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(*^_^*)変形性関節症とADLの話


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(・.・;)題名:変形性関節症とADLの話

各疾患、障害のADLの特徴

変形性関節症(osteoarthrosis:OA)

Ⅰ.概念

変形性関節症(以下OA)とは、中高年にみられる疾患で進行性の関節軟骨の崩壊と消失、および関節辺縁や軟骨下骨における反応性(増殖性)変化により特徴づけられる。

それが股関節におこったものを変形性股関節症、膝関節におこったものを変形性膝関節症という。

 

Ⅱ.発生機序

変形性関節症の発生機序

OA進行は力学的負荷による軟骨破壊、軟骨破壊およびその修復における軟骨細胞の代謝障害と骨軟骨リモデリングの異常、それに軟骨外要素として滑膜反応や血行性変化などにまとめられる。

力学的変化負荷による軟骨マトリックスの破壊は軟骨細胞の代謝に影響を与え、種々のサイトカインやマトリックス分解酵素を産出する。

OA軟骨細胞はこれらのタンパク合成に変化を与え、マトリックスの分解と合成に不均等を生じ、さらにOAは進行する。

OAは内因性破壊が主体でこれらに外因性破壊が加わる。

IL:インターロイシン、TNF:腫瘍壊死因子、IGF:インスリン様成長因子、TGF:悪性化増殖因子

 

Ⅲ.病態

関節構成体の変化

初期変化 関節軟骨表面の輝板の消失

最表層の断裂や剥離

潤滑機能の低下

進行に伴い軟骨層のコラーゲン構築も変化→軟骨の弾性機能の低下

関節裂隙の狭小化→関節軟骨の摩耗、軟骨化骨の硬化→骨棘、骨嚢包形成

 

筋力からみた病態

1.筋萎縮

1)筋自体の老化,退化による萎縮

2)関節の疼痛あるいは体重過多等を原因とする運動量低下による廃用性萎縮

3)炎症による滑膜肥厚や関節水腫のために関節内圧が上昇し関節周囲の感覚神経終末を介して生じる反射性萎縮

2.筋力不全

高齢者では筋萎縮のみでなく、筋の代謝の低下、収縮たんぱく活性の低下による筋機能の低下がみられる。

 

変形性股関節症

変形性股関節症とは

変形性股関節症(以下変股症)は、関節軟骨の変性、摩耗により関節の破壊が生じ、これに対する反応性の骨増殖(骨硬化、骨棘)を特徴とする疾患で、原疾患が明らかでない一次性股関節症と、何らかの疾患に続発する二次性股関節症に分類できる。

我が国における変形性股関節症は、二次性股関節症が圧倒的多数を占めている。

 

Ⅰ.病型分類

1.一次性関節症

本疾患の診断は除外診断により行われており、臼蓋に異常がなく、(CE角≧19°、Sharp角≦45°、ARO≦15°)、大腿骨頭に変形のない正常な股関節に発生した関節症で、病歴や各種の検査によって形態異常以外の基礎疾患も否定されたものが一次性とされる。

自然経過は慢性に推移するものから、急速に進行し発症後数ヶ月~数年以内に手術を要するものでさまざまである。

<診断>

一次性関節症には特異的な症状や画像所見はなく、診断は基礎疾患を有する二次性股関節症を除外することによってなされる。

 

2.二次性股関節症

わが国における変形性股関節症の圧倒的多数を占め、そのほとんどが臼蓋形成不全、先天股脱、亜脱臼に起因している。

二次性股関節症の基礎疾患

・炎症性:慢性関節リウマチ、化膿性股関節炎、Spondyloarthropathies

・内分泌性:巨人症、副甲状腺機能亢進症

・外傷

・股関節発育障害:先股脱、臼蓋形成不全、ペルテス病、大腿骨すべり症、軟骨異形成、(多発性骨端形成不全など)

・代謝性:組織褐変症(Ochronosis)、ヘモクロマトーシス(Hemochromatosis)、ウィルソン病、血液透析、偽痛風(CPPD結晶沈着症)、痛風、ページェット病、ムコ多糖症

・Charcot関節

・虚血性骨壊死

・血友病

・Kashin-Beck病

・全身性骨増殖症(DISH)

 

Ⅱ.発生頻度

男女比: 1:2 ~ 1:12

発症年齢:60歳以降が多く、50歳以下の発症は稀である

 

原因疾患

疾患名

 先天股脱

1123

102

1225

42.2

臼蓋形成不全

1041

87

1128

38.9

外傷 脱臼骨折

68

57

125

4.3

ペルテス

11

49

60

2.1

骨頭壊死

28

31

59

2

麻痺性(CP,二分脊椎)

36

23

59

2

化膿性関節炎

35

22

57

2

一次性

29

14

43

1.5

腫瘍

21

4

25

0.9

リウマチ

20

0

20

0.7

骨端線すべり症

9

9

18

0.6

強直性脊椎症

0

15

15

0.5

結核性

12

3

15

0.5

ポリオ

11

1

15

0.4

RDC(急速破壊型股関節症)

11

1

12

0.4

SLE(大腿骨頭すべり症)

7

0

7

0.2

PFFD(大腿骨近位部形成不全症)

1

2

3

0.1

血友病

0

2

2

0.1

離断性骨軟骨炎

0

2

2

0.1

その他

10

4

14

0.5

2473

428

2901

100

 

男女比:全体では 6:1 (女:男)

先股脱  11:1      臼蓋形成不全 14:1

 

Ⅲ.特徴

疼痛初発から手術までの期間が短く、関節症の進行が早い。

発症して慢性に推移するものから、発症後数ヶ月~3年以内に関節の荒廃にいたるもの。

までさまざまな経過をとると考えられる。

 

Ⅳ.症状

1.疼痛

痛みの原因は関節不適合による軟骨破壊、骨棘形成、骨嚢腫形成により円滑な運動ができなくなり関節包の伸展性減少、骨内循環不全、滑膜炎症、関節軟骨炎症などにより発生する。

また臼蓋唇の断裂や炎症などにより痛みの発生原因になっている。

股関節の変形や拘縮、また下肢長短縮などの荷重位でのアライメント異常により、腰背部・膝関節部・足関節部・足部にも痛みを訴えることは臨床上よく見受けられる。

疼痛は一時的に安静時痛を伴うような激痛が生じても自然に寛解することが多く、憎悪、寛解を繰り返す。

疼痛のため運動量の低下が見られ、特に股関節外転筋の萎縮が目立つようになる。

筋萎縮により殿部や大腿部の筋性疼痛が合併する。

病期と疼痛の程度は相関しない。

 

2.跛行

・Trendelenburg跛行

股関節外転筋の筋力低下により、患側立脚時に骨盤を水平位に保てなくなる。

骨盤は遊脚側に沈下し、体幹を立脚側に振ってバランスを保つ。

これをTrendelenburg徴候陽性という。

外見上は肩を患側に落として歩く跛行となる。

痛みのある股関節では、骨盤沈下を伴わずに体幹を立脚側に振って股関節合力を軽減させようとする。

骨盤沈下の有無を問わず、肩を立脚側に振って歩く跛行をDuchenne跛行という。

・墜下性跛行fall limping

軟性墜下性跛行と硬性墜下性跛行がある。

1)軟性墜下性跛行:先天性股関節脱臼などで、荷重時骨頭が殿筋内を上方に移動することで生じる。

2)硬性墜下性跛行:脚長不同がある場合、短縮側の骨盤を下降させて歩行する。一般に脚短縮が3cm以内であれば跛行は目立たない。

・逃避性跛行

強い股関節痛を有する患者では痛みを避けるため患肢の接地時間(立脚相)を短くして歩く。

歩行速度および歩幅も短縮する。

またこれとは逆に急な動作を避けるために、患側の接地時間を逆に長くして歩く滞留跛行も一種の逃避性跛行である。

 

3.可動域制限

初期には可動域制限は著明ではないが、関節症が進行するにつれて種々の制限が出現する。

特に内旋、外転、屈曲、伸展制限が出現し進行する。

強直に至ることは稀である。

伸展制限の結果起こる屈曲拘縮の計測にはThomas testが用いられる。

 

4.その他

患側の大腿四頭筋、大殿筋などの筋萎縮が種々の程度に認められる。

また股関節周囲筋の筋力低下(特に屈筋、外転筋)も出現する。

 

<腰椎-股関節-膝関節の関係>

正常人における立位荷重線[大腿骨中心から足関節中心を結ぶ下肢機能軸:Mikulicz線]は、膝関節部で大腿骨顆部、脛骨顆部、脛骨顆部中央を通過する。

外反股があるとこの荷重線は膝関節部で外側に変位し、内反股があると内側に変位する。

大腿骨骨切り術を行う際には、この荷重線の移動に十分注意する必要がある。

また、股関節に屈曲拘縮があると腰椎に代償性に前弯が増強する。

このように股関節の形態異常は股関節のみならず、腰椎、膝関節、足関節に影響を及ぼすので、広く下肢全体として把握する必要がある。

 

Ⅳ.リスクファクター

加齢に伴う腰部変性港湾に伴う変化

⇒骨盤後傾による骨頭被覆の減少、股関節周囲筋の緊張による股関節合力の増大が、股関節症の憎悪因子となる。

 

Ⅴ.病態分類

前股関節症:程度は種々であるが長く歩くと疲れる、また跛行が出てくる、ときどき痛みがあるが安静で治癒する、などの症状があり15~30歳代に多い。X線所見は図に示す。関節運動は正常である。この時期の関節鏡所見では、臼蓋部や骨頭軟骨の線維化、パンヌスなどが認められ、臼蓋唇の変形断裂、炎症などの所見が認められることもある。

初期股関節症:疼痛がやや持続的で日常生活動作も少し障害されてくる。X線所見は図に示した。関節鏡所見では軟骨線維化、潰瘍形成、軟骨の断裂・欠損などがみられ、骨の断裂・欠損などがみられ、特に臼蓋部にみられる。

進後期股関節症:疼痛が持続し、跛行、内転拘縮、筋萎縮、筋力低下も認められる。X線所見は図に示す。関節鏡所見では軟骨欠損が大きく認められ滑膜炎症も著しい。

末期股関節症:疼痛が強く安静時にも認められ、股関節は内転・屈曲拘縮をきたし、外転、内外旋運動も極端に制限され、骨頭側方移動も著しく、内転拘縮のため患肢が短くなったと訴える。X線所見は図に示す。

 

Ⅵ.変形性股関節症のX線所見

変股症では関節裂隙の狭小化、軟骨下骨の硬化、骨棘形成、骨嚢胞形成などが認められる。

日整会股関節症判定基準(X線像評価)

病期

関節裂隙

骨構造の変化

臼蓋および骨頭の変化

前股関節症

関節面の不適合適度

骨梁配列の変化がありうる

先天性・後天性の形態

狭小化なし

変化あり

初期股関節症

関節面の不適合あり

臼蓋の骨硬化

軽度の骨棘形成

部分的な狭小化

進後期股関節症

関節面の不適合あり

臼蓋の骨硬化,臼蓋あるいは

骨棘形成あり

部分的な軟骨不骨質の接触

骨頭の骨嚢胞

臼底の増殖性変化

末期股関節症

関節面の不適合あり

広範的な骨硬化,巨大な骨嚢

著明な骨棘形成や臼底

荷重部関節裂隙の広範的な消失

の二重像,臼蓋の破壊

 

Ⅶ.治療

軽症例は歩行補助具の使用などの日常生活指導、温熱療法、筋力訓練を主とした運動療法などで保存的に加療して、経過を観察する関節症が進行し疼痛が強い症例については患者のほとんどが高齢であり、THAが適応となる。

1.保存療法

疼痛が弱い患者や種々の理由から手術が行えない患者には保存的治療が行われる。

それらには、体重のコントロール、歩行時の杖の使用、長距離歩行などの禁止、筋力(とくに股関節外転筋)訓練などが含まれる。

消炎鎮痛剤投与は十分な指導のもとに与える。

消炎鎮痛剤を多用して長途歩行や無理な仕事を行うことは関節軟骨の早期破壊につながるため、よく注意すべきである。

2.整形外科的治療(手術的治療)

変形性股関節症の手術療法の原則は、股関節荷重量の減少、荷重面積の拡大、関節の力学的安定、筋性圧の軽減である。

 

<治療方針を立てるときに考慮すべき項目>

①年齢

X線像での軽度の臼蓋形成不全と亜脱臼を示し、症状の強くない若年者の治療方針をどうするかが問題となる。

CE角15°以下の症例は関節症が徐々に進行し、ある時期に急速に憎悪するといわれていることから、6ヶ月~1年間外来で経過観察し、症状の改善が得られない場合には早期に臼蓋形成術(棚形成術)や寛骨臼回転骨きり術など何らかの予防的手術をする必要がある。

一方、比較的若年で末期の股関節症患者の治療は、関節固定術や各種骨切り術が行われる。

しかし、これらの手術で改善の見込みのない例には人工股関節置換術も行われる。

②性別

亜脱臼製股関節症は女性に多いことから、結婚、妊娠、育児の問題を考慮する必要がある。

肉体労働に従事している男性では関節固定術も考慮する。

③両側罹患例

手術は通常症状の強い側から行う。

しかし一方の股関節が先に発症し、それをかばっている内に他側の症状が悪化している場合は、先に発症した股関節の本当の症状がマスクされていることがあるので注意を要する。

④他関節の問題

股関節の手術にあたっては、他関節(他側の股関節、膝関節、腰椎など)の状態を十分考慮する必要がある。

大腿骨の外反、内反骨切り術では術後の荷重線が移動し膝の関節症を憎悪させることがあるし、股関節固定術では、腰痛、他側の股関節痛、膝関節痛が増強することがあり注意する。

関節可動域の悪い股関節(屈曲60°以下、内・外転15°以下)に対しては大腿骨骨切り術の適応が制限される。

 

<病態分類による手術法>

前・初期股関節症:骨盤側に対するChiari法、大腿骨に対する内反骨切り術

進行期股関節症:外反骨切り術、内側移動骨切り術、Bombelli外反伸展骨切り術

末期股関節症:股関節固定術、カップ関節形成術、人口股関節、ダブルベアリング型人口股関節

 

<手術法>

・近年、圧倒的に主力になっているのは人工関節置換術である。

・骨棘の発達している60歳未満の患者には大腿骨外反骨切り術の適応があり、ある程度の関節可動域が保たれていれば効果的である。

1.筋解離術

筋解離術は、外転筋を切離するフォス術と外転筋を温存し、腸腰筋を切離するオマリー術に大別される。

フォスは、変形性股関節症においては反射的筋肉の持続的緊張とその二次的な変化が関節症を進行させる要因であるとし、本手術によりその緊張が取れ、関節軟骨、関節面の修復・再生により治癒に至るものとしている。

オマリー手術(腸腰筋・大腿直筋起始部・内転筋の切離)において

1)疼痛の悪循環の中断

2)筋の攣縮による関節への圧迫の軽減

3)骨髄内の充血ないしうっ血の消退

4)荷重点の小移動

5)関節軟骨の修復と関節面適合性の改善
などにより、関節症が改善されるものと考えられる。

適応:原因のいかんに関わらず、初期から末期までで、保存療法・骨切り術の適応のない症例で、骨頭・臼蓋の接触面積が広く荷重部に嚢胞形成のないものに適応。

特徴:

1)全身に対する侵襲が軽微で除痛効果が顕著であるため、X線像からみて不適応な患者、高齢者や合併症を有する患者にも一時的除痛目的で行える。

2)後療法が比較的容易で、早期に体位変換が可能。

3)両側例では、経時的あるいは反対側の同時手術が可能だが、50歳以上の高度進行例では、一側に人工股関節置換術、他側に本手術を行うほうが効果がある。

4)年齢的に人工股関節術の適応にならない若年者にはタイムセービング手術(時間かせぎの手術)として試みてよい方法。

5)生体内に異物を入れないので、人工股関節手術のようなゆるみや感染という合併症の心配がない。

6)本手術後、病態が悪化しもう一度手術をしなくてはならない場合でも、ほかの手術を行うことは容易である。

患者さんへの注意点:

1)体重のコントロール

2)筋力強化

3)関節可動域の維持・拡大-水泳・自転車・適度の歩行

4)杖の使用

5)車の使用

6)骨粗鬆症の予防-カルシウムの摂取・日光浴・適度の運動

7)定期的経過観察

 

2.大腿骨骨切り術

パウエルの理論に基づく骨切り術を一言で表すと、『関節にかかる合力を下げることで軟骨を再生させ、長期間の部分荷重により再生した軟骨を強靭にし、適合性を改善させることで、再生した軟骨が長期間にわたり温存されることを期待する術式』となる。

 

手術適応の前提:

1)股関節可動域:①屈曲45~60°以上、②内反骨切り術では外転15°以上(内転拘縮予防)

2)長期間の松葉杖歩行が可能であること。

3)反対側が支持脚であること。

4)両側罹患では支持脚の有無が問題となる。

 

適応:大転位で適合性が改善:内反骨切り術

内転位で適合性が改善:外反骨切り術

 

1)外反骨切り術

股関節に近い部位で大腿骨の骨切りを行なってから、大腿骨頭を外方へ傾けて金属で固定する方法。

大腿骨頭が楕円形に変形し、骨盤の関節面、すなわち寛骨臼蓋面の外側部の狭い範囲に荷重が集中した股関節症に適した手術法。

(1)パウエルス外反骨切り術

骨切り部で大腿骨頭を①外反し、②末梢の大腿部を内方へ移動し、③大転子を切離して骨盤のほうへ移動する3つの操作を行なう手術法。

これにより、関節面が平行になって荷重面が広がるだけでなく、筋肉の緊張が取り除かれて股関節に加わる力が減少し痛みが軽減する。

(2)ボンベリ外反伸展骨切り術

骨切り部で大腿骨頭の①外反と②伸展を同時に行い、③大転子を切離して外方へ突出させ、④末梢の大腿部を外方へ移動し、さらに⑤脚の長さをそろえるという5つの操作を一度に行なう手術法。

骨盤側の臼蓋に強い形成不全があって大腿骨頭を十分に支えるだけの関節面がないときには、関節面を広げるために臼蓋形成術を併用する。

ボンベリ骨切り術の特徴

①関節に加わる力:人が歩行時に片脚で立つとき、骨盤を介して体重が股関節に加わるが、

このとき対側の外転筋が強く収縮して骨盤を支えている。

このとき骨盤は股関節を支点とする“てこ”となり、その働きで体重と外転筋力が何倍にも増幅されることによって股関節に強大な力が荷重力として加わる。

ボンベリ骨切り術はこの“てこ”をうまく利用する手術法である。

②下肢の荷重軸と末梢大腿骨の外方移動:上述のMikulicz線は外反骨切り術によって外方へ移る。

このために膝が外反位となるだけでなく、上体が傾いて股関節に加わる力に好ましくない影響を与える。

これを防ぐために末梢の大腿骨を外方に移動して荷重線を正しく通すが必要である。

③脚の長さ:外反骨切り術で骨切り線が斜めであれば、末梢大腿部を外方へ移動すると下肢は長くなる。

患肢が短いときはそのまま延長し、長さが同じならば切除して両脚の長さをそろえる。

④跛行:股関節に痛みがある、外転筋力が弱い、膝が外反している、あるいは患肢が短いなどの障害があると、歩行時に上体は痛みのある側へ傾く。

この状態では大腿骨を外方へ脱臼させる力が加わるために好ましくない。

従って、骨切り術に際しては股関節に加わる力を減少させ、荷重線を整え、脚の長さをそろえるという3つの条件をできるだけ達成することが必要。

外反骨切り術の適応:骨棘によって大腿骨頭が楕円形に変形した股関節症。

骨切り術の特徴として、手術後に関節可動域の改善は期待できないため、可動域があまり制限されない時期が適している。

また、高齢になるほど関節の再生力が衰えるため、できれば壮年期までに骨切り術を受けることが望ましい。

2)内反骨切り術

転子間の骨切り術に内反(おじぎをさせるようにすること)によって、①骨頭の中心がより内側に寄り、②荷重を受ける面が増大し、③外転筋が付着している大転子が外に張り出し高くなると同時に、大腿骨頭の中心から外転筋に垂線を引いた距離(てこの柄)が長くなり骨頭にかかる力が減少する。

 

適応:

1)CE角が(+)の領域にありかつ10°以上の臼蓋形成不全

2)股関節の変化が進んでいない

3)前または初期の状態

特徴:

1)比較的簡単で手術の侵襲が少ない

2)力学的に小さな力で体を支えられる

3)大腿骨と臼蓋の関節の接触面積が広くなる

不利な点:

1)脚長が1~1.5cm短縮する

2)一時的に外転筋力が弱くなる

3)骨切り術後に外転した位置で遠位骨片(下肢)をまっすぐにもってくるので(術後は股関節自体はいつも何度か外転した形となる)その分外転がしにくくなる.

4)骨切りした後の骨が完全にくっつくのに3~4ヶ月間かかる

5)稀に固定材料が破損することがある

6)後日に固定材料を抜去する手術が必要

7)何年か後に病変が進行して人工股関節置換術を行なうときに、骨の変形のために時としてやりにくいことがある

8)あまり病期の進んだ奨励には指示がない

 

患者さんへの注意点:大きく分けて2つの時期のものが考えられる。

1)術後3~4ヶ月から1年ぐらい

①退院後も必ず定期的に受診し、X線像にて骨癒合が完成(骨切り部の骨がついたか)どうかのチェックを受けること

②内反したことによって外転筋の長さが短くなりゆるみが出るために、筋弱力が生じて歩行時に大きく上半身を手術側に傾けて歩く跛行、すなわち中殿筋跛行となる。

したがって当初は松葉杖やステッキを用いてこのような跛行をつけないこと、急いで杖などをはずして歩いて固定材料(プレートなど)の破損をきたさないこと。

X線像での確認を医師にしてもらった上で、その後は股関節周囲筋の筋力をつけること。

2)他の一つは、

①術後に年余の時間が経過しても、年に一度は必ず診察を受け、動きやX線像の変化をチェックしてもらう。

②股関節周囲筋の筋力を鍛える運動を積極的に計画的に、できれば毎日する習慣をつける。

 

3.臼蓋形成術

<ランス-神中法>

形成不全のある臼蓋部に棚を形成することにより蓋を形成する方法。

1)手術中にX線で棚の位置を確認する必要がないため棚の設置が容易

2)形成した棚の吸収が起こり難い

3)形成した棚が臼蓋に強固に固定されるためスクリューなどの金属で固定する必要がなく、術後ギプスなどの固定をする必要がまったくない

 

適応:

1.年齢:10~35歳(最もよい適応年齢は15~25歳)

2.臨床症状:経時的に(月ごとに)増強する股関節痛の存在

3.X線所見

1)関節症の進行程度:前あるいは初期で関節軟骨があまり傷んでいない状態

2)大腿骨頭の変形が少ない:比較的球形を保っている

3)臼蓋形成不全の程度:CE角-5°~20°(最もよい適応は10~15°)

 

特徴:最小限の手術侵襲で十分な臼蓋の形成が可能であること。

他の臼蓋形成術と比較しても、手術時間、出血量ともに少なく、輸血の必要は全くない。

また他の棚形成術と比較しても、本手術法は形成した棚に強固な固定力が得られるため、形成棚のスクリューやワイヤー固定の必要がなく、したがって金属抜去の必要もない。

また、手術後のギプスや牽引などの外固定の必要も全くない。

問題点:最も重要なのは手術適応であり、適応を間違うと良好な成績は得られない。また、本法の手術手技は熟練を要するため、本法に熟知した股関節外科医が手術を行なうべきである。

患者さんへの注意点:手術を受ける患者さんは可能であれば術前に股関節周囲筋力、特に股関節外転筋力の訓練をしておくことが重要である。このことで手術後のリハビリが楽になり、その期間も短縮される。

手術後の日常生活では特に行なっていけないことはなく、スポーツも激しいスポーツ以外は可能である。

ただし、体重には十分注意を払い、標準体重より増えないようにすることが重要である。

 

4.キアリ骨盤骨切り術①

臼蓋形成不全に対する手術法として1955年にキアリ(Chiari)により報告された。

臼蓋上縁部で骨盤を横に切って大腿骨頭を内方に押し込むように骨盤を移動させる手術。

したがって、形成が不十分であった臼蓋の上外側に強固な骨性の屋根が形成される。

適応:8歳以上に適応があり、年齢の上限はない。

臼蓋形成不全および亜脱臼に適応。

前期・初期、進行期に対して行われる。進行期のものに対しては、将来人工股関節置換術を予定した場合にそれまでの間の時間かせぎ的な役割として年齢などを考慮して行われることがある。

特徴:骨切りした骨盤を移動させることによって強固な臼蓋が形成され股関節の荷重面積が拡大するとともに、骨頭中心が内方移動することによって(体重の中心までの「てこの柄」の長さが短縮し、結果的に)骨頭への荷重を少なくさせる.

手術手技:

①体位

キアリ手術の原法は仰臥位で前方経路で進入するが、最近は側臥位で側方進入が多い。

②進入路

中小殿筋を大転子とともに上方へ反転し、臼蓋縁を前方から後方へ広く展開する。

短所:作成した臼蓋の付加を受ける部分には関節軟骨を欠くことや下肢の短縮が生じること、骨盤の安定に重要な外転筋の方向が垂直化するために骨頭中心から外転筋までのの「てこの柄」が短くなり、逆により大きな外転筋力が必要になる。

合併症:

①骨頭の外上方偏位

術後加重歩行を始めると、骨頭が新たに形成された骨性の臼蓋の中にのめり込んでいくことがある。

骨切り部に腸骨外板を挿入することにより解決した。

②偽関節

患者さんへの注意点:キアリ手術はこの手術を受ければ一生大丈夫という手術ではなく、術後10年、15年間はあまり問題ないが、術後経過とともに股関節症変化の進行が起こってくることもあるので、体重を増やさないことや重いものを持たないことなどを注意することは重要。

もし股関節痛が出現したら、患部の安静を第一として直ちに医師の診察を受けること。

また股関節症変化の進行の有無をチェックするために定期的に通院し、X線を撮ってもらうことも重要である。

 

4.キアリ骨盤骨切り術②

先天性股関節脱臼に対する一手術法として1953年にキアリ(Chiari)により報告された。

股関節の直上で骨盤を水平に骨切りし、中枢側の骨片を外方に移動させることによって、臼蓋形成不全を改善する手術。

この手術は単なる屋根作りではなく、骨切り術の遠位骨片が内方に移動するとともに股関節の中心も内方に移動し、生体力学的に股関節の負担が軽くなることを強調した。

適応:前関節症,初期関節症で受ける。

特徴:主に骨切り後の新しい関節荷重部は、海綿骨であるために、新しい環境に応じて股関節が容易に再構築される。キアリ骨盤骨切り術の術後、外転筋の長さが短くなり一時的に筋力が低下しますが、ほぼ一年で回復する。小学校高学年の急速成長期では、術後の再構築が不安定なので、この時期は避けたほうがよい。

キアリ骨盤骨切り術を行っておくと
将来万が一人工股関節が必要になったときに、強固な生きた骨で臼蓋が形成されているので、人工股関節自身の長期にわたる良好な成績が期待できる。

患者さんへの注意点:この手術は、術後、多少なりとも骨盤腔の狭小化をきたすため、これから出産を予定している女性の場合、一側のみの骨盤骨切り術は問題ありませんが、両側の場合には帝王切開が必要となることをあらかじめ了承してもらわなければならない。したがって、多くの子供を希望される女性には、反対側の手術は骨盤腔が狭くならないような手術法を選ぶことが必要になる。

 

合併症:術後は神経麻痺、出血、感染

骨折、偽関節(骨が癒合しない状態)等に注意する必要がある。また、血栓症にも注意する。血栓症を疑わせるサインは、頻脈、胸部痛、下腿痛など。

 

5.寛骨臼回転骨切り術(rotational acetabular osteotomy,RAO)

寛骨臼回転骨切り術は、臼蓋形成不全や、先天性股関節脱臼後による変形性股関節症(二次性)に対し、たりない屋根(臼蓋)を自分の軟骨で、関節包をつけたままくり抜くように丸く骨切り回転し、正常な解剖学的状態を作る手術法である。

この手術は骨盤が狭くなったり、足が短くなったりすることはないので両股関節の手術を行っても自然分娩が可能である。

 

適応:この手術は、若くて軟骨のある前・初期が最もよい手術を受ける時期であると考える。また、X線像では、寛骨臼のかぶりの程度がCE角で10°以下が適応となる。

 

寛骨臼回転骨切り術の原理:

1.荷重域の拡大→荷重の分散

2.臼蓋荷重面の水平化→剪力の消失

3.骨頭位の内方化→骨頭への合力の減少

4.関節面適合性の改善

 

特徴:この手術は、回転した寛骨臼が骨頭を十分覆い、体重のかかる部分が拡大することによって、荷重が分散され一ヵ所で、体重を受けることがなくなるため体重が骨頭に均等にかかることになる。

また、屋根と骨頭との面がほぼ平行となるため屋根が斜めのときには外に骨頭が出て行く力が加わっていたが、それがなくなる。

また、内側へ骨頭寄るため跛行が少なくなる。

骨切りは、関節の1.5cm離れた部位で上方から後方、前方となされ、この結果骨切りされた寛骨臼は丸くくり抜かれ、この関節包をつけたままの寛骨臼を外前下方に反転し正常に近い形に再建する。このとき、外反股で内方化が得られない場合は内反骨切り術を加える。また、骨頭外方が尖型で回転しても平行に乗らない場合には外反骨切り術を加える。また、大転子が高く大転子についている外転筋が働かない場合は大転子引き下げ術(形成術)を合併する。

 

手術展開:2つのアプローチで3箇所(腸骨外壁、恥骨基部、坐骨基部)を展開する。

①前方アプローチ

②後方アプローチ

治療成績:正確に行われた場合、術後20年経過しても関節症変化は出現せず、安定した成績が期待できる。技術的には難しい手術であるが、関節温存手術として優れた術式であるといえる。

患者さんへの注意点:

1.体重のコントロール

2.筋力強化(股関節周囲筋)

3.日常生活動作の注意(できるだけ洋式の生活をする、頻回の階段昇降などを避ける)

4.杖の使用

5.妊娠、出産について(術後の検診を欠かさないようにする)

 

6.関節固定術

股関節の二大機能である、可動性と支持性のうち、可動性を犠牲にしても痛みがなく十分な支持性を期待する方法。

適応:股関節が高度に破壊され、痛みの激しい変形性股関節症の場合に適応となる。両側性の場合はよい適応とは言えず片側性罹患例が原則であり、年齢的には20歳前後から年長で、重労働あるいは長時間の立位作業を行う必要がある患者さんが一番の適応となる。また、股関節の可動性が全くなくなるので、それを代償する腰椎、膝関節に痛みやX線上で変化のないことが推奨される。

禁忌:同側あるいは対側の膝,股関節が強直している場合は禁忌。また、ギプス固定を長期間必要とするため、これに肉体的、精神的に耐えられることができない患者に適応はない。また術後,日常生活動作の獲得などに積極的な後療法が必要なため、これに協力できない方も禁忌となる。

手術手技:大きく分類すると、関節内固定と関節外固定に分けられるが、現在は種々の内固定および骨移植術、骨切り術の併用などが行なわれる。

1)河野の方法

関節内外に操作を加え固定する方法。

内固定は3~4mm径のキルシュナー鋼線を大腿骨頚部から骨頭に達し、わずかに骨頭からのぞかせておき、整復後キルシュナー鋼線をさらに2cmくらい臼蓋底に刺入し、内固定する。

固定肢位は屈曲30°、内外旋中間位、内外転中間位が望ましいとされる。

術後には大ギプス(体幹から足尖までのギプス)による外固定が必要。

2)コブラプレートを用いるAO法

この方法は関節面の処理は河野の方法とほぼ同じであるが、大転子を切り離し、また骨盤骨切り術を骨頭の高さで追加する。プレートが大きく、強固なため固定前にプレートと骨の弯曲を十分に適合させることが、肢位を目的のところにおくために必要である。この方法では、術後の外固定は必要ない。合併症で問題になるのは骨癒合不全である。

 

7.人工股関節置換術 total hip arthroplasty :THA

人工股関節の仕組み:

1)骨と人工関節の固定

大別して骨セメントを用いる方法と骨セメントを用いない方法とに二分される。

(1)セメント使用型:代表的なものはチャンレイタイプの人工股関節である

利点:骨の強弱に比較的関係なく安定した固定性が得られること。瞬時に固定されるため術後に早期からの訓練や荷重歩行可能。→高齢者に推奨される傾向にある。

問題点:セメント自体に破損が生じたり、人工関節とセメントの間や骨とセメントの間にいったんゆるみが生じるとそのゆるみは進行性であり、人工関節の入れ替え(再置換)が必要になる。

特に臼蓋にゆるみを生じる頻度が比較的高く、このため最近では大腿骨側のみをセメントを用いて固定する方法(ハイブリッド方式)がとられることがある。再置換の可能性の高い比較的若年者に対する人工股関節置換術にはセメントを使用しないで固定する方法がとられる。

感染の問題も大きなもので、初期からその予防のために幾多の配慮がなされるべきである。

(2)非セメント使用型:骨セメントを用いず金属表面を加工することによって固定している。骨組織の進入を計る目的で、金属表面を多孔質(porous coating)にしたり、ハイドロキシアパタイトをはりつけたり(hydroxyapatite coating)などの加工が加えられている。この表面加工部に進入した骨組織によってコンポーネントが固定される。

2)ゆるみ loosening

術後一定期間経過後の合併症で最も重要なのは、コンポーネントのゆるみである。

原因:未熟な手術手技(コンポーネントの不正確な設置、不十分なセメント手技など)、感染、外傷のどがあるが、最も重要となるのはポリエチレン摩耗粉により生じる骨溶解による無菌性ゆるみである。

3)材質

素材に必要十分な条件:生体親和性に優れていること、生体内で毒性、発癌性などを示さないこと、荷重という反復する機械的ストレスに耐えうる疲労強度を有すること、摺動面においては耐摩性に優れていること、さらにこれらの性質が長期間にわたり生体内で安定していることなどが上げられる。

⇒コバルト・クロム合金はすべての条件をクリアーしたものとして広く用いられている。

4)合併症

(1)術中あるいは術後比較的短期間(一年以内)に発症

①血管障害(術中・術後出血)

②神経障害(大腿神経・坐骨神経)

③脱臼

④感染

⑤血栓性静脈炎

⑥動脈塞栓(肺塞栓)

⑦異所性骨化

(2)術後一定期間経過後に発症

①ゆるみ

②脱臼

③骨折

④ステムの破損

⑤感染

5)THAの機種の変移と数の推移

 

8.チャンレイ人工股関節

特徴:

①ポリエチレンよりなるソケットとステンレススチールよりなる人工大腿骨頭からなる人工関節である。

②小骨頭径(22.25mm)の人工骨頭

③関節面をなす内径が小さく壁の厚いソケット

④骨セメントによる人工関節の固定

適応:人工股関節置換術は、生体の関節を人工物で置き換える手術であり、生体関節の機能が全廃したと考えられたときに行なうべき手術である。

疼痛を重視し、歩行時に一歩づつ疼痛があり、屋外活動が著しく困難な場合に本手術を考慮する。

股関節痛のために日常生活動作が著しく障害されたときに考慮すべき手術である。

 

<股関節手術後の異常歩行>

異常歩行の特徴と原因(股関節固定術後)

異常歩行の特徴

原因

①おじぎ歩行
重心の上下動が著明となる。 過度の屈曲固定により、腰椎の代償が不十分
② 尖足歩行
骨盤の傾斜、代償性側彎、骨盤の動揺等がみられる。 過度の内転位固定
③外転位歩行
股外転位で歩くか、患肢を垂直にし、骨盤を傾斜させて歩く。 過度の外転位固定
④骨盤の回旋
膝の運動軸が一方向のため軸を進行方向に直角にするように歩く。 外旋位固定

 

<日常生活指導>

・重いものを持たない

・杖の使用

・運動制限

・仕事内容

・体重管理など

 

●変形性膝関節症

変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:膝OA)とは

中高年者に見られる疾患で、進行性の関節軟骨の崩壊と消失、及び関節辺縁や軟骨下骨における反応性(増殖性)変化により特徴づけられる。

それが膝関節に起こったものを変形性膝関節症という。

 

Ⅰ.病態

初期変化 関節軟骨表面の輝板の消失

最表層の断裂や剥離

潤滑機能の低下

進行に伴い軟骨層のコラーゲン構築も変化→軟骨の弾性機能の低下

関節裂隙の狭小化→関節軟骨の摩耗、軟骨化骨の硬化→骨棘、骨嚢包形成

筋力からみた病態

1.筋萎縮

1)筋自体の老化,退化による萎縮

2)関節の疼痛あるいは体重過多等を原因とする運動量低下による廃用性萎縮

3)炎症による滑膜肥厚や関節水腫のために関節内圧が上昇し関節周囲の感覚神経終末を介して生じる反射性萎縮

2.筋力不全

高齢者では筋萎縮のみでなく、筋の代謝の低下、収縮たんぱく活性の低下による筋機能の低下がみられる。

 

Ⅱ.発生機序

体幹下部不安定性⇒胸腰筋膜elongation⇒骨盤後傾・骨盤挙上⇒股関節屈曲モーメント増大・股関節外転モーメント増大⇒膝関節伸展モーメント増大、屈曲拘縮 膝関節外反モーメント増大、内反変形⇒変形性膝関節症の発生仮説

 

Ⅲ.診断(病因)

1.一次性関節症:二次性以外のもの(老化現象、下肢・体幹のアライメント)

2.二次性関節症:明らかな病因のあるもの

1)関節の構造上の不適合

(1)先天性もしくは発育上の欠陥

①関節形成不全・先天性関節脱臼

②骨端症(Legg‐Calve‐Perthes病など)

③成長軟骨板損傷(大腿骨頭すべり症など)

④骨幹端部の形成異常

⑤骨系統疾患(多発性骨端骨異形性症など)

⑥骨軟骨炎

⑦原発性代謝異常(morquio症候群など)

⑧全身の変形性関節症(骨関節症)の部分症状(アルカプトン尿症)

(2)外傷性(骨折、靭帯損傷・半月損傷etc)

2)炎症性疾患

(1)慢性関節リウマチとその周辺疾患

(2)痛風,偽痛風

(3)化膿性関節炎

3)内分泌疾患

(1)糖尿病

(2)末端肥大症

(3)性ホルモン異常

(4)医原生副腎皮質機能亢進症

4)代謝異常

(1)Hemochromatosis(血色素症)

(2)Ochronosis(組織黒変病)

(3)Wilson病

(4)軟骨石灰化症

(5)Paget病

5)その他

(1)無腐性壊死

(2)血液疾患に伴う関節血症

(3)腫脹性疾患

(4)感染の後遺症(化膿性炎症etc)

膝OAは内反変形に伴う一次性が多い。

しかし臨床的には明確な分類は困難である。

 

Ⅳ.進行要因

変形性膝関節症のX線進行度分類

関連あり

可能性が大きい

可能性を示唆する報告

関連なし

加齢(+) 膝をよく使う職業(+) ランニング(+) 高尿酸血症
女性50歳以上(+) 喫煙(ー)
肥満(+) 子宮摘出(+)
大きな外傷(+) 骨粗鬆症(-)
体質 女性ホルモン療法(-)
  遺伝性(?) 黒人女性(+)
  結晶性沈着性疾患(+) 高脂血・血糖症(+)
関節炎の既往(+) 高血圧症(+)

 

Ⅴ.解剖学的分類

膝関節は、内側と外側の大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節の3つの関節により構成。

内側型膝関節症・・圧倒的に多い

膝蓋大腿関節症(patellofemoral  osteoarthritis  PF‐OA)・・次に多い

外側型膝関節症・・稀

1つの関節面だけが侵されることもあるし、2つ以上が複合される場合もある。

 

Ⅵ.頻度

・男女比=1:4女性に多くみられる

・40歳を過ぎての発症多、高齢者になるほど羅患率は高くなる。

 

Ⅶ.症状

1.疼痛

疼痛が出現する前に膝のこわばり感や不快感が持続することが多い。

こわばり感は朝起床時および動かし始めが多く、時間が経つにつれ消失する。

初期は動作の開始時のみ、次第に歩行中や立位時に持続的に感じる。

進行すると安静時痛も出現。

膝蓋大腿関節症では、階段昇降時(特に下降)の疼痛が特徴。

2.関節腫脹

関節内の水腫による。

・触診

膝蓋上方を検者の手掌で圧迫し、対側の手で膝蓋骨を押してその浮遊感を感じ取れる膝蓋骨跳動を観察。

・関節穿刺を行い、関節液の性状を知る。

鑑別診断(RA、結晶性関節炎、化膿性関節炎etc)

*貯留する関節液の量は,必ずしも疾患の重症度とは一致しない。

患者は「曲げにくい」、「張った感じがする」というような訴え

3.可動域制限

初期では最大屈曲の制限(正座時に痛み)

水腫が出現し始めると完全伸展が制限。→関節腔の容積が伸展時に減少するため

進行するに従って可動域は減少。

しかし自然経過のなかで骨性の強直に陥ることはない。

4.変形

日本人では内反変形が多く、膝内側に疼痛が生じる。

立位においてO脚変形が認められる。

5. 大腿四頭筋の萎縮

6.不安定性(末期)

これらの症状を取り除いてやること、病変の進行をくい止めること、さらに発症しないような予防をするために治療および生活指導が必要となる。

 

Ⅷ.ADL障害

・第一に疼痛、第二に関節可動域制限によってADLが制限される。

・階段昇降は早期には下降に障害が現れ、進行に伴い昇降ともに障害される。

・歩行障害はⅣ度以上では生活上の大きな制約になる。

・膝蓋大腿関節症では、特にしゃがみ込み、正座など深屈曲を伴う動作、小走りなど活発な動作で著しい。

階段昇降時(特に下降)の疼痛が特徴。

 

Ⅸ.X線像と病期分類

膝関節症を診断するにはX線写真は不可欠である。

特に大腿脛骨関節面の関節裂隙を評価するためには、立位時の表面像が重要となる。

また膝蓋大腿関節症の診断には膝蓋骨の軸射像が必要である。

 

X線像を用いた病気分類(佐々木)

StageⅠ:骨棘のみ

StageⅡ:正常の1/2以上残存している関節裂隙の狭小化

StageⅢ:正常の1/2以下まで狭小化が進行している場合

StageⅣ:関節裂隙の消失または1cm以下の骨の摩耗

StageⅤ:1cm以上の骨の摩耗または亜脱臼、または二次的な外側関節面の膝関節症変化

 

X線進行度分類(北大分類一部改変)

 進行度  骨棘または硬化像        関節裂隙狭小化
0       なし              なし

Ⅰ      あり              なし

Ⅱ      あり      あり(関節裂隙中央部で6mm未満3mm以上)

Ⅲ      あり      あり(関節裂隙中央部で3mm未満)

Ⅳ      あり      関節裂隙消失(骨接触)

Ⅴ      あり      骨陥凹、破壊

 

立位X線像によるOAの型分類(腰野)

 

 

 狭小化の部位

FT内側 FT外側 PF関節

膝数(%)

初期型

内側型

内側・膝蓋型

内側・外側型

外側型

外側・膝蓋型

膝蓋型

全型

-    -   -

+    -   -

+    -   +

+    +   -

-    +   -

-    +   +

-    -   +

+    +   +

376(30.3)

520(41.9)

244(19.6)

10(0.8)

35(2.8)

7(0.6)

26(2.1)

24(1.9)

1242

 

X線病期分類(安田)

a.大腿・脛骨関節

Stage 骨棘形成 関節裂隙狭小 骨質沈下 亜脱

+(片側顆1/2以下)

+(片側顆1/2以上)

+(内外両側顆)

+(内外両側顆)

+(2cm以下)

+(2cm以上)

 

b.大腿・膝蓋関節

Stage

骨棘形成

+(軽度の機能障害)

+(高度の機能障害)

関節裂隙狭小

+(骨接触)

亜脱

+(膝蓋骨の1/2以内)

+(膝蓋骨の1/2以上)

(陽性項目の所属するstageのうち高い方をとる)

 

Ⅹ.治療

<保存療法>

治療はまず、全ての症例に保存療法を開始する。

1.物理療法

2.運動療法

3.減量療法(運動療法 + 温熱療法 + 食事療法)

4.装具療法(内側型関節症には楔状の外側補高,外側型関節症には内側補高の足底板を用いる。)

5.薬物療法

疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(症状の消長に合わせて増減または休薬、そして再開される)

<観血療法>

変形性膝関節症の治療の基本は根気よく保存的治療法に努めることであり、本症発症の要因を可及的に除去することである。

観血的治療は痛みがとれないものに対して施行する。

1.関節鏡視下の洗浄・デブリドマン

1)適応

・X線上軽度または中等度の変形があり、保存的に軽快しない疼痛や繰り返す腫脹を示す症例

・半月板由来の引っかかりや疼痛を主体とする症例

*下肢のアライメントに異常の強い症例は良い適応となり難い。

2)術式

電動式のバーにて変性に陥った軟骨面をスムーズにし、肥厚充血した滑膜を除去し、変性断裂した半月板をトリミングする。

時に遊離骨軟骨片を摘出したり突出した骨棘を切除する場合もある。

操作の終了時に生理的食塩水で関節内を洗浄し手術は終わる。

3)治療メカニズム

関節内にあって関節炎を惹起していた化学物質が除かれ関節面が滑らかになるため、疼痛と腫脹の軽減が得られると考えられている。

 

2.脛骨高位骨切り術(high tibial osteotomy;HTO)

1)適応

膝内反変形を伴う内側型、内側膝蓋型のOAで外側脛骨大腿関節の軟骨に異常が少ないこと。

逆に外側型、外側膝蓋型では内側関節面に異常が少ないことが必要条件。

2)術式

大腿骨頭の中央と足関節中央を結んだ下肢の機能軸を変えることにより、変性に陥って疼痛の原因となっている関節面への荷重圧を減少させ、症状の改善を期待する手術。

 

(内反膝変形に対する外反骨切り術)

適応は具体的に①膝痛があり、連続歩行能力が500m以下、②歩行時の膝外側方動揺がある、③荷重時X線像で内側関節裂隙の狭小化、④荷重時X線像でFTAが180°以上である。

大腿脛骨角(FTA)が168°前後、または荷重線が顆間中央から1~2cm外側を通るように骨切り角度を設定する。

 

変形性膝関節症の高位脛骨骨切り術の各種手術法

(1)頚骨粗面上部外反楔状骨切り術

膝内反変形に対して矯正骨切りを行い、膝の安定性を拡大し、同一箇所への集荷集積を緩衝させる。

(長所)手技が容易で骨切り面が安定している。

(欠点)矯正角度が大きい場合、骨欠損が大きくなり骨癒合に不利。

術後に矯正角度が調整しにくい。

脛骨粗面が骨切り後に外偏しP-F関節の不適合を起こしやすい。

(2)hemiopen wedge骨切り術

外側2/3楔状骨骨切りと内側1/3に水平骨切りを行い、外側からの摘出骨片を内側に挿入する。

膝内反の大きいものに対して楔状骨切りを行うと摘出骨片が大きく下肢短縮をきたすので、このような症例に適応する。

(3)Pendelosteotomie

脛骨粗面の直上を上辺にもつ下角開角の台形骨切りを行う。

下肢の短縮がなく膝内反を矯正する。

(4)アーチ状骨切り術

脛骨粗面上を頂点にアーチ状に骨切りを行う。

荷重接触面も広く骨癒合も良い。

3.脛骨粗面挙上術・前内方移行術

1)適応

膝蓋大腿関節症に行う。

両脛骨大腿関節に関節症性変化を認めず、下肢のアライメントに強い異常がないこと。

2)術式

粗面の挙上を腸骨から移植骨片によって支える方法。

3)治療メカニズム

脛骨粗面の移行によって変性に陥った関節面を徐圧し症状の軽快を期待する手術

 

4.単顆片側置換術(unicompartmental knee arthroplasty;UKA)

1)適応

徐痛効果が高く手術侵襲が少ないため、高齢者(70歳以上)、体重70kg以下、骨粗鬆症の強い症例、日常活動性の高くない症例に比較的好まれる傾向がある。

人口膝関節全置換術に移行しやすい。

2)術式

変形し疼痛の原因となっている関節面を人口物(一般にコバルトクロムまたはチタン合金、時にアルミナセラミックと超緻密ポリエチレンで構成される関節面)で置き換えることにより徐痛効果を得る。

 

5.人口膝関節全置換術(total knee arthroplasty;TKR)

1)適応

・高度(X線でⅣ度以上)内反型OAでかつ、

・年齢は70歳以上、または

・高度な外反型または内・外両側型、などである

2)利点

・高位脛骨骨切り術より比較的早期に日常生活に復帰できる

・25°以上の強い屈曲拘縮も矯正できる

3)短所

・屈曲が100~120°止まりである

・ハイキング、ゴルフなど強い運動は慎まなければならない

・感染や弛みなどの重篤な合併症がありうることがある

 

<手術治療の決定>

年齢を指標⇒65歳未満→HTOの適応

65歳以上→術前膝屈曲角度を指標⇒120°未満→TKA

75歳未満→    〃     ⇒120°以上→HTO、片側置換

75歳以上→    〃     ⇒120°以上→片側置換

 

<日常生活指導>

関節面に負担をかけないことを目標として、体重の減量、杖の使用、筋力強化(特に大腿四頭筋)をすすめる。

 

Ⅺ.治療方法の選択

Ⅹ線病期を基本とし、これらに自覚症状、他覚所見の軽重、年齢、職業などを加味して行う。

1.StageⅠ・Ⅱ(症状の軽い例)

温熱療法。症状が強ければ外用剤や経口剤を理学療法と併用する。

2.StageⅡ・Ⅲ(ある程度進行した例)

上記の治療+楔状足底板を処方。

関節水腫が存在し症状の強い例には穿刺排液し、ステロイド剤の注入が効果がある。

保存療法を6~12ヶ月継続しても効果が上がらないときには手術療法(とくに高位脛骨骨切り術)をすすめる。

3.StageⅣ・Ⅴ(かなり進行した例や末期の例)

先ずは保存療法(温熱療法や膝装具)を試みる。

頑固な水腫が持続する例では、膝関節の洗浄や持続灌流で奏効することがある。

保存療法で改善をみない場合には手術が適応となる。

※すべての病期を通して、日常生活の指導は不可欠である。

 

Ⅻ.歩行の特徴

・踵接地時に膝関節屈曲、内反位をとる。

・病期進行およびFTA増大に伴い、thrust出現率やscrew  home  movement消失例が増加する。

・関節の重度な変形があると、足関節外反によって膝内反変形を代償したり、骨盤後傾によって大腿を外旋させる。

・大腿筋膜張筋筋活動量が高い。

「変形性関節症とADL」の画像検索結果

!(^^)!参考文献

医療学習レポート.変形性関節症とADL


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