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(^◇^)深部感覚性運動失調の話


(#^^#)題名:深部感覚性運動失調の話

●深部感覚の解剖・生理

深部感覚の位置

深部感覚は末梢神経の太い線維で伝えられ、脊髄後根から入って同側の後索を延髄まで上行する。

 

深部感覚の構造

深部知覚を認識するレセプターは筋紡錘や腱紡錘などで、認識された姿勢や筋の伸張程度、体に伝わる振動などの刺激が、AαやAβといった太い神経線維を通っ て中枢に伝えられる。

この知覚の上行路は、識別触覚と同じく、レセプターから入力された感覚は、末梢神経系を通り、脊髄後索を上行した後、延髄下部で交叉し、反対側の内側毛帯に入って、視床に終わる。

1)末梢神経[perpheral nerve]
中枢神経(脳および脊髄)へ出入りする神経の総称で、全身に分布している。

末梢神経[perpheral nerve]・脳神経[cranial nerve]・脊髄神経[spinal nerve]がある。

機能的には感覚や運動機能に関与する体性神経[somatic nerve]、呼吸・循環などに関与する自律神経[autonomic nerve]に分けられる。

体性神経には、脳神経の12対(嗅神経・外転神経・顔面神経・内耳神経・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)、脊髄神経の31対(C1~C8・Th1~Th12・L1~L5・S1~S5・ Co)は脊髄後根から入る後根神経[posterior root nerve]、前根から出る前根神経[anterior root nerve]がある。

前根神経は運動性、後根神経は感覚性といわれている(Bell-Magendieの法則)。

脊髄神経節には感覚神経の細胞体が集まっていて、脊髄の各分節に入る感覚神経とその支配領域の皮膚との間には対応があり、これを皮膚分節[dermatome]という。

自律神経は、すべて遠心性神経で、胸・腰髄から出る交感神経と脳・仙髄から出る副交感神経に分けられる。

末 梢神経は原則的には神経線維である。

線維束はその構造から上から3段階に分けられる。

第1次束は幾本かの神経線維が神経内膜[endoneurium]という組織結合でまとめられた経・視神経・動眼神経・滑車神経・三叉神ものでその横断面は不定である。

神経内膜は次第に分れて、最後には個々の神経線維を包んでいる。

第1次束は集まって非常にしっかりした結合組織の鞘である神経周膜[perineurium]で包まれ、第2次束を作る。

第2次束はその断面が円く、末梢神経の形態単位である。

すなわち、末梢神経は細いものは第2次束であり、太いものはこれが幾つか集まったものに過ぎない。

第2次束の周囲は神経上膜[epineuirium]という結合組織膜で補強されている。

第3次束は、神経周膜は脳・脊髄の軟膜の続きであり、神経周膜は硬膜の続きである。

末梢神経にはその経過途中に神経細胞体の集団があり、このような場所は結節状に肥厚していることから神経節[ganglon]という。

末梢神経は原則的には神経線維であることより、ニューロン(神経単位)の形態について簡単に触れておく。

基本的に細胞体[cell body]とそれから出ている突起からなる。

突起には多数の短い樹状突起[dendrite]と1本の長い軸索突起(軸索[axon])があり、長い軸索を神経線維[nerve fiber]ともいう。

軸索はSchwann細胞の膜で包まれた髄鞘[myelin sheath]を有する有髄線維[myelinated fiber]と髄鞘を有さない無髄線維[nonmyelinated fiber]がある。

また、有髄線維には一定の間隔で髄鞘のない部分がある。

これをRanvierの絞輪という。

なお、中枢神経系の有髄線維は稀突起膠細 胞[oligodendroglia cell]により髄鞘が形成されている。

2)脊髄[spinal]

横断面の中央には脊髄を縦に貫く中心管[central canal]があり、それを囲むように灰白質[grey matter]、その外側に白質[white matter]がある。

灰白質は細胞体と樹状突起を含み灰色に見える。

灰白質はH字状で、左右の腹側には前角、背側には後角がある。

左右を結ぶ中心管周囲の灰白質を中間質中心部と呼ぶ。

前角は主として運動神経細胞群からなり、その内側部には体幹、外側部には四肢を支配する運動ニューロンが分布している。

後角にある神経細胞は後根線維と縫合する感覚神経二次ニューロンで、感覚情報を上位中枢へ伝える上行神経路の起始となっている。

白質は多くの有髄線維を含み肉眼的に白 色に見え、神経細胞体は殆どない。

白質には上位中枢と脊髄を結ぶ上行神経路[ascending tract](感覚神経路[sensory tract])と下行神経路[descending tract](運動神経路[motor tract])、脊髄髄節間を結ぶ連合神経路[association tract]がある。

脊髄は硬膜・クモ膜・軟膜という髄膜に包まれている。

クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔は頭蓋内クモ膜下腔と連結している。

運 動に関係する脊髄機能は体節内あるいは体節間にわたる反射である。

脊髄には種々の反射中枢もある。

正常では脊髄反射は上位中枢の制御を受けている。

その他 に脊髄は神経インパルスの上行路・下行路として機能している。

興奮性刺激は前角細胞に達し、筋収縮が起こる。

同時に抑制介在ニューロンを介して前角細胞に 伝えられた刺激は抑制刺激として拮抗筋を収縮させ、反射が起きる。

発生学的には外胚葉性の神経管に由来し、脊柱管内にある。

径が約1㎝、長さが約43㎝、重さが約26g程度の細長い円柱状である。

上方は延髄に連なり、成人では環椎上縁から第1~2腰椎に位置する。

ヤコビー線(両側の腸骨稜を結ぶ線)は第3~4腰椎間に一致し、脊髄が第2腰椎以下では馬尾状になっているので、脊髄を傷つけることなく腰椎穿刺を安全に実施できる。

下端を脊髄円錐 [medullary cone]といい、その下方は終糸[terminal filum]となって、尾骨後面に付着する。

頚髄・腰髄には上下肢への神経が出入りする紡錘形の膨隆部があり、これを頚膨大[cervical enlargement]、腰膨大[lumber enlargement]という。

脊髄レベルの運動制御としては、主に反射である。

反射は刺激に対して生体がみせる目的的・不随意的な応答で、比較敵意一定の反応を示し、反射中枢で統合される。反射運動の特徴は、

①応答は意志を必要としない。意思的努力によって応答パターンが多少変わることがある。

②応答パターンは単純で定型的である。

③応答パターンを引き出す刺激も単純である。

④十分な 刺激があれば、応答が得られる。

この4点である。

反射路[reflex tract]は、反射弓[reflex arc e.]ともいい、反射路は受容器・求心性ニューロン・反射中枢・遠心性ニューロン・効果器が基本要素となっている。

反射路は、単純反射弓[simple reflex arc e.]と複合反射弓[complex reflex arc e.]に分けられる。

単純反射弓は、後根細胞の神経突起の側副枝が直接に前根細胞に連絡して生じる反射弓で、2個のニューロンからできている。

複合反射弓は、後根細胞と前根細胞の間に1個ないし数個の索細胞が介在しているため、3個以上のニューロン連鎖から成り立っているものである。

脊髄反射中枢の脊髄上位中枢から抑制制御を受けている。

上位中枢を切断すると脊髄中枢の活性は高まり、反射は容易に誘発される。

脊髄反射には重力に抗して体を支えたり、身体を傷つけるような刺激から逃避するための運動パターンが組み込まれている。

上位中枢からの運動指令はこれからの運動パターンを利用して合目的な運動行動を成り立たせる。

脊髄から内臓性効果器にまでの交感神経の伝導路と脊髄から体性効果器までの伝導路の相違を示す。

交感ニューロン (節前ニューロン・節後ニューロン)の中継により脊髄から内臓性効果器まで伝導される。

体性運動ニューロンは(前角ニューロン)はシナプスの介在なく脊髄から体性効果器まで直接伝導する。

また、副交感神経興奮が中枢神経性興奮から内臓性効果器まで到着するまで、2つのニューロン(副交感性節前ニューロン・ 副交感性節後ニューロン)を中継してくる。

※脊髄から内臓性効果器にまでの交感神経の伝導路と脊髄から体性効果器までの伝導路の相違を示すために自律神経系のについて、簡単に述べておく。

自律神経計の定義は、特に平滑筋や心筋、腺などの内臓性効果器まで遠心性線維を送る神経系の一部であること。

肉眼的構造としては、交感神経は、脊柱の両側に神経節が数珠状に連なった二本の鎖状の紐からなる。

そして胸髄と腰髄から出て脊髄の神経幹と結ぶ(他の 線維は交感神経節から出て内臓性硬化に分布する)。

副交感神経は、脳幹と仙髄より線維が出て、内臓の近くまたは内臓に存在する神経節まで行く。

また神経節から出る線維は内臓や腺に分布する。

節前線維の細胞体 節後線維の細胞体

交感神経

胸髄と腰髄の灰白質にある。(下位の交感神経中枢) 交感神経の神経節、椎前神経節に存在する。

副交感神経

脳幹の色々の核と仙髄の灰白質に存在する。(下位の副交感神経の中枢) 分布する器官やその近くの神経節に分布する。

脊髄を含めた随意運動の下行路を司る神経機構として、錐体路と錐体路がある。以下に双方の簡単な経路を示す。

①錐体路[pyramidal tract]

自分の意志による運動の発現に関与する運動路であるが、錐体路だけでは円滑な運動は出来ない。

錐体路の起源は大脳皮質の運動領(中心前回)・体知覚野にある神経細胞で、これから発する線維は内包・大脳脚・橋を経て延髄の錐体に達する(錐体路の名の由来)。

ここでその大部分は交叉(錐体交叉[decussatio pyramidum]して反対側のなかを下り、脊髄前角の前根細胞(錐体側索路[tractus pyramidalis lateralis])で大部分の線維は反対側に移る。

ここまでの間で、眼筋(動眼・滑車・外転神経支配)、表情筋(顔面神経支配)、咀嚼筋(三叉神経支配)、喉頭筋(迷走神経支配)などの支配する錐体路(皮質延髄路)は、交叉性あるいは非交叉性にそれぞれの脳神経核の運動細胞に終わる。

意識的に一側だけを動かす事の出来ない筋(発声、咀嚼、眼球運動など)の支配神経核は両側の大脳皮質の支配を受ける。

四肢・体幹の筋を支配する錐体路は、錐体交叉で大部分は交叉し、錐体側索路となって脊髄側索を下行し、脊髄の前角細胞に間接的、あるいは直接的に終わる。

錐体交叉で交叉しなかった小部分は錐体 前索路を下行し、脊髄に進入してから交叉し、反対側の前角の運動細胞に終わる。

これらの伝導路では皮質から脊髄まで中継なしで同じ神経線維が到着する。

大脳皮質の運動野から発し、脳神経ないし脊髄神経を経て骨格筋その他の横紋筋に至る経路である。

これは以下に述べる多数の運動伝導路のうちで最も重要なものである。

しかし、系統発生的にみると、この経路は哺乳類において初めて現れた新しい伝導路である。

交叉しない残りの線維は同側の脊髄前索のなかを下りながら順次に交叉してすぐに反対側の前根細胞に終わる(錐体前索路[tractus pyramidalis anterior])<第1ニューロン:皮質脊髄路[tratus coroticospinalis]>。

つぎに脊髄前根細胞から始まる線維は前根を通って脊髄神経のなかに入り、途中で中絶することなく末梢に及んで随意筋に分布する<第2ニューロン:皮質延髄路[tratus coroticobulbaris]>。

なお錐体路の線維の一部は脳幹のなかで交叉(延髄腹側の錐体で大部分交叉)して、反対側の脳神経運動核(脊髄前角に相当するもの)におわり、これから発する線維はそれぞれの運動性能神経となって、その支配する随意筋に行っている。

このように錐体路はすべて2個のニューロンから成ること、必ず一度交叉して反対側の随意筋に行くことが特徴である。

錐体路のインパルスは、次の3種の作用を示す。

(a)特に上下肢の運動ニューロンは錐体路からの直接の興奮性シナプス結合を受けている[Phillips]。(指先の器用な運動に関連がある)

(b)脊髄の多シナプス反射(屈曲反射)を促通する[Lundberg]。

(c)後索核および脊髄で一次性求心性線維末端をシナプス前抑制によって抑制する[Eccles]。

②錐体外路[extrapyramidal tract]

無意識のうちに、筋緊張、筋群の協調運動を調整する運動路。

大脳核を中心として、皮質、小脳、脳幹の網様体などと密接に連係を保っている下行性伝導路。

脳神経核と脊髄前角の運動神経細胞を支配する。

ⅰ)橋と小脳を経由する伝導路

大脳の前頭葉・側頭葉の皮質神経細胞から発する神経突起は、それぞれ強大な線維束を作って内包に集まり、さらに大脳脚を通って橋に入り、ここで橋核に終わる(第1ニューロン=皮質橋(核)路[tractus corticopontini])。

橋 核細胞の神経突起は橋のなかを横走して反対側にわたり、中小脳脚(橋腕)となって小脳髄質の中に進入し、放散して小脳半球に終わる(第1ニューロン=橋 (核)小脳路[tractus potocerebellares])。

この小脳皮質細胞(プルキンエ細胞)の神経突起は歯状核で中継されて、上小脳脚(結合腕)の中に入り、交叉して主 として反対側の赤核に終わる。

赤核から発する新たな神経線維は中心被蓋路[tractus tegmentalis centralis](赤核オリーブ路[tractus rubroolivaris])となって同側のオリーブ核に終わる。

オリーブ核からは三角束[fasciculus triangularis](三稜路[Dreikantenbahn d.]、オリーブ脊髄路[tractus olivospinalis])が発し、脊髄前索と側索との移行部の表層を下り、次第に前角に進入して前根細胞に連結している。

なおその伝導路には途中オ リーブから反対側の小脳歯状核に至る回路すなわちオリーブ小脳路[tractus olivocerebellaris]が付属している。

上記の伝導路は小脳の運動調節作用を筋系に伝達するものと考えられている。

ⅱ)橋と小脳を経由する伝導路

大脳前頭葉の皮質の運動性神経細胞柄出る神経線維は同側および反対側の視床の腹側部に終わり、視床から発する線維は腹側の線条体、ついで淡蒼球に入ってそれ ぞれ中継される。

淡蒼球から出る線維は一部直接に、一部視床下核と黒質で中継され、同側および反対側の赤核に終わる。

なお、線維の一部は赤核へ行かずに中 脳蓋の上丘に終わる。

つぎに赤核からの興奮は前述の中心被蓋路、ついでオリーブ脊髄路(三稜路)を通り、また上丘からの興奮は後述の視蓋脊髄路によって脊髄の前根細胞に伝えられる。

なお赤核から降下する線維の一部は脳幹の網様体でも終わっている(そのさきは網様体脊髄路[tractus reticulospinalis]:3群が区別され、内側網様体脊髄路延髄部(抑制ニューロン)、内側網様体脊髄路橋部(興奮性ニューロン)、交叉性延 髄脊髄路(不明))。

この経路は筋の緊張・不随意運動などに関与するものと考えられている。

したがって、大脳皮質との連絡はあまり強くない。

前述のように、鳥類以下の動物では錐体路がなく、この経路が運動伝導路のうちで最も重要な地位を占めている。

ⅲ)視蓋脊髄路[tractus tectospnalis]

中脳臥位の上丘(視蓋)から発し、その大部分は交叉し、一部は交叉せずに脊髄前索のなか(前正中裂に面した表層部)を下り、線維の末端は順次前角の前根細胞 に終わる。

上丘は先に述べたように視覚経路とその他多数の求心性経路と連絡があるから、視蓋脊髄路はいわゆる視覚反射やその他の反射弓の遠心脚をなすもので、頚髄の運動ニューロンに介在して接続し、興奮性および抑制性の作用を及ぼしている。

たとえば身体に危険を及ぼす外界の状況が目に映じたときに、これに 対して反射的・防衛的・逃避的な運動を起こしたり、あるいは視覚よって身体の平衡を調節するものであると考えられる。

Ⅳ)前庭脊髄路[tractus vestibulospinalis]

内側と外側があり、外側前庭核から発する線維束で、末端は前根細胞に連絡している。

すなわち、上記の核の神経細胞が出る神経突起は同側性に下降して脊髄に入り、前索のなかを錐体路前に沿って走行している。

この伝導路は前庭神経とともに反射弓を作っており、身体の姿勢を反射的に正しく保つことに役立つものとみ られている。

外側前庭脊髄路は伸筋の運動ニューロンにEPSP(興奮性シナプス後電位)を、屈筋の運動ニューロンに抑制ニューロンを経てIPSP(抑制シナプス後電位)を生じさせる。

耳石器からのインパルスで働き、持続性迷路反射に重要な役割を果たしている。

内側前庭脊髄路は内側縦束を通って脊髄へ下降するが、頚髄の運動ニューロンに対して興奮性シナプス結合をするものと抑制作用をもつものとがある。

おそらく三半規管からのインパルスを受け、加速度に対応する姿勢反射に重要な役割を果たしていると考えられている。

Ⅴ)内側縦束[fasciculus longitudinalis medialis]

知覚性能神経の終止核、なかでも外側前庭神経核の神経突起の集束である。

経路の一部は対側に交叉し、一部は同側を走る。

そのいずれもが上行および下行し、末 端は脳幹の運動性脳神経起始核(ことに眼球運動の起始核)と脊髄前角との運動細胞に終わる。

中脳と延髄では、中脳水道および第4脳室の腹壁側の中を正中線 の両側に左右相接して走り、脊髄では前索後端部で前角の基部の内側部にある。

この伝導路は知覚性能神経に付属する索細胞の神経突起の束であって、脳神経に 関する関節反射弓の一部をなしている。

ゆえに頭部(ことに眼球)や頸部、さらに下って体幹や体肢の調和的協同運動はこの伝導路によって行われる。

※基底核から脊髄への機能的連絡はまだ明らかにされていないし、網様体脊髄路や赤核脊髄路と錐体外路運動障害との関係もはっきりしていない。

このようなことより錐体外路の脊髄への下行路については今後の研究成果が待たれる一面がある。

 

深部感覚の役割

運動失調に関連のあるものとしては、上行路や下行路の情報連絡機能と脊髄反射中枢がある。

 

●深部感覚性運動失調による疾患

深部感覚性運動失調(症)[Cerebellar Ataxia]

1) 脊髄性運動失調の特徴

固有受容器[proprioceptive receptor]である筋紡錘や腱紡錘からの求心路病変による運動感覚や筋緊張のフィードッバックの障害と考えられる。

主に下肢に現れ、末梢神経型と比較すると脊髄型の方が重症であることが多く、運動麻痺と混在することも多い。

主に運動失調に関係あると思われる脊髄の障害分類を以下のようである。

A)後索の障害・・・位置覚、振動覚、識別覚、立体認知が障害され、知覚過敏もみられる。

B)後角の障害・・・その髄節の温痛覚が障害され他の知覚は保たれる(髄節性知覚解離)。

C)灰白質の障害・・・温痛覚の神経線維が両側に障害され、両側性の知覚解離がおきる。

2) 末梢神経型運動失調の特徴

末梢神経型は、運動麻痺よりも感覚神経が強く障害される。

この方の失調は視覚によってかなり代償される。

固有受容器の求心路病変によるフィードッバックの障害と考えられるのは同様である。

主に運動失調に関係あると思われる末梢神経・神経根障害は以下のようである。

A)単神経障害・・・傷害された神経支配領域の運動麻痺と感覚障害が一緒に出現する。

B)多発性ニューロパチー・・・運動・知覚障害が同時に四肢末梢部に始まり左右対称性に遠位から近位に向かって進行する(手袋・靴下型障害)。

C)神経叢の障害・・・神経叢は多数の末梢神経が絡み合ったものなので、広範囲に知覚・運動麻痺が生じる。

D)神経根の障害・・・後根の圧迫によっておき、傷害された神経後根のデルマトームに沿って痛みや知覚異常を起こす。

 

深部感覚性失調症起因病変・・・脊髄(後索)型

1)脊髄炎(神経梅毒)・・・脊髄癆[tabes dorsalis]

本体は脊髄膜炎と脊髄根炎で、後索病変は二次変性といわれる。

肉眼的には、脊髄クモ膜は肥厚・混濁し、後根神経が細く、褐色調を帯びていて、脊髄後索の萎縮がみられる。

死因とはならないので、多くの解剖例では梅毒性炎症はすでに消失していて、後索は膠瘢痕化しているか、ときには神経根や髄膜にリンパ球や形質細胞を認め、脊髄後索に脂肪顆粒細胞を認める。

病変は腰髄に最も強く、したがって変性は主としてゴル策に限局するので、歩行失調を主症状とし、その他知覚 が侵されないのは後根の太い線維が好んでおかされるためといわれている。

通常感染後10~15年以後に発症する。

2)脊髄型脊髄小脳変性症(系統変性)・・遺伝性脊髄性運動失調[Friedreich’s ataxia]

脊髄長索路の変性を主とする。

すなわち錐体路・クラーク細胞および脊髄小脳路・脊髄神経節と後索などでさらに脳幹下部の脳神経核や索道・小脳などのおかされる症例もある。

20歳前後までに症状が発現し、常染色体劣性遺伝で、思春期以前に下肢、次いで上肢の失調症、構音障害で発症する。

視神経萎縮や末梢神経の病変などを合併することもあり、凸足や脊髄側弯症深部腱反射消失、バビンスキー反射陰性を示すことも少なくない。

3)腫瘍[tumor]・・・脊髄腫瘍[spinal cord tumor]

硬 膜外腫瘍[epidural abscess](転移性脊椎骨腫が多い)、硬膜内髄外腫瘍[intradural extramedullary tumor](髄膜腫、神経鞘腫、神経線維腫が多い)、髄内腫瘍[intradural intramedullary tumor](グリオーマが多い)に分類され、硬膜内髄外腫瘍が最も多い。

女性にやや多く、神経根痛・感覚鈍麻(後根症状)、筋力低下・筋萎縮・深部感覚減弱(前根症状)が出現する。

神経根痛とは、後根の圧迫・牽引により生じる激しい疼痛で、咳・くしゃみなどの脊柱管内圧上昇で増強する疼痛のことである。

4)先天性異常

ⅰ)脊髄空洞症[syringomyelia]

中 心管と関係なく、多くは頚髄にみられ、しばしば胸髄にまでいたる管状の空洞形成で徐々に増大する。

前角の後半部・脊髄視床路・側角・後角などが空洞内に含まれるか、あるいはそれの圧迫でおかされる。

空洞が中心管を介して第4脳室へ連続する交通性のものは下部頚髄、上部胸髄に多く、非交通性のものは脊髄損傷後などに生じることが多い。

経過は通常緩徐である。

臨床的には、手の萎縮・解離性知覚障害(主に温痛覚解離が多い※)・自律神経障害などを呈する。※温痛 覚解離・・・痛覚・温度覚は消失するが、触覚・深部知覚はおかされない

ⅱ)脊髄動脈奇形[arteriovenous malformation of spinal cord]

脊 髄空洞症の合併率が高く、胸・腰・仙髄の脊髄後面に多い。

脊髄内に限局する物は、普通多数の拡張させる毛細管や洞様血管よりなる病巣であり、しばしば多発する。

髄膜に連絡のあるものは動静脈吻合性のものである。

脊髄では髄膜に拡大蛇行させる静脈を認めることがある。

先天性奇形であるが、血圧上昇などで奇形 血管の拡張が進行し、あるいは出血などにより周辺組織の変性を起こすことにより、成人になってから初めて対麻痺などの症状が現れることや進行性の経過をと ることも少なくない。

一方、若年層の特発性脳出血や脊髄出血の原因をなす。

5)脱髄性疾患・・・多発性硬化症[MS=multiple sclerosis]

髄鞘が炎症性機転により一次性に障害され、軸索が比較的保たれている疾病(脱髄性疾患)の一つで、限局した非化膿性炎症性脱髄巣が次々と反復して生じるものをいう。

そのため、多巣性の多彩な神経症候が、再発と寛解を繰り返し多相性出現するのが特徴である。

脱髄に続いて著明なグリオーシスが生じ、組織が硬くなることによることから病名がつけられ、女性にやや多く、発症年齢は15~50歳と広い。

前駆症状として、感冒様症状がみられることがある。

6)靱帯骨化症・・・黄色靭帯骨化症[ossification of yellow ligament(OYL)]

頚・ 胸・腰椎いずれにも発生するが、脊髄症の原因となり、臨床上問題となりやすいのは、胸椎部OYLである。

胸椎黄色靭帯骨化症の約半数が前縦靱帯骨化を合併していることにより、OYLもまた強直性脊椎炎[ankylosing spinal hyperostosis(ASH)]の部分症との考えが一般的である。

胸椎では後縦靭帯骨化と黄色靭帯骨化の合併が臨床上問題となることが多い。

臨 床症状は一般には胸髄部圧迫による痙性麻痺であるが、OYL単独では下肢のしびれ、疼痛を初発症状とすることも多い。

しかし、圧迫が腰髄膨隆部や仙髄部に 及べば症状は複雑になる。

脊髄症状としてほとんどの例で表在性知覚が障害されるが、深部知覚が残存する例もある。

しかし、胸椎部OYLは下肢の位置覚消失 により極めて高度な歩行障害を呈することが特徴的である。

7)動脈硬化症・・・後脊髄動脈硬化症[posterior spinal arteriosclerosis]

粥状硬化を示し、動脈狭窄の原因となるとともに、時に潰瘍や血栓を生じる。

狭窄の強い部位にできた場合は動脈閉塞をもたらし、心筋梗塞の原因にも成り得る。

動脈硬化は症状に乏しく、動脈硬化性の疾患になってから初めて虚血性の症状が現れることが多い。

動脈硬化を促進させる因子として、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、ストレス、喫煙などがあり、動脈硬化の結果起こる代表的な疾患としては一過性脳虚血発作、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症などである。

8)ビタミン欠乏症・・・亜急性連合変性[subacute combined degeneration]

B12 に関連あるものでは、しばしば悪性貧血に伴われる脊髄索路変性がある。

運動・知覚索路がともにおかされるので、索性脊髄症[funikulare myelose]とも呼ばれるが、始めは不規則に分布する小病巣で、これが融合し、特徴的な広汎な海綿状組織を形成する。

本症例では稀である。

9)薬剤弊害・SMON(亜急性脊髄視束末梢神経症)[Subacute Myelo-Optico-Neuropathy]

亜急性に経過する脊髄・視神経・末梢神経の障害をいう。

原因としてさまざまな説が考えられていたが、現在はキノホルム(止寫薬)による薬害と考えられてい る。

知覚異常、運動麻痺、視力低下などをきたす。

病理学的には脊髄の近く・運動をつかさどる神経細胞の長い軸索が変性する。

視神経にも変性を認める。

 

深部感覚性失調症起因病変・・・末梢神経型

1)代謝性神経炎

ⅰ)糖尿病性神経炎[diabetic neuropathy]

糖尿病に伴う動脈硬化による血管性(単ニューロパチー[mononeuropathy])とビタミン代謝障害、中間代謝障害などによる代謝性(多発ニューロパチー[polyneuropathy])の形をとる。

糖尿病患者の30%に認められる。

節性脱髄と軸索変性が存在し、有髄線維・無髄線維の脱落がおこ り、血管壁の肥厚・硝子様化・虚血性変化もみられる。

臨床症状は症例により異なり、複雑多岐にわたり、末梢神経の侵され方もまちまちである。

無髄・有髄線維ともに侵され、遠位部の病変が強いものが多いが、脊髄根や脊髄神経節も侵され、後索に変性が及ぶものもある。

小径線維が好んで侵されるものが少ない一方、神経繊維の太さに関係なく侵されることもある。

臨床的には、対称性知覚優位の遠位部多発ニューロパチー、非対称性運動優位の近位部ニューロパチー(しばしば疼痛を伴い単ニューロパチーの形をとる)、自律神経ニューロパチー、第Ⅲ、Ⅳ神経を主とする脳神経ニューロパチーなどに分けられる。

下肢の方が強く障害されることが多く、無汗症・起立性低血圧・下痢・陰萎などの自律神経症状を起こしやすい。

ⅱ)アルコール性神経炎[alcoholic neuropathy]

飲 酒によるビタミンB1欠乏で起こり、大径有髄線維の軸索変性が主である。

臨床的には四肢遠位部、特に下肢に強い感覚障害と脱力を示す。

病理学的には、ウェルニッケ脳症(外眼筋麻痺、運動失調、痴呆様症状を示す場合)では、乳頭体、中脳水道、第3脳室壁、第4脳室壁に出血性病変をみる。

小脳萎縮をみることもある。

ⅲ)砒素中毒ニューロパチー[arsenic poisoning neuropathy]

砒素化合物としては3価と5価の砒素があり、3価の方が有毒性が強い。

血管壁の変性、肝実質の増殖性炎症、皮膚粘膜などの刺激症状、胃腸症状(食欲不振、頑固な嘔吐、下痢)、呼吸中枢麻痺、鼻中隔穿孔などを呈する。

皮膚癌や肺癌の合併が高率である。

ⅳ)癌性ニューロパチー[carcinomatous neuromyopathy]

主として肺がん、特に未熟系や燕麦細胞型に合併してくるもので、知覚障害、あるいは運動知覚麻痺をきたす。

前者では、後根より脊髄後索に変性がみられる。

骨格筋の変性を伴うことは少なくない。

約半数に髄液の蛋白質の上昇をみ、リンパ球の浸潤を認めることも稀ではない。

2)遅延型アレルギーによる感染後ニューロパチー[post-infections neuropathy]

Guillan-Barre症候群[Guillan-Barre syndrome]

上気道や腸管などの汗腺に引き続いておこることが多い。

急性に発症し、四肢の運動麻痺を示す。

顔面神経麻痺、嚥下障害、言語障害などの脳神経麻痺を伴うことが多い。

四肢の腱反射は消失し、発汗異常、頻脈などの自律神経症状を示すことが多いが、感覚障害はあまり著明ではない。

6ヶ月以内に自然寛解することが多い。

髄液検査では蛋白質-細胞解離現象が認められる。

運動神経伝導速度は著明な低下をみるが、臨床症状の回復とともに改善される。

( `ー´)ノ参考文献

医療学習レポート.深部感覚性運動失調


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