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(ノ_<。)片麻痺とバランス定義の話


(・ェ・)題名:片麻痺とバランス定義の話

バランス(平衡)とは、身体運動学では安定性や姿勢制御として用いられる。姿勢制御を「安定性と定位という2つの目的に関して空間においる身体の位置を制御することであり、定位とは体節の相互関係および身体と環境の関係を適正に保持する能力」と定義している。

 

●バランスに関するモデル

1.反射・反応理論

この理論は、感覚入力が運動をコントロールし、すべての運動は「反射の総和」によるもので、脊髄、脳幹、皮質は反射によって連結されているという考えである。また感覚は運動の必要条件であることを前提としている。したがって、中枢神経系は感覚刺激による他動的受容体と位置づけられ、運動は抹消が決めるという理解である。

2.階層理論

この理論は、運動制御は下位レベル(脊髄レベル)、中位レベル(脳幹レベル)、上位レベル(皮質レベル)の3層に階層的に組織化されている。

運動は反射・反応理論と違い、上位レベルの運動プログラムに基づき遂行されるというように、その動因をより上位中枢に求めたものである。また、上位レベルと下位レベルを機能的に分割し、上位レベルはより随意的に、下位レベルはより自動的(反射)に運動を制御するとしている。正常運動発達は、下位レベルから上位レベルへの神経系の成熟過程を反映したものである。

臨床場面では、中枢神経系が障害された場合、上位レベルの機能が支障をきたし、下位レベルの運動制御が優位となり、原始反射や病的共同運動が出現する。これは解放現象による陽性徴候である。

3.システム理論

この理論では、運動行動は抹消あるいは中枢から一方的にその動因がおこる反射・反応理論とは違い、中枢神経系を環境に適応する事故調整システムとして考えている。運動行動は、運動制御に必要なさまざまな側面に関係する多くのシステムが同一平面上に位置し、その相互作用や力動関係により生じることを前提としている。これらのシステムは、個人-課題-環境の3者の相互作用が運動制御を決定することになる。

 

●静的バランスと動的バランス

意図的運動におけるバランスとは、静的姿勢保持としてのバランスであるのか、意図的運動時のバランスであるのかが必要となってくる。そこで、静的姿勢保持に関するものを静的バランス、意図的運動時のものを動的バランスと呼ぶようになった。「静的バランスは支持基底面が維持され質量中心のみが動いている場合であり、この場合バランスの課題は安定性限界もしくは支持基底面内に重心を維持することである。また、動的バランスは支持基底面および質量中心ともに移動・変化するもので質量中心が支持基底面に必ずしも保持されない」。

また、もう一方の考えによると「静的バランスは身体位置の移動を伴わない状態における姿勢保持であり、動的バランスは身体位置の移動を伴う運動における姿勢保持をいう」としている。

 

●力学によるバランスの解釈

1.バランスに関する力学的諸要素

重心は質量中心(center of mass)と同じ位置にあり、質量に比例した重力の中心で、その点における回転モーメントがゼロとなる場所である。したがって、重心を剛体の重量と同じ力で逆方向に支えると、剛体を回転させずに静止した状態で保持することができる。つまり、力がその一点に集中していると考えることが可能である。身体は体重に相当する力で絶えず床を押しており、床からは同じ力で逆方向に押されている(床反力:floor reaction)。床反力は重心と同様に一つの力として合力をなしており、その合力の作用点が圧中心(center of pressure)である。また、床と接している面の外縁を最短距離で結んだものが支持基底面であり、圧中心が支持基底面の外にでることはない。

2.安定と不安定

姿勢の安定性に関して重心と支持基底面の要素として、①支持基底面の広いほうが安定性がよい、②重心位置の低いほうが安定性がよい。これは、支持基底面が広いほうがより大きな重心の動揺に対応でき、重心が低いほうが同じ角度で傾斜しても高いよりも重心の変動が小さいためである。

幼児の運動発達では背臥位、四つ這い位、膝立ち位、高這い位、立位と支持基底面が徐々に狭く、重心位置は高くなる。これにより、発達は安定した姿勢からより不安定な姿勢への適応であることがわかる。

健常人においては重心移動の際、不安定性を積極的に利用していることがわかる。すなわち、圧中心と重心線の距離を大きくすることにより、重力によるモーメントを大きく得るこえができ、それを利用して効率のよい運動の開始や重心移動を行うのである。

●理学療法アプローチ

1.システム理論によるアプローチ

バランスを構成する要素として、視覚、前庭機能、抹消感覚、神経筋調整、筋力、反応時間を取り上げ、加齢による運動戦略の変化についてまとめる。高齢者では、足関節戦略による制御が乏しくなり、股関節戦略の役割が相対的に大きくなる。それらの要素の機能低下がバランス能力の低下に帰着すると考えられている。理学療法の介入を考えた場合、一つは機能低下したシステムを改善する方法、もう一つは他のシステムで補償するという考えである。

2.運動力学的解釈による練習課題の設定

重心の位置と支持基底面の関係から練習課題の難易度を設定することは、臨床的に有用な方法である。重心を支持基底面に投影して考え、レベルⅠは重心を支持基底面の極狭い部分に保持することができる能力、レベルⅡは重心の位置を支持基底面で自由に変化させることができる能力、レベルⅢは重心が支持基底面から出ても適切に支持基底面を変化させバランスを立てなおすことができる能力である。静的、動的バランスの観点からみると、レベルⅠが静的バランスに、レベルⅡ・Ⅲは動的バランスに相当する。練習の進め方としては、端座位で姿勢を保持することから始め、次のレベルとして体幹の傾斜などによる重心移動を行う。この際に上肢運動を入れて、体幹・下肢による支持運動性を練習することも可能である。最終的な段階(レベルⅢ)としては、遠くに手を伸ばして床に手をつき、支持基底面を変えてバランスを維持する練習を行うのである。また、段階的により不安定な姿勢における練習を設定することも、有用な方法である。

 

坐位バランス

・正常機能について

椅子坐位における動作では、それぞれの課題に応じて、身体のアライメントを適正に保つ能力が要求される。課題の遂行にあたって生じる重心の移動にともない、適切な姿勢をとるための準備と絶え間なく続く姿勢調整がその能力に要求される。

バランスのとれた椅子坐位とは、過剰な筋活動なしに坐ること、坐って身体を動かせること、さまざまな運動課題を遂行できること、坐り直しがでこること、という能力と定義される。身体の一分節が動くと、重心の位置は変化し、バランスをとるために他の体分節の動きが要求される。動きの程度により、実際の運動がたやすく観察されたり、そうでなかったりする。しかし、ほんのわずかな重心の移動でさえ姿勢を適正に保つための準備的活動と絶え間ない調整が生じる。正常では、バランスが失われるまで重心が動いたときのみ、倒れるのを防ぐため、手か腕で体重を支える。

 

・坐位アライメントの本質的要素

椅子坐位での身体のアライメントはいくつかの要素に影響される。①何の上に坐っているのか、②何をしているのか、③その人が日頃つねにとっている坐位姿勢、である。人が背もたれのついた椅子に完全に身体を沈み込ませて座っている場合は、動かない限り姿勢調整は必要ない。中程度に支えられた状態ではじっとしていることはなく、アライメントは絶えず変化し姿勢調整が常に必要となる。次に示す坐位アライメントの本質的要素は、身体をまっすぐに起こして坐った場合である。

  • 両足・膝は閉じている
  • 体重は左右均等にかかる
  • 体幹は伸展し、両股関節は屈曲している
  • 両肩は水平で、頭部は安定した位置にある

椅子坐位の分析として、①静的な椅子坐位でのアライメントの観察、②種々の難易度の異なる運動課題を行う際の上下肢、体幹、頭部の姿勢調整能力の分析、である。

 

・椅子坐位の練習

坐位バランスが不良であった場合は、最初の数回の治療では、両足を床につけ低くしっかりしたベッドに坐らせる。坐位動作能力が改善してきたなら、さまざまなタイプの椅子に坐らせ、種々の課題を行わせとよい。この練習は、立ち上がりや、腰掛ける練習と組み合わせて行うことができる。

患者が坐位での運動練習を行っているとき、必要な姿勢調整を確実に行わせる。このとき、足をあちこち動かしたり、支持基底面を広くとったり、身体をくねらしたりしないようにさせる。セラピストが介助しすぎると、患者は自分で姿勢調整する必要がなくなってしまう。

 

・重心移動に応じた姿勢調節訓練

椅子坐位で、両手は膝の上におき、頭部と体幹を回して、肩ごしに振り向き、次にもとの中間位に戻り、それを反対側でも繰り返す。

これは、細かな姿勢調節の練習となる。患者が独力で動けることを自分で確認して、バランス感覚の再獲得が可能となる。

【留意点】

早期の患者で動くことを怖がっている場合、種々の課題を達成しようと努力することで、バランスをとろうとすることから注意をそらさせることができるのである。

【口頭指示】

  • 後ろを振り向いてみて下さい
  • 頭と体を回してみて下さい
  • 後ろに体を傾けないで下さい

【注意事項】

両下肢を揃え、最初の位置からできるだけ動かさずに、両手を膝の上におき健側の肩の力を抜かせる。

 

椅子坐位で患者は、身体を側方に傾け、一つか二つの枕の上に患前腕をのせ身体を支えた肢位をとる。セラピストは患者の側方から介助する。次にこの肢位からもとの肢位に身体を起こした椅子坐位に戻る練習をする。

【留意点】

患者は、この練習によって椅子坐位でバランスをとるために、どのように頭部と体幹をコントロールしたらよいのかを知る。また、これによってまっすぐ身体を起こして坐っていられる自信をつけることができる。

【口頭指示】

  • 枕の上に体を倒しなさい
  • そこから体を起こしてまっすぐになって下さい

【注意事項】

身体を後方に傾けさせない

肘の上に肩がくるようにする。頚部は側屈させる。

 

椅子坐位で、患者は前方に手を伸ばし目標とした物に触れる。同様に、それを床の方にあるいは、身体の両側に行う。それぞれ1回行うごとに、身体をもとのまっすぐした椅子坐位に戻す。必要な場合は、セラピストは患側上肢を支える。

【口頭指示】

  • 手を伸ばして…に触って下さい
  • 触ろうとするものを見て下さい
  • 体をもとの位置に戻してまっすぐ坐って下さい
  • 今と同じ動きを繰り返して下さい。少し遠くまで手を伸ばせますか。
  • 伸ばしたところで、しばらくの間そのままにして下さい。ゆっくりもとの戻って下さい

【注意事項】

必要な姿勢調整を行うように患者に指示する

頭部・体幹の動きが適切になるようにする

患者が目標を注視するようにさせる

患者の注意を常に麻痺側に向けさせるようにする。このとき、必要に応じ麻痺側へ体重を持ってくるようにする

難しい部分の動作を急いで行わないようにさせる

【留意点】

患者が絶えず患側に倒れてくるような場合は、セラピストは健側に動かすことに専念しがちであるが、こうすることで患者のバランス能力が獲得されるだろうと期待している。しかし、バランス能力獲得には患側方向への動きを拡大するよう働きかけるほうが、一般には効果的である。患側に倒れがちなことによって代償動作を学ぶより、この方法でむしろ麻痺側方向への動きをコントロールする身体の使い方を学び、麻痺側に倒れ込むという問題を解決できる。同じように、患者が後方に倒れる傾向がある場合、後方への運動をコントロールするよう働きかけ、前方と後方の両方向に動く練習を行う。

 

・動作の複雑性を増す

椅子坐位で、側・下方に手を伸ばし床から目標としたものを拾い上げる。

【留意点】

この課題は、よりやさしい課題に変えることもできる。例えば、目標物を本の上に置き、手を近づけやすくする。また、目標物を側方や下方に少し遠くに置けば難しいものとなる。

【注意事項】

患者は、身体を前方でなく側方に動かさなければならない。

 

椅子坐位で、床から軽い箱を両手で拾いあげる。前方に手を伸ばしテーブルから目標物を両手で持ち上げる。後方に手を伸ばし目標物をつまみあげる。

【留意点】

手のコントロールが不十分な場合は、目標に触れさせるようにするとよい。

 

・立位バランス

正常機能について

立位でさまざま動作を行うには、動かずにじっと立っているときや、課題を行うため立位で身体を動かすとき、身体アライメントをそれぞれに応じて調節する能力が要求される。すなわち、重心移動に応じて準備と絶え間なく続く姿勢調節を適切に行う必要がある。

バランスのとれた立位とは、筋を過剰に活動させず、ほとんど動かずじっと立っていること、さまざまな課題を行うため立位で身体を動かすこと。他の肢位から立位になったり、立位から他の肢位になること、その肢位から何歩か踏み出すことである。立位は、全く静止した肢位でなく、連続したかすかな動きを伴っている。重心がほんのわずか移動しただけでも、姿勢を保つための筋の準備的活動と絶え間ない調整が同時に生じる。

立位は、椅子坐位より支持基底面が非常に狭くなるので、身体アライメントに乱れが生じやすい。肢位の調整が上手に行われると必要とされるエネルギー消費量は少なくてすむ。最もよくバランスがとれる立位肢位は、下肢が床に対し垂直になるよう両足を10数㎝離して立つことである。この肢位では、支持基底面は広くもなく狭くもなく、床を斜めに押す力が働かず垂直に押すことができる。矢状面でみると、この場合、肩関節は股関節の真上にきて、足関節はそれより少し後方に位置する。この身体各分節のアライメントならば、動作を行ううえで安定しているので、身体を動かしたり、効率よく課題を達成することができる。

 

・立位アライメントの本質的要素

  • 足部が10数㎝離れている
  • 股関節は、足関節より前方にある
  • 肩関節は、股関節の上にある
  • 両肩は水平で、頭部は安定した位置にある
  • 体幹は、まっすぐ伸びている

 

立位バランスの分析として①静的立位アライメントの観察、②難易度のことなるさまざまな運動課題を行うとき、上下肢・体幹・頭部の姿勢調節能力を分析する。例えば、運動課題として、天井を見上げる、後ろを振り向く、手を前・横・後ろに伸ばし物に触れたり握ったりする、片足立ち、床から物を拾い上げる、などの動作を行わせる。

 

・立位の練習

どんな片麻痺患者でもはじめて立つときはバランスを崩すものである。多くの患者が一側に身体を傾けたり、後方に倒れやすい傾向にある。その結果、非麻痺側に体重の大半をかけてしまう。したがって、患者は訓練開始から立位バランス訓練上の不適切な部分と、それを修正する方法を知らなければならない。つまり手で何かをつかんだで立っているのではなく、両下肢と体幹、骨盤をコントロールして立つことを理解すべきである。セラピストも混乱して患者を抱きかかえてはならない。口頭支持と徒手による誘導を用いることで、自分で適切な姿勢調整を学習するであろう。

立位バランスが早期に再獲得できれば、身体の両側と空間での身体部位の位置に意識が向けられるようになる。また、動機づけや、励ましともなり、立位バランスが改善するにつれて患者に自信を与える。

 

股関節のアライメントを整える訓練

背臥位で、麻痺側下肢をベッド端からたらして、小範囲で股関節を伸展する練習を行う。

【口頭指示】

  • 踵を床の方にゆっくり押し下げて下さい。そして少しだけお尻を持ち上げて下さい
  • お尻をあまり高く持ち上げまいで下さい

【注意事項】

大腿を適切な肢位に整える。すなわち、股関節が外転もしくは内旋しすぎないようにする。膝は直角かそれ以下に屈曲させる。

  • 足関節は底屈させない。
  • 非麻痺側を動かしたり、緊張させないようにする
  • 動きの要領をつかみやすいように、膝を下方に押し下げる。

 

患者は両足に体重をのせ両股関節を伸展して立つ。

セラピストは、患者の肩を手で誘導し介助することもできる。セラピストの腰に患者の上肢をおいて介助する方法も最初のうちは有効である。この方法の場合、セラピストの介助は少なくてすむ。ただし、このとき患者は自分の下肢を使って立ち上がるのであって、上肢でセラピストの腰を引っ張らないようにしなければならない。セラピストは麻痺側の膝を前方に持ってくることで、関節角度を適切になるように整える。さらに膝を下方に押しつけることで、足が床から離れないように介助する。これにより、骨盤が下肢の上に正しくのるようアライメントを整えると、膝のコントロールもある程度改善する。

【口頭指示】

  • 両足を床に押しつけ立ち上がって下さい
  • お尻を私の方に近づけて下さい、あるいは、自分の足より前にお尻がくるようにして下さい
  • こちらの(麻痺側)足に体重をのせるようにして下さい

 

膝関節の屈曲を防ぐ

【留意点】

最初の数日間、患者は膝をコントロールするのが難しく、立位での動作を遅らせる大きな原因となる事が多い。Calico splintは、立位で装着するが、これを使うことで膝が折れるという心配をしないで麻痺側下肢に体重をかけることができるようになる。患者は、健側を一歩前に出す、横に歩く、Calico splintをつけた立位で患者は膝関節を伸展した状態で筋のコントロールを多少できるようになるが、スプリントの使用は一度あるいは二度の治療の範囲に限ったほうがよい。このスプリントを使用する利点は、立位という課題がまだ難しいと考えらえる患者にも、これを利用して練習を始められることである。半側空間無視の患者は自分の中心軸を非麻痺側の方に偏位させているので、Calico splintを使うと麻痺側下肢に体重をのせやすくなる。

 

大腿四頭筋の収縮を高める

椅子坐位で麻痺側の膝を伸ばすようにして、その肢位で「膝のお皿を動かして下さい」と指示して、できるだけ長く大腿四頭筋を収縮させる練習をするとよい。椅子坐位でセラピストが患者の膝を伸展位に保持せる。次に保持していた手を離し足が床につかないように努力させるのもよい。また、セレピストが患者の下肢を「離しますよ」と声をかけ、離したとき足をゆっくり床におろすようにさせる方法もある。筋電図を用いて視覚や聴覚を利用したフィードバッグを行えば、患者の練習意欲を高め、フィードバッグをより明確にすることができる。

 

重心の移動に応じ姿勢を調整する練習を行う

【留意点】

「バランスを崩しますよ」、「私にとりかからないで」、「あなたを動かすから動かされないように抵抗して」などの語句を使わないほうがよい。このような指示は、患者の身体を『こわばらせる』。また、セラピストの介助が多すぎ、患者が筋を活動させなくてもすむことのないように心がけねばならない。もちろん、介助量が少なすぎて患者のバランスを失わせてはならない。患者が以下に述べる課題を練習する場合、その課題は、患者の能力の限界より少しやさしいものにしたほうがよい。しかし、この限界は、常に打ち破っていかなければならない。このためには、セラピストは、与える課題が適切であるようにする必要がある。それには、絶えず身体アライメントを監視する必要がある。物を掴んだり手を伸ばして身体を支えないようにさせる。バランスは、手や上肢でなく両下肢でとるよう指示する。患者はバランスが崩れそうだと感じ身体を『こわばらせ』ている可能性がある。そのときは、患者の自信を回復させるため、以下に述べる課題を行わせるとよい。これらの課題なら、患者はほんのわずかな介助や誘導によって立位でバランスをとって動くことができるのがわかる。

 

両足を10数㎝離して立ち、天井を見る

【口頭指示】

  • 天井をみてください。眼だけ動かさないように。後ろに倒れないようにして下さい。
  • お尻を前に出して下さい
  • 見上げたとき、両足首より体を前に持ってくるようにして下さい

【注意事項】

患者が両足首より身体を前に動かすのを忘れないように注意して、後方に倒れやすい傾向を修正する。足部を動かすのをやめさせる。

 

両足を10数㎝離して立ち、体幹と頭部を回旋する。次にもとの中間位まで身体を戻しそれを反対側にも繰り返す。さらに進めて一歩踏み出した肢位でそれを行う。

【口頭指示】

  • 振り向いて、後ろを見るようにして下さい。このとき頭と一緒に身体を回して下さい。
  • 両足を動かさないようにして下さい。

【注意事項】

立位のアライメントが保たれているようにする。両足は動かさないようにさせる。必要なら、患者の足の横に、セラピストの足をおき動かないようにする。

 

立ったままテーブルの上の対象物を取るために、前方や後方、側方へと手を伸ばす。課題に難易度をつけ、さまざまな方向へ手を伸ばしたり、指差しをしたりする。

【留意点】

物に手を伸ばす課題は、はじめ10数㎝両足を離した立位で行い、次に足を一歩出した肢位でも行う。

【口頭指示】

  • これに触ってみて下さい。もう少し遠くまで手を伸ばしてみて下さい。
  • 両足を動かさないようにして下さい。
  • 右側に手を伸ばすときは、左足をしっかり床につけて下さい。

【注意事項】

正常ならば一歩踏み出さないと届かない位置まで、手を伸ばさせる必要はない。

「楽にして下さい」と指示し、こわばらせないようにする。

課題に応じて、両足上で身体を動かせるようにする。

 

患者は健側下肢を前方し一歩踏む出し、次に後方に戻す。

【口頭指示】

  • こちらの足(麻痺側)に体重をのせて下さい。
  • 反対の足を一歩前に踏み出して下さい。
  • うしろの足より前にお尻を出して下さい。
  • 後ろに一歩戻して下さい。

【注意事項】

麻痺側の股関節を屈曲させない。非麻痺側の下肢を一歩前に踏み出すとき、股関節は伸展していなければならない。

骨盤はあまり側方に移動させすぎない。

非麻痺側下肢を一歩踏み出すとき、あまり外側に出さない。

【留意点】

必要なら患者はセラピストの腰あるいは肩に手をかけてもよい。ただし、わずかに支持させるだけである。また、患者の両肩はでいるだけ水平であるようにする。

 

両踵を壁から10数㎝離して、壁を背にして立つ。両手を合わせて上肢を前方に差し出す。セラピストはその手を支える。患者は壁から両臀部を離す。セラピストはこの動きを誘導するために、抵抗加えたり、介助したりして確実に体重が後方に残るようにする。前方・後方への動きに間、セラピストは足背屈筋の活動が高まる点を捜す。この点の前後で、足関節の随意的運動を行わせる。

※特に多くの患者に共通して見られる問題に、足関節を背屈して後方に体重を移動できないことがある。この場合、両股関節で過度に体幹を前傾させて代償してしまうことが多い。この原因は、下腿三頭筋が緩まなかったり、両足よりも前方に股関節を持ってこれないことが考えられる。これらの原因は治療によって取り除く必要があるが、この原因が足背屈の随意性の不足によるものであれば、以下の訓練を行い患者に運動の要領を理解してもらう。

【口頭指示】

  • お尻を壁から離して下さい
  • 両方のつま先が上がっているのがわかりますか。もう少しつま先を持ち上げて下さい

【注意事項】

前に出した上肢を後ろに引かせないようにする。肘を伸ばし、両下肢で壁から臀部を離すようにするとよい。両足に体重がのっているようにする。両膝関節を曲げないようにする。両股関節はいつも両足関節の後方に位置するようにする。

 

トレーニングによってバランスを最適化するための介入目的

  • 坐位、立位および身体の移動中における随意的動作中の身体のバランス
  • 予測された、または不意をつかれた不安定な状態に対する迅速な反応

(o ̄・ ̄)参考文献

医療学習レポート.片麻痺とバランス定義


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