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m(_ _)m肥満の話


(´∀`)題名:肥満の話

肥満は、体内の脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義される。従来肥満は一つの病態概念として理解されてきた。しかし、近年日本肥満学会では病的な肥満を疾患単位として肥満症と定義づけた。肥満症とは肥満の中で医学的見地から減量治療が必要なものをいう。原発性肥満と肥満症の鑑別が重要であり、それぞれの病態および予後に応じた治療が必要である。肥満症患者の生命予後を左右する重要な合併症は糖尿病、高血圧および高脂血症であり、これらの合併症は冠動脈疾患に代表される動脈硬化性疾患をより早期に発症する危険性が高い。また肥満の程度だけでは肥満症のリスクは評価できない。これらの合併症は上半身肥満、とりわけ内臓脂肪型肥満に高率に合併する。肥満症の早期診断ならびに早期是正が合併症、ひいてはそれに伴う臓器障害の防止に重要である。

 

発生機序と病態

肥満は原因不明の原発性(単純性)肥満と、遺伝性疾患・視床下部障害・内分泌異常および薬剤がその病因の第一義的役割を果たしている二次性(症候性)肥満に分類される。

人の肥満の成立に対する明確な病態生理学的概念は確立されていない。しかし、肥満の原因がなんであれ肥満成立の共通のメカニズムとして、摂取エネルギー量が消費エネルギー量を長期にわたり上回る正(+)のエネルギー平衡状態が存在する。理論的にはエネルギー摂取の増加、エネルギー消費の減少あるいはその両者により生じ得るが、現時点では安静時代謝率(RMR)に代表される熱生産の異常、すなわちエネルギー消費の減少はヒトでは証明されていない。エネルギー平衡の観点からは、正(+)のエネルギー平衡をきたす要因が中心的役割を果たしている。すなわち、消費を上回る摂取が持続した場合、グリコーゲンとしてのエネルギー貯蔵庫には限界があるため、食事由来あるいは過剰糖質から肝で合成された脂肪は、キロミクロンまたはVLDLとして脂肪組織へ転送される。これらリポ蛋白中のトリグリセリド(TG)は毛細血管内皮細胞上のリポ蛋白リパーゼ(LPL)により加水分解され、脂肪細胞内に取り込まれTGに再合成され貯蔵脂肪となる。原発性肥満の病態発生因子として遺伝因子、環境因子および神経系因子の関与等が考えられている。肥満の成立過程を促進・増強する因子として、抗インスリン血症と脂肪細胞の増殖があげられる。これらの因子が複合的に働いて肥満が成立する。

a)遺伝因子

肥満はしばしば家族性に見られるが、遺伝形質は不明である。双生児の肥満に対する大規模調査では、肥満の一致率は一卵性のほうが二卵性の二倍を示しヒト肥満における遺伝的因子の強さが指摘されている。一般にヒト肥満の成因として遺伝の関与は10~30%と考えられ、環境因子のほうが重要である。

b)環境因子

(1)過食:食欲の調節は大脳皮質~視床下部が関与していることは明白であるが摂取エネルギーの過剰すなわち過食の調節機構は十分に理解されていない。肥満者の多くは実際のエネルギー需要量に応じて摂食を調節しないで、食物の美味刺激に対して敏感に反応する受動的過食状態に陥っている。摂食パターンの異常も貯蔵エネルギーを増加させる一要因である。頻回食よりも一回のまとめ食いのほうがインスリン過剰分泌を招き脂肪合成が増加し、貯蔵脂肪も増加する。

(2)運動不足:運動不足はエネルギー消費の減少、RMRの低下のみでなくインスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)を招く。

c)神経系因子

ヒト肥満においても肥満モデル動物と同様に、交感神経緊張の低下と同時に副交感神経緊張の亢進が指摘されている。これらの変化は、インスリン分泌に対し促進的に作用する。

d)促進因子

(1)高インスリン血症:高インスリン血症および末梢(筋肉および脂肪組織)でのインスリン抵抗性は肥満者の特徴である。インスリンの分泌増加は摂食時のみならず空腹時でも認められる。空腹時インスリン分泌の亢進の原因として中枢性の副交感神経緊張亢進、肥満の本質的異常あるいは末梢でのインスリン抵抗性があげられるが、結論は得られていない。いずれにしても、一度高インスリン血症が生じると末梢でのインスリンレセプターの down regulation が起こり、インスリン抵抗性は増加する。このように、血漿インスリン値が代償的に上昇すると脂肪組織は同化代謝状態となり脂肪蓄積がさらに増加し、同時に脂肪分解および脂肪酸化が低下する。なお、高インスリン血症は肥満を解消すると消失することから、肥満に付随する二次的な現象である。

(2)脂肪細胞の増殖:脂肪細胞は過剰なTG供給に対し、細胞を肥大して反応する。一般に成人発症の軽度~中等度の肥満では、代謝異常を伴いやすい脂肪細胞肥大型肥満になる。一方、脂肪細胞が急速に増殖する時期は妊娠後期~生後1年と思春期前後に見られ、エネルギー過剰状態があると増殖型肥満となる。なお、肥満度+70%以上の高度肥満は両者の関与した混合型である。減量治療により脂肪細胞のサイズは縮小するが細胞数は減少しない。

 

治療と運動療法

原発性肥満症の治療方針は負(-)のエネルギー平衡を維持することにある。二次性肥満は基礎疾患の治療を優先する。肥満症の治療には、①食事療法、②運動療法、③行動修正療法、④薬物療法および⑤外科療法があるが、治療の基本は前三者を併用した生活様式の徹底的な改善である。肥満症の究極の治療目標は肥満の解消にあるが、日常臨床では多数例が治療前体重の10%前後の減量により合併症、とりわけ代謝性合併症の消失あるいは著名な改善を見ることから、最初の減量目標をこのレベルに設定する。長期的な減量目標は、肥満の早急な解消を強いることなく、過剰体重の50%に相当する減量レベルを設定する。

a)食事療法

摂取エネルギー制限が減量の基礎となる。食事調査に基づき500kcal/day減の指示エネルギー量より開始し、2~4週毎に500kcalずつ段階的に制限を強化し、1000~1200kcal/dayと移行する。この間の食事指導は「糖尿病食品交換表」が有用である。一ヶ月に2~4kgの減量を目指す。1000kcal/day以下の低エネルギー食では、ミネラルおよびビタミン類の不足を招きやすいことから入院治療が必要となる。高度肥満症(BMI>35.0)あるいは物理的障害などで急速な減量を要する場合、超低エネルギー食(VLCD:600kcal/day以下)を1~2ヶ月の短期間に限り適用されることがある。この療法は入院を要し、医師の厳重な管理下で行う必要がある。速やかな減量が得られる反面、体重の逆戻り現象を示すことが多い。

b)運動療法

(1)運動の種類と組み合わせ

インスリン感受性の改善で代表されるトレーニング効果は3日以内に低下し、一週間で消失する。また、運動による代謝促進効果は運動筋のみに限定されている。したがって週3日以上、できるだけ全身を使ったトレーニングを実施させる。

運動の種類としては、散歩、軽度から中等度のジョギング、水泳、自転車(エルゴメーター)などの動的(dynamic exercise)を有酸素運動の状態で実施するとよい。ことに自転車こぎや水泳は、膝、足関節に過剰な負荷がかからないので肥満者に適している。一方肥満者の場合、ランニングは、足首、膝、腰などに対する負担が強く、整形外科的障害を起こすこともあり注意を要する。

日常生活が多忙で特別にトレーニングを行う時間がないと訴えるケースも多いが、バスや電車を使わず歩くことやエレベーターの代わりに階段を使うなど、通常の生活の中でも、随所に運動療法を実施するタイミングがあることを理解させる。

(2)運動量と強度

肥満者では最大作業運動を行わせればストレスとして働き、糖忍容力が低下するばかりでなく心血管系にも悪影響を及ぼし、心筋梗塞などを誘発する可能性がある。また、運動強度の高い運動は糖質のみのエネルギー源とすることが判明している。さらに、乳酸性閾値(LT)あるいは無酸素性作業閾値(AT)を超えた強度の運動では、血中に乳酸が蓄積し脂肪分解が抑制される。したがって、具体的には散歩などごく軽い運動から次第に強度を強め、VOmaxの40~60%(20~30歳代で脈拍数130/分、40~50歳代120/分、60~70歳代110/分)の中等度運動を1回10~15分、週3日以上、可及的に長時間継続させる。運動強度の判定には、自覚的運動強度(RPE)も有用であり、「やや楽である」程度を目安とする。

運動量の把握には歩数計の使用も簡便であり、1日1万歩(最低でも7000歩)を目標とする。

(3)減量計画

運動による体重の減量計画は、速効性はないが規則的に続けると確実に脂肪を除去できる。たとえば、食事の量を変えないで300kcalの運動を1日おきにする(年間150回)と、この運動による脂肪の減少が計算できる。運動のエネルギー源のうち脂肪が占めるのは最大50%であり、脂肪組織は1gで7.3kcalのエネルギーを発生する。したがって、300kcal×1/2×150÷7.3kcal≒3㎏すなわち1年後には約3㎏の体脂肪が減少する。

運動時のエネルギー源は糖質と脂肪である。肥満の場合にはなるべく脂肪を多く動員してエネルギー源として使いたい。好気性エネルギー産生機構により運動のエネルギーが供給される際には、運動強度がVOmaxの時には、エネルギー源として糖質の占める割合は100%であり、運動強度がVOmaxの50%以下になると糖質と脂質がエネルギー源の50%ずつを占めるようになる。したがって脂肪をエネルギー源として動員するには、運動強度が中等度でかつ持続時間の長い運動を選択しなければならない。長時間の持久的トレーニングを続けていると、個人のVOmaxが長期間にわたって徐々に増加するので、さらにエネルギー消費量の大きな運動を続けることが出来るようになる。

持久的トレーニングの場合、簡単なエネルギー消費量の計算法がある。ゆるやかなランニングをするときのエネルギー消費量は、体重1㎏あたり1kmの走行で約1kcalである。したがって体重60㎏では5km走ればエネルギー消費量は300kcalとなる。歩行の場合(時速2~6km)はこの約半分の消費量となる。

脂肪の運動エネルギー源としての動員をよりよくするには、食後の運動よりも食前の運動がよい。

 

注意事項

1.食事療法の併用

適度な運動が食欲を刺激し、摂取エネルギーの増加から、かえって体重増加を招く可能性がある。われわれの肥満者に対する集団指導成績によっても、減量を達成した群では総エネルギー、糖質摂取量の低下と栄養バランス得点の改善を認め、減量達成に食事性因子の改善が必須であることが判明している。

2.準備・整理運動の実施

激しい運動を突然行えば、脳卒中、心不全、アキレス腱断裂など、内科的、整形外科的な種々の障害を招く危険性がある。準備運動(warming up)を行い、体の血液循環を次第に促進させ、体温を高めることにより、徐々に呼吸・循環器系、骨・関節系など身体の臓器、組織を運動時の状態に対応させるようにする。また、運動を急に中止すれば、血中遊離脂肪酸(FFA)が急激に上昇し、不整脈から突然死を招く危険性もあり、整理運動(cooling down)は必ず行わせる。

3.病態に則した運動処方

運動療法の指導は画一的に行わず、各人の病態、体力に応じて軽い運動から次第に強い運動へマイペースで行わせる。また、体調の悪いときには休ませる。

4.一般的事項

ジョギング・ウォーキングシューズの使用や、炎天下や長時間の運動時には水分補給をしたり、寒冷時には保温に努めるなど、一般的注意事項も指導スタッフに徹底させる。

( *`ω´)参考文献

医療学習レポート.肥満


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