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( ; ゜Д゜)脂質代謝異常の話


(+_+)題名:脂質代謝異常の話

血清(漿)脂質にはコレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)、リン脂質、遊離脂肪酸などがある。

それぞれの細胞膜の成分やエネルギー源としての役割を果たすが、脂質はそれ自体水に溶けないので、アポたんぱくと結合したリポたんぱくの形で血中を運搬される。

リポ蛋白の代謝経路は大きく外因性(食餌由来)と内因性(肝臓由来)に分けられる。

食餌性の脂肪、特に長鎖脂肪は吸収された後、腸でカイロミクロンに組み込まれる。

血管内のリポ蛋白リパーゼ(LPL)によってカイロミクロンのトリグリセリドが水解され、脂肪組織や筋肉で消費されることで小型のカイロミクロンレムナントになる。

レムナントは肝臓のLDL受容体あるいはレムナント受容体に取り込まれる。

一方、肝臓で合成された超低比重リポたんぱく(VLDL)はやはり血管壁のLPLによりトリグリセリドが分解させ中間比重リポたんぱく(IDL)を経てコレステロールに富む低比重リポたんぱく(LDL)になる。

LDLは肝をはじめとする末梢諸臓器へ受容体を介して取り込まれ、コレステロールの供給源となる。

主に肝臓と小腸で合成・分泌される原始高比重リポたんぱく(HDL)は血中で末梢細胞の細胞膜から、あるいはほかのリポたんぱくの水解過程で生じる遊離コレステロールを受け取り、レチン-コレステロールアシル転換酵素(LCAT)の作用でコレステロールエステルとして疎水性の中心部に保持しつつ、球状HDLへと成熟する。HDL内部のコレステロールエステルは血中のコレステロールエステル転送たんぱくによってVLDL、IDLやLDLへと転送される(コレステロールの逆転送)

 

●疾患概念

生体における脂質には、コレステロール、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸(FFA)等があり、各々の脂質またはすべての脂質の代謝異常に基づく病態が考えられるが、一般にはコレステロールとトリグリセリドが臨床的に問題とされる。

血清脂質濃度により高脂血症あるいは低脂血症が存在するが、現在の血清脂質レベルによる診断には高脂血症は1987年動脈硬化学会冬期大会により定められた基準値が汎用されている。

すなわち血清コレステロール値220mg/dL以上、トリグリセリド150mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL以下である。

さらに、これらの基準値は、1997年同学会にてその妥当性が確認され、特にLDLコレステロールの重要性が強調された。

一方、低脂血症の基準値は決められていないが、およそ血清総コレステロール値130mg/dL、またはトリグリセリド値40mg/dL未満を低脂血症としている。

これらの脂質代謝異常はリポ蛋白の産生または異化異常を基盤に発症するが、その異常が糖尿病等の基礎疾患や薬剤投与に伴ってあらわれる二次性高(低)脂血症と、それ以上の原発性高(低)脂血症に原因により分類される。

さまざまな表現型の原発性高脂血症の原因が遺伝子あるいは分子レベルで明らかにされるとともに、厚生省特定疾患「原発性高脂血症」調査研究班より、これまでの血清脂質異常の表現型に基づいたWHO分類に加え、その病因を考慮した減発性高脂血症診断基準案が提示された。

日本人の血清コレステロール値は、一般に男性は40-50歳代で最高になるのに対し、女性は閉経後急激な増加がみられ男性を上回るようになる。

トリグリセリド値は、男性で20-30歳代で急激な増加がみられ、60歳以降は減少する。

一方、女性のトリグリセリド値の増加は比較的穏やかで60歳代で最高となる。

高脂血症の頻度は、血清コレステロール値220mg/dLをこす割合が男性で30%、女性で35%という報告がある。

同様にトリグリセリド値は男性17%、女性9%が150mg/dLをこすことが示されている。

成人血清コレステロール値は、日本はアメリカの統計と比較すると男女とも低い値を示すが、その差は次第に減少してきている。

 

●分類

1.原発性高キロミクロン血症

1)家族性リポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損症

【概念】

高脂血症分類Ⅰ型(時にV型)を示す常染色体劣性遺伝で約1/100万人の頻度のまれな疾患である。脂肪摂取により血中に乳びがうっ滞し高トリグリセリド(キロミクロン)血症を起こし、また脂肪制限により寛解する脂肪起因性高脂血症である。リポ蛋白中のトリグリセリドを分解するリポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的な異常によりひき起こされる。

【病態生理】

LPL機能異常のためにトリグリセリドの水解が障害されキロミクロンが長く血中に停滞する。LPLは脂肪組織、筋肉細胞等により合成分泌され、血管内皮細胞表面に酸性ムコ多糖鎖を介して固定される。LPL遺伝子異常は世界中で40種類以上の異なる変異が発見されている。本症は酵素蛋白欠損のみならず、さまざまなLPL機能異常が報告されている。

【臨床所見、検査所見、診断】

背部、殿部を中心とした発疹性黄色腫が特徴的であるが、その頻度は高くない。肝脾腫を伴うことがある。血液中の乳びは、眼底血管で確認でき網膜脂血症とよばれる。ホモ接合体では高キロミクロン血症が乳児期より観察される。診断にはキロミクロンの存在を明らかにする必要から血清静置後の乳び(クリーム層)の確認が有用である。LPL異常の検索はへパリン静注後の血漿中LPL欠損症へテロ接合体に、付加因子である糖尿病、肥満、アルコール摂取、妊娠が加わることにより高キロミクロン血症が生じることが知られている。

治療法は脂肪制限を中心とした食事療法である。中鎖トリグリセリドは肝で処理され乳びとならないためエネルギー源として使用される。薬物療法としては、ヘテロ接合体に対しフィブラート系薬剤が使用されることがある。

 

2)アポC-Ⅱ欠損症

【概念、病態生理】

アポC-ⅡはLPLがリポ蛋白中トリグリセリドを水解する時の補助因子であり、この欠損によりLPL欠損症同様の病態が生じる。常染色体劣性遺伝形式を示す。これまでに約20例の異なったアポC-Ⅱ遺伝子異常が同定されている。

【臨床所見、検査所見、診断】

LPL欠損症と病態はほぼ同様である。症例由来へパリン静注後の血漿中のLPL活性が認められないにもかかわらず、正常ヒト血漿またはアポC-Ⅱを加えることによりLPL活性が出現することが特徴的である。アポC-Ⅱは通常の測定法(比濁法)で検出されない。

【経過、予後、治療】

LPL欠損症とほぼ同様である。

 

3)原発性V型高脂血症

【概念、病態生理】

高キロミクロン血症に加え、VLDLの増加がみられる。LPL欠損、アポC-ⅡおよびアポE異常を認めない。原因遺伝子は不明であるが、LPL機能異常に起因する可能性を否定できない。

【臨床所見、検査所見、診断】

LPL欠損症同様の臨床所見を呈する。さらに特徴的なことは高脂肪食および高炭水化物食付加のいずれによっても血清トリグリセリドの増加を認める。血清静置後のキロミクロンを示す乳び(クリーム層)およびVLDLによる下層の混濁の確認が有用である。

【経過、予後、治療】

他の高キロミクロン血症、高VLDL血症を呈する疾患の治療と同様である。

 

4)特発性高キロミクロン血症

上述した各疾患に該当しない場合であり、LPLのインヒビターの存在等が報告されている。

 

2.原発性高コレステロール血症

1)家族性高コレステロール血症

【概念】

家族性高コレステロール血症familial hypercholesterolemia(FH)は、高コレステロール血症、若年性動脈硬化、腱黄色腫を特徴とする常染色体優性遺伝疾患であり、ヘテロ接合体は1/500人、ホモ接合体は1/100万人の頻度で存在する。

【病態生理】

本疾患は低比重リポ蛋白LDLの増加が認められ、すでにGoldstein,BrownらによりLDLリセプターの遺伝子異常が病因であることが解明されている。これらの遺伝子異常は世界中で200種類以上の異なる変異が発見され、きわめて多彩である。その結果、さまざまな異常レセプター蛋白による病態が形成される。動脈硬化は、LDLが血中に長く存在することによって変性したLDL(特に酸化LDL)がスカベンジャーレセプターを介して血管壁マクロファージに取り込まれ、その泡沫化に寄与することによると考えられている。

【臨床所見、検査所見、診断】

腱または結節性黄色腫が最も特徴的であり、特にAchilles腱は好発部位であり診断さらにコレステロール蓄積および退縮の指標としてきわめて有用である。眼瞼黄色腫、角膜輪もよくみられるが本疾患に特異的ではない。血清脂質は生下時より高く、コレステロール値がヘテロ接合体で200-500mg/dL、ホモ接合体が500-1,200mg/dLとなる。トリグリセリド値はほぼ正常であるが、時にVLDLも増加するⅡb型を示すことがある。

【経過、予後】

若年性動脈硬化による心血管病変が最も重大な本疾患の予後決定因子である。ヘテロ接合体は男性は30歳頃から心筋梗塞が発症し、女性はその発症が10歳程遅れる。高コレステロール血症に高トリグリセリド血症が合併すると虚血性心疾患の有病率が増大する。本疾患においては、症状がなくても積極的な冠動脈の精検が必要とされる。

【治療】

近年、強力なコレステロール低下薬が開発され、これらの組み合わせによりヘテロ接合体では十分なコレステロール低下が可能になった。HMG-CoA還元酵素阻害薬は肝でのコレステロール合成を抑制し、LDLレセプターの合成を誘導し血液中LDLも取り組みを増すことによりコレステロールを低下させる。また、陰イオン交換樹脂、抗酸化薬プロブコールが効果的である。プロブコールはコレステロール低下作用に加えて酸化LDL産生の抑制を介して動脈硬化の進展抑制作用が報告されている。ホモ接合体の治療は、薬物治療のみでは目標値に達することは困難であり、LDLアフェレーシスを考慮する必要がある。

 

2)家族性複合型高脂血症

【概念】

家族性複合型高脂血症familial combined hyperlipidemia(FCHL)は、1973年にGoldsteinらにより提唱され、家系内に高コレステロール血症と高トリグリセリド血症が混在し、冠動脈硬化血症を高頻度で伴うことが知られている。全人口の0.3-0.5%に存在し常染色体優性遺伝と考えられていたが、その詳細は遺伝形式さらに原因遺伝子は明らかでない。

【病態生理】

アポBの増加が特徴的であることから、従来より肝でのVLDLの合成増加がその発生機序として考えられている。その結果、VLDLからLDLへの移行も増加し高コレステロール血症と高トリグリセリド血症ともに認められる。また、リポ蛋白リパーゼ異常またはアポC-Ⅲ増加が起因している可能性も示唆されている。また最近、インスリン抵抗性によるFFAの増加によりVLDLの合成増加さらにリポ蛋白リパーゼ活性低下が生じている可能性が報告されている。

【臨床所見、検査所見、診断】

本症はFHでみられる黄色腫等の特徴的な臨床所見を伴わないために、診断には綿密な家族歴の調査が必要とされる。FCHLでみられる高脂血症の表現型は、典型的にはⅡa型、Ⅳ型あるいはⅡb型を呈し、家族内にこれらの高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、および両者の混在を認める。また本症では、肥満、高血圧や糖尿病を合併していることが多い。リポ蛋白はVLDL、LDLが増加し、アポBの増加がみられる。また、動脈硬化症惹起性リポsmall dense LDLが存在する。

【経過、予後】

同一症例において、経過中に高脂血症表現型がⅡa型、Ⅱb型、Ⅳ型の間で変化し得る。本症は冠動脈硬化症のリスクファクターとしてきわめて重要な疾患である。我が国の65歳以下の心筋梗塞患者の約32%に本症が存在していたとする報告がある。

【治療】

治療法は一般的にはまず食事療法を行う。合併している肥満症、耐糖能異常等の改善が大切である。高トリグリセリド血症が著明な場合、炭水化物やアルコール摂取制限が必要である。薬物療法としては、ニコチン酸、陰イオン交換樹脂、フィブラート系薬剤、HMG-CoA還元酵素阻害薬が使用される。

 

3)特発性高コレステロール血症

前述の2疾患に該当しない原発性高コレステロール血症である。

 

3.内因性高トリグリセリド血症

1)家族性Ⅳ型高脂血症

【概念】

本症は心筋梗塞患者の家族調査から報告された高トリグリセリド血症であり、常染色体優性遺伝を示すと考えられているが原因遺伝子は不明である。

【病態生理】

肝でのVLDLの合成亢進とVLDL異化遅延による。VLDL粒子サイズの大型化、低HDL血症を認めるが、一般にFCHLと異なりアポBは正常範囲内である。リポ蛋白リパーゼ活性は正常である。

【臨床所見、検査所見、診断】

特徴的な臨床所見を伴わない。本症は高脂血症表現型Ⅳ型を示し、FCHLと異なりⅡa型、Ⅱb型は示さない。診断にはFCHL同様綿密な家族歴の調査とされる。肥満、高インスリン血症や糖尿病を合併していることが多い。高トリグリセリド血症がVLDLによることを示すために血清静置後の白濁の確認が有用である。

【経過、予後】

FCHLと異なり、冠動脈硬化症の独立したリスファクターではない。しかしながら、肥満、低HDL血症、高インスリン血症や糖尿病を合併することにより、冠動脈硬化症発症に関与している可能性がある。

【治療】

合併している肥満症、耐糖能異常等の改善が大切である。摂取カロリーおよびコレステロールの制限に加え、薬物療法としては、ニコチン酸、フィブラート系薬剤が第1選択であるが、HMG-CoA還元酵素阻害薬も使用される。

 

2)特発性高トリグリセリド血症

家族性Ⅳ型高脂血症とFCHLに該当しないⅣ型高脂血症である。

 

4.家族性Ⅲ型高脂血症

【概念】

高コレステロール血症、高トリグリセリド血症ともに認められるのに加え、βVLDLとよばれるコレステロールリッチな質的異常リポ蛋白を伴う。この発症基盤として主にアポE分子多型性(主にアポE2、E3、E)が起因している。アポE多型性の一つであるアポE

のホモ接合体は1/400人の割合でみられるが、さらに別の高脂血症素因、肥満、糖尿病、甲状腺機能低下症等の付加因子が加わることにより1-5/5000人の頻度で発症する。

【病態生理】

βVLDLはキロミクロンやVLDLに由来する中間代謝物(レナムント)であり、通常はその代謝は非常に早いが、本症ではこの代謝障害によりレムナントのうっ滞が生じる。アポEは、リポ蛋白レセプターへのリガンドとしてトリグリセリドリッチリポ蛋白のレセプターへの結合に重要であるが、野生型アポEより1アミノ酸置換したアポEはLDLレセプターとほとんど結合能を有しない。肝でのレセプターを介するレムナント取り込み障害に加え、VLDLよりLDLへの代謝障害がレムナントのうっ滞を引き起こす。

【臨床所見、検査所見、診断】

黄色腫と動脈硬化性病変を高頻度に伴う。黄色腫は結節性、結節発疹性であり肘、膝関節に好発する。手掌線条黄色腫は本症に特徴的である。診断にはリポ蛋白電気泳動法によるbroadβパターン、超遠心法によるVLDLコレステロール増加の確認が有用である。一般にアポEは高値、LDLは低値を示す。アポE多型性は等電点電気泳動に加え遺伝子解析が有用である。

【経過、予後】

動脈硬化性疾患の合併頻度がきわめて高く、FHに次ぐと考えられている。FHと異なり本症の動脈硬化部位は冠動脈のみではなく末梢血管にも好発し、閉塞性動脈硬化症等の原因となる。家族性Ⅲ型高脂血症の発症には、食事や環境因子の影響が大きく、肥満、耐糖能異常、糖尿病、甲状腺機能低下症を合併していることが多い。

【治療】

付加因子の改善を第一とする。カロリーおよびアルコール制限に加え、薬物療法としては、フィブラート系薬剤が第1選択であるが、ニコチン酸、HMG-CoA還元酵素阻害薬も有効である。治療によく反応することが知られている。

 

5.原発性高HDL血症

【概念】

原発性高脂血症の中でHDLコレステロール100mg/dL以上を示すものをいう。HDLは動脈硬化の負のリスクファクターとされているが、高HDL血症の中には脂質蓄積を伴う病態が存在する。高HDL血症は種々の原因による症候群であるが、主にコレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症による。CETP欠損症は我が国で高頻度に認められ、遺伝子解析の結果、これらのほとんどは2種類の遺伝子異常より生じていることが示された。他に肝性リパーゼ欠損症等により生じる。

【病態生理】

CETPは、HDL中のコレステリルエステルをVLDL、IDLやLDL等のリポ蛋白に転送し、交換反応としてトリグリセリドがHDLへと転送される。CETP欠損症ではこれらの転送反応が障害されるためにHDLにコレステロールが蓄積される。

【臨床所見、検査所見、診断】

高HDL血症に伴う明らかな臨床症状は認められない、CETP欠損症では特に超遠心法によるHDL分画のコレステロールの増加が特徴的である。CETP欠損症の診断にはCETP活性および蛋白の測定、さらに遺伝子変異がほとんど2種類に限定されているために遺伝子解析がきわめて有用である。

【経過、予後、治療】

動脈硬化症との関連については不明である。血清HDLコレテロール値は冠動脈硬化性疾患の発症率と負の相関を示すが、CETP欠損症が必ずしも抗動脈硬化症に働かないことも報告されている。高HDL血症の治療方針はその成因、リポ蛋白像、合併疾患により決められるべきであろう。

 

6.二次性高(低)脂血症

さまざまな疾患により高脂血症の各表現型がみられる。臨床上頻度の高い原因として、糖尿病、甲状腺機能低下症、閉塞性肝障害、ネフローゼ症候群、SLE等があげられる。一方、二次性低脂血症も肝疾患、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、蛋白異常症、感染症や薬剤に起因して引き起こされることが知られている。原疾患の治療のうえでこれらの脂質代謝異常の改善を行なう必要がある。

 

●症状

1)黄色腫

黄色腫はマクロファージにコレステロールエステルを主成分とした脂質が蓄積し、泡沫細胞となり集簇し、皮膚、皮下組織、検、骨膜下に丘疹または結節を形成する病変である。

黄色腫は高脂血症患者も最も重要な身体所見で、好発部位を念入りに診察する必要がある。臨床的に重要なものは皮膚黄色腫と腱黄色腫である。

a)眼瞼黄色腫

眼瞼黄色腫は眼瞼にみられる境界明瞭な扁平黄色腫で眼瞼内眥部に好発し、一側または両側性にみられ、下眼瞼に及ぶこともある。眼瞼黄色腫を伴う高脂血症は家族型高コレステロール血症(FH)が疑われる。眼瞼黄色腫を有する患者の約30%はFHで、約30%が正脂血症で残りは家族性複合型高脂血症等である。

b)腱黄色腫

腱に発生した黄色腫で皮膚表面からは栗粒大ないし鶏卵大の硬い腫瘤、また腱の肥大として確認できる。好発部位は手背の伸筋腱とアキレス腱である。足の腱や、膝関節直下の骨膜下にも発生する。腱黄色腫はFHに特有な身体所見である。

手背の腱黄色腫は手指を曲げ伸ばしさせれば腱の運動とともに動くので、栗粒大の腱黄色腫も容易に診断できる。大きなものは拇指頭大にもなるが、疼痛や運動障害をともなうことはほとんどない。

アキレス腱黄色腫は視診と触診で容易に診断できる。足関節を直角にして、アキレス腱反射を行うようにアキレス腱を伸展させて、摘むように触診すれば硬く凸凹したアキレス腱黄色腫が確認できる。起立させて、側面または背面から観察し触診すれば肥大したアキレス腱が確認できる。FH患者の肥厚した腱は脆弱であり、些細な運動でも断裂をきたす。

またX線でアキレス腱が9mm以上であればアキレス腱黄色腫と診断できる。

c)結節性黄色腫

黄色または淡紅色の結節で、肘、膝関節の神側、手背、足部、臀部に好発する。結節性黄色腫を伴う高脂血症は重症FH例と考えられる。

2)動脈硬化、特に冠動脈硬化

高脂血症の最大の臨床的意義は動脈硬化のリスクファクターとしてである。他の冠動脈リスクファクターを配慮して、積極的に動脈硬化性疾患の診断が必要である。

我々が経験したFH症例のうち、ホモFHは6例、ヘテロFHは123例が死亡した。ホモFHは全例心臓死であり、平均死亡年齢は26歳。平均血清コレステロール値は772mm/dLであった。ヘテロFHの123例中82例は心臓死であった。平均死亡年齢は男性60歳、女性が70歳であった。脳卒中はわずか8名であり、高コレステロール血症は「脳卒中ではなく心筋梗塞」に関係があることが明らかである。男性では30歳以降何歳で心筋梗塞をおこしても不思議ではない。女性では50歳以前はほとんどみられず、閉経期以降急速に増加する。

したがって、男性FH患者においては30歳代でも高頻度に冠状静脈疾患を併発するので、心電図、心エコー図、CT、MRI、核医学的検査あの非観血的監査だけでなく、積極的に冠状動脈造影検査を行うべきである。同時に大動脈瘤の有無も検査する。

FH以外の患者でも、家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症でも同様の検査が必要となる。

 

●治療

①運動療法…高脂血症が冠疾患と関連し、有酸素運動が高脂血症に影響することが期待されている。そのため高脂血症における有酸素運動療法の意義は高脂血症そのものへの影響を超え、冠疾患ないし動脈硬化に対する改善効果にある。

有酸素運動に関しては運動療法の適応を論ずる前提として運動強度が適切であることが必要である。この前提が満たされて場合、一般に高脂血症そのものでの有酸素運動療法の禁忌はないが高脂血症のもたらした病態や二次性高脂血症の原因病態、その他の併発症、すなわち心筋梗塞の急性期、腎疾患、肝疾患の急性期、糖尿病性ケトアシドーシス、感染症の急性期では禁忌、インスリン依存性糖尿病、合併症を伴う糖尿病では慎重に適切な運動強度の遵守を要する。

等尺性運動に関しては中高年者に積極的適応はなく、そのもたらす血圧上昇、血栓準備状態招来故の禁忌は重視しなければならない。

主な運動療法の程度としては、中等度の運動を継続的に続けるように指導する。1日150kcal、1週間で1050kcalの運動が最低必要である。そして、1日400kcal、1週間で2800kcalまでは運動量の増加とともに効果も増加するが、このあたりで効果の発現が目立たなくなる。具体的には1時間6km程度の急ぎ足歩行を毎日30分程度行い、週20km以上歩くようにする。1日60分、週4回以上を目標にしてもよい。

 

②食事療法

エネルギー枠…食事療法の第1は摂取エネルギー枠の制限である。とくに肥満合併症例では制限を厳しくし、体重の正常化をはかる。 エネルギーは年齢、性、運動量も考慮するが、一般には標準体重を求め、その1kg当り25~30kcal/dayとする。肥満者の減量は急激である必要はなく、1ヶ月に1~2kgを目安とする。

脂肪-量および質…一般には脂肪は総エネルギーの25%程度に抑える。最近の国民栄養調査で日本人の平均脂肪エネルギー比が約25%なので、これは無理な制限ではない。脂肪酸の種類も血清脂質に大きく影響する。飽和脂肪酸(SFA)のうち、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸はLDL-コレステロール(LDL-C)上昇作用が強いので制限する。同じSFAでもステアリン酸にはLDL-C上昇効果は認められない。SFAは、獣脂、乳脂肪などの動物性脂肪、ココナッツ油などの一部の植物油脂に多く含まれているので、制限が必要となる。n-6系多価飽和酸脂肪酸(PUFA)の代表であるリノール酸の総コレステロール低下作用はよく知られる。おもにLDL受容体活性の上昇により、LDL-C、VLDL-Cが低下するが、大量摂取では高比重リポ蛋白(HDL)合成が減少する。リノール酸はサフラワー油、米ぬか油、綿実油など植物油に多く含まられる。n‐3系PUFAには、植物油に多く含まられるα‐リノレン酸、魚貝類に多いエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸等がある。EPA、DHA摂取の増加で、肝におけるVLDL合成・分泌が減少するので、高トリグリセリド(TG)血症の治療に適する。LDL、HLDに及ぼす影響については一定の成績は得られていない。EPA、DHAは血小板凝集抑制効果のうえからも動硬化の予防、治療で注目されている。

一価不飽和脂肪酸(MUFA)のオレイン酸はSFAとの置換でLDL-C低下効果があり、しかもHDL-Cを減少させず、また、PUFAと比較して酸化修飾を受けにくい性質上、動脈硬化の予防や治療で評価が高くなってきた脂肪酸である。オリーブ油、ハイオレイックサフラワー油、アボガド等の植物性食品のほか、獣肉にも多く含まれる。PUFAとMUFAの血漿リポ蛋白濃度への影響は、LDL-Cの低下はエネルギーの10%分のSFAがMUFAで置換されると15mg/dl、PUFAで置換されると18mg/dlであり、そこに大きな差が認められない。しかし、脂肪摂取量のあまり多くない日本人健常人での実験ではLDL-CはMUFAでは低下せず、PUFAによって低下がみられ、両者のLDL-C低下に明らかな差が認められる。  SFAは制限し、PUFAはLDL低下のために増加したいが過剰は避ける(総エネルギーの10%程度までよい)、MUFAにはとくに制限なしという条件を満たすと、SFA:MUFA:PUFA=1:1~2:1~1.5が高脂血症の食事療法では望ましいと考えられる。

n-6系PUFAとn-3PUFAの摂取比率がどうあるべきか一定の見解はない。現在の日本人の食事状況、これ以上n-3PUFAを減少させたくないことを考慮して、4:1程度を保つのがよいと考えられている。

食事コレステロール・・・食事由来のコレステロールの増加で肝細胞のコレステロール含量が増加し、細胞のLDL受容体合成が抑制され、LDLの処理が低下し、TC、主としてLDL-Cが増加する。アメリカNIHの提唱している一般医家向け食事療法のガイドラインで、食事コレステロールは、第1段階では300未満、第2段階では200mg未満としている。食事コレステロール量に対するTCの反応には個人差がある。その原因の一つとしてアポE表現型の影響が知られ、アポE4を有する固体では食事コレステロールに対しTCの変化が大きい。 実際の食事指導では、コレステロール指数の1日の合計が100以下になるように食品を選択し、組み合わせる。

食物線維・・・食物繊維は人の消化酵素で加水分解されない食物成分を総称したものである。とくに、ペクチン、ガム類、ムチン類等、水溶性線維は胆汁酸の便中排泄増加機構を介し、TC、LDL-Cの低下作用が強い。また、食物繊維は小腸での糖質の吸収を遅らせ、インスリンの産生、分泌低下を介し、血圧も低下させる。1日に20~30g程度の摂取が望まれる。

糖質・・・糖質の過剰摂取で、肥満、血糖値の上昇、インスリン分泌促進、脂肪酸合成亢進、脂肪畜産、高VLDL血症、低HDL血症が生じる。砂糖や果糖では殿粉に比較してTG、動脈硬化惹起性リポ蛋白の一種VLDL増加の作用が著しいので、糖質摂取では複合糖質摂取の割合を増やすとよい。

蛋白質・・・高コレステロール血症患者で動物性蛋白を大豆蛋白で置換するとTC、LDL-Cが減少する。大豆蛋白にLDL受容体活性を上昇させ、LDL異化を促進させる働きがあると報告されている。わが国では動物性蛋白の摂取量は年々増加する傾向がある。大豆食品にはPUFA、食物繊維が豊富に含まれているので、大豆食品を多めに摂る意義は大きい。マイコプロテインは矢状菌のつくる蛋白であるが、食物繊維に富み、高コレステロール血症治療で試みられている。

ビタミン、抗酸化物…生体内のおもな抗酸化物に脂溶性のビタミンEおよびβ-カロテンがある。ビタミンEの摂取ではLDLは酸化されにくくなり、ビタミンE摂取と冠疾患発症に負相関が認められる。植物油、緑黄色野菜などビタミンEを多く含む食品の摂取を心がけたい。また、野菜、果物、茶、ワイン、等に含まれるフラボノイド、ビタミンCも抗酸化的に働くと考えられる。フラボノイドの吸収、体内動態など今後の研究が必要とされる。

以上述べた原則に従って食事療法を行なうことになる。特に高TG血症には、アルコール量、砂糖や果物等の糖質の過剰摂取及び脂肪の量と質に注意する。 またいずれの病態においても全体のバランスを考慮することが重要である。 ひとつの栄養素の制限や、増加のために、他の重要な栄養素の過不足が生じることがあるので注意が必要である。

 

③薬物療法…食事療法および運動療法を最低3ヶ月間行って、それでもなお目標とするレベルまで血清脂質の低下が得られない場合には薬物療法を追加する。 家族性高コレステロール血症へテロ接合体あるいは虚血性心疾患を有する者に対しては、最初の段階から薬物療法を行ってもよい。

薬物療法は長期にわたるため、副作用の少ないものが望ましい。陰イオン交換樹脂であるcolestyramineや非吸収性構成物質であるneomycinは胆汁酸を吸着したり沈殿させて、その再吸収を防止する。胆汁酸濃度が減少すると、肝臓でコレステロールの胆汁酸への転換率が増加する。したがって血中のLDL濃度の低下に効果が見られる。 副作用は比較的少ないが、飲用しにくい。

Clofibrateの作用起序は肝臓からのリポ蛋白、ことにVLDLの放出を抑制し、血清遊離脂肪酸のアルブミンへの結合を阻害し、コレステロールの異化作用を促進する。しかし、コレステロール低下作用は軽度ないし中等度である。副作用は胃腸障害、発疹、胆石症、肝臓機能障害などが知られている。

 

●考察

調べたことを元に高脂血症の成因と病態、リハビリの実際について考察したい。

まず、高脂血症の成因だがこれは原発性と二次性に分けられる。

原発性では遺伝素因によって高脂血症になっている場合がほとんどだが、二次性のように環境因子が大きく関わっているといえよう。

なぜなら脂質代謝の項で述べたように脂質代謝には食餌性と肝臓性に分かれているため遺伝子によって肝臓性の代謝に異常が生じても食餌性をおさえることによって脂質代謝が保たれると考えられるからである。

このことから、生活習慣病の一種である高脂血症のリハビリの場合、その人の生活を改善させることを念頭に進めていく必要がある。

では、高脂血症の病態によるリスク管理としては何が挙げられるのだろうか。

これも、前述してある「高コレステロールは脳卒中より心筋梗塞」から運動負荷に十分配慮しておこなわなくてはいけない。

実際の臨床の場では、高脂血症が原因による心筋梗塞後のリハビリや狭心症に対するものが多いと考えられるが生活を改善させるという意味では高脂血症のリハビリと大差は無いと考える。

(@_@;)参考文献

医療学習レポート.脂質代謝異常


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