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(* ̄∇ ̄*)呼吸器疾患と運動療法の話


( *´艸`)題名:呼吸器疾患と運動療法の話

1.基礎知識

1)呼吸器疾患とは

①拘束性換気障害

充分に深い呼吸ができない状態を意味し、肺が充分に拡張しない状態はすべて拘束性障害。

肺実質の障害あるいは胸郭や呼吸筋の障害で出現するもの

a.肺実質の障害:肺線維症、肺炎、肺水腫、

成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、無気肺、全身性進行性硬化症等

b.筋の障害:中枢性呼吸麻痺、頸髄損傷、横隔膜麻痺、

神経筋疾患(重症筋無力症、進行性筋ジストロフィー症、

筋萎縮性側索硬化症(ALS))、薬物中毒など

c.胸郭の異常:胸部外傷(フレイルチェスト、開胸手術など)

②閉塞性換気障害

気道狭窄(気道閉塞)によって呼気流量が減少するために出現。

気道狭窄は、気道の管腔内病変、気道壁の病変、気道の壁外病変

a.太い気道の狭窄:気管支炎、気管支喘息

b.吸引された異物や気管支内腫瘍による気腔の狭窄

c.気管支虚脱症、腫瘍による気道の圧排

d.末梢気道狭窄:喘息、肺気腫、細気管支炎

③混合性換気障害

○塵肺   ○肺結核後遺症   ○過敏性肺炎

 

2)呼吸不全とは

呼吸系の異常により血液ガス異常を来し、生体の組織が正常機能を営み得ない状態と定義されている。

PaO2≦60mmHg Ⅰ型呼吸不全(低酸素血症をきたす疾患) Ⅱ型呼吸不全(高炭酸ガス血症をきたす疾患)

肺不全

換気不全

換気不全+肺不全

機能障害の主因 (1)    換気血流比不均等分布(2)    換気障害及び換気血流比不均等分布

(3)    動静脈シャント

(1)                                    拘束性障害による肺胞低換気a.呼吸筋障害

b.胸郭の拡張制限

(2)                                    呼吸中枢障害による肺胞低換気

閉塞性障害による肺胞低換気(拡散障害、換気-血流比不平等、シャント含む)
血液ガス PaO2     PaCO2

A-aDO2

↓<60mmHg

↓<45mmHg

↑>15mmHg

↓<60mmHg

↑>45mmHg

↓>15mmHg

↓<60mmHg

↑>45mmHg

↑>15mmHg

代表疾患 (1)                                    肺気腫、慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症、気管支喘息(2)                                    特発性間質性肺炎、塵肺、サルコイドーシス、膠原病肺

(3)                                    肺動静脈瘻、肝硬変、無気肺

(1)-a重症筋無力症、多発性筋炎、進行性筋ジストロフィー症、多発性硬化症、脳および脊髄の障害、筋萎縮性側索硬化、(1)-b病的肥満、脊柱後側彎症

(2)原発性肺胞低換気症候群

重症の肺気腫、びまん性汎細気管支炎、重症の喘息症肺結核後遺症(胸膜の肥厚、胸郭形成術術後)


 3)呼吸困難とは

一般に呼吸困難とは,呼吸運動が異常に亢進しているにも関わらず,喚起効率が悪い時に起こる感覚をいい、組織呼吸の不全が起こる前の警告反応ともいえる。つまり、呼吸中枢が興奮して血液中の酸素が増し、CO2を排出しようとするにも関わらず、血液ガスが改善されない場合に起こる一種の不快な自覚感といえる。

呼吸困難患者では、①呼吸型の異常化(浅呼吸・頻呼吸・過呼吸)と、②肺活量・最大換気量の減少がみられる。

呼吸困難の原因による分類

分類 原因 病態 症例
肺性呼吸困難 肺における換気の障害 外気のO2不足 高山病・航空病
気道の狭窄 扁桃・咽喉頭・気管の疾患、外部からの圧迫による気道狭窄、気管支喘息
細小気管支の狭窄 細気管支炎・気管支肺炎・びまん性汎細気管支炎
ガス交換のできる肺胞面積の減少 肺炎・肺水腫・肺結核・肺梗塞・珪肺症・肺線維症・肺気腫
肺の伸展性の低下 肺水腫・胸膜炎・気胸・肺線維症
胸郭運動の低下 脊髄前角炎・球麻痺・多発性神経炎・肺結核後遺症
心臓性呼吸困難 心臓障害による肺うっ血 呼吸面積の減少、肺の弾力性減退、ヘーリングーブロイエル反射の亢進 心不全 心筋梗塞・心臓弁膜症・冠動脈の疾患など心臓喘息(肺うっ血により、発作性で気管支喘息に似た喘鳴を伴った呼吸困難症状

起坐呼吸が特有

動脈血中の酸素の減少 O2不足による呼吸中枢興奮性の増大(頸動脈洞反射)
貧血性呼吸困難 ヘモグロビン量の低下(30%以下)、O2運搬能の低下 血液O2不足による呼吸中枢の興奮性増大 重症貧血軽症貧血でも運動時

CO中毒

運動性呼吸困難 筋運動による代謝亢進 乳酸増加およびpH低下による呼吸中枢の興奮性増大 訓練の有無により著しく相違する
アシドーシス性呼吸困難 血中H+の増加、pHの低下 代謝性アシドーシスによる呼吸中枢の刺激 糖尿病・腎臓病・尿毒症
神経性呼吸困難 大脳視床下部からの刺激 呼吸中枢の興奮性増大 ヒステリー、激しい痛み
脳性呼吸困難 呼吸中枢近くの病変呼吸中枢の血流障害 呼吸中枢の興奮性増大 呼吸中枢の存在による延髄およびその付近の病変、高血圧・脳動脈硬化症(脳性喘息)

 

4)呼吸リハビリテーションの目的・流れ

◎呼吸リハビリテーションの目的

①自分自身の障害(病態、生理)を理解する。

②呼吸機能障害に応じた体力を持つ。

③息切れを引き起こさないADLを身につける。

④憎悪予防のための自己管理能力をつける。

 


2.評価

1)呼吸理学療法における評価の目的:

①患者の全体像の把握
②問題点と残されている可能性の把握
③治療計画の立案・目標設定および治療効果の判定

肺機能検査

スパイロメトリー FVC、FEV1.0
ピークフローメーター PFR
動脈血ガス分析 PaCO2
PaO2と肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)
動脈血酸素飽和度(SaO2)
pHとHCO3
※注意 データ計測時の条件(酸素投与条件、人工呼吸器の設定)

栄養状態

身体計測 身長、体重、上腕周径、上腕三頭筋皮脂厚、体脂肪率
臨床検査所見 総リンパ球数、総たんぱく、血清アルブミン、血清トランスフェリン
栄養接種状況 タンパク総摂取量、カロリー接種量、基礎代謝量、体格指数(BMI)、%理想体重(%IBM)、予後栄養指数(PNI)、クレアチニン身長係数(CHI)
総合判断 食事内容,水・アルコールの摂取状況、家族への問診,咀嚼機能確認

その他

一般血液検査 赤血球数・ヘモグロビン濃度・白血球数・血小板数
血清学的検査 CRP
免疫学的検査 IgE
心電図
心エコー
画像所見 胸部X線,
胸部CT

呼吸機能障害の評価

1)姿勢異常 円背、側弯など
2)胸郭変形 洋樽変形など
3)換気運動パターンの異常①          部位の異常

②          1回換気量と換気数の異常

③          その他

上部胸式呼吸優位

浅呼吸、頻呼吸など

肺気量区分の異常、Hoover徴候など

4)チアノーゼ
5)バチ状指
6)喘鳴または異常呼吸音 気道狭窄や気道分泌物など
7)その他 副呼吸筋の活動(呼吸困難)など

現病歴

1)呼吸困難 息ぎれの分類(ヒュー・ジョーンズHugh-Jonesの分類)
2)咳・喀痰 性状、数、量
3)胸痛 性状、程度、部位、出現状況
4)既往歴

個人歴

5)家族歴 アレルギー,結核,喘息
6)職業歴 職業病(塵肺,珪肺,石綿肺)
7)動物飼育歴 アレルギー
8)生活環境 アレルギー
9)喫煙歴(肺気腫、肺癌など) 喫煙指数(本/日×喫煙年数)

全身状態

10)食欲
11)体重
12)発熱
13)倦怠感
14)盗汗
15)会話の様子 重症患者では会話が続かない
16) 患者のモチベーション モチベーションの有無はリハ成否の鍵
17) 病気の理解度 理解から、患者教育、障害受容過程を知り得る

検査・測定

1)換気量 量の変化と質の異常
2)換気運動 胸郭、腹部の運動
3)胸郭可動性 呼吸時、他動運動時に
4)呼吸筋筋力 口腔内圧計
5)呼吸筋耐久力 特に吸気筋
6)全身耐久力 自転車エルゴメーター、トレッドミルなど
7)その他 腹筋筋力、他部門データなど

ヒュー・ジョーンズHugh-Jonesの分類(慢性呼吸器疾患患者の呼吸困難の程度分類)

Ⅰ度(正常) 同年齢の健康者と同様に仕事ができ、歩行、階段の昇降も健康者と同様である。
Ⅱ度(軽度) 平地では同年齢の健康者と同様に歩けるが、坂や階段は健康者と同様に昇れない。
Ⅲ度(中等度) 平地でも健康者と同様な歩行はできないが、自分の歩調ならば約1.6km以上歩ける。
Ⅳ度(高度) 休みながらでなければ、約50m以上歩けない。
Ⅴ度(非常に高度) 話したり、衣服を脱いだりするだけで息切れがし、そのため外出もできない。

横隔膜呼吸習熟度スケール(松本)

          評 価 項 目
Ⅰ度 安静時、活動時を問わず独力で横隔膜呼吸を強調して行える。
Ⅱ度 立位、歩行時に横隔膜呼吸が行える。副呼吸筋での代償運動(-)
Ⅲ度 坐位で横隔膜呼吸が行える。副呼吸筋での代償(±)呼吸介助を除いても呼吸パターンが崩れない
Ⅳ度 仰臥位、ファーラー肢位で前胸部または肩甲帯を抑制すれば横隔膜呼吸が行える。副呼吸筋での代償(+)。 呼吸介助を除くと呼吸パターンが崩れる。
Ⅴ度 呼吸運動において腹部と胸部が同期しておらず、用手介助を加えても横隔膜呼吸を行うのが難しい。 副呼吸筋の代償(++)


3.問題点とリハプログラム

問題点 目標 内容
①換気運動範囲制限 肺活量増大:最大呼(吸)気位拡大 呼(吸)筋筋力増強運動深吸気運動

胸郭ROM、ストレッチング

②気流の通過障害** 気道閉塞減少:気道内圧上昇貯留分泌物除去 口すぼめ呼吸体位排痰法
③肺胞低換気 肺胞換気量増大:換気パターン改善 換気数減少1回換気量増大
④胸郭・肺コンプライアンス低下* 静コンプライアンス増大:肺・胸郭伸展性増大 深吸気運動胸郭ROM、ストレッチング
⑤気道抵抗増大** 気道抵抗減少:気道内径増大気流速度減少 口すぼめ呼吸
⑥換気仕事量(O2消費量)増大 換気仕事量減少:換気パターン改善副呼吸筋活動減少 適正な換気数と1回換気量のくみ合せ呼気-弛緩呼吸

リラクセーション

⑦呼吸筋筋力・耐久力低下 呼吸筋耐久力増大:呼吸筋(特に吸気筋)腹筋 耐久力増強運動
⑧呼吸筋疲労 換気効率改善:横隔膜位置の改善腹筋の作用の増大

換気パターン改善

呼吸筋の休息:換気運動の介助

胸郭下部をバンド固定腹筋強化

“腹式呼吸”(腹筋を使用した換気運動)

適正な換気数と1回換気量の組合せ

上部胸式呼吸中心から横隔膜呼吸中心へ

徒手胸部圧迫法(短時間)

機械換気(IPPV、長時間)

⑨代償運動 過度な代償運動減少:呼吸困難感の”閾値”の上昇 呼吸困難の計画的経験
⑩運動制限、生活障害(呼吸不全) 全身運動能力増大:O2消費系(筋)の発達ADL改善 筋耐久力増強運動(含O2吸入下運動)ADLスキルのトレーニング
⑪2次的身体機能低下 廃用症候群予防:換気機能維持姿勢異常、筋萎縮、拘縮予防、”体力”維持など 呼吸訓練、胸郭ROMなど全身運動、レクリエーションなど

*拘束性換気障害の病態 **閉塞性換気障害の病態

 

ギラン・バレー症候群(拘束性換気障害)の例

問題点 プログラム
①ギラン・バレー症候群による呼吸筋完全麻痺 呼吸練習(呼吸筋機能回復練習)
②①による拘束性換気障害 胸郭拡張介助呼吸
③肺内分泌物の貯留 胸郭拡張介助呼吸体位排痰法及び咳嗽介助
④四肢体幹筋完全麻痺 四肢体幹筋の関節運動(筋収縮の促通)
⑤自発呼吸困難
⑥咳嗽困難

短期ゴール:自発呼吸の促進、肺合併症の予防

長期ゴール:人工呼吸器からの離脱、呼吸機能の正常化


気管支喘息(閉塞性換気障害)の例

問題点 プログラム
①         喘息発作 発作時の対処方法の指導、リラクセーション及び休息肢位の指導、鍛錬療法、運動誘発喘息予防のためのウォームアップ、クーリングダウンの療法、運動誘発喘息予防のためのウォームアップ、クーリングダウンの実施、適切な運動処方と運動後の疲労及び発作の追跡、発作誘引の除去及び環境整備についての教育
②         換気機能の低下 呼吸訓練(横隔膜呼吸の促通):副呼吸筋優位の呼吸パターンの抑制、重錘バンド1kgを両肩甲帯に載せ肩甲帯挙上を抑制する。徒手によるフィードバック、姿勢鏡による視覚的フィードバック、吸気筋トレーニング、ファーラー肢位にて腹部に重錘を負荷
③         息切れ
④         呼吸筋力低下
⑤         痰の喀出困難 タイミングの良い咳の指導、ハフィングの指導、体位排痰法、水分補給の指導
⑥         胸郭コンプライアンスの低下⑦         頸部副呼吸筋群の過緊張 セラピストによる胸郭のモビライゼーション、呼吸体操(喘息体操)、棒体操による胸郭の伸張、頸部副呼吸筋群の伸張
⑦頸部副呼吸筋群の過緊張 ADL各場面における横隔膜呼吸の実践、休息肢位の設定、身体活動及び運動強度に合わせたインターバルの設定、整容動作時は椅子を活用
⑧ADL全般の遂行能力の低下及び所要時間の延長 歩調に合わせた吸気呼気の指導(1~2歩で吸気、3~7歩で呼気の延長を行いながらの歩行)、階段昇降訓練(昇り-2足1段 下り-1足1段で横隔膜呼吸と口すぼめ呼吸を合わせて行う)。
⑨歩行移動能力の低下及び生活圏の縮小
⑩その他:睡眠時間の短縮、喘息発作に対する強い不安感、家族の疾患に対する認識不足 疾患そのものに対しての理解を深める。家族に対する啓発及び教育、外泊訓練を頻回に実施し病院から家庭への復帰を円滑に進める。生活圏拡大へ動機づけを援助する。精神的支援(精神的安堵感を与える)

短期ゴール:横隔膜呼吸低下度の改善(Ⅴ→Ⅱ)。歩行距離の拡大、身体活動レベルに対応したインターバルの習

得。整容動作の自立と所要時間の短縮。呼吸困難感の軽減。

長期ゴール:発作時の対処方法の習得。自己管理能力の向上、入院前の生活圏への到達及び拡大。環境整

備の理解と実施。

 

4.ゴール設定

項目 目標値
1秒率 70%以上
%肺活量 80%以上
PaO2 60Torr以上
PaCO2 45Torr以下
A-aDO2 15Torr以下
SaO2 90%以上

1)患者に社会復帰の意欲を持たせる。

2)我々医療者側も患者を社会へ帰す努力(呼吸リハビリテーション)をする。

3)退院後の地域社会のフォローアップ(保健所、デイケアなど)を行う。

 

5.リスク管理

拘束性換気障害

①高齢、②既存の肺合併症、③了解不良、④難聴、⑤心疾患、⑥DM、⑦底運動量、⑧深呼吸不可能、⑨咳ができない、

⑩低換気、⑪過換気、⑫奇異呼吸、⑬分泌物貯留、⑭痛みによる呼吸抑制、咳嗽不全、ハッフィング不全、⑮バイタル、

⑯エアーリーク、⑰皮下気腫、⑱気胸、⑲高血圧、⑳腎不全、21長期臥床による不動、など

 

閉塞性換気障害

①無気肺、②気胸、③皮下気腫、④喀血、⑤気道感染、⑥突発性呼吸困難、⑦気管支喘息重積状態、

⑧慢性呼吸不全の急性増悪、⑨動脈瘤破裂、⑩脳出血、⑪眼底出血、⑫急性右心不全、⑬失神、⑭骨折(特に肋骨)等。

 

体位排痰法の禁忌

① 治療されていない緊張性気胸(chest tubeが挿入されていれば適応)

② 喀血

③ 心臓血管系の障害(特に不安定な症例)

④ 下記のような術後

a.脳神経外科:肢位が髄内圧を亢進させる恐れ)

b.食道吻合術:胃液が縫合部に影響の恐れ

c. 肢位が制限されている整形外科患者

d.その他

⑤ 主要血管系の循環量の減少、または動脈瘤

⑥ 肺塞栓症・肺浮腫・心不全によるうっ血

⑦ 多量の胸膜腔内への浸出液

 

6.ハプログラム・PTプログラム

基本的なフローチャートを左図に示す。

臨床的にはこのようなフローチャートは存在せず、手技のうち、何が患者に最優先されるべきかを考えて治療の優先順位を決めることが要求される。

<治療を始めるに当って考慮すること>

1)患者の一番の問題点は

2)理学療法によって改善できることか

3)患者の理学療法に対する耐久力は

4)患者の耐え得る肢位は

5)痛みの部位は

6)           その他

以下に5項目について詳しく述べる。

  1. 1.                           リラクセーション訓練

1)目的:緊張のレベルを判定し、過緊張を取り除くことである。

①精神的・肉体的に緊張を取り除く

②疼痛の軽減

③胸郭の可動性増大

④呼吸補助筋の緊張の緩解

2)方法

呼吸介助法

a)背臥位下部胸郭介助法

下部胸郭の肋骨弓の1~2横指上方に手を当て呼気時に胸郭を下方または内下方に圧迫し呼気を援助する。最初の2~3呼吸で患者の呼吸リズムと胸郭運動を把握し、患者の呼吸リズムが理解できれば軽く呼気を圧迫する。圧迫の強さは患者が心地よい程度とし、圧迫の方法は呼気時に自分の体重をのせていく気持ちで行う。

 

b)背臥位上部胸郭介助法

両手を大きく開いて鎖骨の直下に、なおかつ両母指が胸骨を覆うように上胸部置く。2~3呼吸で患者の呼吸リズムと胸郭運動を把握し、呼気に胸郭を呼気運動の方向(前後)へ軽く圧迫する。

適応は、息切れがあり上部胸郭の可動性が低下した患者・上腹部術後などで横隔膜運動を抑制して呼吸運動の介助が必要な患者である。

c)背臥位一側胸郭介助法

一方の手を上部胸郭に、他方を下部」胸郭に置く。上部と下部の胸郭介助法を同時に行う。

手の置き方は、上部・下部胸郭介助法と同様で、上部胸郭の手は前後方向に、下部胸郭の手は内下方に圧迫する。適応は、肺結核後遺症・肺切除術術後で健側肺の換気を強調させたい患者である。

 

d)側臥位胸郭介助法

患者を側臥位にして、腋窩中線の下部胸郭に手をあて呼吸を介助する。外科術後や無気肺などの肺合併症に用いられる。

e)座位下部胸郭介助法

呼吸困難が増強すれば、患者は起座呼吸となる。この時患者の後方から下部胸郭を腋窩中線上で把持し、呼気時に介助する。

f)座位上部胸郭介助法

利き手で患者の胸骨柄に母指球を置き、中指と薬指で胸骨を支持する。呼気時に利き手で胸骨を内下方に圧迫し、他の手は脊柱を引き上げるように呼気運動を助ける。


  3)リラクセーションのための生活の知恵

a)リラクセーションタイムをつくる

b)ストレスに早く気付く

c)計画表を作り[ゆとり]を持たせる

d)ゆっくりとした動作を心がける

 

  1. 2.気道のクリーニング

気道分泌物(痰)が何らかの原因によって自力で喀出出来なくなると、気道を閉鎖し呼吸仕事率を増加させ息切れを引き起こす。また慢性呼吸不全の急性憎悪は、気道分泌物の貯蓄による感染症が原因であることが多い。これらを予防するために気道のクリーニングを行う。

1)目的:身体の自己浄化作用の促進

2)方法

a)体位排痰法

重力を利用することによって、肺から分泌物を取り除く方法である。この方法を効果的に行うには、患者に区域気管支の位置が垂直位になるよう排痰肢位をとらせることが重要である。


  (1)痰の移動に関する因子

①痰の性状

②気管支の繊毛運動

③重力(体位)

④咳(呼気流速)

(2)原則

①痰の喀出を容易にするためには、前準備(エアゾール法・超音波ネブライザー)が大切である。

②気管支をできる限り垂直に近づけて、重力を利用して排痰する。

③軽打・振動による機械的刺激を加えて痰の移動を促通する。

④咳によって痰を気道から排除する。

(3)体位排痰法の適応

①分泌物の蓄積を防ぐために(予防)

②分泌物を取り除くために(治療)

③肺炎の患者:抗生物質が最も重要だが、排痰法は速やかに肺の膠着を予防する効果がある。

④術前、術後の分泌物のコントロール

⑤薬物の多量投与、脳腫瘍、昏睡のどによる神経鈍麻の患者

⑥全身状態の低下、呑み込み、咳機構の協調性障害の患者

⑦人工呼吸器下での人工気道の患者

(4)治療

①適切な排痰肢位(多少の修正可) をとらせる

②肢位は耐えられるなら少なくとも5~10分維持する。いろいろの肢位をとる必要があっても総治療治間は20~30分に抑える。1日1回の治療より数回に分けて実施したほうがよい。

③排痰法は特に禁忌でない場合を除いて、軽打法・振動法・呼吸訓練が含まれる。

④数回の深呼吸をした後でゆっくりと座位をとり咳をする。

⑤理学療法士は排痰中の患者から離れてはいけない。

<注>必要のときはいつでも速やかにhead upの肢位やflatの肢位がとれるようにする。

⑥治療肢位とその効果を詳細に記録する。

(7)治療の評価

①聴診

②触診

③問診

④患者の主観

⑤vital sign

⑥胸部X線写真

⑦患者の外観

⑧医師の事実認定

 

(8)治療の終了及び中止

<治療終了・中止の判定基準>

①患者が24~48時間平熱である。

②肺の聴診によって正常で清明な呼吸音が聞かれる

③胸部X線写真の改善

④歩行 少なくとも椅子からの立ち上がりができる

⑤患者が深呼吸・効果的な咳・ホームプログラムをマスターしたとき


 b)軽打法と振動法

これらは分泌物に運動性を与え体位排痰法の効果を高め、気道に振動刺激を与えることで痰の流れを早くし短時間で排痰効果をあげることが出来る。振動の与え方により軽打法と振動法に分けられる。

(1)軽打法

カップ状にした手を軽打する部位に置き、肩、肘、特に手関節の力を抜いて皮膚に手が直角にあたるように軽打する。

(2)振動法

手やマッサージ器で行い、胸壁を断続的に圧迫する。胸壁を徒手で圧迫する場合は、吸気を妨げないように呼気時のみに行う。(マッサージ器の場合は吸気時も可)

(3)蓄痰部位と軽打・振動部位

聴診器によって蓄痰が疑われる部位が決まれば、そこに軽打や振動刺激を与える。

肺は体表前面からみると、鎖骨から第3肋骨までが上葉、第3肋骨から第6肋骨までが右では中葉、左では上葉舌区、第6肋骨から下方が下葉である。鎖骨の下に両手を置けば、鎖骨に近い手が上葉、次の手が中葉にと肺の各葉が手掌ひとつに相当する。また後面からみると、肩甲骨内側上縁と腋窩を結んだ線から上方が上葉後区、肩甲棘の下手掌ひとつ分が上-下葉区に、次の手掌が下葉後肺低区に相当する。蓄痰部位が上述の部位で確認できれば、その部位に軽打(振動)を与えればよい。

 

c)ハッフイング

吸気をゆっくりと、呼気を強く速く行い、これを3~4回繰り返し痰に可動性を与え咯出しやすくする。

 

d)催咳法

上気道から痰を出す方法で、自発呼吸が可能な患者に用いる。

 

e)自己吸引法

 

  <手順>

①吸引の前に手洗いをする。

②鏡の前に立ち、気管ボタンを確認しキャップを外す。

③2~3回ハフイングを行い痰を上気道へ押し上げる。

④指をアルコール綿で消毒する

⑤カテーテルの先端部を同様にアルコール綿で消毒する。

⑥鏡をみながら上述の吸引手技で痰を吸引する。

 

 f)バッギング

自発呼吸のない、又は弱い患者の動脈血の酸素化を改善させるために行い、吸引の前後や機械呼吸が出来ないときに使用する。Bagに酸素をセットし、トラキアキューブを取り付ける。患者の換気量を保つためにリズミカルにbagを絞る。呼気は患者が自動的に行うのを待つ。

 

g)自己排痰法

吸入療法から聴診、体位排痰法、軽打法・振動法、ハッフイング、催咳法までを患者自身で行う方法である。

 

①排痰を始める20分前に気管支拡張剤を吸入する。

②超音波ネブライザーで気道の加湿をする。

③聴診器で痰の有無及び蓄痰部位を確認する。

④痰のある部位に応じて排痰の姿勢をとる。

⑤痰のある場所にバスタオルを4枚折で重ねる。

⑥マッサージ器を弱にあわせ、約1分間あてる。

⑦下部胸郭に手を置きハッフイングをする。

⑧1~2回の咳をして痰を咯出する。

⑨痰のある部位に1~8を繰り返す。

⑩聴診して痰のないことを確認する

⑪痰の量、色、粘性を記録する。

 

  1. 3.呼吸訓練

呼吸は人が生きていくために不可欠な機能である。その呼吸運動をつかさどる呼吸筋は、四肢筋と同様に訓練によって筋力や持久力を改善することができる。

1)目的

 

①喚起の改善

②肺・胸郭拡張不全の改善

③呼吸仕事率の改善

④効果的な咳の強化

⑤呼吸筋の強化、協調性・効率の改善

⑥横隔膜呼吸への矯正

⑦胸郭可動性の維持増大

⑧緊張の緩和

 

2)方法

a)口すぼめ呼吸

吸気を鼻で行い、呼気は口をすぼめて抵抗を加えゆっくりと長く呼出。

①吸気を通じて唇を軽く閉じてゆっくりと呼出する。

②吸気は鼻で行う。

③吸気:呼気の比は1:2以上で行い、徐々に吸気を長くして1:5を目標。

④徐々に深呼吸訓練を行いながらこの呼吸法を行う。

b)腹式呼吸

横隔膜の動きを大きくし、胸鎖乳突筋、斜角筋などの呼吸補助筋の活動を減じる。この呼吸は臥位、座位、立位、歩行、階段及び坂道の昇降などすべてのADLで使用される。

①背臥位

股、膝関節を軽度屈曲した安楽肢位をとらせる。患者の利き手を腹部に、他方の手を上胸部にのせ、その上に理学療法士の手を同様に重ねる。口すぼめ呼吸で、呼気と吸気時の手の動きに意識を集中させ、手の動きを感じ取れば吸気時に腹部を持ち上げるように指示する。この時理学療法士は呼気の終わりに徒手による振動や横隔膜の急速伸張を与え筋の収縮を促通する。

 

②座位

足底が着くベットや椅子を選択し、患者に脊柱を伸展した前傾座位をとらせる。片手は上体を支持するために膝外側部に置き、他方の手を腹部に置く。理学療法士の手は、患者の腹部と頚部に置く。

腹部の手で横隔膜の収縮を、頚部の手で斜角筋の収縮を触診する。

③立位

片手でベットの枠や手すりなどを支持し、上体を支えた前傾位をとる。理学療法士も患者と一緒に座位と同じ方法で腹式呼吸を指導する。

④平地歩行
 呼吸パターンと歩行ステップを協調させる訓練で長く歩いても息切れを生じない歩行スピードを見つける。一般的に閉塞性肺疾患は、吸気と呼気の割合を1:2で歩かせる。

⑤階段や急な坂道での歩行

昇りは、呼気時のみステップを進め、吸気時は足を止めて休む。降りは、平地歩行と同様に吸気時も呼気時も足を進める。

3)適応

①胸郭及び腹部の疼痛による呼吸障害

②神経過敏症・不安による呼吸障害

③胸部及び腹部の術前・術後

④気管支のスパズム

⑤気道の閉塞

⑥肺・胸部拡張不全

⑦筋骨格系の異常よる拘束、肥満、妊娠、胃のガスの量増加、肺の繊維化など

⑧中枢神経系の欠損又は障害

⑨一次性、二次性肺疾患

⑩重症筋無力症、ギランバレー症候群などの呼吸筋筋力の低下

⑪肺塞栓症

⑫肺の浮腫、肺性心

⑬喚起障害

⑭呼吸障害による代謝不全

⑮人工呼吸管理下の患者

 

4)効果

①1回換気量の増加

②呼吸数の減少

③分時換気量の減少

④呼吸仕事率の増加

⑤動脈血酸素分圧の上昇

⑥動脈血二酸化酸素分圧の低下

 

 

  1. 運動療法

身体運動機能の適応を高めることによる息切れの軽減、運動耐容能の改善の効果がある。

1)開始の条件

①呼吸困難がないこと

②十分に排痰が行われていること

③腹式呼吸が立位まで可能なこと

④十分なエネルギー所要量が確保されていること

2)原則

①動作中はすべて口すぼめ呼吸と腹式呼吸をする。

②動作はすべて呼気で行う。

③目的筋は可能な限り単独で鍛える。

④上記の方法でも呼吸困難を感じる患者には、各動作の間に1~2回の腹式呼吸を取り入れる。

⑤酸素療法適応患者では、運動時の酸素流量(安静時の1.5~2倍)を投与する。

⑥呼吸困難感の強い日は、運動量を半分にするか訓練を中止する。

3)注意事項

(1)自覚症による運動の中止基準

①胸痛

②極度の息切れ

③急激な疲労

④頭のふらつきやめまい

⑤吐き気

(2)運動によって起こる正常な反応

①適度な疲労感

②適度な息切れ

③適度な発汗

④適度な筋肉痛

4)運動療法の実際

(1)歩行訓練

歩行時の腹式呼吸を利用して歩かせる。患者は万歩計を付け、訓練前の1週間平均値から始め、500歩/週ずつ増加させる。目標は5000~6000歩/日である。

(2)トレッドミル訓練

運動負荷をトレッドミルで行う。負荷量は、距離と傾斜角度で与える。速度は、歩行訓練で獲得した速度を利用して行う。運動負荷量は、上述の歩行速度で、心拍数120以下、不整脈などの他覚症、及び息切れなどの自覚症を指標に最大歩行距離を求め、その60~80%でスタートする。1週間ごとに50~100mずつ負荷を増し、1,000m以上は傾斜角度を増加させる。

(3)呼吸体操

①腹筋、腹部周囲筋の筋力増強訓練

②上肢の筋力増強訓練

③下肢の筋力増強訓練

④胸郭モビライゼーション

5)運動療法の効果

①最大酸素摂取量の増加=運動能力改善

②運動負荷に対する耐久性の改善

③骨格筋のミトコンドリア密度の増大

④ミオグロビンレベルの増加また、筋毛細血管の密度の増加。

  1. ADL訓練

①目標:動作中いかに息切れを起こさせないか、という方法を指導すること。

(入浴動作、更衣動作の自立が低いが困難性よりも息切れによって障害されているため。)

②目的:(1)動作と呼吸パターンを協調させ、息切れをコントロールできる動作法を身につける。

(2)息切れを計画的に経験させ呼吸困難感になれさせる。

(3)効率の良い動作法を身につける。

(4)患者の自信、意欲を引き出す。

③方法:(1)動作中は腹式呼吸と口すぼめ呼吸を行う

(2)呼気で動作をする

(3)ゆっくりと動作をする

(4)可能な限り手に物を持たない。

(5)ADLの道具を工夫する。

(6)患者にできるADLとできないADLを把握させ、できないADLの介助法を指導する。

④効果:(1)単位時間あたりの仕事量を減らせる。

(2)息切れの徴候や患者自身の限界を知り、ADLに活かすことができる。

(3)実際の生活場面で息切れをコントロールすることが可能となる。

(4)ADLが拡大する。

 

7.患者指導・生活指導

目的:患者自身の自己管理能力を高め社会復帰を果たすために、

① 患者自身を可能な限り治療に参加させる。

② 自分の病気は自分で治すという心構えを持つ。

③ 病気を理解し病気と仲良く暮らす方法を身に付ける。

 

病状の説明

1)                    病名、病態、以下の注意点

薬物療法

1)吸入気管支拡張剤の意義、使い方2)                     経口気管支拡張剤の意義、使い方

3)                     感染の予防

しっかりと把握させる

 

冬季前のインフルエンザワクチンの投与、予防投薬

理学療法

1)                     口すぼめ呼吸2)                     呼吸訓練(腹式呼吸)

3)                     体位排痰法

日常生活の指導

1)                     気道刺激除去

2)                     上気道の衛生

3)                     心不全の防止、過労、肥満の防止

4)                     急性増悪の早期自己チェック

5)                     食事について

6)                     水分摂取

7)                     自分でできる呼吸理学療法

8)                     主治医や医療機関との連絡方法

9)                     福祉行政の有効活用

10)                日常生活動作の指導(性生活まで含めて)

職場、住居、外出時の汚染、温度・湿度の調節、特に禁煙特に慢性鼻・咽頭炎の処置

 

咳・痰の増加、色の変化、息切れ増強、チアノーゼ

減塩食、カロリー制限

 

外来のみの治療では効果少。自宅でもできる

 


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