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(#^.^#)骨折と評価の話


(///∇///)題名:骨折と評価の話

検査・測定および評価(評価表の作成,ADLの評価も含む)

今回はColles骨折・大腿骨頚部骨折,脊椎圧迫骨折の評価について考える.

Ⅰ.バイタルサインのチェック

 

Ⅱ.形態測定

(1) Colles骨折

・ 上肢長計測の目的

①左右の上肢長の比較

②骨折の転移の有無

③拘縮の有無

④切断端の長さを知る

⑤仮性延長と仮性短縮測定値はcmで、小数点1位まで表示する

 

・ 周径の測定の目的

①身体の栄養状態

②筋の萎縮

③筋線維の発達

④上肢の腫脹の状態

⑤切断肢の成熟度

「前腕長」

測定姿勢:解剖学的肢位

姿勢:坐位または立位

測定開始点:上腕骨外側上顆

測定点:橈骨茎状突起

定義:上腕骨外側上顆から橈骨茎状突起までの

直線距離

 

図1:上肢長の測定部位

「前腕周径」

①     最大前腕周径(図4中のb)

測定肢位:上肢を体側に下垂した肢位

測定点:前腕近位側の最大隆部の長軸に直角

②     最小前腕周径(図4中のc)

測定肢位:上肢を体側に下垂した肢位

測定点:前腕遠位側の最小部の長軸に直角

 

図2:上腕周径部位

(2) 大腿骨頸部骨折

・下肢長計測の目的

①左右の下肢長の比較

②骨折の転移の有無

③骨盤の傾斜と腰椎の彎曲

④拘縮の有無

⑤切断端の長さを知る

⑥仮性延長と仮性短縮測定値はcmで、小数点1位まで表示する

・周径の測定の目的

①身体の栄養状態

②筋の萎縮

③筋線維の発達

④下肢の腫脹の状態

⑤切断肢の成熟度

 

下肢長

「棘果長」

測定姿勢:背臥位

姿勢:股関節内外旋中聞位

測定開始点:上前腸骨棟

測定点:内果までの最短距離

「転子果長」

測定姿勢:背臥位

姿勢:股関節内外旋中間位

測定開始点:大転子

測定点:外果までの最短距離

図3:下肢長の計測部位

「大腿周径」

殿溝直下大腿周径(図4のa)

大腿中央部周径(図4のb)

膝関節裂隙

膝蓋骨上縁

5cm

10cm

15cm

 

「下腿周径」

①     最大下腿周径(図4のc)

測定肢位:下肢をやや外転位にして、膝関節伸展位

測定点:腓腹筋最大部

②     最小下腿周径(図4のd)

測定肢位:下肢をやや外転位にして、膝関節伸展位

測定点:内果、外果の直上で最も細い部位                  図4:下肢周径の測定部位

 

(3)脊椎圧迫骨折

椎体圧迫骨折では胸囲差の測定が重要である.

 

Ⅲ.感覚および知覚検査              

目的

①      感覚障害の分布

②      解離性感覚障害か,全感覚障害か

③      付随する他の神経徴候(深部腱反射,病的反射,筋の痙性・固縮・萎縮など)

④      発症からの経過

⑤      補助検査(神経伝導速度の測定など)

⑥      治療の阻害因子やリスクを知る.

⑦      理学療法計画立案の参考資料とする.

⑧      予後予測の参考にする.

 

脊椎圧迫骨折の場合,しびれ,麻痺,異常感覚,筋力低下を訴えたときには,神経(中枢,末梢)系の影響を考えなければならない.深部腱反射,病的反射,感覚,筋力(MMT)などの神経学的所見から,局所症状,神経根症状,脊髄症状の有無を確認する.Colles骨折の場合,正中神経麻痺を合併する可能性があるので検査を行う.

1)深部反射 Deep Tendon Reflex

①上肢の反射

ⅰ)上腕二頭筋反射 biceps reflex

上肢軽度外転,肘やや屈曲位,前腕回内外中間位.上腕二頭筋の付着部近くに母子を当て,そのうえを叩打する.肘の屈曲起これば反射出現(+),亢進は錐体路障害

ⅱ)上腕三頭筋反射 triceps reflex

前腕部つかみ,肘を軽く屈曲位.肘頭上部の上腕三頭筋腱部を直接叩打する.肘の伸展が起これば反射出現(+),亢進は錐体路障害

ⅲ)腕橈骨筋反射 brachio reflex

手首つかみ,肘軽く屈曲位で前腕回内外中間位かやや回内位. 橈骨下端を垂直に叩打する.

肘の屈曲,前腕の回外運動が起これば反射出現(+),亢進は錐体路障害

②体幹の反射

ⅰ)胸筋反射 pectoralis reflex

上腕軽く外転,大胸筋の上腕骨付着部に母子を当て,そのうえを叩打する.

上腕の内転と軽い内旋が起これば反射出現(+).正常では弱く,収縮を指で感じる程度である.亢進は錐体路障害.

ⅱ)腹筋反射 abdominal muscle reflex

背臥位にして腹筋を叩く.

・上部(肋骨骨膜反射)

乳頭線上で肋間縁部を叩打. 判定:ヘソが叩いた方の肋骨縁に偏位すれば反射出現(+).

・中部(狭義の腹筋反射)

ヘソの高さで腹筋自身の上に手掌あるいは指を当て, そのうえを叩打する. 判定:腹筋収縮起これば反射出現(+)

・下部(恥骨反射)

恥骨結合部の中央より1~2cm上のところを叩打する.

下部腹筋収縮し,ヘソが叩いた方の下方に偏位すれば反射出現(+).ときには大腿内転筋の収縮も起こす.

③下肢の反射

ⅰ)膝反射knee reflex,膝蓋腱反射patellar reflex,四頭筋反射quadriceps reflex

・背臥位検査

背臥位にし,膝を軽く屈曲し立てる.膝蓋腱部を触知し,その腱部を叩打.

・坐位検査

高めの椅子またはベッドに腰掛けさせ,足先が床に着かない程度にし, 膝蓋腱部を触知し,その腱部を叩打.

・増強法;ふつうの方法では減弱ないしは消失しているときに行う.

Jendrassik法は両手を組ませ左右に引くように命じ,その間に膝蓋腱部を叩打する方法.

あるいは腰掛座位で下垂した下腿部を手指で軽く押しこみ.それに対し,抵抗して前方に下腿を押し出すように命ずる.その間に膝蓋腱部を叩打する.

膝の伸展が起これば反射出現(+)で,亢進は錐体路障害

ⅱ)アキレス腱反射 Achilles tendon reflex

・背臥位検査

*背臥位にし,両下肢の股関節を軽度屈曲,外転,外旋位にし,膝関節を軽度屈曲させて両踵をつける.足関節を背屈位にアキレス腱を叩打する.

*背臥位にし,一側下腿の前面に検側下腿を乗せ, 足関節を背屈位にアキレス腱を叩打する.

・膝立ち位検査;反射が出にくいときに行う.

ベッドの上に膝立ち位または四つ這い位にし,足首より先をベッドの縁より出す.足関節を背臥位にしてアキレス腱部を叩打する.足の底屈が起これば反射出現(+)で,亢進は錐体路障害

2)病的反射

①バビンスキー反射

この反射は病的反射の中ではもっとも代表的な反射である.

患者を背臥位にし,両下肢を伸展させる.気持ちを楽にさせ緊張をとるように指示する.

先のとがったハンマーの柄や腱などで,足底の外側を踵から足先に向けて強くこする.

刺激によって母指がゆっくりと背屈すれば陽性(母指現象または伸展足底反射-extensor planter response).ときには他の4指が開く(開扇現象-fanning sign).

正常では足底反射により母指の屈曲が起こる.

※注意:刺激は初め弱めに与え,反射でにくいときは強めに加える.片麻痺患者では,顔を麻痺側に向かせると出やすくなる.

②バビンスキー反射の変法

バビンスキー反射の他に母指の背屈現象を起こさせる反射

ⅰ)オッペンハイム反射

検査法:脛骨内側縁を上から下に指でこすり下ろす.

3)感覚検査

①視覚検査

老眼や白内障などの視力障害を有する高齢者が多い.特に暗部に視力が欠如しやすく,環境を十分認識できず転倒の誘引になることがある.視力や色彩の評価を行い,視覚異常があれば生活環境面からも工夫する必要がある.

②聴覚検査

聴力障害のある患者の,運動や動作の指示を与えるとき,運動学習の妨げとなる.左右の聞こえの差がないか調べ,確認しておく.

③表在感覚の検査

臨床での意義:中枢神経障害か末梢神経障害かの鑑別

ⅰ)触覚

使う道具:柔らかい筆や脱脂綿

方法:軽く触れて,分からない時にはなででみる.左右を比較しながら,顔面・頚部・上肢・体幹・下肢を調べる.

患者への指示:触れたらすぐにはいと言って下さい.

※よくわからない時は,ときどき触れないで触ったかどうか質問してみる.

ⅱ)痛覚

使う道具:安全ピンや針

方法:皮膚を軽くつっつくか,ピン車で皮膚の上をころがして痛みを感じるかどうか調べる.左右同じ刺激になるように注意.

痛覚鈍麻がある場合-障害部位から正常の方に向かって検査した方が境界を求めやすい.

痛覚過敏がある場合-正常の部位から障害のある方に向かって検査するとよい.

※意識障害のある患者-左右の同じ部位をつねったりして強い刺激を与え,その際の手足の

動きや顔の反応をみて推測する.

ⅲ)温冷覚  ※痛覚の線維と同じ経路を通るため,省略されることが多い.

使う道具:試験管に40~45℃位のお湯と,10℃位の冷水を入れたガラスの試験管

方法:3秒くらいの間,2本の試験管を順に皮膚にあて「温かいか冷たいか」か答えさせる.左右差を比較.

④深部感覚検査

目的・意義:表在感覚同様,責任病巣やレベル判断の一助を成す.神経路が表在感覚と違うため,中枢の責任病巣の推測にもつながる.深部感覚を利用した治療(PNFなどのNPA)選択や治療・ゴールの参考になる.

※PNFはフィードバックを利用した治療手技

ⅰ)関節覚(位置覚・運動覚):関節の屈曲・伸展,およびその程度に対する感覚

・位置覚(position sense)

視野などの手がかりなしに,身体各部位の相対的位置を感知する感覚.

四肢の関節の位置を受動的に動かした時,その方向を認識する能力.

方法:閉眼させ手関節や手指または足指の一本ずつを一定の位置に保ち,患者にその位置を言わせる.

・運動覚(kinesthesia),(sense of movement)

運動に伴って,関節の筋の内部や周囲の受容器が刺激されて生ずる感覚.

方法:手指や足指の関節を被動的に上下に動かしてその動かした方向が分かるかどうか調べる.肘関節では,一側を動かし他側を同じ位置に動かしてもらうよう指示する.

※     位置覚と運動覚はほぼ同義なので,通常運動覚のみ行う.

ⅱ)振動覚:骨膜への刺激.

方法:C128音叉(一秒間に128の振動数をもった音叉)を振動させ,皮膚の下に骨がある部位(手首,足首の内顆・外顆)にあてて,振動が感じられなくなるまでの時間を計る.左右や健常部位と感じ方を比較する.※高齢者でも10秒前後は分かる.

⑤複合感覚検査:表在感覚がほぼ正常(前提条件)の場合,見ないでも物に触れただけで何であるかがわかるような感覚.

ⅰ)立体覚:みないでも,手で物に触れることによってその形や材質がわかる感覚

使う道具:日常使っている身近にある物を握らせる.

方法:閉眼させ,日常使っているのもを握らせて物品名,材質が何であるかを言わせる.

ⅱ)書画感覚:皮膚に書かれた数字・文字・図形などを,見ないで判断する感覚.

使う道具:ハンマー等の柄の先端

方法:閉眼させる.手掌,前腕,大腿などの皮膚の上に,数字や○×△などを書き,それを当てさせる.

ⅲ)2点識別覚:皮膚の2点を同時に触れて,2つの刺激を識別できるかどうかの検査.

使う道具:コンパス(両方とも針のもの)

方法:体の体軸方向に沿って「同時に」2点に触れ,答えが正解なら徐々に2点間の距離を狭めていく.1点と区別できない最小の長さを調べる.

⑥局在覚(部位覚):皮膚に触れたとき,見ないでどの部位が触れられたかを正確に判断する感覚.

⑦Frankelの分類

以上のように,椎体圧迫骨折では,運動機能の検査,深部腱反射などの神経学的所見の検査を行う.

それらの結果をすべてふまえ,Frankelの分類を用いて評価する.

表1. Frankelの分類

 

Ⅳ.疼痛(pain)の評価(Colles骨折,大腿骨頚部骨折ともに)

疼痛が理学療法訓練や,ADL,歩行の阻害因子になりうるために評価を行う必要があると考えた.VAS(Visual Analogue Scale)や10段階ペインスケールなどを用いる.

(1)VAS(Visual Analogue Scale)

・10㎝ないし20㎝の横線上に痛みの程度を患者自身で示してもらう方法.

・ポイントで現すこともできる. …痛みなしを0 ~ 最高の痛みを10

・利用が簡単で,除痛の状態を直ちに知ることができる.

・同じ疾患を持つ患者同士の痛みを比較することは必ずしも適当でない.

・慢性痛では,痛みの記入点がなかなか下がらない.

NO pain   Mild   Moderate   Severe   Pain as bad as it could be

痛み無   軽い痛み   中間      激痛     最高に痛い

 

(2)10段階ペインスケール

・痛みの軽減の度合いを比較して,現在の点数を評価する.

・治療前の最大の痛みと比較する方法.

・今までに体験した最高の痛みと比較する方法.

・利用が簡便で,痛みの程度が患者の記憶に残りやすい.

 

Ⅴ.ROM測定(Colles骨折・大腿骨頸部骨折・脊椎圧迫骨折)

(1)関節可動域測定の目的

・運動機能障害の中で関節の異常は拘縮,変形,可動域制限として起こり,その異常の程度を知り,身体運動機能の改善度を知るには関節可動域の範囲を知ることが大切.

①      関節の初診時の状態をより客観的かつ的確に把握できる.

②      関節の動きを阻害している因子を発見する.

③      障害の程度を判定する.

④      治療法への示唆を与える. 1)治療プログラム設定.

2)訓練途中での比較検討,治療方針の変更・修正.

3)最終的な永続する障害像の検討.

⑤      治療効果の判定.

⑥      可動域改善による患者の治療訓練に対する動機付けを引出す心理的意義.

⑦      徒手筋力テストには関節可動域測定は不可欠の要素である.

 

(2)加齢に伴うROM低下

・     老化に伴い骨,関節には形態変化が生じる. …変形性脊椎症,変形性関節症,骨粗鬆症

・     高齢者のスクリーニングテスト

肩挙上・外転,肘屈曲,手背屈,手指の粗大つまみ・対立,股・膝屈伸,足背屈

・     機能低下をきたすROM

①      肩外転90°⁽180°⁾・回旋(下背部と後頭部)

②      肘屈曲120度⁽145度⁾

③      前腕回内外各45°⁽90°⁾

④      手背屈30°⁽90°⁾,掌屈45°⁽70°⁾

⑤      手指屈曲(指尖手掌間2.5㎝以内)

⑥      股関節屈曲90°⁽125°⁾,伸展0°⁽15°⁾

⑦      膝屈曲110度⁽130度⁾,伸展0度         歩行に影響

⑧      足背屈0°⁽20°⁾

 

拘縮によるROM低下

・     ROMの制限が,現疾患によるものか,不動および廃用性によるものか,いずれの要因が多く占めているのか注意深く検査する.

①      関節性  …関節軟骨損傷および関節の不適合性,滑膜増殖,関節包線維症

②      軟部組織性…皮膚や皮下組織,腱や靭帯,関節周囲組織に対する炎症,外傷など

③      筋性   …筋に対する内因性(外傷,炎症,変性による)

外因性(痙性,弛緩性麻痺,力学的不均衡による)

 

(3)各関節のROM測定時の注意事項>

肩関節

・     自動ROMにおける屈曲・外転測定は,120°(150°)以上の動き

一側であれば対側脊柱の外側偏位が必要,両側であれば腰椎の前腕増大が必要

・     外転 :肩が90°に達する前に上腕骨を外旋させ,大結節が肩峰の下を円滑に通過するようにする.前額面から逸脱しないように注意する.

肩甲面(30~45°水平内転)で外転させる方法もある.…関節包への負担を軽減するため

・     内転 :内転制限のある場合,過度の肩甲骨の下方回旋を生じる.

・     頚部・体幹の前後屈・側屈,肩甲骨の動き,肘関節の可動域制限に注意する.

・     内旋 :最終域で肩甲骨の前方突出を生じる.⇒肩峰を固定する必要がある.

・     水平外転の自動ROM …両上肢を90°外転し,そこで外旋し手掌を頭の上で合わせる動作をさせる.

⇒チェック:胸鎖・肩鎖関節の対称性と動き,脊柱の過度の伸展,肩甲骨の動きと肩甲上腕リズム

・     外転・外旋の自動ROM …片側の手を頭の後ろから反対側の肩甲骨上縁へ

・     内転・内旋の自動ROM …背部から片側の手を回し肩甲骨下角へ

・     内旋の自動ROM    …指椎間距離を測定(C7棘突起と母指先端との距離)

 

1.肩甲帯

・     基本肢位での肩甲骨の位置を確認する.

左右の肩甲骨の位置,棘突起からの距離を計測.

体幹の前後屈,側屈による変化があるかどうかを調べる.

 

2.肘関節と前腕

・     伸展不全・過度伸展 …伸展計測時は角度計の当て方が逆になる.

・     運搬角は左右対称 ⇒非対称であれば正常との差をみる.

・     回内外のROM :肩関節の内旋,外転位にならないようにする.

 

3.手関節

・     掌屈・背屈:手関節の亜脱臼や尺側偏位の場合は注意を要する.

・     撓屈・尺屈:手関節の掌背屈の動きに注意する.

・     背屈位・掌屈位での強直の場合:プラスチックの角度計を用いるとよい.

 

4.手指測定

・     MP関節の屈曲・伸展:MP関節の亜脱臼や尺側偏位の場合は注意を要する.

・     指の屈曲・伸展   :手関節の掌背屈の角度に注意する.

術後では,手関節の角度別の屈伸角度が重要になる.

・     自動ROMと他動ROMとの比較も必要.

 

5.股関節

・     屈曲・伸展:骨盤の固定が必要

・     屈曲   :骨盤の後傾が起きるときが最終可動域.

・     伸展   :上前腸骨棘の位置で骨盤の前傾が起きるときが最終可動域.

・     屈曲拘縮の確認が必要.

・     過度の屈曲が禁忌な場合や長坐位保持姿勢の分析時

過膝伸展位で股関節角度測定して,骨盤の代償運動を調べることができる.

・     外転・内転:下肢の回旋を起こさないように注意する.

両側の下肢を外転位にする ⇒骨盤の傾斜を防止できる.

・     外旋・内旋:股関節90°屈曲位がとれない場合,端坐位にて計測する.

 

6.膝関節

・     自動屈曲 :背臥位と端坐位の両方の値を比較する.

・     伸展不全角度を測定する場合,膝屈曲拘縮角度とは区別する.

・     反張膝,側方変形(FTA:大腿脛骨角にて),膝蓋骨の位置・外方偏位をチェックする.

 

7.足関節・足部

・     少なくとも30°は屈曲すべきである.

・     抵抗は,前足部・足指を押すこと,内外反のいずれかの方向へ押すことは避けるべき.

・     自動ROMと他動ROMを比較することが大切な場合もある.

・     外がえし・内がえし:足根関節,距骨下関節,横足根関節にわけて測定する方法もある.

 

8.足指

・     外反母趾の変形時 …第1中足骨の内転と回旋が生じる ⇒基本軸に対する角度計の当て方に注意.

 

9.頚部

・     屈曲・伸展の別法 …支点:外耳道上,基本軸:床からの垂線,移動軸:鼻の底部線

顎の先端と胸骨頸切痕間の距離を測る.

・     回旋の別法    …顎の先端と肩峰の距離を測る.

・     側屈の別法    …乳様突起と肩峰の距離を測る.

 

10.       胸腰部

・     屈曲・伸展:骨盤の前面と後面をしっかり固定する …骨盤の前傾・後傾を防ぐため.

別法:C7とS1棘突起間の距離を計測する.

指先と床の間の距離を測る. …全身の柔軟性の評価として利用できる.

側屈の別法:中指先端と床との間の距離を測る.

 

<Colles骨折>

肩関節:屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋・水平屈曲・水平伸展

肘関節:屈曲・伸展

手関節:背屈・掌屈・橈屈・尺屈・回内・回外

MP,IP:屈曲・伸展

 

<大腿骨頸部骨折>

股関節:屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋

膝関節:屈曲・伸展

足関節:底屈・背屈

*     術式が後方侵入の場合,股関節の屈曲,内転,内旋の複合運動は禁忌.

*        前方侵入の場合,股関節の屈曲,内転,外旋の複合運動は禁忌.

よって単独の運動は行ってもよいが,股関節のROMを測定する際には,代償運動の出現に注意し,複合運動にならないようにする.

 

<脊椎圧迫骨折>

頚部・胸腰部

骨折が治癒するか固定が完成するまで,運動は許されない.

 

Ⅵ.MMTの評価

目的:主に筋力低下を評価するために行う.大腿骨頸部骨折などの下肢の骨折の場合,歩行の予後にも関わってくるために非常に重要になる.

(1)Colles骨折

Colles骨折患者において評価すべき筋は手関節屈曲,手関節背屈,橈尺関節の回内,橈尺関節の回外,MP関節屈曲,肘関節屈曲,肘関節伸展に用いられる筋が挙げられる.

廃用性の障害がみられる場合には上肢あるいは全身の筋力を評価する必要が出てくることが考えられる.

 

(2)大腿骨頚部骨折

大腿骨頸部骨折患者において評価すべき筋は股関節屈曲,股関節伸展,股関節外転,股関節外旋,膝関節屈曲,膝関節伸展に用いられる筋が挙げられる.

股関節の内転や内旋は股関節の脱臼を起しかねないので,この運動に用いる筋の評価は行わないようにする.また,内旋,内転,屈曲の複合運動を行う筋も同様の理由で行わない.術式によって股関節が脱臼しうる運動が変わってくる.後方オペでは屈曲・内転・内旋で,前方オペでは屈曲・内転・外旋で股関節の脱臼を起しうるので注意が必要.

 

(3)脊椎圧迫骨折

・頭部の屈曲・伸展

・頚部の屈曲・伸展・回旋

・体幹の屈曲・伸展・回旋

・肩甲骨・肩関節のすべての検査

 

Ⅶ平衡機能検査(大腿骨頚部骨折・脊椎圧迫骨折)

骨折発生機転がバランスの喪失と立ち直りの不良にあると考えるため,立位バランステスト(開眼,閉眼で),Mann’s Test,片足立ちテスト,継足歩行などを可能な限り実施し,平衡保持能力の程度を調べておく.

 

1)立位バランステスト(Romberg’s Sign)

開眼状態で両足のつま先をそろえて立たせ,閉眼させる.

陽性だと,閉眼させるとすぐに,体の動揺が増強する.脊髄の後索や後根の疾患(脊髄ろう)による深部感覚障害が疑われる.

2)Mann’s Test

両足を一直線上に一方の足のつま先と他側のかかとがつくように並べる.まず開眼した状態で安定性をみて,次に閉眼させて立っていられなくなるまでの秒数を計る.(左右)

※正常:10秒以上立ってられる.10秒以下は失調症を疑う.

 

3)片足立ち(左右)

筋力低下や失調症があると困難.筋力低下がないのに閉眼片足立ちが5秒以上できない時は

失調症を疑う.

 

Ⅷ.歩行分析

(1)大腿骨頚部骨折

1.分析時の注意点

①病状の的確な把握

②持久力,バランスおよび調整力の一般的な評価

③筋力テストの結果の確認

④歩行訓練練習の準備

⑤歩行パターンの不安定性,不経済性の発見

⑥残された正常要素の発見

 

2.歩行観察時に記録しなければならない事項

一般所見:①運動が対称性かどうか

②運動の円滑性(よろめかないか,バランスを失わないか)

③腕の振り(正常か,減少か,振りすぎか)

④体幹の動き(前後や左右への傾きはないか,動きが固くないか)

⑤体の上下運動(円滑か,激しすぎないか)

特殊所見:①頭部の位置,②肩の位置,③骨盤の前後方向への傾き,

④股関節の屈伸・内外転・内外旋,⑤膝関節の安定性,⑥足関節の動き,

⑦踵接地・立脚中期・足趾離地における足の状態

 

疼痛回避性歩行,トレンデレンブルグ歩行,大殿筋跛行,四頭筋歩行,伸び上がり歩行が観察される可能性がある.

 

Ⅸ.ADL評価(Colles骨折・大腿骨頚部骨折ともに)

Barthel Index

・       10項目の総得点が100点になるように各項目に配置されている.

・       30点未満-要介助,30~80点未満-一部介助から未自立,80点以上-自立という目安をつけることができる.

・       項目:排尿・排便自制,トイレ動作,食事,更衣,椅子とベッド間の移乗,入浴,移動,階段昇降

・       点数は,時間,および患者がその活動が行えず,実際に必要とした身体的介助量に基づく.

・       介助なしでの可能度を表すものであるが,一人で生活できるという意味ではない.

・       食事作り,家事,社会との接触などは除外されている.

・       得点は活動能力を示すものであって,それが身体のどこに欠陥があるのかということを表示する意味はもたない.

・       利点:簡便さ …患者に関わるすべての人々に容易に理解され,各項目を理解すれば誰でも迅

速に採点可能な点.

・       欠点:機能の変化(改善や低下)に対する感度がやや鈍い.

身体のどこに欠陥があるかを表示する意味は持っていない.

介助の度合いがわかりにくい.

実際に行っているADLを表しにくい.

 

表1 Barthel Index

検査日

検査者

項目

点数

記述

点数

備考

食事

10

自立

5

部分介助

椅子とベッド間の移乗

15

自立

10

最小限の介助

5

移乗の介助

整容

5

自立

トイレ動作

10

自立

5

部分自立

入浴

5

自立

移動

15

自立

10

部分介助

5

車いす使用

階段昇降

10

自立

5

部分介助

更衣

10

自立

5

部分介助

排便自制

10

自立

5

部分介助

排尿自制

10

自立

5

部分介助

 

Ⅹ.QOLの評価

Lips(文献1-b)らによるWorking Party of the European Foundation for OsteoporosisからQOLの質問表(54質問)が8カ国語で出されている.7項目(痛み,ADLの活動性,家事,動き,余暇と社会活動,一般的健康認知,情緒)などを中心に評価される.

 

表2 QOL of the European Foundation for Osteoporosis改変評価

1.疼痛

①痛みなし ②軽度 ③中等度 ④強度 ⑤耐えられない

2.ADL(着衣)

①容易 ②少し困難 ③中等度 ④少し介助 ⑤全面介助

3.身のまわり動作(買い物)

①容易 ②少し困難 ③中等度 ④高度 ⑤不能

4.可動性(椅子からの立ち上がり)

①容易 ②少し 困難 ③中等度 ④高度 ⑤介助

5.余暇,社会活動

(過去3ヶ月に親族・友人を訪ねた回数)

①1週に1回 ②月1か2回 ③月に1回よりは少ない ④なし

 

高齢者に発症することが多いため,生活様式を変えること,畳から和式生活から椅子,ベッドへの様式生活を行うことに違和感を訴えるものも多い.腰痛や骨折への不安感から,外出の機会が少なくなり,近隣の人とのコミュニケーション,日常生活に支障をきたすことも多い.地域住民との交流を積極的にはかるような会などの活用も大切である.

また,心理的・精神的問題の把握も重要である.高齢の骨折患者は身体の自由がきかず,臥床を余儀なくされることが多い.夜間せん妄が現れたり,ときには知的障害が現れる.また,人生について“あきらめ”“将来への不安”などを訴えることがあり,これらの問題の存在を早期に発見し,適切な対応をとることが重要である.

 


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