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(#^.^#)呼吸器疾患とADLの話


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( ^)o(^ )題名:呼吸器疾患とADLの話

Ⅰ.肺の解剖と呼吸整理

1.肺の解剖

肺はその機能により、気道、呼吸部(肺実質)とその接点部である中間領域の3つの部分に分けられる。

 

1)気道

気道は口腔、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、気道系細気管支からなる。

・上気道[鼻腔~喉頭]、下気道[気管支以下終末細気管支まで]。

・気管-第6頸椎の高さ~第4-5胸椎の高さで左右気管支に分岐。

右主管支は10の区域気管支、左気管支は8の区域気管支にそれぞれ、さらに分岐する。

気管より分岐した後、その壁内に軟骨組織を有している間は気管支と呼ばれ、軟骨および気管支腺が消失してから細気管支と呼ばれている。

直接ガス交換に関与せず、肺胞を伴わない細気管支の最末端を終末細気管支と呼ぶ。

ここまでを死腔(解剖学的死腔)という。

 

2)中間領域

気道と肺実質との移行部。

気道最先端部の終末細気管支から続く呼吸細気管支の部分である。

肺胞気管支ともよばれる。

ガスの移動は拡散の原理で起こり、ガス交換に直接関与する。

終末細気管支に比べて、内腔がやや広く、線毛上皮細胞に乏しい。

この領域の血管分布に特徴があり、大循環系の気管支動脈の細枝が相互に吻合するとともに、肺胞に分布する肺動脈の細枝とも吻合している。

このように非呼吸細気管支とは明らかに構造が異なる。

 

3)肺実質

直接ガス交換が行なわれる部位で、気腔と肺胞上皮細胞からなる。

・気腔-広義に呼吸細気管支内腔、肺気道、肺胞嚢および肺胞の各内腔の総称。

狭義には個々の肺胞腔。

肺胞数は約2~6億で、個々の肺胞の内径は約0.3mmで肺胞表面積70~80m²の大部分を占める。

肺胞はⅠ型、Ⅱ型肺胞上皮細胞で構成されている。

肺胞壁の最も薄い部分でガス交換が行なわれ、この部分は肺胞Ⅰ型肺胞上皮細胞、基底膜の一部および内皮細胞で形成されている。

Ⅱ型肺胞上皮細胞は肺胞表面活性物質を産生する好オスミウム性層状体を多数含み、ときに応じて肺胞壁に放出する。

肺胞腔内には数個のマクロファージが存在し、侵入した細菌や異物を破壊する。

 

4)肺間質

広義:基底膜、気管支周囲組織、肺胸膜の胸膜下層、小葉間隔壁の結合性部分を含む領域である。

狭義:基底膜で境界された肺胞壁(胞隔)の結合組織部分。

間質には、弾性線維、膠原線維、間質細胞、単球、マスト細胞などが存在し、ガス交換、代謝、防御機能を営む。

 

5)肺血管系とリンパ系

肺循環は肺動脈系、肺静脈系、気管支動脈系と肺リンパ系で構成される。

肺循環の特徴:肺が体循環血流を静脈還流として受け入れることと、肺循環の平均圧が大循環の1/6 程度であり、血管抵抗が少ない点である。

肺動脈は右心室より発し、順次分岐する。

気道に沿って走行し、細動脈、終末細動脈となり毛細管に移行する。

毛細管網から血液は肺静脈に集まり、細葉隔壁を走行する肺静脈に移行する。

気管支動脈は気管支組織の栄養血管である。

胸部大動脈あるいは肋間動脈(第1、第2)から分岐し、主気管支に沿って肺内に入り、気管支とともに分岐し、気管下部、気管支、気道系細気管支に血液を送る。

呼吸細気管支末梢の肺実質は肺動脈系によって栄養されている。

リンパ管は肺内に取り込まれた異物や細菌の除去を行なっている。

リンパ管は気管支周囲、肺動静脈周囲や肺胸膜の胸膜下層に分布している。

 

6)胸膜と縦隔

胸膜は胸壁を覆う壁側胸膜と肺の表面を覆う肺胸膜からなる。

胸膜は表面の中皮細胞を伴った結合組織性の胸膜内層と血管やリンパ管に富む胸膜下層に分かれる。

両側の胸膜に挟まれる胸膜中央部を縦隔とよび、心臓、動脈、大静脈、気管、食道などが含まれる。

 

7)胸郭

12個の胸椎、12対の肋骨と肋軟骨そして胸骨で基本的な骨性胸郭を保つ。

これに多くの筋肉群が付着した胸壁と横隔膜とで胸腔を形成している。

胸壁を構成している筋肉群で固有のものは外肋間筋、内肋間筋と胸横筋である。

外肋間筋と横隔膜が主として吸気筋として作動し、他の筋群は呼吸運動に協調あるいは胸郭をある形に固定する役割を果たす。

斜角筋、胸鎖乳突筋は付属筋とよばれ、努力呼吸時に呼吸運動に作動する。

この他に呼吸筋としては腹筋群が含まれる。

腹筋は腹直筋と腹横筋、内および外腹斜筋からなる。

一般的に呼気(努力呼気)に関与するが、腹筋の緊張は横隔膜の緊張を助け、吸気にも重要な役割を果たす。

呼吸パターンに関与する筋およびそれらの神経支配

呼吸パターン

神経支配

安静吸気

横隔膜,外肋間筋

C3-6,Th1-12

努力吸気

内肋間筋,斜角筋,胸鎖乳突筋,大胸筋,腹直筋

Th1-12,C2-8,C5-8

努力呼気

内・外肋間筋,腹直筋,内・外腹斜筋

Th1-12,Th8-11

 

 

 

 

 

 

 

 

2.呼吸生理

呼吸によって、生体が正常な機能を営むのに不可欠な酸素が生体外より生体内に取り入られ、細胞に供給される。

同時に細胞の代謝によって産生された炭酸ガスが生体外へ排出される。

炭酸ガスの排出は、酸塩基平衡の恒常性維持にも重要な役割を果たしている。

呼吸は外呼吸と内呼吸に分けられる。

外呼吸は肺におけるガス交換を意味し、内呼吸は細胞と循環血液間のガス交換を意味している。

呼吸の過程における重要な要因は次のように分けられる。

 

肺ガス交換の過程

①換気、②拡散、③肺循環、④大循環および⑤呼吸の調節である。

 

1)換気

換気:肺と生体外との間でガスが出入りする過程。

呼吸器のポンプ機械的作用によって行なわれる。

動力は呼吸筋の作動によって供給される。

安静時に必要な酸素必要量:成人男子 約250ml/分 (年齢、身長、体重により多少異なる)

*最大運動時には安静時の20倍もの酸素が必要となる。

肺は換気するためにかなりの予備能力を必要とする。

同時に、循環血液中の酸素分圧、炭酸ガスおよび酸塩基平衡を一定のレベルに維持するために、肺胞内ガス組成を一定に保たなければならない。

適度の換気量の維持が必要となる。

換気量を規定する因子:肺気量すなわち肺胞(肺実質)と気道の量の和、1回換気量、呼吸数。

換気量のすべてがガス交換に関与せず、気道を満たす空気量は死腔換気量(ガス交換に無関係な換気量)と呼ばれる。

ガス交換に関与するのは肺胞換気量である。

しかし、死腔換気量も肺胞内ガス組成を適正に保つ役割を果たしている。

換気の効率が臨床的には最も重要である。

胸腔内圧の変化に応じて、換気が行なわれる際にこの効率は肺の弾性と気道の気流抵抗とによって決まる。

このことを肺・気管支の換気力学とよんでいる。

肺の換気には気道抵抗と肺組織の抵抗、弾性、コンプライアンスが関係。

 

(1)肺胞換気

普通の安静時呼吸では1回に約450mlの空気が気道を出入り。

1分間の呼吸数を15回とすると1分間に6,75Lの空気が出入りすることになる。

これを分時換気量という。

しかしこの全部がガス交換に関与するわけではなく気道域の空気は気道を行き来するだけでガス交換に加わらない。

この空気量のことを死腔といい約150mlである。

したがって実際に肺胞においてガス交換される肺胞換気量は1回につき4,500mlとなる。

臨床的には分時肺胞換気量が重要。

 

(2)気道抵抗

気道の長さに比例し気道内径に反比例。

つまり気道の断面積の2乗に反比例することになる一方、気道抵抗=肺胞内圧/気流量の式で表される。

呼吸細気管支以降の肺細葉では気道の口径が著しく小さくなるが分岐の数が著しく多いので合計の断面積は大きく、この部位での気道抵抗は小さく全呼吸抵抗の約10%である。

呼吸抵抗の上昇はむしろ太い気道の狭窄に由来。

 

(3)肺コンプライアンス

肺自体の伸展性、柔らかさを表現する用語。

肺胞の表面張力と肺の弾性線維の状態によって決定。

正常肺のコンプライアンス値は0.21/cmH2Oと言われる。

安静時の肋膜腔内の圧は大気圧よりも4~5cmH2Oほど陰圧となって釣り合っているが、これは肺コンプライアンスによる肺の収縮力と釣り合っている値である。

コンプライアンスが上昇する(高い)ことは一定の圧に対して肺の容積が増すことであり、肺が柔らかいことを意味する。

肺気腫ではコンプライアンスの上昇がみられ肺線維症では低下。

 

2)拡散

換気によって肺胞に到達したガスと毛細管血とのガス交換は、物理的な拡散現象によって行なわれる。

気体の拡散は分圧の高いところから低いところへ受動的に行なわれる。

一方、液体や組織のなかでの拡散速度はその気体の溶解度に比例する。

気体の中では炭酸ガスよりも軽量の酸素のほうが溶解しやすいが、血液や組織のなかでは酸素に比較して、炭酸ガスの拡散能力は約20倍とされている。

酸素、炭酸ガスとも気体中では、血液や組織中の数千倍の拡散能力を示すので、ガス交換の律速とはならない。

したがって、肺胞内よりも肺胞壁から血液成分を介しての拡散が重要なステップとなる。

これらの液体中では酸素に比べると炭酸ガス拡散は速く、炭酸ガス排出の拡散は大きな問題とはならず、臨床的な拡散障害は酸素について問題となる。

大気中の酸素分圧は150Torrであるが、吸気となって肺胞に達すると105Torrとなる。

肺毛細管の末梢組織からの混合静脈血の酸素分圧は40Torrで、肺胞壁周囲を流れる間に、105Torr分圧をもつ肺胞壁内の酸素が40Torrの分圧の毛細管へ拡散し100Torrの動脈血となる。

炭酸ガスは逆に混合静脈血の46Torrから、肺胞内の40Torrへ、わずかな分圧差で拡散し、40Torr動脈血となる。

 

3)肺循環

ガス交換におけるガス運搬経路が肺循環である。

十分な毛細管血流が換気の行なわれるすべての肺胞に均等に分布される必要がある。

肺循環系のガス交換に関与する血管床は成人男子で70m²と広大である。

この血管床面積は肺血流量、肺動脈圧、肺血管抵抗などの肺循環動態にも関連する。

肺循環系の特徴:体循環に対して低圧であると同時に、肺血液量の増加に対する予備能力が大きい点である。

また、低圧であるために、胸腔内圧の変動や重力の影響を受けやすい。

この負担を軽減するために・・・

→血管壁の伸展性が大きい、平均血圧は約15mmHg、血管抵抗は大循環の1/10程度(血流が増えても変わらない)

 

4)大循環

肺でのガス交換により、十分な酸素を取り入れ、炭酸ガス分圧が正常化した動脈血は末梢の臓器、組織に送られる。

これは心臓や血管系の機能が密接に関係する。

末梢に到達した動脈血は毛細管を通して、組織の細胞とのガス交換が行なわれる。

酸素分圧は40Torrに減少し、逆に炭酸ガス分圧は46Torrに増加する。

この混合静脈血が心臓の右心房、右心室を経て、肺循環に入り、再び肺のガス交換が行なわれ、呼吸の機能が果たされることになっている。

 

5)呼吸調節

生体は安静時に約250ml/分の酸素が必要とされている。

運動などの状況などに応じて酸素の必要量は増加する。

この必要量に対応して呼吸は無意識に調節されている。

これは呼吸中枢の神経細胞群から一定のリズムのある呼吸運動の指令が出されているからである。

また、中枢の自律性は神経性および化学性刺激などによって影響を受けている。

呼吸中枢[延髄]:吸気中枢[延髄の腹側]、呼気中枢[延髄背側]

呼吸中枢⇒胸郭呼吸筋、横隔膜および腹部呼吸筋⇒呼吸運動

 

・神経性調節:呼吸筋の運動あるいは肺の運動によって起こるインパルスが、逆に求心性に伝達され呼吸中枢を制御している。

・化学的調節:ガス交換による動脈血ガスの変化や酸塩基平衡の状態がそれぞれの受容体を介して呼吸中枢の刺激となる。

また、呼吸筋が他の運動をするときには、呼吸運動を協調制御する系が作動する。

さらに、高次の中枢からも呼吸中枢は制御されている。

 

Ⅱ.呼吸不全

1.呼吸不全の定義

『原因のいかんを問わず、動脈血ガス、とくに酸素と炭酸ガスが異常な値を示し、そのために生体が正常な機能を営みえなくなった状態』

 

2.呼吸不全の診断基準

呼吸不全の診断基準としては厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班の基準が広く用いられている。

呼吸不全の診断基準(厚生省呼吸不全調査研究班)

Ⅰ.室内気吸入時の動脈血O2分圧が60Torr以下となる呼吸器系の機能障害またはそれに相当する異常状態を呼吸不全と診断する。

Ⅱ.呼吸不全の型を2型に分け、動脈血CO2分圧が45Torrを越えて異常な高値を呈するものとしかざるものとに分類する。

Ⅲ.慢性呼吸不全とは呼吸不全の状態が少なくとも1ヶ月間持続するものをいう。

なお動脈血O2分圧が60Torr以上あり、呼吸不全とは診断されるに至らないが、ボーダーライン(60Torr以上、70Torr以下)にあり、呼吸不全に陥る可能性の大なる症例を準呼吸不全(または前呼吸不全)として扱う。

 

ここで注意することは動脈血O2分圧(Pao2)とCO2分圧(Paco2)が必ずしも同時に異常とはならず、Pao2の増加も伴うものと伴わないものの2型に分類されることである。これはPao2・Pao2の異常の起こり方と関連がある。

 

3.呼吸不全の分類

通常呼吸不全は発症および時間的経過からみた臨床的分類と血液ガスに基づく病態による分類がなされている。

(発症および時間的経過からみた臨床的分類)

急性呼吸不全:肺、胸郭に異常が生じて24時間以内に呼吸障害が発生するもの。

慢性呼吸不全:呼吸不全状態が1ヶ月異常持続するもの。

基礎疾患の上にさらに感染などさまざまな原因が加わって急性憎悪が生じることが多い。

(血液ガスに基づく病態による分類)

低酸素血症のみと高炭酸ガス血症を伴う低酸素血症に分けられる。

Ⅰ型呼吸不全:動脈血炭酸ガスが45Torr以下のもの

肺の間質性病変、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)など→予後不良

Ⅱ型呼吸不全:動脈血炭酸ガスが45Torrを越えたもの

肺胞気-動脈血酸素分圧較差の正常な中枢および末梢神経障害、呼吸筋などとその較差が開大する閉塞性換気障害に分けられる。

 

4.呼吸不全の症状

主として低酸素血症と随伴する症状。

 

呼吸不全に伴う呼吸系の症状

1.自覚症状

呼吸困難、胸部圧迫・苦悶感、喘鳴

2.呼吸の亢進に関する所見

呼吸筋の活動亢進、補助呼吸筋の活動、鎖骨上窩・肋間腔の陥凹

3.呼吸数

増加(まれに減少)

4.呼吸筋疲労・呼吸抑制に関する所見

奇異性呼吸、呼吸微弱、呼吸不整、無呼吸

 

呼吸困難の程度について、わが国ではHugh-Jonesの基準が用いられている。

Hugh-Jonesの息切れの分類

1.正常

2.同年齢の健常者と同様に歩行はできるが、階段や坂は健常者なみに登れない。

3.平地でも健常者同様に歩行できないが、自分のペースなら1マイル(約1.6km)歩ける

4.休みながらでなければ50ヤード(約46m)も歩けない

5.話をしたり、着物を脱いだりするのみも息切れがする。外出もできない

 

低酸素血症と随伴する高炭酸ガス血症による呼吸系以外の症状は頻脈、血圧上昇、興奮、錯覚、意識障害、チアノーゼが主なもので循環、神経系や皮膚などに異常が認められる。

 

5.呼吸不全の病態

a.低酸素血症の原因

低酸素血症をきたす病態

・肺胞低換気:肺胞内に吸入される新鮮な大気の量が少ない。

(原因)呼吸中枢の抑制、神経、筋疾患、胸郭、肺の拡張障害、各種気道病変

・拡散障害:肺線維症のように肺胞毛細管膜が著しく肥厚する場合、肺胞構造を破壊される肺気腫のように膜の面積が著しく減少する場合。

・シャント:肺胞の虚脱(無気肺)が起こり、この部分の肺胞に大気の流入がなく血液の酸素化が行なわれない場合。

(正常者)動脈血がガス交換の場を通過することなく動脈血に流入する場合。

・換気血流比不均等分布:個々の肺胞への新鮮な大気の供給量(肺胞換気量)と流入する静脈血の量のバランスが著しく不均等となった場合。

 

b.高炭酸ガス血症の原因

肺胞低換気:肺胞気中の炭酸ガスが排出されない場合。

 

c.酸塩基障害の原因

低酸素血症(悪)→酸化ヘモグロビン比率(↓)→組織酸素(減)→嫌気的解糖→乳酸産生→乳酸は重炭酸塩と反応して緩衡→重炭酸イオン(減)→pH(低)→代謝性アシドーシス

炭酸ガス分圧(↑)→pH (低)→呼吸性アシドーシス

 

呼吸不全でみられる炭酸ガス分圧の上昇は急性と慢性に起こる場合がある。

・急性呼吸性アシドーシス:呼吸不全の患者が呼吸器感染や心不全のために急性憎悪をきたし、炭酸ガス分圧が上昇し、重炭酸イオンが変化することなくpHが著しく低下する状態。

・慢性呼吸性アシドーシス:炭酸ガス分圧が上昇しているがpH は正常値付近にあり、重炭酸イオンも増加している状態。

 

6.呼吸不全の基礎疾患

呼吸不全の基礎疾患

 

Ⅲ.拘束性換気障害

拘束性とは十分に深い呼吸ができない状態を意味するもので、肺が十分に拡張しない状態はすべて拘束性障害である。

拘束性障害の患者では吸い込まれた空気は閉塞がなく吐くことができるので、1秒量/努力性肺活量(=1秒率)は正常化それ以上である。

 

1.拘束性障害の病態

拘束性障害は、肺の拡張障害と胸郭のコンプライアンスの低下により肺気量の減少が起こり肺胞低換気が生じた結果、動脈血酸素分圧(PaO2)と動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)が異常値を示し呼吸不全を呈する。

拘束性障害の病態は以下のように表すことが出来る。

①種々の原因により拘束され、換気運動の範囲が制限されることによる肺胞低換気状態。

②肺や胸郭のコンプライアンスが低下して特に吸気方向の弾性仕事量が増大している。そのために換気運動に要するO2消費量が増大している。

③①②のため肺胞低換気の状態をさらに悪化させ、ADLなど身体運動へのO2供給がますます不足する。

 

2.拘束性障害の疾患

拘束性障害は肺実質の障害あるいは胸郭や呼吸筋の障害で出現するもので、以下の疾患があげられる。

①肺実質の障害:肺線維症、肺炎、肺水腫、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、無気肺、肺うっ血、肺癌、全身性進行性硬化症など。

②筋の障害:中枢性呼吸麻痺、頸髄損傷、横隔膜麻痺、神経筋疾患(重症筋無力症,進行性筋ジストロフィー症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、薬物中毒など。

③胸郭の異常:胸部障害(フレイスチェルト、開胸手術)、脊椎後側弯症、強直性脊椎炎、胸郭成形など。

④胸膜の異常:胸水、胸膜肥厚、気胸、胸膜腫瘍

 

3.治療目標

直接的な治療目標は次の2つである。

①換気運動そのものを改善し、換気量(肺胞換気量)を増加させる。

②肺、胸郭の弾性を回復し、呼吸運動の弾性仕事量を減少させる。

③その結果呼吸不全を改善する。

換気運動は厳密には、呼気と吸気のいずれの方向が制限されているかを評価する必要がある。

そのためにはRVを含む肺容量区分を知る必要があるが、検査ができなければ拘束の原因などから判断して治療プログラムを決定する。

 

1)肺結核後遺症

肺結核の治療後に生じた肺実質、気道、胸膜、胸郭の変化に基づく病変。

肺結核後遺症が臨床上問題になるのは胸膜・胸郭の変化によるもので胸膜肥厚(胸膜胼胝)、胸郭成形術や肺切除術による胸郭の変形が生じた場合である。

胸膜肥厚や胸郭の変形は胸郭の拡張不全を生じ、呼吸運動を抑制する。

この拘束性換気障害による肺胞低換気から高炭酸ガス血症を伴った低酸素血症が生じ、ついには肺性心が出来上がる。

肺結核後遺症はわが国における慢性呼吸不全の中で最も多いが、非活動性肺結核(肺結核治癒後の状態)が過半数を占める。

これらの患者の大半は昭和20年代に優れた抗結核薬の少なかった時代に肺切除術や胸郭成形術を施行されたり人工気胸術(肺虚脱療法)を受けた患者である。

人工気胸術を受けた患者は施行中に胸膜炎が生じ、それが厚い胸膜肥厚を残して治癒し、後遺症となっている。

 

2)特発性間質性肺炎(肺線維症)

呼吸困難や乾性咳を主訴とし、胸部X線上両側のびまん性陰影と拘束性換気障害を呈する原因不明の疾患である。

組織学的には進行性の線維化が特徴的である。

間質性肺炎の繊維かが進行し、不可逆性の変化が生じて蜂巣肺となったものを肺線維症とよぶ。

病因は不明である。

組織学的にリンパ球、形質細胞の甲順がみられ、免疫学的異常所見も伴うことが多いので、自己免疫的病因が有力視されている。

発症:大部分が40歳以上.男性の比率がやや高い(1.5:1)。

 

間質性肺線維症:肺胞壁を中心に病変が起こる。

円形細胞浸潤を伴った肺胞壁の浮腫性肥厚、肺胞上皮の腫大と剥離、肺胞壁からの硝子膜形成が起こる。

病変の進展に伴い肺胞壁が線維性に肥厚し、硝子膜の器質化が加わったもの。

肺胞腔は虚脱するが、呼吸気管支内腔は拡張して、蜂巣状となる。

肺胞壁に種々の変化が起こる結果、拡散障害や換気血流比不均等分布が生じ、低酸素血症となる。

 

肺の萎縮、硬化→肺容量が減少、肺コンプライアンス低下

1回換気量減少→分時換気量を維持するために浅く速い呼吸となり過剰換気

 

低炭酸ガス血症⇒低酸素血症の持続により右心負荷から肺性心となる

自覚症状:乾性咳、息切れ、呼吸困難

聴診所見:硬い捻髪音様ラ音がある

身体的所見:呼吸不全の進展とともにチアノーゼ、大鼓バチ様指な

どがみられる。

低酸素血症の増加とともに頻脈が認められ右心負荷から両室不全が生じると足背部や下肢に浮腫がみられる。

検査所見:

1)胸部X線検査

初期:胞隔の炎症のために肺全体が淡いスリ硝子様陰影を呈するが、陰影が淡く軽徴であるため見過ごされやすい。

特徴は陰影の分布で、病変が肺底区、胸膜直下に生じることから両側下肺野と辺縁部に著しい分布が認められることに注意。

進行期:胞隔の線維化、肺胞の萎縮虚脱、肺胞腔の消失と共に形成される呼吸細気管支腔の拡張が蜂巣肺としてX線に投影。

また下葉の萎縮は横隔膜の挙上と上中葉間裂の下降偏位で示される。

急性増悪:進行期の胸部X線所見に両側びまん性に淡いスリ硝子様陰影が加わり急速な陰影に進展。

急性発症:両側びまん性に淡いスリ硝子様陰影が急速に出現するが正常な肺に生じるために背景に蜂巣肺が認められない。

 

2)CT

CTでは横断断層面が得られ、重積影が除去されるので病変の性状とその分布の認識が容易となり肺底区や胸膜直下の線維化病変、蜂巣肺、嚢胞が明らかに描出される。

急性発症型では両肺にびまん性にスリ硝子様陰影が広がり肺の萎縮が認められる。

 

3)呼吸機能検査

拘束性換気障害と拡散障害が中心。

肺活量、全肺気量が減少し、残気率が増加する。

1秒率は正常。

flow-volume曲線のpeakflowの短縮、V50、V25の低下がみられ、肺コンプライアンスが著明に低下する。

 

4) 動脈血ガス分布

PaCO2低下、A-aDO2開大が認められる。

1回換気量が減るので分時換気量を維持するために呼吸数を増やす結果、過剰換気となりPaCO2が低下し呼吸性アルカローシスに。

 

5) 心電図

患者の大半が肺性心を呈するが左室肥大所見は約25%に認められ、その肺性P、右脚ブロックなどがみられる。

 

6) 血液・生化学・免疫学的検査

病変の程度と予後を示す指標として、血清LDH活性値が重要。

特に急性増悪時には高値になり、治療効果と相関して推移する。

その他に赤沈値亢進、RAテスト陽性、白血球増加、γ-グロブリン増加、IgG増加などがしばしば認められる。

気管支肺胞洗浄液(BALF)では通常総細胞数が増加し、好中球、好酸球の増加する場合があるが、健常人のBALF細胞所見と類似していることが多い。

 

診断:厚生省特定疾患調査研究班の診断基準によって診断される。

診断は難しくないが、他の間質性病変による疾患との鑑別が必要。

鑑別を必要とする疾患は以下のように多数ある。

a.種々の原因による肺隔炎・間質性肺炎

アレルギー要因による過敏性肺臓炎、薬剤性肺炎、感染に起因するニューモティスチス・カリニ肺炎、クラミジア肺炎、サイトメガロウイルス肺炎、その他不明の機序によるリンパ球性間質性肺炎などは両側性びまん性スリ硝子様陰影を呈する点で本症の初期像に類似するが、発症様式や背景因子の解析などで鑑別。

b.蜂巣肺、線維化を伴った間質性肺炎

最も紛らわしいのは膠原病性間質性肺炎でありX線学的には鑑別困難であるが、関節症状やレイノー症状などの身体所見や血液学的異常などが鑑別点になる。

c.その他

癌性リンパ管症、塵肺、サルコイドーシス、過誤腫性肺脈管筋腫症など。

特発性間質性肺炎の臨床的診断基準(厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班1992)

※急性経過(急性型)か慢性経過(漫性型)かを考慮し、慢性型の場合にはA群(定型形)、B群(非定型型例)の臨床的特徴を参考とし、以下の項目に沿って診断を進める。

Ⅰ 主要症状および理学所見

1.乾性咳

2.息切れ

3.バチ状指

4.fine crackle

Ⅱ 血液・免疫学的所見

1.赤沈促進

2.LDH上昇

Ⅲ 肺機能検査所見

1.肺気量の減少(%VC,%TLCの低下)

2.肺拡散能の低下(%Dlco,%Dlco/VAの低下)

3.低酸素血症(PaO2の低下,AaDO2の開大)

Ⅳ 胸部X線所見

本症に一致するX線像(別記)

Ⅴ 病理学的検査(肺生検,剖検)所見

本症に一致する病理像(別記)

項目の判定

  Ⅰ-Ⅲの大項目は,中項目が2の場合は1項目以上,中項目が3-4の場合は2大項目以上を満たすときに陽性と判定する.

  大項目Ⅲでは,カッコ内の参考所見1項目以上を満たす場合を陽性所見とする.Ⅳ,Ⅴは別記による.

診断の判定

  確実:Ⅳを含む3項目以上またはⅣ,Ⅴを満たすもの

  疑い:Ⅳを含む2項目を満たすもの

注意事項

1.IIPは粉じん吸入歴者が多いが、この場合、じん肺法の定めるじん肺症でないことに注意する

2.膠原病の身体的所見および検査所見を伴うものは膠原病肺(CVD-IP)としてIIPから除外する

3.肺胞気管支洗浄液(BAL)検査では、本症に特有の変化はなく、診断的価値は低い。しかし、他疾患の除外診断にBALはしばしば有用である

4.Gaシンチグラムは診断特異性を有しないが、病勢の判定に役立つ

5.次の疾患を除外する

塵肺症、肺結核、慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎(DPB)、過敏性肺炎、放射線肺炎、薬物誘起性肺炎、肺炎(特にウイルス、マイコプラズマ性肺炎など)

 

治療:肺病変そのものに作用する副腎皮質ホルモンを中心とした薬物療法と呼吸不全に対する酸素療法。酸素療法は、通常炭酸ガスの蓄積がないので、安全に酸素吸入が行なわれる。

予後:ハーマン・リッチ(Hamman-Rich)症候群のような6ヶ月以内に死亡する急性発症例もあるが、大部分は慢性に経過する。

症状発現からの5年生存率は約40%で、予後は不良である。

 

Ⅳ.閉塞性換気障害

閉塞性という用語は、気道に何らかの原因で閉塞が起こり気流が妨げられているという意味である。

したがってFEV1.0%は低下するが、原則的には肺や胸郭の拡張が妨げられることはないので%VCは正常である。

FEV1.0%が70%以下で%VCが正常(80%以上)のものをいう。

 

1.閉塞性障害の病態

閉塞性換気障害の病態は以下のように表すことができる。

①なんらかの原因により気道に閉塞起こり換気が制限されるため肺胞低換気の状態にある。

②気道抵抗が増加して非弾性仕事量が増大し、さらにO2消費量を増す悪循環を生じる。

③多くの場合拡散やV()/Q() 適合や血流の異常による低O2血症性呼吸不全を伴っており、呼吸効率をさらに低下させる。

 

2.閉塞の原因

閉塞の部位が上気道にあるもの:異物吸引、急性喉頭炎、ジフテリア、喉頭痙攣、声門水腫、喉頭腫瘍、喉頭筋麻痺など

閉塞の部位が下気道にあるもの:慢性気管支炎、汎細気管支炎、慢性肺気腫、気管支喘息など

 

3.治療目標

①気道閉塞またはその原因を可及的に取り除くか軽減させてV()Aを増す。

②気道抵抗を減少させて仕事量を減少する。

③その結果呼吸不全を改善する。

 

4.気道閉塞のメカニズム

①気道の被圧縮性の増大。たとえば慢性肺気腫。

②気管支の攣縮。たとえば気管支喘息。

③気管支壁の肥厚と分泌物の貯留。たとえば慢性気管支炎。

 

5.慢性閉塞性肺疾患(COPD)

1)定義

小気管支の永続的あるいは一時的狭窄を示す病気の総称で、努力呼気流が低下し、特定病因や他のより特異的病名が付けられないもの。

 

2)慢性閉塞性肺疾患における閉塞性障害の気道動態

呼吸機能上、閉塞性障害を表現する指標の中で最も重視されているのはスパイログラムによる1秒率FEV1%の低下であるが、その元になる気道動態について。

肺気腫症、びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支領域の破壊や閉塞を特徴とする病変を呈し、いずれも基本的に中枢側の気管支には変化がないにも関わらず中枢側の気管支の縮小・虚脱を表現する1秒率低下がその機能的特徴となる。

この気道動態は肺気腫のそれに酷似する。

びまん性汎細気管支炎(DPB)におけるこの呼気時の虚脱は呼吸細気管支の狭窄、閉塞のため気道抵抗が上昇し、努力呼気による肺胞からの駆動圧が急速に低下すると等圧点(気道内圧と胸腔内圧の等しい点)は末梢へ移動、中枢側の気管支虚脱が生じるものと考えられる。

 

3)各慢性閉塞性肺疾息における呼吸機能の比較

DPB、肺気腫症(CPE)、慢性気管支炎(CB)、気管支喘息(慢性型)(BA)についての初診時の呼吸機能の検討では1秒率はいずれも低下しているが、それぞれに有意差が認められる。

残気率はDPBと肺気腫症の有意の増加が目立ち、肺気量はいずれも増加し、気管支喘息と慢性気管支炎間を除きそれぞれ有意差が認められている。

1秒率や残気率、肺気量など通常行われる呼吸機能では肺気腫症、DPB、慢性気管支炎、気管支喘息いずれの疾患とも量的な差はあれ質的にはいずれも慢性閉塞性肺疾患と呼称して差し支えない。

慢性閉塞性肺疾患はもともと気道閉塞(FEV1.0%低下)という機能的なバラメーターで規定された概念であるので通常の呼吸機能でみる限りこれらの疾患の機能的方法による鑑別は困難である。

特に閉塞性障害が酷似する肺気腫症とDPBの呼吸機能上の鑑別は困難ながらも静肺コンプライアンスと拡散能がDPBでは正常範囲にあるが、肺気腫症ではいずれも異常値であることがひとつの鑑別点である。

※慢性気管支喘息における発作中の体位、日常の注意

原則としては基本体位で行うが発作中には別の体位をとる。

比較的重度の発作では基本体位から上体を90°以上回旋させて挙上した腹臥位気味の側臥位をとる。

上側の上下肢をクッションで十分に支えるが胸部や腹部を圧迫しないよう注意。

呼吸困難が比較的軽度なら上体を起こさない方が夜に眠りやすいことが多い。

さらに軽度の発作では座位で胸郭上部より上を台で支える体位が勧められる。

その他仕事中や屋外でも応用できる体位として、座位で体を肘で支えたり立位で壁に寄りかかったり手すりで体を支えることが勧められる。

アレルゲンとなりうるソバガラや羽毛の枕は用いない。

ネクタイやシャツのボタン、ベルトなどを緩め、そのうえで下部胸式呼吸あるいは腹式呼吸により口すぼめ呼吸を行う。

アレルゲンが判明していればそれを遠ざける注意をするが、その他にも日常的な配慮が必要。

職場や通勤途中の冷気やタバコの煙や汚れた空気、過労や精神的ストレス、睡眠不足、暴飲暴食などが誘因となる。

小児では家族や学校での人間関係、特に母子関係が重要である場合が多い。

場合によっては「喘息日誌」を作り生活像と発作の関係を明らかにする。

専門家と連携して生活指導、人間関係の調整、カウンセリングが必要となることもある。

 

4)慢性閉塞性肺疾患の鑑別診断

気管支喘息はその気道過敏性とアレルギー要因により診断は比較的容易。

DPB、肺気腫症との鑑別上最も有用な検査はSAB(選択的肺胞気管支造影=造影剤を使っての検査)とCTである。

SAB上、DPB例では呼吸細気管支の閉塞とその高位の気道系細気管支の拡張性変化が、肺気腫例では小葉中心型肺気腫の存在を示す造影剤の明らかな貯留像が特徴的である。

CTスキャンでは呼吸細気管支病変が胸膜とわずかな距離をおいて木の実のように認められ、肺気腫では肺実質の破壊と拡大所見が認められる。

ほかの疾患の明確な疾患概念に比べ慢性気管支炎は咳と痰という臨床症状に基づく診断基準がなお用いられているのが現状であり、他疾患の除外診断のうえになされている。

単一の疾患概念が成立するかどうか問題が残されている領域。

 

(1)慢性肺気腫

呼吸不全をきたす代表的な疾患であり、長期的なリハビリテーションを必要とする。

終末細気管支よりも末梢の気道と肺胞に拡張と破壊が生じ、その結果として気腔の拡張が起こる。

拡張と破壊のため、あるいはこれに伴う終末細気管支の炎症のため気道閉塞をきたすものである。

肺気腫がびまん性に生きて、そのために息切れや呼吸困難が生じるものを慢性肺気腫あるいは肺気腫症とよぶ。

外因:喫煙、ウイルス感染、粉塵、大気汚染など

内因:性、年齢、α-アンチトリプシン欠損など

※もっとも有力な原因として喫煙が重要視されている。

(機序)肺内蛋白融解酵素機構の変化、肺防御機構の障害、肺内クリアランス機構の障害

発症:著しい男女差(10:1以上)→喫煙頻度の差、女性ホルモンの蛋白融解酵素に対する拮抗作用などがその一因と考えられる。

年齢:大部分は60歳以上

形態学的には、肺胞道、肺胞嚢の破壊を伴った拡大による小葉胞で、小葉全体に分布する汎小葉型肺気腫、小葉の中心部に一致して、呼吸細気管支が破壊されて生ずる小葉中心型肺気腫と巣状型肺気腫の3つの基本型に分けられる。

肺気腫症では、これらの3つの基本型が組みあわさっていることが多い。

気腔の破壊拡大は、肺胞壁表面積の減少をもたらし、ガス交換面積の減少と同時に、肺の張力密度(肺弾性収縮力)の低下が生じる。

このような変化が生じると気管支が虚脱しやすくなる。

呼気時に著しく、呼気閉塞現象が生じる。

慢性肺気腫患者では、呼気時に気道が虚脱し、気道抵抗が増加し努力呼吸を行なうために、胸腔内圧が陽圧となり、呼吸仕事量が増す。

また、肺の過膨張のために全肺気量が増加し、空気のとらえこみのため残気量、残気率も増加する。

また、横隔膜運動が制限されるため換気効率が低下する。

一方、肺血流も障害されるため、換気血流比不均衡が生じ、低酸素血症をもたらす。

病変の進行とともに換気が減少し、肺胞低換気となり炭酸ガスが呼出されず、高炭酸ガス血症となる。

その結果、呼吸性アシドーシスとなる。

さらに、長期間の呼吸不全のために、右心負荷の状態となり、右心室の拡張、肥大が起こり肺性心となる。

主な自覚症状:息切れ、呼吸困難、咳、痰。

息切れが初発症状となることが多く、進行性である。

体動時に明らかになり、安静時に軽快するが、症状の進行とともに安静時の会話でも息切れが出現するようになる。

咳は本来気道の異物や粘液を排除するためのものであえるが、肺気腫ではこのことを咳によって効率よく行なえない。

痰量は少なく、喀出のないものが70%程度である。

体型的にはやせ型が多く、喫煙者が大部分である。

病変の進んだ患者では、努力呼吸、呼気延長、口すぼめ呼吸、胸郭の拡大、太鼓ばち様指、チアノーゼなどが認められる。

低酸素血症、高炭酸ガス血症が著明になると意識障害が生じる。

理学的所見:打診で鼓音、聴診で呼吸音減弱がみられる。

胸部X線:胸核の変形、拡大、肺の透過性の増加、肺紋理(脳血管影)の消失、横隔膜の低位と平低化、心陰影の縮小、(滴状心)などがみられる。

肺機能検査:全肺気量が増加、呼出障害により残気量、残気率、気道抵抗が増加。

努力呼気時の中枢側の虚脱により1秒量、1秒率の低下。

flow-volume曲線ではpeak flow、V50、V25いずれも低値を示す。

血液ガス:換気血流量不均等分布に気道病変が加わると酸素分圧が低下し、病変の進展とともに炭酸ガス分圧の上昇をきたす。

診断基準に関しては、わが国では表に示す肺気腫研究会の基準が広く用いられている。

 

肺気腫研究会による診断基準(1962)

A.びまん性肺気腫

Ⅰ.慢性肺気腫

病歴、自他覚症状、理学的検査、胸部X線写真上肺気腫に特徴ある異常を示すことを前提として次のごとく区分する。

a.highly suspected(狭義)

(1)基準Ⅰ:スパイログラムのみならず、望ましい検査として肺気量、肺内ガス分析、その他できるだけ詳細な肺機能検査を行い診断されたもの。

(2)基準Ⅱ:スパイログラムのみによる基準(1秒率55%以下)を満足するもの。MVV、MMF、気管支拡張剤による効果判定を参考にする。

b.suspected(広義)

上記診断基準にはずれるもの(例えば1秒率55~70%)

c.unclassified

上記検査で施行しないか、あるいはできなかったもので、気腫が臨床的に疑えるもの。

Ⅱ.慢性肺気腫+肺線維症

肺線維症の定義に該当しかつ上記の肺気腫所見のあるもの。

Ⅲ.合併症としての肺気腫(合併肺気腫)

結核、塵肺その他に合併するもの。

B. 局所性肺気腫

肺胞嚢、嚢胞性肺気腫

肺機能検査成績に基づく分類

甘い基準

きつい基準

1秒率%

70%

55%

呼気閉塞指数

0.8

0.6

%MVV

70~80

50

拡張剤による1秒量変化

500ml以下

300ml以下

拡張剤による1秒量変化MVVの変化

2.5%以下

15%以下

%残気量

125

150

残気率

35%

45%

肺内N2排泄率

1.5

2.5

ΔHe ΔN2

中等度

高度

粘性抵抗

3

4.0~5.0

静肺圧縮率l/cmH2O

0.25

0.3

 

薬物療法、理学療法(呼吸訓練)、栄養管理が中心となる。

急性憎悪期にその引き金となる感染、喘息重積発作などの対応が必要となる。

気道感染に対しては抗菌剤を使用する。

喘息重積発作にはステロイドやアミノフィリン剤の投与を行なう。

肺気腫は一般に慢性の経過をたどり、予後は必ずしも悪くない。

このことは息切れや呼吸困難などの罹病気管が長いことを意味する。

 

(2)慢性気管支炎

1959年フレッチャー(Fletcher)の提唱した診断基準以来、慢性気管支炎はこれを踏襲して、定義されている。

1987年のAmerican Thoracic Societyの報告でも、「気管支における慢性、反復性(3ヶ月ほとんど毎日、少なくとも2年連続)の過剰な粘液分泌状態で、気管支拡張や結核などは除外する」と定義されている。

臨床的には咳や痰という自覚症状と所見のみを診断根拠とし、同様な症状を伴う多くの疾患を除外した後に初めて診断が成立する。

慢性気管支炎は問診に重点をおいた疫学的立場からの診断基準であり、輪郭づけの難しい疾患である。

直接的な原因は明らかにされていない。

単一の原因ではなく、多くの内的、外的要因が相互に関連しあって発症、憎悪すると考えられている。

石炭から石油へのエネルギー転換、公害規制の強化による大気汚染の著しい改善や禁煙指導などにより、本疾患は次第に減少している。

 

(1)内的要因

・年齢:高齢者に多く、重症度も高い。

・性別:男性に多い。

・素因:先天的・後天的な防御機構の障害も発症要因となる。

 

(2)外的要因

・喫煙:外的要因の中で最も重要である。

・大気汚染:職業上有害物質を吸入する労働者に多く見られる。

・感染:急性憎悪時の起炎菌としては、肺炎球菌、インフルエンザ菌がしばしば検出される。

・気候、既往歴:気道感染と関連し、冬期間に憎悪する。胸膜炎の既往歴と本疾患の発症が関連する。また、副鼻腔炎との合併率が高い。

病理学的な特徴所見:気管支壁の肥厚、気管支粘液腺の過形成

炎症反応の面より:カタル性、繁殖性

構成組織の面より:肥大性、移行性

本疾患が減少し、病態の把握さえ困難となってきている。

従来の定義に加えて、臨床的には内視鏡による慢性のびまん性炎症所見を重視する考えもある。

主症状:咳、痰(冬期間に憎悪)

労作時の息切れ。

気道感染が加わると痰は膿性となり、発熱、血沈亢進、白血球増加などが認められる。

感染を繰り返すうちに、瘢痕組織が増加し、線維化が生じ、気道の閉塞が強まる。

胸部X線:全肺野にわたって肺紋理の乱れや索状陰影がみられ、下肺野に著しい。

気管支造影:気管支壁不整像と気管支拡張像

肺機能検査:1秒量、1秒率、肺活量、肺コンプライアンスの減少、気道抵抗の増加

治療:原因となる因子の除去→禁煙や副鼻腔炎、口内感染症などの感染源の治療

痰などの過分泌に対する治療→ネブライザーやIPPBによる痰溶解薬の吸入と体位トレナージ

細菌感染症対策→インフルエンザ菌や肺球菌を念頭において、抗生物質を使用。

予後:慢性の経過をたどり、気道感染を繰り返すが、必ずしも予後は悪くない。感染や細気管支炎をを合併すると、呼吸不全が強まる。

 

(3)気管支喘息

気道の過敏性により気管支攣縮が発作性に起こり、呼吸困難や喘鳴を生じる疾患。

外因性と内因性の2つに分ける分類と、アトピー型、感染型、混合型、内因型の4つに分ける分類がある。

気管支喘息の成因:アレルギー、気道過敏症、自律神経失調、感染、気管支のβ-受容体の機能低下など

発病率:全人口の1%前後とされ、男女差、地域、人種による差異はない。

10歳以下で発症するものが多いとされているが、成人の発症は決して少ないものではない。

組織学的所見:気管支腺の肥大、増加と分泌、上皮細胞や腺房細胞の増加、壁内の平滑筋の肥大、基底膜の浮腫性肥厚、粘液栓による内腔の狭小化と閉塞、壁内から腔内にかけての好酸球の浸潤

アトピー型主体の気管支喘息の発症機序:

特異抗原に曝露→肥満細胞や好塩基球に固着したIgE抗体が架橋→種々の化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、トロンボキサン、血小板活性化因子)→平滑筋収縮や血管透過性の亢進→気道狭窄

症状:喘鳴を伴う呼吸困難。咳や痰を伴うことが多い。

発作は季節の変わり目(とくに秋)に多く、1日のうちでは夜間から明け方にかけて多い。

胸部聴診所見、胸部X線:非発作時に異常はない。

痰や血中好酸球の増加とアレルギー性喘息では血清IgEが高値を示す。

肺機能検査:発作時に1秒量、1秒率、肺活量の低下が著しいが可逆的→気管支拡張剤の吸入により改善。

治療:発作時の気道閉塞に対する対症療法→交感神経刺激薬の吸入や注射、アミノフィリンの静脈注射、気管支拡張薬の経口投与。

改善しない場合には副腎皮質ホルモンの投与。

根治療法→皮膚反応、吸入誘発試験によって確認されたアレルゲンに対しての脱感作療法。

本疾患は自然に治癒する場合もある。慢性化するものもあるが、多くは適切な治療、管理により、日常生活が障害されない程度に改善する。

 

Ⅴ.老人に多い呼吸器疾患

老人に多い呼吸器疾患を挙げてみると、肺気腫、慢性気管支炎,気管支喘息などのいわゆる慢性閉塞性呼吸器疾患があり、肺炎、肺結核、肺癌、肺線維症などである。

以下、個々について触れる。

 

1.慢性閉塞性呼吸器疾患

大気汚染、喫煙などと大きな因果関係がある。

労作時呼吸困難は不活動性を招き、意欲の喪失をきたし、性格の変化からADL、QOLの低下を招く。

最もリハビリテーションを必要とする領域で、在宅酸素療法の指導を痛感する。

 

2.肺炎

急性上気道炎から、気管支炎、肺炎と次第に深部に及ぶ。

なるべく上気道炎でとめておくように心がける。

風邪、インフルエンザと軽く見ないで対応する。

老人のインフルエンザによる死亡率は極めて高い。

上腹部手術後の術後肺合併症、特に肺炎の併発は予後が悪く大変危険である。

また胃バリウム撮影や摂食時の誤嚥による嚥下性肺炎は難治である。

老人の肺炎に際しては絶えず脱水、腎障害をチェックすることである。

 

3.肺結核

老人の肺結核はかつての若年期肺結核の持ち越しが多い。

加齢に伴い、免疫能の低下、合併症の出現などで再悪化する者が多い。

いかに抗結核剤があっても気づかずにいれば家庭内感染源となり、可愛い孫に感染し、髄膜炎を起こさせるなど悲惨な結末を起こす。

痰持ち、長すぎる風邪症状は警告といえる。

痰による抗酸菌検出が必須条件である。

また非定型抗酸菌症との鑑別も重要である。

 

4.肺癌

肺癌は癌の種類としては大腸癌とともに増加傾向にある。

組織型としては扁平上皮癌が最も多く、腺癌、小細胞癌、大細胞癌と続く。

一般に老人の癌は進行が遅いという印象を受けるが、確かにdoubling timeも年齢とともに遅くなる。

治療法としては手術、抗癌剤、放射線照射など個々に選択、組み合わされるが、手術など片肺全摘されて呼吸不全で苦しむようではQOL的には問題を残す。

残存呼吸機能温存を斟酌し、慎重に適応決定されるべきである。

ペインコントロール、ROMの改善、reconditioningなどリハビリテーション的なかかわりが問題になってくる。

 

Ⅵ.老人の死因としての呼吸器疾患

東京都養育院付属病院の剖検例923例の死因を分析すると、臓器別集計では肺炎が210例(23.9%)で最も多く、次いで脳梗塞88例(9.5%)、胃癌69例(7.5%)、心筋梗塞52例(5.6%)、肺癌40例(4.5%)、腎盂腎炎35例(3.8%)の順になっている。

呼吸器が外界に通じている唯一の器官であり、呼吸器感染は容易に避けられない。

また発症しても典型的な臨床像をとらえず重篤化しやすく、予後を悪くすることが考えられる。

 

手術前後の影響として以下に示すような病態・リスクが現れる。

これらによって無気肺や肺炎をはじめ様々な術後合併症が引き起こされ、特に無気肺の発生には気道分泌物の増加と肺胞換気の低下が問題となる。

好発部位は下側肺で、いわゆる下側肺障害と呼ばれ、長期に渡る安静背臥位が原因となる。

時系列ごとにそのリスクを挙げてゆく。

 

Ⅶ.術前におけるリスク

1.術後合併症へ影響を及ぼす可能牲のある因子

喫煙、肥満、高齢、手術侵襲部、低栄養、低肺機能、VO2<500ml/m×m/分

呼吸器疾患の合併、麻酔薬、人格・精神障害因子

2.肺性心、右心不全

3.肺高血圧症合併

重症度や右室機能が生命予後と密接に関運するCOPD患者で運動療法により肺動脈圧がわずかに低下するとする報告もあるが、conditioningにより悪化させることは避けなければならない。

4.原発牲肺高血圧症

運動中のHR上昇は危険性が高く一般的にconditioningは禁忌

最大肺動脈圧は平地歩行が最も低値とされている

また、運動制限を最小限にする方法として

 

1)呼吸困難

分泌物移動、酸素療法またはNIPPV、呼吸筋トレーニング、生体力学的運動ストレスを減少させる最適肢位での正しい運動モード選択

2)疲労

栄養摂取、酸素運搬能(例:ヘモグロビン、ヘマトクリット)の供給、休息/運動時間の再設定

3)心肺系の不安定性

最適な薬物療法(例:気管支拡張薬)他

4)骨関節/神経筋の異常

骨・関節・神経・筋の評価

5)痛み

構造的サポート(例:スプリント)、鎮痛薬

 

胸部外科術前における運動療法を行うことによって以下の特異的効果を期待できる。

 

1)骨格筋機能の改善:呼吸仕事量、全代謝活動の減少

2)筋力、筋持久力の改善における気道クリーニングでの咳嗽効果の改善

3)副交感神経活動の増大

4)肺血管抵抗、全末梢血管抵抗減少の可能性

5)患者のコンプライアンス、手術に対するモチベーション向上

 

Ⅷ.術直後のリスク

人工呼吸器による病態

自然呼吸と人工呼吸の一番の相違点は、自然呼吸では吸気に肺胞内が陰圧であるのに対して人工呼吸では陽圧となっている。

この陽圧により換気の不均等分布が増大する。

このことによって換気をしやすい肺胞には圧が加わりやすく、痰などによって閉塞した肺胞の換気は減少する。

また過膨張した肺胞が肺毛細血管血流を圧迫するため肺胞死腔が増加し換気効率は低下する。

さらに陽圧が強すぎると圧障害を生じることもある。

循環器系に対しても静脈還流が抑制され拍出量が低下するなど様々な悪影響が生じる。

さらに人工呼吸器の装着期間が長期に及ぶほど安静期間が長くなりやすく呼吸筋のみでなく体幹・四肢筋の筋萎縮や運動能力の低下を引きおこしてしまう。

 

1.術後合併症として生じる可能性のあるリスク

エアーリーク(肺瘻):胸膜剥離面や肺縫合の針穴由来、血胸、出血、気管支瘻、気管支断端の虚血性気管支炎、肺炎、不整脈、肺水腫、無機肺、肺塞栓症、神経障害:脳梗塞:術後一過性精神障害…高齢者、第2~3病日からの発症が多く特に男に多い。

末梢神経麻痺:横隔神経麻痺、反回神経麻痺、腕神経叢麻痺

2.人工呼吸管理による肺障害

無気肺と関速病態、肺胞出血、肺胞への好中球浸潤、コンプライアンス低下、内皮細胞剥離、基底膜剥離、気腫性変化、硝子膜形成、肺全体の浮腫、間質性浮腫、間質でのアルブミン増加、間質へのリンパ球浸潤、毛細管内出血、気胸、重症低酸素血症、皮下気腫、全身性ガス塞栓

3.各種感染症

術前より継続している感染症、

医原病:医療スタッフを媒介とした感染他

4.摂食開始時の誤嚥

5.特殊な病態:肺移植後

気迫クリーニング能低下:除神経、リンパ管切断による咳嗽反射の減弱、繊毛運動能の低下、拒絶反応、免疫抑制

 

ⅸ.術後安定期から退院までのリスク

1.エアーリーク(肺瘻)

2.肺切除に伴う右心負荷

3.術式が胸骨切除法の場合(特に正中切開)、胸骨骨癒合完成(約6週)までは大胸筋の強い収縮を伴う上肢運動が制限

 

肺移植後の留意点

1.努力性呼吸困難感・頻呼吸:術後2~3週持続

2.酸素療法

・最初は必要(運動中SPO2;90%以上維持)

・術後2~3週までに大半が離脱可能、歩行訓練:酸素ポンベ、各種チューブ、

測定器具を搭載した歩行器(車椅子)を使用

3.目標HR内での運動療法

・目標心拍数:(220-年齢)×75~85%

「呼吸器疾患とADL」の画像検索結果

(#^.^#)参考文献

医療学習レポート.呼吸器疾患とADL


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