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( TДT)脳出血の話


(・.・;)題名:脳出血の話

脳出血

  • 脳出血の概念

脳出血は広義には頭蓋内出血ともいわれる。この場合、その出血部位により脳実質内出血、クモ膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血が含まれることになる。狭義の脳出血は脳実質内出血のことを示すことが多い。病因的にさまざまな疾患を包括しており、高血圧性脳内出血、動脈瘤の破裂、血管腫の破裂、外傷などがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 脳出血の疫学

ⅰ)被殻出血 ( 脳出血の約50% )

臨床症状、合併症

意識障害は血腫の大きさ、脳室穿破に関係するといわれている。運動、感覚障害は内包、半盲は視放線の障害に起因する。運動麻痺は下肢より上肢、近位部より遠位部の方が強い。構音障害がみられることもある。半側無視、構音障害や失語症などの高次脳機能障害の出現も少なくない。

 

血腫に伴う合併症として脳ヘルニア、水頭症、痙攣などがあげられる。脳ヘルニアは大出血により生じ、脳幹を圧迫することで生命予後を左右する。脳室穿破した血腫によってMonro孔、第三脳室、中脳水道などの閉塞、狭窄が生じると水頭症をきたす。金谷らの全国調査では30%弱の頻度であった。痙攣の頻度は数~十数%といわれている。

 

失語症

被殻に限局した病巣では失語が出現しないかごく軽度の喚語困難を呈するにとどまり、むしろ周辺領域の損傷が失語症の発現に重要との指摘も多い。

失語症の発現に関与する被殻の周辺組織として、内包前脚や尾状核、放線冠、弓状束など種々の報告がある。

*失語症の予後として、長尾らは血腫量が20ml以下なら予後良好だが、40ml以上では予後不良としている。

 

被殻出血の臨床症状

・反対側の片麻痺(急性期では弛緩性麻痺、亜急性期では痙性麻痺)

・反対側の感覚障害

・内側に進展すると意識障害

・病巣側への共同偏視、同名半盲、失語、失行、失認などもみられる

・反対側の半側空間無視

 

ⅱ)視床出血 ( 脳出血の約30% )

視床固有の症状

(1)  感覚障害

 全身の体性感覚は外側脊髄視床路、内側毛帯を介して視床後外側腹側核でニューロンをのり替えて大脳皮質一次知覚野へと投射している。視床出血においては同部が損傷されることで感覚障害をきたす。視床出血における感覚障害はさまざまであるが、一般に表在覚より深部覚のほうが障害されやすいといわれている。視床の重度の損傷では全身の知覚は脱失するが、逆に不全損傷では慢性期に視床痛といわれるような知覚過敏が起こることがある。

 

(2)  交感神経障害

 視床下部から由来する交感神経の中心路は視床の内側核を経由し、中脳の下行性網様体系へと信号を伝達している。このため、視床出血においても対側の*ホルネル症候群などの交感神経障害を呈することがある。

 

*ホルネル症候群:交感神経の障害によって、縮瞳(瞳孔散大筋の麻痺)、眼瞼下垂(上瞼板筋の麻痺)、眼裂狭小(下瞼板筋の麻痺)、眼球陥凹、患側顔面の発汗減少などがみられるもの。

 

(3)  記憶障害

 視床の中で記憶に関与している部位は①海馬、視床前核、乳頭体を結ぶPapez回路、②扁桃体、視床背内側核、前頭葉眼窩皮質を結ぶYakovlev回路があげられる。視床出血ではこれらの回路が障害されることで記憶障害がおこる。視床性の記憶障害は側頭葉性の記憶障害と性質的に差は認められないことが多く、両側性の障害では重度の記憶障害が残存する。出血のような片側性障害では、優位半球では言語性の記憶が、劣位半球では非言語的な記憶が一過性に障害されるといわれているが、片側性障害でも記憶障害が残存するとの報告も多い。

 

(4)  不随意運動

 視床の障害では、舞踏病様、アテトーゼ病様の、または企図振戦や失調を伴う不随意運動が出現することがある。

 

(5)  高次機能障害

 視床は側頭葉の先端、腹側、内側以外のすべての大脳皮質と連絡をもっている。このため視床出血においては、あらゆる大脳皮質機能障害(高次機能障害)が出現する可能性がある。広範な視床出血例において、喚語困難、復唱困難、錯誤などの明らかに失語症のcriteriaを満たす症例は多数存在する。(criteria…基準、尺度)

 

視床周辺の神経組織の症状

(1)  運動麻痺

 視床出血における運動麻痺は主に血腫が内包に進展し、皮質脊髄路が障害されるためにおこる片麻痺が主体である。

 

(2)  意識障害

 視床出血における意識障害は主に血腫が中脳背側被蓋に進展し、上行性網様体賦活系が障害されるためにおこる。

 

(3)  眼球運動障害

 視床出血急性期の眼球運動障害は教科書的には鼻尖注視といわれる症状が有名である。これは、中脳背側の上方注視中枢の障害に脳圧亢進による両側の外転神経麻痺が合併するためとされている。

しかし、慢性期の視床出血による眼球運動障害は血腫が中脳に進展したことで動眼神経核、滑車神経核および内側縦束が障害されたためによる症状が訴えとして多く存在する。

 

ⅲ)小脳出血 ( 脳出血の約10% )

・回転性のめまい、頭痛、吐き気を呈する

・同側の体幹失調

・同側上下肢の協調運動障害

・反対側への共同偏視、外転神経麻痺、末梢性顔面神経麻痺などもみられることがある。発症後意識障害が急

速に進行し昏睡に至る劇症型がある

・四肢の麻痺は認めない

 

ⅳ) 皮質下出血 ( 脳出血の約5% )

・失語

・失行

 

ⅴ) 脳幹部出血 ( 脳出血の約5% )

・ 橋に好発

・ 意識障害

・ 脳神経麻痺

・ 四肢麻痺

 

ⅵ)クモ膜下出血

・ クモ膜下腔への血管の破綻による出血。

・ 出血素因:脳動脈瘤・脳動静脈奇形・高血圧性脳内出血・脳腫瘍。

・ 診断基準:突発する激しい頭痛。

吐き気・嘔吐を伴う事が多い。

髄膜刺激症状(項部硬直,ケルニッヒ徴候)陽性。

局所神経徴候をみることは少ない。

発症時に意識障害をきたす事があるが、しばしば一過性である。

CTで髄液槽に出血による高吸収域を認める。

 

● 脳出血の病態

1.脳出血の原因

a.高血圧性脳内出血の病因

現在のところ脳出血の直接的な病理学的原因は、脳内小動脈(直径100~200μ程度)の類繊維素変性を主とした血管壊死と、それに続発する微小動脈瘤の破綻によると考えられている。血管壊死は中膜筋細胞の壊死のために血管内腔が拡張し、内膜の繊維性肥厚を伴い、やがて血管透過性が亢進し、組織融解を生じ、より強く血管が拡張し、微小動脈瘤が形成される。この微小動脈瘤は、被殻に最も好発し、大脳皮質、視床、尾状核の順に多く認められる。

 

b.その他の脳出血の原因

1)脳動脈瘤

McCormicsらの脳出血144例の病理学的な検討によると、20例(14%)に脳動脈瘤に伴う脳出血が認められたとしている。動脈瘤の破裂の多くはクモ膜下出血の形をとることが多いが脳出血で初発することも多い。この報告での動脈瘤の部位は20例中11例が中大脳動脈であった。

 

2)血管腫、動静脈奇形

これらも主にクモ膜下出血の形をとることが多いが、脳内出血で初発することも多い。McCormicsらの統計では脳動脈瘤と同程度の頻度で発症している。

 

2.高血圧性脳内出血発症の誘因

他疾患にて死亡した例の部検脳にも多数の微小動脈瘤が存在することが判明している。つまり微小動脈瘤があっても何らかの誘因がなければ破綻しないものと考えられる。

福田らの報告では、『冬期の活動期に、入浴、用便中に脳出血が発症しやすいといえる。このことから、血圧の変動そのものが脳出血発症の誘因となると思われる。』とされている。

 

  • 評価項目

急性期、回復期、維持期各々の検査・測定項目を障害の階層別に表したのが下記の表である。評価に当たっては各回復段階に限らず、処方箋および、それ以外に事前に得られる情報を担当医師、看護職、その他の職種、診療記録などから収集し、病態や障害像を把握する必要がある。とくに発症前の生活活動状況は機能予後や目標設定上重要である。急性期や全身状態が不安定、リスクファクターが多い場合など理学療法実施時の中止基準について医師と検討しておく。

 

理学療法検査・測定項目

急性期

回復期

維持期

機能障害

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイタルサイン

意識レベル(JCS)

褥瘡の有無

筋緊張・反射検査

姿勢・動作分析(姿勢反射含む)

麻痺機能テスト

Brunnstrom stage

12段階グレード

ROMテスト

MMT(健側)

感覚テスト

高次脳機能障害

バイタルサイン

筋トーヌス検査

姿勢・動作分析(姿勢反射含む)

麻痺機能テスト

 Brunnstrom stage

  12段階グレード

ROMテスト

MMT(健側)

感覚テスト

体力指標

 

バイタルサイン運動麻痺や感覚障害はプラトーならば不要

ROM

MMT

体力指標

能力障害

 

 

 

 

 

基本動作分析ADLテスト(コミュニケーション含む) 基本動作分析ADLテスト

APDLテスト

ホームエバリュエーション

退院予定者に対して行う。

聞き取りで不十分であれば現地調査

基本動作分析ADLテスト

APDLテスト

職業能力

家事能力

 

社会的不利

 

まず他部門からの情報として、家族、家庭内役割、経済、家屋構造、職業および現状について収集する。不足している情報は本人や家族から補う。 社会的状況の推移(MSW) 社会的状況の推移を本人・家族・関係部門から
心理的問題 表情、言動、理学療法中の反応および関係する他部門との情報交換とくに麻痺に対する心理反応 表情、言動、理学療法中の反応および関係する他部門との

情報交換とくに障害受容や抑

鬱傾向など

表情、言動、理学療法中の反応および家族関係、職場内人間関係などを本人・家族、関係部門から障害受容や抑鬱傾向など

 

○     急性期

   この時期は全身状態が不安定なので、ベッドサイドに行く前に担当医師や担当看護婦からの現状確認を行ったり、看護記録、医師の診察所見などを確認し、バイタルサイン・意識レベル・発熱・病態の進行の有無などを毎回把握する。Brunnstrom stageによる麻痺の程度、ROMの状態、感覚障害、失語症や左半側空間失認などの高次脳機能障害・ADLテストを行い状態の変化を把握する。理学療法実施時の中止基準について担当医師と検討する。

○     回復期

   開始時に設定した目標に対する検査・測定項目を定期的に実施。可能な範囲で定量的に変化を捉えられるような測定項目とする。退院予定がある場合、家屋や周辺環境を聞き取りや実地調査で把握し、治療プログラムに反映させる。体力指標として簡便に測定可能な指標(歩行量、坐位時間など)を決め測定を行う。麻痺も回復もプラトーに達する時期なので、障害受容やうつ傾向などの心理的問題についても表情や態度、他部門の情報などから配慮する。

○     維持期

   回復期の延長として定期的に状態を把握するが、検査の頻度は数ヶ月に1回程度でよい。ADL、APDL(activities parallel to daily living:生活関連動作)、社会的役割や活動、姿勢・動作分析、歩行量などを中心に外来時、通所時、在宅訪問時などに実施する。心理的問題についても引き続き配慮する。

 

各評価項目の内容は以下の通りである。

1.             運動障害

姿勢観察検査:姿勢を体全体、各関節について分析。坐位や立位、臥位などの肢位によって筋緊張の分布状態が異なる場合はその肢位を明記し、状態の違いを検討する。左右の違いを比較することも必要である。

 

動作分析検査:ベッド上、床上、歩行のような基本的な動作を体全体、各関節について分析する。動作を運動巧緻性から捉えると、a)フォーム、b)正確さ、c)速さ、d)適応能力の4要素となる。あらかじめチャックポイント(寝返り、床からの起きあがり、側臥位、四這い、膝立ち、片膝立ちなど)を定め、正常からのズレとして捉えていくとよい。

 

麻痺機能テスト:Brunnstromの運動回復段階テストおよび12段階(グレード)テスト。Fugl-Meyerの運動回復テストなど。

 

病的反射検査:バビンスキー反射やホフマン反射などの病的反射出現の有無を検査する。

 

腱反射検査:主要な筋、腱を打腱器を使用して検査する。

 

姿勢反射検査:異常姿勢反射(非対称性緊張性頚反射、陽性支持反射など)および立直り反射やバランス反応の出現や程度の有無を観察する。

 

筋トーヌス検査:患者の四肢または体幹を他動的に動かして、検者に感じる抵抗の状態を検査する。または、患者の運動中に検者が他動的に動かしたり、触診したりして確認する。触診が困難である場合には視診が中心となる。

MMT(徒手筋力検査):非麻痺側に対して検査を行う。また、麻痺側でも共同運動による影響が少なければ検査は可能となる。特に痙性筋は肢位及び異常姿勢反射、連合反応の影響を受けやすいので注意を要する。

ROM(関節可動域)検査:麻痺側の上下肢の他、頸部体幹の可動域を測定。この時に運動痛の有無についても調べておく。老人の場合には健側評価も必要である。

協調性検査:評価に当たっては、運動のスピード、運動の随意的中断あるいは連続性、運動の範囲、運動の方向、運動遂行時の患者の肢位といった基準について行う。

歩行分析:歩行の基本的要素とそれに関連する身体各部分の動きを検討する。正常とのずれの原因は、筋緊張の低下によるもの、筋緊張亢進によるもの、共同運動、連合運動の影響によるもの、異常姿勢反射の影響によるものなどがある、実際に歩行分析するとき、原則として装具、杖などは使用せずに行う。また、どのような条件で何メートルを何歩で何分要したかなどを調べておく。

 

2.感覚検査

表在検査:音、例、痛、触覚の有無やそれらの程度を検査する。

深部感覚検査:麻痺側の関節を他動的にいろいろな肢位に保持したり、他動運動を行い、非麻痺側で模倣させる。

複合感覚:立体認知、2点識別などで統合能力を評価する。

 

3.ADLテスト

病室内、病棟内での生活状況。病院内活動状況の基本的な活動がどの程度可能かを観察する。また看護スタッフからの情報も重要である。Barthel Indexなどをもちいて数量化が可能。

 

4.高次脳機能障害

失調症、失行症、失認症の有無を検査する。作業療法士などからも情報を得る。

 

5.意識障害,精神機能検査

JCS(Japan Coma Scale)やGCS(Glasgow Coma Scale)などによる評価、また諸動作の中でコミュニケーションが取れるか、意欲はあるかなどの評価も行う。

 

  • 問題点

Impairment

#1患側上下肢の随意性運動低下

#2患側の支持性低下

#3ROM制限(患側)

#4筋緊張異常(患側)

#5廃用性筋力低下(健側)

#6疼痛(肩手症候群・視床痛)

#7高次機能障害(言語障害・失認・失行)

#8知能・精神障害

#9廃用性症候群(起立性低血圧・褥瘡)

#10知覚障害

#11嚥下障害

#12排泄障害

#13浮腫

 

Activity Limitation

#14姿勢保持能力低下

#15基本動作(寝返り・起き上がり・立ち上がり・移乗)能力低下

#16移動(歩行・階段昇降)能力低下

#17ADL能力低下(入浴・食事・更衣・整容・トイレ動作等)

 

Participation Restliction

#18家庭復帰困難

 

  • ゴール設定

短期ゴール*坐位保持の獲得  *平行棒内での歩行

 

長期ゴール*歩行自立レベル  *ADL動作介助軽減

 

長期ゴールの歩行自立レベル・ADL動作介助軽減の達成の為にはまず、基本動作能力・姿勢保持能力・歩行能力の向上が必要条件となってくる。従って短期ゴールとして坐位保持の獲得・平行棒内の歩行を目標としてImpairment  levelの向上を計ることが初期の訓練内容となってくる。短期ゴールから長期ゴールへの過程としては補助具・介助量を減らし動作の正確さ・速さ等の向上の為の訓練内容となる。

 

  • 治療プログラム

急性期 - 廃用症候群をできるだけ進行させない。褥瘡・拘縮・起立性低血圧予防を中心のベッド上動作、坐位を可能とし、早期離床をはかる。

体位交換 良肢位保持、褥瘡予防
ROM訓練 他動訓練から麻痺回復に合わせ自動訓練へときりかえる
早期坐位 坐位時間は漸増し、フルアップ可能となれば車椅子、端坐位、起坐位へとすすめる
ベッド上動作訓練 体幹と健側上下肢の筋の廃用萎縮の予防と筋力強化
麻痺肢の運動 随意性の回復に合わせROM訓練や動作訓練の中で随意運動の促通をおこなう
体力低下の予防 坐位が可能になれば臥位時間を除々に減らす。坐位は短時間で頻度を増やす

**注意点**

急性期はベッドサイドでの実施で疲れやすいので短時間とし、ベッド上基本動作訓練や麻痺の

回復促通、ADLへの導入などに時間をかけるようにする。

 

回復期 - 残存機能・能力を最大限にひきだす。正常動作に基づく基本動作の自立、特に歩行

を中心とする移動動作の自立性を高めADLの自立性を高める。さらに体力を増強し、

社会復帰の準備をする。

 

移動手段の獲得 車椅子駆動訓練(健側上下肢使用)は歩行自立がすぐにはむずかしい場合に行う
バランス訓練 立ち上がり・バランス訓練
歩行訓練 平行棒内歩行・階段昇降訓練
基本動作訓練 寝返り・起坐・移乗訓練
ADL訓練 病室・病棟での練習を必ず含め、基本動作のすすみ具合にあわせて日常動作にとりいれる
麻痺の回復促通 基本動作、歩行訓練、ADL訓練の中で使用機会をつくりながら促通していく
健側筋力低下予防 基本動作を頻回に可能な場合には、その中で低下を防ぐことは可能だが、昜疲労や麻痺が重度で活動が少ない場合、意図的に健側使用を行う
体力低下の予防 日中坐位時間の漸増、歩行や車椅子駆動が可能になれば、その訓練により呼吸循環系の体力増をはかる

**注意点**

麻痺が重度、両片麻痺などで坐位バランス不良の場合、斜面台を用い起立訓練を行ったり、介

助立位や介助歩行を早期から行う

 

維持期 - 社会復帰後の生活、活動性の維持、体力を維持し、家庭内の役割を担いなんらかの社会参加によりQOLを維持向上する

歩行不能な場合

日常介助の中でのROMの維持指導 体交、更衣、清拭、坐位などが困難にならないような介護方で四肢体幹の可動性を維持する
体力の維持 坐位時間を可能な範囲で多くする
ADL訓練 現に可能なことを維持するよう指導

歩行可能な場合

歩行訓練 監視あるいは介助歩行では、これらの機能を維持するため、歩行機会をつくり、転倒に注意する。監視、介助の方法について家族などへの指導も必要。歩行自立の場合には、散歩や通院、仕事の中での歩行を通じて歩行能力、体力の維持をはかるよう歩行量の指導が必要。反張膝や異常姿勢が目立つ場合には矯正可能か訓練や装具を試みる。
ADL訓練 独力で可能な範囲を維持するため、できることは介助しない、してもらわないよう指導する

 

  • 装具について

(1)   急性期における装具療法の臨床的意義

 急性期の片麻痺患者の一般的な臨床モデルでは、弛緩性麻痺に伴う随意性欠如や筋力低下などにより下肢の支持性を得ることができず起立、歩行に重篤な障害を来たしている。したがってこの時期の装具の位置づけとして、麻痺の重症度にもよるが、早期からの起立や歩行開始のために、一般的には下肢の支持性や機能障害を代償する目的で活用される場合が多い。

この時期のKAFOの使用目的は、立位での初期の安定性を確保すること、正しい姿勢アライメントの促進により患側下肢への体重移動を恐怖を伴わずに行わせることにある。

AFOは足関節機能そのものを代償するものとして位置づけられており、臨床的には足関節の随意性、背屈の可動性、筋緊張や感覚障害などを踏まえて各種のAFOが処方されている。

膝継手付きAFOにおける継手の意義について牧野は、装具の軸が距腿関節の生理的運動軸に近づくこと、立脚中期以降の足関節背屈時に生じる底屈補助モーメントを小さくできること、関節可動域や背屈モーメントの調節がしやすいことなどを挙げており、継手を使用することで、より自然な歩容の獲得、つま先離れや膝関節のコントロールが容易になることが期待できるとしている。

 

(2)   回復期における装具療法の臨床的意義

 回復期における臨床的モデルとしては、①麻痺・高次脳機能障害などの一次的機能障害、②筋力低下・拘縮などの廃用症候群、③誤用症候群などの二次的機能障害、がその主なものとして挙げられている。この時期には能力障害に応じて各種AFOの処方がなされるが、機能障害や歩行能力に対する予後予測が可能となるため、目的に合致する装具の作製が必要となる。

さらにこの時期には生活環境への適応や実用性のある歩行能力などが要求されるため、装具の着脱や床からの立ち上がりの練習、階段昇降などの応用歩行や屋外での実践的な歩行能力の獲得に努力を要する。

 

(3)   維持期における装具療法の臨床的意義

 日中の活動性の制限や加齢による体力の低下、廃用症候群による関節の変形・拘縮、ADL能力の低下あるいは閉じこもり症候群などによって生活機能に支障を生じていることは容易に推察される。維持期の理学療法について吉尾らは、体力の維持・改善や変形・拘縮の予防を生活により密着した形で指導することが必要であるとしている。

Bowersは、AFOを使用することにより、①歩行時酸素消費量の減少、②歩行速度やcadence、step lengthの増加、③歩行の対象性、患側下肢への荷重量、反張膝や遊脚時の床クリアランスの改善、④足部の尖足、外反の減少、などのevidenceを報告している。

 

立位バランスによる装具の予測

立位バランス良好

ブルンストロームステージ1~2→KAFO

ブルンストロームステージ3→金属AFO

ブルンストロームステージ4~5→プラスチックAFO

 

立位バランス不良

歩行不能→車椅子

 

プラスチックAFOか両側金属支柱付AFOかの判断基準

プラスチック短下肢装具の適応は、膝関節伸展位で他動的足関節背屈角が0°以上で、歩行時全足底接地ができる程度の足関節底屈・内反筋群の痙性が軽度から中等度の症例であり、立脚相に反張膝や過度の膝屈曲がみられる症例の膝関節のコントロールには、両側金属支柱付短下肢装具が適していると考えている。

 

  • 予後予測

 二木は、脳卒中片麻痺患者523人の検討から、発症時の下肢Brunnstrom stageがⅣ以上であれば6ヶ月後には全員ステージⅥまで回復するとし、また発症後3ヶ月までの回復が著名であったことなどを報告した。

 

北井らによれば、内科的治療を行った113例の被殻出血患者の出血量と退院時状況との関係は、自立群12ml、要介助群28ml、寝たきり群47ml、死亡群120mlであった。

 

歩行訓練に入るめやすとして、健脚の筋力が十分あって健脚で体重を支えることができ、患脚でも数秒支えることことができれば十分である。(物につかまって、バランスをとるための軽い介助があってもよい)


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