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(。-∀-)口腔癌の話


!(^^)!題名:口腔癌の話

■解剖生理

口腔は消化管の起始部で、食物の咀嚼、嚥下、構音などの機能を営む。口腔は前方は口唇に始まり、上方は硬口蓋および上顎歯槽、下壁は舌・口腔底および下顎歯槽、側方は頬粘膜により囲まれ、後方は咽頭と連絡する。

 

1)口蓋

口蓋は鼻腔と口腔の隔壁で、硬口蓋および軟口蓋よりなる。硬口蓋は骨部を基礎とし、その口腔面では口腔粘膜に覆われる。正中にある弱い隆起を口蓋縫線という。軟口蓋は硬口蓋の後方に続き可動性で後端は遊離縁となり、口蓋帆という。中央に口蓋垂が存在する。臨床解剖上軟口蓋は中咽頭に属する。

2)舌

舌は分厚い筋肉でつくられ、舌骨と下顎により固定されている。全長にわたって正中溝があり、また、への字型に有郭乳頭が存在し、それによって舌は舌体部と舌根部に分けられる。舌下面には舌小帯が存在し、口腔底に舌をつなぐ。舌の表面には凹凸が存在しており、これを舌乳頭とよぶ。舌乳頭には有郭乳頭、茸状乳頭などがあり、そこには味蕾が存在し、味覚を感知する。舌下神経が舌の運動をつかさどり、可動部舌の知覚は三叉神経の舌神経、舌根部の知覚は舌咽神経が支配する。なお、解剖上舌根は中咽頭に属する。

3)頬部

頬部は口腔の側方の外壁を作る可動性の部分で、外面は皮膚、内面は頬粘膜で覆われ、その間に頬筋がある。頬部には頬筋以外に多数の表情筋があり、笑みなど喜怒哀楽の豊かな表情をつくる。皮下の頬筋浅層部(咬筋の前縁と頬筋との間)には、頬脂肪体がある。頬部皮下には脂腺・汗腺・毛嚢があり、男性の皮膚にはヒゲが密生している。耳下腺管には、耳下腺の前上部で咬筋の外側を走り頬筋を貫いて軽度に隆起した頬粘膜の耳下腺乳頭部(上顎第二大臼歯相当部)に開口している。頬粘膜には多数の頬線が存在する。頬部では良性・悪性の唾液腺腫瘍・類皮嚢胞などが発生する。

4)口底

口底は口腔の下壁に相当し、下顎骨と舌との間の部分をいい、解剖学的には口底粘膜から広頸筋までをいう。口底の正中にヒダ状の舌小帯があり、その左右口底には舌下小丘とよばれる小隆起があるが、顎下腺管(ワルトン管)の開口部があり、顎下腺および一部舌下腺の唾液が排泄される。舌下小丘から舌下面に沿った隆起を舌下ヒダといい・下方に舌下腺がある。口底には舌神経や舌下動静脈が走行し、またオトガイ舌筋・オトガイ舌骨筋・顎舌骨筋などがある。口底では、舌下腺や口底腺由来の粘液嚢胞、ガマ腫、類皮・類表皮嚢胞、口底蜂巣炎(口底蜂窩織炎)、唾液腺悪性腫瘍などが発生する。なお、舌下腺・口底腺からは良性の唾液腺腫瘍の発生はきわめて少ない。顎下腺には良性・悪性いずれもが発生する。

5)顎下部

顎下部は臨床解剖学的には顎下三角部をいい、顎二腹筋と下顎下縁に囲まれ、内側は顎舌骨筋、外側は広頚筋に囲まれた部位であり、頚部の一部にも分類される。また、両側の顎二腹筋前腹と舌骨で囲まれた部位をオトガイ下部という。顎舌骨筋は、口腔と頸部を境していることから口腔横隔膜ともいう。顎舌骨筋より外方にある顎下部・オトガイ下部は一連の部位であり、顎下腺・顔面動静脈・顎下リンパ節・オトガイ下リンパ節などがある。口腔癌のリンパ節転移は、この顎下部・オトガイ下部が最も多い。また顎下部から頸部にかけて、結核性リンパ節炎・頸嚢胞などが発生する。

6)口腔の機能

(1)咀嚼と消化、嚥下

①咀嚼

食事を摂るための開口運動と、下顎の周期的上下動により食物を粉々にする運動からなる。

②消化

唾液腺より分泌される唾液にはアミラーゼが含まれており、でんぷんを麦芽糖に分解する。

③嚥下・第1層

舌の運動により食塊は唾液と混ざる。舌の上に集められた食塊は舌の挙上と口腔内圧の上昇により咽頭腔に送られる。

(2)味覚

味覚は味覚神経の分布する味蕾がある乳頭で感受される。味蕾は有郭乳頭に最も多く存在する。味の基本感覚は、酸・塩・苦・甘・(うまみ)などの感覚で組み合わされると考えられている。「味」には、いわゆる「味覚」のほかに食物の温度覚・触覚・嗅覚も関与する。酸味は舌中央部、塩味は舌尖および側面、苦味は舌根・口蓋、甘味は舌の前半部にて強く感じるとされている。可動部舌の味覚は、顔面神経に支配されており、舌根部の味覚は舌咽神経に支配されている。また、舌中央部の味覚は迷走神経によるとされている。

(3)構音

口腔は咽頭・鼻腔とともに音声の共鳴に寄与する。特に口腔では、口唇の開き具合、舌や軟口蓋の運動による口腔の形態や容積の変化によって母音を特徴づける。さらに、呼気の通過に際し、口腔の様々な部位に狭窄や閉鎖をつくって雑音を発生させることにより、子音をつくりだす。

 

<口腔癌>

■病態生理・患者像

全癌のうち数%以下とされ、男女比は2:1と男性に多い。また50歳代が最も多く、ついで60歳代、70歳代または40歳代の順である。舌癌が最も多く(約50%)、上下顎の歯肉(約20%)、ロ腔底癌、頰粘膜癌、硬口蓋の順である。口腔の扁平上皮癌は粘膜に発生するものがきわめて多く、骨内に発生するものは数%以下である。

原因・誘因としては、喫煙・飲酒については明らかであるが、ウイルス、齲蝕や不適合義歯については疑われているが明らかな確証はない。なお、放射線被曝によってがんの発生率は増加する。アルコールやたばこ、刺激物を嗜好する者に多い。口腔衛生の不良、適切でない義歯や充填物などとがった部分による機械的慢性刺激でも発生原因の一つとなり得る。

口腔衛生が不良で飲酒と喫煙を続け、医療機関にかからない(かかれない)で進行した状態で受診する人、病識がない人も少なくない。胃癌や肺癌などと比較して頻度が少ないことから口内炎と思い込み、悪性腫瘍であることをなかなか受け入れられないこともある。まれに歯科などで炎症として長期間経過観察され、進行した段階で紹介となることもある。

 

■症状

初期の症状としては舌では疼痛が最も多く、下顎でははれ、ついで疼痛の順である。疼痛は初期には軽いものであるが、進行すると自発痛を生じ、舌運動の障害や下顎運動の障害、または腫瘍そのものの大きさによって、摂食・嚥下や構音に障害を生じる。末期には激痛を伴う。まれに気道閉塞をきたして呼吸困難となることもある。

臨床像としては、きわめて初期には白斑紅斑の混在型・顆粒型・乳頭型・白斑型などであり、がんの特徴とされる潰瘍はきわめて少ない。やや進行すると、肉芽型・乳頭型となり漬瘍も増加する。潰瘍型や膨隆型は内向性で、組織学的にも悪性度が高い。腫瘍の表面は凹凸不正となり、色は白色、黄白色、暗赤色を呈する。骨に裏打ちされていない舌・口底・頬粘膜などでは、硬結(周囲健康部に比べかたくなる)を生じる。進行すると細菌感染や壊死による悪臭を生じ、また潰瘍からの出血がおこる。

 

■診断

病理組織診断のために生検が行われる。腫瘍の大きさ、進展範囲を肉眼・触診所見とともにCT検査やMRI検査などで評価する。頸部リンパ節への転移および肺などへの遠隔転移についての評価も治療方針を立てるうえで重要である。

 

■分類

*口腔がんのTNM分類

T-原発腫瘍(がん)の大きさ

Tl  最大径が2cm以下

T2  最大径が2cmより大きいが4cm以下

T3  最大径が4cm以上

T4a 隣接組織(骨髄質、舌深層の筋肉、上顎洞、皮膚)に浸潤

T4b 咀嚼筋間隙、翼状突起、頭蓋底、内頸動脈全周に浸潤

N-リンパ節転移の有無

N0  所属リンパ節転移なし

Nl  同じ側の単発性リンパ節転移があり最大径が3cm以下

N2a 同じ側の単発性リンパ節転移があり最大径は3cmを超えるが6cm以下

N2b 同じ側に多発性(複数)のリンパ節転移があるが最大径が6cm以下

N2c 両側あるいは反対側のリンパ節転移があるが最大径が6cm以下

N3  6cm以上の大きさのリンパ節転移

M-遠隔転移の有無

M0 遠隔転移なし

Ml 遠隔転移あり

◎口腔がんの病期(ステージ)

Ⅰ期  T1、N0、M0の場合

Ⅱ期  T2、N0、M0の場合

Ⅲ期  Tl~2、N1、M0の場合

T3、N0~1、M0の場合

ⅣA期 Tl~3、N2、M0の場合

T4a、N0~2、M0の場合

ⅣB期 Tl~4、N3、M0の場合

T4b、N0~3、M0の場合

ⅣC期 T1~4、N0~3、M1の場合

■治療・予後

手術または放射線治療が主体である。手術は比較的早期のもの(ステージⅠ~Ⅲ)では原発巣だけの切除が、進行したもの(ステージⅢ~Ⅳ)では、原発巣切除と頸部郭清術との一塊切除が行われることが多い。

手術による大きな組織欠損の軟組織補填では、遊離移植と有茎移植とがある。遊離移植では、マイクロサージェリー(血管吻合)による前腕皮弁と腹直筋皮弁などが広く用いられている。有茎移植では、DP皮弁(胸三角筋部皮弁)・大胸筋皮弁・広背筋皮弁・前額皮弁などが使われる。有茎移植は比較的容易に行えるという長所があるが、母床が顔面や胸部のために傷が目だち、また再建部位までの距離が限定されるなどの欠点がある。遊離移植は有茎皮弁の欠点を補うものであるが、設備の保有と特殊な手技の獲得が必須である。

骨欠損に対しては、マイクロサージェリーによる肩甲骨・腓骨などの移植と、血行を伴わない腸骨だけを移植する方法とがある(ブロック移植または腸骨海綿骨骨髄細片移植:PCBM)。腸骨海綿骨骨髄細片移植は、唇顎口蓋裂患者の顎裂閉鎖術などにも広く用いられている。

顔面欠損に対しては、一部、眼球を含めた顎顔面補綴が行われることもある。口腔癌の治療成績は、発生部位・進行度・組織学的悪性度・治療法などによって異なるが、5年生存率はステージⅠ~Ⅲで約80~90%、ステージⅢ~Ⅳで約40~70%である。

放射線療法にしても手術療法にしても、治療による合併症や機能喪失を事前に理解してもらうのは困難であることが多い。特に手術療法を行う場合は摘出の必要性、合併切除する構造物、再建手術の必要性、その後に生じる後遺症などを患者側がイメージすることは難しい。術後に「しゃべれない」「食べられない」「こんなはずではなかった」「これでは社会復帰できない」と言う患者がいる。治療前に手術のプランと術後のリハビリテーションなどについて、可能であれば写真などを用いて説明しておくことが重要である。

(1)口腔底癌の手術

口腔底癌の切除は癌が小さければ口腔底粘膜同士を寄せて縫合、閉鎖が可能である。血管を確実に処理すれば出血も少なく浮腫も軽度である。

広範な癌で切除範囲が広くなる、下顎骨の船型切除(辺縁切除)を併用するなどの場合は舌を用いた粘膜弁(舌弁)を作製し創部を被覆する。術後はやはり出血に注意が必要である。

舌、口腔底の切除時、顎下腺の口腔内への導管であるワルトン管が閉塞すると顎下腺で生産された唾液が口腔内へ流出できず、術後顎下腺の腫脹・疼痛をきたすことがある。治療は鎮痛薬投与で経過観察すればよいが、何もしなくても10日前後で腫脹は軽減・消失する。

また、オトガイ部の筋層はまばらな構造となっているため、切除が深くなるとリンパ流の阻害から術後後方の舌根、喉頭蓋の浮腫をきたし気道狭窄を起こすことがあるので呼吸状態の観察も怠ってはならない。

手術時創を完全に閉鎖した場合、通常術後1日目より含嗽薬による含嗽を開始、3日目より飲水を開始、4日目より3分粥程度のものから経口摂取を開始し状態をみながら常食に近づけていく。I 治療ム看護の進め方

 

(2)歯肉がん

歯肉は上歯肉と下歯肉に分けられる。通常は電気メスによる粘膜切開と骨は小型電動ノコギリとノミ、ツチで切除する。

上歯肉癌では歯肉粘膜の切除だけではなく口蓋骨の切除も併用する。切除部に軟膏を塗布したガーゼを詰めて圧迫止血する。術後は血液の咽頭、喉頭への流入に注意する。症状は繰り返す咳嗽反射と血痰である。

術後1週間以内にガーゼを除去し術前に作製した義歯(プロテーゼ)を装着する。出血はガーゼ抜去時に起こるが通常少量である。硬口蓋癌の切除法もこれに準ずる。

下歯肉癌の切除は腫瘍と同時に下顎骨の高さの1/2程度を切除する辺縁切除とある長さの下顎を完全に離断し切除する区域切除がある。

区域切除は口腔内からの切除は無理で顎下部から口腔内へ交適させて切除する。チタンプレートで残存骨を固定し頬粘膜、口腔底粘膜を縫合閉鎖する。切除範囲が短い場合、高齢者などではチタンプレート固定を行わないこともある。

術後の観察点は出血で、切除部の腫脹、口腔内出血をきたす。止血には外科的処置が必要である。

 

口腔内癌と代表的切除法

口腔底癌:①口腔底部分切除

上歯肉癌:②歯肉、口蓋部分切除

下歯肉癌:③下顎辺縁切除

④下顎区域切除

 

(3)再建術

頭頸部癌を広範囲切除すると、同時に食事摂取、会話などの重要な機能が障害される。頭頸部再建では組織移植の技術を用いて、これらの機能をできるだけ回復することを目標としている。また、頭頸部がん切除では、がんと連続させて頸部のリンパ節郭清を行い、頭部皮下と口腔内の欠損が交通していることが多い。術後トラブルで頭部大血管が唾液にさらされると感染から大出血を生じて生命の危険を伴うため、合併症のない安全な再建術を行うことが重要である。再建は遊離皮弁や有茎皮弁で行うが、遊離皮弁のほうが皮弁を自由にデザインできるので機能の温存に優れ、さらに合併症も少ない。このため、遊離皮弁を第1選択としている施設が多い。

頭頸部再建の場合、遊離腹直筋皮弁、遊離前外側大腿皮弁、血管柄付腓骨皮弁、遊離空腸の4種類でほとんどの欠損をカバーできる。

◎血管柄付腓骨弁

下顎骨や上顎骨などの骨移植が必要な再建に用いる。遊離骨皮弁は、ほかに肩甲骨皮弁もあるが、術中は体位変換なしでの拳上が望ましいため、腓骨皮弁を第一選択としている施設が多い。腓骨に腓骨動静脈をつけて採取する。下腿外側の筋体を大きく切除した場合、術後に母指の屈曲拘縮が生じることがある。採取側の荷重は脛骨で十分である。

 

<看護>

■患者の問題

①術前の不安:患者はがんに対する恐怖や不安、手術に対する期待とともに複雑な手術に対する漠然とした不安をかかえている。また、手術後の状態や予後への不安、経済的負担などさまざまな因子がからみ合い精神的にも不安定になりやすい。顎口腔領域では扁平上皮がんが大多数を占め、がんの状態を自分で直視できるため不安はいっそう強くなる。

②疼痛:術後、切除部位組織のダメージや腫瘍部位への外的刺激により手術部位の創痛が出現する。痺痛により安楽が阻害される。

③呼吸障害:口腔内の創部の腫脹や浮腫、分泌物などによって気道が閉塞されやすく、手術中より気道確保のため気管切開術が行われることが多い。長期臥床による気道分泌物の貯留や、創痛、咳轍反射低下によるたんの喀出困難は誤嚥性肺炎を引きおこす要因となるため術後は気管カニューレからの頻回な分泌物の吸引が必要となり患者の苦痛は大きくなる。とくに高齢者は反射機能などの低下があるためリスクが大きい。

④セルフケア不足:術後侵襲からの回復と創部の安静によりADLの制限がある。口腔ケア、身体清潔ケア、食事、排泄、歩行など日常生活全役において介助が必要となる。

⑤術後の精神的苦痛:術後は、長期臥床、ドレーン・ライン類の留置、気管切開によるコミュニケーション障害、痺痛、安静の必要などによりストレスを生じ、精神的苦痛が大きい。

⑥感染リスク状態:術後、口腔内の創部は露出され、唾液やたんなどで汚染されやすいため清潔に保つことがむずかしく、創感染をおこしやすい。とくに高齢者の場合、気管切開に加えて、反射機能などの低下により肺炎を合併しやすい状況にある。

⑦摂食・嚥下障害:口腔がんの術後、切除される原発病巣や所属リンパ節周囲の器官が摂食・嚥下にかかわりが深いために、摂食・嚥下障害を呈することが多い。とくに高齢者は嚥下桟能の低下により誤嚥のリスクは高くなる。摂食・嚥下障害による問題として、誤嚥性肺炎のリスク、脱水や低栄養、食べる楽しみの喪失などが考えられる。

⑧構音障害:手術により、上顎、下顎、舌・口底、中咽頭が欠損した場合、切除範囲によるが、再建された皮弁の形態や歯の欠損により構音障害を呈することが多い。

⑨退院後の生活に対する不安:手術後の機能障害の程度は切除部位、範囲によって様相が異なるが、いずれの場合も退院後の生活に及ぼす影響は大きく患者の不安の要因となる。さらに容貌の変形による精神的苦痛を伴うことが多い。そのほか、社会復帰への不安、再発への不安など抱える問題は多様である。

 

■アセスメント

①身体的側面

(1)疫病:部位、程度、頻度、性質、持続時間、誘因、鎮痛薬の効果

(2)創部の状態:発赤、腫脹、出血、溶出液の有無・性状・量、皮弁の色調

(3)全身倦怠感

(4)呼吸状態

(5)循環動態

(6)顔面、頚部の浮腫

(7)食事内容、摂取量、方法、時間、食欲、嚥下状態

(8)排泄状況

(9)清潔状況

(10)安静度とADLの状況

(11)機能障害の程度とADLへの影響:言語・摂食・嚥下・上肢や頸部の可動域

(12)コミュニケーションの手段

(13)検査結果(X線写真、CT、シンチグラフィ、血液データなど)

(14)バイタルサインの変化

②心理・社会的側面

(1)患者および家族の手術に対する受けとめ方、理解

(2)手術に必要な検査、処置に対する理解

(3)術後の苦痛、機能障害に対する認識

(4)機能訓練に対する意欲

(5)表情の変化、不安の訴え、睡眠状態

(6)支援してくれる家族の有無、支援の状態、家族との関係

(7)退院後の不安(社会的地位・役割の変化構音障害・摂食・嚥下障害、容貌の変化、再発への不安など)

(9)社会資源の活用

 

■看護目標

(1)不安が軽減し心身ともに手術への準備ができる

(2)疼痛が緩和する

(3)早期離床ができ日常生活が自立する

(4)誤嚥の危険なく経口摂取が行える

(5)残存機能をいかし日常の会話ができる

(6)異常時の対処方法が理解でき不安なく退院できる

 

■看護活動

1)術前の看護

●術前の準備

手術方法や術後の予測される状況、機能障害などに対する受け止め方、理解の程度を把握し、医師による説明が必要と判断されたときは説明が受けられるよう調整して患者に十分な情報が提供されるようにし、不安の軽減につとめる。また、訴えが表出しやすい環境をつくり、患者・家族とのコミュニケーションを十分にはかりながら信頼関係を築くことがたいせつである。

手術に向けての準備として、次のような術前指導を行う。

(1)口腔ケア指導

(2)手術までに必要な物品の確認

(3)経管栄養法のイメージ化

(4)深呼吸練習

(5)術後のコミュニケーション方法についての説明

(6)術前オリエンテーション など

●病状の観察

治療前に全身状態を改善することが、術前看護の主な目的である。口腔のどの部分に病変があり、それがどのような症状をもたらしているのかを把握する。自発痛の有無、経口摂取が可能か、睡眠障害、開口制限、体重減少などについて聴取する。それらをもとにして看護計画を立てる。

●合併症の評価とコントロール

頭頸部癌患者のなかには、長期にわたり喫煙・飲酒を嗜好としたり、比較的年齢が高いこともあって、大したことはないと自己判断している場合も含めて合併症を持つ症例は少なくない。医師には口が重くとも、入院してから看護師にはいろいろと話してくれることもあり、その内容から合併症を推察し、評価につなげることは重要である。

具体的には、バイタルサイン、耐糖能(HbA1C、1日尿糖)、腎機能(クレアチニン)、肝機能(ICG、エコー)、循環器機能(安静時・負荷心電図、エコー)、呼吸機能(スパイログラム、動脈血ガス分析)などの検査から合併症が明らかになれば、その程度に応じて術前に改善しておく必要性を説明する。

例えば、糖尿病に対する食事療法・インスリン投与、低栄養に対する栄養管理(経管栄養・中心静脈からの高カロリー輸液)、呼吸機能低下に対する理学療法(スーフルなどを利用した呼吸訓練)、高血圧に対する薬剤投与などが挙げられる。

このように、入院してから手術までの間は合併症の評価とコントロールの時期である。

2)術直前の看護

●手術の説明

手術の方法は主治医から説明を受けているはずであるが、頭頸部癌は一般になじみが薄いため、胃癌の手術のように「胃の悪いところを半分切除して、残ったところを腸とつなぎます」といった高齢の患者でも直観的に理解できる説明は困難である。まして再建を伴う手術では、術創が複数部位にわたり、患者が十分に理解しているとは限らない。また、すべての患者が医師に率直に質問できるわけではない。

特に、言葉や食事の問題は日常生活に直結する重要課題である。手術方法や術後機能に対する患者の不安を聞き出し、看護師として説明を補足する際には、医学用語ではなく平易な言葉に置き換えたり、「○○程度のものは15分くらいで召し上がれます」、「術後、言葉が不明瞭であっても、ご家族であれば理解してくれることが多いです」など、具体的に不安や疑問に答えることが大切である。

●気管切開施行時の意思伝達方法の説明

口内アプローチのみの部分切除術では不要だが、再建手術では術後の誤嚥性肺炎を防ぐために気管切開を行う。この気管切開孔は通常1~2週間程度で疑似閉鎖または完全閉鎖するが、嚥下機能回復の程度によっては遷延化することがある。したがって、気管切開孔の管理は患者の呼吸・嚥下管理そのものと位置付けられ、看護の重要ポイントである。

一方、患者にとって気管切開は未知の経験であり、不安が大きいのも事実である。しかし、患者の協力なくしては十分なケアができないため、閉鎖までの期間、どのように看護師がかかわっていくがを説明する必要がある。

具体的には、①看護師による頻回の喀痰の気管内吸引が必要であること、②カフ付きカニューレを入れている間は一時的に声を出すことはできないが、患者は簡単な動作で合図すれば看護師の方で痛いのか苦しいのか、暑いのか寒いのか、足なのか手なのか頭なのかを質問し、患者は「イエス」か「ノー」をわずかな動作で答えるだけでよいような体制をとっていること、③手を動かせるようになれば「あいうえお」文字板や幼児用落書き板での筆談が可能であることを患者によく説明し、不安の解消に努める。

しかし、実際に声の出ない事態に直面すると、指で宙に文字を書き、意思が伝わらぬもどかしさからくるイライラに遭遇することもある。その場合は、しゃべれないことは恒久的なことではなく、術後の状態が良くなるにしたがってカフ付きカニューレを外し、必ず発声が可能になることを根気よく理解させる。

事実、術後の浮腫が完全には引かぬ時期であっても、レティナ・スピーチバルブを用いることによって、術後1週間程度で発声が可能となる症例は多い。

3)術後の看護

●循環動態の管理

術直後は、皮膚の色、冷感、チアノーゼ、また輸血・輸液量と尿量・排液などとの水分出納バランスを観察し循環動態を把握する。心電図モニターの装着とバイタルサインの観察、血液検査データの把握を行い、循環血液量の低下や後出血など異常の早期発見につとめる。またベッドは前もってあたためておき適切な保温を行う。

●呼吸管理

切除範囲が大きく手術後の腫脹や浮腫により気道の閉塞が考えられる場合は、気道確保のため、手術中より気管切開が行われ気管カニューレが挿入される。

帰室後は酸素吸入が行われる。手術直後は、動脈血酸素飽和度(Spo2)、呼吸形式、呼吸のリズム、呼吸数、呼吸の深さなどの呼吸の観察、胸郭の動きやチアノーゼの有無、喘鳴の有無、聴診による呼吸音異常の有無の確認、分泌物の量、性状、臭気などの観察を行う。また動脈血ガス分析による呼吸機能を把握する。

気管カニューレからの分泌物の吸引は、清潔操作で行い、閉塞予防のため分泌物がかたくならないよう人工鼻の装着やネブライザーなどによる加湿を行う。またカフ圧やひもの固定などを確認し、カニューレが抜けないよう注意する。

口内からの吸引時は皮弁の色調を観察し、創部を刺激しないよう注意をはらう。気管カニューレは、術後急性期は、カフ付きサクションライン付きのカニューレが挿入されており、誤嚥性肺炎を予防できるようカフ上部に貯留した分泌物の吸引を行うことができる。手が動かせるようになり、看護師の吸引操作に慣れ、その要領を理解できる時期になれば、サクションチューブによる口腔内分泌物の自己吸引法も説明する。

せき払いによる痰の喀出ができ上気道の閉塞がなく、ベッド上安静から歩行が可能になり、口腔・咽喉頭の浮腫が徐々に引いてくれば(通常、術後1~2週間程度を要する)、発声が行えることが判断され、発声可能なカニューレに交換され、発声訓錬、呼吸訓練、たん喀出訓練、嚥下訓練などを行っていく。気管への口腔内分泌物の流入量が多かったり、発熱するようであれば、カフ付きのカニューレに戻さざるを得ないが、カフなしのカニューレに換えた際は、できるだけ発声させ、患者の訴えを時間をかけて聞くことが大切である。不明瞭であっても「声が出る」ことは回復の喜びであり、さらに筆談せずに会話ができる自信をもたせることは、その後の嚥下訓練にも必ず良い方向に働く。呼吸困難がなく、発声、痰の喀出、唾液の嚥下が良好に行われ、肺炎の徴候がなければカニューレは抜去される。カニューレ交換時や抜去直後は、注意深く呼吸状態の観察を行う。

●経管栄養の管理

口腔内の創部の安静と浮腫による嚥下困難のため、術後は経管栄養法による栄養摂取となり、術中より胃管が挿入される。全身麻酔の侵襲によって胃・腸の蠕動運動が低下するため、術直後は胃管を開放し、胃内に停滞した血液、消化液などを自然排出させる。以後、聴診により腸蠕動音を確認後、微温湯を注入し、吐きけ、嘔吐がなければ、胃・腸への負担を軽くしてスポーツ飲料や希釈した濃厚流動食をゆっくりとした速度で開始する。吐きけ、嘔吐、胸やけ、腹部膨満感、腹痛、下痢の有無などを観察しながら、徐々に速度や濃度、量を必要量まで増量する。また下痢になりやすいため、人肌程度にあたためたり、滴下速度をゆるめたり、繊維の多く入ったものに変更したりなど工夫する。また濃厚流動食だけでは水分不足となりやすいため、とくに制限がなければ、間食にお茶や患者の好みの飲料水などを注入するとよい。開口できるようになれば、水道水もしくは生理食塩水と小綿球を用いた積極的な口腔衛生保持を行う。その際、消毒剤(イソジンガーグル・オスバンなど)は粘膜障害があるので使用してはいけない。胃管は創部の治癒や嚥下機能の確認後、抜去される。

●経口摂取への移行と気管孔の閉鎖

カフなしのカニューレに換え発声が可能になれば、口唇閉鎖の指導も併せて行い、ころ合いを見て飲水練習を開始する。まず一口飲んで誤嚥がなければ問題ないが、多くの患者では「むせ」が生じる。ビデオ嚥下機能検査(VF)を行うことで、客観的に術後機能を把握することができる。

誤嚥の程度が軽ければ、引き続き看護師の観察のもとで飲水練習を行ったり、冷たいゼリーやプリンなどの経口摂取を試みる。ある程度コツをつかめるようになったら、咀嚼・嚥下機能の程度に応じて、ミキサー食、流動食、粥食などを始める。

舌尖を含む口腔前方部を切除した場合は、食物を咽頭に送り込むことができない。吸い飲みの吸い口にシリコンチューブを付けて、直接咽頭に流し込む方法が練習に有効である。上達の度合は切除の範囲、年齢など個人差がある。数日で誤嚥がなくなるものから、1カ月以上かかるものまでさまざまであり、決して急がせることなく、患者のペースに合わせることが大切である。

この時期には、できるだけ食事の様子をベッドサイドで観察し、食事総量、摂取時間、「むせ」の具合から、嚥下機能の回復程度を判断する。

さらに具合がよければ経管栄養チューブを抜去する。その後、誤嚥による熱発、肺炎のおそれがなく、吸呼気時に狭窄音などがなければ、カニューレを抜去して気管孔を閉鎖する。

カニューレの抜去と経口摂取訓練開始の時期は患者ごとに状況が異なるので、ケース・バイ・ケースで決めれば良い。通常、気管孔閉鎖までの期間は半側切除で10日~2週間程度、亜全摘で3週間程度である。

●創部の観察

手術直後は、全身状態の観察を十分に行い、バイタルサインの変化に注意し、異常の早期発見につとめる。疼痛、出血、滲出液、腫脹の有無と程度の観察を行い、ガーゼ汚染の状況にも注意する。口腔内の皮弁の状態は48時間以内はとくに注意深く観察し、うっ血や色調の変化がみられた場合はただちに医師へ報告する。

創部周囲には、滲出液や血液の体外への排出を促し治癒を促進するため、低圧持続吸引のための排液バッグが接続されているドレーンが留置される。排液バッグ装着時は、ドレーンの抜去や閉塞などの事故防止のため、引っぱられたり、屈曲、圧迫することがないよう注意する。またバッグ内がつねに陰圧に保たれているか確認し、確実に吸引が行われるようにする。ガーゼ交換時には、創部、挿入部の観察を行い、発赤、腫脹、出血、浸出液の有無を確認し、感染の徴候に注意する。原因不明の熱は、抗菌薬投与でただ漫然と経過をみるのではなく、創部のどこかにその原因がないか、看護師として術創をよく観察する習慣をつけることが肝要である。

また、鎮痛目的に非ステロイド性消炎鎮痛薬(ロヰソ二ン・ボルタレン・ロピオンなど)が投与されている場合は、炎症があっても発熱せず、何らかの感染(頻度では創部死腔感染、肺炎が多い)がマスクされている可能性を常に考える必要がある。

創部の他、ドレーンからの排液量、性状、臭気などの観察を行う。発熱の持続やCRPの上昇など炎症所見にも注意する。

鎖骨上に挿入されているドレーンの排液量が術後4~5日しても減少しなかったり、ドレーン抜去後に皮下が再腫脹すれば、リンパ瘻を疑う。また、経管栄養開始後にドレーン排液が白色に濁れば、乳び瘻である。乳び瘻であれば経管栄養を中止し、1週間程度、静脈栄養に切り替える。頸部に波動や発赤腫脹を認めたり、発熱を伴うようなら、膿瘍形成や特に顎下部では口腔からの痩孔を疑う。

いずれも早期に発見すれば膿瘍開放、生理食塩水での反復洗浄(この場合も消毒はよくない)など、適切な処置により2次的治癒を期待できるので、常に創部の観察を行う習慣をつける。

●疼痛・苦痛の緩和

疼痛は患者にとって最も苦痛であり、不眠や体力の消耗など術後の開腹に影響をもたらす。疼痛出現時は我慢しないよう伝え、バイタルサインや疼痛の部位、程度、性質、要因などを把握し、効果的な鎮痛薬の使用や疼痛の要因を取り除く援助を行う。

●安静

移植した皮弁の血管吻合部の安静保持のため、頸部の伸展は禁止され、術後1日目くらいまではベッド上安静となる。体位交換時や体動時には十分注意し、皮弁の色調の変化を注意深く観察する。また体位制限によるストレスを生じやすいため苦痛の緩和につとめる。以後、ベッドアップ90度→ベッド上フリー→室内歩行→病棟内歩行へと徐々に行動拡大をすすめていく。その際、筋力低下、貧血、ドレーン・ライン類の留置などにより転倒のリスクが高くなりやすいため査定を行い予防につとめる。

●肩・上肢のリハビリテーション

頸部郭清術は保存する臓器(副神経・頸神経・胸鎖乳突筋)により程度は異なるが、肩・上肢の挙上が困難となる運動障害を遺す。頸部ドレーンの抜去後、なるべく早い時期にリハビリテーションを始める方が良い。患者が自身で行えるような個別メニュー考え、根気良く行うことで、リハビリ開始当初の運動による痛みも徐々に改善することを説明する。

●清潔のケア

シャワー浴が可能となるまで全身状態を観察しながら、全身清拭や陰殿部洗浄、足浴、手浴などを行う。清拭の際は、ドレーンや尿カテーテルなどの抜去や圧迫に注意し、褥瘡好発部位の皮膚の観察を行う。シャワー浴が可能となったら初回は介助で行い、徐々に自立へ向ける。洗髪は頚部の伸展に注意し、外創部のガーゼをぬらさないように介助で行う。

口腔内は創部があるため口腔ケアが行いづらく清潔保持がむずかしいが、二次感染予防のためにも口腔ケアは重要である。創部の安静と誤嚥予防のため、含嗽の許可がでるまでは口腔内清拭を行う。とくに術後48時間は皮弁の血管吻合部の生着状態の良否が回復に影響するため、ケアの際は注意深く観察をする。嚥下の間接訓練開始とほぼ同時期に含嗽の許可がでる。喉の奥に含嗽液が到達するよう上を向き行うガラガラ含嗽は誤嚥の可能性が高いため、嚥下が良好にできるようになるまでは口腔内全体に含嗽液を行きわたらせるブクブク含嗽を指導する。口唇の閉鎖障害などでブクブク含嗽が不可能である場合は、できるようになるまで口内に含ませて吐き出す方法をとる。

●排尿・排便

手術の前日に浣腸をしており、加えて経管栄養は吸収が非常に良いので、術後2~3日間排便の心配はない。むしろ、浸透圧の関係から下痢を引き起こすことも見受けられる。その場合は、経管栄養の投与速度を落とすことで対処するが、腸炎を合併すれば点滴に切り替える。

また、術中にバルーンカテーテルを挿入し、術後も引き続き留置するため、ベッド上安静時の排尿の心配がないことを説明する。

●コミュニケーションの工夫

カニューレ挿入中は発声ができなくなるため、筆談ボードや50音の文字盤、予想した言葉を書いたボードなどを使用し、意思の疎通をはかる。コミュニケーション手段については、手術前より患者とよく話し合って準備しておくことがたいせつである。

カニューレがバルブで閉鎖され発声が可能になったら、構音機能のリハビリを兼ねて、できるだけゆっくりはっきりとした会話を多く心がけるように促し、話しやすい環境を整える。とくに「パ、タ、カ行」の発音が聞き取りづらくなりやすいため、これらの音を含んだ言葉の練習を行うことも効果がある。また家族にも患者に積極的に話しかけるよう促し、聞き取りづらくてもあせらずゆっくり話を聞き理解につとめるよう協力を得、患者が前向きな姿勢がもてるよう支援する。構音障害については、言語療法士とのコンサルテーションを行う

●摂食・嚥下障害

意識清明、離床ができる、気管カニューレがバルブで閉鎖、呼吸状態安定、発熱がないなどが判断されると食物を使用しない基礎的な訓練である間接訓練の適応となる。食物を使用する直接訓練は、水飲みテストや食物テストなどの摂食・嚥下障害スクリーニングや嚥下造影検査に基づき開始となる。直接訓練時は、バイタルサイン、血液検査、胸部X線写真などを把握しながら、誤嚥性肺炎や脱水、低栄養にならないように配慮する。誤嚥すると気道の防御反応でせきやむせが生じるため、むせ、せきの状況の観察はたいせつである。ただし不顕性誤嚥といい、明らかな誤嚥がみられるにもかかわらずせき反射がおこらない状態もあるため注意が必要である。窒息の危険に備えて吸引器の準備をしておく。むせ、せきのほか摂取量、口唇よりのこぼれ、咽頭部の残留感、意欲、疲労感などを観察しながら、食形態、摂食器具、食物挿入部位、体位、また嚥下後のせきや発声、交互嚥下、反復嚥下などの代償法を考慮し、安全に前向きな姿勢で訓練を継続できるよう支援する。最終目標は経口から食事摂取ができることであるが、経口摂取と経管栄養を併用することもある。患者の残存機能が最大限に活用されるよう退院後も訓練は継続されるため家族の協力体制を整えることは重要であり、トラブル時の対応の指導も必要となる。また、摂食・嚥下訓練には医師、看護師、栄養士などが連携したチームアプローチが大切である。

●心理・社会的支援

患者の訴えや思いを表出しやすいような環境をつくり傾聴につとめる。気がかりなことはないか、疾患や機能障害、容貌の変化など現在の状況を埋解できているか、社会復帰に対する意欲はどうかなどを把握する。社会的地位、経済状況などの社会的状況を考え、必要時は社会的資源の提供を行う。また家族の協力体制が整うよう支援する。

●退院指導

①機能訓練:摂食・嚥下障害については、患者自身が状態の把握ができ未然に防止できるように退院後おこりやすいトラブルについて指導を行う。また食事の加工方法や調理用具、摂取時の工夫、栄養のバランスなどについて食事指導を行い、必要に応じて栄養士に依頼する。構音障害については、積極的に話す機会を多くもつことが訓練となるため会話を多くし、ゆっくりはっきりと話すよう心がけることを指導する。また、嚥下機能と構音機能をつかさどる筋肉は関連深いため、それぞれの訓練が相乗的効果となることを説明する。

頸部郭清術後は頸部から上肢にかけての可動域制限があるため、頸部・上肢の運動を継続し、日常生活の中でもできるだけ上肢を使うよう意識しリハビリが自然にできるように指導する。

いずれも退院時は家族に同席してもらうことが望ましい。

②口腔ケア:手術前の状態と比べて口腔内の状態は変化しており、口腔ケアが行いづらいことがあるが、感染予防のためにも清潔にしておくことが大切であることを説明し、効果的な含嗽の方法や、ブラッシング方法を指導する。

③定期的受診:退院後は定期的に外来受診し、それを医療者がフォローしていくことになる。再発や転移の早期発見のためにも受診が継続的にできるよう指導する。退院後も内服薬が必要な場合は、正確に内服が行えるよう指導する。心配や不安などが増強したときは、いつでも病院に連絡してよいことを伝える。

 

■再建術後の看護

術直後の遊離皮弁への血行は顕微鏡下で吻合した血管だけに依存している。血栓で動脈閉塞を生じると皮弁が虚血になり、静脈閉塞を生じるとうっ血するが、いずれも皮弁は数時間で壊死してしまう。吻合部血栓の形成率は4~7%といわれており、術中の原因としては血管吻合部の手技的な問題、血管のねじれ、術後の原因としては術後血腫や局所の腫脹による物理的圧迫、感染などがあげられる。国立がんセンターのデータでは、血栓形成時期は術後1日目までが約50%で、4日目までが80%、7日目までが96%であり、ほとんどの例が1週間以内であった。閉塞後すぐに血栓除去を行えば、約50%のケースで皮弁を再び使用できるとする報告が多い。このため、皮弁の血流を定期的にモニタリングし、血栓形成を早期に発見することが大切であり、2~3時間おきに1週間、観察を行っている。

●ドレーンチューブの観察

創部に入れたドレーンチューブを陰圧持続吸引装置(SB-VAC)に接続し、空気漏れがないことを確認する。チューブからの排出液は、術直後は血性であるが、6時間くらいの間に徐々に漿液性に変わっていく。24時間排液量は4~5日目には黄色透明で、20mL程度まで減少する。

チューブの管理としては、常にミルキングして凝血によるドレーンの閉塞を防ぐことがポイントである。血性の排液が異常に多い(50~100mL/h)場合は、創部の出血が疑われる。逆にドレーンの排液が少ない場合は、ガーゼを取り除いて、直接皮膚を観察する。出血が多い場合は、早期に凝血でドレーンチューブが詰まり、皮下に血腫を作っている場合が少なくないからである。

皮膚面がブヨブヨしていたり、紫色に変化したり、膨隆しているときは血腫を疑う。血腫を放置すれば、吻合血管の閉塞をきたしたり、創傷治癒の遷延から血腫は自然吸収されることなく、後に膿瘍化するケースが多い。

●気管分泌物の吸引

喀痰吸引の要領は、サクションチューブをカニューレ入口部から10~15cmまで挿入し、チューブの先端で気管を刺激して咳嗽反射を誘発させ、深部の喀痰の排出を促すことである。その後、患者の呼吸に合わせて何回かに分けて吸引する。

喀痰の量が多いときは吸引を頻回に行うだけでなく、カニューレのカフ圧が不足しているために、口腔内の唾液が気管に流入していることが疑われる。咳嗽時に「工ッ」と声が出ているのは、カフ圧が少ないことを示している。

反対に、長期にわたるカフ圧の過剰は気管の壊死を引き起こすので、その調節は慎重に行う。また、鼻呼吸ができないため、吸気の加湿・加温が期待できない。気管粘膜の乾燥・出血を防ぐため、特に冬季は1日4~8回のネブライザーを行う。気管切開が施行されていれば、口腔・喉頭浮腫による上気道の狭窄はないが、分泌物による閉塞はあり得る。

特に、カニューレの内側や先端にこびりついた痂皮の存在に注意する。サクションチューブがスムーズに入りにくくなったり、カニューレ近傍で吸呼気時に「シュウシュウ」という狭窄音が強くなってきたら、速やかな交換が必要である。

●口腔内の吸引

術直後は嚥下運動が不十分であるため、多量の唾液が口腔内に貯留する。これらを吸引しながら、術創部からの出血の有無を観察する。

●皮弁の観察

*皮弁の血流モニタリング

静脈血栓のみを生じると皮弁の色調が青紫色に変化し、創部から出血するのでわかりやすいが、動脈血栓の場合はわかりにくいことがある。迷った場合は開創して皮弁の血管茎を直接確認する。

動脈血栓・静脈血栓の特徴(皮膚成分のある皮弁の場合)

動脈血栓(虚血) 静脈血栓(うっ血)
皮弁の色調

皮弁の緊張

Capillary return*

Pin prick test**

白色

なし

遅い

出血しない~遅い

青紫色

腫脹

早い

暗赤色の血液がすぐに出る

* Capillary return:皮弁を圧迫して毛細血管をつぶし、圧迫を解除して毛細血管に血液が流入することで圧迫部が白色からピンク色に変わる現象。ペアン鉗子の把持部など、リングで圧迫するとわかりやすい。

** Pin prick test:26G針や血糖測定時の採血針で皮弁を刺して出血を確認する。

遊離皮弁の移植を行った患者では、皮弁の色調を観察して、血液循環の異常に注意する。具体的には、術直後から2時間間隔で26Gの注射針を皮弁に刺し、皮弁からの逆流血の色調を見る(ピンプリックテスト)。

最初の24時間は、血管吻合トラブルに最も注意すべき時期である。次の要注意期間は3日以内であり、5日を過ぎると血流はほぼ安定化する。

皮弁には知覚がないため、患者は刺入されても痛みを感じない。したがって、ピンプリックテスト施行は躊躇すべきでない。

正常であれば、鮮紅色の出血が5秒以内に確認できる。何度刺しても出血がなければ、動脈の閉塞が強く疑われる。動脈閉塞時の皮弁色は白色調であるが、その変化は正常色とはわずかな差であるので、動脈閉塞を色調のみで見分けるのは難しい。むしろ、静脈閉塞では皮弁が早期から赤みを帯びてくるので、肉眼的変化はとらえやすい。

さらに、26Gの注射針を皮弁に刺し、黒色に近い暗赤色の逆流血が勢いよく出れば静脈閉塞の確度は高い。静脈閉塞をそのまま放置すれば、赤色調からやがて青色の斑点が現れ、時間が経つにつれ紫色を呈してくる。こうなると、もはや皮弁の救済は難しい。

血管吻合部のトラブルを2~3時間のうちに発見できれば、皮弁が壊死に陥る前に再手術をすることで危機を回避できる可能性がある。それゆえ、皮弁の観察が重要なのである。少し前の状態に比べて何か変化があれば、「きっと大丈夫だろう」と思わず、複数の看護師で確認し、それでも疑義があれば速やかに医師に報告することが看護のポイントである。

●頭部・頸部の安静

術式によって多少異なるが、術創部の安静度は創傷治癒に大きな影響はない。微細血管吻合を始めた当初は、皮弁再建血管レイアウトのねじれや吻合部の過緊張を避けるために、頸部を砂嚢固定し絶対安静をとっていたが、現在はADL向上を第一に考え、翌日または翌々日には安静解除がなされている。安静度管理は各施設の事情で異なるが、国立がんセンターでは血管茎の圧迫を禁止しているが、ほかの制限はしていない。血管茎を圧迫しないポイントは、①吻合側を下にして寝ない、②気管チューブやマスクなどのひもに注意する(できればないほうがよいが、使用する場合は緩くする)である。

●疼痛管理

頭頸部領域の創部痛はそれほど強くない。むしろ、皮弁採取部の疼痛管理が中心となる。当然発声不能のため、看護師には患者のしぐさ・表情から汲み取ることが要求される。患者の苦痛をとることは、呼吸状態の改善にもつながる。具体的には、モルヒネ製剤(フェンタネスト)の持続皮下注に、塩酸モルヒネ注10mg点滴静注を頓用で併用している。

古くから慣習的に行われてきた頸部や皮弁採取部のイソジン塗布による消毒は、消毒処置自体が不要であるばかりか、消毒液の組織毒性からかえって創傷治癒を遅らせる原因となる。創面が露出している部分は、創傷被覆材(デュオアクティブなど)やプラスチベース軟膏の塗布により、組織の乾燥を避けることが肝要である。

シャワー入浴も創部清潔保持に有効であるので、ドレーンが抜けた時点で可及的速やかに行う。

●せん妄

6~8時間の長時間麻酔に加え、多数のドレーン、点滴、バルーンなどの挿入を伴うベッド上安静、発声不能、頻回の気管内吸引のストレスなどの条件が重なり、せん妄に陥ることはまれではない。想像以上に激しい興奮・体動を呈する状況であり、看護師はしばしばドレーン・点滴ルート類の管理に悩まされる。

しかし、せん妄に至るまでの不眠傾向や意思の疎通を欠いた行動が多いなどは、注意していれば当然予想できる心因反応であり、特に人員が少ない夜間の対処法などは、医師とあらかじめ相談しておくとよい。

(*´з`)参考文献

医療学習レポート.口腔癌


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