スポンサード・リンク

(#^.^#)前十字靱帯損傷の話


「前十字靱帯損傷」の画像検索結果

(^_-)題名:前十字靱帯損傷の話

1)概要

膝前十字靱帯(anterior cruciate ligament:以下ACL)損傷は膝部のスポーツ外傷において最も注目されている。その理由としてACL損傷によって惹起される膝の不安定性(膝折れ感;givingway)がスポーツ活動を困難にするとともに、それを放置することにより半月板損傷や二次的変形性膝関節症を引き起こすことが挙げられる。ACL損傷はバイオメカニクスを中心に多くの研究が行われてきており、現在のスポーツ医学の発展に寄与してきているともいえる。しかし、ACL損傷は現在でもスポーツ復帰までには長期間を要しており、今後もスポーツ医学のなかで注目されていく疾患であろう。

ACL損傷に対する治療としては、高齢者や骨端線閉鎖以前の若年者、スポーツや仕事において活動性が高くない者などに対しては保存的治療が適応とされている。また、新鮮ACL単独損傷に対しては一次縫合術も行われるが、長期成績は不満足例が多くスポーツを継続する可能性のある者に対しては再建術の方が成績が良い。再建術は亜急性期に施行された者の方が、急性期や慢性期に施行された者より大腿四頭筋筋力の回復が早く、膝蓋大腿関節痛や関節線維症も少ないため、その施行時期は受傷後3~5週間が良いとされている。この期間における理学療法の目的は腫脹の消退と正常な関節可動域の獲得であり、アイシングを主体にした物理療法と愛護な関節可動域訓練を行う必要がある。

 

2)機能解剖と病態

膝関節は平坦な脛骨内・外側穎に凸状の大腿骨の内・外側穎が乗るという形態の関節で骨性の支持力はきわめて弱く、その安定性は靱帯・関節包・筋に依存している。

ACLは大腿骨外顆内側後方より起こり、前内方に走行し、骨顆間結節内側およびその前方に付着する。脛骨側の付着部は30mm程度で縦長であり、大腿骨側の付着部は23mm程度の円弧状である。ACLは膝関節が完全伸展位でより垂直になり、大腿骨側の付着部も垂直に近い傾斜となっている。ACLはanteromedialbandとposterolateralbandに分けられ膝関節が伸展位ではposterolateralbandが緊張し、反対に膝関節が屈曲位ではanteromedialbandが緊張する(図4)。

 

また、ACLを伸展位で「前方線維束」と「後方線維束」とに分け前方線維束は全可動域で緊張しているが、後方線維束は屈曲位では弛緩する(図5)ともいわれている。どちらにしてもACLはどの屈曲角度においてもその一部が緊張しており、このような複雑な構造がACLのバイオメカニクスの研究における問題解決をより困難にしている。

ACLのanteromedial fibersにstraintrans-ducerを付けた実験では大腿四頭筋を収縮させると膝関節伸展位において、受動的な屈伸よりも明らかに緊張が高まった(図6)。また、膝関節の受動的な屈伸時に内反(図7)や内旋(図8)を加えることでACLの緊張は増加した。さらに生体のACLにelongation gageを取り付けて各種の動作を行わせた実験では、open kinetic chain(以下OKC)で大腿四頭筋に負荷を与えると膝伸展位でACLは強く伸張されるが、それに対して片脚ハーフスクワットのようなclosed kinetic chain(以下CKC)ではACLの伸張は少ないと報告されている。

以上のようにACLは一般の骨・関節疾患と異なり単純に荷重量によってストレスを受けることはない反面、大腿四頭筋訓練においてはその方法を考慮しないと過大なストレスをかけてしまう。

ACL損傷時にもっとも繁雑に起こる臨床症状は膝屈曲30°~10°での脛骨の前方内旋亜脱臼現象(前方内旋不安定症:anterior internal rota-toryinstability)であり、膝くずれ(giving way)として患者がもっともこわがる現象であり、スポーツ活動を大きく制限する珊。このgiving wayが発生する原因としては脛骨大腿関節の回旋運動の異常、大腿骨内顆の滑動の乱れなど諸説がある。

 

ACL損傷の受傷機転

ACL損傷の受傷機転としては、以下のようなものがある。

1)下腿の外反外旋により内側側副靱帯損傷に合併して起こるもの。

すなわちスキーの先端をポールなどにひっかけて受傷するもの。

2)急激なストップやジャンプの着地の際に大腿の外旋または下腿の内旋に膝外反が加わったときに起こるもの。

これは多くは内側側副靱帯の起始部を痛がり、同部に圧痛もあるが、外反動揺性はなく、したがって軽度の内側側副靱帯単独損傷と見誤られやすい。

3)膝の過伸展によるもので、サッカーやアメリカンフットボールで前方よりタック受けたさいなどに起こる。

4)脛骨上端外側の前方移動強制で起こるもの。

N testを強制的に受けたのと同様の機序であり、サッカーやラグヒーなどで脛骨上端へ外後方からタックルされた時などに起こる。この際、膝の後外側に疹痛があり、X座像上Segond骨折を伴うことがある。

5)大腿四頭筋の自家筋力によるもの。

バスケットボールで急激にストップをかけた際、スキーで膝を90°前後に屈曲し高速でコブなどではねられた時などに、全く回旋力なしでも起こることがある。

 

1、下腿の外反外旋

11例

バスケットボール

17

75

92例

2、大腿の外旋(下腿の内旋)+膝外反

48

サッカー

61

0

61

3、膝過伸展

9

スキー

13

12

25

4、脛骨上端外側の前方移動強制

27

バレーボール

15

2

17

5、大腿四頭筋の自家筋力によるもの

3

野球

13

0

13

98例

ラグビー

10

0

10

器械体操

1

8

9

ハンドボール

1

7

8

陸上競技

2

4

6

空手・拳法

2

3

5

その他

15

15

30

150

126

276例

受傷スポーツ種目

 

ACL損傷の臨床症状および経過

新鮮例での特徴は、受傷時のgiving wayと断裂音(POP)と、その後に起こる関節血症である。関節血症は受傷より数時間ないしは半日ぐらいしてから徐々に顕著となり、疹痛が増強してくる。この時点での不安定性は、前十字靱帯単独損傷では、Lachman signが陽性に出るが、前方引き出し徴候は多くは陰性であり、N testなどの回旋不安定性は疹痛のため行うことができない。関節穿刺を受け関節内の血性関節液を排除すれば、数日で疹痛も消失し、あたかも治癒したかの感じさえすることが多い。しかし、前十字靱帯損傷を放置したままスポーツ活動を続けると、二次性に半月板損傷や変形性関節症変化を合併してくる(表3)。受傷後1年以上スポーツを継続していた123例中112例。(91.0%)に半月板損傷を合併しており、受傷後もスポーツ活動を継続希望であれば早期の再建手術が望ましい。

 

靭帯損傷の分類

靱帯損傷は、損傷程度により第1度~第3度に分類される。

通常、第3度の損傷では、観血療法(靭帯再建術)が選択される。

第1度:線維の伸展あるいは微小損傷

疼痛、腫脹、機能障害は軽度であり、関節の不安定性は認められない。

第2度:線維の部分断裂

疼痛、腫脹、出血などが明らかで、軽度の機能障害と関節不安定性が認められる。

第3度:線維の完全断裂

疼痛、腫脹、出血、機能障害、関節不安定が明らかに認められる。

 

靱帯損傷後の介入経過

靱帯損傷後の介入経過は、損傷部位や手術の有無にかかわれず4期に分類される。損傷程度、手術の有無、手術方法により各期および全体の期間は異なる。

Ⅰ期:保護期

損傷靭帯や手術侵襲により組織の回復をはかるため、幹部の安静を保つ、患部以外へのアプローチが主体となる。

Ⅱ期:制限期

損傷部位の運動を開始するが、関節の運動方向の制限や損傷靭帯の力学的強度の低下を考慮した運動および荷重を漸増的に進める。

Ⅲ期:回復期

Ⅱ期と同様、制限はあるものの漸増的に負荷を増加し、基本的な運動能力を高める。

Ⅳ期:スポーツ復帰

対象者の活動レベル、スポーツ種目特性を考慮したプログラムを追加し、スポーツ復帰に向けてトレーニング強度を高める。

 

治療

●治療法の選択

以前は新鮮例に対しては急性期に一次縫合術が行われたが、安定した成績が得られないこと、関節拘縮を合併しやすいことから現在ではあまり行われていない。

ほとんどの新鮮例は関節血症を伴うのでこれを穿刺吸引する。固定用装具やギプスを用いて患肢の安静を保持し松葉杖を処方して免荷し、急性期の炎症が消退するのを待つ。通常少なくとも2~3週間の安静期間が必要である。

急性期の炎症が鎮静化した時点で、患者の年齢、職業,活動レベル(とくにスポーツレベル)などを考慮して治療方針を決定する。

すなわち、骨端線閉鎖前の症例や50歳以上の症例では原則的に保存療法を選択する。また、スポーツ活動レベルの低い症例では、ACL損傷膝の病態をよく理解させたうえで十分な後療法を行いながらいったん日常生活に復帰させ、不安定感の訴えが患者のQOL(qual-Ity of life)を障害する場合にのみ、手術療法(ACL再建術)を選択する。

競技スポーツ選手やそれに準ずるスポーツ活動レベルの高い症例では、保存療法を選択しても十分にスポーツ復帰できないことが多く、また復帰できても膝くずれを繰り返して二次的な半月板損傷や軟骨損傷、変形性関節症を惹起することが多いので、腫脹や落痛が軽快した時点でACL再建術を行うことが多い。

陳旧例に対する治療法の選択も、原則的には新鮮例と同様に活動レベルや年齢を考慮して手術適応を決定する。

 

●保存療法

ACL損傷に対する保存療法は、膝くずれを予防するための筋力の獲得と、危険な肢位を避ける動作の学習や装具の処方が中心になる。また、近年新鮮例に対して保護装具装着下に早期から運動を行い損傷靱帯の一次修復を期待する保存療法が報告されている。しかし、

スポーツ選手に対しては治療期間が長いこと、成績が必ずしも安定していないことなどから適応を避けることが多い。

 

●手術療法

一次修復術の成績が不良なことから、手術は再建術が選択されることが多い。

手術法は関節に小切開を加えて行う方法と、関節鏡視下に行う方法があるが、現在は主に鏡視下手術が行われている。

再建法には多くの方法があるが、①再建材料(substi-tute)の選択、②骨孔作製法、③substituteの骨への固定法によって大別される。

substituteとしては腸脛靱帯、骨付き膝蓋腱(BTB:bone-tendon-bone)、半腱様筋腱と薄筋腱(STG:semitendinosus-glacillistendon)などの自家組織、同種組織移植、人工靱帯などが用いられているが、それぞれに長所、短所がある(表1)。骨孔の作製法には1皮切法と2皮切法があり、また骨への固定法としては種々のstaple、interference screw、endobuttonなどがある。実際の手術はこれらの組み合わせによって行われ、その選択は個々の術者によって異なっている。現時点ではBTBをinterference screwで固定する方法、STGをendobuttonを用いて固定する方法、STGと人工靱帯を組み合わせて用いる方法、STGをinter-ference screwで固定する方法などを選択する術者が多い。さらに、最近では大腿骨側を固定するための横通しスクリュー(BONE MULCH screw、tranafix screw)も紹介されているが、長期的な臨床成績は不明である。

 

Reference interference screw

骨付き膝蓋腱(BTB)を骨孔内で固定する方法として、1987年Kurosakaらは骨孔内でsubstituteの骨片部分を骨孔壁にpress fitさせるscrewを開発し、その力学的強度が従来のscrew、staple、buttonと縫合糸などによる固定法よりも優れていることを報告した。従来よりBTB法はsubstitute自体の強度が優れていること、靱帯骨付着部を温存できることなどの利点が指摘されていた。さらにinterference screwの導入により強固な初期固定力が得られることから、BTBをinterference screwで固定する方法はACL再建術の”golden standard”として広く行われるようになった。その後、手術法は2皮切法から1皮切法に発展し、interference screw自体もguide wireを介して挿入可能なcannulated typeとなり、さらに最近では吸収性素材のものも開発されている。

Interference screwによる固定法の最大の利点は靱帯再建直後の固定間距離が短いことである。再建材料の力学特性と断面積が等しければ、加わる伸展負荷に対する再建靱帯の伸び(変形)は固定間距離に依存する。骨孔の関節外開口部付近で固定する他の方法では、骨孔内に生物学的固定が起こるまでの期間は、再建靱帯の固定間距離は正常ACLに比べて長くならざるを得ない。この点interference screwによる固定では、より正常ACLに近い靱帯長で固定できる利点がある。

Interference screwの間題点としては、挿入時にsubstituteを傷める可能性があること、再再建術時に抜釘が困難な場合があることなどが指摘されているが、いずれも本法の利点を打ち消すほどのものではない。BTBを用いた再建法では、substiltuteの採取部位に落痛か残存する症例が存在することから、近年STGを用いる再建法が行われているが、interference screwはSTGとの組み合わせでも用いられている。

Reference endobutton

1994年Rosenbergらは、大腿側の初期固定に特殊なボタン(endobutton〕を用いる1皮切法のACL再建手技を報告した。

この方法の最大の利点は、大腿骨側の皮切を必要とせずに、さまざまなsubstituteを用いた再建術に比較的簡便に応用可能な点である。

endobuttonの導入で大腿側の初期固定法がより容易になったことにより、一部の症例に採取部位の疼痛が残存するBTBを用いる手術法に代わって、STGを用いた1皮切法によるACL再建術が晋及した。

endobuttonによる固定法の問題点は、ブラインド操作のためにX線コントロールを要することがあること、および再建直後の固定間距離が長い点である。再建直後の固定間距離が長い場合、術直後から関節運動を行う近年のリハビリテーションプログラムでは、substituteが骨と癒合する前に骨孔内でmicromovementを生じ、いわゆるバンジー効果によって骨孔の拡大が起きる可能性が指摘されている。このためSTGにinterference screwを応用する術式も用いられているが、骨孔拡大と臨床成績は関連がないとする報告が多く、今後の検討課題となっている。

 

予後

ACL再建術の術後成績は近年飛躍的に向上し、術後早期に社会復帰、スポーツ復帰が可能となっている。いずれの方法でも術後5年の追跡調査で約90%に十分な安定性と関節可動域を確保している。予後を左右する因子として最も重要なのは、手術をする時点における半月板や関節軟骨の二次性変化の有無、次いで手術適応や手技などの医師の経験や技術による要素、さらに患者の年齢、筋力、復帰への意欲などの患者自身の要素が考えられる。いい換えれば、ACL損傷の治療成績を向上させるためには、まず手術の要否を症例ごとに的確に判断し、必要と判断した場合には他の関節構成体に損傷が及ぶ前に正確な手術を行うことが重要である。ハイレベルのスポーツ選手の術後スポーツ復帰を障害する主要な原因は疼痛である。

 

評価

受傷機転となった動作、不安を感じる動作や苦手な動作、およびgiving wayの有無、疼痛部位などを確認することが問診の重要なポイントとなる。軽症の捻挫として見過ごされてきた場合は、それまでの治療法について聞く必要がある。

情報収集

受傷日と手術日

受傷機転(スポーツ種目,受傷時のアライメント,接触型・非接触型)

再建術の方法(移植材,骨への固定法)

合併症(半月板や内側側副靱帯との複合損傷の有無)

事前に収集した情報の不明確な部分に関する問診→p3参照

理学療法評価

炎症の程度(痔痛・熱感・関節腫脹)

周径(特に広筋群の萎縮に注意)

関節可動域テスト(膝蓋骨の可動性も評価)

下肢アライメント

静的(膝内外反・過伸展、膝蓋骨の位置、Qアングル、足回内外)

動的(歩行・走行・停止時の足と膝の方向)

不安定性テスト〔前方引き出し・Lachman test(術後は禁忌)〕

筋力テスト

MMT(膝伸展は下腿近位抵抗で施行)

等速性筋力測定(スポーッ動作開始の指標の一つとして)

日常生活活動検査

スポーツ基本動作の観察(メディカルリハビリテーション期)

 

●Jerk testはN testと同じ方法である。

関節可動域検査

膝関節の他動的な伸展一屈曲の可動域を測定するとともに、最大伸展位での膝蓋骨の滑動性を健常側と比較する。

筋力検査

大腿部の周径から筋萎縮の程度を測定する。

また、膝伸展位で大腿四頭筋の等尺性収縮を行い、内側広筋の膨隆と硬度を健常側と比較する。徒手による筋力検査は大腿四頭筋と膝屈筋について行い、疼痛発生や明らかな筋力の格差がない段階では、等速度運動機器による筋トルクの測定を実施する。これらの定量的測定は一般に低速度(60°/sec)と中・高速度(180~240°/sec)で行い、最大トルクや仕事量、反復によるトルクの減少率などを比較する。

 

徒手テスト全般に言えることであるが、健常者でも脛骨の前方動揺距離には幅があるので、患者を出来る限りリラックスさせた状態で施行し、健側との比較で判断することが必要になる。

不安定テストの他にも、他の整形外科疾患と同様に筋力・周径・可動域などの評価は当然必要である。特にACL損傷後の内側広筋の速筋線維の萎縮が、大腿直筋のそれより強いという指摘もあるので、評価時に注目する必要がある。ACL損傷の評価においては、前述のような機能評価だけでなく、能力評価として各種のパフォーマンステストが試みられている。しかし、その結果に筋力低下を反映してしまったり、健常な部分での代償などが出現してしまい、ACL損傷による特異的な関節不安定性による能力低下を正確に評価することが難しい。だが、疼痛が無く両側とも筋力が十分認められても、健側と同じ動作が困難なACL損傷例もあり、今後は臨床場面で活用できるようなパフォーマンステストが確立されることが望まれる。

以上のような評価項目のうち、不安定性テスト、大腿四頭筋の筋力テスト、パフォーマンステストなどはACLにストレスを与える手技となる。観血的治療・保存的治療どちらにしてもその評価を施行する時期や方法には、十分注意が必要である。

 

理学療法プログラム

ACL損傷に対する治療法としては保存的治療と一次縫合術・再建術などの観血的治療がある。スポーツ復帰をゴールとする症例に対しては再建術が選択されることが多いのでACL再建術を例に理学療法プログラムを紹介する。

■術前期

前述のようにACL再建術は受傷から3~5週間後に施行されるのがよいとされる。この間の理学療法の目的は、正常な関節可動域の獲得、関節腫脹の軽減である。受傷直後はアイシングを主体にしたRICE(Rest・Ice・Compression・Elevation)処置を行い、徐々に術後にも施行されるような愛護的な関節可動域訓練を行う。Shelboumeらはこの時期を、リハビリテーションプログラムのなかのPhaseIと位置づけ、正常な関節可動域の獲得、関節腫脹の軽減とともに術後リハビリテーションプログラムの再検討、手術への精神的準備、学校・会社・家庭などの環境整備を挙げている。

 

■術後理学療法プログラム

ACL再建術後の理学療法プログラムはその術式によっておのずと異なり、同じ術式でもそのプロトコールは加速化されてきている。どのような術式であれ、ACL再建術後の理学療法において重要なポイントは再建靱帯へのリスク管理であり、特に膝伸筋強化の際に注意が必要となる。再建に用いられる移植材の強度は報告されているが、術後における不安定性再発の予防という点からは「大腿骨一移植材一脛骨」という複合体で考える必要がある。つまり移植材の強度だけでなく、移植材の大腿骨・脛骨への固定力や骨孔の位置の違いによる再建靱帯の長さの変化などが問題となる。さらに、各種の訓練によって加わるストレスとこの複合体としての強度やその回復過程の関係は明確にされていない。

以上のことと症例のスポーツレベルや運動能力の違いなどの関係もあり、単に再建術後の経過時間でプログラムを決定することはできない。

理学療法士としては術式を十分理解するとともに、医師からの情報を得ながら個々に対応する必要がある。ある病院での半腱様筋腱・薄筋腱を用いたACL再建術後の理学療法プログラムを紹介する(表6)。術後の経過時間とプログラムの関係は一つの目安であり、その内容も試行錯誤を重ねながら現在も変化している過程である。

 

①RICE処置

ACL再建術に限らず術後の炎症症状が強い時期にはアイシングを主体としたRICE処置を行う。以前は電動ポンプにより冷水を循環させる冷却機器を使用しアイシングしていたが、経済的理由(当院の場合対象者が非常に多く,故障も多い)、騒音などの問題から現在は通常のアイスバッグを使用している。

②関節可動域訓練

ギプス固定は行わず、術後2日目より病棟においてCPM(continuous passive motion)によるROM訓練を20~90°より開始する。術後7日目より訓練室にて愛護的なROM訓練を0~130°を目標に開始する。この時期のROM訓練の具体的な方法としては、背臥位で壁に足底をつけ下腿の自重を利用して膝の屈曲を行う方法(wall slide)や長座位で足底の摩擦が少ないような状態にして自分の手で膝の屈曲を行う方法(heel slide)を行わせている。

また最終伸展可動域の改善目的にはrocking motion利用した簡易的膝矯正器を作製し使用している。この機器は半楕円形をしており、それが倒れることで下肢に牽引力が加わり、膝関節の伸展域の改善が効果的に行える。

③荷重・歩行訓練

術後7日目より1/3荷重より歩行訓練を開始し、2週間程度で全荷重としている。荷重量が再建ACLに与えるストレスは明確ではなく、それよりは膝の屈曲角度や体幹の前傾角度の違いが影響するので荷重量は一つの目安とし、腫脹が軽減し、荷重に耐えうる能力が準備されていればより加速してもよいと考える。

 

④筋力強化訓練

下肢の筋力強化訓練はスクワットやレッグプレスのように足底に荷重をかけた状態で行うCKCとレッグエクステンションやレッグカールのように足部が接地せず自由になった状態で行うOKCに大別される。

膝不安定性に対して、動的安定要素である膝屈伸筋を強化することは非常に重要となる。しかし、レッグエクステンションのような方法で大腿四頭筋を強化すると伸展域で脛骨の前方移動を引き起こしてACLを伸長し、再建靱帯を損傷しかねない。

大腿四頭筋単独収縮訓練を行う場合、膝屈曲70°以上であれば前方引き出し力は生じないといわれており、大腿四頭筋の筋力強化訓練はこの角度を考慮した屈曲位での等尺性収縮から開始することが安全な方法といえる。さらに、大腿四頭筋の筋力強化訓練を伸展域で施行する場合、通常のような下腿遠位抵抗でなく、近位抵抗が推奨されている。具体的にはゴムチューブのような弾性力のあるバンドを下腿近位に強めに掛け、これを抵抗とする。

このような弾性バンドは膝が伸展するほど伸ばされ、より強い張力が発生するので前方剪断力を抑える効果が期待できる。大腿四頭筋の筋力強化訓練における膝関節の前方剪断力を減少させるもう1つの方法として膝屈筋を同時に収縮させる方法がある。膝屈筋の収縮は膝関節の前方剪断力がCKCがOKCより少なくなる要因の1つに挙げられており、同時収縮を行うことで単独収縮よりもさらに伸展域で前方剪断力を生じず大腿四頭筋の筋力強化訓練が可能といわれている。しかし、OKCの状態で強い同時収縮を得ることはかなり難しい。そこで筆者はバネばかりを利用した膝屈伸筋の同時収縮訓練をサスペンション・レッグプレスと称して施行している。

 

具体的な方法は、ベッド上に長座位となり、両手でベッドの端を握り骨盤を固定する。次にオーバーヘッドフレームなどに吊した100kg用バネばかりを介したパッド(訓練用吊帯を改良)に大腿遠位部を入れ、股関節伸展動作でバネばかりを引き下げる。さらにこの状態を維持しながら膝関節を伸展する。「①股関節の伸展で膝屈筋でもあるハムストリングスの収縮、②膝関節の伸展で大腿四頭筋の収縮」という同時収縮を得ることができる。筋電図での解析の結果では、膝屈伸筋ともに筋力強化が可能な収縮が行われていることが確認されており、この方法はOKCでありながらCKCに類似した筋収縮様式の筋力強化訓練としてACL再建術後の訓練だけでなく、積極的に行っている。

内側広筋の萎縮の問題に対しては,積極的に運動負荷ができない時期は,許容できる範囲で電気刺激を高出力にして施行している。

ハムストリングスの単独収縮は膝屈曲角度に関わらず常に後方引き出し力として作用するので弾性力のあるバンドを使用したレッグカールを積極的に行わせ、筋力強化のレベルに合わせてマシーンを使用したレッグカールヘ移行する。しかし半腱様筋腱・薄筋腱を用いた再建術の場合、膝の屈曲を行うことでハムストリングスが収縮し、腱の採取部に痔痛が発生することがある.このような症例に対しては、落痛が軽減するまで膝伸展位のまま股関節を伸展する動作でハムストリングスの収縮訓練を行わせる。

 

荷重が可能な状態になれば,レッグプレスやスクワットのようなCKCでの筋力強化訓練を開始する。CKCでの訓練は膝関節での前方勢断力が少ないという理由だけでなく臨床的な評価からもその有用性は認められている。しかし、通常のスクワットでは膝屈伸筋の収縮が弱く、筋力強化という観点からはOKCより劣る。そこで筆者は重量負荷を増加させずにCKCの状態で、より強い筋収縮を得ることを目的に、不安定板上でのスクワットや片脚立ちでの反対脚のスウィングなどを行わせている。

 

筋電図を用いて検討した結果からも、安定した状態で行うよりもより強い収縮が確認されており、不安定板を使用した訓練は、CKCでの効果的な筋力強化という視点からも施行されてよい訓練と考える。

マシーンを使用したレッグプレスにおいては同じ抵抗量でも股・膝関節の屈曲が大きいほど関節にかかるトルクは大きくなる。そのため開始肢位が適当抵抗量であれば、それより伸展することで適当以下の抵抗量となる。また最大抵抗量で行っても、股・膝関節の屈曲角度の違いにより参加する筋の活動量が変化する。この点を考慮して、開始肢位(股・膝屈曲角度)をいくつかに分けて行う。

半腱様筋腱・薄筋腱を使用した再建術の場合、膝関節屈曲域でのハムストリングスの筋力低下が認められる症例が多い。そこで足底に荷重しながら、膝屈曲位でのハムストリングスの筋力強化訓練として背臥位から患側下肢と両上肢で体重を支持して、さらにハムストリングスの収縮を意識しながら膝を深く屈曲することで体重を下肢で支える方法や下腿部をロールに乗せ、そのロールを引くように膝を屈曲させながらのbridgingなどを行二わせている。

 

さらに、再受傷予防の観点から重要であるtwistingを行わせる。この際、母趾球に体重を乗せ膝関節と足尖方向が常に同じ方向に向くように意識する.開始当初は床面の摩擦を少くした状態で行っている。

 

また、膝に回旋ストレスが加わらないような方向転換の練習としてwalk and turnを行わせる。

ACL再建術後の大腿四頭筋の機能障害の1つとして伸展不全(extension lag)が認められることが多い。これに対して、OKCの訓練では弾性バンドによる下腿近位抵抗での膝最終伸展域訓練(terminal knee extension exercise)を行わせている。この方法は伸展域での大腿四頭筋の収縮で生じる膝関節での前方剪断力を抑制しながら行えるものである。さらにCKCの訓練としては、大腿遠位部に弾性バンドを掛けて、これを引き伸ばすように最終伸展を意識したスクワットを行1わせている。

⑤有酸素運動

ACL再建術後の理学療法に限らず、ゴールをスポーツ復帰とするアスレチックリハビリテーションにおいて、早期から有酸素運動を行わせることは必要である。訓練室内で行う有酸素運動としては自転車エルゴメーターやトレッドミルを使用する方法が一般的であるが、ACL再建術後の早期におけるCKCでの有酸素運動として「階段登高型トレッドミル(step machine)」を使用した足踏み運動を行わせている。この運動様式はスクワットに近く、筆者らの研究では、同等の運動負荷時の走行と比較すると股・膝・足関節の運動域が小さく、上下の加速度が小さいことから走行よりも下肢関節への垂直反力が少ないことが推察されている。

⑥スポーツトレーニングと筋力

ランニングなどのスポーツ基本動作の開始は再建術後おおよそ4ヵ月後としている、等速性筋力の評価値も併せてスポーツトレーニングの開始の指標とする。ジョギング開始のとしては健側比(患側筋力の健側筋力に対する比率)で40%とする報告や60%とする報告などがあり一定でない、筆者らは健側比70%をジョギング開始の目安としている。その後、膝の不安定感や落痛などに留意しながら、ランニング、ステップ、カッティングなどのスポーツ活動に必要なトレーニングを進めていく。

⑦竸技復帰と筋力

競技復帰は、再建術後約10ヵ月を目安としているが、疹痛や不安定感などの自覚症状とともに等速性筋力の評価値を競技復帰の指標の1つとしている。健患比のみで筋力を評価すると健側の筋力低下によっても比率が向上してしまい不適切な評価となるので絶対値での評価が必要である。

膝伸筋を中心にスポーツ選手としての等速性筋力の指標が報告されている。それらによると、60deg/secのピークトルク値で体重比(ft・lbs単位で筋力の体重に対する比率)が男性1.2、女性1.0とする報告やスポーツ活動には体重比0.8以上の最大等尺性収縮筋力が必要で、競技スポーツとしては1.3以上を獲得しなければ傷害の危険があるとする報告剛がある。しかし、等速性運動器には機種が多く釧,機種によっての測定値のばらつきが認められておりスポーツ復帰の筋力の指標を画一的に決めることは難しい。

筆者が使用している機器においては競技復帰の筋力の指標を表7のようにしている。

⑧ACL損傷と膝装具

膝装具はその目的から受傷を避けるための予防用、運動範囲を制限するリハビリテーション用、不安定膝に安定感を与える機能用などに分類される。多くの種類が販売されるなかで、静的な効果判定ではシェルタイプのものに前方動揺に対する制動効果があるとされる。しかし、膝関節の自動伸展運動時のACLの伸長に対する抑制効果は認められておらず、さらに固有受容性という面からの効果も否定的な意見がある。このようにACL損傷における膝装具の客観的効果は疑問視されているにもかかわらず、臨床ではACL再建術後において膝装具が使用される場合がほとんどである。この理由として、患者自身が安心感をもつこと、さらに多数の患者に対応しなくてはならない臨床において、装具を装着することで監視下以外でも運動制限期間であることを患者に常に認識させることで、安全に理学療法を遂行したいという願いがあるからであろう。

筆者の病院では再建術直後はいくつかのサイズ別に用意されたシェルタイプの既製の膝装具を貸し出しし、腫脹が軽減し、荷重下で積極的な理学療法が可能となる時期に採型をもとに作製した患者本人用のシェルタイプの膝装具を処方している。この装具は術後4ヵ月頃から訓練時のみの装着とし、6ヵ月頃から本人の不安感がなければスポーツトレーニング時も非使用としている。

 

■理学療法プログラム

ここでは前十字靱帯を中心に述べる。しかし、どの靱帯においても以下に述べるstageごとに進んでいく基本的な考え方は応用が可能である。保存的治療と観血的治療で若千異なるが、治癒期間、関節状態の違いこそあれ靱帯のパイオメカニクスを参考として訓練を進める。各stageにはその段階での追加項目を示し、患者の状態によって前stageの訓練内容も継続していくものである。

1.stage1

受傷直後の関節固定または可動域制限を強いられた状態で機能低下を可及的に防ぐ時期となる。Open kinetic chainな筋力強化を中心に、体幹筋・股関節周囲筋などもトレーニングする。以下に膝関節に主点をおいたメニューを紹介する。

1)膝蓋骨のmobilization

関節の固定や水腫にて低下する膝蓋骨の動きの維持を行う。

2)関節可動域訓練

初期からの強制的な訓練は靱帯の固定性を低下させる可能性があり要注意である。マイルドに行うことが基本で、ウォールスライド、などは有効である。

3)低周波

どの靭帯でも完全伸展を防止するように屈曲位での固定をすることが多く、伸展位にて活動しやすい内側広筋の萎縮が問題となる。靱帯に負担が少ない屈曲70~90°付近もしくは装具装着下で内側広筋を中心に刺激を与える。

4)下肢挙上訓練(SLR)

簡易な訓練として行われる。重錘の重さを考える必要があり、不必要に重量を増やさず大腿四頭筋の筋収縮がしっかり起こりハムストリングスとともに関節を固定(同時収縮)しながら行えているかを確認しながら重錘を増す。膝屈曲35°より22°のほうがはるかに負荷が大きい。

5)股関節伸展(腹臥位)

二関節筋としてのハムストリングスの収縮を期待して行う。関節保護の観点から重錘は膝上の大腿部に置くことが望ましい。

6)股関節内転(背臥位)

この動作により、内側広筋の収縮が起こることを期待して行う。枕やクッションなどを挟みつけるように行う。

 

2.stage2

制限つきながらある程度の可動域を獲得し、次の荷重時期につながる時期となる.stage1よりも不可量が増えたopen kinetic chaneな筋力強化時期である。

1)膝関節伸展

坐位にてゴムバンドを利用して膝伸展を靭帯に負担のない角度から開始する。具体的にはどの靭帯も90°~60°程度の屈曲範囲から開始する。前十字靭帯の再建後や保存療法初期で痛みがあり靭帯の保護が必要な場合は、近位と遠位にゴムバンドをつけ、近位のバンドを強めに設定することで大腿四頭筋の収縮による脛骨の前方偏移を抑えることができる。間接的に靭帯への負担を減らすことができる。

2)膝関節屈曲

腹臥位にて行う。ゴムチュープ等により負荷をかける場合は、膝関節の伸展を強制してしまわないように下腿部に枕やクッションをいれて保護することが必要である。後十字靭帯損傷では、近位と遠位に2本のチュープをつけることで靱帯への負担を減らすことができる。

3.stage3

1/3~1/2程度の荷重が開始となる時期で、いわゆるopen kinetic chainからclosed kinetic

chainへの移行的な運動が行われる。靱帯に負担をかけない複合関節運動が追加される。また、cybexなどのマシーンのトレーニングが開始となる。

1)等速性運動

cybexなどを利用して行う。同一速度のみでなくさまざまな速度の組み合わせを利用することが重要である(低速でのトレ一ニングでは高速の筋力強化がなされない。また、いきなり高速のトレーニングを行っても速度についていけない場合があるため)。前十字靱帯損傷のこの時期のトレーニングでは、90~60bの範囲内でデュアルシンパットを用いて行い徐々に運動範囲を広げていく。

2)荷重歩行訓練

Toe touchの状態から徐々に荷重していくが、患者は外旋位で歩行することが多く注意が必要である。

3)スクワット

1/2荷重の開始時から行う、スクワット動作の開始ポジション(体幹軽度前傾、股・膝関節軽度屈曲、踵を上げ栂趾球で荷重)はさまざまなスポーツ動作の”構えの姿勢”であり、このポジションでの膝屈伸(スクワット)がスポーツ動作の基本となる。足部と膝の運動軸の方向を統一し膝屈曲45°~50°程度のスクワットから開始する。体幹は軽度前屈したほうがハムストリングスの収縮を誘発でき安全に動作ができる。荷重量の確認のためにも体重計の上で視覚的なフィードバックを利用することは有効である(静的な荷重ができても動的三な荷重ができないことが多い)。この状態で下腿三頭筋、長短腓骨筋の筋力低下にて動作が困難であったり拇指球荷重ができない症例がしぱしば認められ(腓腹筋は二関節筋であり膝への影響を考える必要があるが)、早期から同筋の強化の必要性が示唆される。片足でのスクワットでも前十字靱帯への負荷は、通常の床上歩行より少ないとされている。

4)自転車エルゴメーター

靱帯への負担の少ない訓練であり、非荷重から荷重期への移行的訓練方法として有用とされる。

関鯛動域は、膝屈曲45°~100°が必要で内側広筋と外側広筋の活動が大きい、前十字靱帯への負担を減らすには足部の位置を前方に移動する、負荷量を減らすことが必要である2また、ACLへの負荷はLacman’s testの7%しかかからないとされている。

4.stage4

全荷重が可能となる時期である。靱帯に負担をかけず、後のスポーツ動作が円滑に行えるような筋力の獲得と動作の獲得を行う時期である(この頃より日常生活では装具を徐々にはずし、スポーツトレーニング時装着していく)。

1)荷重歩行

患者の不安感に応じて片松葉から杖をはずしていく。

2)階段昇降

患側から昇段し健側から降段する求心性収縮と遠心性収縮の複合運動となり、荷重訓練にもなる.

3)ウエイトトレーニング

cybexなどの等速性運動とともに求心性収縮の訓練として行う。

a.レッグエクステンション

伸展していくに従い靱帯に対するストレスは増加していく。この時期は60°屈曲位までの制限内運動とするのが好ましく、1年くらいまでは完全伸展は禁止したほうが安全である。

b.レッグカール

靱帯保護の観点からも重要な訓練である。膝が完全伸展しないような安全に対する工夫が必要である

c.レッグプレス

スクワットとほぼ同様な動作で、深い屈曲と完全伸展に注意すればスクワットと同様な注意(関節軸、荷重位置など)をすることで有効な訓練となる。

d.カーフレイズ

下腿三頭筋の筋力強化として行う。

4)ジョギングからランニング

床反力の少ない”knee bended wakling”から開始する。直線の歩行により大腿四頭筋筋力のチェックと収縮感覚の確認を行う。初期は歩幅を小さくし左右差をなくすことを心がけさせる。滑らかな下肢関節運動で重心の上下動を少なくする。違和感がなくなったら直線のジョギングを許可する。4~5ヵ月で80%程度のスピード獲得を目標とし、無理に行わない。トレッドミルを用いることも有用で膝関節屈曲を誘発するためにも軽く(3~4%)傾斜をつける場合もある。

5)ステップ訓練

全荷重開始時は歩容の矯正を目的とする。足関節底屈、下肢外旋位であることが多くpush offが阻害される。歩幅を小さくし徐々に矯正していく。足関節背屈制限、下腿三頭筋筋力低下、荷重時の大腿四頭筋の収縮機能低下などが問題である。

歩行が正常となり、下腿三頭筋の筋力がMMT5レベルである症例にはtwistingを指導する。前項の受傷機転で述べたclosed kinetic chainでの捻り動作を防ぐことが目的である。スクワット(stage3)での“構えの姿勢”から拇趾球を軸に30~45°twistして戻る動作から開始し、徐々にtwistする角度を増やす。その後、2~3歩前進しtwistingすることを指導する。180°のtwisting=方向転換を目標とする。

その後、クロスオーバーステップの練習としての”Carioca”やサイドステップの練習としてのオープンサイドステップなどへ移行していく。

5.stage5

靱帯の構築を促すために段階的負荷をかけながら走る・止まる・曲がる・跳ぶなどの基本動作の指導を行う。これらのスポーツ動作が開始になると筋力強化がおろそかになり、筋力低下をきたす症例があり、ウエイトトレーニングなどは継続して行う必要がある(必要ならば簡易装具、テーピングを使用する)。

1)ステップ練習

Stage5にて捻じれの回避動作(twisting)は獲得されており、その延長線上で訓練を進める。

8の字走行などが開始となり、大きな周回から開始して徐々に小さくしてゆく。コーナー走などでは、内側に位置する下肢は前項のスクワッティングテストでのtoe-out型をとり、外側に位置する下肢はToe-in型をとるとされ訓練時には靭帯負荷に対する配慮が必要である。

6.stage6

積極的にスポーツに復帰していく時期である。初期にはテーピングなどを利用して不安感などの防止をする。基本項目を確認しながら行うよう指導する。

7.各靱帯損傷における訓練時期

各損傷靱帯別の当院のリハピリテーションプログラムを表にまとめる。症例・術式により変化する。

 

臨床において

対象者の状態を各病院のポロトコールと比較し、介入の妥当性について検証する。また、経過全体を振り返って経過時期に応じた評価項目の選択、リスク管理、介入方法の選択と変更について妥当性を検証する。

対象者の最終的な目標はスポーツ復帰であることが多く、前経過からみると臨床実習での担当期間はわずかな期間でしかない。退院後のスポーツ復帰までの期間では、他職種(コーチ、トレーナー)による対応が中心となる為、臨床経過やの再発予防も含めた今後の課題について整理し、これらの情報を提供するための準備を進める。

「前十字靱帯損傷」の画像検索結果

(^ム^)参考文献

医療学習レポート.前十字靱帯損傷


スポンサード・リンク