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(*^。^*)ギラン・バレー症候群と運動療法の話


(^o^)題名:ギラン・バレー症候群と運動療法の話

1.はじめに

ギラン・バレー症候群(以下、GBS)は、上気道炎や急性腸炎などの先行感染の後、急性発症の弛緩性運動麻痺、深部腱反射の消失、髄液の蛋白細胞解離を主徴とする急性炎症性脱髄性多発性ニューロパシーと定義される。

発症率は1~1.5人/10万人で、全ての年齢層に起こり、男性にやや多いとされる。

一般には2~4週間で落ち着き(症状が完成し)、予後良好(しばらくプラトーの状態が続き、3ヶ月から1年で徐々に回復する)とされるが、多少なりとも筋力低下を残す症例も多く、また重症例では全身の麻痺や呼吸不全を呈し死に至る例もある。

 

2.病形分類

1)急性脱髄型

比較的予後良好で、病理学的に脱髄が中心である。電気生理学的には、髄鞘破壊によるランビエ絞輪部の跳躍伝導の障害による運動神経伝達速度(以下MCV)の低下がみられる。

2)急性軸索型

予後不良で、軸索障害が中心である。刺激が伝導されず、興奮しない筋線維があるため、MCV検査にてM波の振幅の低下がみられる。

先行感染には急性腸炎(C.jejuni腸炎)が多いとされる。感覚障害を認めず、運動神経の脱髄所見に乏しく、軸索変性による筋力低下や筋萎縮が遷 延するのを特徴とする。

3)ミラー・フィッシャー症候群

GBSの亜型と考えられる。急激な発症と進行をみるが予後良好で、全外眼筋麻痺、運動失調、深部知覚消失を示すが、筋力の弱化はみられない。

 

3.診断

診断基準、重症度分類、予後予測等については、後に掲げる。

 

4.内科的治療

1)血漿交換療法

早期(15日未満)の血漿交換(piasma exchange:PE)は、急性期治療の第1選択とされ、病状の進展や後遺症の軽減、自律神経症状などの合併症につながるとされる。

2)免疫グロブリン大量療法

免疫グロブリンによる自己抗体の中和、または新たな自己抗体の新生を抑制するとされ、血漿交換療法と同様の効果があるとされている。

費用がかかり、また保険適用ではない。

 

5.臨床症状

1)運動麻痺は弛緩性麻痺(脱力)が主症状で、体幹筋と四肢では中枢部より末梢部が侵される。左右対称に起こる。脱力は通常四肢遠位部、特に足先、手指に始まり次第に上行する。上肢では手内筋、下肢では前脛骨筋に麻痺が強い。

2)感覚障害は深部感覚(位置覚、振動覚)が侵  されることが多い。表在感覚(触覚、温痛覚)は比較的軽度であるが、患者はだるさやしびれなどを伴った痛みを訴える場合が多い。

痛みの種類には、(1)感覚障害/異常感覚(2)腰背部痛/神経根痛(3)髄膜炎(4)筋肉痛(5)関節痛(6)腹痛(内臓痛)がある。

3)脳神経症状では、顔面神経麻痺の頻度が多く (約半数)、また聴神経・視神経障害、嚥下障害、構音障害、外眼筋麻痺を伴うことがある。

4)自律神経障害では、洞性頻脈(安静時心拍数100/min以上)、不整脈、起立性低血圧、膀胱括約筋障害、体温調節障害などを呈する。通常でも全身状態の管理、評価や治療行為を困難し、更に重症例では死に至る場合がある。

5)呼吸障害では、横隔神経麻痺、呼吸筋麻痺、無気肺などがあり、重症例では死に至る場合がある。

6)反射では、深部腱反射の消失・減弱があり、病的反射は出ない。

7)筋電図所見では、脱神経所見、MCVの低下がみられる。

 

6.身体管理

GBSの主な死因は、心停止、肺感染症、肺塞栓等がある為、急性期から以下の管理が必要となる。

1)呼吸管理

無気肺や感染に注意を要し、麻痺が進行すると 換気能力の低下により肺活量の維持ができず、人工呼吸管理が必要となる。

長期臥床や高齢者には、肺塞栓への注意が必要であり、下肢の受動運動や体位変換、弾力ストッキング等の使用で、下肢の静脈血栓の形成を防止する。

2)循環管理

自律神経障害の合併により、不整脈、頻脈、徐 脈、低血圧、高血圧を伴い、心停止をきたす可能性があるため、循環動態の監視が必要である。

3)全身管理

褥瘡の形成や尿路感染、そして肺炎などの肺合 併症の管理が必要である。また意識清明のまま運 動麻痺が進行するため心理的ケアも重要である。

 

【評価項目】

・ROM

・MMT

・reflex

・sensory

・measurement

・pain

・バランス

・動作分析(基本動作能力)

・ADL

・その他

 

1.ROM

低運動性の影響による関節拘縮、筋の短縮に留意する。筋力とも関係があるため、自動・他動それぞれの場合の可動域の差を計測する。

2.MMT

体幹筋、四肢筋の他、手内筋や顔面神経麻痺の影響による表情筋に留意する。また進行の程度や四肢・体幹の末梢・中枢の各部の筋力の差に留意する。

3.reflex

深部腱反射は消失するが病的反射は出ないので、他の疾患との区別にも留意する。

4.sensory

表在感覚は、深部感覚と比較して軽度とされるがしびれや痛みを伴う場合があることに留意する。

(臨床症状の項参照)

5.measurement

筋萎縮による四肢周径の変化の他、心肺機能の低下に関する胸囲(胸郭拡張差・表5)や腹位にも留意する。

6.pain

しびれや痛みを伴う場合があるので、安静時痛、運動痛、圧痛の部位と程度に留意する。

自覚症状の詳細な問診と記録を行い、VASも併用する。

7.バランス

Bobathのバランス反応テスト(応用)

(治療プログラムの項参照)

8.動作分析

寝返り、坐位、起きあがり、移動、移乗、立位、立ち上がり、歩行について評価する。

9.ADL

起居、移動のほかセルフケアについても調べる。

・厚生省 筋・神経疾患リハビリテーション調査研究班の

テスト表

・Barthel index

10.その他(呼吸・電気生理学的検査・自律神経)

予後の予測や呼吸・循環の管理に重要である。

 

【予想される問題点】

Impairment level

#1 全身の筋萎縮・筋力低下

(一般には四肢体幹の中枢部優位の弛緩性麻痺、上肢では手内筋、下肢では前脛骨筋に強い。)

#2 筋持久力の低下

#3 関節拘縮によるROMの低下

#4 筋の短縮によるROMの低下

#5 感覚障害(深部覚>表在覚)

#6 疼痛(しびれ、安静時痛、圧痛、運動痛)

#7 脳神経障害(顔面神経麻痺、嚥下障害等)

#8 バランス能力の低下

#9 呼吸障害(横隔膜、その他の呼吸筋麻痺)

#10 排尿障害

#11 自律神経障害による心機能障害

#12 自律神経障害による起立性低血圧

#13 自律神経障害による体温調節障害

 

Disability level

#14 基本動作能力の低下

#15 ADLの全般的低下

 

Handicap level

#16 家庭復帰困難

#17 職場復帰困難

 

その他

#18 心理的不安・恐怖感

(意識清明のまま弛緩性麻痺が進行するため)

 

【ゴール設定】

Short term goal

四肢体幹筋力の回復(向上)に伴う屋内歩行の

自立及び院内でのADL自立

Long term goal

屋外(応用)歩行の自立、家庭復帰及び職場復帰

【治療プログラム】

1.急性期

#9に対して

呼吸器の理学療法

・口すぼめ呼吸

口すぼめにより、上昇した気道内圧が気道虚脱を抑制し、多量の呼気を可能にする。

・腹式呼吸運動

背臥位 → 坐位

・体位排痰法

重症例(人工呼吸器管理)に対するもの

・胸郭のモビライゼーション(愛護的)

胸郭のROM、呼吸筋の柔軟性の維持

※肋骨捻転法

(呼気時に肋骨を捻転し、肋間に剪断力を加え、内外肋間筋のストレッチと肋椎関節の可動性を増大させる。下部→上部)

・胸郭のストレッチ(愛護的)

肋骨の捻転については、胸郭のモビライゼーションと同じ。

#3,4に対して

ROM ex.

splintによる良肢位保持

・手関節 ~ やや背屈・対立位

・足関節 ~ 90度

#5に対して

PNF(愛護的)

#1,2及び廃用の予防に対して

筋力維持ex.

自動介助→無負荷→低負荷(徒手)→負荷増加

#6に対して

低周波療法

水治(温熱併用)療法

ハバードタンクは胸部を圧迫するので避け、渦流浴を使用する。

同時に浮力を利用して自動運動

(手指・手関節・足関節)も行う。

 

2.回復期~慢性期

#9に対して

腹式呼吸運動(砂嚢を用いたもの)

口すぼめ呼吸運動(風車や蝋燭を用いたもの)

#5に対して

PNF

#1,2,5に対して

筋力増強ex.(徒手抵抗、重錘、タオルギャザー)

(持久力向上→筋力増強・リスク管理の項参照)

・SLR(下腿遠位部に重錘)

・徒手による抵抗運動(手内筋)

・徒手による抵抗運動(前脛骨筋)

・タオルギャザーもしくは新聞紙を破る(足趾)

・PNF(特殊テクニック)

スローリバーサル  スローリバーサルホールド

リズミック・スタビリゼーション

#5,8,12に対して

バランスex.

・傾斜台を利用したバランス、体幹筋運動

・マット運動

Bobathのバランス反応テスト

(本来はテストであるが、テスト肢位はバランスex.に応用できる。よってバランス能力の回復を観察しながら同時に治療を行う。なお、Bobathの理論とは無関係である。)

#14に対して

基本動作練習(必要に応じてLLBやSLB)

①寝返り ②坐位 ③起きあがり ④移動、移乗 ⑤立位、立ち上がり ⑥歩行

・平行棒内(踵を床につける)

・平行棒外(ロフストランド杖・T-cane → 単独)

・応用歩行(階段、不整地、障害物、屋外)

#15に対して

ADL練習(必要に応じてカックアップスプリントやBFO)

・トイレ動作 ・更衣動作  ・入浴動作

#2に対して

持久力ex.(エルゴメーター → トレッドミル)

#15に対して

退院前訪問指導

 

4.リスク管理及び留意点

1)急性期(併せて身体管理の項も参照)

この時期の末梢神経は浮腫が強いため、代謝亢進や血流増加によって神経鞘内の圧が上昇し、虚  血性変化に陥りやすく、また過負荷による病的末  梢神経の機能過多が、神経細胞や軸索の代謝機能・軸索輸送能を障害し、再生機能に影響を与える可能性がある。

#1,3,4について

急性期の筋力維持の為の自動運動やROMex. は、過用性障害(overuse weakness)、過用性損傷(overuse damage)、過負荷(overwork)を招き、神経症状の再発、再悪化やすいので注意を要する。

#9について

呼吸不全による無気肺や肺感染症などの合併症  がみられる為、腹式呼吸や排痰などの指導を行う  が、この場合も局所的な呼吸筋の利用はせず胸郭  全体にて呼吸ができるようにするべきである。

#18について

意識清明のまま弛緩性麻痺が進行するため不安  感・恐怖感が大きい状態にある。よって疾患、そ  の経過、予後について十分な説明を行いながら評  価・治療を行うべきである。

 

2)回復期

#1,2について

この時期でもoverworkなどを避けるため、低負荷高頻度による持久力改善ex.から始め、回復状態を観察しながら、筋力増強ex.に移行する。

負荷量の決定は翌日の主観的訴え等(疲労感、  痛み、筋スパズム)が主な目安となる。

筋力の改善は遠位より近位、下肢よりも上肢に  優位であるとされる。


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