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(๑≧౪≦)運動失調とリハビリテーションの話


(^_^)題名:運動失調とリハビリテーションの話

・目的

小脳の非進行性の部分的障害によっておこる協調運動障害は、大脳半球の代償きのうにより、かなり回復するものとされている。単純な屈曲・伸展から開始し、抵抗運動を加え、さらに運動パターンを複雑化していくことで、神経筋の再教育を行う。運動協調性獲得を目的としていくが、進行性疾患の場合は、機能上の障害の進行を遅らせる事が目的となる事がある。

 

・基本方針

失調症に対する基本的な治療の方針は、

①障害された機構を代償するように、視覚、体性感覚、意識的運動を利用する。

②新しい動作パターンを獲得するまで、単純なものから徐々に複雑なものへ、運動を反復して行なわせる。

③再教育で不十分な場合には、装具などを利用する。

④精神的な緊張状態により代償機能の崩壊がおきないように十分自信をもたせるとされている。特に体幹に近い筋群のコントロールは大切になってくる。

さらにKabatは以下の項目が小脳性失調症に効果があるとしている。

①PNFを用いての筋の不均衡をただすように抵抗運動を行う。

②等尺性収縮において、筋力と耐久力をつける抵抗運動を行う。

③足趾を屈曲し、膝をゆるめた状態でのバランス、歩行の訓練、monkey walk。

具体的には集合運動パターン(mass movement pattern,最大抵抗maximal resistanceに対して)を利用して、急速な拮抗筋の転換(quick reversal of antagonists)を行う。

動作を反復して行うこと(特に具体的な場面での動作パターンの練習は)は、患者にとって自信をつけるのに役立つものである。いずれにせよ非進行性のものは治療によく反応する。しかし、急速進行する疾患では現在、理学療法上あまり対応すべきものがない。

 

失調症と治療方法

・PNF[Proprioceptive Neuromuscular Facilitation]

運動失調に対するPNFの利用はPNFを体系化したKabatによって提唱された。PNFの特殊なテクニックとしては、①同一の運動を繰り返す事で動作を滑らかにするrhythmic initiation ②促通パターンのゆっくりとした往復運動を行う事で協調性を向上するslow reversal ③急速な抵抗の変換をリズミカルに行う事で安定性・協調性・耐久性を向上させるrhythmic stabilizationなどがある。

Kabatは運動失調患者の運動障害は、筋不均衡、筋等尺性収縮の障害、筋活動量とタイミングの異常であると指摘している。

これまでの脊髄小脳変性症患者に対するPNFの効果は単純反応時間の測定、脳波等電位図を指標とした脳波覚醒の測定などで検討されてきている。中村らはPNFの上腕三頭筋促通肢位と基本肢位で単純反応時間を測定し、健常者では基本肢位で反応時間の短縮が起こることを明らかにした。この短縮は個人の本来持っている反応時間に依存し、遅いものほど短縮が大きくなったという。小脳障害患者7名の検討では、はじめは健常者と異なり促通肢位で反応時間の短縮が起こらなかった。しかし、PNF訓練後には促通肢位による反応時間の短縮が認められた。このようなPNFの効果について、中村らは大脳皮質あるいは脊髄の興奮性の高まりか、訓練時のフィードッバクの増加による可能性を推測している。

一方、小坂らは、サルの皮質運動野刺激による四肢筋活動の潜時の研究で、肢位の変化で潜時が変わること、その肢位依存性が小脳破壊で消失することを明らかにした。小脳は皮質レベルを調整することを通じ、皮質運動野での感覚運動統合に重要な関わりがあることを推論して、小脳破壊で皮質興奮レベルが低下することを指摘している。また、脳波覚醒の検討により、脊髄小脳変性症では健常者にみられる促通肢位・基本肢位間での脳波覚醒の変動が消失すること、PNFを施行すると脳波覚醒の肢位依存性が回復することを示した。

これらのことにより、脊髄小脳変性症に対するPNFの効果発現は大脳皮質を経由して脳波覚醒を変動させ、運動制御を向上させることによると考えられている。

また、PNFが1回の試行では30分しか効果が持続しないことが問題とされたが、訓練を反復して行うことにより、長期的な効果が認められることも明らかとなっている。

 

・フレンケル体操(Frenkel exercise)

フレンケル体操は脊髄性の失調症に対して考案されものであるが、小脳性失調症に対しても用いられている。フレンケル体操の内容としては背臥位での体操、坐位での体操、立位での体操と大きくは3つに分かれ、それぞれの姿勢で定められた下肢の運動をできるだけ正確に行うものである。患者は運動に最大集中し、運動をゆっくりと繰り返し行うことで、正常パターンに近づける。運動の内容は表3の内容が基本的なものだが、患者の状態に合わせて各自で修正したり追加することが可能である。

 

・重り負荷

  重り負荷による運動失調軽減の効果が、中村らによって報告されている。運動失調患者に重りを装着させて、重りの有無で表面筋電図を比較した。その結果、下肢は300~600g、上肢には200~400gの重り負荷が運動失調軽減に適当であることが指摘された。効果判定機序については、注意の集中、抹消感覚入力の増強などによる可能性を挙げているが、まだ推測の域を脱していない。

 

・弾性緊縛帯

弾性緊縛帯の効果については、高橋らが運動失調患者の身体に豆電球をつけて改善を確認している。拮抗筋の制動を効かせる、圧覚などで小脳への情報を変える、などの効果発現の機序を推測している。また、小山らは慢性進行性失調型多発ニュウロパチーの症例に膝サポーター、弾性包帯、ビニールテープなどを膝関節に適用し、その効果を膝屈曲角度、階段昇降時間を測定して検討した。その結果、筋・腱・関節の固有感覚受容により表在感覚入力の強化が効果的発現に重要であることを指摘している。弾性緊縛帯についても末梢感覚入力の増強などによって効果発現する機序などが考えられているが、さらに検討が必要である。

※PNF、重り負荷、弾性緊縛帯などが脊髄小脳変性症の運動障害への効果を発現することは明らかである。その機序についてはまだ不明な点も多いが、中村、小坂らは脳波覚醒状態を指標として検討し、PNFによる改善には大脳皮質を含む上位中枢の関与があることを推測した。これまでの促通手技理論では、末梢感覚入力が脊髄へ到達して筋活動を促通・抑制すると考える。しかし現在は上位中枢と脊髄中枢それぞれへ感覚入力が到達し、各中枢間の相互作用で筋活動の状態は決まるとの考えが強い。PNFの効果に関する中村、小坂の報告も同じ枠組みの中で考えることが可能である。

 

・バランス訓練と動作訓練

バランス訓練や動作訓練を運動失調の患者に行うときの基本的な考え方は、患者が小脳性の運動失調か脊髄性の失調かで異なる。

小脳性の運動失調の患者では、障害された小脳や残存する正常な小脳での運動の再統合を目的としたり、正常では小脳で統合され、無意識で行っていた動作を大脳からのコントロールによる意識化された運動にすることを目的としてバランス訓練や動作訓練が行われる。

脊髄性の運動失調の患者では固有感覚入力は障害されていても小脳は正常であるので、視覚で固有感覚を代償し、また残存する正常な固有感覚を利用し、正常な運動に関係する小脳での運動の再統合を目的とするバランス訓練や動作訓練が行われる。

小脳性の運動失調、脊髄性の運動失調の両者に共通する考え方としては、運動失調を呈する疾患は脊髄小脳変性症など進行性の疾患が多く、進行性の疾患では動作の再獲得や長期間の維持を計るため、ワイドベース歩行のような代償動作を積極的に指導することなどがある。

 

・脊髄性失調症に対する歩行訓練

脊髄性(感覚性)失調症の運動療法としては、フレンケル体操が用いられる場合が多い。しかし、多発性神経炎、シャルコーマリートゥース病などのように筋力低下を伴う感覚性失調症の場合、手放しでの静止立位は不可能でも、患者が楽にできるペースで足踏みを行わせれば、手放し立位やさらには手放し歩行さえも可能になり、あたかも竹馬に乗って歩いているかのような歩行ができるようになる患者がいる。すなわちこれは通念に反して、動的バランスのほうが静的バランスよりも比較的よく保たれていると解釈できる。このような場合、静的バランスの強化よりも動的なバランスの強化する訓練が重要でその方法を表12に示した。

 

・上肢の協調性訓練

上肢に運動失調が見られる場合、患者の上肢動作は衰え巧緻動作が行えない。この時の運動療法の原則は、

①単純動作から複雑な動作へと練習を進める。

②最初は動作のスピードを遅くして行い、徐々にスピードを上げていく。

③正確な運動パターンで行う。

④ある程度の注意の集中は必要だが過度に緊張しない。

⑤改善がみられるまで繰り返す。

⑥改善がみられない場合はより単純な動作に変える。

⑦改善がみられれば少し複雑な動作に進める。

が考えられる。

運動種目としては患者が日常生活で不自由を感じている実際的な動作が望ましい。したがって、物を操作する動作となり、作業療法の分野となる。患者の能力に応じて、日常生活動作訓練、家事動作訓練、書字、手芸、木工、胸芸、革細工などが行われる。

この場合に最高の協調性が発揮されるための練習回数であるが、協調性が障害された患者ではまだ明らかではない。しかし、一流のスポーツ選手や音楽家、熟練工については、Kottokeらは種種の研究結果を参考にし数百万回と述べている。

 

・冷却(寒冷療法)

アイスパックにて、四肢を冷却する。凍傷に注意する。痺れ等の異常感覚が生じた場合は、中止もしくは中断する。

失調の1つの原因として、感覚入力が適切に行われず、筋緊張低下のためと考えられる。寒冷療法は感覚を司る網様体に刺激を与え、短時間の冷却の場合、筋出力の増大(二次的な血行増大や筋収縮代謝の変化による)が起きる。この点を利用して、運動入力系・出力系の協調性獲得がされるのではないかと考えられる。

 

冷却に対して反応する脊髄神経線維

  1. 第Ⅱ群A線維(有髄):2~5μ、痛覚線維
  2. 第Ⅲ群B線維(有髄):5μ、器官自律神経線維
  3. 第Ⅳ群C線維(無髄):0.5~1μ、内臓自律神経線維(反応性は小さい)

 

筋・腱紡錘興奮性

仕事の疲労曲線を調べると、短時間の冷却では筋収縮力の仕事量は増大し、長時間の冷却では低下することが報告されている。

Barnesらは健常成人12名を対象に前腕部をアイスパックで30分冷却し、経時的に握力の変化を調べた結果、冷却2~4分後の握力は増大し、それ以後次第に減少した。この冷却の一時的な筋出力増大は感覚入力系に刺激として働くためであるとし、特に筋紡錘などの固有受容器や温度受容器に対する影響が強いとしている。

 

一次的血管収縮

冷却された血液が循環して、後視床下部に刺激を与え、全身の血管収縮がみられる。

二次的血管拡張

末梢循環改善によって、組織代謝亢進がおきる。

 

運動失調患者と考慮点

・運動失調を呈する患者としては、脳卒中や脳外傷で小脳が障害された場合代表される非進行性疾患と、脊髄症脳変性症のような進行性疾患がある。

 

・小脳障害はよく代償されるとも言うが、非進行性疾患であっても中枢神経細胞は再生せずに回復には限界があり、動作能力の治療以外にも患者の生活を考えた総合的なアプローチが重要である。

 

・まして、進行性疾患では大部分の患者は徐々に進行していくのであり、残念ながらいくら運動療法を行っても長期的には進行を止められず、理学療法士はその事を理解した上で運動療法の指導をすることが重要である。しかし、進行性疾患患者でも理学療法開始後短期間は改善が見られることも多く、廃用症候群の問題や社会的不利の問題など理学療法士としての役割は大きい。

(*゚▽゚*)参考文献

医療学習レポート.運動失調とリハビリテーション


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