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(^_^)セメントタイプとセメントレスタイプの話


( ̄▽ ̄)題名:セメントタイプとセメントレスタイプの話

1、はじめに

股関節整形疾患の人工骨頭置換術及び人工股関節全置換術において、セメントタイプとセメントレスタイプがあることに着目した。その上で、術後にどのように影響してくるのか、メリットとデメリットについて考え、また、術式による術後への影響も考えてみた。

 

2、概念・歴史

人工股関節の歴史は、Sir John Charnleyにより1962年に始められた。彼は以前から使用されていた金属性の人工骨頭にボーンセメントと超高密度ポリエチレンを組み合わせて臼蓋と骨頭の両方を人工物に置換した。当初は磨耗・破損などによる耐久性が懸念され、70歳以上に使用が限定されていたが、その後人工股関節の長期成績が明らかになるにつれて適応年齢は低下しつつあり、現在では両側羅患などの重症例には50歳代から使用されつつある。

Charnley方式による初期の人工股関節例の10年以上の長期成績では、3~25%に再手術が必要になっている。再手術の原因には、当初懸念されていた磨耗よりも人工物と骨との間のゆるみ(loosening)が大きな割合を占めることが明らかになってきた。大腿骨ステムのゆるみの発生率は10年位でプラトーになり、その後はあまり増加しないが臼蓋部のゆるみは時間依存性で10年以後はさらに発生率が増加するといわれている。

1980年代の後半に入り、金属加工技術の進歩により、セメントを使用せずに骨との固着性を目指す人工物が開発されてきた。非セメント使用の人工股関節では大腿骨のステムは骨髄腔になるべく近い形態にし、表面に網状や粒状の加工を施してある。凹凸部に骨が進入し人工物の固着性が強化されることを目指している。

 

3、人工股関節のハードウエア

A 金属と大腿骨ステムの形態

人工物の金属疲労による損傷は手術例の1~2%にみられる。緩みのある例では、損傷の頻度も増加する。打ち出し鍛造性の物から吹き付け鋳型性の物に変わり、金属としての強度は増加している。

大腿骨ステムの断面の形態は厚くて丸みを帯びた四角形が主流になりつつある。セメントは鋭的な圧迫には弱い。ステム内側は幅の広い形態が有利である。Muller型のように断面が扁平で内側が鋭になっているタイプは緩みやすいという報告もある。

 

B  セメント使用時のステムサイズの選択

charnley型のステムの多数使用例の報告では、ステム中央部での骨髄腔に占める割合が50%以下では緩みの発生率が増加するという観察がある。なるべく大きなステムの方がセメントの圧迫力にもなり良好な固定性が得られる。

 

4、適応

非感染性の股関節症で、疼痛が強度で可動域制限があり日常生活動作に障害をきたす状態で、比較的高齢者に適応がある。年齢の下限については整形外科医により異なるが、片側羅患では60歳以後というのがひとつの歯止めとして目安である。両側例では40~50歳台でも手術となる例がある。

 

◎人工骨頭置換術

(ア)大腿骨頭置換術

(イ)大腿骨頭壊死

(ウ)変形性股関節症

(エ)慢性関節リウマチ

 

◎人工股関節全置換術

①変形性股関節症

②慢性関節リウマチ

③Paget病

④強直股関節

⑤大腿骨頭壊死

⑥Gaucher病

⑦新鮮頚部内側骨折

 

4-1 大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部内側骨折

内側骨折は骨粗しょう症を有する高齢者に多発し、最も癒合し難い骨折として有名である。その理由は次の4項目に集約される。

①関節内骨折で、骨折部に外骨膜がないため骨膜性仮骨が形成されず、また滑液が骨折部に流入して骨癒合が障害される。

②大腿骨骨頭部への血行は、主として頚部側から供給されているので、骨折によりこの血行が絶たれると骨頭側は阻血状態となるので骨折治癒能は頚部側のみとなる。

③骨折線は垂直方向に走りやすいので、両骨片間にせん断力が作用する。したがって骨片は離開して骨癒合が阻害される。

④高齢者に多発するので、骨再生能力が低下している。

 

〔分類〕

内側骨折は股関節関節包内の骨折であるが、さらにその部位で骨頭下骨折とそれ以下、転子間までの中間部骨折に分けられる。また、遠位骨折と近位骨折の位置関係から外転骨折と内転骨折に分けられる。

X線上分類はPauwels分類とGarden分類が多く用いられている。Pauwelsの分類では骨折線が水平線となす角度によって、Ⅰ型(水平線と骨折線のなす角度が30°以下)、Ⅱ型(31°~69°)、Ⅲ型(70°以上)に分類する。骨折線が水平に近い例では骨折部に作用する圧迫力で癒合が得られやすく、垂直になるほど骨折部にせん断力が大きくなるため骨癒合に不利で偽関節が発生しやすい。

Garden分類では、骨折線の方向ではなく、骨折部における転位の程度をもとにしたstage分類である。

 

stageⅠ 不完全骨折(内側で骨性連続が残存しているもの)

stageⅡ 完全かん合骨折(軟部組織の連続性は残存している)

stageⅢ 完全骨折骨頭回転転Weitbrechtの支帯の連続性が残存している)

stageⅣ 完全骨折骨頭回転転位なし(すべての軟部組織の連続性が断たれたもの

 

〔受傷原因・症状〕

高齢者の骨ほど、骨粗しょう症が進んでいるので、小さな外力で折れやすい。病歴では、患者が転倒したために骨折したと記載されることが多いが、実際には歩行中、足先がひっかかって、下肢が急激に外旋しただけで骨折し、その結果転倒するものもかなり認められている。若年者では強い外力が作用しないと、この部の骨折は起こらない。

 

〔治療〕

年齢、性別、合併症など全身状態や社会的背景、および局所の所見、とくに骨折の程度などに配慮して治療法を決定する。基本的には若年者は高齢者と区別して考えなければならない。すなわち強い外力による若年者の骨折は、転位が大きく頚部被膜を含めた軟部組織の損傷の程度も重篤なため、骨癒合率が低く、骨壊死の発生率が高いが、一応前例骨接合をはかるべきである。

高齢者はすでに種々の全身的な合併症を有するものが多い。長期の臥床によって、痴呆をはじめとする中枢神経系、呼吸循環系、消化器系、尿路系の合併症が増悪して、寝たきりになり、ひいては致命的になることさえある。したがって高齢者骨折治療における目標は、骨癒合を求めるだけでなく、これらの合併症の発生・増悪を防止して1日も早く受傷前の生活レベルに戻すことである。このような観点から、早期離床を可能にするような治療法、すなわち骨接合術や一期的な人工骨頭置換術などの手術療法が推奨される。

 

□高齢者大腿骨頚部内側骨折に対する手術療法の選択

(1)疼痛と治療選択:X線像上、外転嵌合骨折(Garden分類のstageⅠあるいはⅡ)で、自発痛がほとんどなく、多少の他動運動によってもあまり疼痛が増強しないものは、転位をおこす心配が少ないので、4~6週の安静・臥床と軽い介達牽引のみで次第に車椅子、起立訓練を行ってよい。

Garden分類のstageⅡで自発痛があり、自動運動不能で、とくに外旋運動で疼痛が増強する場合には、骨接合術が適応になる。

(2)年齢と治療選択:骨折部の状態によるが、高齢者でも70歳くらいまではできるだけ骨接合術を、それ以上の年齢では一期的に人工骨頭置換術を選択する。

(3)合併症と治療選択:すでに重篤な合併症があり、麻酔や手術に耐えられない場合には、保存的に治療される。病的骨折(転位腫瘍などによる)で全身状態が許せば人工骨頭置換術を行って、一時的にでも早期に受傷前の活動性を獲得するようにする。

(4)骨折の状態:主にX線像によるGarden分類に基づいて治療法を選択する。

①Garden stageⅠ、Ⅱ:上記の疼痛の程度によって決定する。

②Garden stageⅢ:容易に整復可能なものは骨癒合が期待できるので骨接合術を、整復が困難なものは、観血的に整復し骨接合術を行うか、または人工骨頭置換術を行う。

③Garden stageⅣ:骨癒合はほとんど期待できないので、一般には人工骨頭置換術を行う。

(5)偽関節、骨頭壊死:若年者の偽関節は骨頭部にかかるせん断力を減少させて骨癒合を促進するために、Pauwelsの外反骨切り、骨移植術などが計画されるが、高齢者では人工骨頭置換術を行って早期社会復帰をはかるべきである。若年者で骨壊死が発生した場合、壊死範囲が小さく、陥没の程度が軽度であれば、骨切り術や支持骨柱移植術によって、陥没の進行と変形性股関節症の防止に努める。高齢者では余生を考えたうえで人工骨頭置換術を行う。すでに有痛性の著しい変形性股関節症に進展している場合には全人工関節置換術を行う。

多くの骨接合法があるが、大別すると、1本あるいは複数のねじや釘で固定する方法、骨頭内に打ち込んだ釘nailとプレートplateを組み合わせた方法、および骨頭の硬い皮質で支える方法に分けられる。

 

大腿骨頚部外側骨折

外側骨折は関節外で起こり、血流が豊富で海綿骨からなるため内側骨折に比べると骨折治癒の条件はよい。しかし、受けた外力は内側骨折より強いことが多く、また統計上で高年齢に傾くため、より全身的合併症が多く、老人骨折治癒の原則である早期離床、早期日常生活復帰を得るという点から、同様に治療の難しい骨折である。

〔分類〕

治療法を考える上で、Evansの分類が最もよく用いられている。X線前後像において内側骨皮質の損傷の程度、整復操作を加えた際の整復位保持の難易度によって分類する方法である。

 

Type1:骨折線は小転子付近から外側近位に向かう。

Group1:転位はなく内側皮質の破砕もない。

Group2:転位はあるが整復容易

Group3:転位、内側皮質の破砕あり、整復維持困難、内反変形を生じやすい

Group4:粉砕が高度で内反変形を生じやすい

Type2:骨折線は小転子付近から外側遠位に向かう

Group1:粉砕は軽度であるが、整復困難

Group2:粉砕高度で整復位の保持が困難

 

〔受傷原因、症状〕

普通は高齢者が転倒して起こる。また、大転子部の直接打撲による場合も多い。機能障害、肢位などは、内側骨折に似ているが、自発痛、圧痛はより外側にみられる。腫脹、皮下出血も大転子部から臀部に現れやすい。

 

〔治療〕

牽引療法:本骨折は海綿骨部の骨折なので、保存療法でも骨癒合が得られる。鋼線牽引法が行われ、鋼線は大腿骨顆上部に通し、10~15㎏で牽引する。上体は40°くらい半臥位に起こしておくほうがよい(semi―Fowler体位)。牽引期間は8~10週で、その後、徐々に後療法と機能訓練に移る。

手術療法:早期離床の目的で、最近は高齢者に対しては骨接合術が好まれる。統計上、手術を行ったほうが死亡率が低いとされている。

内固定法としては、種々の材料を用いて行われている。大腿骨のみを通すnailでは固定性が悪いので、大腿骨骨幹部に一部を固定する、nail plateの形のものがよく用いられている。あるいは、大腿骨内顆部の直上から経髄腔に固定するEnderピンや髄内釘も用いられる。固定性がよければ外固定は不用で、翌日から上体を起こし、漸次座位をとれるようにする。起立と歩行訓練は1~2週間で開始する。

 

〔合併症〕

外側骨折で骨頭部が壊死になることはまずない。偽関節も少ないが、骨折部における内反・後捻変形を生じやすい。

 

人工骨頭置換術の適応

人工骨頭置換術の手術侵襲は比較的小さく、出血も少ない。また早期離床、早期歩行ができるなど、多くの利点があるために適応が拡大される傾向がある。しかし成績不良例の対策が非常に困難であるから人工骨頭の使用にあたっては、その適応を厳守しなければならない。

人工骨頭置換術では、ゆるみ、上方移動、下方沈下などの後発合併症が発生することがあるために、再手術の可能性が予想される。それゆえ原則として余命が15年以内の高齢者に用いられる。一般的には65歳以上の患者が本手術の対象となる。特に高齢者で全身栄養が減退した例が対象となる。しかし病的骨折、パーキンソン病、片麻痺、精神病の患者や盲人などでは、早期離床を可能にし、術後の管理を容易にするために、65歳以下の患者でも人工骨頭がもちいられる。

適応患者は大腿骨骨頭の患者で、寛骨臼に病変のない患者であり、大腿骨頚部内側骨折、頚部外側粉砕骨折、特発性骨頭壊死および腫瘍が主なる疾患である。慢性関節リウマチや変形性股関節症では寛骨臼に病変が存するから本来の適応症にはならない。これらの疾患は全人工股関節置換術の適応例である。

 

4-2 変形性股関節障害の手術の適応

①変形性股関節症では50歳以下の場合は関節温存手術が、60歳以上は人工関節置換術が第一選択である。

②関節温存手術としては寛骨臼回転骨切り術(図1)、chiari骨盤骨切り術(図Ⅱ)、大腿骨外反伸展骨切り術(図3)などがある。骨切術のリハビリテーションは骨癒合状態を観察しながら行う。一般的に人工関節よりも長期間のリハビリテーションが必要である。

③骨切り術は効果持続期間に限りがあり、time saving operationとしての価値がある。術前の股関節の状態を把握して適切な方法を選択することが重要である。年齢、患側・健側、病期、臼蓋形成不全の程度、骨頭変形、骨棘形成等の因子が成績を左右する。

人工関節は10~15年以上経過すると最置換術の率が増加する。

 

4-3 二次性股関節症

前股関節症:臼蓋形成不全があり大腿骨頭変形、頸部短縮、大転子高位などの変化。しかし関節裂隙は正常で関節症変化は出現していない。

初期股関節症:関節裂隙のわずかな狭小化。荷重部の骨硬化像が出現する。骨棘形成は見られない。

進行期股関節症:骨頭の外方化がみられ、骨棘形成、骨硬化像、嚢腫形成が進行し、関節裂隙は明らかに狭小化する。

末期股関節症:関節裂隙は消失し、骨頭変形、外上方移動、二重臼底像、関節適合性の消失がみられる。

 

関節包に付着する筋肉を前方(大腿直筋)、上方(中・小殿筋)、後方(外旋筋郡、大腿方形筋)より完全に剥離する。田川式弯曲ノミで寛骨臼全体を丸く球状にくり抜くように骨切した後、寛骨臼を前外方に回転移動し大腿骨頭を被覆する。生じた骨間隙には骨片を移植し2.0mmキルシュナー鋼線もしくは吸収可能な乳酸スクリューで固定する。これにより骨頭の内方化を目的とする。

比較的新しい術式。10年以上の経過観察では前・初期股関節症に対しは良好な成績を得られている。この術式は荷重面にもともとの関節軟骨を移動させるため、より生理的な手術法である。

 

関節包上方の骨盤内・外壁に付着する筋肉(大腿筋膜張筋、中殿筋、腸骨筋)を剥離し、下方は大坐骨切痕、末梢は関節包上方および大腿直筋を露出する。骨切りは下前腸骨棘より大坐骨切痕に向けて10~20°の切り上げ角度にて骨盤を完全に横切する。骨切り後、遠位部を内方に移動させ、3.0㎜のキルシュナー鋼線2本で両骨片を固定する。これにより強固な骨性臼蓋の作成と骨頭中心の内方化によるlever arm ratioの改善を目的とする。

末梢骨片を内包に移動することにより術後に脚長差を生じること、骨盤変形により産道の狭小化をきたすことなどの問題点がある。両側に行うと経腔分娩は困難になることが多い。また骨切りで得られた被覆側は完全な関節軟骨には変化しないため、寛骨臼回転骨切り術と比較すると術後の効果持続期間は短いと考える。

 

牽引手術台を用いる。大転子を切離して経度持ち上げる。外側広筋を逆L字状に切離し、大腿骨を露出する。イメージ下に2本のキルシュナー鋼線を骨切り予定線に沿って挿入する。骨切り部は小転子のレベルで行い、30°前後の外反と10~20°の伸展がつくように骨切りを行う。骨切り部の固定は金属製のブレードプレートで行う。腸腰筋は小転子付着部で切離し、大転子はscrew、write、あるいはcable grip systemなどで固定する。

 

5、進入法と禁忌

 

(ア)前方アプローチ

(イ)前側方アプローチ

(ウ)側方アプローチ

(エ)後方アプローチ

(オ)後側方アプローチ

(カ)内側アプローチ

 

(1)前方アプローチ

Smith-Petersen皮切り

安全に股関節部や骨盤に達することができる

腸骨稜前半に沿った皮切りと上前腸骨棘から大腿骨軸に沿う皮切りとからなる。中殿筋と大腿筋膜張筋を切り離し、また、大腿筋膜張筋と縫工筋の間を切り開き、関節包部まで展開する。寛骨臼の後方は見えないなど、展開範囲は限定される。

※大腿外側皮神経と外側大腿回旋動脈上行枝の処置に注意を要する

 

(2)前側方アプローチ

Watson-Jones・Charnley・Harris皮切り

大腿筋膜張筋と中殿筋の間を展開。股関節部への到達へは中殿筋・小殿筋が障害となるために、大転子や中殿筋などの処置を行うことがある。上前腸骨棘の2.5㎝遠位、後方から大転子大腿骨外側部を通して大転子基部遠位5㎝にいたる皮切り。大転子の切離を行うことで関節の展開を容易にすることが可能である。

広範囲な関節再建術に最も適している。

※大腿神経・大腿動脈・大腿静脈の損傷に注意する

 

(3)側方アプローチ

Ollier・Hardinge皮切り

大転子部でのU字皮切り

上前腸骨棘の直下から大腿筋膜張筋と縫工筋間を下行、大転子基部で横行し、大殿筋の走行に沿い上行する。大転子の切離により寛骨臼の展開が可能となる。

 

(4)後方アプローチ

Moor皮切り

上後腸骨棘10㎝(下後腸骨棘5㎝)遠位から始まり大殿筋に沿って大転子まで下行し、大転子後縁から大腿骨軸に沿って10~13㎝延ばす。

※坐骨神経に注意を要する

 

(5)後側方アプローチ

Gibson皮切り

上後腸骨棘前方6~8㎝、腸骨棘の遠位に始まり大殿筋の前縁を通り、大転子前縁から大腿骨軸にいたる。前方凸の皮切りである。腸徑靭帯の切離から短外旋筋群の処置を行って、関節部に達する。

 

(6)内側アプローチ

Ludloff

先天性股関節脱臼の手術に用いられてきた。

屈曲・外転・外旋位にて恥骨結節遠位2.5㎝から大腿内側を縦切し、長内転筋と薄筋間を分離し、長内転筋を前方に薄筋・大内転筋を後方に圧排して到達する。

※閉鎖神経に注意を要する

 

進入方と適用となる手術・生検部位

進入法 適用手術 生検部位
前方アプローチ 股関節・人工骨頭置換術先天性股関節脱臼の観血整復

滑膜切除

遊離体摘出

骨盤骨折内固定

骨盤骨切り

腫瘍

股関節固定

股関節腸骨稜

上(下)前腸骨棘

前後方アプローチ 股関節・人工骨頭置換術頚部骨折内固定

滑膜切除

股関節固定

頚部股関節
側方アプローチ 股関節・人工骨頭置換術骨盤骨切り

大骨頭すべり症

股関節固定

大転子臼蓋
後方アプローチ 股関節・人工骨頭置換術骨盤骨折内固定

股関節脱臼整復

遊離体摘出

股関節固定

坐骨臼蓋
後側方アプローチ 股関節・人工骨頭置換術骨盤骨折内固定 頚部臼蓋
内側アプローチ 先天性股関節脱臼の観血整復腸腰筋腱きり

閉鎖神経切除

頚部小転子

 

6、合併症

○術中合併症

1)セメント使用直後の一過性血圧下降…骨セメントを海綿骨に挿入した後に20秒~5分にわたり血圧が下降する。出血により循環血液量が減少している場合や、心配機能に不全がある場合には、測定不能になるほどの血圧下降を示すことがある。セメント使用直前に循環血液量の不足を輸血で補っておく。また、セメント使用直後は酸素吸入量を増加させる。

2)臼蓋ソケット、人工骨頭の固定位置不良…臼蓋ソケットは、所定の手術用具を用いて固定しなければならない。ソケットは45°傾斜させ、前捻0°に固定する。この操作は本手術の核心をなす。これを誤れば脱臼やソケットの緩みなど重大な障害が発生する。

3)Reamerによる寛骨臼と大腿骨骨幹皮質の貫通…人工股関節挿入のために寛骨臼と大腿骨骨髄腔を拡大するが、骨粗鬆症がある場合には、手動式reamerによって伸長に拡大する。電動式reamerを使用すると臼底を貫通する危険がある。

4)神経血管損傷…臼後壁にできた貫通孔より漏出したセメントによる坐骨神経麻痺、大転子結合用鋼線による坐骨神経の巻き込み、ホーマン鉤による大腿神経麻痺、脱臼骨頭を強く下降することによる坐骨神経麻痺や大腿動脈血行不全を起こすことがある。

5)大腿骨縦裂…脱臼性股関節症では大腿骨発育不全があるために、reamingに際して縦裂をきたすことがある。術前に計測して狭軸人工骨頭を使用する配慮が必要である。

6)死亡…大腿骨人工股関節手術は高齢者に行われるために手術に原因する死亡が少なくない。死因としては心臓障害、肺塞栓、腎障害がもっとも多い。

 

○術後早期合併症

1)脱臼…Charnley型人工股関節においては、誤って大腿骨頚部を過度に切除すれば脱臼傾向を生じる。したがって、頚部の切断を調節して、麻酔下で、大腿を下方に牽引しても骨頭とソケットの間に感覚が生じず、む牽引で30°内転位にした時に脱臼し、整復位で完全伸展できる程度にする。術後3ヶ月も経過すれば、人工関節周辺に線維組織が形成されて脱臼をきたすことはない。

2)感染…人工股関節手術のような異物を挿入する手術では、感染予防のための慎重な配慮が必要である。術前の清拭、層流式無菌手術室の使用、血腫吸引、頭巾つきガウンおよび呼気排除マスク、抗生物質の使用などによる確実な安全性のもとに手術を行う。

3)深部静脈血栓症…股関節の手術後に下腿、足背に浮腫を生じることがある。これを予防するために術直後

より足関節の自動運動を行って、下肢静脈の血流傷害の発生を予防する。治療としては下肢高挙

や弾力包帯固定が行われる。血液凝固阻止剤を用いることがある。

4)肺塞栓…深部静脈血栓が肺塞栓を起こすことがある。外国ではこれが人工股関節手術後の死亡原因の最大のものである。患者は突如胸痛と呼吸困難を訴える。安静、酸素吸入、モルヒネなどの鎮静剤、強心剤、血液凝固阻止剤を与える。

5)大腿骨粗鬆…術後1ヶ月より3ヶ月にわたって、まれに大腿骨に骨壊死が発生することがある。これは骨セメントによる刺激と血流傷害によると考えられる。この場合、骨折防止に留意する。術後3ヶ月で修復される。

6)ソケット周囲の透明層…術後数ヶ月にX線像において、ソケット周囲のセメントと骨板との間に透明層が認められるようになる。とくに荷重部に現れる。骨とセメントの弾性に差異があるために、境界部に軟骨組織が形成されると考えられ、失われた関節軟骨に代わって衝撃を吸収する役をなす。それゆえ、この透明層の出現は必ずしもソケットの緩みを意味するものではない。

 

○後発合併症

1)晩期感染…術後かなりの日数を経て、種々の合併症が起こることがあるが、重要なものは晩期感染である。感染が起こっても、抗生物質による洗浄、内服薬の長期投与によって観察を続ける。人工関節弛緩が著明になった場合には人工股関節を摘出するが、後に高度の歩行障害が起こる。

2)大転子線維性結合…大転子を切離する進入路をとる場合には、術後に大転子の骨癒合が得られず、X線像で透明像が長く残ることがある。線維性に結合しておれば機能上なんら障害はない。

3)人工骨頭の弛緩(loosening)…無痛性の感染や人工骨頭に対する組織の分界現象として現れる。これはX線写真に人工骨頭の軸周囲の透明層の出現や、X線透視下の関節運動によって証明される。looseningが発生した場合には、手術により人工骨頭を交換する。感染がなければ骨セメントによる固定を行う。

4)ソケットの弛緩…寛骨臼のセメントと骨の境界部には線維性軟骨が形成され、関節軟骨に代わって荷重の衝撃を吸収する。これは骨とセメントの弾力性の差異によるものであって、病的な現象ではない。しかし、強力な力が繰り返しソケットにかかる場合には、セメント周囲の海綿骨に微細骨折が生じ、ここに骨吸収が起こってソケットの弛緩を生じる。この場合には微細骨折が治癒するまで安静が必要である。ソケット弛緩を防止するには、ソケットを力学的に安定した状態におき、また術後の生活活動も制限しなければならない。

ソケットの緩みは、大部分の例において、関節圧が高く、関節潤滑機構が破綻した場合に起こる。潤滑が円滑に行われなければソケットの摩耗が起こり、これによってソケットにねじりモーメントが働き緩みが起こる。

5)ソケットの摩耗…ソケットの摩耗量は患者の生活態度によって著しく異なるが、1年間に最大0.5mmの摩耗が計測された症例がある。

6)人工骨頭の沈下(distal migration)…人工骨頭が大腿骨の中へ沈下し、疼痛を伴うことがある。これは人工骨頭軸に接する大腿骨内側皮質の骨吸収によって起こる。その原因は十分に明らかではないが、人工骨頭による圧迫、血流障害、時には肉芽組織による侵蝕によっても起こると考えられている。

7)人工骨頭の上方移動(proximal migration)…これは人工骨頭が寛骨臼を破壊して上方に移動する現象である。関節の強い圧迫、人工骨頭と寛骨臼の不適合、骨粗鬆症などが原因となる。proximal migrationをきたした例に対しては全人工股関節置換術が行われる。

8)石灰化…関節周囲に異常化骨が起こることがある。これは術中にとり残された骨くずによることが多いから。術中生理食塩水にて十分に洗浄して、骨細片を除去する。軽度の骨形成では、機能訓練を続けてゆけば、著しい可動域の制限は起こらない。高度の化骨により間接可動性が完全に失われた場合は異常骨を手術的に除去する。

9)人工骨頭折損…人工骨頭軸が骨セメントによって強固に固定されない場合に、ごくまれに人工骨頭軸の折損が生じることが報告されている。これは特に人工骨頭内側面とAdams弓との間隙にセメントが充填されていない場合に起こる。

 

○2次的に発症する合併症

1)腓骨神経麻痺…ソフト・ブラウン架台にて肢位固定する際、腓骨頭への圧迫による。

2)疼痛…骨折部に激しい疼痛を感じる。

3)皮膚損傷、皮下軟部組織の損傷…受傷部の皮膚が損傷した場合。

4)外傷性大腿骨頭壊死…転位を伴う骨折では、骨頭の栄養血管が断裂し、骨頭骨梁と骨髄の壊死が起きる。

5)廃用症候群…長期臥床によるものが多い。予防可能である。

・関節可動域の低下:膝関節屈曲、足関節背屈。

・筋力低下、筋萎縮:大殿筋、中殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングスなど。

・骨粗鬆症:高齢者の場合、長期臥床により起こる。

・褥瘡:長期臥床による持続的圧迫、トランスファー時の摩擦、全身の栄養低下。

・静脈血栓症:長期臥床や下肢運動制限による血流のうっ滞。

・心肺機能の低下(最大酸素摂取量低下など):長期臥床による。

・起立性低血圧:長期臥床からの急な立ち上がり。

・痴呆:長期臥床により、知的機能が全般的に低下して起こる。

・うつ傾向:患者自身が自らの障害を認識するあたりから出現し、うつの強さは障害前の性格、障害の程度、患者を取り巻く環境などに影響する。

・膀胱炎、尿路感染:一時的に尿道カテーテルが施行されることにより起こる。

・沈下性肺炎:長期臥床により喀痰の排泄が不十分なため、気管支分泌物貯留が起こった時に、これに細菌感染が重なって起こる。

 

ベッドサイド訓練

目的:廃用症候群防止

良肢位保持、ROM他動・自動筋力増強訓練…健側の3肢主体の運動と同時に健側下肢利用のbridging体操(褥創予防を兼ねる)健側・患側大腿四頭筋のsetting体操、両下肢筋のpumping体操、呼吸増強訓練、肺機能訓練

 

7、セメントタイプとセメントレスタイプの比較

セメントタイプ

セメントレスタイプ

歴史

1960年、CharnleyがMooreの人工骨頭(1951年)を骨セメントで固定し非常に有用であると報告。Mckee,Farrarもセメント固定法を取り入れ、ソケットのデザインを変更し、短期ではあるが良い成績を報告。Charnleyは更に1961、1962年に材質、骨頭径を変更しLow Friction Arthroplastyの理論を発表。最も優れた成績を残し、現在も広く行われている。 Porous型はヨーロッパで1971年Judetら、1975年Loadらが最初に行った。日本では1964年に前沢式、1970年に慈恵医大式が行われた。

北米ではHarris,Hungerfordらがステムの近位部にチタンのfiber meshやコバルトクロームbeadsをコーティングしたporous構造を開発し、骨と直接接触させる生物学的固定(bone ingrowth)を得る方法を一般化した。以後様々なタイプのセメントレス人工股関節が開発・市販されている。

分類

構成

【種類】現在使用されているのはCharnley型。

(McKee型・Muller型などは材質・デザインの欠点からほとんど使用されなくなった)

 

【種類】1)    一体型

<構造>

臼蓋側 金属シェルとポリエチレン

大腿骨側 ステムと骨頭ボール

<現在一般的に使用されているもの>

Anatomic, AML, PCA, Lubeckなど

<問題点>

ポリエチレン摩耗粉、金属微細小片によるosteolysis(骨融解※)

※-骨皮質が浸食されたような像を呈する。原因はマクロファージや巨細胞などによる貪食作用の影響と考えられており、進行するとlooseningの原因となる。

2)    Modular型

<特徴>

ステム側のfit&fillを向上させるために、よりmodularity(交換可能の意)を増加させている。

<現在一般的に使用されているもの>

Omniflex, S-ROM, Infinity,RMHSなど

<問題点>

ポリエチレン摩耗粉、金属微細小片によるosteolysis。Modularityを高めたゆえに金属微細小片の産生が増加。

材料

チタン合金、コバルトクロム合金、超高分子量ポリエチレン、セラミック素材等を組み合わせてできている。
【材料】<Charnley型>

臼蓋側 超高密度ポリエチレン

大腿骨頭 金属、骨頭径22mm。

【材料】<金属材料>

コバルトクロム合金/チタン合金が主流。これにビーズコーティングあるいはファイバーメッシュをコーティングしたものが主に使用されている。近年ではハイドロキシアパタイトをプラズマスプレーコーティングしたものもある。

<摺動面>

ポリエチレン、コバルトクロム合金あるいはアルミナセラミック

適応

年齢

60歳~セメントレスタイプよりも高齢者が多い(早期荷重が可能なため、安静による廃用症候群・痴呆等を予防する目的) 50~70歳人工材料を使用していないため、セメントタイプと比較すると再置換術が容易。安静臥床による廃用症候群等の可能性を考えると高齢者は望ましくない。

固定

特徴

人工骨頭と大腿骨との接合が極めて強固 骨成長による生物学的固定

術中の

こと

硬化直後より安定な固定力が得られる。疲労強度も優れている。重合時の発熱で骨組織に熱損傷が加わる(組織が回復するのは6週間と言われている)。重合時のセメント温度は70~82℃であるがアメリカでは62℃程度に抑えた低温セメントも発売されている。 ステムを大腿骨に打ち込む。その際骨折が生じることがあるため、愛護的操作が求められる。固定は生物学的固定(インプラント多孔表面内への骨成長)。線維性組織の介在を防ぎ、骨侵入を阻害しないために、免荷が重要である。

荷重

一般的に早期荷重が可能。ドレーン抜去したら歩行器を使用して疼痛許容範囲での荷重歩行が可能。 骨成長を妨げないためにセメントタイプより遅らせる。確実な生物学的固定を得るためには線維性組織の介在を防ぎ、骨侵入を阻害しないこと。そのため6~8週の免荷が必要とされる。一般的には4週後から部分荷重開始~8週後に全荷重。(担当医師の見解により差がある)

耐久性

Looseningはセメント使用の有無に関わらず発生するが、セメントレス(生物学的固定)よりセメント固定の方が発生しやすい。また活動性の高さが大きく影響するため仕事内容や年齢も関係する。他にセメント・セメントレス両方に共通するlooseningの原因としては、ステム・ソケットの位置が適切でない、ステムの形状やサイズが合わない、セメントや金属アレルギーによる免疫反応、力学的問題(力学的ストレスの不均等)、原疾患によるもの、他関節の障害、肥満、骨・筋の脆弱化、全身の重篤合併症。
荷重が加わると骨と人工関節あるいはセメントの中で若干のずれを生じ、長年積み重なるとゆるみとなる。つまり活動性が高いほど人工挿入物のlooseningの危険度が高く、再置換術を行う必要がでてくる。最近の報告ではLooseninng率-ソケット、ステム側ともに術後約10年で約5%前後。 摩擦による骨融解、大腿骨の髄腔形状が挿入したステムの形状と適合しない、などによりlooseningが起こることがある。
looseningが生じた場合、比較的早期に再置換術をしないと骨皮質が菲弱化し、再置換術が困難となる。また、初回人工股関節置換術後より再置換術後の方がlooseningを生じる率が高い。

杖の永続的使用股関節内圧を減らすことから、全荷重可能となっても使用すべきである。杖を使用することで人工関節の摩耗を少なくし、耐久性が向上。転倒による再骨折の予防にもなる。

まとめ

長所

早期固定・早期荷重、安定した固定が得られる。術後1~2週で荷重歩行ができ後療法を短期間で施行することができたの術式と比較し入院期間を著しく短縮することができる。

簡単な手術操作

人工臼蓋やステムを意図したとおりの位置に短時間に設置できることである。

再置換が容易looseningが少ない

早期荷重が可能で不定愁訴が少ない。

 

短所

重合熱や脆弱化によるloosening手術の際にモノマーとポリマーを混合すると高い重合熱が生じ時にこれが人工関節周囲の骨の壊死を招きlooseningの因子となる。さらに骨セメントはプラスチックの一種であるから長年月の間に脆弱化し、人工関節を骨に接着する能力を失いlooseningの原因となる。

再置換が困難

人工関節を再置換する際には多くの場合大腿骨骨髄腔内残存した骨セメントを完全に外すことは極めて困難で時間を要する。

易感染性

セメントの使用例では感染の発生する頻度が高いと言われている。

 

リハビリに時間がかかる安静期が長いことによる廃用性、体力低下など。

いったん緩みが生じると、加速度的に進むことと病的な骨破壊、骨吸収が見られること。

 

 

8、セメントレスとセメントの人工関節術後療法のプログラム

セメントレス人工関節では初期固定が確実に得られるかがその後の成績を左右する。したがってセメントレス人工股関節の場合には一般に、後療法、とくに荷重訓練を遅らせ気味にせざるを得ない。

 

愛媛大学整形外科での後療法プログラム例(慈大式人工関節使用)

術後3週まで

ベッド上安静、内転防止枕使用

3週

Floating exercise開始

8週

起座開始、車椅子使用許可

12週

両松葉杖完全免荷歩行開始

14週

両松葉枝部分荷重歩行開始

16週

ロフストランドクラッチにて全荷重歩行可、退院。

※ただし両側例などでは歩行開始をさらに2週間遅らせ免荷歩行の期間を省略して両下肢を同時について歩行させる。

 

昭和大学藤が丘病院での後療法プログラム例(Bipolar型人工股関節使用)

術前

術前評価、筋力強化

術後

足関節自動運動、大腿四頭筋setting、他動運動、自動介助運動

3週

ハバード内、自動運動→伸張運動

5週

プール内歩行訓練、マット上筋力強化、可動域拡大

6週

松葉杖歩行(1/3荷重)

10週

松葉枝歩行(1/2荷重)

12週

T字杖歩行、退院

6ヶ月

検診(以後1年、2年・・・・・)

 

80歳女性・セメントレスの治療

術前

直達牽引

手術~一週間

ベッド上臥位(外転マット)

1週

車椅子坐位・Toe Touch 立位

2週

1 / 4 荷重 → 1 / 3 荷重

3週

1 / 2 荷重 → 全荷重・ピックアップ歩行

4週

4点杖歩行 → T-Cane

5週

退院
外転マット 日中 術後2週で除去夜間 術後3週で除去

外転装具  全荷重許可とともに除去

( ̄▽ ̄)参考文献

医療学習レポート.セメントタイプとセメントレスタイプ


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