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(。-∀-)抗がん剤と血管外漏出の話


「抗がん剤と血管外漏出」の画像検索結果

化学療法中には0.5~6.5%程度の頻度で抗がん剤の血管外漏出が起こっているといわれている。どの抗がん剤でも、血管外漏出により局所の壊死を起こす可能性がある。皮膚や皮下組織に対する組織障害性・反応の強さには、抗がん剤の種類、pH、浸透圧、薬剤濃度、漏出した薬剤の量などが関連している。

 

■血管外漏出時の臨床症状

自覚症状には、注射針の穿刺部位周囲の不快感、違和感、圧迫感、痺れ感、疼痛などがあるが、症状の程度や出現時期によって異なる。血管外漏出が起きても、すぐに症状が認められず、数日経ってから局所の異常に気付くこともある。

他覚所見では、初期には発赤や腫脹が認められ、局所の炎症の進行に伴い水泡形成、硬結、潰瘍、壊死などが起こる。皮膚障害のピークは7~10日後であることが多く、血管外漏出に気付かないで初期段階における適切な対応が遅れると不可逆的な状態となってしまうこともあるので注意が必要である。

 

■抗がん剤の種類別による組織障害の違い

①起壊死性抗がん剤(Vesicant drug)

少量の血管外漏出でも紅斑、発赤、腫脹、水泡性、皮膚壊死を生じ、難治性の潰瘍を形成する可能性がある抗がん剤である。傷害発生時の疼痛が極めて強く、ドキソルビシン<アドリアマイシン>(アドリアシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシイン)など、漏出後2~3ヶ月経過してから潰瘍形成が著明になる抗がん剤もある。

②炎症性抗がん剤(Irritant drug)

局所で発赤、腫脹などの炎症性変化を起こすが、一般に潰瘍形成までは至らない薬剤。少量の漏出では、もし気付かずに放置してしまっても自然に症状が消失することがあるが、大量に漏出した場合は強い炎症や疼痛を起こす。

③起炎症性抗がん剤(Nonvesicant drug)

多少の血管外漏出が起こっても、炎症や壊死を起こしにくい抗がん剤で、多くの場合は経過観察を行い、必要に応じて処置を行うことで対応可能である。

 

■血管外漏出による次回治療への影響

血管外漏出が起きると、激しい疼痛や、潰瘍による身体的、精神的苦痛からQOLが低下したり、感染を起こしたりすることもある。手背部など皮膚の直下に腱がある部分では、腱の変性や癒着を生じたり、強い硬結により運動が制限される場合もあり、大きな問題になることがある。また、多くの場合、血管が損傷し、次回の化学療法時の抗がん剤投与ルートとしては使用できなくなる。

 

<血管外漏出発生の予防>

■危険因子の把握

以下に危険因子をまとめる。

血管の脆弱性

高齢(血管の弾力性や血流量の低下)
栄養不良
糖尿病、皮膚結合織疾患
肥満(血管がみつけにくい)
血管が細い
化学療法を繰り返している
 

 

 

 

 

 

注射部位の

問題

頻繁に静脈の穿刺を受けている
抗がん剤の反復投与が行われている血管
静脈確保の際、既に1回穿刺をした血管
輸液などで既に使用中の血管
循環障害のある四肢の血管(病変や手術の影響で浮腫や静脈内圧の上昇を伴う患側肢の血管)
以前に放射線治療を受けている部位の血管
腫瘍浸潤部位の血管
創傷瘢痕がある部位の血管
ごく最近皮内反応を行った部位の下流の血管(皮内反応部位で漏出が起こる)
24時間以内に注射した部位より遠位側の血管(漏出がしばしば経験されるので要注意)
肘関節、屈曲部など。曲げるとずれやすい部位の血管
血流量の少ない血管
抗がん剤の

投与量・速度

投与量が多い、または速度が速い
抗がん剤の

種類

血管刺激性の強い薬物

 

■適切な点滴部位の選択

血管外漏出の危険因子は針の刺入部位とも関係しているため、漏出した場合を想定し、血管確保は可能な限り神経や腱から遠く、外科的処置が行いやすい軟部組織に囲まれた部位を用いる。前腕橈骨皮静脈は固定がしやすいこともあって適している。関節部は可動性が高いため漏れが生じやすく、特に肘窩部では多量の漏出が起きるまで気付かない場合がある。手背など腱が皮膚に近い状態では、漏出時に腱が変性、癒着し指が動かなくなるなどの問題が起こることがある。注射部位の表在静脈が萎縮している場合には、血管確保の10~20分前から、ホットパックや加温したタオルなどで暖め、血管を拡張させる。血管確保が困難な場合は、必要に応じて埋め込みポートの設置も考慮する。

 

■確実な針の固定

血管確保の際に刺入した針がきちんと固定されていないと抗がん剤が漏出しやすくなる。例えば透明テープを用いて針を固定すると刺入部位の観察が容易になる。また、ルートが引っ張られると漏出しやすくなるので、状況に応じてルートの長さを調節し、針の手前にループを作って体の動きによる影響を直接受けないようにする。

 

■血管に確実に入っているかの確認

血管を確保したら、注射筒で吸引して血液の逆流を確認し、抗がん剤を投与する前に生理的食塩水をゆっくり注入するか制吐剤など抗がん剤の入っていない点滴を滴下し、抵抗がなく静脈内に点滴できる状態であるかを確認する。また、投与量が多かったり、点滴速度が速かったりすると漏出の危険性が高くなるので、使用する抗がん剤に定められた用法の範囲内で調節する。投与中には、針の挿入部位やルートの状態、滴下の状態を観察し、針の固定や血液の逆流を再確認するなど漏出の防止に努める。

 

■治療終了後も注意する

投与後は、生理食塩水などでルートをフラッシングし、注意して針を抜く。止血が十分でないと、抗がん剤が逆流する可能性があるので、止血をしっかり確認する。

 

■患者指導による問題発生の回避

血管外漏出の第一発見者は患者であることが多く、癌化学療法を受ける患者本人や家族に、血管外漏出について説明し、理解と協力を得ることが重要である。早期の発見と対処が予後に影響するため、異変があったらすぐ伝えるようにする。患者によっては痛みを我慢して増悪させてしまうこともある。抗がん剤投与中には、ルートを引っ張ったりしないよう気をつけてもらうことも大切である。また、外来癌化学療法を行っている患者では、帰宅してから問題が発生する場合があり、投与した部位の発赤や腫脹、疼痛の有無などについて継続的に注意を払い、異常があった場合はすぐ医療スタッフに連絡してもらうようにする。

 

<抗がん剤が血管外漏出した時の対処>

血管外漏出は、早期発見、早期対応が原則で、発生後1時間以内に適切な対応を行うことにより、組織傷害の発生を最小限に食い止めることができるといわれている。

抗がん剤が血管外に漏出した際の対処法の例を、下に示す。

起壊死性抗がん剤の漏出が疑われた場合の対処
1)注射あるいは点滴を止める。

2)注射針はすぐに抜去せず、薬液あるいは血液をできるだけ吸引除去する(目安3~5ml)

3)漏出部へ解毒剤を投与(点滴に使っていた針・ルートをできれば使用)する

4)注射針を抜去する

5)局所を冷却し、漏出側の四肢を挙上する

6)記録する

7)漏出部位の経過観察をする(1週間くらい)

8)皮膚科や形成外科医へコンサルトする

*患者から症状の訴えがなくても、後から症状の発生を見ることがあるので、起壊死性抗がん剤の場合は解毒剤投与を行う。

炎症性抗がん剤の漏出が疑われた場合の対処
少量の漏出では冷罨法のみで自然消滅することがあるが、ときに疼痛・発赤・腫脹が継続することがあるので、漏出部位の観察と早期の対策を講じた方がよい。

大量の漏出の場合は、起壊死性抗がん剤と同様の解毒剤投与を行う。

起炎症性抗がん剤の漏出が疑われた場合の対処
経過を観察し、状態により処置を行う。

 

■薬物による保存療法

抗がん剤の血管外漏出に対する標準的な薬物療法は確立されていないが、国内で一般的に使用されているのはステロイド剤で、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム(ソル・コーテフ、サクシゾン)や、ベタメタゾン(リンデロン)がよく用いられる。

ヒドロコルチゾンなどは、それ自体が疼痛を惹起することがあるので、注射時の疼痛対策として1~2%塩酸リドカイン(キシロカイン、ペンレスなど)または塩酸プロカイン(オムニカイン、ロカインなど)を1:1の割合で加え、整理食塩液で5~10mlに調整し、漏出部位周囲に局所注射する。

起壊死性抗がん剤の漏出後1時間以上が経過している場合は、より高い濃度で増量し、投与範囲を拡大して、24時間以上経過しても傷害が治まるまで反復して投与する。

局所注射後には、1日2回、患部にstrongestのステロイド軟膏(デルモベート軟膏など)を塗布し、0.1%アクリノール液による湿布を行う。アクリノール液の湿布は患部の保護と消毒が目的で、抗炎症作用はない。かぶれを生じる場合などはポピドンヨードなど他の消毒薬を使用しても構わない。

日本では医薬品として保険の適用は認められていないが、海外で汎用される解毒剤として、ビンカアルカロイド系抗がん剤にはヒアルロニダーゼが、アントラサイクリン系やマイトマイシンC(マイトマイシン)などの抗がん剤にはジメチルスルフォキシド(DMSO)が使用される。

近年、様々ながん治療において広く使用されているパクリタキセル(タキソール)は一般に起壊死性抗がん剤に分類されるが、実際には壊死に至ることは少なく、軽度な場合は無処置あるいは冷罨法により回復するといわれている。パクリタキセルの血管外漏出の報告例をまとめた米国の文献によれば、濃度により壊死を引き起こす可能性があり注意を要するが、通常は冷罨法による処置が適切と考えられ、温めることにより逆に悪化した例が報告されている。ヒアルロニダーゼはパクリタキセルの解毒剤として期待されるが、その効果と安全性の評価にはさらなる検討が必要である。

また、白金錯体製剤(プリプラチンなど)や、アクチノマイシンDなどの漏出に対しては、中和作用を持つチオ硫酸ナトリウムを局所注射することにより、皮膚毒性の改善が期待できる。

疼痛が強い場合は全身的な鎮痛剤の投与も行う。

 

■理学療法における原則は患部の冷却

血管外漏出時には、抗がん剤の拡散防止と消炎を目的として、患部の冷罨法が行われる。漏出から48時間までは、6時間ごとに15分間、アイスパックや氷枕で患部を冷却する。温罨法は薬剤の分散と吸収促進を目的として、ビンカアルカロイド系抗がん剤の漏出に対して行うことがあるが、加温の意義については明らかになっておらず、局所を冷やさないという意味での加温と解釈する意見もある。

また、漏出後2日間程度は患部のある上肢を挙上し、安静を保つことが推奨されている。

薬物療法や、理学療法を3日以上行い、疼痛や紅斑などが消失すれば、抗がん剤の血管外漏出による障害は対処できたと考えられる。

 

■必要であれば外科的治療を行う

漏出後、薬物療法などを1~2週継続しても軽快せず、疼痛や局所壊死などが進行する場合や、皮膚の潰瘍、壊死、細菌感染などが生じた場合には、デブリードマンなどの外科的処置の適応となる。植皮が必要となる場合もある。起壊死性抗がん剤の漏出時には、対症療法を行うと同時に、皮膚科や形成外科などの専門医に外科的処置について相談することが望まれる。

 

<静脈炎について>

抗がん剤自体に強い血管刺激性がある場合、しばしば静脈炎の発生を経験する。発症の程度については個人差があり、発症の可能性のある抗がん剤の使用時や、静脈炎の既往がある患者では十分な注意が必要である。抗がん剤投与の前後に生理食塩水の投与を行い、プレドニゾロンに換算して25~50mg程度のステロイド剤を混注する場合もある。抗がん剤投与時は、可能な限り希釈し、ゆっくり点滴静注をすることが静脈炎の防止に有効とされるが、ビノレルビン(ナベルビン)については投与時間が長くなるとかえって静脈炎の頻度が高くなるという報告がある。

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