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(〝⌒∇⌒〝)脊髄損傷とADLの話


((+_+))題名:脊髄損傷とADLの話

動作やADLの実際の方法や特徴(介助方法を含む)

損傷レベル:C6, C7, C8, T1

Ⅰ 起居動作²⁾

・単に各肢位の確保のために必要であるのみならず,柔軟訓練の意味を含めて実施する.

・ADL上,次の動作の準備,基本となるゆえ非常に重要.

 ・肘のサポーターや厚手の靴下の着用で褥創予防.

1.寝返り⁴⁾

 ・脊髄損傷者は常に運動は上肢と頭頚部の回転から始まり,順次尾側方向に伝わりながら,最後に下肢が回転して終わる.

 ・損傷レベルが高いほど,動力源として動きを起こす部分が少なくなり,動作が困難.

 ・多くの患者は上肢の反動を使って上半身の回転量を大きくしたり,柵やシーツをつかんで上半身を強く回転できるようにしている.

 ・寝返りを上手に行うために,

   頚部屈筋群や肩水平内転筋である大胸筋,三角筋前部などの筋力強化

   麻痺部位の柔軟性

   脊髄骨折部周囲の痛みを取り除く

・頭部,肩甲帯,上肢がいかに効果かつ効率よく機能するか,体幹の可動性,柔軟性が保持されているかが大きなポイント²⁾.

・C₆が自立の上限.

・C₇は完全自立.

1)C₅下位およびC₆上位損傷の寝返り²⁾

   ・上肢の投げ出し機能を用いた寝返り.

①寝返る方向と反対側に両上肢を振り,

②次に寝返る側に頭を向け,勢いよく両上肢を振りだし,体幹を回旋する.

一度で出来ない場合は,①と②の動作を数回繰り返し,反動をつけて行う.側臥位近くで骨盤がなかなか前方に回旋できないときは呼吸(吐くタイミング)に合わせて上肢を前方に突き出すように挙上していくと良い.

③上側上肢で上半身を支えるように,下側上肢を体幹の下から引き出す.

④腹臥位となる.

 

2)C₆損傷のベッド上でスリングを使用しての寝返り²⁾

・体幹の回旋運動による起き上がりである.

①幅の狭いベッドなどでは,ベッド脇に紐(ベッド枠でもよい)を取り付け,それに同側の手を引っ掛ける.

②肘を屈曲し,身体を引き寄せる.同時に反対の上肢を寝返る方向に振り出す.

③紐から手を抜き,上側上肢を前方に突き出すように挙上して腹臥位となる.

 

3)C₇損傷の寝返り²⁾

①寝返る方向の上肢を90°以上外転しておき,

②その腋窩部に頭部を差し込むようにし,

③もう一方の上肢で押し下げ動作(肘の伸展)を行い,肩甲帯を持ち上げるようにして寝返る.

床に付く手の固定が不十分なので,体幹に出来るだけ近い位置に付き,真下方向に力を加えるように指導する.

 

2.起き上がり

・動作を主として上肢筋力と頚部筋力で行う⁴⁾.

・動作に必要な肩伸展筋,水平外転筋,肘伸展筋の強化が必要⁴⁾.

・重心位置を移しながらバランスを失わないようにタイミングを上手に図ることが必要.

・座位姿勢の確保が問題²⁾.

・上肢の支持性(伸展保持)が必要²⁾.

・完全自立はC₇が一般的といえるが,C₆でも側臥位あるいは腹臥位からの起き上がりが可能となり,自立の上限はC6と考えるべき²⁾.

・一側上肢の伸展機能の獲得が不可欠²⁾.

1)C₆損傷の物につかまらない起き上がり²⁾

両下肢の重みを利用

①寝返りの要領で側臥位となり,

②側臥位のまま体幹を屈曲し,くの字となる.

③上側上肢を上側下肢の膝付近に引っ掛ける.

④左肘を強く屈曲すると同時に右肘の屈伸運動

繰り返し,上半身を引き寄せてくる.

⑤左上肢を下肢から抜き,体幹前屈位となる.

⑥肩の下制運動と腕の引き付け運動をタイミングよく反復運動               し,両肘を伸展位に保持,長座位となる.

 

2)C₆のベッド上での起き上がり²⁾

 

その1:ベッドのやぐらにスリングを2~3本取り付け, リーチ差により徐々に上体を起こしていく方法.

①一側上肢で一番手前のスリングに手

をかて,体を引き起こす.

②ついで,他側の上肢で次のスリングに

手をかける.

③最初のスリングから手を抜き,次のスリングに手

をかけ,さらに上体を引き起こす.

④スリングに通した上肢を力強く引き,同時に他側上肢をスリングから抜き,タイミングよく肘を伸ばし,ロックする.

⑤最後に反体側上肢もスリングから抜き,両上肢で支持し,長座位となる.

 

その2:足元の紐をたぐり寄せながら起き上がる方法⁴⁾.

①ベッドの足元に丈夫な帯ひもをループにして縛り付けておく.

②左の手関節を背屈させ,手をベッド柵に引っ掛け,肘を床について強く屈曲.この一連の動作で,体幹をその側に回旋させつつ引き寄せる.

③右前腕をひもにひっかけ,強く引いて体幹を引き起こす.この際のひもの長さ,縛りつけた位置が重要.何度か動作を繰り返して,長さや位置を調整.ひもを2~3回巻きつけると,さらに強く引ける.

④体幹を引き起こすと同時に左肘を体幹近くに引き付け,体重をかける.

⑤右上肢でひもを引っ張って体幹をさらに起こし,一連の動作で左肘を伸展して手掌をベッド面につく.

1回の動作では左手を体幹近くに引き付けた位置につくことが困難.同じ動作を繰り返して,手を体幹に近い位置に移しかえ,上体を直角近くまで引き起こす.

⑥ひもを放して手をベッド面につき両手で体幹を支える.

 

その3:ベッド柵につかまって起き上がる方法⁴⁾.

①寝返ろうとする右側の前腕をあらかじめベッド柵にひっかけておく.

②半側臥位まで寝返り,左側の手を背屈させて柵にひっかける.

③両上肢の力で上体を引き起こし,右肘の上に体重を乗せる.

④左上肢で引きつけながら,頭頚部を屈伸させて,その反動でついて右肘の位置を徐々に下肢の方へずらしていく.

⑤股関節が屈曲し,体重重心が股関節の前方へ出たら,上肢の力で上体を起こす.

 

3)C₇以下の起き上がり

・背臥位で,肘をついた位置から交互に肘を伸展して起き上がる.

 

3.座位移動²⁾

・日本家屋(たたみ上)での生活において獲得は不可欠.

・車いすからベッドなどへの移乗動作の基本訓練として習得しなければならない.

・座位姿勢の保持,

・移動方向による上肢のつく位置(肘折れを防ぐために前腕回外位にて伸展保持),

・殿部を挙上,移動させる能力(上肢の支持力,頭部,肩甲帯のタイミングよいコントロール),

・下肢の操作,が問題.

1)座位での方向転換:ベッドから車椅子へ移乗するためのポジショニング ³⁾

①長座位で片手で支持しながら,

②他方の上肢で下肢を持ち上げて側方へ移動.

・座位バランスの悪い患者では,長座位で体幹を最大に前傾し,片方の肘から前腕を両下腿の内側に入れ外方へ押しやる.

2)後方移動

<C₆>

①両手を大転子の少し前について支持,

②片方の上肢に体重を移動させるとともに,一方の肩を屈曲してベッドを前下方に強く押し,

③押した側の骨盤をねじるように後方へ引く.これを交互に繰り返す.

 

<C₇以下>

①プッシュアップで骨盤をわずかにでも浮かすことができれば体幹を前屈するようにして両側同時に後方に引く.

3)前方移動

<C₆>

①両側についた上肢に体重を移し,体幹を前屈

②ほぼ全体重がかかると同時にプッシュアップを行い,体幹を起こすように殿部を前方に押し出す.

③殿部が前方に移動するにつれて,下肢が屈曲するときは,一動作ずつ下肢への対応が必要.

<C₇以下>

①プッシュアップで骨盤を浮かすことができれば移動は容易.

4)側方移動

①両手を非対称的(移動方向の手を体から少し離す,あるいは少し前につくなど)に置き,前方移動と同様.

 

Ⅱ プッシュアップ動作⁴⁾

1.プッシュアップに必要な条件

・上肢の十分な筋力,特に肩甲帯周囲筋筋力が必要である.

・四肢麻痺患者では体幹を上方に吊り上げるために僧帽筋が,前傾した体幹を支えるために三角筋などの肩関節屈筋群が重要となってくる.

・第6頚髄節残存レベルでは,上腕三頭筋がほとんど機能しない.そのため肘関節を伸展位にロックした位置から押し上げ動作を行う.

・第7頚髄節レベルでは,上腕三頭筋が加わるだけでなく,大胸筋・小胸筋・前鋸筋により肩甲骨を外転する作用が増し,プッシュアップ動作が容易になる.

・プッシュアップ動作には,体幹と下肢の柔軟性の影響も大きい.

・対麻痺患者では,広背筋と体幹筋が残存しているので殿部を上後方に引き上げることができる.

・ハムストリングの緊張は不用あるいは邪魔になるので早期から伸張しておく.

・四肢麻痺患者では,殿部を後方に引き上げる動作はできない.さらにハムストリングの緊張は,坐位姿勢の安定性を増すために重要である.

2.プッシュアップ動作のパターンとその特徴⁵⁾

1)頚髄損傷

・プッシュアップ動作が有効で,機能的となる上限はC6B12レベルである.

・主に前鋸筋の作用による上肢の押し出しで動作は開始され,同時に,体幹を前傾させて重心を前方に移動し,その直後より広背筋の作用により肩甲骨下角を,てこの支点にして骨盤を引き上げる.

・この動作全体において,三角筋は殿部の挙上の際の軸となる肩関節の固定およびバランスのコントロールに作用する点で重要.

・C₇・C₈レベルでは,大胸筋がより有効に作用するようになるので,上肢に対する体幹の固定性が改善し,より体幹前傾の確保が可能となり,殿部をより高く挙上できる.

2)胸髄損傷・腰髄損傷

・上肢・体幹筋が作用するため,頚髄損傷のプッシュアップの動作パターンとは全く異なる.

・体幹はほぼ伸展位のままで,股関節の屈曲によって体幹を前傾し,殿部を挙上する.

・つまり股関節を軸とした体幹の前方への回転運動と,足部を動きの軸にした殿部の回転運動との複合動作である.

 

Ⅲ 移乗動作¹⁾²⁾

・リハビリテーションの鍵といわれるくらい重要.

・この動作の可能度合により,活動範囲やADL      の自立度が大きく異なってくる.

・家屋構造においても第一に配慮しなければならない点.

・自立のために必要な機能

・座位保持,体幹の柔軟性,両上肢の支持・運動性,ある程度の殿部の挙上・移動

・トランスファーが可能となるのはC₆B機能レベルが一般的.

1.車いす-ベッド間

<C₆の直角(前方)アプローチ>

①下肢の操作が可能な程度,ベッドからはなして車いすを真っすぐにつける.

②あらかじめ殿部を前方へずらし,車いすのグリップに肘を引っ掛けて体を固定し,他側の前腕を膝の下に入れてかしを持ち上げ,ベッドに乗せる.

③ベッドいっぱいにまで車いすを接近させる.

この際,フットレストの形状を工夫するなどの環境整備が必要.

④座位移動の要領で,ベッドに乗り移る.

・座位バランスが悪く,殿部の挙上能力が十分でない場合は,トランスファー・ボードやスリングなどを用いる.

・ベッドから車いすへ移乗するときは,手でベッドを押しながら,骨盤を交互に後方へ押しやる.

・介助を必要とする際は,介助者は殿部を持ち上げて前方へおす.

 

<C₆の側方アプローチ>

①ベッドと平行に車いすをつけ,アームレスト

をはずす.

②殿部をシート前方にずらし,両下肢をベッド

の上にのせる.

③リーチャーを利用してスリングを引き寄せ,

手にかける.

④スリングを反対の手にかけなおし,寝返るように乗り移る.

⑤ベッド上では腹臥位となる.

殿部挙上がある程度可能であれば,座位のまま乗り移れる.

<C₇以下損傷者の斜方アプローチ>

その1:車いすをベッドに斜めに位置させ,両下肢をフ

ットレストから下ろし,プッシュアップで移乗.

その2:車いすをベッドに斜めに位置させ,両下肢を

ベッド上にのせ,プッシュアップで移乗.

<介助>

・C₆Aレベル以上や,上肢の支持性,体幹の安定性などの問題により,介助が必要な場合.

・車いすとベッドあるいは車との間の以上に有効.

その1:立位姿勢での介助(クワドピボット法)

①車椅子をベッドに対して20~30°の角度に止める.

②患者を前方へ移動させる.

③介助者の膝で,患者の両膝を前側方より挟みこむ.

④介助者は頭を患者の腋の下に通す.介助者の手は殿部あるいは胸背部を抱える.

⑤介助者は膝を曲げて軽く腰をおろし,バランスをとりながら患者の殿部を引き寄せつつ,一緒に立ち上がる.

⑥患者の足部を中心に身体を回転させ,殿部を車いすに向ける.

⑦介助者は膝を曲げながら,患者の腰を車いすに降ろす.

 

その2:座位姿勢での介助

①患者を車いすシート前方に移動させる.

②介助者の膝で,患者の両膝を前側方よ

り挟みこむ.

③介助者は,患者を腋の下に抱え込む.

④前方より押し付けるようにしてズボンを持ち(ズボンを持つのはあまり好ましくないような….),バランスをとりながら殿部を浮かせる.

⑤患者の足部を中心に身体を回転させ,殿部をベッドに向け,移乗.

 

2.床-車いす間

・C₇以下の損傷者で,可能

 

Ⅲ 車いす操作³⁾

・脊髄損傷者にとって機動性ある足は車いす.

・車いすには車のもつ移動性(機動性)と椅子の持つ休息性,作業性という機能があり,処方にあたって対麻痺には前者,四肢麻痺には後者への機能再獲が考慮されるべき.

・車いすを駆動するためには,ハンドリムを握る手指の屈筋および手根伸筋が重要⁴⁾.

・平地で前方走行時の主要な駆動力源は三角筋前部・虫部,大胸筋,前鋸筋,上腕二頭

・上腕三頭筋は,強く駆動するために重要.

・上肢と肩甲帯の筋を有効に機能させるためには,頚部および体幹筋の働きも重要(重心の前後移動が容易になり,坂道や段差越えに必要な素早い駆動が可能).

・四肢麻痺者では,肩甲骨の挙上,・内転,肩関節の屈曲・外転・内旋,および肘関節の屈曲と前腕の回外に拘縮が発生しやすい.関節拘縮があると,車いすの駆動能力は著しく低下.

・関節可動域に制限があると,駆動や座位保持に影響するばかりではなく,車いす上動作が制限されることや不安定な原因にもなる.

 

1.残存レベルと車いすの種類

1)第5~第6上位頚髄損傷⁴⁾

・屋内や大きな建物内部を車いすで移動する必要がある場合は,手コントロール式電動車いすが実用的.

・操作レバーの位置や形状は,上肢機能に応じて工夫.

・不整地走行中の座位姿勢を安定させて操作能力を向上させるためには,座面に角度(前後差)をつけたり,体幹ベルトなどを処方.

・家屋内の日常生活や自動車での移動を考えると,手動式車いす.

・使用場所を屋内に限るなら,手動式車いすの座面前後差を大きくする必要はない.ただし駆動能力を最大限に引き出すためには,座面に対して骨盤を安定させるために前後差が必要.

・褥創予防のために,座圧が坐骨部に集中しないかどうかも十分に考慮が必要.

・ベッドへの移乗の直角アプローチを行う場合,フットレストをスイングアウト式などにする.

・グリップは,除圧動作や車いす上での各動作がしやすいよう,取り付ける高さと形状を工夫.

・ハンドリムには滑り止めをつける.また駆動の際に指が挟まれないよう,スポークカバーをつける.

2)第6下位~第7頚髄損傷

・車いすで行うほとんどの動作が可能.

・全体的な形状は片麻痺者の車いすと同様になる.

・ハンドリムの滑り止めは必要であるが,大きな摩擦力は要求しなくてよい.

・座角度は駆動の際の座位安定性を考慮すると,3~7°程度がよい.

・バックレストの高さは安定して座位のとれる高さとし,座面と背もたれの間の角度は95°前後がよい.このとき,生地をたるませて体幹部を包み込むような形状にすると座位安定性がさらに向上.

・アームレストの形は移乗のしやすさや机などへの接近のしやすさを考慮して,タイヤに沿った円弧状のタイヤアール型,あるいはデスクアーム型を処方する.

・C₇以下は,姿勢保持さえできれば標準型,さらにはスポーツ型の適応.

 

3)第8頚髄~胸腰椎損傷

・乗用車への積載(車載)を考慮し,軽量化.フレームやパイプはアルミ合金製.

・体幹のバランス機能がどれだけ残存しているかによってバックレストの高さを考慮.

しかし,このレベルの脊髄損傷者には,使用目的や使用環境などが総合的に検討されていれば,使いやすい使用を十分に処方.

・座角度を大きくしすぎると,坐骨部,仙骨部に圧力が集中,褥創の危険性.

 

2.手動車いすの操作³⁾

1)車いすの工夫と駆動用装具

・第5,6頚髄損傷者は把持力が低下するがハンドリムの工夫と駆動用手袋の使用により車いす操作が可能

・摩擦力を高めるため,ハンドリムにゴムチューブを巻きつけたり,プラスチックゴムをコーティーング.また同時に,駆動用手袋を用いることも必要である.

・第5頚髄損傷者ではさらに,数個のノブをハンドリムに取り付ける.

・ハンドリムのパイプ径を太くする(19mm径).

・つめ(リング取り付け金具)の数を増やす.

・C₆AおよびC₆BⅡで前腕回内位維持が困難な場合は,弾性回内装具が有効.

 

2)手と上肢の使い方

・第5,6頚髄損傷者は,把持力の欠如のためハンドリムを主に小指球で内下方に圧迫して前進.

・後退は,前腕の遠位端前面あるいは尺骨面をハンドリムに押しつけ上後方へ引く.

・第5頚髄損傷者で手関節の固定が弱く,回内外中間位維持が困難な場合,ノブを前腕遠位端前面で押し出すように前進.

・駆動時のハンドリムは,頂点から前方にかけて可能な範囲での体幹の前屈を用いる.できるだけ前方まで手をハンドリムに接触しているようにし,手が離れるとともにそのまま後方へ引いてくる.

 

3)ブレーキ(ストッパー)の掛けはずし

・一般に頚髄損傷者の車いすのブレーキはトグル型.

・把持力のない場合は,掛けるときは前方からブレーキのバーの最上部を叩くようにし,はずす時は後外方から押し出す.

 

4)キャスター上げ

・一瞬でもできると,わずかな段差を超えるときに有効.

・第6頚髄下位損傷者から可能.

 

3.車いす上での移動動作³⁾

・座面上で体の位置を移動させることが容易になることで,体の管理(座位のアライメントの不良による不快感や起立性低血圧症状からの回避,褥創予防のための座面圧分布の調整)に有効.

・姿勢の変化を伴う日常生活上の動作(移乗動作のときの体の位置決め,衣服の着脱や整え,クッションの位置の調整)の効率up.

1)後方への移動

<C₆>

その1

①体幹を前傾させ,両手の母指をアームレストの前方に掛けて体重を前方へ移す.

②肩の屈曲運動によって両側同時あるいは片側ずつ後方へ骨盤を引く.

その2

①一方の肘をハンドグリップに引っ掛け,他方の手をアームレストに置く.

②アームレストにかけた上肢の肩を屈曲して同側の骨盤を後方へ引き,

③次いで,上肢を左右置き換え,反対側の骨盤を引く.交互に繰り返す.

<C₇>

①アームレストに置いた両手でプッシュアップを行い,両側同時に後方へ移動.

 

2)前方への移動

<C₆>

①片方の上肢をハンドグリップにかけ,他方の手をアームレストに置いた状態から,

②ハンドグリップにかけた側の肩を屈曲して体幹をバックレストに強く引きつけ,

③アームレストに置いた側の肩を伸展することで片側の骨盤を前方へ移動.

3)側方へ移動

・後方,前方の移動のなかで,運動の方向を側方へ意識.

 

4)車いす上での除圧¹⁾

<C₆>

・車いすのバッグレストを利用し,上体を後方へ反らしたり,一側ずつ上体を左右に傾けて殿部の除圧を行う.

<C₇以下>

・プッシュアップで行う.

 

4.屋外での車いす介助方法

1)不整地面(凹凸道)の走行

・キャスターを上げ,駆動輪で走行.

 

2)坂道走行

・キャスターを上げない場合:後ろ向きに下り,前向きに登る.

・キャスターを上げた場合 :前向きに下り, 後ろ向きに登る.

 

3)段差の昇降

・前向きで行う場合と後ろ向きで行う場合がある.

・ゆっくり,後ろ向きで行う方が安全で,不安がない.

 

Ⅳ セルフケア(身の回り動作)³⁾

上肢に障害を持つ四肢麻痺が日常生活のなかで自立するためには,補装具などで補塡的機能の獲得をはかるとともに,家屋改造など生活環境の整備が必要となる.日常生活のなかで自助具の活用により多くの行為が可能となるが,自助具を使用せずとも代償動作で可能となるものも少なくない.

 

表1損傷レベルと獲得できるADL能力(セルフケの部分のみ記載)¹⁾

C6A

C6B

C7A

C7B

C8

(T1)

食事

食べる

飲む

整容

洗顔,髭剃り

歯磨き

更衣

シャツ

ズボン

留め具

靴下

排泄動作

尿収器の装着

自己導尿操作

坐薬挿入器の操作

車椅子と便器のトランスファー

更衣(便器上)

入浴動作

車椅子と洗い場のトランスファー

洗体

浴槽の出入り

更衣(脱衣所)

△:部分介助(一部可能)

▲:部分介助の場合が多いが,自立することもある

○:自立(書く損傷レベルごとの獲得上限機能を示す)

 

1.食事¹⁾

・急性期より可能な限り早く自立をはからなければならない動作である.

・たとえ箸の使用が困難なレベルでも,対立副子や機能的把持装具などのスプリントやポケット付きカフベルトをはじめとするフォーク,スプーンなどの自助具などにより特徴的な把持によって食べるという動作に関しては自立度は高くなる.しかし,姿勢の確保やしようする食器の種類,食べ物の種類によっては介助が必要となることもある.

 

1)残存機能別の代表的装具と対処法

<C6~C7機能レベル>

・手部ホルダーにスプーンなどを固定して食事.

・自助具の装着も自立可能.

・スプーンの持ち方として,指の間に挟む方法,ゴムで固定する方法,3指で固定する方法も用いられる.

・特別な食器の利用もあるが,動作が習熟するとともに必要がなくなる.

・コップはtenodesis actionを利用して持つことができる.

・C6:RICやflexor hinge splintなどの適応.

前腕回内位で手掌面にポケット付きカフベルトを装着し,普通のスプーンやフォークを取り付ければ,ほとんど自立可能.

・C7:短対立副子などの適応

特徴的な把持でスプーンやフォークを固定し,装具なしで自立可能.

<C8機能レベル>

・自助具としての特別な道具は必要としない.

・食事に使用する調味料の操作も可能.

 

示指・中指・環指の3指で保持し,柄の先を曲げて指から抜けないようにしておく.母指をてこのようにして使用する(C6)

示指・中指の2指で把持(C6)

示指のみで把持,柄の部分を握りに合わせて角度をつけるとよい(C6)

中指と環指を屈曲,その手背部に柄を通し示指と小指で固定する(C6)

 

2)飲む動作

<C6>

・手指の屈曲をうまく利用した両手ではさむような握り方

<C7>

・把っ手に母指を差し込み,他側は背屈位で保持する.

左手を回外し,手掌面で保持するようにしてもよい.

 

2.整容¹⁾³⁾

・歯磨きはポケット付きカフベルトに歯ブラシを差し込んだり,特徴的な握りで磨くことに関しては可能となる.

・洗顔においてはC6,C7でも両手ですくうことができないため通常の洗い方は困難であり,片手もしくはタオルで拭くことになる.

・一連の洗面動作では車椅子と洗面台との高さの関係でも動作が影響されるので考慮する必要がある.

・女性の化粧については市販されている道具も多種類あり,C6であればそのなかでの選択で十分に対応できる.

 

1)残存機能別の代表的装具と対処法

<C6~C7機能レベル>

・C6であれば自助具などの使用で十分自立できる.道具の選択や工夫が必要.

・手部ホルダーにブラシを固定して歯磨きを行う.

・装具の装着も自立.

・歯磨きチューブを両手で挟んで押し出す.

・髭剃りは電気カミソリでもT字のカミソリでも使用可能.

・C6B以下では,手部ホルダーがなくてもカミソリの使用が可能.

・洗顔は洗面台で行う(車椅子の横付けでも動作が可能).

・布タオルの半分をぬらして顔を洗い,半分の乾いたほうで拭く方法がよく用いられる.

・石鹸はナイロンネットに入れて使用すると持ちやすく泡立ちがよい.

<C8機能レベル>

・両手動作が可能になる.

・例えば歯磨きの蓋の開閉,歯ブラシに歯磨きをつけること,水を両手ですくうことなどが可能.

 

図2-1歯磨きチューブの扱い(C6Bレベル) 図2-2歯ブラシの持ち方[(C5B~)C6Aレベル]

 

指の間に歯ブラシをはさみ固定        両手ではブラシを挟み固定

図2-3 歯ブラシの持ち方(C6Bレベル)    図2-4 歯ブラシの持ち方(C7レベル)

 

3.更衣¹⁾³⁾

・知覚障害や体温調節障害を呈する脊髄損傷にとって,衣服は身体の保護,保温はもとよりトイレや入浴動作などの自立にも大きく関連している.

・更衣場所や姿勢,衣服の種類などのさまざまな対応が必要であり,機能的には可能なレベルであっても時間や正確性から残存機能とは関係なく介助を受けていることが多い.

・障害レベル・症状に合わせて保湿性や通気性なども考慮する.

1)残存機能別の代表的装具と対処法

<C6~C7機能レベル>

・(C5B~) C6A機能レベルでは車椅子上でトレーナーなどの上着の着脱が可能になることもある.

・衣服の着脱はC6B以上の機能レベルになると自立可能

・C7機能レベルになると動作のスピードも早くなり,実用性が向上する.

・上着の着脱は座位を安定して保持するために車椅子上で行うほうがよい.

・衣服の操作には手背部や母指(引っ掛けの機能)を用いる.

・脱衣時には,手指で衣服がつかめないので口を利用し,歯で噛んで行うことも多い.

・ズボンや下着,靴下の着脱動作の指導のポイントは,踵と殿部をどのように操作して衣服を通すかである.そのため長座位で下腿に下に前腕を入れて踵をベッドから浮かしたりする.

・ボタンなど留め具の操作は,C6機能レベルではマジックテープなどの利用が便利である.C7機能レベルになるとホルダー付きボタンエイドなどの自助具を利用し,ボタンの着脱が実用的になる.

・トレーナーの着脱(車椅子上:C6)

①  まず両袖を通し,肘の上までたくしあげておく.

②  一側の手をトレーナーの後部に差し込み,肩を前方に挙上するとともに頭を入れる.

③  肩を前方から横に広げるようにして頭を出す.

④  前と後ろのすそを下ろし,身なりを整える.

袖口などの操作に口を使用することも多い.

 

・ズボンの脱衣(ベッド上:C6)

①  半臥位で一側に重心を移し,殿部を浮かす.ズボンのウエスト部に母指を引っか

け,腰の部分を脱ぐ.

②  この動作を左右交互に繰り返し,少しずつズボンを下ろす.

③  長座位となり,足部近くまで下ろす.

④  ひとつにたくり,踵より脱ぐ.

この場合,体幹の安定性と柔軟性が必要となる.

 

図3-2 ズボンの脱衣

 

写真左:片手で踵をベッドから浮かし,ズボンを通す

写真中央:交互に側臥位をとりながら,手背部や母指などで引っ掛けてズボンを上げる.

写真右:中央と同様

図3-3 ズボンの着衣(C6Bレベル)

 

写真左:ポケットに手を入れ,手関節伸筋を利用する方法

写真中央:ループを利用,殿部を挙上して行う方法

写真右:ベッド上端にもたれかかって座位を安定させて行う方法.

図3-4 ズボンの操作(C7レベル)

 

胸腰髄損傷

・ベッド上でズボンをはく

①長座位で足を組む.

②足先が出るまで,ズボンに組んだほうの足を出す.

③組んでいた足を戻し,片方の足にズボンを通す.このときズボンはなるべく上まで引っ張り上げておく.

④ベッドに横になり殿部を入れる.

⑤寝返りを打って残りの部分をズボンに入れる.

・車椅子上でズボンをはく

①足を組む.

②ズボンに組んだ足のほうを通す.

③反対側の足にもズボンを通す.ズボンはなるべく上まで引っ張り上げておく.

④ズボンの上端を引っ張るようにしながら,同時に車椅子の肘あてを握る.

⑤そのままプッシュアップし,

⑥シートに戻るとき少し殿部を前に落としてズボンをはく.

⑦・⑧ズボンが上がりきらない部分は,身体を横に傾け片側の殿部を浮かしてから,ズボンを引き上げる.

 

・車椅子上で靴・靴下を履く

①足を組む.②組んだほうの足に靴・靴下を履く.

 

図3-6 車椅子上で靴・靴下を履く(胸腰髄損傷)

 

図3-5 車椅子上でズボンをはく(胸腰髄損傷)

4.排泄¹⁾³⁾

・排尿管理上ズボンやシーツを濡らすことも少なくない.原因としては失禁や集尿器の装着不備(ねじれ,ゴムの曲折など),糞尿袋の破損や止め具の固定不十分,糞尿袋がいっぱいになっているなどがあげられる.

・集尿器の使用はペニスや会陰部などの局所が不潔になりやすく,皮膚疾患を合併することも少なくないため,皮膚管理を含めた細かい指導が必要である.

・排泄動作の自立は本動作よりもむしろ関連動作への対応が問題になることが多い.

・排尿においてはとくに集尿器の着脱,糞尿袋の処理など.排便においては排便場所の問題,便器へのトランスファー,下着など衣服の着脱,姿勢の保持,後始末動作(トイレットペーパーの使用,お尻を拭く,水を流すなど),座薬や浣腸の使用など多くの動作が可能とならなければならない.

・一連の動作遂行から排泄動作の完全自立はC7.部分的な介助が必要となるが自助具の使用や工夫によりC6での自立を目標とすべきである.

・洋式便器での座位保持が困難なレベルではプラットホーム式のトイレッタブルを改造考慮する必要もあるが,座位移動がある程度可能ならば和式用トイレ上で長座位での排泄も可能となる.

 

1)残存機能別の代表的装具と対処法

<C6機能レベル>

①尿収器の操作に関して

・排尿管理の方法に尿収器を利用することが多い.

・尿収器の装着操作はC6B機能レベルになると自立可能になる.

②坐薬挿入器の操作に関して

・C6B機能レベルでは,ベッド上で坐薬挿入用の自助具を用い,さらに肛門周囲の感覚障害がある場合は鏡で確認しながら挿入する.

・準備や後始末は介助によらなければならない

 

<C7~C8機能レベル>

・尿収器の装着・洗浄や自己導尿による排尿,さらに洋式便器(背もたれ,手摺り付き)での坐薬挿入器を利用した排便の全動作が実用可能になる.

・便器へのトランスファーでは,便器の高さは車椅子ののシートの高さと同じかやや低目がよい.

・便器は卵形の便器より,身体障害者用便器が利用しやすい.

 

5.入浴¹⁾³⁾

・脱衣所,洗い場への移動,浴槽の出入りと問題が多く,四肢麻痺が浴槽内に入るのは大変な重労働であり,リフターの設置など機械の利用が考えられる.

・四肢麻痺の場合,洗い場における姿勢保持も問題となる.

・風呂場は熱湯やその蛇口への接触により熱傷を起こしたり,また褥瘡を作りやすい場所である.

・入浴後には褥瘡のできやすい部分を観察する習慣をつけ,皮膚に対する管理を忘れてはならない.

 

1)残存機能別の代表的装具と対処法

<C6機能レベル>

・C6B機能レベルになると,車椅子⇔洗い場のトランスファー,洗い場での移動,浴槽への出入り,洗体が可能になる場合がある.

・プッシュアップ不十分なため,洗い場での移動で殿部を摩擦することが多い.

→褥瘡予防に浴槽マットを利用.

・実用的にするためには動作環境の整備と動作訓練が必要.

<C7~C8機能レベル>

・入浴に関する全動作が自立してくる.

・入浴に脱衣スペースを設けると,動作的には更衣が可能.

(冬は風邪を引きやすい,入浴後の着脱は体が湿っていて着にくいなどの理由から介助になることが多い)

 

C7~8          C6~7         C6

図4-1 浴槽への出入りパターン

<胸腰髄損傷>

・浴槽への移動

①一方の手で身体を支えながら,他方の手で足を浴槽に入れる.②浴槽側の手は,なるべく遠いところについてプッシュアップの準備をする.③プッシュアップして身体を押し上げ,殿部をすらないように注意しながら浴槽に入る.④足が伸ばせる浴槽では,麻痺している下半身が浮いて上半身が水に潜ってしまうことがある.そこで浴槽の中では手で身体を支えているように注意する.5洗体は,浴槽マットに座り,一方の手で身体を支え,他方の手で洗体する.浴室の壁に寄りかかってもよいが,そのときは壁側の背部のもマットをおいて皮膚を保護したほうがよい.

 

図4-2 浴槽への出入り,洗体(胸腰髄損傷)

 

6.四肢麻痺の把持動作²⁾

1)接触

・C6で小指側の手掌部や手関節背屈・MP関節伸展においてPIP関節の背側部での接触がみられる.

・環境制御装置のスイッチ操作においては額や口,舌なども利用される.

2)押す

・小指側や手関節掌側部,あるいは手関節を背屈しながら背側部での動作が多い.

・接触や押し動作によりC5・C6の車椅子駆動やスイッチ操作などさまざまな動作の取得が可能となる.

3)引く(引っ掛ける)

・母指をはじめ,各指(手関節を伴う)手関節・肘関節などC6では一番多用する動作である.

・食事においてスプーンやフォークを指屈曲位で固定したり,寝返りや起き上がりなどにおいてベッド枠やスリングに手関節を引っ掛ける.

・車椅子上にて姿勢保持のためグリップに肘を引っ掛けて安定性をはかることもよく見られる.

4)すくう(拘束)

・前腕回外位で手関節を背屈すると各指が軽く屈曲し,引っ掛かりができる.これにより茶碗などを保持する.

・両手を使うことにより押しと拘束動作が同時に行われることになり,固定度が増す.

5)握る

・いわゆる粗大保持.C6にみられるテノデーシス・アクションを利用した握りがこの典型である.この運動がつまみの動作になっていく.

6)つまみ

・母指を含めたつまみ動作.母指と示指・中指でのつまみ(三爪つまみ),母指と示指のつまみ(指腹つまみ)に代表される.

・C6やC7では機能的把持装具や対立副子の適応により獲得される.

・側腹つまみや示指と中指,あるいは中指と環指の間にはさむという動作も多い.

7)つまんで回す

・器具の使用では物をつまみ,回すような動作が多い.

・四肢麻痺では当然困難な動作であり,面を広くしたりすることにより把持の変換をはかる.また,口にくわえるなどの代償もある.


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