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(* ̄∇ ̄*)失調症の話


運動失調とは

 

失調の概念

人が正常な動きをするのに必要な因子は筋力と関節可動域だけでは不十分であり、運動の協調が必要である。運動失調(ataxia)は、運動の協調性が障害された状態で、麻痺とは異なり運動の円滑さの障害である。

 

Garcinは「運動失とは協調性運動障害の1つの現れであり、明らかな筋力低下は伴わない」としている。

運動失調の定義

第一に随意運動が上手く出来ず、運動方向とか程度が変わってしまう。

第二に体位とか姿勢の異常で、それらを正常に保持するのに必要な随意的なあるいは反射的な筋の収縮が損なわれている。

 

協調性(coordination)

ある動作を行う場合には、直接その運動に必要な筋が収縮するだけではなく、体幹と四肢の協調性、動筋と拮抗筋の協調性が必要である。

この協調性を得るためには運動に関係する求心性入力の統合が必要である。求心性入力としては位置覚・運動覚などの固有感覚系と頭位の変化や加速度を感受している前庭・迷路系が重要でその統合には小脳が大きな役割を果たしている。


協調運動障害(incoordination)

①運動の方向と程度の問題

四肢の失調:運動の大きさや方向の測定障害

運動の停止の遅れ

運動の持続性と円滑性の障害

共同運動の障害

②体位や姿勢の異常

寝返りなどの動作時の異常

座位・立位時の姿勢の異常

歩行の異常

 

☆運動失調の分類

①深部感覚性失調症(脊髄性)

②小脳性失調症

③前庭・迷路性失調症(迷路性)

④大脳性失調症

 

☆各運動失調の特徴

深部感覚性(脊髄性) 小脳性 前庭・迷路性
体幹失調 2+ 2+ 2+
四肢失調 +(下肢に強い) 2+
起立障害 2+
ロンベルグ徴候 2+(閉眼直後) -~± 2+(閉眼後次第に増強)
歩行障害 床を見てドスンドスンと歩く 歩幅広く動揺性歩行 ジグザグ歩行
眼振 +(水平性) 2+(回転性、水平性)
言語障害 2+
振戦 粗大振戦 企図振戦
腱反射 消失 軽度低下

 

運動失調における障害

 

病態:小脳における運動制御の異常

位置覚・運動覚のどの固有感覚の求心性入力の障害

頭位の変化や加速度を感受している前庭・迷路系の求心性入力の障害

 

運動の障害:測定異常・企図振戦、正常な共同運動の障害、平衡障害

 

動作障害:歩容の異常

立ち上がり時の不安定さ

立位バランスの低下

 

評価項目

①立位、座位および歩行状態の観察

②言語

③眼振

④四肢の運動失調症

⑤筋緊張低下症:Pendulousnessの検査→患者の胴体に手をあてて、その上体を左右にゆさぶる。筋緊張の低下している側の上肢は健側より大きく振れて、体幹より遠ざかる。

⑥Postural Fixationの異常:腕を前方に水平に伸展させ、目を閉じさせると、障害側の上肢はわずかに下降し、振戦を示してくる。

⑦スチュアート・ホームズ反跳現象:患者の上肢を肘関節で軽く屈曲させ、検者はその手首を握る。患者に腕を自分の胸部に向かって力一杯引くように命じ、検者はこれを引っ張って抵抗を加える。患者が力一杯引っ張っている間に手を放す。正常では、手で自分の胸をうつことはないが、小脳障害では、強く胸をうってしまう。

⑧指示試験

a)バラニー支持試験

b)腕偏倚試験

 

⑨書字試験

字を書かせるとだんだん大きくなる。これを大字症という。(パーキンソン病ではだんだんと小さくなる小字症)

  • 立位姿勢の特徴

・両足を広げ、両腕を外転して平衡を保とうとしている。

・肩甲帯を挙上、体幹、両下肢を伸転位に固定するような動作で代償を図る。

・一側性であれば、健側から押すと障害側に倒れ易い。

  • 座位の特徴

・運動失調があると両足を開いて椅子に手をついている。

・体幹協調機能ステージの測定肢位をとらせて頭部・体幹の動揺を観察する。

 

  • 歩行の特徴

・支持基底面を大きくとる。

・目を閉じて直線上を歩かせると障害側に偏るか転倒する。

・歩行中に急に回れ右を命じると、いかにもぎこちなく時間がかかる。

・歩行中の手の振り方も一定性を欠く。

・椅子の周りを歩かせると、障害側周りでは椅子に近づき、健側周りでは遠ざかる。

 

  • 言語

発語は爆発性explosiveになったり、不明瞭または緩慢(slurred or slowness)になったりし、しかもとぎれとぎれである。調子は急に変わり、音節は不明瞭で、酔っ払いのようである。このような話し方を運動失語性発語、不明瞭発語、断綴性発語という。

 

  • 四肢の運動失調「症」

四肢についての一般試験

☆鼻指鼻試験

患者の示指を自分の鼻先に当てさせ,次にその指で検者の指先と,患者の鼻先を交互にさわるように命ずる.検者の指先は,患者の示指の先端が肘を伸ばしてちょうど届くくらいのところには,1回ごとに指の位置を移動させることが大切である.また患者に,もっと速く,つぎはゆっくりなどと,その速度を変えるように指示し,これに応じられるかどうかをみるとよい.示指の動きかた,振戦の出現,鼻先に正確に達するかどうかで,dysmetria,aSynergy,tremorの有無が判定できる.指の振戦が目的物に近づくほど著明になるのを企図振戦intentiontremorとよび,小脳性振戦の特徴とされている.

☆指鼻試験

これは鼻指試験と前後して行う.腕を伸ばして,やや外転位をとらせ,そこから示指で自分の鼻のあたまをさわるように命ずる.最初眼を開いたまま行わせ,つぎに眼を閉じさせて検査する.開眼時には,運動障害がもっと明らかになることがある.運動が円滑でない,ぎこちない,振戦があるなどに気をつけ,いろいろな位置から,速度を変えて行わせるとよい.本法は仰臥位でも行える.

☆膝打ち試験

患者を座らせ,自分の膝を一側ずつ,手掌および手背で交互に素早く叩かせる.両側同時に行わせる方法もある.この場合,最初ゆっくりと,次第に速度を増して,できるだけ速く行わせる.正常では,迅速に,規則正しく行うことができ,同じ場所を叩く.障害があれば動作はのろく,不規則で,叩く場所も一定しない.

☆足指手指試験

患者を仰臥させ,足の母址を検者の示指につけるように命ずる.検者の示指は,患者が膝をまげて到達できるような位置におくことが必要である.つぎに検者は示指を,素早く15~45cmぐらい動かして,患者に足の母址でこれを追うように命ずる.小脳障害では,うまく追うことができない.

☆踵膝試験

腫膝試験は仰臥位で行い,なるべく眼をつぶらせた方がよい.一方のかかとを他側の膝につけ,またもとにもどす運動をくり返させる.また一方のかかとを他側の膝にのせ,さらに母屋を天井に向けるようにして,かかとを向こう脛に洽って真っ直ぐに下降させ,足背に達したら,もとの位置にもどさせる.この動作をくり返させるのをheel-shin testというが,一般に腫膝試験に含まれている.かかとが足背まで下降したら再び膝まで,向こう脛の上を上昇させ,これをくり返す方法もある.小脳障害では,かかとはうまく膝にのらず,向こう脛に洽って真っ直ぐにまた円滑に動かすことができない.

 

☆向こう脛叩打試験

鍾膝試験は理解の悪い患者では十分に行いえない.その際にはこの試験を行う.これは一側の足を反対側の向こう脛の上大体10cmのところにあげ,足を十分に背屈させ,足屋を天井に向くようにさせて,かかとで反対側の向こう脛の膝から5cmぐらい下を叩かせる.毎秒1~2回の速度で7~8回軽く叩かせ,一定のところが叩けなければ運動失調と判定する.

反復拮抗運動不能「症」

☆手回内・回外検査

上肢を前方にゆったり挙上させ手掌を上に向けさせる.手を最大速度で,できるだけ続けて回内・回外させる.また一方の手掌を上向け,それを他方の手掌と手背で交互にできるだけ速やかに,続けて叩かせるのもよい方法である.小脳障害があると,正常よりものろく不規則である.注意すべき点としては,正常でも利き腕,たとえば右利きでは右手の運動の方が左手よりも速い.したがって左側のわずかな緩慢さはあまり重視しない方がよい.

☆Finger Wiggle

手を机の上におき,ピアニストやタイピストが行うような要領で指を母指から順に素早く叩く運動を反復させる.正常でも利き腕の運動が速やかである.小脳障害では,指の動きは異常にゆっくりになる.

☆Foot Pat

かかとが具合よく床につくよう腰かけさせる.これには高さを加減できる椅子を用いるとよい.かかとは床にうけたまま,足首を屈伸させて,足底でできるだけ遠く床を叩くように命ずる.小脳障害では,ゆっくりしか行えない.仰臥位のときには,同じように足首を屈伸させて,検者の手掌を叩くように命ずる.

☆Tongue Wiggle

舌を提出させて、左右に動かせる。これが上手く出来ない人では、舌を出したり、引っ込めたりさせる。小脳障害ではこの運動が障害される。

測定異常

☆過回内試験

両側手掌を上に向けて両腕を水平に掌上させ,つぎに手を回内させて下向きにさせると,障害側の手は回りすぎて障害側の母指は健側のそれより下方に行く.

☆Arm Stopping Test

これには示指一耳試験を行うとよい.仰臥位で,腕を伸ばし,示指を耳にあてるように命ずる.小脳疾患では前腕をまげるところまではかなり正確にいくが,それから先,耳にあてるまでがうまくできず,指は耳を通りこしてhypermetriaや,それより前に停止してhypometriaを示す.

☆線引き試験

1枚の紙の上に約10cmはなして2本の平行な縦線を引き,患者にこの縦線間に直交するような横線を左から右に引かせる),小脳障害では右側の縦線のところで止めることができずhypermetriaを呈したり,その手前で止まってしまってhypometriaとなることが多い.

☆模倣現象

これは閉眼させて行う.上肢では両方を水平に前方挙上させておいて,一個の腕の位置を受動的にかえ,他側をこれと同じ位置におくように命ずる.下肢では,一個を半屈曲させ,他側をこれと同じ屈曲位におくように命ずる.これをkneebending testという.小脳障害では模倣ができない.この検査にはdysmetria以外の因子も関係しており,深部感覚の障害や,運動麻棟があるときには,陽性所見であってもdysmetriaとしての意味はない.

☆コップをもたせる方法

健側の右手でコップをとるしぐさと,障害側の左手のしぐさが異なる.障害側の手は,指を過度に開き,手を過度に伸展し,コップより上すぎる空間にもっていってから,コップをつかむ

運動分解

小脳性運動失調では、運動の分解が起こる。例えば上肢を伸展させ、示指で同側の耳を真っ直ぐにさすように命じる。この際指先が3角形の一辺を真っ直ぐいかず、2辺をたどるようになる。

協同収縮不能

日常の行為は一般に単一な運動ではなく、いくつかの運動が組み合わさったものである。それには一定の順序、調和が保たれていることが必要で、これを協同収縮があるといい、この順序、調和が障害されたり、消失したのを協同収縮異常という。

 

時間測定障害

動作を始めようとするとき、または止めようとするときに、正常人よりも時間的に遅れることをいう。運動興奮の遅れによるものである。

 

プログラム例

①重錘負荷運動

四肢・体幹の各部位の相互関係、運動の方向性や速度、必要な筋出力などに関する固有感覚を刺激し、運動コントロールを促通するために用いる。運動の動揺性に効果があると一般的にはいわれている。

上肢では300~500gの重錘バンドを前腕末梢に、下肢では500g~1kg程度のものを下肢末梢に固定して運動を行わせるのが一般的である。しかし、下肢では1.5kg程度のものを骨盤帯に取り付けた方が歩行が安定する症例もいるので、試行してみる価値はある。

→軽量にて学習効果・重量での即時効果、筋活動の増大→筋紡錘より求心性入力増大、運動制御が行いやすい

運動の再学習がすすむ

重錘の物理的軌道による動作改善

 

②弾性緊迫帯

上肢・下肢の中枢関節の動きを制限しないように注意して弾性包帯を巻くと、運動時の動揺が減少する。四肢・体幹の動揺を抑えることと、偏移した重心の位置をより正常に近づけて潜在的な立ち直り反応を誘発することを目的としている。重錘と合わせて弾性緊迫帯を用いる方がよい。

体幹、四肢近位に装着

筋および関節周囲に装着することにより、筋紡錘、ゴルジ腱器官、体性感覚よりの求心性入力増大による運動制御機能の改善。

 

③PNF

四肢や体幹にリズミックスタビリゼーションがよく用いられる。基本的な姿勢で、長軸方向への圧迫も関節周囲筋の同時収縮を得やすい。座位で両肩から下方へ圧迫したり、立位で骨盤の両側から下肢に向かって圧迫を行う。歩行では運動方向への誘導と歩行速度を調節する目的で、骨盤帯に軽く徒手的な抵抗を加えると、比較的安定した歩行になりやすい。:等尺性収縮で筋力増強、安定性の向上、協調性の改善を図る。

パターンの実施順序

両側性対称性パターン→一側性パターン→両側性非対称パターン→相反性パターン

 

④Frenkel体操

もともと脊髄性運動失調症に対して視覚による代償制御を目的に考えられた方法であるが、小脳性失調症にも運動学習的な観点から利用されることも多い。基本的な原則は表の通りで、始めは視覚的情報を用いる。運動の原型にこだわる必要はなく、四肢失調の評価に用いられる種々の検査課題を利用すればよい。しかし、小脳失調症の運動学習は日常的な運動を通して行った方が方がよいので、理学療法士による運動療法の時間を割くよりも、自主的な練習課題として有効かもしれない。

 

⑤バランスと運動学習

 失調症は筋緊張が低く,立位での不安定さが著しい.失調症を伴った片麻痺では麻痺側での支持が極端に悪く,足関節をやや背屈位にすることで麻痺側下肢を棒状に伸展しようとする.しかし,所詮体重を支持できるような下肢にはなりえず,極端に非麻痺側に重心を偏位させてしまう.麻痺側足部はさらに外反背屈し,上肢も外転しバランスを保とうとする.わずかな外力が非麻痺側方向へ加われば麻痺側上肢下肢を大きく外転してバランスをとろうとするが耐えられず転倒してしまう。このような代償過程は裏を返せば学習課程であり,導入の方法によっては別の学習を期待できるかもしれない.

小脳の障害によるバランス障害では,周囲が支持しすぎないことが重要である.理学療法士によって骨盤をしっかり保持しすぎたり,立位や歩行で動くことのない平行棒や手すりを持って練習することはあまりバランス獲得にはつながらない.

しかし,突然バランスを崩す失調症の理学療法で,管理上の問題で転倒事故に結びついてはいけないので,介助量が多くなってしまうのは当然のことではある.そこで筆者は手を軽く伸ばして届く程度の高さにロープをしっかり張り,手すり代わりに用いている。

頭上に張ったロープを両手でしっかり持ってバランスを崩しながらも一人で立ことや,歩くことがバランス獲得につながりやすい.バランスの改善によってロープの張りを緩めていく.バランスとは形を覚えるのではなく,ロープのたわみによってぐらつき転びそうになる自己を必死で倒れないようにするなかで学習していくものである.小脳の障害ではフィードフォワード系の方がより障害を受けるが,上記のような合目的的な運動のなかで自己修正を繰り返すことによって,フィードフォワードおよびフィードバック系の学習が展開されることを期待する.

それとは別に,片麻痺であれば,麻痺側への荷重による適正な身体の使い方を丁寧に指導する.ややもすると立位への恐怖体験だけがなされ,どのような身体の使い方をしたらよいのか混乱してしまう傾向がある.症例によっては麻痺側の靴の内側部分が床につくほど股関節外転,足を外反していることがある.両足を肩幅程度に揃えて立ち,外側に突っ張った麻痺側下肢に少しずつ荷重を増やし,動きも取り入れる.理学療法士は患者が安心して行えるように,後方から体幹を包み込むような感じで保持介助し,自ら骨盤を中心に小さくゆっくり動くことで患者の動きも引き出していく.さらに実際的な場面で歩行やADLの練習を繰り返し行う.エレベーターの出入り口,人が急に飛び出してくるコーナーなど,環境によって簡単にバランスを崩してしまうので,具体的な場面を積極的に使ってバランスを獲得していく.

 

⑥その他

振動刺激、皮膚電気刺激、冷却など


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