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(〃^ー^〃)肝癌の話


「肝癌」の画像検索結果

肝臓および胆嚢の構造

(1)肝臓

肝臓は腹腔の右上部で横隔膜の直下にあり、赤褐色、重さ約1.2kgの実質臓器である。左方の小部分が正中線より左方にある。上面(横隔面)は一般に凸隆し、横隔膜の円蓋に適合する。厚くて大きい右葉と薄くて小さい左葉に分けられ、その境界部に肝鎌状間膜が付着している。さらに下面では方形葉、尾状葉を区別する。

下面は他の腹腔臓器と接触するために臓側面といい、凹凸に加えて、2つの縦溝とこれをつなぐ横溝があり、これらの溝はH字形を呈する。横溝は肝門といい、門脈、固有肝動脈、左・右肝管、神経などが出入りするが、肝静脈(2~3本)はここから出ないで、後面から出て直接下大静脈に注ぐ。左縦溝は静脈管索裂と肝円索裂で、それぞれ静脈管索、肝円索がはまる。右縦溝は大静脈溝と胆嚢窩で、それぞれ下大静脈、胆嚢がはまる。

肝臓の表面は横隔膜に付着している部位(無漿膜野)を除いて、腹膜に包まれる。腹膜下には結合組織性の被膜(線維膜)があり、これは肝臓の全表面を包む。線維膜から実質内に入る小葉間結合組織により肝臓実質は無数の六角柱形の肝小葉に分けられる。ただし、ヒトの肝臓では小葉間結合組織の発達は悪く、六角形の角付近に存在するのみである。この小葉間結合組織をグリソン鞘といい、それに包まれて固有肝動脈の枝の小葉間動脈、門脈の枝の小葉間静脈、小葉間胆管(単層立方上皮)、リンパ管などがある。

肝小葉は中央の中心静脈を中心にして肝細胞索が放射状に並び、その間に細網線維および毛細血管(類洞)の網がある。小葉間動静脈の血液は類洞に注ぎ、類洞を流れた後中心静脈に集まり、肝静脈を経て下大静脈に注ぐ。類洞内には貪食能をもった星状のクッパー(クッペル)の星細胞があり、血液中の細菌、異物などを摂取する。肝細胞索をつくる肝細胞間には細い隙間である毛細胆管があり、これが小葉間胆管につながっている。肝臓は機能的には胆汁を分泌する外分泌腺でもあり、肝細胞で産生された胆汁は毛細胆管、小葉間胆管を経て左右の肝管に集まる。左右の肝管は合流して総肝管となり、胆嚢からの胆嚢管と合して総胆管となり、大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)に膵管とともに開口する。

(2)胆嚢

肝臓下面の胆嚢窩にはまっているナス形の嚢で、胆汁を一時蓄えておく器官である。太い端の胆嚢底・体・頸を区別し、頸に続く胆嚢管が総肝管に合流している。総肝管を流れてきた胆汁は、一時的に胆嚢管を通って胆嚢に貯蔵され、必要に応じて今度は胆嚢から胆嚢管を逆向きに流れてきて総胆管に流れ込み、大十二指腸乳頭から十二指腸内に分泌される。

(3)門脈

胃や腸、脾臓、膵臓を経た静脈血は、合流して門脈に入り、肝臓に流入する。肝臓では、吸収された様々な物質の処理(解毒・分解・合成)が行われる。肝臓には肝動脈も流入するため、肝臓には2系統の血管から血液がはいることになる。

門脈は一種の静脈であるため、門脈圧は約8mmHgと低い。しかし、肝臓の循環抵抗がきわめて低いため、毎分1.2~1.5ℓという大量の血液が流れ込むことができる。ただし、肝硬変などにより、肝循環抵抗が増大したり、下大静脈にうっ血が生じたりすると、逆行性に門脈のうっ血をきたし、門脈圧が上昇する。これが門脈圧亢進症である。門脈圧亢進症では、腹腔内諸臓器からの血流が、門脈・肝臓の迂回(バイパス)して下大静脈に注ごうとするため、食堂静脈瘤や痔核など各種の症状が出現する。

 

肝臓および胆嚢の機能

(1)代謝機能

肝臓は門脈を介して腸管で吸収された栄養素を受け取り、これを分解・合成して別の成分に変える。

①グリコーゲンの合成と分解:血液中のグルコース濃度(血糖値)が高いときには、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンの刺激に応じて肝細胞がグルコースを取り込み、グルコースをつなげてグリコーゲンに変えて肝臓内に貯蔵する。血糖値が低下すると、同じく膵臓から分泌されるグルカゴンに反応してグリコーゲンを分解してグルコースにかえ、血液中に放出して血糖値を正常範囲に維持する。

②血漿タンパク質の生成:吸収されたアミノ酸から、アルブミン、グロブリン、フィブリノゲンなどの血漿タンパク質や、種々の凝固因子を合成する。

③脂質代謝:中性脂肪、コレステロール、リン脂質などを合成する。

④ホルモン代謝:エストロゲン(女性ホルモン)やバソプレシン(抗利尿ホルモン、ADH)など、多くのホルモンを不活化する。

(2)解毒・排泄機能

肝臓は、主として脂溶性の有毒物質を、毒性の低い物質にかえて尿中に排泄したり、胆汁として腸管内に排泄したりする。たとえば、たんぱく質の分解によって生じたアンモニアは、肝細胞によって毒性の少ない尿素にかえられ、また摂取したアルコールも肝細胞によって分解される。

(3)胆汁の産生

脂肪の消化に重要な役割を果たす胆汁は、肝細胞によって産生される。胆汁のおもな成分は、胆汁酸・リン脂質・コレステロール・胆汁色素(赤血球の破壊によって生じるビリルビンが主)であり、総肝管を経て胆嚢にはいり、ここで濃縮され胆汁として十二指腸内に分泌される。

腸に送り出される胆汁の最大の役割は、身体に不要な物質を排出することである。肝細胞がおかされたり、胆道がつまって胆汁が消化管に排泄されず血液中に入ると、黄疸が起こり、全身状態が悪化する。

(4)貯蔵機能

肝臓には、赤血球産生のために必須の鉄や、ビタミンA、B12、Dなどのビタミン類が貯蔵されている。また、血液の貯蔵部位としても、脾臓とともに重要であり、運動時や出血によって循環血液量が不足したときには、肝臓や脾臓に貯蔵されていた血液が動員される。

(5)胆嚢の機能

胆嚢は、胆汁を一時的に貯蔵し、水分を吸収して濃縮する。食事をとると、コレシストキニンが小腸粘膜から分泌され、胆嚢を収縮させ、オッディ括約筋を弛緩させて胆汁が十二指腸に排出される。胆汁は様々な固形成分を含んでおり、胆嚢で胆汁が濃縮されると、これらの成分からしばしば石が作られる。(胆石)胆石を排出しようとして胆道に蠕動が起こると、激しい痛みが起こる。(胆石仙痛)

 

1)原発性肝癌

●病態生理
肝臓に原発する原発性肝癌は、肝細胞癌と胆管細胞癌に分けられる。95%は肝細胞癌で、残りの5%が胆管細胞癌である。肝細胞癌は50~60歳代の男性に多く、その約90%は肝硬変ないしそれに近い慢性肝炎を伴う。B型あるいはC型肝炎ウイルスとの関連が深く、現在では、70~80%にC型肝炎ウイルスの関与が認められている。

 

肝細胞癌

●症状

初発症状は、全身倦怠感・食欲不振・腹部膨満感・腹痛・体重減少などであるが、腫瘤が小さい場合には無症状のことが多い。病気の進行とともに黄疸・腹水・食道静脈瘤・低血糖発作などを認めるようになる。肝癌が破裂すると腹腔内出血をきたし、急性腹症として発症することもある。

●診断

①肝機能検査:併存する肝硬変の程度によって、白血球数・血小板数の減少、AST(GOT)・ALT(GPT)の上昇、LDH・ALPの上昇、血清ビリルビンの上昇、血清アルブミンの低下、インドシアニングリーン(ICG)処理能の低下、プロトロンビン活性値の低下などがみられる。

②腫瘍マーカー:αフェトプロテイン(AEP)やビタミンK欠乏タンパク-Ⅱ(PIVKA-Ⅱ)などの腫瘍マーカーの測定が有用である。AFPあるいはPIVKA-Ⅱが異常高値となる肝細胞癌は、全体のおよそ70%を占める。
③画像検査:

(1)体部CT:一般に低吸収域として描出される。造影CTでは、非がん部とのコントラストが増強し、最小1cmの大きさまで検出可能である。

(2)超音波検査:肝細胞癌では薄いハロー(腫瘍周囲の低エコー帯)をもち、内部エコーは高エコーでかつモザイク状のことが多い。この検査は無侵襲で手術前の肝生検、手術中の切除範囲の決定、肝内脈管の同定にも有用である。

(3)MRI:T1強調画像では高信号から低信号まで様々な像を示すが、T2強調画像では大部分が高信号を示す。造影MRIは肝細胞癌の質的診断や鑑別診断にも有用である。

(4)肝血管造影:肝動脈造影では拡張した腫瘍血管像、濃染した腫瘍像、肝動脈と門脈または肝静脈との間のシャント(短絡)像などがみられる。門脈造影では、門脈腫瘍塞栓の有無や門脈圧亢進症による側副血行路の状態が把握でき、治療上有用である。

●治療

①肝切除術:肝機能が良好であれば肝切除を第一に考慮する。肝硬変を合併していない場合には肝臓は80%近くまで切除することが可能である。しかし、肝細胞癌においては、肝硬変を合併している場合が多いので、肝切除後の残存肝の予備能を考慮して切除適応の是非や切除範囲を決定することが重要である。なお、切除範囲決定のため、肝臓を8区域に分けるクイノーの分類が用いられてい。

クイノーによる肝区域(Ⅰ~Ⅷ)

手術法には、右葉切除・左葉切除・外側区域切除・前区域切除・後区域切除・拡大右葉切除などがある。また、肝内の脈管分布を考慮した肝癌小区域の切除(亜区域切除)も行われている。

肝切除術式

②経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA):肝機能障害が高度にあり肝切除不能の場合には、超音波ガイド下に経皮的ラジオ波焼灼療法が行われる。適応は、超音波で腫瘍全体が描出されるもので、最大径3cm以下、3病巣以内の症例である。同様の適応でマイクロウェーブ凝固壊死療法(MCT)、経皮的エタノール注入療法(PEIT)が行われているが、RFAは少ない治療回数で広い焼灼範囲が得られるため、近年急速に普及している。

経皮的ラジオ波焼灼法

③塞栓療法(TAE):肝細胞癌は栄養血管として肝動脈支配が優位であるため、動脈塞栓物質で遮断し、腫瘍の縮小あるいは消失をはかるものである。塞栓物質としてゼラチンスポンジ、ゲルフォームなどが用いられる。また、TAE施行時にアドリアマイシン、マイトマイシンCなどの抗がん剤を同時に動脈注射する化学塞栓療法も試みられている。

④肝移植:肝細胞癌に対する肝移植は、非常に重症の肝硬変を合併していても、また多発のものであっても、肝全摘によって完全に腫瘍を摘出できるという利点がある。肝移植は、脳死患者より全肝を移植する全肝移植と、血縁者の部分肝を移植する生体部分肝移植に分類される。わが国では、いまだ全肝移植が一般的医療として定着していないが、近年、生体部分肝移植はさかんに行われるようになってきた。しかし、適応に関してはまだ一致した見解が得られておらず、今後の検討課題となっている。

●予後

 肝切除術の予後には、腫瘍の個数・大きさ、AFP値、合併肝病変の程度などが関与している。

 近年、遠隔成績は向上し、全般として、5年生存率が50%までに達するようになった。しかし問題は、肝硬変合併肝細胞癌は、いかなる治療を行っても2~3年で60~70%に再発がみられることである。これは、ほとんどの肝細胞癌が肝炎ウイルスを原因として発生してくることを考えると、当然予想されることであるが、今後は、肝炎ウイルスを駆除するなどの再発抑制法を検討する必要がある。

胆管細胞癌

 肝内胆管から発生した上皮性腫瘍で、原発性肝癌の約5%を占め、その病因は不明である。初発症状は食欲不振・全身倦怠感・腹痛・発熱などである。肝門型では黄疸を主訴とするものが多い。

 肝切除が唯一の治療法であるが、癌の進行が速く、浸潤・転移傾向が著しいので切除できないことも多く、きわめて予後不良である。

2)転移性肝癌

 肝臓は門脈と肝動脈の二重血流支配を受け、広い血管床を有するため他臓器からの転移が多く、その発生頻度は、原発性肝癌の20~25倍である。

 肝転移の経路には門脈性・肝動脈性・リンパ行性のものと直接浸潤がある。CTでは一般に低吸収域として描出されるが、肝細胞癌と異なり、造影剤を使用してもコントラストは増強しない。

 治療では、原発巣が根治的切除され、ほかに転移のない場合に肝切除の適応になる。肝切除術の対象による疾患の大部分は大腸癌であるが、肝切除後の5年生存率は約40%と比較的良好である。切除不能の症例には化学療法が行われる。

●看護

肝癌患者の看護

□アセスメント

(1)病巣の状態(原発癌、転移癌、単発・多発、部位、大きさ)

(2)肝障害度

(3)検査データ:LDH・AST・ALT・電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・塩素)・血糖・総タンパク・アルブミン・コレステロール・腫瘍マーカー(AFP・CA19-9・CEA・PIVKA-Ⅱ)、超音波検査、CT、MRI、血管造影検査

(4)自覚症状の有無と程度:上腹部膨満感・上腹部痛・発熱・肝腫大・食欲不振・倦怠感・著明な体重減少

(5)他覚症状の有無と程度

①肝性脳症:意識状態、せん妄様状態(つじつまの合わない言動・昼夜逆転・見当識障害・集中力低下など)

②浮腫:部位・程度、皮膚の状態

③腹水:腹部の皮膚の状態、圧迫感

④黄疸:程度、蚤痒感

(6)栄養状態

①食事の摂取状況:内容・量、回数、栄養補給の方法・内容・量

②摂取時の状態:吐き気・嘔吐・腹部膨満感

(7)抗がん剤による副作用の有無と程度

①消化器症状:吐き気・嘔吐・食欲不振・口内炎・下痢・便秘

②骨髄機能抑制症状:白血球数・血小板数の減少、二次感染、出血傾向

③その他:脱毛・腎機能障害など

(8)患者と家族の病気に対する理解度と不安

(9)家族の支援体制

□看護目標

(1)全身症状を伴う身体的苦痛が緩和される。

(2)精神的苦痛が緩和される。

(3)十分に休息・睡眠をとることができる。

□看護活動

●食事療法への援助:

食事は高エネルギー・高タンパク・高ビタミン・高ミネラルのものとし、患者の栄養状態が、よい状態で維持できるようにつとめる。食欲不振や吐き気・嘔吐がある場合には、消化がよく、患者の好みの食品を選び、少量ずつ回数を多くする。腹水・浮腫がある場合には、食塩と水分の制限が行われるため、水分出納バランスの観察と、体重・腹囲の測定などを正確に行う。

●皮膚の清潔保持:

黄疸がある場合は、蚤痒感を伴うため、皮膚の清潔を保持する。よごれた皮膚は、よごれが刺激となってかゆみを誘発させるので、身体を清潔にして、少しでも刺激を少なくする。とくに発汗後は即清拭を行う。なお、できれば朝夕の清拭計画を立て、疲労を与えないように根気よく清拭するとよい。かゆみの強いときには石鹸を使用しないで、アルファケリー・オリブ油などを用いて清拭する。また、清拭時には皮膚の状態(色・出血斑・発疹・擦過傷)を観察する。かゆみのために引っかき傷をつくり、感染を起こすことも多いので注意する(肝機能低下により免疫力も弱まる)。出血傾向がある患者には、皮膚の摩擦・圧迫・外傷、機械的刺激を避ける。また歯ブラシは毛の柔らかいものを使い、歯肉を傷つけないようにする。

●症状に伴う苦痛の緩和:

腹水による圧迫症状がある場合には、圧迫を避けるために寝衣はゆとりのあるものとし、掛けものは軽い素材のものにする。また上半身を高くすることにより胸郭への圧迫を避けて呼吸運動が円滑に行われるようにするなど、体位のくふうによって苦痛の緩和につとめる。

●化学療法への援助:
がん細胞の増殖や浸潤などを阻止する目的でTAEの際に抗がん剤を注入する化学塞栓療法を行うことがある。抗がん剤を注入すると、吐き気、嘔吐、食欲不振などの消化器症状や骨髄機能抑制による白血球数減少、腎機能障害など多様な副作用が出現し、患者は苦痛をしいられることになるため、苦痛症状を緩和し、感染を予防して、状態の変化に十分に注意する。

●苦痛を伴う治療への援助:

経皮的ラジオ焼灼療法(RFA)は、AMラジオ放送と同様の460kHzの電磁波を通電し、癌結節内に熱を発生させることによって組織を焼灼させる治療法である。1回の穿刺通電によって直径3cmという、従来よりも広範囲の焼灼範囲が得られるため治療の回数が少ない、入院期間が約2週間と短期間であるなどの理由から、最近急速に普及している。RFA後にはさまざまな合併症がおこる可能性があるため、合併症の予防と早期発見に努めることが重要である。とくに治療後数時間以内に腹腔内出血や胸腔内出血をおこしやすいため、治療後4時間は絶対安静とし、治療後1日目まではバイタルサインの変化に注意する。肝機能が低下している患者が出血をおこすと、容易に肝不全を引き起こすため、早期発見・対処することが重要である。治療翌日には消化管穿孔による腹膜炎を起こす可能性があるため、強い腹痛が出現したらすみやかに医師に報告する。また、治療翌日から退院後までは、肝膿瘍や肝梗塞、治療の数日後から退院後にかけては胆管損傷に伴って感染をおこす可能性があるため、観察を怠らないようにする。

●不安の緩和:

 肝臓がんの患者は、C型肝炎から肝硬変、そして肝臓がんという経過をたどることが多く、長期にわたって治療を受けてきたにもかかわらず、病状は悪化の一途をたどるために医療不信を抱いている場合がある。また長期の療養を強いられるために心理的負担感が大きいことが考えられる。食欲不振・吐気・嘔吐・腹部膨満感・黄疸などの症状が続くことにより、病気がなかなかよくならないと感じて将来への不安を抱くことがある。したがって看護師は患者感情表出を促し、受容的にかかわり、患者が現状を受け止められるよう援助する。

<手術前の看護>

栄養状態の改善をはかり、心身ともに良好な状態で手術にのぞめるよう援助する。

□アセスメント

(1)手術に関する内容:術式、麻酔の種類、予想される手術時間、予測される術後の状態(ドレーンの種類、集中治療室への入室など)

(2)全身状態:バイタルサイン、栄養状態、感染症の有無、水分出納のバランス、意識状態、薬剤アレルギーの有無

(3)疾患に伴う症状:黄疸の有無と程度、腹水の有無と程度、浮腫の部位と程度、吐き気・嘔吐・食欲不振、腹痛の有無と程度、出血傾向

(4)検査データ:肝機能検査(AST・ALT・LDH・ビリルビン・アルブミン・血中アンモニア・コリンエステラーゼ・インドシアニングリーン試験)、血球検査(赤血球数・白血球数・血小板数・ヘモグロビン・ヘマトクリット)、出血凝固検査(プロトロンビン時間・フィブリノゲン・フィブリン分解産物〔FDP〕)、栄養状態(総タンパク・アルブミン)、肺機能検査、腎機能検査(血液尿素窒素・クレアチニン)、電解質検査(ナトリウム・カリウム・塩素・カルシウム)、画像検査(CT・MRI)

(5)食事の摂取状況:内容・量・回数・栄養補給の方法・内容・量

(6)合併症:糖尿病など

(7)手術に対する患者と家族の受け入れ体制

(8)患者と家族の訴え・不安

□看護目標

(1)手術に向けて肝機能や栄養状態などが改善する。

(2)食欲不振・発熱・全身倦怠感など、全身症状を伴う苦痛が緩和される。

(3)手術を受けることについて納得することができる。

(4)患者とその家族が手術や麻酔について理解し、手術に対する不安が軽減する。

 

□看護活動

●検査時の援助:

患者にとって検査は身体的、精神的苦痛を伴うものである。したがって検査の必要性を説明して理解を促すとともに、検査前後の処置や状態、検査方法について十分な説明を行い、少しでも苦痛や不安が緩和されるように援助する。また、患者の手術前の全身状態、検査データを正しく把握する。特に肝機能の状態は、手術後の回復に大きな影響を及ぼすためしっかりと把握しておき、手術後の状態を予測しておくことが大切である。

●栄養状態の改善:

患者の栄養状態は、手術後の回復に影響を与えるので正しく把握し、手術前に改善することが重要である。食事は医師の指示がないかぎり高タンパク・高ビタミン・高エネルギーの食事とする。経口的に十分な栄養を摂取することができない場合には中心静脈栄養が行われる。

●黄疸の改善:

黄疸がある場合は、手術前に黄疸を軽減する目的で経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)が行われる。ドレナージチューブの挿入時には、患者の不安の軽減につとめる。また黄疸は蚤痒感などの不快な皮膚感覚を伴うので、皮膚の状態の管理にも留意する。

●術後合併症の予防:

手術後の肺合併症を予防するために、創があることを想定した呼吸練習や、インセンティブスパイロメトリー(トリフロー・インスピレックスなど)を利用した呼吸理学療法を行う。喫煙者には禁煙の必要を説明し、実施してもらう

●不安の緩和:

患者とその家族が手術や麻酔について、どのような不安を抱えているか把握する。そして手術を受けることに納得できるよう、術前オリエンテーションを行って手術前の準備や手術後の状態について説明を行い、手術を受けるにあたりどのようなことがあるのか、患者が具体的にイメージできるようにする。

<手術後の看護>

肝臓の手術は生体侵襲が大きく、肝不全などの重篤な術後合併症を引き起こすことがあるため、全身症状を把握し、合併症の予防・早期発見につとめる。

□アセスメント

(1)手術に関する内容:手術内容、手術時間、麻酔の種類、出血量、ドレーン挿入の部位、覚醒時の状態

(2)全身状態:バイタルサイン、意識状態、体重・腹囲、水分出納バランス

(3)手術創部の状態:出血、創部からの浸出液の有無

(4)術後合併症の徴候

①肝不全:昼夜逆転、人格変化、精神反応の鈍さ、見当識障害、意識レベルの低下、つじつまのあわない言動

②腎機能障害:尿量低下、血液尿素窒素値の上昇、クレアチニン値の上昇

③後出血・胆汁漏:ドレーンからの排液(性状・量)、血圧低下、頻脈、腹部膨満感

④無気肺・肺炎:喀たんの量と性状、咳嗽の有無、呼吸音

⑤糖代謝異常:血糖値

⑥感染症:バイタルサイン、腹痛の有無、ドレーンからの排液の性状・臭気

(5)検査データ:肝機能検査、腎機能検査、電解質検査、栄養状態、貧血の有無、血ガス分析

(6)食事の摂取状況:内容・量・回数、栄養補給の方法・内容・量

□看護目標

(1)術後合併症が予防・早期発見される。

(2)肝細胞の修復と再生が促進させる。

(3)身体的・精神的ストレスを軽減し、十分な睡眠と休息がとれる。

□看護活動

●全身状態の観察:

手術直後はまだ麻酔から十分に覚醒していないため、覚醒状態を確認するために意識レベルを経時的に観察する。また麻酔からの覚醒を促すため、バイタルサインの測定のたびに深呼吸を促すようにする。肝臓の手術後は腹水が出現しやすい。また生体への侵襲が大きく、循環動態が不安定になるため、バイタルサインは経時的に把握し、異常の早期発見につとめる。

●合併症の予防・早期発見:

後出血や胆汁漏を早期発見するために、肝切離面に挿入されたドレーンからの排液の性状と量に注目する。血性の排液が多量に排泄される場合には、後出血が疑われる。また横隔膜下は陰圧になりやすく、逆行性感染をおこす可能性があるため、排液の臭気にも注意をはらう。通常は感染予防のために、ドレーンは1週間前後で抜去される。手術後1~2日間は、一過性にビリルビン値およびALT・ASTが高値となるが、これらの高値の持続、プロトロンビン時間活性値の低下、総コレステロール値の低下、耐糖能異常などの所見がある場合は、肝不全をおこしている可能性があるため、注意を要する。無気肺や肺炎を予防するためには、口腔内の清潔を保持し、吸入や吸引を行って、たんの喀出を促す。下葉はとくに無気肺をおこしやすいため、呼吸音の聴診の際には背部からの聴診を怠らないようにする。

●肝細胞の修復の促進:

肝細胞の修復を促進するため、安静の保持と安楽な体位のくふうにつとめる。門脈血流量を保持する目的でドパミンの少量持続投与を行う場合もあるので、その際には輸液の管理を確実に行う。

●不安の軽減:

手術が無事に終わっても、手術後の状態や経過、予後に対する不安など、患者と家族の不安はつきることがない。看護師は、患者とその家族の不安の内容を把握し、軽減できるようにつとめる。

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