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(o⌒∇⌒o)変形性膝関節症と解剖生理からリハビリの話


(「・・)題名:変形性膝関節症と解剖生理からリハビリの話

はじめに

膝関節の運動は、厳密には6自由度(屈曲/伸展、内旋/外旋、内反/外反、引っばり/圧縮、前方/後方、内側/外側)の複合運動としてとらえられる。たとえば、膝を屈曲位から伸展していくと30°付近より脛骨が外旋する“screw home movement”や、屈伸にともなって膝回転運動中心がずれを生じる“rolling and gliding movement”は、外力の加わらない極めて単純な屈伸を行っても回旋や前後方の動きが加わっていることを示している。また、大きな可動域を有するがゆえ、骨性には非常に不安定な関節でもある。したがって、3次元的な膝関節運動を安定的に行うためには、靭帯や半月などの軟部組織や膝周囲筋の個々の機能と協調作用が極めて重要となる。ここでは、機能的な側面から膝関節を十字執帯および半月、内側支持機構、外側支持機構、伸展機構の4つに分けて記述する。

解剖

(1)十字勒帯および半月

前十字敬帯は脛骨の内側顆結節から起こり、後上外側方向へ斜走して大腿骨顆間窩外側に付着する。前十字靭帯と交差するように、後十字勒帯は脛骨外側顆結節後面から起こり大腿骨顆間窩内側に付着する。大腿骨と脛骨の間には半月が存在し、内側ではC字型、外側では冠状型を呈している。両半月版とも前後の脛骨顆間隆起にその付着部を有するが、前角の一部の繊維は横靱帯に移行している。内側半月では全周にわたって、外側半月では膝窩筋腱裂孔部を除いて、外周縁が冠状靭帯によって脛骨外縁部に固定されている。また、外側半月後角の一部は半月大腿靭帯となり、後十字靱帯と一部繊維を分かち合いながら大腿骨顆間窩内側に付着している。

(2)内側支持機構

内側側副靭帯浅層は大腿骨内側上顆から起こり脛骨近位内側面に幅広く付着する。深層は関節包との区別が困難で内側半月とも付着している。その直下の脛骨の後内側へは、坐骨結節より起始した半膜様筋が付着する。浅・深層の後方線維は後方関節包へと連続し後斜走線維とよばれ、これに半膜様筋からの線維も加わり、強敵な後内側関節包(PMC:posteromedial capsule)となる。また、脛骨前内側の鵞足には、縫工筋、半腱様筋、薄筋が付着し、それぞれ、上前腸骨棘、坐骨結節、恥骨結合下部より起始している。

(3)外側支持機構

外側側副靭帯は大腿骨外側顆から起こり腓骨頭頭につく。同じ排骨頭部の後方には坐骨結節より起始する大腿二頭筋長頭と大腿骨より起始する大腿二頭筋短頭の総腱である大腿二頭筋腱も付着する。脛骨近位後面より起始した膝窩筋は膝窩筋腱となって回りこみながら膝窩筋腫裂孔より関節内に入り、外側側副勒帯の内側を通って外側側副靭帯 の大腿骨付着部の直前に付着する。膝窩筋腱は膝窩排骨靭帯(popliteofibular ligament:PFL)によって腓骨頭とも付着している。大腿筋膜張筋から連続する腸脛靭帯は、最終的に脛骨前外側のGerdy結節に付着するが、後方では大腿骨の外側筋間中隔と連続する。

(4)伸展機構

膝蓋骨は大腿四頭筋腱と膝蓋腱の間に種子骨として存在する。屈曲域では大腿骨顆間窩とよく適合した関節面をなすが、伸展位付近では不安定である。内側は内側膝蓋大腿支帯によって、外側は外側膝蓋支帯や腸脛靭帯よりのびてくる線維によって大腿骨に静的に固定される。大腿四頭筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、および中間広筋よりなり、それぞれ下前腸骨棘、大腿骨後面の粗線、大腿骨前面を起始とする。大腿直筋のみが二関節筋である。

 

●変形性膝関節症の病態

1.病因

・45歳頃より徐々に増加し60歳以上では約50%の人に発生している。男女比は1:4で女性に多く発生。

・変形性膝関節症は、関節の荷重分散機構が破綻した状態であり、関節軟骨の表層が損傷されると軟骨の保水性が減少し、次第に粘弾性が失われることで軟骨変性が進行していく。また、軟骨下の骨梁への荷重負荷が増大すると反応性に軟骨下骨が増殖し、さらに、異常な荷重負荷を分散させる生理的反応の一部として関節周辺に骨軟骨棘が形成されるようになる。

・病理学的には、関節軟骨の変性に伴う摩耗、軟骨下骨組織の硬化、骨棘の形成、骨嚢腫が特徴とされる疾患であり、反応性の滑膜炎を生じ、滑膜・関節包は肥厚し、軽度または中等度の関節水腫が持続することがある。

・原因によって1次性または特発性と二次性に分けられる。一次性は原因不明、二次性は外傷、炎症性疾患、代謝疾患、内分泌疾患、先天性疾患、骨系統疾患、腫瘍などに続発するものである。

・発症は単一の原因によらず、加齢、荷重などの機械的要因、全身的遺伝的要因、軟骨および関節組織内の要因などが関与する。

2.臨床症状

主症状として、関節裂隙部の自発痛や圧痛、可動域制限(特に屈曲拘縮)、内・外反変形、動揺性、関節水腫、大腿四頭筋の筋萎縮である。

疼痛は、初期では動作の開始時のみに感じることが多いが、次第に歩行中や立位時に持続的に感じるようになる。進行すると安静時痛も出現する。膝蓋大腿関節症では、階段昇降時(特に下行時歩行時)の疼痛が特徴的である。刺激性または反応性の滑膜炎を合併すると関節水腫が現れ、これによる筋の反応性拘縮が起こり、慢性疼痛が続き、筋萎縮が生じる。軟骨の損傷とともに可動域制限や内・外反変形が出現し、歩行時の側方動揺性(膝の不安定性)などが起こってくる。

3.病型と病気分類

変形性膝関節症を狭小化が起こっている部位で分類すると、いずれの部位にも狭小化がない初期型から、内側型・外側型・膝蓋大腿型・内外型・全型の6型に分類。

大腿脛骨関節の内側に狭小化がある内側型の発生頻度が最も高い。次に高いのは内側型と膝蓋大腿関節の狭小化を合併した内側・膝蓋型が病型である。

 

●X線所見

関節裂隙の狭小化・辺緑の骨梯形成・関節面の硬化と破壊・関節鼠をみる。

正常別泰関節裂隙は5~10mm、3mm以下では関節裂隙の狭小化。

大腿脛骨角(FTA)

通常膝関節は5~7°の外反位をとる

内反変形は脛骨近位部の内反によることが多い。

Q角(Q angle)

大腿四頭筋―膝蓋骨-膝蓋腱―脛骨粗面が形成する膝伸展機構は、膝蓋骨を中心にQ角を形成する。

 

●変形性膝関節症の評価

評価

疼痛、筋力、ROM、を詳細に把握し、分析することが重要である。起居移動動作の有効な評価としてUP&GOテストがある。このテストは、日常よく行う「坐位からの立ち上がり、3m歩き、方向転換して元に戻り座る動作」の時間を測定するもので、20秒以下であれば日常の動作に介助がいらず、30秒以上をようすれば起居移動動作に何らかの介助が必要になる。

視診

視診はまず歩行状態の観察から始まる。すぐに立ち上がれなかったり、歩き出せないことが多い。診察室に入ってくるときの歩容に異常がある場合には改めて歩行させて、その異常の原因を探索する。また歩行時荷重側の脛骨が大腿骨に対して内側または外側にくずれるthrst現象の有無をみる。次に起立位で脚長差、内外反、屈曲拘縮、膝蓋骨の位置、下肢全体の軸変形の有無、大腿四頭筋とくに内側広筋の萎縮の有無などを行う。次に診察台の上に仰臥位に寝かせ、下肢を伸展位にさせる。免荷時の膝関節の変形、下肢軸に異常、脚長差、膝蓋骨の位置異常、関節の腫張、発赤、大腿四頭筋の有無とくに内側広筋の萎縮は、患者さんに筋を緊張させると明らかになり、立位より観察しやすい。

触診

視診で確認した異常所見をさらに詳細に観察する。

周径

大腿四頭筋の萎縮は筋を弛緩した場合と緊張した場合で観察する。(膝蓋骨直上は関節腫張の程度、5cmは内側広筋、10cmは外側広筋の大きさ、15cm以上は大腿全体の筋群の大きさを知ることができる。)とくに内側広筋の萎縮は、膝関節の機能障害をもたらすことが多い。

腫張

関節包内に関節液や血液が貯留する場合と滑膜や関節周囲組織の腫張、増殖による場合がある。前者では、膝蓋上包を手掌で圧迫しつつ膝蓋骨を前面から押すと、膝蓋骨が水に浮いたような感触がある。これを膝蓋跳動という。後者ではこの現象は見られず、関節全体の腫張として感じられる。(3・5 、3・6)③より

ROM-T

まずは膝関節を伸展屈曲させ、自動による関節可動域を調べた後、他動的に屈伸させて他動的関節可動域を調べる。可動域制限の原因には、関節周囲組織や関節内の癒着による拘縮、関節面の変形、関節内遊離体などの機械的なものと疼痛によるものがある。他動的には完全伸展が可能でも、自動的には不可能な自動伸展不全(extension lag)の場合は、大腿四頭筋萎縮に起因する膝関節伸展機構機能不全である。

MMT-T

伸展機構のみならず屈曲機構についても検査する。膝の屈曲には二関節筋の関与が大きい。また膝周囲筋のみだけでなく、下肢全体的に検査する。

内側型膝関節症のアライメント

膝関節は内反していて、FTAでは180°以上であることが多く、またMikulicz線は、膝中心より内側を通る。このような状態では、片脚立脚時に内側に大きな荷重がかかることが容易に推察できる。膝関節の内反は、単に関節面だけで起こっているのではなく、脛骨の内反が大きく関与している。むしろ、症例によっては脛骨の内反がはじめにあり、その後に関節部でも内反が進行する症例が多いと考えられる。

アライメントのポイント

前額面上では多くの場合、内反変形を生じ、そのアライメントは腰椎前弯の減少、骨盤後傾位となり、それに伴い股関節は外旋位を呈す。その時の筋活動としては、大腿筋膜張筋および腸脛靱帯の緊張が増加し、それに対し内転筋群や内側広筋は筋収縮不良となっていることが多い。足部と膝との関係においては、大腿骨脛骨角(FTA)が大きくなるに従って後足部は外反する傾向があり、これは脛骨の側方傾斜を距骨下関節の回内によって代償したものと考えられる。

 

●人工膝関節全置換術(total knee replacement;TKR,;total knee arthroplasty;TKA)

基本的には関節表面を置換する表面置換型と蝶番構造をなす蝶番型(hingetype)の2種に大別される。

初期には、膝関節の安定性を求めるため蝶番型(hingetype)の物がよく使用されたが、回旋ストレスを逃がすことが困難なためlooseningが生じやすい。そのため現在では表面置換型の物がよく使用される。最近のものは表面置換型・蝶番型を問わず概ね120°程度の可動域をもっているようである。

 

人工膝関節の屈曲制限となる因子

術前:皮膚の瘢痕や柔軟性の低下

大腿四頭筋の伸展性

術中:人工関節の構造上の制限(概ね120°)

関節端の切除範囲・切除角

側副靭帯の緊張

骨セメントの関節後方残留

術後:創治癒の遷延や術部の癒着(前方からアプローチするため)

疼痛

膝蓋骨上嚢の癒着

患者のモチベーション

その他合併症

 

●治療計画立案のポイント

治療目的

疼痛の除去、関節可動域や筋力維持・増大を図り、ADL上の障害を少なくすることにある。

 

保存療法

1)膝痛緩和

変形性膝関節症の膝痛は、運動痛と歩行時の荷重痛が特徴である。さらに変形が進行すると限局した圧痛を認める。疼痛緩和に関しては物理療法が中心となる。さらに、物理療法は筋緊張を緩和・弛緩させるため、関節炎や関節形成術後の運動療法の前処置としても有用である。

2)筋力低下予防

変形性膝関節症にとって筋力低下予防は最重要課題である。疼痛による反射性の大腿四頭筋収縮抑制による筋萎縮や関節炎症や腫脹による関節内圧変化などが関節受容器から脊髄を介して大勝四頭筋抑制を生じ、大腿四頭筋の筋力低下を来す。

ハムストリングスと大腿四頭筋との筋の不均衡は屈曲拘締を助長する因子となる。腓腹筋は膝のコントロール、歩行時の蹴り出しと着地時の衝撃吸収作用に重要であり、筋力低下は問題となる。大腿筋膜張筋は外側支持機構であり、股関節内転筋群とによって前額面において内・外側平衡の調整に重要な役割を果たすため、筋力低下防止が不可欠となる。足底アーチの異常は膝アライメントに影響するため、後脛骨筋、下腿三頭筋、足趾屈筋群の筋力低下を防ぐべきである。

3)短縮・拘縮と変形予防

膝周囲組織の短縮・拘締や変形を予防するには、できる限り早期からの自動運動主体のROMトレーニングとstretchingが重要となる。しかし、Brunnstromの著書“Clinical Kinesiology’’の中では、passive stretchingは病的な状態では関節包内運動をまったく考慮に入れず行われているため禁忌とされている。ROM制限の原因が関節包内(関節包・靭帯の癒着、短縮)か、包外(筋・腱の短縮)かを関節の遊び(jointplay)で評価し、治療手段を考慮して行うことが重要である。

4)体重増加の防止

膝関節への力学的負荷の軽減を図るために減量は重要である。減量には運動療法と食事療法の併用が効果的であり、特に有酸素運動が有効である。積極的な身体活動が期待できない高齢者であっても、膝関節に負担のかからない水中運動や自転車エルゴメーターなどを考慮すべきである。

5)姿勢・平衡横能低下の予防

正常な身体運動においては、固有受容器からの神経情報を中枢神経が処理し、それを多多数の筋肉が的確なタイミングと活動程度を発揮し、神経筋協調のもとで身体運動が実に無駄なく行われる。関節は高感度受容器であり、単なる末端部品ではないと認識されるべきである。できる限り下肢関節の神経筋協調機構を低下させず、姿勢・バランス機能の向上を図ることが重要である。

6)日常生活・社会生活活動の指導

杖、各種足底板や膝装具の使用を含めて日常生活活動指導も大切である。膝関節に負担のかかる正座や和式便器の使用を避け、長距離歩行の制限、階段・急な坂道の昇降制限、歩行時の衝撃緩和のための履物の選択などが挙げられる。

 

手術療法

観血的治療―1年以上積極的な運動療法や保存療法をおこなっても症状増悪あるいは不変なら観血的療法を考える。

1)手術法

変形性膝関節症の手術的治療には、①疼痛の原因となる組織を切除し除痛を図る関節内デブリードマン、②下肢アライメント異常を矯正し、膝関節にかかる部分的荷重負荷を分散化する高位骨切り術(HTO)、人口膝関節置換術(TKA)、膝関節固定術などがある。その適応の決定は、型分類、変形の程度、年齢、体重などの因子を十分に考慮してなされるが脛骨高位骨切り術は内反、外反変形を伴うとき変形を矯正し荷重面を均等化する。成績は良好だが、免荷期間が長期に及び高齢者には向かないため、手術はTKAの適応が多い。

2)TKA術前の評価

術前評価は、原疾患の機能障害を把握して患者さんの状態を知ることで、手術後にどの程度まで機能改善が見込まれ、退院後にどんな日常が送れるかを推測する情報となる。

手術効果に影響を与える患者側の要素として、ROM、筋力、肥満などがあげられる。特に膝関節の45°以上の屈曲拘縮やFTA195°以上の内反変形は、術後、膝関節のROM低下や不安定性がADL能力に影響してくるので重要である。

3)TKA術後の評価

術後の評価では、術創部、膝周囲組織の状態を把握することが重要である。この評価は術後どのように治療を進めていくかの指標となる。また、深部静脈血栓(DVT)の有無、骨移植、セメント使用の有無など、術式の確認も必要である。これは、患肢への荷重開始時期がいつからなるかなど、術後プログラムにおける全体のスケジュールに影響してくるからである。

4)退院時指導

術後経過が良いと自宅でのトレーニングをほとんどしなくなるため、日常における注意事項を徹底するためにも退院時指導は重要である。生活指導の目的でパンフレットを作成し退院時に指導を行う。

 

●治療実施のポイント

1.物理療法

1)急性期

過度の運動が疼痛炎症の原因となっている場合は運動の制限を行う必要がある。安静が基本であるので日常生活に際しては膝サポーターなどを使用する。杖の使用も膝への負担を軽減する意味では効果的である。疼痛性屈曲反射亢進によるハムストリングス過緊張には各種の温熱・寒冷による物理療法が中心となるが、急性期では前述のとおり安静と寒冷療法(冷湿布)が適切である。

2)慢性期

疼痛に対して膝関節に対してサポーター使用することは局所の血流を維持することになるので鎮痛につながる。急性期の安静に対するサポーターとは目的が違っている。筋付着部の痛みにはホットパック、極超短波、超音波等の温熱療法が行われる。極超短波は有効であるが、対象者にとって暖かい感じがせず治療されている実感には乏しいので良く説明する必要がある。最近ではレーザーによる治療が行われている。

3)水治療法

手術後の浮力を利用した免荷歩行、水圧を用いた抵抗運動、温水による温熱効果、水中での全身運動による減量効果などなどの利点がある。しかし、時間がかかるので膝の手術前後で使用されることが多いが、設備と準備を考慮すると一般的な治療としては困難性がある。

 

2.運動療法

1)筋力トレーニング

筋力トレーニングは膝伸筋だけのものは少なく、股・膝・足関節を含んだ下肢全体のものが多い。またOKC(open kinetic chain)とCKC(closed kinetic chain)を組み合わせたものが応用されている。OKCトレーニングはSLRや坐位での膝屈伸運動のように対象筋を直接強化する方法である。CKCは起立練習のようにADLに直結する動作として用いられる方法である。

2)大腿四頭筋の筋力トレーニング

大腿四頭筋の筋力トレーニングを行うことにより生じる関節圧迫力は関節軟骨の強さやサイズ、弾力性を増加させ、血流の増加や軟骨への栄養物の増加により軟骨の退化を防ぎ、腫脹を減少させ、痛みの減少も図られる。また、関節周囲の関節包や腱、靭帯の強度が増加し、関節障害を予防することで効果があるとされる。

・大腿四頭筋筋力増強のため等尺性収縮運動を行わせる。

a,膝の下に巻いたバスタオルをあて、これを押しつけながら足関節を背屈させるようにする。5~6秒間等尺性収縮運動をさせ、10回繰り返させる。

b,膝伸展挙上は背臥位で膝を伸展したまま、30度程度まで下肢を屈曲(挙上)させ5~6秒間保持させる。可能であれば1~3kgの重錘を負荷する。10回程度繰り返させる。朝、夕行うよう指導する。

c,疼痛の強い対象者や術直後では対象者のみで困難であるので、PNF法等による上肢へ抵抗を与え間接的に大腿四頭筋への等尺性収縮が有効である。

・大腿四頭筋の等張性収縮運動

a.足首に砂嚢や重錘バンドを負荷する方法

b.痺痛が緩和され等張性運動が可能であれば機器を用いた筋力強化をはじめる。

a. 諸動作を行わせながら大腿四頭筋へ抵抗がかかるように誘導し、動作へ結びつけることは積極的なアプローチである。

・大腿四頭筋の等運動性収縮運動

a.等運動性収縮運動は等運動性運動機器である、CybexやKin-Comを用いる。

b.坂道を利用した運動では上りよりも下り坂道を利用した方が有用性が高いと言われている(遠心性等運動性運動)。

3)股関節周囲筋のトレーニング

膝関節周囲の筋力増強以外に、股関節周りの筋力増強も重要である。股関節周囲の筋は、外転筋では大腿筋膜張筋が、内転では鷲足を通じて、屈筋では大腿直筋、伸展筋ではハムストリングや鷲足を通じて膝関節の補強を行っている。股関節周囲の強化は、即膝関節周囲筋の強化となっているのである。

4)股・膝・足関節筋群トレーニング

重要なことは、股・膝・足関節筋群の多関節連鎖機能向上を図ることである。多関節運動を応用できるCKCのトレーニングが重要となる。腹臥位で股関節下に枕を置き、股屈曲位にて両足趾で床を踏み返しながら両膝を伸展させる足趾踏み返し膝伸展トレーニングは、大腿四頭筋のみならず、大殿筋、膝屈筋群、下腿三頭筋、足底筋群の同時収縮による多関節連鎖機構を引き出す最適のトレーニングである。また、弾性バンドなどで多種の筋を両側性に強化できるホームエクササイズや、自主トレーニングが容易なものも選択するべきである。

5)足趾把持トレーニング

主に座位での足趾把握動作を行うことにより、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋に強力な連鎖収縮が起こる。タオルなどを敷いた上に足を置き、足趾でたぐり寄せる。足趾の動きも改善が図られ、徐々に筋力がアップするので、タオルに重りを乗せて行うともある。

6)術後の筋力増強訓練のポイント

股関節周囲の筋力増強の場合、それぞれの抵抗は膝関節列隙よりも近位部にかける。

膝関節顆部に抵抗をかけ、下腿は下から落下しないように支える。

内転抵抗運動も外転と同様に行う。

膝関節伸展筋力増強で、エクステンション・ラグがある場合や筋出力が十分出せないときには伸張性収縮訓練を行うと、早期にうまく筋力が出せるようになることが多い。

7)関節可動域訓練

日常生活では、膝の伸展制限が問題となることも多い。特に膝伸展制限が強度となると、大腿四頭筋に過度の伸張が加わり十分緊張を保てなくなり、エクステンション・ラグの原因ともなる。そのため、筋力増強訓練とともに、可能な限り伸展制限の改善に努める。

8)ロール(tumble forms)を用いた自動運動

座位や臥位での自動ROM運動は、下腿や足底の刺激による患者の認知という観点から有効であるし、重力を除去した状態で疼痛を回避しながら本来の膝関節の動きを引き出す自動運動という面で、安全かつ効果的である。

9)術後の関節可動域訓練のポイント

特に特殊な方法があるわけではない。しかし、人工膝関節に置換した後も、健常膝に用いる関節運動学的アプローチをそのまま用いるのは不適切である。健常膝と比べ表面置換型では転がりの要素は少なくなっている(ヒンジ型では一軸の回転運動が主体となっている)ことを考慮する。

また、術前に可動域制限が長期にわたり(例えば数年)存在した場合、特に伸展制限とエクステンション・ラグの改善は長期間を要する。

10)TKA術前トレーニング

手術に備えて全身機能の調節を目的に体幹を含めた上下肢筋力強化、ロールを用いたROMトレーニングを実施している。次に、車椅子の操作、並びに手術側下肢を免荷した状態での移乗動作の指導を行う。移動としては、松葉杖歩行の獲得が術後大切になる。

11)TKA術後トレーニング

術後から大腿四頭筋setting 、calf pumping、SLRを行い、車椅子移乗動作が獲得できた術後5日目からリハビリ室に出頭し、平行棒内での立位練習を開始する。術後7日目より2本松葉杖で、1/3 PWBから1/2PWBへと進める。術後14日目からFWBを開始し、2週間かけて2本松葉杖から1本へ、次いでT字杖へと進める。術後3週間で退院となる。

 

3.肥満防止

肥満防止には運動療法と食事療法が重要である。肥満があれば起立時、歩行時に下肢にかかる負担は標準体重に比べて大きく、その分だけ悪循環になる危険性をもっている。体重が1kgでも減少できれば膝関節がてこの動きをしているので通常6kgの軽減になると言われている。日常生活動作において必要と判断する場合は食事療法の有無を医師に要請するのが良い。

 

4.術後の歩行訓練

筋力のないうちは膝関節をロッキングして歩行するのは仕方がないが、その影響で遊脚期にまで膝関節を伸展位に保持してしまうことが多い。歩行中の体幹の動揺も大きくなり、始終下肢筋が緊張しているため疲労も生じやすい。角材をまたぐ練習をさせるなどし、遊脚期の膝屈曲は早期のうちに学習させるほうがよい。

上記のような棒またぎ訓練では、わざとらしく足を持ち上げることにより膝屈曲する場合がある。その場合は、踏みきりを強くするようにさせて膝屈曲を促す方法もある。

 

●装具療法

内反膝は荷重により疼痛、筋力弱化によりさらに変形が進行することになる。装具療法の目的は内反変形の進行防止である。同時、装具に頼り筋力強化を怠ると返って大腿四頭筋の筋力低下を招くことになるので対象者によく説明する必要がある。

1.膝装具

a.膝継手付きサポーター

継手のないサポーターでは変形の防止は困難であり、また、継手付きサポーターでも膝関節の側方動揺はある程度抑えられても変形の防止は困難である。

b.膝装具

変形防止には3点原理に基づき、大腿と下腿の支持部を継手で連結する構造が原則となる。脛骨の側方動揺、前後動揺をある程度抑えることができる。膝装具の種類にはプラスチック装具、両側支柱型、旭川医大式、機能的装具等がある。

2.足底装具

内反膝において下肢機能軸(ミクリッツ線)を正常に近づけるために外側補高の足底挿板(shoe-insole)が用いられる。補高量は7mm前後が一般的である。

3.杖

歩行時に下肢から支持を与えることは痺痛の緩和となる。手段として松葉杖や杖を使用し、痺痛をコントロールしながら、日常生活動作の拡大、運動療法における筋力増強へつなげることも重要である。しかしながら、杖を使用することを嫌がる対象者が多く、無理をしても歩くか、能力以上に歩かないことをよく経験する。一時的に手段として用いると言っても受け入れ困難なことが多い。杖を付くようになると「おしまい」とか「歳をとった」と思いこんでいる様子が窺われる。対象者が偏見めいたものを持っていると感じるが理学療法士として無理に杖を押しつけることは避けたい。教育的な助言、指導を行いたい。

 

●手術前後の理学療法

a・高位脛骨骨切術(H.T.0)

術後肢位:膝30度でギプス副子固定、ソフトブラウン架台上

1日:四頭筋の運動開始

5日:ギプス副子固定除去。足、膝関節の自動介助運動開始

6日:架台除去。端坐位開始。車椅子は膝伸展位装具着用で下肢伸展位で許可

2~3週:両松葉杖で部分荷重(体重の1/4)開始

Ⅹ線撮影、創外囲走が緩んでないかチェック。強制部分の確認

以後2週間ごとにⅩ線撮影し、矯正位をチェックする

5週:片松葉杖歩行(体重の3/4)

6週:全荷重歩行

8過:創外固定器抜去。Ⅹ線撮影。膝伸展位装具着用で歩行開始

8週で創外囲走器抜去してⅩ線撮影の結果、骨癒合が不足であれば、膝伸展位でギプス固

定(大腿から足まで)をさらに4週間行う

 

b.九州労災病院

禁忌:椅子座位での膝伸展抵抗運動、強い他動運動

変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術

①骨セメントを使用するもの

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上

1日:四頭筋の等尺性運動を開始

7日:自動介助運動開始(血腫があれば強く行ってはならない。痛みの範囲内にとどめること)

10日:創状態がよく血腫がなければ、両校菓杖で部分荷重歩行開始。歩行時は膝伸展位装具のこと

2~3週:屈曲が良好で関節液の貯留がなければ膝伸展装具除去

3~4週:全荷重歩行

 

②骨セメント使わないもの(セラミックなど)

術後肢位:膝30度屈曲位でギプス固定。ソフト・ブラウン架台上

1日:四頭筋の等尺性運動を開始

3週:ギプス固定除去。自動介助運動開始。端坐位開始。膝伸展位装具装着にて車椅子

5週:両松葉杖で部分荷重歩行開始

7週:全荷重歩行開始

 

③九州労災病院

術後1~3日:可及的早期より関節制動練習開始(免荷コース)。IsometricEx.冷療法

3日目より:動的関節制動練習(坐位での部分荷重コース開始)。ROM.Ex.開始。10日以内に可能な限りの。

屈曲獲得

10~12日:P.W.B開始。動的関節制動練習(立位での部分荷重コースより開始)

3週:退院可。動的関節制動練習のホームプログラム指導

 

全人工膝関節帯換術手術前後のADL変化

対象は兵庫県立総合リハビリテーションセンターにおいてTKAが施行された膝OA患者29名である。内訳は男性1名、女性28名であり、平均年齢は69.7歳であった。

1)正座は全例で不可能であった。

2)しゃがみこみ動作においては、大半が不可能な動作であるが、不可能から自立になった例が2名、不可能から困難へと改善した例が2名みられた。

3)床からの立ち上がり動作では、手術前での自立度は59%、困難が33%、不可能が8%であった。退院時での自立は9%、困難が17%、不可能が74%であった。手術前と退院時を比較できた症例の変化をみると、自立から不可能へが10名(52%)、困難から不可能へが3名(16%)、自立から困難へが1名であり、低下したものが全体の79%を占めていた。

4)階段昇降動作では、手術前(21名)での自立は28%、困難が62%、不可能が10%であった。退院時(14名)での自立は93%(13名)、困難が7%(1名)、不可能が0%であった。手術前と退院時を比較できた14名の変化をみると、不可能から困難あるいは自立へと変化したものが1名、困難から自立へが6名と約半数が改善していた。また、変化なしは、自立では4名、困難では1名であった。

5)靴下の着脱動作では、手術前(24名)の自立は67%、困難が29%、不可能が4%であった。退院時では(15名)自立が80%、困難が13%、不可能が7%であった。退院時の困難例は、著明な膝関節屈曲制限、股関節の可動域制限が原因であった。

6)爪切り動作では手術前(23名)の自立は57%困難が39%、不可能が4%であった。退院時は(14名)では、自立が71%、困難が29%であり、手術前と比較して改善がみられた。なお、手術前と退院時と比較できた13名の変化をみると、自立で変化なしが8名、困難で変化なしが2名、不可能から困難へ変化したのが1名、困難から自立へ変化したものが2名であった。

以上のように、手術前後において多くの項目で改善あるいは低下の実態が明らかになった。

 

●リスク管理

・術後患者の下肢が腫張している場合

DVT(深部静脈血栓)の存在の有無を確認することにより対処することが重要である。

DVT発生率は、THAで27%、TKAでは50%にも達する。D-dimerが10ng/ml以上をDVTの発症と診断。

・臨床症状

急性期の症状は患肢の浮腫、腫張、表在静脈の怒張である。他覚的所見では、足関節背屈を強制すると腓腹部の自発痛を訴えるHomans徴候と腓腹部をマンシェントで加圧すると疼痛を訴えるLowenberg徴候がある。

・予防

術前よりcalf pumping指導、術直後より術側下肢に間欠的空気圧迫(メドマー)を行い、術後1週間で立たせることが大事である。DVT(+)であれば血栓溶解療法(ワーファリンなど)抗凝固剤の内服治療が行われる。

・転倒について

屋外よりも屋内のトイレ、風呂場など水周りでの転倒が多い。また、昼間より夜間に多く発生する。転びやすい人の特徴として、肥満傾向、下肢筋力低下、動脈硬化があげられる。足の感覚を磨き、筋肉を強化することが大切であり、足に合った滑りにくい靴を勧めるなど日常的な指導が必要である。

( ̄ー ̄)参考文献

医療学習レポート.変形性膝関節症と解剖生理からリハビリ


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