スポンサード・リンク

(*^-^*)脊髄損傷と評価の話


( `ー´)ノ題名:脊髄損傷と評価の話

検査・測定及び評価(評価表の作成,ADLの評価も含む)

 

脊髄損傷の障害の評価と予後予測

神経症状の評価には,神経学的診察法を用いる.すなわち,①感覚(疼痛,触覚,温痛覚),②運動(徒手筋力検査),③反射(深部腱反射,表在反射,球海綿体反射など)の検査である.

神経学的診察結果から残存機能髄節を判断するには,感覚であれば皮膚分節dermatomeを,運動であれば手動作筋の支配髄節を参考にする.

Ⅰ.機能障害の評価

1)関節可動域(ROM)テスト

各関節の拘縮の有無,その程度を知る上に,関節可動域は必ず記録すべきである.

① 脊柱の安定性が得られるまでは,体幹のテストは行わない.

② 体幹の屈曲を予防するために,股関節は膝屈曲位において90度以上は屈曲しない.

③ 背部の運動をさけるために,下肢伸展挙上テストを行うさいには,必ず骨盤を固定する.

注意:急性期は最大可動域をとらない.

 

2)筋力テスト(MMT)

筋力テストは0~5段階による筋力評価法が一般的用いられ,さらに各段階に(+),(-)を示してより詳細に評価することができる.筋力テストを実施するには,筋の解剖,生理にたいする知識を必要とすることはもちろんであるが,関節拘縮による関節運動の制限,トリック運動,痙直などはテストを困難にし,また,時にほ不可能にすることがある.テストを行うにあたっては,種々の条件を正しくすると同時に,行わせる運動をあらかじめ患者に十分説明しておかなければならない.

筋力テストの実施およびその評価にあっては,つぎの点に十分留意しておかなければならない.

① 受傷早期の筋力テストは,脊柱の安定性がえられるまで,体幹・頚部の屈伸はさける必要があり,頚椎損傷では肩,他の損傷では股関節にそれぞれ抵抗を与えないで,3およびそれ以下のテストにとどめておく

② 繰り返して,定期的にテストを行うことによって,運動訓練の進歩や,神経の回復過程を知ることができる.また,その成績は共通の神経支配をもつ筋群の機能的回復を予知することに役立つこともある

③ 脊髄麻痺患者の筋力評価は,機能に重きをおくことがもっともよい.個々の筋力テストは筋群の機能的テストによって補われるべきである.たとえば1つの筋の働きではなくて,筋群が連続3回持ち上げられることができるというような最大の機能を評価することである

 

3)感覚テスト

感覚の評価テストは,表在性痛覚(ピンの先でテストする),深部痛覚(無理に筋を締め付けてテストする)および固有感覚(足指先,足関節,膝関節,股関節などの肢位を指示したり,いわせたりしてテストする)によって実施される.

知覚検査

a)表在知覚:触圧覚・痛覚・温度覚を検査する.

b)深部知覚:運動覚・位置覚・振動覚・関節定位覚を検査する.

c)複合知覚:2点識別・物体識別(立体,重量感覚)を検査する.

皮膚知覚脊髄支配図は,Hymaker,Edinger,Lockhart,野崎―前田,Head,Flatau,Keegan,

Garet,Fosterなどがある.

 

4)呼吸テスト

呼吸パターンの評価,最大呼気および最大吸気における胸郭拡張の計測,咳の力の評価(痰を出すことができるか,できないか),背臥位における肺活量の測定などを実施する.

 

5)画像診断

① Ⅹ線単純撮影

脊椎の骨折型は,脊椎損傷後の体幹支持性の再構築と脊髄の除圧を優先する場合に重要視される.その分類法は,骨と関節の損傷の部位と形態,外力の方向,脊柱の強制された運動方向に基づいて多数が存在する.

頸椎損傷については木下の分類を以下に記する.このなかで過伸展損傷は高齢者の第3-4頸椎に多発し,中心性頸髄損傷の不全麻痺型になることが多い.この場合に除圧手術は有害であると新富は述べている.一方の脱臼骨折は強大な外力によって発生する.特に圧迫伸展による脱臼骨折は前縦勒帯断裂,椎弓(特に根部),関節突起の骨折を起こして重篤な麻痺が存在することが多い.

表1     頚椎損傷の分類

Ⅰ.伸展骨折

① 正常頸椎の過伸展損傷

② 変形性頚椎症の過伸展損傷

③ 過伸展による脱臼骨折

④ 圧迫伸展による脱臼骨折

Ⅱ.屈曲回旋による脱臼骨折

① 亜脱臼

② 一側関節の脱臼骨折

③ 両側関節の脱臼骨折

Ⅲ.縦軸圧迫による粉砕骨折

 

胸・腰椎骨折については,金田の分類がある.圧迫骨折は高齢者にみられる安定骨折で神経損傷を伴わない.粉砕骨折は椎体が破裂し,椎体後壁が庄潰され椎弓根部,椎弓の骨折と麻痺を伴う.屈曲回旋脱臼骨折は,椎体前後の要素と椎弓が損傷を受けた不安定損傷で重篤な麻痺を伴う.屈曲伸展骨折は,椎体前線を回転軸にして脊柱が過度に屈曲して後方成分が断裂するもので,麻痺はあっても軽度のことが多い.前断脱臼骨折は上位椎体が水平に前・後に転位する.

表2       胸・腰椎損傷の分類

1.楔状圧迫骨折          4.屈曲伸展骨折

2.粉砕骨折            5.前断脱臼骨折

3.屈曲回旋脱臼骨折        6.後方要素単独骨折

② MRI断層撮影

MRIが脊髄損傷患者の診断に導入されるようになって正確な機能障害の予測が可能になった.ここではRamonの報告を表3に整理して紹介する.正常型には不全麻痺を含む.第1型は髄内出血を示唆する所見であり,大部分が完全麻痺になる.第2型は脊髄浮腫を示し,不全麻痺型で回復は比較的良好(ASIA:D,E)である.第3型は脊髄挫傷による浮腫を示し,受傷直後は完全麻痺を呈するものを含むが,経過は比較的良好(ASIA:C,D)である.圧迫型は完全麻痺型と不全麻痺型を含む.切断型は完全麻痺型である.

表3          脊髄損傷のMRl画像診断

正常          画像診断上正常

第1型         受傷72時間以内のTl強調画像は正常,

T2強調画像は辺縁部に狭い高信号域,

中心部に広い高信号域をもつ.

72時間~l週ではTl強調画像,

T2強調画像ともに高信号

第2型         強調画像は正常,T2強調画像は高信号

第3型         Tl強調画像は正常で,T2強調画像は高信号域に囲まれた

正常信号域が存在する

圧迫型         脊髄は形態が著しく変形し遮断されている.

出血を示唆する画像はない

切断型         脊髄の切断

 

③ CT検査

④ MRI検査

⑤ 造形検査など

 

6)痙性の評価

痙性麻痺の他覚的所見

① 深部反射(腱反射)の亢進

② 表在反射(腹壁皮膚反射)の消失

③ 病的反射の出現,クローヌスの出現

④ 痙性麻痺(運動麻痺).運動開始時に強い抵抗を示すが,ある角度より急に抵抗が減弱する.

いわゆる折りたたみナイフ現象を示す.

痙性の種類として屈曲,伸展,内転痙性などがある.

 

8)褥瘡の評価

褥瘡の分類:campbell(キャンベル)やGuttmann(ガットマン)の分類があるが,脊髄損傷者の褥瘡は急速に深部に達して空洞を形成しやすいため,これらを詳細に分析したシア(Shea)の分類が有用.

シア(Shea)の分類

ステージ(Ⅰ)表皮のみに限局し,真皮は露出

ステージ(Ⅱ)皮下脂肪に達する

ステージ(Ⅲ)主に皮下脂晒に広がるが-壊死は筋腫で止まる

ステージ(Ⅴ)筋膜より深層の骨,関節に至り,骨馳炎や化膿性関節炎を伴う

ステージ(Ⅵ)深部論膜から骨まで及ぶが-間辺の炎症反応は少なく,大きな滑膜腰椎な内腔をつくる

 

9)バランスの評価

FBS評価表:0または1から4までの各検査項目の点数で,もっとも低い得点にしるしをつけるもの.

 

10)呼吸機能の評価

 

11)精神・心埋面の評価  など

 

12)日常生活動作テスト

受傷後間もない患者には,医学的処置が終るまでテストは行われないが,起き上りのできる慢性期患者にたいしては,完全なテストを行う.日常生活動作(ADL)の評価は,訓練成果の判断と今後の治療計画の資料となり,また,看護婦の看護計画設定の基準ともなり,前後には患者の将来計画の資料となる重要なものである.テストの実施にあたっては,以下の点に注意すべきである.

① 客観点に正常か不可能かが明らかである場合を除いて,患者の回答だけで採点しないで,実

② 実際に動作をさせて評価する.

③ テストに時間をかける.

④ 急がせると動作することを放棄しやすい.

⑤ つとめて客観的であること.

 

Ⅱ.評価すべき障害

1)脊髄損傷の受傷機転と程度

過伸展損傷,屈曲回旋損傷,圧迫損傷などの受傷機転および折,脱臼などの骨傷の程度により局所の安静度や固定期間を考慮する必要がある.

 

2)運動麻痺

① 四肢麻痺:第4頸髄以上(Cl~C4)は完全四肢麻痺となり,第5頚髄から第1胸髄(C5~Tl)では損傷レベルの髄節支によって上肢以下の機能は決定される.

②     対麻痺:上肢機能と同様に第2胸髄(T2)以下の骨格筋分節支配から体幹および下肢の機能が

決定される

③     呼吸筋麻痺:第4頸髄以上では横隔膜の麻痺をきたし呼吸管理が必要である.

また,胸鎖乳突筋,斜角筋,僧帽筋,肩甲挙筋などの呼吸補助筋の麻痺や肋間筋の麻痺は胸郭の拘縮をきたし呼吸の効率を障害する.呼吸訓練に加えて運動療法を処方するうえで,呼吸機能を考慮することが必要である.

④ 発声障害:呼吸の障害は,発声量や発声持続に障害をきたしコミュニケーションや心理面にも影響を与える.

 

3)痙縮(痙性)

痙縮亢進は刺激に対して両下肢から麻痺部全体に及ぶ強い攣縮(集合反射)や,局所的に胸髄損傷部に沿って腹部に発作性の強いミオクローヌス様の攣縮を起こし苦痛の原因となる.痙縮は,また関節拘縮の原因ともなる.しかし,一方,筋力として体重支持や末梢循環促進のプラスの作用もあることに管理上気をつける必要がある.

 

4)知覚障害と疼痛

損傷髄節以下の知覚障害はレベル診断に重要である.-方,回復期以後には,脊髄実質の損傷に起因する脊損痛と呼ばれる知覚脱出性疼痛が出現し,リハビリテーション訓練およびADL上の阻害因子となる.

 

5)自律神経障害

① 自律神経過反射:症状として発作性高血圧,徐脈,頭痛,顔面紅潮,発汗,気分不良などをきたす.T5以上の上位脊損にを起こしやすく,原因として膀胱充満や宿便などの生理的異常や皮膚圧迫,消化管穿孔などの急性腹症のような麻痺部に異常が託生じたときのサインとなる.発作性高血圧は脳出血の原因にもなるので早急に導尿処置などの原因究明と原因除去に努める必要がある.

② 体位性(起立性)低血圧:原因は血管運動神経の反射障害による下半身の血液うっ滞と心臓への血液環流減少によるもので,T5以上の上位脊損ではとくに起こしやすい.基本的には陳旧期においても起こりうるので,管理指導が大切で,恐れることなく積極的に坐位・立位訓練を行うことが必要である.

③ 肩手症候群:頚髄損傷では,上肢の疼痛,腫脹,熱感,芸清閑節の発赤が遷延し機能訓練の阻害因子となり手指関節拘縮の原因ともなる.

④ 体温調節障害,発汗障害:上位脊損では,広範な麻痺部の発汗の低下により体温調節障害を生じるので,暖房や夏期の高温環境におけるうつ熟による体温上昇に注意する必要がある.

⑤ 排尿障害,神経困性膜胱:排尿訓練および排尿管理は生涯にわたって必要な生命予後に直結する問題である.脊髄ショック期では無緊張性膀胱で尿閉状態から勝胱過伸展を起こしやすい.回復期以後では,T12以上の核上型損傷では反射膀胱をきたし,核および核下型損傷では自律膀胱をきたす.また,排尿障害として利尿筋括約筋協調不全症などの複雑な病態をきたすものも多い.排尿訓練の目的は,バランス膀胱のように適切な排尿機能の獲得で感染の予防,腎機能の維持,カテーテルフリーにすることである.

⑥ 排便障害,神経因性腸管:脊髄ショック期には麻痺性イレウスを起こしやすく,肛門反射は消失する.回復期以後には,核上型損傷では肛門反射陽性となり坐薬などの肛門刺激で反射性排便が誘発される.Sl~S4の核および核下型損傷では肛門反射は消失する.上位脊損の排便処置では,自律神経の刺激により排便後体調不良となり訓練に支障をきたすことがある.

 

6)心理的障害

急性期の不安状態から,回復期の期待感や障害の否認,慢性期のいらだちや怒り,周囲に対する攻

撃,スタッフとのトラブル.そしてあきらめやうつ状態による意欲の喪失など,経過によって対処

しなければならない問題点が多い.障害の受容,社会復帰への希望,スポーツを介しての心理的抑

圧の解決などのために細心な心理的評価が必要である.

 

7)性機能障害

全人間的回復において身体的および精神的に避けることのできない問題で,適切な指導が必要となる.

 

Ⅲ.評価すべき合併症

1)運動器合併症

① 残存筋力の低下

② 関節拘縮

③ 異所性骨化

④ 骨粗髭症

⑤ 脊柱の変形:とくに小児脊損において

⑥ 股関節脱臼:とくに小児脊損において

2)循環・呼吸器合併症

① 褥瘡

② 深部静脈血栓症

③ 肺梗塞

④ 肺炎,呼吸器感染症

3)泌尿器合併症

① 尿路感染症

② 膀胱尿管逆流現象(VUR)

③ 尿路結石

4)その他

① 急性腹症,麻痺性イレウス

② 胃潰瘍(ストレス潰瘍)

③ 栄養および全身状態の低下

 

Ⅳ.脊髄損傷の障害度分類

1)FrankelおよびMaynardの分類

Frankel(1969)らは,英国のストークマンデビル病院における682症例について,入院時と退院時の神経症状の比較を行っている.約20年間の診療所見を資料として,後方視的retrospectiveに行われた調査である.したがって神経学的所見は,大まかに5段階に分類されている(Frankelの分類).

 

表.Frankelによる脊髄損傷の神経症状の分類

A 運動・   損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの知覚喪失

B 運動喪失・ 損傷部以下の運動機能は完全に失われているが,仙髄域などに知覚が残存して

知覚残存  いるもの

C 運動残存  損傷部以下に,わずかな随意運動機能が残存しているが,実用的運動は不能なもの

(非現実的)

D 運動残存  損傷部以下に,かなりの随意運動機能が残されており,下肢を動かしたり,あるい

(現実的)  は歩行などできるもの

E 回復    神経学的症状,すなわち運動・知覚麻痺あるいは膀胱直腸障害を認めないもの.ただ

し,深部反射の亢進のみが残存しているものはこれに含める

 

Maynard(1979)らは,入院時と退院時ではなく受傷後72時間と1年目の比較を行うこととし,さらに歩行能力の回復を調べられるようにFrankelの分類を改編している.

表.Maynardにより改編された分類

C 運動・知覚完全  神経学的に全く正常な運動・知覚機能を示す髄節から数えて,3髄節より以下の運動・知覚が完全に失われているものS 知覚不全     同じく,損傷部より3髄節下位では完全運動麻痺を示すのに,知覚に関しては若干の機能が残されているもの

M 運動麻痺     損傷部より3髄節下位で,随意運動機能の残存を認めるもの

R 回復       深部反射の異常以外は,神経学的異常を認めないもの

W 歩行可能     下肢筋力の回復が,実用的歩行を許すもの.この場合,短下肢装具と杖を使用して歩行可能なものはこれに含まれるが,長下肢装具が必要なものは除外する(この群はM,Rとの重複あり)

 

2)ASIAの神経学的評価

① 運動機能スコア motor index score

C5からS1までの10脊髄節を代表する筋key muscleについて,徒手筋力検査を行う.髄節とkey muscleの関係は,C5肘屈筋,C6手背屈筋,C7肘伸筋,C8中手末節の屈筋,T1小指外転筋,L2股屈筋,L3膝伸筋,L4足背屈筋,L5母趾伸筋,S1足底屈筋である.筋力は,0から5の6段階に評価する.この検査によって運動機能スコアを計算できる.運動機能スコアは,全身の残存運動機能を数量的に評価する指標である.

健常人では,上肢5筋,下肢5筋,合わせて10筋にそれぞれ5得点が計算でき,したがって運動スコアは左右合わせて100点になる.

 

② 知覚機能スコア sensory index score

体表を,C2からS4-5髄節が支配する28領域に区分する.触覚および痛覚を独立して検査する.解剖学的目標に応じて検査点key sensory pointが決められている.主な髄節とkey sensory pointの関係は,C4肩峰,C5腕橈骨筋起始,C6母指球,C7中指球,C8小指球,T4乳頭高位,T6胸骨剣状突起高位,T10臍高位,L1股内転筋起始,L2大腿内側中央,L3膝蓋骨内側,L4内果,L5足背内側,S1踵外側,S2膝窩,S3殿皺壁中央,S4-5肛門皮膚粘膜移行部である.知覚は,0から2の3段階に評価する.これにより知覚スコアが計算できる.知覚スコアは,全身の残存知覚機能を数量的に評価する指標である.

健常者では,右および左半身の28皮膚分節に,それぞれ2点が計算でき,したがって,知覚能力スコアは,左右それぞれ56点ずつ加算して112点になる.

 

③ 神経損傷高位 neurological level of injury(NLI)

神経損傷高位は,実際に損傷された脊髄節ではなく,機能が残存している最下位の髄節名で表現する.診断は,運動あるいは知覚検査によって,損傷なしと判断された最下位髄節名で呼称する.筋力が3であっても,そのすぐ頭側の筋力が4または5であれば,損傷されていない髄節と診断する.神経損傷高位は,左右対称でないことが多い.

 

④ 完全麻痺と不全麻痺の区別

ASIAの従来の定義で,完全麻痺は,神経損傷高位から3髄節以上の遠位髄節に,運動および知覚能力が残存していない場合であった.しかし臨床的矛盾が観察されたことから,再定義された.

現在,完全麻痺は最下位仙髄節(S4-5)の運動と知覚機能が完全に喪失している場合と定義される.

S4-5髄節の運動機能とは,肛門括約筋の随意収縮である.S4-5髄節の知覚機能とは,肛門皮膚粘膜移行部の触覚および痛覚である.したがって不全麻痺は,最下位仙髄節の機能が残存sacral sparing(SS)している場合である.

 

⑤ 部分的神経機能残存域  zone of partial preservation(ZPP)

部分的神経機能残存域とは,神経損傷高位から遠位に運動・知覚機能が部分的に残存している領域である.

 

⑥ 機能障害スケールASIA impairment scale

Frankelの分類を,ASIA神経学的評価方法に基づいて改編したものである.完全麻痺Aは,最下位仙髄節機能が失われている場合.不全麻痺Bは,神経損傷高位以下の最下位仙髄節機能までの間に,知覚機能が残存しているが,運動機能が失われている場合.不全麻痺Cは,神経損傷高位以下に運動機能が残存しているが,その筋力が3以下である場合.不全麻痺Dは,神経損傷高位以下に運動機能が残存しており,その筋力が3あるいはそれ以上の場合.正常Eは,運動および知覚機能が正常である場合.

 

表.ASIA機能障害尺度

A=完全:S4-5仙髄節の運動・感覚機能の欠如B=不全:運動機能の欠如.感覚は神経学的レベルからS4-5仙髄節にかけ残存している

C=不全:運動機能は神経学的レベル以下で残存.標的筋群の大多数は3以下である

D=不全:運動機能は神経学的レベル以下で機能残存.標的筋群の大多数は3かそれ以上である

E=正常:運動・感覚機能障害は完全に回復.反射の異常はあってもよい

 

⑦ b臨床症状分類 clinical syndromes

不全麻痺の臨床症状を,central cord syndrome,Brown‐Sequard syndrome,anterior cord syndrome,conus medularis syndrome,cauda equina syndromeに分類した.便宜的な分類であり,神経解剖学的所見に基づかない臨床診断である.

 

3) Zancolliの上肢機能分類

頸髄損傷四肢麻痺患者の手機能再建を目的として,腱移行手術が行われることがあり,Zancolliの上肢機能分類は,手術適応患者の選択と術式決定のために作成された.したがって,対象は四肢麻痺患者だけである.この分類方法は,患者を残存運動機能の最下位髄節によってC5からC8までの4群に分け,それぞれをさらに残存機能によってAとB,2つのサブグループに分類する.C6髄節機能残存者だけは,サブグループBを,さらに1から3までのサブグループに分類する.特にC6髄節機能残存者に着目しているのは,患者の数が比較的多く,母指と示指側方つまみの再建を目的としてC6髄節残存患者を手術対象とすることが多いからである.Zancolliの分類では,四肢麻痺患者を右側C5B,左側C6B2のように表現する.すなわちこの方法は,四肢麻痺患者を上肢運動機能によって細かく分類できる点に特徴がある.しかし,手機能再建手術のために作られた分類であることを常に留意しておくべきである.

リハビリテーションの観点からすると,移乗・移動・更衣などの動作が自立するかどうかの判断には,肘伸展筋および肩甲帯筋群の詳細な機能評価が必要である.しかしZancolliの上肢機能障害分類では,これらの筋群の機能を表現することはできない.さらにASIAの分類で肘伸筋すなわち上腕三頭筋は,C7髄節機能を代表する筋(key muscle)として扱われる.しかしZancolliの分類で肘伸展可能な患者は,C6髄節残存群のサブグループとして扱われる.このことも臨床の現場で混乱を招きやすく,注意が必要である.

表Zankolliの分類  頚髄損傷の麻痺高位を評価する

最低機能髄節 基本的機能筋 亜型
Ⅰ.肘屈筋 C5 上腕二頭筋 A.腕橈骨筋(-)
上腕筋 B.腕橈骨筋(+)
Ⅱ.手関節伸筋 C6 長短橈側手根伸筋 A.弱い手関節背屈
B.強い手関節背屈 1.円回内筋(-)橈側手根屈筋(-)
2. 円回内筋(+)橈側手根屈筋(-)
3. 円回内筋(+)橈側手根屈筋(+)

上腕三頭筋(+)

Ⅲ.指の前腕伸筋 C7 総指伸筋小指伸筋

尺側指根伸筋

A.尺側と手指の伸展は完全であるが,橈側の手指と母指の伸展は麻痺
B.すべての手指の伸展は完全であるが,母指の伸展は弱い
Ⅳ.指の前腕屈筋母指伸筋 C8 深指伸筋 A.尺側の手指の屈曲は完全であるが,橈側の手指と母指の屈曲は麻痺,母指の伸展は完全
示指伸筋長母指伸筋

尺側指根伸筋

B.すべての手指の屈曲が完全であるが,母指の屈曲は弱い.母指球筋は弱い.手内筋は麻痺,浅指屈筋は(-)または(+)

 

Ⅴ.能力障害の評価

1) Functional Independence Measure(FIM)

リハビリテーション対象者については,その介護に必要な社会的・経済的負担の大きさ,およびリハビリテーション治療の有効性を,定量的に評価する指標の作成が求められていた.この要求に応えるためにFIMが開発された.FIMは,米国を中心に広く使用されるようになった.前述のASIA(米国脊髄損傷協会)も,能力障害の分類にはFIMの使用を勧めている.FIMは,身の回り動作,尿便管理,移乗動作,移動動作,意思伝達,社会的認知の領域について,全介助から完全自立まで7段階に評価する.それぞれの領域は,いくつかの下位項目に分類される.たとえば身の回り動作には,食事,整容,入浴,上半身更衣,下半身更衣,排泄などがある.移乗は,ベッドや車椅子など,便座,浴槽への移乗に区分される.それぞれについて空欄がないように記入し,下位項目の評価点を合計して,FIM得点を得る.FIMによる能力障害の評価は,多数の患者のデータを統計的に処理し,治療方法や施設間の治療効果比較などに役立つと思われる.しかし同じ程度の能力障害が,ある症例は筋力低下によって,また別の症例では関節拘縮によって発生しうる.したがって個々の患者の機能訓練方針を決めたい場合などには,能力障害の評価だけでなく,機能障害の評価が必要になる.

 

2)Barthel Index修正版modified Barthel Index(MBI)

リハビリテーション対象者の大規模な予後調査などに用いられた実績のある能力障害評価手段である.Barthel Index修正版は,身の回り動作9項目,移動動作6項目について自立,介助,全介助の3段階に評価する.すべてを自立して行える場合,総合得点は100点である.各項目の評価点には重ねつけがしてある.たとえば食事動作は整容動作より重要であるとして,食事自立に6点,整容に5点が配点されている.神経因性膀胱直腸障害にも配慮がされており,動作が自立しているが集尿器や座薬などを必要とする場合は,部分自立と評価する.

Yarkony(1988)らの調査によると,リハビリテーション治療を受けて退院した3年後の調査で,

MBI scoreは完全四肢麻痺37.8,不全四肢麻痺68.3,完全対麻痺75.6,不全対麻痺86.1点であったという.このようにMBIは,障害別の能力獲得度の比較や,退院時と遠隔調整時の能力比較などに用いられている.

 

3)理学療法ジャーナルに記載されている平上二九三による能力評価

・筆者はADL能力を中心に位置付け,両側に機能評価と社会的不利を置いて考えた.

・下表の項目1~3までは機能評価,4~9までが基本的動作能力評価,10~13までが応用的動作能力評価,14~16までが訓練場の問題点となっている.

表.脊髄損傷者の能力評価

項目 初期( / ) 中期( / ) 後期( / )
1.残存筋力         /10
2.柔軟性 /10
3.バランス /10
4.Push up /10
5.床上動作         /5
6.移乗能力 /5
7.操作能力 /5
8.駆動能力 /5
9.起居・歩行 /5
10.食・整・更 /5
11.排泄動作 /5
12.入浴動作 /5
13.自動車 /5
14.訓練意欲 /5
15.合併症 /5
16.阻害因子 /5
Total         /100         /100         /100

 

1.残存筋力(機能)のグレード
  1. 肩甲帯の挙上が可能,口や頭のコントロール
  2. 肘関節の屈曲が可能,ひっかけ動作
  3. 手関節の背屈が可能,肘のロックでプッシュアップ,tenodesis効果で把持
  4. 手関節の掌屈が可能,プッシュアップが肘のロックなしで可能
  5. 手指の屈曲が可能,実用的な握力,腰の高さの台よりプッシュアップが可能
  6. 手指の内外転が可能,座位で浅い体幹の前傾保持が可能,体幹中央の平行棒よりプッシュアップが可能
  7. 体幹の回旋が可能,座位での体幹の浅い前屈運動が可能,肩の高さの平行棒よりプッシュアップが可能
  8. 股関節の屈曲が可能,座位で体幹の深い前屈運動が可能,頭上の高さの平行棒よりプッシュアップが可能
  9. 膝関節の伸展が可能
  10. 足関節の背屈が可能
  11. 足関節の底屈が可能

 

2.柔軟性(可動域)のグレード
  1. 脊柱に骨性の制限や不安定性などがあり姿勢に大きな問題がある
  2. 肘関節に化骨などがあり座位姿勢がとりにくい
  3. 脊柱に軟部組織の制限や過可動性などがあり座位保持に著しい制約がある
  4. 脊柱に骨性の制限や不安定性などがあり座位保持に制限がある
  5. 肩甲帯や肘関節の可動性制限などがありプッシュアップ野床上動作などが非常に困難なもの
  6. 脊柱の軟部組織の制限や過可動性などがありプッシュアップや床上動作などが阻害される
  7. 股関節や膝関節の化骨などがあり車いす操作や移乗動作などに重度の問題を及ぼす
  8. 肩甲帯や肘関節の可動制限などがあり車いす操作や移乗動作などに問題を与える
  9. ハムストリングスの伸張性に欠け改善を要するか,または自動運動範囲(麻痺域を除く)に問題があるが姿勢や動作の影響は少ない
  10. ハムストリングスの短縮が動作上に認められるか,または他動運動範囲(麻痺域)に問題がある
  11. すべての関節に過度な可動性を有し問題がない

 

3.座位バランスのグレード(車いす上)
  1. 胸部ベルトが必要,リクライニングまたはヘッドレストが必要
  2. 腹部ベルトが必要,肩までの背もたれが必要
  3. 両手支持が必要,肩甲骨下角の下まで背もたれが必要
  4. 片手支持が必要,胸腰移行部の高さまで背もたれが必要
  5. 両手支持なしで座れる
  6. 両上肢が前後左右に振れる
  7. 前腕挙上で静止または前進が可能
  8. 前腕挙上で回転または後進が可能
  9. 走行中に前輪挙上が可能
  10. 走行中に前輪挙上し段差越えが可能
  11. 前輪挙上で階段を下りられる

 

4.プッシュアップ能力のグレード(長座位のプッシュアップ)
  1. 不可能で座位移動も不可能
  2. 不可能だが座位移動は交互にいざる
  3. 台を用いて可能で座位移動が平面で可能だが非実用的
  4. 台無しで可能で座位移動が平面で実用的
  5. 座位移動で5cm以内の段差越えが可能
  6. 殿部挙上の保持時間が測定でき5cm以上の段差越えが可能
  7. 殿床間距離が10cm以上または10cm以上の段差越えが可能
  8. 殿床間距離が20cm以上または20cm以上の段差越えが可能
  1. 殿床間距離が30cm以上(殿部は頭と同じ高さもしくは低い)または30cm以上の段差越えが可能
  2. 殿床間距離が40cm以上(殿部は頭より高い)または40cm以上の段差越えが可能
  3. 倒立様に可能

 

5.床上動作能力のグレード
  1. 寝返りが不可能
  2. 寝返りが反動もしくはひっかければ可能
  3. 寝返りが自力で可能だが起き上がりは不可能
  4. 起き上がりが半臥位になり両肘立てで可能
  5. 起き上がりが両上肢を使用して臥位のまま可能
  6. 起き上がりが一側上肢を使用して臥位のまま可能

 

6.移乗能力のグレード
  1. 前方移乗が同じ高さでも不可能
  2. 前方移乗が同じ高さで可能で足挙げなどの介助を要す
  3. 前方移乗が同じ高さで自立または斜方移乗が同じ高さで介助
  4. 前方移乗が段差があっても可能または斜方移乗が同じ高さで自立
  5. 斜方移乗が段差があっても可能
  6. 車いすから床または床から車いすの移乗が可能

 

7.車いす操作能力のグレード
  1. 平地のみ駆動可能
  2. 1/12勾配のスロープの昇降が可能
  3. じゃり道などの難路走行が可能
  4. 前輪挙上が可能
  5. 床の物が拾える.または10cm程度の段差越えができる
  6. 階段を下りられる

 

8.駆動能力(体力)のグレード(ルームランナー)
  1. 6分間で100m以下
  2. 6分間で500m以下
  3. 6分間で500m以上
  4. 12分間で1000m以上
  5. 12分間で1500m以上
  6. 12分間で2000m以上

 

9-1.起居動作能力のグレード  9-2.歩行能力のグレード
9-1 0.四つ這い位の保持が不可能

  1. 四つ這い位の保持または移動が可能
  2. 膝立ち位の保持が可能
  3. 膝立ち歩きが可能,手すりを持って40cmの台から立ち上がりが可能
  4. 立位の保持が可能,手すりを持って20cmの台から立ち上がりが可能
  5. 立ち上がりが可能,手すりを持ってしゃがみ立ちが可能

9-2 0.平行棒での骨盤帯付きKAFO

  1. KAFOと松葉杖で介助歩行
  2. KAFOと松葉杖で監視歩行,実用的には車いすレベル
  3. AFO(両側支柱)とLofstland杖,歩行と車いすの併用
  4. AFO(プラスチック製)とT字杖,屋外歩行が実用なレベル
  5. 装具および杖なしで歩行が可能

 

10.食事,整容,更衣動作能力のグレード
  1. 三つとも全介助
  2. 二つは自助具を用いても半介助,一つは全介助
  3. 一つは自助具を用いて自立,二つは自助具を用いても半介助
  4. 一つは自助具を用いて自立,二つは自助具を用いても一部介助
  5. 二つは自助具なしで自立,一つは自助具を用いても一部介助
  6. 三つとも自助具なしで自立

 

11.排泄動作能力のグレード
  1. 排尿,排便ともベッド上で全介助(バルーンカテーテル,摘便介助)
  2. 自己導尿や排便はベッド上で半介助(準備と後始末は介助)
  3. 前方移動式トイレまたはお座敷トイレで半介助
  4. 前方移動式トイレまたはお座敷トイレで自立
  5. 手すりのある洋式トイレで自立
  6. 洋式,和式トイレで自立

 

12.入浴動作能力のグレード
  1. 清しきまたは昇降浴などで全介助
  2. 昇降浴等で半介助
  3. いざり浴槽でシャワー浴のみ
  4. いざり浴槽で自立
  5. 改造した家庭風呂で自立
  6. 通常の浴槽で自立

 

13.自動車への移乗と車載能力のグレード
  1. 移乗,積みおろしとも全介助
  2. 移乗はトランスファーボードなどを用いれば自立,積みおろしは全介助
  3. 移乗は自立,積みおろしは半介助
  4. 移乗は自立,積みおろしは一部介助または要監視
  5. 移乗,積みおろしとも自立
  6. 独歩で可能
14.訓練意欲のグレード
  1. 訓練をしない
  2. 立位・歩行訓練などを望み実用的なADL訓練にならない
  3. ADL訓練に依存的なところがある
  4. 消極的であるが支持された訓練は行う
  5. 訓練時間内の取り組みは良い
  6. 訓練時間以外にも積極的に自主訓練を行う

 

15.合併症(疼痛,化骨,褥瘡,痙直,拘縮,変形,起立性低血圧)のグレード
  1. 化骨,褥瘡のため訓練中止
  2. 化骨,褥瘡の治療のため維持的訓練
  3. 疼痛などにより訓練が時々中止になる
  4. 疼痛,痙直,拘縮,変形,起立性低血圧により動作が困難または訓練時間に影響する
  5. 疼痛,痙直,拘縮,変形,起立性低血圧により訓練効果が緩徐である
  6. 訓練が順調

 

16.阻害因子(下記の問題点などによるゴールの予測)のグレード
  1. ゴールが施設内介護レベル
  2. ゴールが施設内自立レベル
  3. ゴールが家庭内介護レベル
  4. ゴールが家庭内自立レベル
  5. ゴールが就労や就学レベル
  6. ゴールがスポーツなどが可能なレベル

 


スポンサード・リンク