手を組んでもらい、両上肢拳上位をとる。理学療法士は一側肩甲帯を後方から圧し、体幹上部を他動的に回旋位にする。次にその姿勢から正中位まで体幹を立ち直らせる運動と骨盤前傾を求め、体幹筋群の活動性を高めていく。

(5)座位バランス

腰掛け座位をとる患者の両足部を揃えて、理学療法士の大腿部に乗せる。患者の両膝を左右に操作しながら、体幹の回旋を伴った立ち直り反応を促通していく。はじめはゆっくりとやがて速度を早めて左右に切り返しながら行う。

(6)ハイステップ運動

患者は壁と向かい合うように立ち両手を壁につけ(肋木でもよい)、両上肢を上方へ挙上する。体幹の対称的伸展と股関節伸展を促したうえで大腿部を交互に高く引き上げる運動を繰り返し、股関節や骨盤部の運動性とその持続性、体重の前方荷重を促していく。

(7)リーチ動作を用いた立位バランス練習

理学療法士はいすヤプラットフォームの上に立ち、患者の頭上高くボールをかかげ、患者はそれを目標として両上肢をリーチする。患者の足位やボールの位置をさまざまに変化させ,立位から半しゃがみ位までの重心位置の変化に村応した全身的なバランス反応を引き出していく。

(8)歩行練習

理学療法士は患者と対面し、お互いの両手を合わせ挙上する。理学療法士は患者の手掌を通してpush-pullの入力刺激を加えながら、体幹の伸展反応と体重移動、それに自動的な踏み直り反応を引き出していく。

 

●呼吸ならびに嚥下障害

Parkinson病によっておこる無動・固縮症に共通する呼吸障害の特徴は加齢も加わって、筋固縮や不良姿勢の持続によって脊柱や肩・胸郭の可動性が低下し、多くは浅い腹式呼吸で胸壁運動は乏しい。しかしながら%肺活量は低下し、拘束性の様相を呈するものの、通常,Yahrの重症度分類stage3までは運動時に呼吸困難感を訴えるほどではない(表2)。むしろ発声がか細く呼気の持続が困難で、しかも無動症の影響で口唇や舌の運動性、特に運動の振幅が小さくなるため、徐々に小声症となり聴取しづらい。こうした状態に続いて、Stage4~5に至ると気道感染症から容易に肺炎や無気肺を併発する。さらに悪化すると酸素投与,気管内挿管に至ることさえある。

胸郭可動性が失われ,腹筋力が低下した体幹障害により気道分泌物は貯溜しがちになり、喀出困難に陥る.気管切開まで至るとコミュニケーション障害は避けられず、頻回な喀疾吸引は介護者に大きな負担をもたらす。したがって、第一に予防的アプローチが重要となる.また喋下困難に対しては、口唇や舌の自動運動に加え、喋下しやすいよう食物を細かく刻み、少量ずつ摂取するよう指導していく。

(1)日常の運動量維持と不良姿勢の改善

転倒に注意しながら歩行練習や外出などを心がける。外出の場合、距離あるいは歩数計によって運動量の自己管理を促す。こうした運動負荷によって酸素需要を高め、呼吸筋群の活用を促す。体幹を中心とした立ち直り反応を誘発するバランス運動、脊柱後考姿勢の矯正も重要である。

(2)脊柱ならびに肩・胸郭可動性障害に対するアプローチ

失われやすい肩甲上腕関節における屈曲・外転・外旋方向、胸椎部の伸展・回旋方向の関節可動障害に対して、PNFの上肢屈曲一外転一外旋の両側対称性パターンを利用することにより肩・肩甲部の可動性改善と脊柱の伸展を促していく。吸気のタイミングに合わせて行い、自動的要素により可動性を改善したのち、最終域で腋窩部を引き伸ばすようにゆっくりと伸張手技を加えていく。在宅にあっては自己伸張運動を指導する。

(3)腹臥位保持と骨盤運動

1日最低1回,肩外転・外旋,肘屈曲位にて腹臥位の状態を約10分程度保持する。胸部に小さめの枕を敷き、頚部は回旋させ、前額部付近にタオルを敷く。腹臥位は、体位ドレナージとして背側肺野に貯留した分泌物の移動を促し、肺血流の不均衡改善に寄与する。また、胸壁が床面を通じて圧迫されることにより残気量が減少し、下部体幹以下の腰椎・股関節の伸展方向の可動性維持や伸筋緊張増進にも有益である。さらに腹臥位で骨盤後傾(呼気)と前傾(吸気)を交互に繰り返すことで、腹筋力と脊柱可動性を高めていく。

(4)深呼吸運動

胸壁運動を伴うように深い吸気を行い、呼気時は腹庄を高めながら呼吸筋運動を行う。この時発声を同時に行い、呼気の持続を促し、残気量を低下させると換気改善につながる。用手的に呼吸介助手技を加えてもよい。老人保健施設や保健所・保健センターにおける集団療法時には,各種運動に加え、斉唱など音楽療法も効果的である。

 

●注意事項

(1)廃用症候群の予防

自発運動そのものが少なくなる無動症は廃用をまねきやすいうえ、姿勢異常とともに自覚されにくい。日常運動量を確保する工夫が必要で、集団スポーツに加え、歩数(カロリー)計を利用して歩行量を日誌に記録する試みは、障害の自己管理を促す方法として注目される。

発症初期のケースには、可能なかぎり職業や主婦業など社会生活を継続し、退職を余儀なくされたケースでも、個人として尊厳を保てるように家庭内の役割を再考する周囲の配慮が必要である。少しでも自立度を高め、患者会の会合や老人保健施設のデイサービスを受けるなど、ポジティブな生活態度が進行の予防のみならず快眠や便秘解消にも寄与する。このほか、筋伸張運動や起居動作・バランス運動を組み込んだParkinson体操などのパンフレットを準備したり、ホームプログラムをビデオ撮りして日課として行うなどの方法がある。

(2)症状の日内変動

抗Parkinson病薬の長期服用に伴って症状が日内変動する場合、運動療法は原則として症状が軽快しているup(on)の時期に実施する。これは練習効果を持続させることでdown(off)期の縮小をはかるほうが合理的という理由からである。

(3)すくみ足

すくみ足は狭路・障害物・路面の変化や精神的緊張といった誘発因子により歩行が途中で停止し、第一歩日がなかなか踏み出せない一見奇妙な現象である。視覚的に目標物を踏み越えるとすくみ足を解除できることが多い。姿勢反応障害との関連は明らかではないが、すくみ足への対応として以下のような対策がある。

・すくみ足解除法

a.靴底のheeIを高くし、前方荷重を促す

b.リズム開始法

歩行途中ですくみが始まったらまず立ち止まり、前傾した立位姿勢を自動的に伸展位に矯正する。次に、大きく手を振り“いちに、いちに”と自ら発声しながらその場で足踏みし、第一歩目を踏み出す。その際一歩目を意識的に大きく踏み出すようにする。あるいは踏み出そうとする足を一歩後方に引き、構えてから踏み出し始める。

c.視覚誘導法

床に梯子状に貼り付けたビニールテープを踏み越える。

床に目印になるものを探し出し,それを踏み越える。

介護者の足を患者の足元に差し出し,それを踏み越える。

d.すくみを誘発する障害物などを撤去する

(4)転倒事故予防

転倒による頭部外傷・腰椎圧迫骨折・大腿骨頚部骨折など、合併症予防は重要である。これに対し、家屋環境の調整が転倒予防に果たす役割は大きい。また、歩行中のつまずきをなくすため室内の整理整頓を心がけ、夜間は室内や廊下の照明を明るくしておく必要がある。

しゃがみ位での作業(庭仕事など)、高所へのリーチング、強風時の外出などは転倒を誘発するので注意が必要である。

(5)起立性低血圧

起立性低血圧による自律神経障害として、臥位から急に座位・立位にするとめまいを訴えることなどから気づくことが多い。重症例にはリクライニング式車いすによる座位保持や腹帯装着などを試みる。

 

●治療

(1)薬物治療

対症療法薬としては、L-dopa、ドーパミン受容体アゴニスト、アマンタジン、中枢性抗コリン作用薬、ドロキシドパの5群に分類される。現在に薬では、最も卓越した治療効果を示すのはL-dopaであり、これをしのぐ薬はない。

1)L-dopa

脳内でL-dopaは残存黒質線状体ドーパミン神経に取り込まれる。次に指の神経終末に存在する脱炭酸酵素によってドーパミンに変わり、小胞内で貯蔵され神経細胞の活動に応じてシナプス間隙に放出されて、線状体神経細胞上のドーパミン受容体と結合することにより作用を発現すると考えられている。

2)ドーパミン受容体アゴニスト

ドーパミン受容体に神経伝達物質のドーパミンと同じように結合し、細胞内二次伝達系の活性化を生ずる化学物質をドーパミン受容体アゴニストという。アゴニストの登場はL-dopa治療の際の薬効の不安定を補うのみならず、L-dopaによる病変への悪影響を減ずる可能性を併せて、今後使用が増加すると想定されている。

3)アマンタジン

抗ウイルス剤として開発されたアマンタジンは偶然に請うパーキンソン病作用を併せ持つことが発見されたユニークな物質であるが、真の薬理作用は未だに解明されていない

4)中枢性抗コリン作用薬

振戦や流涎の目立つ患者ではL-dopaを凌ぐ効果を示すことがあり、今日においても重要な薬の一つである。短所は高齢者では排尿困難や一過性の記憶障害を生じやすいことである。

 

●Handofordモデルを使用した計画立案

パーキンソン病のトレーニング計画の立案に、安易にICIDHの階層モデルを使用するのは不適切である。なぜならば、第一にパーキンソン病は慢性進行性の疾患であり、原則的に機能回復は見込めないからであり、第二に機能障害レベルでの症状が多いため、

機能障害レベルにみられる問題から能力障害レベルの問題への関連づけが困難であるからである。

Handofordモデルの特徴は、ICIDHのごとく『機能障害レベル⇒能力障害レベル⇒社会的不利レベル』の階層毎に障害を分類し、各々の階層間を結びつけるのではなく、まず最初に能力障害レベルにおける具体的な問題点をリストアップする。そこから動作、移動そして姿勢における正常からの逸脱要素を書き出す。その異常と関係する問題点を5つのカテゴリーに分類する。

a. primary deficits

パーキンソン病自体に直接関係する症状(動作緩慢、固縮、振戦など)

b. secondary deficits

primary deficitsの結果として間接的に現れる症状(筋骨格系など)

c. conbined deficits

primary deficitsとsecondary deficitsを合わせた結果として現れる症状(姿勢不良など)

d. drug therapy

薬剤療法に関わる問題(on-off現症、ジストニアなど)

e. other

パーキンソン病とは別に加齢などによる問題(変形性関節症など)

 

歩行障害に対するトレーニング実施のキーポイント

PM/SM説が提唱されている。ここでいうPMとは運動前野を指し、SMとは補足運動野を指している。PM系は外界の情報を手がかりとして外界の状況に適合した外発性運動を遂行する際の制御系として働き、SM系は脳内に既に蓄積されている記憶情報を手がかりにして、外界の情報によらない自己ペースの内発的運動を行う際の制御系として働く。要するにPM(小脳、運動野)系は外発性随意運動を、SM(大脳基底核、補足運動野)系は内発性随意運動を制御しているといえる。

パーキンソン病患者にみられる矛盾運動とは難易度の高い階段昇降課題は容易に可能であるにも関わらず、難易度の低い平地歩行課題が困難であるというものである。本来パーキンソン病はSM系の機能不全が原因であるから、当然、内発性随意運動(平地歩行課題)の課題遂行は困難となる。一方、PM系機能は異常がないために階段の段差によって外的刺激を与える外発性随意運動(階段昇降課題)は容易に課題遂行ができると考えられる。したがって理学療法では、機能不全がないPM系に対して適切なアプローチをするのが理にかなっているといえる。

パーキンソン病の特徴的な歩行として、小刻み歩行がある。小刻み歩行の定義として、『歩幅が短縮し歩行率が速い』となっている。小刻み歩行を改善するためには、第一点は短縮した歩幅を伸ばすことであり(以下、歩幅増強戦略)、二点目は速い歩行率を減少させること(以下、歩行率増強戦略)の二つである。歩幅の調整をする歩幅増強戦略のほうが歩行率増強戦略に比べ優れていることが明らかになっている。そのため、パーキンソン病患者の小刻み歩行を改善するためには、視覚・聴覚的な外的刺激を利用し、足を前方に大きく出させるのがキーポイントであるといえる。

 

●パーキンソン病患者のリスク管理

a.wearing-offによる日間変動

wearing-off変動とはL-dopa一回投薬後の薬効の持続時間が徐々に短くなり、一般的には4時間以内に短縮することをいう。Wearing-offの頻度は投薬後5年で20~25%、10年で40~50%と延長がみられる。患者は

wearing-off期間内において、運動変動と同様な知覚異常、精神異常、自律神経系の異常を体験している。off期間においては、疼痛、頻脈、発汗、便秘、おくび、息切れなどの症状を抱えている。息切れを訴える場合には、その原因がwearing-offであることが多い。

b.on-offによる日内変動

on-off変動とは、服薬の誰移民偽やその血中濃度に関係なく、スイッチをoffにした如く、突然、予期せず障害程度が変化することをいう。例えば、歩行中に患者が意図することなく突然歩行が停止となる変化がこれに当てはまる。歩行辞に突然出現するon-offの存在は患者自身が認識してるため、歩行時に突然出現する恐怖心から外出を控え、結果的に生活範囲が制限されることが問題となっている。

Off時に出現する症状として、運動では再発するパーキンソニズム、ジストニー、感覚では感覚異常、痛み、精神では頻脈、発汗、便秘、おくび、息切れ、精神ではパニック、うつ、妄想、幻覚が出現する。

 

●大脳基底核と随意運動

随意運動での大脳基底核の役割は、随意運動のプログラミングをする部位といわれていたが、基底核内での詳細な機能回路網は明らかではなかった。

最近、大脳皮質と大脳基底核との間の神経回路には無動の病態を説明するシェーマが提唱されている。黒質緻密部から被殻(線状体)へはドーパミンを神経伝達物質とするニューロンがあり、このニューロンの変性脱落がパーキンソン病の中核病変である。この回路網では線状体から2系統の出力が考えられている。直接淡蒼球内節あるいは黒質網様部に投射する系(直接路)と、淡蒼球外節と視床下核を経て淡蒼球内節あるいは黒質網様体部に投射する系(間接路)がある。黒質緻密部からドーパミンニューロンは、線状体でこの直接路へは興奮性に、間接路へは抑制性に働いている。淡蒼球内節吻側より視床VL核を経て大脳皮質を興奮させる。淡蒼球内節尾側より脳幹橋脚被蓋核を抑制している。線状体でドーパミンニューロンの作用が弱いと淡蒼球内節より抑制ニューロンの働きは強まり、視床VL核を抑制し、立位・歩行での姿勢反射障害を引き起こすと考えられている。

 

●パーキンソン病の高次脳機能障害

パーキンソン病の痴呆の発生頻度は14~40%であり、正常に比して3~3.75 倍の高い発生頻度である。痴呆の発現は加齢に伴い増加する。高齢者のパーキンソン病に多く、罹患期間が長いと痴呆を示す率は高い。振戦で発症するものは認知障害を呈しにくく、症状が片側にとどまるものは認知障害を起こしにくい。

パーキンソニズムである進行性核上性麻痺の痴呆は皮質下痴呆であり、症例の約6割に認められる。皮質性痴呆の代表疾患はアルツハイマー病である。パーキンソン病の痴呆の主体は皮質下性痴呆である。パーキンソン病では皮質下性痴呆が30.9%で認められ、無気力、抑うつ、集中力低下、精神緩慢、失念などを呈する。皮質性痴呆は15.3%で記銘力低下、健忘が主体である。

ある行為を起こした結果、うまくいったと感じたり、以前より改善されたと感じるときにその行為が生じやすくなり、うまくいかなかったり、痛い目にあうとその行為は生じ難くなる。これは『強化』といわれるが、この強化を介する学習には大脳基底核のように黒質線状体ドーパミンニューロンが重要である。黒質線状体ニューロンの障害により、認知機能や動機づけの過程の障害が生ずる。とくに強化学習での動機づけの過程に障害を生ずる。

 

●パーキンソン病と骨折

パーキンソン病では時に骨折を見る。骨折は体を動かさないことによる骨や筋の廃用性症候群によって起こりやすい。しかし、一次的障害の姿勢反射障害に伴う転倒によるもの、症状の変動時に伴う転倒によるものがある。ヤールの分類では、Ⅲ~Ⅳが多い。

 

●症状の変動

パーキンソン病では、症状がきわめてよく変動する症例がある。症状の変動には様々な要因がある。疲労、睡眠、抗パーキンソン剤、on-off現象、wearing-off症状、食事内容、消化管機能、うつ状態、ストレス、悪性症候群である。

睡眠によりパーキンソン症状の改善が著明なのは、若年性パーキンソニズムや瀬川病の特徴であり、睡眠直後は動作が正常になったように感じる。特発性パーキンソン病でもその程度は軽いが観察される。また疲労しやすく、長い距離を歩くと歩行はよりパーキン様となり、小股歩きで体がより前屈し、早足となり、止まることができなきなり、転倒を余儀なくするか、何かにつかまることになる。

抗パーキンソン剤で症状が改善するのはパーキンソン病や若年性パーキンソニズムで著明であるが、症候性パーキンソニズムでは一般に著明ではない。パーキンソン病で抗パーキンソン病薬が効きすぎると、無動の代わりに舞踏病やジスキネジーが出現し過動の状態になることがある。また、そのときに幻肢などの幻覚を認めることがある。

パーキンソン病が長期になると抗パーキンソン剤を吸収する消化管機能も変化する可能性がある。また高蛋白質の食事ではL-dopaが吸収されるときに競合を起こすといわれている。そのためそのような食事をとったときに症状が悪化あるいは改善が見られないことがある。逆に、このことを利用して昼間には低蛋白食をとってL-dopa剤の効果を上げようと試みられている。

L-dopa剤を急にやめたり、感染が起こったりしてL-dopa剤の吸収が悪くなったり、あるいは抗精神病薬を服用したりすると、急に固縮が強まり発熱を認め、血中CK値が上昇する悪性症候群を呈することがある。

パーキンソン病は精神的にうつ傾向を呈しているが、うつ傾向が強まると身体活動は低下し、症状の悪化傾向を認める。精神的に励まし、元気づけ、目標を持たす心理療法も、症状を最善に保つには大切な要素である。

 

●パーキンソン病の障害

パーキンソン病には疾病自体により派生する障害(一次障害)と廃用症候群などの二次的に派生する障害がある。特に本症では意識して体を動かさないと動くからだの範囲が狭くなるため二次的障害の廃用症候群を生じやすい。

パーキンソン病の一次的障害には、無動、寡動、姿勢異常および姿勢反射障害に関与する面が大きい。四肢の運動に関与する主要障害因子として、

a.運動開始時のすくみ足現象、b.運動の乏しさ、c.運動の切り替え困難

d.運動速度の遅延、e.回旋運動障害、f.共同運動の減退

g.左右非対称運動(交互運動)の障害、h.二動作同時遂行の困難

i.加速現象、j.姿勢反射障害、k.易疲労性などがある。

これらには長期抗パーキンソン病での効果に乏しいことが多いこれらの一次的障害はADLの障害を引き起こす。ADLの障害では、

a.食事動作障害、摂食障害、b.洗面動作障害、c.書字障害d.衣服の着脱障害、e.寝返り・起き上がり障害、f.言語・コミュニケーション障、g.歩行障害をみる。歩行障害では、a.前屈姿勢歩行、b.緩徐歩行、c.転倒傾向、d.小股歩行、e.すくみ足現象、f.突進現象、g.加速現象、h.方向転換障害などの歩行時の障害が原因となる。

また体力的プロフィールからみると、筋力は比較的維持されているが、瞬発力、敏捷性、柔軟性、平行性、全身持久力はかなり低下している。

さらに社会生活を変化させ、a.生活での活動性の低下、b.職業からの脱落、c.知人や家族との交流の低下、d.腎精の目標の喪失などを認める

二次的障害としては次のものがあげられる。

a.廃用症候群:無動による能動的関節可動域の現象、筋力低下、ベッド上無動による褥創、長期屈曲姿勢による用痛、膝関節痛、心肺機能低下と予備能の喪失

b.精神症状:うつ状態、不安症、緊張性頭痛

c.自律神経障害に伴う尿路感染症

これらのうちいくつかは運動療法などで、予防したり、軽減できる。

 

●パーキンソン病の障害への対策

(1)運動療法の目的

医学での運動療法の主な目的は、予防医学である。予防を第一次予防(疾患の発生の予防)、第二次予防(疾患の発生早期の予防)、第三次予防(障害の発生予防)と分けるならば、パーキンソン病は第三次予防のである。パーキンソン病の運動療法では、機能訓練により現在の能力を最大限に引き出し、できるだけ長期にわたって運動機能を維持し、心理面やADL指導にも配慮して、二次的障害の予防により、少しでも長く有意義な生活を続けさせることを主眼とする。

1)関節可動域の維持・増大

拘縮・変形は薬物療法による固縮が減少すると一部抑制されるが、他動的伸張を関節・筋に対して併用することが必要である。特有の全身屈筋肢位には各関節の伸張訓練が必要である。

2)筋力強化

低運動状態は相対的な筋力低下を招くし、特有の姿勢は筋力のバランスを崩す結果となる。安定した歩行を獲得するために 頚部・体幹を中心に抗重力伸展活動を高めることは必要である。また肩こりや腰痛、膝の痛みの予防にも効果がある。

3)全身のリラクセーション

振戦やすくみ足が精神的緊張や不安で増強されることはよく知られているので、体の緊張を緩和させることを知っていると、病状が進行したときに役立つ。方法は、随意的に筋に力を入れ緊張させてから、急に力を抜いて弛緩状態を作る。訓練の前後に行うのがよい。

4)呼吸訓練

生命予後はその合併症により決定されるが、呼吸器感染症は死因の中で重要な位置を占める。早期より呼吸機能を維持するため胸郭の可動性を維持してり、肩関節・脊柱の関節可動域訓練や呼吸訓練を行う。呼吸訓練は、全身状態の維持のみでなく言葉の発声にも大きな関係がある

5)頚部・体幹の回旋の向上

パーキンソン病では早くから頚部・体幹の回旋が減少するので、それらの回旋運動の改善と向上がADL上においても重要である。

6)体重シフトおよびバランスの向上

姿勢反射障害のための訓練であり、突進現象の治療に有効とされる。

7)歩様の改善

歩行のポイントになるのは、歩行開始、回旋、歩行停止、上肢の振り、ストライドの長さの改善である。

8)ADL指導

指導の重点を安全性・確実性におき速度は考慮しない。とくにマット動作(寝返り・四つ這い・膝立ち・起き上がりなど)を訓練する。

※ヤールの分類ではⅠ~Ⅱ度は訓練を自主的に行うことができ、Ⅲ~Ⅳ度は全ての訓練を行い、Ⅴ度では関節可動域・ADL指導が主となる。

 

(2)運動療法の実際

パーキンソン病での運動は、a.パーキンソン病の独自の運動障害による廃用症候群の予防、b.心肺機能での予備機能の低下を予防、c.神経疾患に伴う合併症の予防などに役立つといわれている。最も強調されることは、二次的障害を予防することである。一次的障害は、疾患が進行性に変化する限り予防は不可能であるかもしれないが、それより派生する二次的障害はかなりの程度に発生予防でき、また軽減することが可能である。疾患を持ちながら、いかに障害を少なく生きるか、あるいは障害を持ちながらいかに有意義に生きるかの医学的対策である。廃用症候群は使わないために機能が減じるあるいは失い、障害を発生あるいは強める症候の一群である。全関節可動域に体を動かさないで起こる可動域の減少、筋力を使わない為の筋力低下、長時間寝ていることで起こる褥創、深呼吸をしなく、浅い呼吸の為心肺機能の低下、心臓に負担をかけないことによる新機能の低下などを認める。2週間体位変換や関節可動域訓練をしないと能動的関節可動域の制限を起こすといわれている。関節可動域訓練は1日2~3回程度短時間行えば十分である。運動をしていないと最大運動時の心肺の仕事量と安静時の仕事量の差がなくなる。これは心肺機能の予備力がなくなるからである。そのため少し体を動かしても苦しくなる。

いたずらに長く尿道カテーテルを入れておくと膀胱機能の廃用症候群を引き起こす。更に重要なことは四肢を動かしていないと脳の機能低下を引き起こすと思われる十分な根拠がある。脳はあることに使えばその機能が付加されたり維持される。脳には適当に使えば学習機能の働きがあり、使わなければ他の廃用症候群と同様に脳機能は低下するのである。

運動器も使いすぎるとときに過用症候群症候群を引き起こす。最もよく知られているのが過度に筋を使うことにより異常に脱力を認める。この現象はギランバレー症候群やポリオ後遺症などの抹消神経疾患ではよく知られているが、中枢性疾患でも起こりうることである。過用症候群症候群として知られているものに、腱や靭帯が過度に伸ばされ障害が引き起こされるのも含まれる。これはパーキンソン病の運動療法をするときにも中医が必要である。

 

●パーキンソン病のYahrの分類のステージ別リハビリテーション

(1)Yahrの重症度分類ステージⅠ・Ⅱ

職業を有するものは可能な範囲で職業を継続したほうがよい。日常生活では出来るだけ活動的に維持するようにする。家庭にいる者には簡単なスポーツ、布団の上げ下ろし、買い物、草むしり、庭木の手入れなどの適当なホームプログラムを作り支援する。

パーキンソン病では訓練室以外の室内や戸外での歩行や運動も進められる。高齢障害者では50~80%VO2maxを一応の目安として、自覚的にややきついと感じる運動より少し軽い運動である。まず一日最低30~45分の軽く息切れする散歩がすすめられる。翌日に疲れが残るかなり残る運動、めまい、ふらつきの出現、前胸部の疼痛、著明な呼吸困難など運動の限界の目安となる。

運動訓練は遊びなどを取り入れて、楽しみながらできるものはモチベーションを高める。患者および家族によるグループ訓練、家庭でのパーキンソン体操なども行われる。

(2)Yahrの重症度分類ステージⅢ・Ⅳ

ステージⅠ・Ⅱで述べたことで可能なことは行う。日常生活では、日課を定め、リズムある規則正しい生活をするように仕向ける。家庭内で小さいことでもいいから役割分担を与え、満足感や自信を与える。日常生活動作についてはできるだけ介助をさけ、自立を保たせる

運動療法は、随意的可動域が狭くならないように積極的に四肢の可動域訓練、体幹の伸展、回旋運動、深呼吸運動、バランス訓練、歩行訓練を行う。廃用性に筋力低下を認められれば積極的な運動療法をすすめる。書字や発声練習も必要なときがある。訓練の形態は、日課を決めた家庭での訓練が基本である。ときにグループ訓練、通常の訓練室での個人訓練がなされ、ホームプログラムが指導される。歩行障害は多彩である。前屈が強まり加速現象が見られはじめた時に、いったん止まり歩行のリセットを行う。自分のリズムより他からのリズムを与えると効果的である。静止肢位より足を前方に出そうとしても出ないのはすくみ足現象といわれる。これは目の前の障害物や床の線、階段などの視覚的刺激、他人の掛け声やメトロノームの音などの聴覚的刺激により突然消失する。これは筋力や巧緻性の問題ではなく、歩行を開始する発動指令の欠如と考えられる。

自律神経障害に伴う排尿障害、尿路感染症には早期の評価と対処が行われる。長期屈曲肢位により引き起こされる腰痛や膝関節痛に対しては、腰痛体操や大腿四頭筋のマッスルセッティングがすすめられるし、坂道歩行を避けると慢性疼痛が著減することがある。本症の回復が著明でないことに伴ううつ症状、緊張性頭痛には運動療法とともに生きがい獲得などの心理面に配慮した指導を併用する。杖の使用や車を押して歩行することも転倒予防やmobilizationによい。

(3)Yahrの重症度分類ステージⅤ

日常生活では全く介助を要し、車椅子にすわりきりあるいはベッドに寝たきりになる。しかし車椅子での外出の機会を与え、わずかな残存能力を使用させようにすると全介助での完全な寝たきりを防止できることがある。褥創、尿路感染症、呼吸器疾患には速やかに対処する、他動的関節可動域訓練を要することも多い。

 

●生活指導の留意点

(1)疾患は慢性進行性で、老化現象も加わり徐々にまたは急激に身体、運動機能が低下する。

(2)体調に変化が生じやすく日差変動、増悪、緩解がみられる。

(3)治療初期には薬物療法が主となり、身体機能が低下した後にリハビリテーションが行われる場合が多く見られる。

(4)薬物療法により程度の差はあれ、良好な変化がみられるため、かえって薬物に期待してしまう場合がある。

(5)薬物療法の長期使用に伴う効果減弱、副作用として、すくみ現象、不随意運動、精神症状がみられる。

(6)パーキンソン病には、健側が存在しない。四肢体幹の障害に構音・嚥下障害も加わる全身性の障害である。早期より起居動作困難がみられるが、歩行による移動は長期間可能な場合が多い。

(7)障害は、転倒、合併症による数日の安静臥床により、Stageを飛び越え、寝たきり状態に陥る。

(8)患者のおかれている環境の変化、介助者の介護法の適・不適が障害の進行度に応じて影響しやすい。

(9)老人に多い疾患ではあるが、若年層にもみられる。そのため職業面へのアプローチも含め幅広く長期にわたる指導が必要となる。

 

パーキンソン病と脳血管性パーキンソニズムの鑑別

パーキンソン病 脳血管性パーキンソニズム
発症および経過 緩徐進行性 階段状進行
安静時振戦 片側発症
筋固縮 片側発症 両側発症
寡動 早期より認める 多少進行してから出現
表情 仮面様顔貌 表情も少ないが感情失禁も伴いがち
前傾姿勢 ±
歩行 小刻み歩行 歩行失行なども伴うことがある
仮性球麻痺 なし 多い
腱反射 正常ないしやや亢進 亢進していることが多い
知能低下 多い、痴呆へ移行しやすい あっても軽度
危険因子 ないことも多い 糖尿病、高血圧、高脂血症など多彩
薬剤の効果 L―dopaが著効することが多い 薬剤に反応しないことも多い
画像所見 脳梗塞は認めることもある 多発性ラクナ脳梗塞など多発病巣

 

●リハビリテーション

緩徐進行性の疾患であるため、現在の能力の維持と廃用症候群などの二次的障害の排除が目標となる。実際には、医学的管理(抗パーキンソン剤の調整、自律神経障害の管理)運動機能維持、日常生活の活動性の維持、抑うつや不安も心理的支持、社会資源の活用を含めた社会・経済的問題の対処などを総合的に行う必要がある。

伸張訓練は、関節拘縮の予防・改善し筋緊張を緩和する。種々の治療体操はあるが特に大きな動作を伴った頚・体幹の回旋運動や伸筋の強化が有効であり、四肢・体幹の全可動域をゆっくりと屈伸、回旋する。ボールを投げたり蹴ったりなど明確な視覚目標があるものや、リズミカルな動きのある課題も良い。姿勢反射障害に対しては、立ち直り反射、バランス、防御反応などを引き出す運動を反復させ、姿勢保持・変換の訓練を行う。四つ這いでの重心移動や、両上肢と下肢による3点支持などを行わせる。また臥位→坐位→膝立ち→立位の連続的姿勢変換を反復訓練する。無理や疲労がなく、継続して行えるような、最適な運動・体操を個々の患者にホームプログラムをして与え、外来ごとにその経過を評価チェックする。

その他に、精神・心理的アプローチも大切であり、特有のうつ的・依存的傾向に対して医療にあたるのは十分な配慮が必要である。それと同時に家族やその周辺の人たちに対しても患者への接し方について教育し、その協力を求めることも大切である。

また振戦のためにエネルギー消費が多いにもかかわらず、うつ的傾向は食欲を減退させるし、さらに手指の振戦のため食事がとりにくいなどの理由により、栄養状態が不良になることが多いので、十分なケアが必要である。

食事の影響や、非活動性などは一般的に便秘状態を生じやすく、嚥下障害のため流涎がみられるようになると、食物残渣が口腔内に常に存在し、肺炎などの原因となることもあるので、注意が必要である。

ADL 問題点 対応策
食事 体幹が側方へ倒れる摂食嚥下困難長時間口腔内に食物が残るおかずを取ると茶碗を落とす魚、麺類が食べにくい 坐位姿勢の評価といすの工夫摂食嚥下機能評価・訓練、嚥下訓練、舌、下顎頸部の可動域訓練二動作同時遂行障害の評価、一動作ずつにわける指導、自助具、福祉用具の検討
整容 歯磨き動作困難つめきり動作困難洗面動作困難 電動歯ブラシなどの利用自助具の利用タオルなどでの拭き取りで代用
更衣 ボタン動作困難下着の着脱困難ズボンの上げ下ろし困難 大きめのボタンを使用マジックテープにする。ゆったりとした下着に変更、裾が細くないものにする
排泄 トイレの出入り口でのすくみ足ドアの開け閉めの際の不安定トイレ内での立ち上がり、方向転換障害便秘 すくみ足の対処法指導床に目印、トイレ出入り口改善、ドアの開閉時の位置指導、ドア、手すりの改造立ち上がり困難にする
入浴 浴槽の出入り困難浴槽内転倒、溺水

 

●症状別リハビリテーション

(1)関節拘縮:無動・筋固縮による関節の固さに対して、関節を自動的または他動的に動かす。自動運動としてパーキンソン体操、他動運動としてストレッチを行う。進行すると呼吸機能の低下をきたすため、胸郭の他動的関節運動を行う。

(2)筋力低下:活動性の低下により筋力・耐久力の低下を認める。抗重力筋を中心に四肢・体幹の筋力強化訓練、エルゴメータやトレッドミルを利用した耐久力増強訓練を行う。呼吸筋の筋力強化も行う。

(3)歩行障害:すくみ足、小刻み歩行、加速歩行、上肢の共同運動の消失など認める。すくみ足に対しては床に適当な間隔の目印をつけて目印を跨いで歩く練習をする。小刻み歩行に対しては、リズムを取って歩かせる。歩容の改善のため、歩行中両腕を大きく振り足を高く上げるよう指導する。

(4)姿勢反射障害:立位時の前屈・前傾姿勢、方向転換時のバランス障害に対し、姿勢矯正訓練、体重移動によるバランス訓練を行う。

(5)日常生活動作障害:日常生活の障害に応じて行う。書字訓練などの手指の巧緻性訓練、寝返り・四つ這い・起き上がりなどのマット運動を行う。

(6)言語障害:小声で単調な話し方に対し、口を大きく開け、一言一言区切ってゆっくり話すように指導する。活動度の低下により社会生活は制限されるため、可能な限り会話をする機会を増やすようにする。

(7)嚥下障害:固いものや水分の多い食事を避け、刻み食、とろみ食など食べ物の工夫をするとともに、誤嚥しにくい姿勢をとらせるようにする。

 

●外科治療

パーキンソン病に対する外科治療は機能外科手術であり,パーキンソン病の症状改善によるADLやQOLの改善を目的とする。外科治療の歴史は1900年前半にさかのぼる。尾状核頭部と内包破壊による振戦治療やヒトに対する定位脳手術装置の開発を経て、今日の定位脳手術の基礎が1950年前後に築かれた。1990年始め頃までに行われていた定位脳手術の標的部位は視床VL核・Vim核が主体であったが、薬物の長期治療による副作用発現やMPTPによるパーキンソン病モデルによる大脳基底核機能の基礎研究を基に淡蒼球内節と視床下核の新たな標的神経核が加わった。視床VL核・Vim核、淡蒼球内節,視床下核の三つの標的神経核に対して温熱凝固(破壊術)、あるいは電極埋め込み(脳深部刺激療法)を行う。いずれも神経核を同定し、破壊や刺激の部位を正確に決定する手術を行うことが望まれる。

刺激療法は破壊術に比べて、可逆的で、侵襲性・副作用が低く、かつ破壊と同じ臨床効果を呈するが、刺激の作用機序についてはまだ十分に解明されていない。
破壊術と刺激療法の長所・短所を述べる。破壊術は機器の破損や電池取り替えなどの煩雑さがない反面、破壊巣が正確な部位に作られない場合には臨床効果の減弱やばらつき、周辺脳構造に破壊の影響が及んだ場合には周辺構造(内包,視索,視床後外側腹側核など)の障害による副次的な症状が出現しうる。刺激療法の利点として(1)reversibility:最小限の破壊、(2)adaptability:効果の増大や副作用の減弱のために刺激の電極やパラメーターを変更できる。(3)永久的な危険をより少なくして両側手術を行うことができる。不利な点として機器の価格,異物を埋め込む、バッテリーの取り替え(刺激条件で異なるが最低4~5年で交換する必要がある)、刺激の条件を最適にするために要する時間と努力,機器の破損や故障,埋め込んだ機器による感染や炎症反応,外部磁場からの機器への影響があげられる。刺激療法は2000年4月に保険適応が認可されたため、特定疾病に認可された患者における自己負担は破壊術も刺激術も同じである。

パーキンソン病外科治療の適応を決める際に、各患者の経過・予後の推測、症状の理解、薬物治療による可能性と限界について熟慮することが重要である。外科治療の主たる適応症状は振戦、筋固縮、wearing off、L-ドーパ誘発性不随意運動(ジスキネジア・ジストニアなど)、無動/寡動などであるが、刺激による治療法がすくみ歩行や姿勢反射障害などに対して有効であるという報告がある。しかし痴呆や嚥下障害、言語障害に対する効果は未確定、あるいは悪化する可能性が高い。自律神経障害や精神症状、睡眠障害などに対する効果も明らかではない。厚生省班会議「パーキンソン病に対する脳外科的手術療法の適応基準」から適応基準と適応除外基準を抜粋する。適応基準はL-ドーパに対する効果がある、薬物治療が十分に行われたこと、ADLに障害をきたす症状があること、知能が正常であること、著明な脳萎縮がないこと、患者本人の同意がえられることなど、適応除外基準は重篤な痴呆や著しい精神症状を呈する場合、重篤な全身疾患がある場合など、両側視床下核刺激療法において高齢者で前頭葉機能障害が出現したと報告されているが、適応に対する年齢の基準はなく、前記の適応基準と各患者の状況を加味して適応を決めることが望ましい。

 

定位視床Vim核破壊術(Thalamotomy)

主な適応症状は薬剤抵抗性の振戦である。振戦消失の効果や歯車現象を含む筋固縮の軽減効果は明らかで、筋固縮による二次的な無動に対しても改善効果がある。Vim核の前方に位置するVL核(VopまたはVoa)の破壊は筋固縮やL-ドーパ誘発性ジスキネジアの軽減に有効である。短期的合併症としては対側肢の脱力や失調、知覚異常、錯乱、失語、構音障害など、永続的合併症として失語症,構音障害、失行、無為状態などの出現が報告されている。両側手術は言語障害や嚥下障害が副作用として出現する確立が高く、すすめられない。

定位淡蒼球内節破壊術(Pallidotomy)

主な適応症状はジスキネジア、筋固縮、振戦である。特にジスキネジアをはじめとするL-ドーパ誘発性不随意運動の軽減消失に対する効果が優れ、一側手術でも両側性に軽減効果が出現する。無動やmotor fluctuationの軽減に対する効果は術後1~2年で減弱する。姿勢反射障害、すくみ歩行に対する効果は少ない。両側手術で嚥下障害や構音障害が出現する可能性があり、破壊部位によっては知的機能の低下もありうる。

視床Vim核刺激

視床Vim核破壊術と同様に薬剤抵抗性の振戦が主な適応症状である。筋固縮や無動などの他のパーキンソン症状に対する効果は少ないと報告されている。破壊に比較して副作用が少ない。刺激をonにすることでしびれ感が出現することがあるが、刺激条件をかえることで軽減しうる。両側破壊術においては言語障害や嚥下障害などの出現が懸念されるが、両側刺激ではそれらの副作用が出現しにくい。

淡蒼球内節刺激

定位淡蒼球内節破壊術と同じ効果を示す.即ち,L-ドーパ誘発性ジスキネジアの軽減効果に優れている。視床下核刺激が淡蒼球内節刺激と同等、あるいはそれ以上の効果を有するとの報告が多い、また淡蒼球内節に機能分化があり。刺激部位によって臨床効果に差異が生ずるとの報告もあり。淡蒼球内節刺激よりも視床下核刺激が選択されることが多い。

視床下核刺激

視床下核は血管性病変などでバリズムを惹起することが知られ、殆どの場合、破壊でなく刺激を行う。パーキンソン病症状全般に対する効果が報告され特にoff時の改善が著しい。一側または、両側刺激を問わずUPDRSの改善がみられるが、両側刺激の改善率が有意に高い。刺激効果は、術前と比較し、UPDRSの体幹スコア(四肢の寡動,固縮,振戦以外の、言語、嚥下、歩行、姿勢、姿勢安定性など、顔面、頸部,体幹の運動スコア)の改善度が高い。特にUPDRSの運動スコアでは姿勢の異常、姿勢の安定性、UPDRSのADLスコアでは、寝返り、すくみ足の有意な改善が報告されている。本治療法は淡蒼球内節刺激と異なり、L-ドーパの減量効果にすぐれており、L-ドーパの減量によってジスキネジアが軽減する間接的効果と、淡蒼球内節刺激による軽減効果に劣るが,視床下核刺激による直接的なジスキネジア軽減効果もある。

(~∇~;)参考文献

医療学習レポート.パーキンソン病と解剖生理からリハビリ


スポンサード・リンク