スポンサード・リンク

(・∀・)筋萎縮性側索硬化症(ALS)と理学療法評価の話


( ̄ー ̄)題名:筋萎縮性側索硬化症(ALS)と理学療法評価の話

1.面接・問診で注意すべき事項

・難病は発症が不明確で、診断確定までの経過が長い場合がある。

・そのために患者は多くの病院を受診することが少なくない。

・診断結果に満足できない患者にとって病名を受け止めることができないこともありうる。

・問診によって経過を詳細に聞き出し、病状の変化から病勢や進行などの様子を把握することが重要。

・このとき診断名を患者が告知されていない場合もありうる。告知は家族が受け、本人には知らせていないこともある。

・理学療法士は事前に主治医から告知の有無に関する情報を得ておくべき。

・さらに病気をどのように説明しているのか、また経過をどこまで、どのように説明をしているのかを確認しておくべき。

・進行性の病気だけではなく、慢性化、病勢の大きな変化などで病状が快方に向かいにくい場合も同様の対処が必要である。このとき言葉の使い方に十分に注意を払わねばならない。

 

2.評価項目と評価方法

・疾患に特徴的な症状は定量化できる検査項目(関節可動域検査、姿勢保持時間、ADL得点など)、定性化した内容の記載(病勢の変化、体調不良の時期など)、通常用いられている重症度分類(厚生省特定疾患研究班や各学会が考案した分類など)、病状の経過の早さ(年単位、月単位での変化など)、日常の運動・動作の状況(場面の違いによるADLの変化、動作獲得に必要な代償運動など)、悪化が考えられる原因の記載(疲労や運動能力を無視した訓練など)、療養生活上の問題(福祉用具の使用やハウスアダプテーション=住宅改造の可能性、介護能力)などについて評価を行う。

・評価方法は病勢の安定時と不安定時で行い、その比較から変化量を把握する。効果判定のために初期評価と治療後評価を行い、ゴール達成時期の想定を行う。

 

検査

1.筋電図:長い潜時をもち、かつ高振幅のユニットを呈する神経原性変化や、脱神経電位をみる。(最も有用な検査)

2.血清検査:CPK(クレアチンホスホキナーゼ)は、軽度上昇を示すこともある。

3.ミエログラフィ:脊髄の太さは正常、あるいは萎縮性。

4.筋生検:神経原性萎縮像がみられる。

 

評価モデル

最も重要な症状は、下位運動ニューロン徴候(深部腱反射低下、筋力低下、筋萎縮、繊維束性収縮)と上位運動ニューロン徴候(深部腱反射亢進、痙縮、病的反射)が共存して認められるが、感覚障害、複視(眼球運動障害)、膀胱直腸障害を伴わないことである。評価は病状の重症度に対応して行う。

筋萎縮性側索硬化症の重症度分類(厚生省特定疾患研究班、1974)

1.   筋萎縮をみるが,日常生活に全く支障がない.2.   精巧な動作のみができない.3.   介助を要せずに自分でなんとか運動や日常生活をやっていける.

4.   介助をすれば日常生活がかなりよくできる.

5.   介助をしても日常生活には大きな支障がある.

6.   Bedriddenの状態であり,自分では何でもできない.

7.   経管栄養または呼吸管理を要する.

1)初期(重症度1~3)

・発症はしているが軽度で筋萎縮を確認できるがADLは特に問題がない。

・健康管理に注意してそれまでの生活を継続できる時期で、多くの場合診断確定診断のための検査入院を行う。

・病状の経過を詳細に聞き取り、発病のタイプ(上肢型、下肢型、球型)、進行程度、悪化の引き金になったことなどを必ず聴取し、以後の経過を想定する。

・評価は発病タイプ別に上位、下位運動ニューロン症状、球症状を検査する。

・この時期は筋力低下や筋萎縮、協調運動、運動の持続性などの運動能力の状況把握が中心となり、筋力低下の程度、分布状況、現状のADLの維持を想定したゴールなどを評価する。

・この時期は診断が確定していないことありうるため、問診する際は言葉の使い方を十分に注意する。

 

2)進行期(重症度4~5)

・進行によるADLの変化が増大する時期。

・評価は現状のADL、運動機能を維持あるいは悪化に備えるための検査が中心となる。

・たとえば、筋力テストでアンバランスな筋力低下による拘縮発生を想定して防止策を計画する。

・平衡機能検査では転倒の可能性を想定し、移動手段を決定する。

・呼吸機能、筋力低下、食事摂取内容などから易疲労性、持続的な運動指導の可能性、嚥下機能の低下を想定し、運動量の設定、食事の内容などを決定する。

・舌の萎縮や構語障害によるコミュニケーション機能の低下は患者と医療従事者間の意思疎通を困難にする。

・終末期に向けて言語聴覚士によるコミュニケーション手段の評価、作業療法士による残存する機能を活用したコミュニケーション用の自助具の作製が役に立つ。

 

3)終末期(重症度6~7)

・全身の機能低下による臥床生活となる時期。

・多くが経管栄養、人工呼吸器を装着した呼吸管理、導尿カテーテル装着により入院生活となる。

・地元医療機関の往診体制、医療処置、介護者の派遣、療養環境の整備などで在宅での療養生活が可能となる。

・評価は、拘縮発生の可能性、呼吸機能の維持能力が基本となる。

・特に眼球運動は最後まで残存する可能性が高く、コミュニケーション維持に役立つ。

 

具体的な評価法

1.重症度、障害の判定

・厚生省特定疾患調査研究班による基準で、進行状態を把握。

1) 改訂日本語版Norris Scale(リルゾ-ル臨床試験研究班による)(表2):徒手筋力検査、四肢スケール、球スケールからなる。経過に応じた障害を得点化できる評価法。

2) 筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R)(表3):質問法で項目ごとに患者または介助者から得た情報で0(全くできない)から4(正常)までの5段階評価。得点は、上肢および下肢の筋力と高い相関があり再現性もよい。

実際にこれらの評価表は主に医師により評価されるものであり、理学療法士としてのこの評価表の利用法としては、カルテとともにこれらの評価の結果より、患者の発症タイプや進行度合いを大まかに判断し、それをもとにどこに重点をおいて理学療法評価を進めていくかの判断材料とすることが考えられる。

 

筋萎縮性側索硬化症のNorris Scale改訂日本語版による評価法

A.徒手筋力検査

上肢筋力

ゼロ

不可

正常

1.母指と小指の対向(対立) 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

2.手関節屈曲(掌屈) 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

3.手関節伸展(背屈) 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

4.肘関節屈曲 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

5.肘関節伸展 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

6.肩関節外転(側方挙上) 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

下肢筋力
7.足関節背側屈曲 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

8.膝関節屈曲 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

9.膝関節伸展 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

10.股関節屈曲 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

11.頚の側方屈曲 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

12.頚の後方伸展 左右

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

総点           点

 

備考

 

 

 

 

 

B.Limb Norris Scale

%


スポンサード・リンク
普通にできる 幾分支障がある 十分にはできない 全くできない
1.仰臥位で頭をあげる 3 普通にできる約60度屈曲を保持 2 床から約30度以下だが屈曲できる 1 床から30度以下だが屈曲できる 0 床から頸を持ち上げられない
2.寝返りをする 3 普通にできる 2 ひとりでできるが相当の努力と時間を要する 1 人手をかりればできる.手摺のみでは困難 0 全くできない
3.仰臥位から座位まで起き上がれる 3 普通にできる 2 ひとりでできるが相当の努力と時間を要する 1 人手をかりなければできない 0 全くできない
4.名前を書く 3 普通にできる 2 時間をかければボールペンで読める字を書ける 1 太目のマジックであれば何とか判読可能 0 全くできない
5.シャツ,ブラウスを自分で着る 3 普通にできる 2 通常のものであれば時間をかければひとりでできる 1 一部介助が必要 0 全くできない
6.シャツのボタンをかける(ファスナーのあけしめができる) 3 普通にできる 2 時間をかければひとりでできる 1 一部介助が必要あるいは一部のボタンしかかけられない 0 全くできない
7.ズボン・スカートを自分ではく 3 普通にできる 2 時間をかければひとりでできる  (座位か立位…を明記) 1 時間がかかり過ぎて実用的ではない.かなりの介助が必要 0 全くできない
8.定規をあてて線を引く 3 普通にできる 2 線は何とか実用的に引ける 1 線は引けるが実用性に欠ける.自助具を使えば線は引ける. 0 全くできない
9.フォークまたはスプーンを握る 3 普通にできる 2 握る力は弱いが何とか実用的に握れる 1 握る力は弱く,実用性に欠ける(自助具を使うか柄に布を巻き太くすることで何とか実用) 0 全くできない
10.急須から茶碗にお茶を入れそれを飲む 3 普通にできる 2 時間がかかるが実用的である 1 自助具を使うか一部介助をすれば何とかできる 0 全くできない
11.立ち上がってお辞儀をする 3 普通にできる 2 時間をかければできる 1 立ち上がれないか又は頭を十分下げられない 0 全くできない
12.髪をとかす(櫛が使える) 3 普通にできる 2 時間をかければできる 1 自分の思うようにできない又は一部介助が必要 0 全くできない
13.歯ブラシを使う 3 普通にできる 2 時間がかかるが実用的である 1 自助具を使用するか一部介助すれば何とかできる.電動歯ブラシしか使えない 0 全くできない
14.本や盆を持ち上げる 3 普通にできる 2 筋力は弱いが軽いものなら持ち上げることはでき,実用的である 1 空の盆又は新書本程度なら持ち上げることができる 0 全くできない
15.鉛筆やペンを持ち上げる 3 普通にできる 2 筋力は弱いが持ち上げることはでき,実用的である 1 書字が可能な形で持ち上げるのは困難 0 全くできない
16.腕の位置をかえる 3 普通にできる 2 筋力は弱いが位置を変えることができ実用的である 1 人手あるいは反対側の手による介助があればできる 0 全くできない
17.階段を昇る 3 普通にできる 2 時間がかかるが実用的である手摺があれば実用的に昇れる 1 側に人がいれば何とか昇れる(手摺が必要) 0 全くできない
18.50m歩く 3 普通にできる 2 時間はかかるが歩ける 1 50mまでは歩けない 0 全くできない
19.独りで歩く 3 普通にできる 2 時間はかかるがどこでも歩ける 1 歩ける場所,距離は限られる(家の中程度) 0 全くできない