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(^◇^)脳卒中慢性期とリハビリテーションの話


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(*^。^*)題名:脳卒中慢性期とリハビリテーションの話

1.慢性期脳卒中患者の長期予後

①生存率

坂本ら:5年生存率77.3%と報告しておりこれは同地域の一般住人の期待生存率と比較して同じかやや高かったという。さらに歩行能力による差もみられ、年齢によって大きな影響を受け、64歳以下では実用歩行とそれ以下との間で生存率に有意な差がみられたが、65歳以上では変化なかった。

②慢性期の死亡に関係する要因

退院時の能力低下、高齢、心疾患などが指摘されており、歩行能力が低くADLに介助が多いほど死亡率が高いことは多くの報告で示されている。

③身体機能

機能的予後をみるには、神経学的な症状や随意運動の程度、筋力、関節可動域、痙性などの経過を追う必要がある。

大川ら:脳卒中片麻痺患者の廃用性筋萎縮に関する研究で「非麻痺側」の筋力低下について検討している。脳卒中片麻痺患者の上下肢筋力(肘屈伸、膝屈伸)をCybexⅡで測定し、トルク値で正常者の42.2~81.6%の著名な筋力低下を認めた。発生後の期間と筋力は高い負の相関があり、廃用性筋力低下の可能性を示唆している。

間嶋ら:歩行障害が軽度の患者について、心拍数と酸素摂取量を体力の指標として測定すると、同年齢の対象者に比較して著明に低下していた。また1日の歩数で比較した身体の活動性でも正常の約半分にしか達せず、活動性の低下が明らかであった。

④歩行・移動能力

横山 :退院時の歩行能力と退院1.3.10年後の歩行能力を比較し、退院1年後において退院時つかまり歩き群の29.2%が歩行不能となり、退院時杖歩行(屋内)群では歩行能力低下17.1%、屋外歩行群では歩行能力低下8.9%であった。つまり退院時歩行能力の低い者ほど、その後の歩行能力の低下と死亡が多かった。この関係は退院3年後、10年後もまったく同様で、退院時の歩行能力と退院後の死亡、歩行能力低下との間には有意の相関関係が認められた。

二木 :在宅患者に対するリハビリテーションにより屋外歩行が自立した患者は、その後も再発作がない限りその能力を維持できるが、屋内歩行・ベッド上自立にとどまった患者は、再発作以外の種々の原因で自立度低下をみることが少なくないとしている。

⑤身のまわり動作

吉永 :退院時ADL自立93例のうち、退院後もADLを維持できたのは63.4%、一時低下しその後改善4.3%、低下8.6%、退院時ADL介助39例のうち維持は12.8%、一時改善しその後低下5.1%、低下12.8%であり、ADLが介助の状態のまま退院した患者が低下しやすかった。またADL低下の原因としては原因不明のものが最も多く、以下脳卒中の再発、偶発事故の順であり、ADL低下原因不明例の低下過程は図1のようであるとしている。

⑥社会復帰

横山 :家事を含めた復職率は退院1年後に29.8%、3年後に31.2%、10年後に25.1%であり家事を除いた報酬の得られる復職率は1年後に27.2%、3年後に27.6%、10年後に22.4%であった。また復職・家事復帰に及ぼす年齢の影響はきわめて大きく、復職率の比較的高い職種は管理職、専門的技術的職業、農業であり、低い職種は単純労働、事務、サービス業であった。

 

2.脳損傷部位による機能予後

①皮質枝梗塞による脳梗塞、皮質下出血

運動や及び運動前野を除いた前頭葉の障害では、前大脳動脈梗塞に代表される内側面損傷で下肢に重度の麻痺が生じるとともに手には強制把握などの症状が出現するため、歩行機能と上肢機能が重度に傷害され、その後も不良な場合も少なくない。しかし、その改善は痙縮が伴って改善するようなBrunnstrom Stage「Ⅲ」に代表される共同運動を経由せず、弛緩性から一気に「Ⅳ」「Ⅴ」レベルの分離動作が出現するといった改善を呈することも多い。

中大脳動脈の前方の梗塞では運動野を中心とした損傷となり、特に上肢の麻痺が強くなり、予後不良である。中心溝より後方の梗塞では右半球なら半側空間無視が、左半球なら失語に加え観念失行などが出現することで運動機能以外の高次脳機能障害によって予後が修飾される。

これらが合わさった領域である中大脳動脈起始部の梗塞では、上下肢とも重度な運動麻痺が生じ、その予後は早期にみられるわずかな運動機能の動きによって、ある程度の予後予測は可能である。

後頭葉や側頭葉下部を潅流する後大脳動脈領域の梗塞では、視覚的認知機能の障害や記憶障害は生じるものの運動機能の予後はよいものが多い。

穿通枝領域の梗塞として特に放線冠の梗塞では、錐体路直接損傷を受けるため運動予後は損傷の大きさに比例して不良となる。

②視床

視床は梗塞も出血も病巣の大きさと部位によって症状が異なり、前方では意欲障害が、内側では記憶障害、後方の視床枕が損傷されれば左で失語が右で半側空間無視が生じるが、限局されていれば改善はよいのが特徴である。しかし、外側部では知覚脱失をきたすような重度な感覚麻痺を生じることがあり、特に深部感覚位置覚脱失を伴い知覚失調の形をとるものでは、歩行予後は悪い。

被殻出血では内包がどの程度圧迫されているかでことなり、その大きさや上方への伸展に応じて運動予後が決まってくる。

③脳幹

脳幹の梗塞・出血ではその損傷範囲によって、前方損傷では運動機能予後が悪く、後方損傷では知覚機能予後が悪くなり、そのままリハの機能予後予測に反映する。

④小脳

小脳は新皮質と呼ばれる小脳半球の代償機能が大脳に比較して大きいことから、小脳梗塞・出血では、半球に限局するような出血や上小脳動脈や後下小脳動脈の梗塞では良好な改善が得られることが多く、初期の症状からでは容易に予後予測は困難である。

 

3.回復期以降の脳卒中患者の理学療法

脳卒中患者は回復期を過ぎ、維持期とされる時期になっても、有機的な生活を送ることによって、筋力や耐久力が向上し、また精神機能面の好転もみられ、徐々に運動機能の改善が得られることも珍しいことではない。

逆退院時よりしだいにADL能力が低下していく傾向も認められており、年齢や経済状態、家族との人間関係などがその因子として考えられている。寝たきり老人の過半数が脳卒中のあることを考え併せてみると、脳卒中患者の急性期、回復期のリハビリテーションサービスはもちろんのこと、それ以降の理学療法の在りかたについても見直していく必要がある。

回復期以降の理学療法はそれ以前の内容の継続であることも多いが、ここでは機能維持・改善に重要と思われる事柄について述べる。

①体力の維持・改善

a.片麻痺患者の体力

脳卒中患者は発症後長期にわたって安静臥床を強いられていることが多く、リハビリテーションの過程においても日中は活動性の低い生活を送っており、退院後も同年齢層の健常者に比べ活動性が著しく低下している。

宮原によれば従来の片麻痺プログラム施工中の患者の心拍数変化は一般に少なく、年齢より推定した酸素消費量の約30~50%に相当する運動負荷しか得られていない。1日のエネルギー消費量は介助歩行群が最高でDisabilityレベルの改善に伴い、エネルギー消費量の減少が認められている。しかし、有酸素的作業能力の増大は得られており、また筋力の増強により代謝性活動性組織である筋組織の増大も生じており、エネルギー消費量の減少の原因として通常の片麻痺プログラムにおける運動負荷量の減少、活性化の低下を挙げている。特に退院後の活動性の低下が著しいと間嶋と同様に指摘している。この活動性をいかに保ち改善していくかが重要なことである。

b.体力の維持・改善の工夫

動作能力の低い患者にとってみると単純な歩行でも相応の負荷量になるが、屋内歩行自立以上の患者の場合、室内での単なる歩行訓練では体力向上にはつながらない。中には屋外を1日何kmも歩くことによって活性化を図っている片麻痺もあるが稀なことである。努力歩行とは異なり、平常歩行では体幹や骨盤周囲筋を含めた全身運動になりにくいため比較的負荷は少ない。そこで、片麻痺の運動機能改善に対しても大切なことであり、また体力の向上という観点からも重要と思われる体幹や骨盤帯の参加をプログラムの中に組み入れている。和式生活に欠かせない床座り、そこから立ち上がる動作を繰り返すことは、健常者でも10回も繰り返すとかなり運動負荷になる。このような動作はたびたび行わなければ方法を忘れたり、恐怖心が伴い実用的でなくなることもありADL訓練を兼ねて頻繁に行っている。

体幹・骨盤周囲の運動機能は上下肢とは異なり運動麻痺の程度は軽度で、両側を含めて運動学習できる素地を持っていることが多いため、回復期以降も積極的に対応していく価値がある。特に女性の体幹機能は男性に比較すると弱く、早期からいっそうその機能改善に努め、かつ退院後も継続して維持、向上を図っていくように心がける。

②変形・拘縮予防

a.上肢

活動的でない患者の拘縮は当然のことながら、積極的に動きまわるようになると、いわゆる連合反応の影響が著明になり、多くの場合、屈筋群の緊張が高まるため屈曲拘縮に陥りやすい。衣服の着脱が退院後にできなくなる症例もあるが、肩、肘、手関節の拘縮も原因の一つとして挙げられる。これらの拘縮には痛みや湿疹、水虫、その他の皮膚の問題を伴いやすく、初期から自己管理指導や家族教育を徹底しておくべきである。患側上肢の実用性がなければ、ほとんど自動運動を行わせることはなく、筋収縮に伴う血液循環の改善と代謝活性が期待できない。他動運動のみならず、たとえ共同運動であっても自動的な運動も心がけさせたほうが良い。また、運動療法早期から両手を組ませるなど、屈筋群の抑制を図ったり、患側上肢に注意を喚起するようなことも必要であろう。

b.下肢

ベッド上や車椅子生活を強いられる場合は、家族への関節可動域訓練の指導を行う必要がある。特に、車椅子生活

を主体にしている場合、下肢の屈曲拘縮を起こしやすい。この症例は10年前の発症時には短下肢装具を用いた軽介助歩行が可能であったが、特養入所に伴い車椅子生活になり、患側下肢に荷重する機会をなくしてしまった。その結果、下肢は強い屈曲拘縮を引き起こしてしまい、移動動作さえ徐々に難しくなっている。内反尖足を伴うような伸筋群の過緊張の場合も含めて、患側下肢にもっとも適切な荷重であるといっても過言ではない。

③運動学習

脳卒中片麻痺患者は自然回復を過ぎても、運動機能の改善がまったくないわけではない。それは脳の損傷部位や程度によっても左右される。そのような運動麻痺とは関係なく、ある特定のパターンを学習させることは急性期、回復期のみならず、それ以降も配慮していかなければならない。

例えば反張膝に対する運動療法についてふれてみる。従来より、いわゆるモンキーウォーキングが代表的な対応策として用いられている。確かに膝関節は伸展しないし、股関節と膝関節とを屈曲位に保つことで、その状態に関する限りは両関節に関与する筋は活性化される。しかし、その歩行にこだわりすぎると、正常歩行にみられるような下肢の抗重力伸展活動が行えなくなる。その結果、患側立脚期に患側全体が沈む込み、健側下肢を大きく振り出すことができず、歩行速度がなかなか伸びないということが起こる。反張膝を予防するための取りあえずの対策にはなるが、根本的な解決策にはならない。反張膝傾向にある片麻痺患者は膝を伸展位にロックして荷重するか、または膝を20°程度屈曲して荷重するかのどちらかしかできず、その中間位で微妙な動きを伴った支持が困難である。肝心なのはその中間位での支持能力を得ることである。そのためには、そのことがうまく行えない原因をきちんと分析しなければならない。もちろん足部や膝そのものにも問題はあるが、それ以前に股関節や体幹の抗重力筋がうまく行えないことを解決しなければならないことが多い。

④ADL能力の維持・改善

a.「できる」ADLと「している」ADL

ADLには「できる」ADLと「している」ADLがある。病院では「できる」と判定されても自宅退院後は必ずしも実践されているわけではない。代表的なものが衣服の着脱である。時間がかかり面倒であり、上肢も痙性のため固く、拘縮を伴うとますます家族に頼ってしまうことになる。家族にとっても、着るのを待つより、着せてしまったほうがイライラしなくて済むからつい手を貸してしまうため結局は「できない動作」へと退化してしまう。そのとこが上肢の拘縮へとつながっていく。ADLは日々繰り返し行うことのみがその維持または改善につながる。入院中も退院後通院してきた場合もその動作能力の確認を適宣行い、必要な指導を行うことを怠ってはならない。

b.家族の協力

屋内または屋外歩行がかろうじてできるような場合、その歩行能力を維持するためには家族の協力が不可欠である。かろうじてできるような歩行を独力で継続するのは至難の技である。適当な手すりを配して、最低トイレだけは一人で行けるようにしたい。心理的な負担がかなり違うようである。

⑤精神機能

脳卒中片麻痺患者が長期間運動を行わないでいると興味や積極性を失い、性格の変化を伴うなどの精神機能の低下をきたすことはすでに知られている。たとえ坐位をとれない患者でも、できるだけ早期から、長下肢装具を用いて他動的に立位を、歩行を行わせ、多くの声かけなどによって脳全体を賦活させるように努める。歩行訓練は運動機能の改善のためにのみ行なうものではない。

環境の変化が精神機能に影響を及ぼすこともしばしば経験することである。刺激が少なくなることによって精神機能が低下し、逆に、刺激が多くなることによって精神機能が向上した例もある。

 

4.自立歩行を阻害する因子

①背景因子

a.年齢

高齢であればあるほど、脳卒中後、自力で歩く能力を獲得することは困難である。背景因子の中では年齢が最も大きな影響を与える。年齢がなぜ歩行自立に影響を及ぼすかを考えると。①高齢者に特有の体力の問題。②医学的合併症が年齢が進むにしたがって多くなること。などがあげられる。

加齢に伴い体力指標である最大酸素摂取量や無酸素性作業閾値(AT値)は減少する。さらに脳卒中発症後の臥床期間に起こる廃用性の変化による体力の低下は高齢者に起こりやすい。また、そこ傾向は臥床期間が長くなるほど顕著になっていく。このため重度の運動障害、遷延性意識障害、正常脳圧水頭症などの、非活動の期間を長くする要因は、患者が高齢であればあるほど、その体力を低下させ歩行自立を阻害すると考えてよい。

また、変形性関節症、虚血性心疾患、糖尿病及び痴呆などは、加齢とともに合併する確率が高くなる。さらに、高齢者の場合1つの主要な合併疾患の陰に多様な疾患が隠れている傾向が強くなる。

二木:年齢が高くなるとともに患者の歩行予後は連続的に不良となるが、特定の年齢による絶対的な“転換点”は存在しない。としている。

b.その他の背景因子

脳卒中を起こす前の移動能力以上を獲得することは困難である。このため発症前の移動能力は自立歩行を規制する非常に重要な要因である。また、変形性関節症は荷重関節に痛みを生じる時に自立歩行の大きな阻害因子となる。

虚血性心疾患や心不全が運動制限を必要とする疾患であるという認識は以前ほど強くなくなってきている。しかし、この両疾患とも訓練時の運動負荷量を調節するため、心拍数をモニターして訓練を行う必要がある。また、等尺性要素の強い運動負荷は血圧を上昇させる可能性があり、心筋酸素需要量は心拍数と収縮期血圧の積とよく相関するため、心不全で、なおかつ筋力低下が主因となっている歩行能力の低下がある場合、その改善を望めない場合もある。

また、繰り返される脳卒中により両片麻痺となった場合は、歩行自立が阻害される。多発性脳梗塞の場合も、小刻み歩行、パーキンソン歩行、歩行失行などの歩行障害をきたす。

②障害の重要度

a.運動麻痺

60歳代以下であると、麻痺の重症度に関わらず長期間のリハビリテーションで最終的に歩行自立する可能性が高い。体幹の機能も歩行自立に大きな影響を与える。

江西ら:自立歩行の達成に大きな影響を与えるのは上下肢の麻痺の程度であるとしながらも、麻痺が重度でも歩行自立するものがあることを指摘し、特に座位保持の能力が高いものは、自立歩行達成の可能性が高いとしている。

b.感覚障害

感覚障害のみが単独で存在する場合、それが歩行自立に影響を与えることは考えにくい。

二木:深部感覚検査不能が脳卒中患者の歩行を含めた最終自立度に影響するとしながらも、深部感覚検査不能は、意識障害、痴呆、重度失語の結果であり、独立した因子とは言いがたいとしている。しかし、半側空間失認、失調症などと一緒に深部感覚障害が存在する場合は、これらの障害の歩行に対する影響を強めてしまうことが多い。また、視床症侯群などにより、脳卒中後の障害肢の痛みや異常感覚が起こった場合は、痛み自体で歩行が困難になる場合もある。

c.半側空間失認・病態失認・Pusher症侯群

重度の半側空間失認は、障害側の身体認知の低下も含む。片麻痺が存在する場合の病態失認は①麻痺に気づかず、②麻痺肢を不自然な体位においても平然としている、③麻痺肢の挙上を命ずると健側肢のみを挙上して平然としている、などという形で現れることが多い。

Daviesの言うところのPusher症侯群は、患者は全ての姿勢で健側に力を入れ、患側のほうに強く押す、そして姿勢を他動的に矯正、つまり体重を健側方向もしくは、身体の正中線を越えて健側に移動しようとすると強く抵抗するという症状に由来して命名されている。Daviesのあげた20項目にわたる記載を検討すると、半側空間失認に関わる体軸認識のずれと病態失認が組み合わさったものと考えるのが自然だ。しかしDavies自信はこれを独立した病態であると主張している。

d.重度の失調症及び回復傾向のないめまい感

失調症状及びめまい感は、脳幹・小脳の障害で引き起こされることが多い。失調症状の重篤なものは歩行の阻害要因となり得る。軽症なもの及び片側性の失調症は身体の他の部分で代償できる。それ以上に問題となるのはめまい感で、これが続く限り坐位や立位での訓練あるいは体位変換を伴う訓練ができない。この場合、患者は実用歩行には至らないことが多い。

e.発症数ヶ月後から回復する自発性低下

前頭葉障害は多彩な障害像を呈することが多い。その中に発症後しばらくは著しい動員の低下を呈し、数ヶ月経過してから回復傾向を示すものがある。初期の自発性の低下は著明であり、随伴する他の障害が軽度であっても全介助であることが多く、もちろん歩行不能である。このため、予後判定において「COW腹不能」とされがちだが、数ヶ月経つと自然に自発性が回復し、それに伴ってADLが自立、さらに歩行も可能となることが多い。

年齢が若い患者では、動員が低下している時期さえ過ぎれば歩行自立することを期待できる。しかし、高齢者の場合は自発性が低下し活動量が少なくなってしまうと容易に廃用性の体力低下を来しやすい。このためせっかく自発性が回復してきても、体力低下やあるいは廃用による痴呆症状のため、自立歩行に至らないものが多い。

③回復過程で起こってくる問題

a.廃用による障害

廃用による障害を起こす主要な原因は、脳卒中発症早期における不必要な長期臥床であるといって良い。高齢になればなるほど廃用性の変化を起こしやすく、不可逆性になりやすい。

廃用症侯群のなかで、特に歩行自立に影響を与えると考えられるのは、廃用性筋萎縮および心肺機能の低下、起立性低血圧、うつ傾向などであると考えられる。

非麻痺側に起こる廃用性筋萎縮に関する報告が多数あるが、佐藤らは慢性期脳卒中患者の歩行能力に影響する諸因子を重回帰分析で検討し、歩行能力に健側下肢筋力が影響するのは70歳をすぎてからであるとしている。

b.正常脳圧水頭症

歩行障害、痴呆および尿失禁を3主徴とする正常脳圧水頭症は、くも膜下出血に触発して起こってくることが多く、また、特に誘因なく起こって脳卒中と合併する場合があり、自立歩行を阻害する要因の1つと考えて良い。その歩行障害の特徴として①初期には歩行中に腰くだけのように不用意に尻もちをつくように転倒するようになること、②腰を引いた前傾姿勢で、パーキンソン病に類似した姿勢をとるが、突進現象を示すことはなく、むしろ歩行速度が低下すること、③歩行時のみでなく坐位時も後方転倒傾向をしめすこと、などである。

c.疼痛

一般的には視床痛と呼ばれるいわゆる脳血管障害後の中枢性疼痛は、脳卒中発症後数ヶ月経ってから起こってくる。中枢性疼痛がリハビリテーション阻害因子となるとされているが、自立歩行をどの程度阻害するかについては報告されていない。

緊張性足趾屈曲反射は、片麻痺患者の麻痺側に良くみられ、しばしば疼痛を引き起こす原因となる。一度、足趾の痛みが起こるとなかなか改善しないことが多く、自立歩行を阻害する場合がある。ほとんどの症例で、靴または装具の内底にinhibitor barを貼付することで痛みが緩和され再び歩行不能となる。

d.転倒・骨折

脳卒中患者に見られる転倒の発生率は10~70%と、対象や報告者によって異なる。転倒は骨折などの合併症を生じて臥床期間を長くするだけでなく、転倒を恐れるあまり患者をベッドに縛り付けたり、起居・移動動作を低いレベルに止めたりする対応がとられがちであり、別な意味で歩行自立を阻害する要因と考えて良い。転倒は、環境要因として場所・時間・時期・患者側としてのADL能力の低下、半側無視、病態失認、痴呆などが複雑に絡んで引き起こされる。このため、転倒を引き起こした原因をきめ細かく分析して対応を考える必要がある。

脳卒中患者が転倒して骨折を起こしやすい部位は、下肢では大腿骨頚部骨折が、上肢では上腕骨外科頚骨折が多いとされている。特に大腿骨頚部骨折の場合、受傷前歩行していた患者の半数近くが自立歩行不能となったと木村は報告している。

 

5.考察

脳卒中の長期予後については退院時歩行能力・ADL能力が高いほど能力の低下が少ないことがわかった。そのためには退院後のリハビリが重要であり、退院後もリハビリを継続して続けた患者はその後、歩行能力・ADL能力の維持、もしくは向上する可能性が高い。そのため脳卒中慢性期のリハビリは重要になってくる。

慢性期のリハビリの目的は主に体力の維持・改善、拘縮予防、ADL能力の維持・改善である。体力を維持させるためには一定の運動負荷が必要になるため治療プログラムを決定する上でその人にとっての運動負荷を決める必要があると考える。例えば屋内歩行レベル以上の患者の場合、室内で歩行訓練を行っても運動負荷とはならない。またリハビリの時間も決まっていることから短時間で負荷のある運動を行なう必要がある。具体的には体幹や骨盤帯の参加を組み入れたプログラム設定を行う。例えば、床上動作において床からの立ち上がり訓練などを行なっていく。また、自転車エルゴなども短時間で負荷をかけることができる。大川らは非麻痺側の筋力低下は正常者に比べ42.2%~81.6%の筋力低下を認めているため、非麻痺側の筋力増強のためにも一定の負荷は必要となる。

次に退院後、屋外歩行自立の患者の場合、活動量が増えることにより過度な運動となり筋緊張が亢進すると考えられる。上肢においては屈筋拘縮を起こしやすい。拘縮はADL動作の中でも特に更衣動作に関係し、自立レベルであったものが介助レベルへとなりやすい。更衣動作能力の低下には他の因子も関係しその1つとして家族の過度の介助がある。自立といっても時間がかかるために家族が行なってしまうことがあり、そのことが拘縮へとつながるとも言われている。

下肢の拘縮では特に車椅子生活の患者に多く、屈曲拘縮を起こしやすい。車椅子生活では麻痺側下肢に荷重する機会がなくなることで屈曲拘縮を起こしやすい。また、緊張性足趾屈曲反射は麻痺側に良くみられ、しばしば疼痛を引き起こす原因となり、立位、歩行を阻害する因子となる。また内反尖足を伴うような伸筋群の過緊張の場合も立位、歩行の阻害因子となる。

以上のことから拘縮予防に対し関節可動域訓練を行い、下肢に対しては装具の処方により内反尖足を予防し、立位、歩行能力の維持・改善を図る。

また、退院後自宅に帰っても家に閉じこもってしまい、精神的にモチベーションが低下することも考えられる。そのため趣味や生きがいを見つけることは大切である。また家から外に出るきっかけとしてデイケアーなどの施設サービスを利用するのも一つの方法と考える。また、自立度を高めるためにも家族の協力、環境設定が必要である。例えば屋外歩行がかろうじてできる場合、散歩をするときは家族の助けが必要であるし、ADLにおいても過度の介助にならないように時間がかかっても自分でさせることが大切である。そのためにも在宅での行動範囲を広げるため浴槽、トイレ、廊下などに手すりをつけたり、転倒防止のために段差を解消することも必要である。

以上のように慢性期のリハビリテーションに終わりはなく、退院後もリハビリを行なうことが体力の維持、ADL能力の維持、歩行能力の維持につながり、そのためには家族の協力、環境設定等が必要と考える。

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(・_・;)参考文献

医療学習レポート.脳卒中慢性期とリハビリテーション


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