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(*^_^*)骨折と運動療法の話


具体的な理学療法プログラム

―Gurltによる各骨の平均癒合日数―

中手骨 2週 脛骨・上腕骨頚部 7週
肋骨 3週 両下腿骨 8週
鎖骨 4週 大腿骨骨幹部 8週
前腕骨 5週 大腿骨頚部 12週
上腕骨骨幹部 6週

 

Ⅰ 上肢

上肢骨折は骨折部により経過の詳細が異なる。以下に主要な4種類の骨折について各論を記す。

1)上腕骨近位端部の骨折

保存療法、観血療法問わず、骨折周囲の軟部組織の修復や仮骨形成の骨折部の安定に伴い、可及的早期から理学療法を施行する。しかし、早期からの不適切な理学療法では偽関節や変形治癒を来たすため注意が必要である。

①安静固定期

固定中は肘関節以下の自動運動を可能な限り行い、拘縮と浮腫を予防する。また、肩関節周囲の筋緊張が高まり筋肉の凝りが存在する場合は、骨折部に配慮しながらマッサージなどにより筋の機能不全や短縮の予防を行う。

②可動初期

疼痛などの急性症状が軽減する受傷後または術後1週から重力を利用したCodman体操を開始し、骨折部の安定を確認したなら、回旋要素が含まれたpendulum体操へと移行していく。関節拘縮、筋のスパズムなど関節可動域制限因子が存在すると骨折部の動きを生じさせる要因となるため、注意が必要である。また、大胸筋や肩甲下筋など肩関節周囲筋のマッサージなどにより筋の状態を整えておく。この時の筋の伸張は骨折部への負荷となるため注意が必要である。

③積極的可動期

軟部組織の腫脹の減退後や修復後3~4週に、自動介助運動や愛護的他動運動を開始する。その後のほぼ骨癒合が得られた時期から自・他動運動や等尺性筋力強化を開始する。骨折の安定性を検討し、徐々に筋力訓練を進めていく。

この時期では、可動域制限が関節構成体か筋の緊張なのか制限因子を検討でき、積極的な関節学的治療を行える。また、可動域訓練の前にホットパックなどの温熱療法を施行しておくと効果的である。可動域が確保されてきたら複合運動や頭上動作も取り入れていく。

 

上腕骨近位端部の骨折の病期別理学療法プログラム

訓練 目的 注意事項
安静固定期 ・肘関節以下の自動運動

・マッサージなど

・拘縮、浮腫の予防

・循環の促進

・筋の機能不全、短縮の予防

・肩関節周囲の筋緊張緩和

・リラクセーション

・X線像にて骨折部に負荷がかかる筋を確認する
可動初期 ・マッサージなど

・Codman、pendulum体操

・愛護的な他動運動

・筋緊張の除去、リラクセーション

・筋の機能不全、短縮も改善

・pendulum体操では多方向への運動をより強調

・ROM改善

・Codman体操:回旋方向の運動を起こさせない

・ROM時の骨折部の離開方向への負荷(筋緊張が骨折部の動きを生じさせる危険性がある)

・過度の伸張

積極的可動期 ・温熱療法

・マッサージなど

・自動介助運動

・自動,他動運動

・筋力強化訓練

・複合運動

・頭上運動

・ADL訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向   上

・筋緊張の除去、リラクセーション

・筋の機能不全、短縮の改善

・ROM、筋力の改善

・動作遂行能力の向上

・骨癒合による骨折部の安定性

・萎縮筋においては低負荷から筋力訓練を開始する

・代償運動

 

2)上腕骨骨幹部の骨折

上腕骨骨幹部のような長幹骨では骨癒合は良好で予後は安定しているかが、骨折部位により筋の影響が異なるため、二次的な肘・肩関節の機能障害に注意する。また、保存療法と観血的療法後の理学療法は基本的に同様であるが、固定期間が異なるため、筋萎縮や肘・肩関節の拘縮の程度によりプログラムが異なる。

①安定固定期

肘関節以下の自動運動を可能な限り行い、拘縮と浮腫を予防する。保存療法では5週間前後の固定期間を必要とし、浮腫や近位関節周囲の筋緊張などに注意する。ギプス固定時は重力を利用したCodman体操が早期から可能であり、必要に応じて把握訓練も行う。

観血的療法では5日前後で夜間のみ三角巾固定へと徐々に固定除去され、固定による廃用性症状は比較的少ない。

②可動初期

固定除去後は上腕骨骨折は捻れに弱いため、捻れを伴う回旋運動は骨折部の修復を確認してから行う。関節拘縮、筋緊張など関節可動域制限因子が存在すると骨折部の動きを生じさせる要因になるため、注意が必要である。可動域訓練の前にホットパックや渦流浴などの温熱療法を利用する。また、筋萎縮を確認した場合は、注意深い管理の下に、骨折部を転位方向に作用させない筋での筋収縮を低負荷から行う。観血的療法の場合は、固定除去後は自動介助運動や愛護的他動運動、低負荷による筋収縮を行う。

③積極的可動期

X線像や医師から骨癒合を得られたかを確認し、自・他動運動や等尺性筋力強化を開始する。観血的療法の場合は3週前後から徐々に始めていくことができる。骨折の安定性を検討し、徐々に筋力訓練や可動域訓練を進めていく。肘・肩の関節可動域が確保されてきたら複合運動も取り入れていく。

 

上腕骨骨幹部の骨折の病期別理学療法プログラム

評価 目的 注意事項
安静固定期 ・固定部以外の自動運動

・把握訓練

・マッサージなど

・Codman体操

・拘縮、浮腫の予防

・循環の促進

・筋緊張の除去、リラクセーショ  ン

・筋の機能不全、短縮の予防

・近位関節(肩関節)の拘縮予防

・X線像にて上腕骨に対しての骨折線の位置、骨折部の離開方向へ作用する筋を確認する

・骨折部へ筋の伸張作用が加わらないようにする

・橈骨神経麻痺

可動初期 ・温熱療法

・マッサージなど

・愛護的他動運動

・自動介助運動

・低負荷からの筋力訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・肩関節周囲筋の緊張緩和

・リラクセーション

・筋の機能不全、短縮の改善

・ROM、筋力の改善

・ROM時の骨折部の離開方向への負荷(筋緊張が骨折部の動きを生じさせる危険性がある)

・捻れを伴う回旋運動は骨癒合の確認をして愛護的に行う

積極的可動期 ・温熱療法

・マッサージなど

・自動,他動運動

・筋力強化訓練

・複合運動

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・筋緊張の除去、リラクセーション

・筋の機能不全、短縮の改善

・動作遂行能力の向上

・骨癒合による骨折部の安定性

・代償運動

 

3)上腕骨遠位端部の骨折

上腕骨顆上骨折は正確な整復位確保の有無が予後に大きく影響を与える。そのため理学療法は、変形治癒の予防やフォルクマン阻血性拘縮などの二次的障害の予防が重要となる。評価および訓練では、上肢形態の左右差や神経麻痺、痛み、皮膚の状況などに注意を必要とする。

①安静固定期

3週間前後を必要とし、指・手関節の拘縮や浮腫の予防を行うが、回内外は筋が内外側上顆に付着しているため避ける。

②可動初期

固定が除去され肘屈曲・進展の自動運動が可能となる。CPMがあれば疼痛が増強しない範囲で行い、抜糸後は渦流浴などの温熱療法を併用しながら自動運動を行うと有効的である。自動運動の試行前にはマッサージなどの手技により、上腕二頭筋や前腕筋群などの筋緊張を和らげることも重要である。しかし回内外は、筋の起始停止への影響を考慮し強い自動運動は避ける。骨折部が安定していれば自動介助運動を行い、そうでなければ愛護的な他動運動を慎重に行う。その際、内外側上顆の動揺性やend feelに注意しながら試行し、骨の変形を確認する。また、肩などの代償運動を避けた正確な運動をするため肘の屈曲・伸展の筋収縮学習を行い、徐々に低負荷での無理のない筋力強化へと移行していく。

③積極的可動期

X線像や医師から骨癒合状態を確認し他動運動や筋力強化を進めていく。しかし、積極的な筋力強化は時期や運動方向を十分考慮する必要があり、ある程度の可動域を確保して行う。骨癒合が良好であれば最終域の関節可動域訓練や複合運動へと展開していく。肘関節は屈曲・伸展のみであるため過度の可動域訓練を招きやすく、それにより異所性骨化や筋炎を起こすので注意が必要である。

上腕骨遠位端部の骨折の病期別理学療法プログラム

訓練 目的 注意事項
安静固定期 ・肘関節以下の自動運動

・把握訓練

・拘縮,浮腫の予防

・循環の促進

・X線像にて骨折部の離開方向へ作用する筋を確認する

・回内外は避ける(筋が内,外側上顆に付着しているため)

・疼痛,腫脹,皮膚の状態の確認

・フォルクマン阻血性拘縮

可動初期 ・温熱療法

・マッサージなど

・愛護的な他動運動(CPM)

・自動介助運動

・低負荷からの筋力訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・上腕二頭筋や前腕筋群の筋緊張緩和

・リラクセーション

・筋の機能不全,短縮の改善

・ROM,筋力の改善

・骨折部の離開方向への負荷

・内,外側上顆の動揺性

・代償運動

積極的可動期 ・温熱療法

・マッサージなど

・自動,他動運動

・筋力強化訓練

・複合運動

・ADL訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・筋緊張の除去,リラクセーション

・筋の機能不全,短縮の改善

・ROM,筋力の改善

・動作遂行能力の向上

・骨癒合による骨折部の安定性

・積極的な筋力強化はある程度のROMを確保してから行う

・時期,運動方向を考慮

・徒手矯正や強いROM訓練による異所性骨化,筋炎

・代償運動

 

4)Colles骨折

初期は安静固定を強いられるため近位関節の廃用性予防が中心となる.手関節は腱と神経が集束さ

れるため,受傷時の衝撃や圧迫,過度な(掌屈)角度での固定肢位による正中神経麻痺(手根管症候群)や浮腫,関節や手内筋の拘縮,さらにRSD症候群などの二次的障害に留意して理学療法を行う.

①安静固定期

廃用性予防のために手指や肘関節の積極的な自動・他動運動を開始する.浮腫などの循環障害に対しては,安静固定期では運動が制限されるため,心臓よりも挙上することが最も有効である.肘を顔の近くに挙上して,自動運動,タオルやスポンジの把握運動などを行う.また,肩関節の挙上運動も拘縮予防や上肢全体の循環促進に有効である.

②可動初期

固定除去後は,浮腫,腫脹,熱感,疼痛,皮膚の状態を確認して,渦流浴などの温熱療法を伴いながら手や手指の自動・他動運動を行う.

その後,愛護的に関節可動域訓練を関節の遊びなどを考慮しながら行うが,手関節は橈骨手根間関節と手根中央関節とで可動域を担っているため,それぞれの関節の可動性を確かめる.手や前腕の筋群の短縮の改善や緊張の除去,リラクセーションを目的としてストレッチやマッサージなどを施行する.また,手内筋や前腕の筋群に対しては低負荷の筋力強化から始めていき,肩や肘へは状態に応じて積極的に施行する.

③積極的可動期

骨癒合が得られてから,温熱療法後にすべての運動方向に対して,徒手的な可動域訓練や徐々に負荷を上げる筋力強化を施行する.その際,関節可動域の制限因子を検討しながら進めていく.また,二関節筋などの筋の伸張を含めた積極的な可動域訓練を行う.筋力強化では,個々の抵抗運動だけでなく,タオルを絞る動作や壁への雑巾がけなどの応用動作や巧緻性を考慮した動作を取り入れていく.

表4 Colles骨折の病期別理学療法プログラム

訓練 目的 注意事項
安静固定期

・固定部以外の関節可動域訓練(MP,PIP,DIP含む)

・固定部以外の自動運動

・把握運動

・拘縮,浮腫の予防

・循環の促進

・Ⅹ線像にて転位方向と不安定型の程度を確認する

・手根間症候群(正中神経麻痺)

・疼痛,腫脹,皮膚の状態の確認(RSD症候群)

・前腕筋群(外来筋群)の短縮

可動初期

・温熱療法

・マッサージなど

・愛護的な他動運動

・自動運動

・低負荷からの筋力訓練

・安静固定期での訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・筋緊張の除去,

リラクゼーション

・筋の機能不全,短縮の改善

・ROM,筋力の改善

・橈骨手根関節と手根中央関節の可動性を考慮する

・手関節や前腕の筋群に対しては低負荷の筋力強化から開始する

・前腕筋群(外来筋群)の短縮

積極的可動期

・温熱療法

・マッサージなど

・自動・他動運動

・筋力強化訓練

・複合運動

・ADL訓練

・巧緻動作訓練

・軟部組織の循環や粘弾性を向上

・筋緊張の除去,

リラクゼーション

・筋の機能不全,短縮の改善

・ROM,筋力の改善

・動作遂行能力の向上

・骨癒合による骨折部の安定性

・転位方向と不安定型の程度により,関節自体の可動域と見かけ上の可動域の相違が出る

 

 

Ⅱ 下肢

下肢骨折のリハビリテーション的目標は,可能な限り受傷前の機能レベルまで正常な歩行を回復させることである.よって正常歩行についての理解が必要である.

 

各病期における治療プログラム

安静期           回復期            社会復帰準備期

オリエンテーション         荷重訓練         全身持久力増強訓練

全身状態調整訓練       平行棒内立位・歩行訓練       生活に合わせた動作訓練

ポジショニング          杖歩行訓練             応用歩行訓練

健肢・体幹の筋力強化       筋力強化訓練            筋力強化訓練

患肢の等尺性筋収縮         ROM訓練              ROM訓練

ROM訓練            トランスファー訓練           外出・外泊訓練

ADL指導              住宅環境整備

物理療法

(文献2)

 

以下に大腿骨頸部骨折を中心に主要な4種類の骨折について各論を記す.

 

1) 大腿骨頸部骨折

術式によって多少相違があるが通常,一定のプロトコルにしたがって進めていくのが普

通である.

理学療法を進めていくうえで基本的には荷重開始などの時期,荷重量の漸増や歩行開始

の時期および移動手段(松葉杖,歩行器,一本杖など)が重要となる.

① 理学療法の基本方針

・早期理学療法の開始による廃用症候群の予防

・早期離床,起立,歩行によるADLの拡大

・疼痛に対する物理療法

・合併症に対する配慮

・心理・精神的支援

・受傷前の日常の生活活動を目標とする

・転倒の防止

・補装具の配慮(車椅子,補高,杖,松葉杖,歩行器)

・早期の社会復帰と退院後のホームプログラムの指導

② 関節可動域訓練               老年医学 Vol.41 pp.941-942

自動運動が基本であり,適宜介助を加える(ストレッチ運動も適宜組み合わせる)

→ 過度の可動域訓練は疼痛をきたすので無理をしない程度に行なう

股関節

・100°曲がると機能的である

・自動運動で獲得できない時は,Thomas法 PTが股関節の屈曲を介助し,膝屈曲,足背

屈も同時に行なう

・伸展は0°を目標とする

・Thomas肢位をとらせての患側の屈曲拘縮の度合

・高齢者では,円背と骨盤の後傾がみられる

・外転,外旋は20°程度を目標として自動で行なう

* 内転・内旋は脱臼をきたすので行なわない

膝関節

・炎症に注意

・屈曲を仰臥位(端坐位)と腹臥位(股関節伸展位)で行なう

→ 大腿四頭筋が股と膝関節をまたぐ二関節筋であるから

・膝屈曲拘縮の改善は足関節底屈位で行なう

→ 下腿三頭筋が膝と足関節をまたぐ二関節筋であるから

足関節

・尖足位をきたさぬように予防

・膝屈曲位と伸展位の両方で足の背屈訓練を行なう

→ 下腿三頭筋が二関節筋であるから

 

③ 筋力増強訓練

股外転筋(中殿筋)

・立位での安定性に重要

・仰臥位で患側下肢を少し浮かせて,外転運動を行なわせる

→ MMT3以下なら,PTが患肢を支えて介助する

・患側下肢のコントロールが十分できる → 健側下の側臥位で,内転防止枕を下肢に挟ん

での抗重力外転運動を行なう

股屈筋(腸腰筋,大腿四頭筋)

・仰臥位で膝伸展位挙上運動(active SLR)を行なう

〔反対側の膝を立てて骨盤前傾と腰痛を防止〕

→ 腸腰筋,大腿四頭筋の両者を鍛えることができる

・端坐位での腿上げ (腸腰筋の強化)

※ 腸腰筋は坐位・立位における体幹の安定と,歩行能力獲得に重要

股伸筋(大殿筋,ハムストリングス)

・仰臥位で膝下に枕を置き,マットに押し付けるようにして股を伸展させる

⇒ 立位が可能となったら,テーブルや平行棒につかまりながら体を前屈させ,患肢を後

方に上げる

股内転筋(大,長,短内転筋)

・仰臥位で,脱臼防止用枕を下肢に挟み,内転の等尺性収縮を行なう

膝伸筋(大腿四頭筋)

・仰臥位での等尺性収縮(active SLR)を行なう 〔股屈筋と同じ肢位〕

※ 非荷重のうえ膝関節の動きを伴わないので高齢者によい

*     端坐位で膝を屈伸する等張性訓練は膝蓋大腿関節に疼痛をきたす恐れがある.

 

④ 歩行訓練

※ 受傷後早期の離床が合併症の予防に重要

・患側下肢のコントロールができれば,車椅子によるトイレなどの移動が可能

・骨接合術では荷重開始時期の判断が重要な問題

→ 荷重が許されない場合は,平行棒内で非荷重歩行,部分荷重歩行を行なう

・骨折部の安定性がよい場合や,人工骨頭置換術後では1週以内の早期荷重を行う

・平行棒で起立練習を行なう → 10分程度の立位が維持できれば歩行させる

*     大腿四頭筋力が十分でない場合は,ニーブレスを用いて膝崩れによる転倒を予防.

荷重量(体重比)

歩行

歩数

(ケイデンス)

1/5

1/3

2/3

3/4

平行棒(toe touch)

松葉杖

ロフストランド杖

T字杖

55

55~60

70~80

 

⑤ 呼吸機能訓練

疼痛による体動の減少と薬剤投与などの影響により呼吸機能が低下

→ 換気量減少と喀痰能力低下で無気肺を起こしやすくなる

・深呼吸をさせ,気道分泌物を排出しやすくする

・積極的な体位変換と早期離床が換気量を増大させ,喀痰能力を改善する

※ 粘稠痰の場合は,水分の補給と吸入療法を行なう

※ 深呼吸は,呼気を意識させ十分に呼出させてから,ゆっくりと吸気させる

 

・保存療法,骨接合術後2年間は遅発性骨頭壊死の危険性がある

・人工骨頭置換術は感染,緩みの危険性がある

それぞれの早期発見が重要である.〔定期的X線検査が重要〕

・人工骨頭は脱臼の危険があり,ズボン,靴の着脱などADL指導を行なう

・転倒防止対策として,家の改造や地域リハとの連携が重要

ソーシャルワーカーの介入による家族を含めた社会的救済に関する指導

 

 

⑥ 手術別,術後のリハビリテーション

大腿骨頸部内側骨折骨接合

以下のプログラムは,術直後からの荷重が可能であるという立場に立って行なうものである.

*前提条件として,骨折の良好な整復と的確な内固定がなされていることである.

術直後

・麻酔の影響がなくなり次第,起坐や自動体交の訓練を開始(必要に応じて介助を行なう)

・大腿四頭筋,ハムストリング,殿筋群の等尺性運動

・足指の自動運動

・足関節の底背屈は,足底板やベッドの手すりを利用して抵抗運動として行なうと効率的

術3日後

・膝,股関節の介助自動運動,SLR訓練

(足底部を軽く圧迫して介助してやることにより,容易に下肢を挙上できるようになる)

・座位訓練

・起坐位が安定したらベッドサイドに踏み台を置き,大腿四頭筋の等張性訓練および足踏み運動を行なう.

・足底を着地して踏み込んだ状態で,膝屈伸の抵抗運動を行なう

・車椅子,ポータブル便器への移動練習は,患肢の自動挙上が可能となり次第開始

術7日後

・立位訓練:ベッドサイド,訓練室の斜面台や平行棒で開始.痛みが軽くなり次第,患肢に荷重してよい.立位を保つためのバランス訓練を行なう.

・筋力訓練:大腿四頭筋,ハムストリング,大殿筋のベッド上の等尺性運動,等張性運動に加えて立位での股関節の屈曲・伸展・外転・内転運動を行なう.股関節外転筋力の増強を重視.プールが利用できる場合は,創が直り次第水中での歩行.筋力訓練を開始

術2週後

・平行棒内歩行から松葉杖歩行,片松葉杖歩行へとX線検査で骨折部の状態を確認しながら移行する.

・下肢筋力とバランス機能に留意し,転倒の危険性を回避する必要がある

・下肢筋力増強訓練を引き続き行なうが,足底を壁に押し付けたり,床に着地した状態での閉鎖運動連鎖下での訓練を行なうように心がける

・求心性・遠心性の両収縮要素を取り入れるようにする

術4週後

・股関節外転筋力が十分強化されて,Trenderenburg徴候が陰性となれば,松葉杖から1本杖へと移行.

・歩行がある程度安定してきたら,筋力訓練と平行してバランス訓練,すなわち神経運動器強調訓練を行なう.

・不意な微小外力の対応能力の訓練が重要

・各種の不安定板の使用,閉眼した状態での平行棒内歩行,平行棒内歩行中に不意に肩をつかんだりして小外力を与え,崩れかけたバランスを立て直す訓練など

⇒PTの十分な管理の下に行なう

術6週後

・低い段階の昇降訓練

・段差のある障害物を乗り越えての歩行訓練

・筋力訓練,バランス訓練を引き続き行ない,より能力を充実させる

 

退院時の要件

・患者の体力や回復度,病院側の条件によっても異なるが,おおよそ術3~6週後頃の退院が目標となる.

・受傷前に歩行可能であった患者が自宅に帰る際には,家族の介護下に少なくとも下記のことができることが望ましい.

①独力でベッドから立ち上がることができる.

②室内を歩行器や杖を使い10m以上歩ける.

③腰式便所やシャワーの使用ができる.

*独居者の場合は,中間施設や介護施設などへの転院が必要となる.

*退院後自宅で行なう訓練計画(ホームプログラム)を作成し,入院中にその練習をして患者および家族に十分理解してもらう.

 

大腿骨頚部外側骨折骨接合(CHS)

術翌日

・心肺機能に問題がなければ,ベッド上で長坐位ははじめは45°とし,手術部の痛みが軽

ければ90°までとする

この際,ひもを足部のベッド枠に結び付けて,これを引っ張ると,臥位からの長坐位動作と,両上肢の筋力訓練が可能

・深呼吸を2~3回/時を行なわせる

・患側大腿四頭筋のセッティング

・足関節および足指の屈伸訓練

・股関節および膝の軽い屈曲訓練

・健側肢の膝を立てて殿部を挙上する

・健側を下にした完全な側臥位をとる

(← これにより背部清拭とその管理を行なう.褥瘡予防にも役立つ)

・理学療法士による股関節の他動内外転を軽く行なう

・可能であれば,SLR訓練を行なう

・両上肢の筋力強化,健側下肢のSLR訓練

術2日後

・手術部位の痛みが軽くなれば,端座位をとらせる

(背面に布団を丸めて背もたれとして置き,疲れてきたらこれにもたれるようにする)

→ 日中は可能な限りこの姿勢を維持しておく

時々両膝をブラブラと屈伸させる.円椅子に足を置いて負荷を行なわせる.

食事もこの姿勢でとらせる.疲れを感じれば仰臥位に戻す

・術翌日の訓練はすべて続ける

・SLR訓練を積極的に行なう

術3日後

・端坐位が連続して1時か二条とれるようになれば車椅子に乗せる

*車椅子への移乗の際,患肢に負荷しても良い

・起立訓練を開始

*斜面台で行ない,起立角度を漸次増していく.血圧の変動を見ながら起立角度をあげ

ていく.

※ 前日に端座位を十分にとっていると,起立角度を円滑にあげていくことが可能

*血圧の変動と顔色を観察しながら,悪い徴候が現われば,角度を下げていく

・SLR訓練をより頻回に行なわせ,股関節の屈筋と大腿四頭筋の強化に努める

・90°起立の維持時が10分間以上可能となれば,歩行訓練に移ってもよいが,手術部の疼痛があれば,歩行訓練は延期し,起立訓練の段階にとどめておく

・歩行訓練:局所の疼痛が歩行に耐えられる程度に軽減しない場合は歩行訓練への移行はできない.

* 歩行に耐えられるようになるまでの期間は,一般的には,術1~2週間を要する.術3週後には,ほとんどの場合疼痛は消失する.

・平行棒内歩行:平行棒内で,両上肢と両下肢を用いて歩行訓練を行なう.

疲れを訴えるまで平行棒内での往復を繰り返す.

・片脚起立訓練も両手あるいは片手支持で行なう

これにより大腿四頭筋の強化を身体バランスをとる訓練となる

* 平行棒内で立てない,脚を前に出せない場合には,腰にベルトひもを巻きつけ,PTが

体重を支えながら脚を蹴り出すようにして歩行する.受傷前歩行不能であった例では,

脚を前に出すことが困難.

 

大腿骨頚部外側骨折骨接合(エンダー釘)

基本的に早期離床と早期荷重を目的としたリハビリテーションである.

術直後

・術後の全身管理が最優先.

・架台上に患肢を保持して,高挙・安静を保ち,腫脹の予防を行なう

・呼吸を楽にする目的で30°位ベッドを挙上しておく

・麻酔から覚醒したら,早期から足指および足関節の運動を開始し,血栓症や塞栓症を予防

・臥床中はソフト架台の使用や,足部外側に砂嚢を置き,外旋の予防に努め,頻回にチェックする

術翌日~1日後

・廃用性障害の予防.

・歩行の準備を目的としたリハビリテーションが行なわれる.

※ ここの状態の配慮した対応が必要(全身状態が安定していないので)

術翌日~2日後

・術翌日より起坐を開始し,膝痛が許容できれば端坐位まで行なう.

・端坐位は最初は背もたれを用いて,坐位保持のバランスがとれるようであれば,背もたれを外して自力での保持を目指す.

・足部を安定させることが肝要

・足指の把握訓練

*足指把握機能は身体制御能の維持にとって重要 ⇒ 転倒の防止につながる

・臥床からの離脱は,受傷から続いた肉体的・精神的悪循環を断ち,自力での社会復帰を促す出発点となる.

* 術前に歩行能力の乏しかった例では,坐位の自力保持が最終ゴールとなる

・大腿四頭筋やハムストリングの等尺性運動,殿筋の自動運動を開始

・患側下肢外旋拘縮の防止のため,内旋訓練を開始

・患側の自動運動はうまく行なえないことがあるので,患側で指導し要領を得てから,患側の運動を介助しながら行なう

・CPMを用いた関節可動域訓練も疼痛の許容範囲から開始

* CPMは,その後も90°以上の自動屈曲が可能になるまで継続

・歩行訓練の準備として,健側下肢の抵抗訓練や上半身の機能評価をして上肢機能維持訓練も同時に開始.

・自力での食事摂取や排尿・排便などADLを積極的に促す

*特に全身状態が不安定なので,心肺機能や患部の状態に常に注意を払いながらリハビリテーションを行う必要がある.

術2日~1週後

・リハビリテーションの予定や意義について本人や家族に十分説明し,社会復帰への意欲の向上を促す.

・坐位バランスが安定であれば,車椅子への移動を行なう

・病室を出ての活動を開始(介助ありでのトイレでの排尿・排便を行なう)

・患側の膝,股関節の可動域訓練,SLR訓練や外転・内転訓練を,疼痛の許容する範囲で自動介助より開始

・自動運動が可能になれば抵抗訓練を開始(徐々に運動回数を増やすことで負荷を上げていく)

後半では

・免荷での起立訓練を平行棒や歩行器を利用して開始

*高齢者では短期臥床であっても起立性低血圧を起こすことがあるので,初期は慎重に

・起坐や端坐位,車椅子への移行が自力で行なえるように訓練を行なう

術1~2週後

・荷重の開始(経過時のX線を詳細にチェック)

* 異常が認められれば,荷重時期の2~3週間の延長,再手術などを検討しなければならない

・30~50%の部分荷重を慎重に開始

*平行棒内より開始し,歩行器・4点支持歩行器・松葉杖などここの身体能力や理解力に応じて段階を進める.

*安定型で固定のよい例は,全荷重へと移行する

・免荷歩行と同様に,部分荷重が無理な例は起立保持訓練に留め,全荷重まで待機する

*患肢の膝・股関節の可動域訓練や筋力訓練を,個々の能力に応じて加速して行ない,術3週後までに受傷前の状態になることを目標とする.

術2~3週後

・X線を検討の上,全荷重での歩行訓練を開始

・術後初めての荷重では,立位バランスの維持から,始めて不安の解消を行ない,徐々に平行棒や歩行器を用いて歩行.

*水中訓練施設があれば不安なくスムーズに行なうことができる.

・車椅子への移動,椅子からの立ち上がり動作,起居動作,トイレへの移動,段差越え動作,階段昇降など,個々の能力に応じたADLの自立に向けた訓練を開始.

*この時期までに,受傷前の患者の状況,術後の機能的予後の予測,帰宅後の生活環境,主介護者の介護能力などを,全スタッフで総合的に判断し,最終ゴール設定を行なう

⇒ 必要に応じて,家屋内外の改造や,介護サービスの利用,訪問看護の利用,老人保健施設への転院などが検討される.

術3~4週後

・退院の時期であるので,必要な補ジョブを使用しての歩行

・退院後の家屋内外で,必要とされるADLの自立訓練を重点的に行なう

・家庭での訓練指導

退院後

・通院が可能であれば,少しでも上の段階への向上を目指したリハビリテーションを継続する.

・実生活での状況を聴取し,改善できる点を指導

 

人工骨頭置換術

入院当日

・合併症の予防 (入院という環境に慣れさせる)

*積極的なコミュニケーションにより,痴呆症状の発生を予防

*肺炎の予防として,呼吸訓練・口腔内の清潔の保持・寝たきり状態の回避などが重要.

嚥下性肺炎の防止,訓練を遊びながらできるような工夫とエチケットを行なう.

・家族には術前・術後のリハビリテーションの内容と面会の必要性を説明する

*高齢者の治療に家族の協力はきわめて重要.

・鋼線牽引を行なった後,疼痛の起こらない範囲でベッドアップする(通常60°くらい)

・おむつはできるだけ避け,便器を使用させる(尿道カテーテルの留置は極力行なわない)

・疼痛は夜間不眠を起こし,夜間せん妄をきたす恐れがある.薬物療法を行なう

入院翌日

・PTは訓練の仕方を説明 (リハビリテーションの重要性を患者に理解してもらう)

・健側のSLR訓練を行なう(健側,上肢を使用して,腰を浮かせる.できない場合は尻すぼめ運動)

・患側の足関節の自動運動,可能であれば,患側の大腿四頭筋の等尺性運動を行なう

・上肢の筋力増強訓練を開始 (心不全の既往があれば体力に合わせて行なう)

術翌日

・吸引ドレーンを抜去する.

・ベッドでは外転枕を使用.

・患側の大腿四頭筋,殿筋の等尺性運動,足関節の自動運動を行なう.

・PTの介助の下に,股関節の屈曲,内・外転,膝の屈曲を緩やかにゆっくりと非暴力的に行なう.

・上肢の筋力増強訓練を行なう.

・呼吸訓練を続行.

術2日後

・斜面台での起立訓練を行ない,気分不良などがなければ,歩行器歩行を開始

・監視下で,ベッドサイドでの端坐位を行なう

・監視下でベッド上での体動を行なう(理解力のない患者では,非監視時,許容範囲をこえた関節運動を行ない,脱臼が発生することもある)

術3~7日後

・患肢のSLR訓練を開始

術1~2週後

・椅子より立ち上がり訓練を開始(この際,椅子は高いものを使用する)

・尻を椅子の前の端までずらしてから立ち上がる動作を行なう(股関節を過屈曲すると脱臼が発生する)

・脱臼の危険性とその具体的な肢位,動作を患者家族に教える

(自宅のトイレが和式であれば,洋式へ改造するように勧める)

・病棟内を歩行器またはT字杖にて歩行

・階段の昇降,障害物の乗り越えなどの応用歩行訓練を行なう

・可能なら室内自転車を開始

*経過のよい症例では退院を検討する

術3~5週後

・X線像にて異所性骨化の発生をチェック

・X線像によるチェックは術6週後まで毎週行なう

・股関節外転筋の更なる強化を行なう

・立位にて外転運動を行なう

術6週後

・床よりの立ち上がり動作訓練を開始

 

今後の課題

①レントゲン像から骨癒合をある程度把握できるようになり,医師からの情報と合わせて病期を判断し,それに見合ったROM訓練,筋力強化訓練,歩行訓練ができるようになっていくこと,特にROM訓練において固定蹄子に用いる力の強さはいまだに明確にされていない.

②部分荷重の比率については実際のところ明確な基準は内容である.Evidence-based Medicineを考慮し,どの時期に,どれくらいの荷重をかければ効率が良いかを明確にしていくこと.

③個人の最終目標を年齢別・病期別に,かつ客観的に範囲内でできるようなツールの開発と特に社会的準備期における運動療法の確立.

2)大腿骨骨折

① 大腿骨骨幹部骨折

急性期の保存療法での問題点は,長期臥床による廃用症候群の予防と治療である.ことに老人の場合には十分な配慮が必要であり,ベッドサイドの理学療法の意義は大きい.

最も問題となる局所合併症は膝関節拘縮である.この原因は主に骨折部位に位置している筋の損傷による瘢痕が広範囲に骨組織と癒着することであり,さらに固定に伴って関節内癒着も発生する.この予防には早期からの下腿筋pumping,自己他動的または他動的な膝蓋骨のマニピュレーションを始める.受傷2週間後から緩徐な大腿四頭筋自動収縮運動(setting),4週目頃から膝関節の愛護的な屈曲運動を漸増的に慎重に開始する.

しかしこれらは骨折の様態が症例ごとに異なり,保存療法の違いによっても後療法プログラムは違ってくるので,理学療法士は主治医からの骨折部の安定性についての情報を十分に理解しておくことが大切である.

骨癒合がさらに進めば,牽引具は一切除去し,ベッド上で数日間の局所療法(筋力や可動域改善の自動運動)を行った後に,松葉杖での免荷歩行を2週間ほど行わせてから体重荷重を開始する.運動浴を適宜利用してもよい.経過中は拘縮に対する徒手矯正術は行ってはならない.保存療法は偽関節の発生頻度が高いので,慎重な後療法が必要である.全治療期間は半年~一年にも及ぶ.子供の場合は複雑骨折でない限り,保存療法が原則で,治療期間は短い.経過中の後療法は成人に準じるが,後年,受傷骨の過生長により脚長差をみる場合がある.

手術療法は保存療法に比べて安静期間が短く,早期の歩行や関節可動域運動が開始できるうえに,回復も早いなどの長所がある.骨幹部の横骨折に適応されるキュンチャー髄内釘固定などはそのよい例である.

 

② 大腿骨顆上・顆部骨折

顆上骨折は保存療法が多く取られる.局所の癒着が強いが,骨癒合も強いので,固定期間は短い傾向にある.PTプログラムは骨幹部骨折に準じて行う.しかしなかには骨癒合の完成に長期間を要し,しばしば遷延治療骨折がみられる場合があり,社会的ハンディキャップが生じる.

顆部骨折では直達牽引療法を用いて整復するか,これで整復不成功の場合は観血的に整復,固定を行う.術後に免荷装具を装着して早期歩行を行う.

 

③ 下腿骨骨折

1 ギプス固定中も拘縮の予防と筋力維持のために以下の運動を行わせる.

・固定されていない関節の自動運動を全可動域にわたってそれぞれ2~3回,1日2回,足指の拘縮は機能的障害が大きいのに見過ごされやすいので,足指,特にMP関節は患者自身の手を用いて他動的に行うように指導するのがよい.ギプスが足指の先まで巻かれている時は,背屈方向だけでも可動域訓練が可能になるようなギプスカットを担当医に依頼すべきである.

・下肢の30°くらいまでの挙上運動,および固定されている各関節の屈伸運動を10回,1日2回.

・ギプス固定の除去後は担当医の指示に従い,関節可動域訓練,筋力増強訓練,荷重負荷,歩行訓練と進める.


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