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(*^O^*)パーキンソン病と運動療法の話


((+_+))題名:パーキンソン病と運動療法の話

Ⅰ.疾患についての基礎知識

1. 概念

安静時振戦,筋固縮,無動症,姿勢保持障害を4大徴候として中年期に発症好(発年齢は50歳代が最も多く,次に40歳代,60歳代がこれに続く),慢性,進行性疾患で,中脳黒質緻密質と青斑のメラニン含有細胞の変性脱落と細胞封入体(lewy小体)が特徴。

 

2.症状

(1) 振戦  安静時にみられる。屈筋―伸筋、回内筋―回外筋に4~6Hzの規則正しい相反性の群化放電を呈する。一般に1側上肢や下肢に始まる安静時振戦として発症。

 

(2) 筋固縮 他動的に四肢関節を屈伸し筋を伸張時の抵抗として観察される。鉛管様固縮と歯車様固縮とがある。

 

(3) 無動  仮面様顔貌、すくみ足、小刻み歩行、歩行時の腕振り減少、小字症、巧緻動作運動障害、構音障害(小声、単調)嚥下障害、眼球運動障害。

 

(4) 姿勢反射障害

前傾姿勢、前屈姿勢、四肢屈曲、MP関節屈曲、立ち直り反射障害、突進現象、加速歩行。

 

(5) 自律神経症状

便秘、流涎、脂顔、起立性低血圧、多汗、消化管の蠕動運動障害、排尿障害、四肢循環障害。

 

(6) 精神症状  抑うつ、心気的、知的機能障害、思考転換が遅い

3.薬物療法における副作用(L‐dopaの長期副作用)  ※ リスク管理上重要

①Wearring‐off ⇒ 30分程度で効果が消失

②On-off現象  ⇒  効いているときと効いていないときが比較的急速に交代して起こり一日に何回も繰り返す現象

③ジスキネジ-  ⇒ 不随意運動で口をモゴモゴしている(口部ジスキネジー)

④幻覚妄想

⑤起立性低血圧

 

4.パーキンソン症候群の分類と特徴(表1・2)

パーキンソン病

特発性

パーキンソン病(振戦麻痺)

続発性

感染性

脳炎後パーキンソン症候群
梅毒性パーキンソン症候群

中毒性

CO中毒
マンガン中毒
薬物中毒(フェノチアジン,レセルピン,α-メチルドパ)

血管性

動脈硬化症パーキンソン症候群
脳梗塞によるもの

関連疾患

線条体黒質変性症
表 1 パーキンソンニズムの分類 オリーブ橋小脳萎縮症
シャイ・ドレーガー症候群
進行性核上性麻痺
パーキンソン症候群痴呆複合
ウィルソン病
クロイツフェルト・ヤコブ病
正常圧水頭症

5.重症度分類    生活機能障害度(厚生省研究班)およびYahrの重症度分類(図1)

 

表 2 各種パーキンソンニズムの特徴

病名

パーキンソン病

脳血管性パーキンソニズム

薬剤性パーキンソニズム

概念

 

性・年齢

既往歴

病理

 

発症様式

振戦,筋強剛,運動現象を主徴とする原因不明の変性疾患

男≒女,50~60歳

特になし

中脳黒質,青斑核のメラニン細胞の変性・消失,Lewy小体

きわめて緩徐

多発性の脳血管性病変を有するパーキンソニズム

男>女,60歳以降

高血圧,脳血管障害

基底核を中心とした多発性の小梗塞

やや急速

抗精神薬,降圧薬などの薬物中毒によるパーキンソンニズム

男≦女,高齢者に多い

薬物服用

 

 

多くは薬物投与開始後

1ヶ月以内

臨床症状 振戦

 

筋強剛

 

 

運動減少

 

その他

片側発症,静止性

5Hz前後,規則的

片側発症が多い

上肢≒下肢

時に歯車様

早期よりあり

まれ

 

両側性が多い

上肢<下肢

鉛管様が多い

筋強剛や自発性の低下および疲労による

仮性麻痺,錐体路徴候を伴うことあり

より細かく動作時も見られることあり

両側性が多い

上肢>下肢

 

強い

 

自律神経症状や運動過多症を伴うことあり

経過

 

治療への反応

慢性進行性

約10年でADL介助に

L―dopa著効

効コリン剤有効

急性~慢性進行性

階段状進行

L―dopa無効

効コリン剤無効

休薬で軽快

 

L―dopa無効

効コリン剤無効

生活機能障害度(厚生省研究班)およびYahrの重症度分類(図1)

生活障害度

Hoehn-Yahr重症度分類

Ⅰ度

日常生活,通院にはほとんど介助を要しない

Stage1

一側障害のみ,通常,機能障害は軽微またはない
Stage2

両側または身体中心部の障害,ただし,体のバランス障害は伴わない

Ⅱ度

日常生活,通院に部分介助を要す Stage3

姿勢反応障害の初期兆候が見られるもの.これは患者が歩行時に向きを変えるときの不安定や,目を閉じ足をそろえて立っている患者を押してみることで明瞭となる.身体機能は,やや障害されているものの職業の種類によっては,ある程度の仕事も可能である

身体的には独立した生活を遂行することができ,その機能障害はまだ軽度ないし中等度にとどまる.

Stage4

病気が完全に進行し,機能障害高度

患者はかろうじて介助なしで起立および歩行することはできるが,日常生活は高度に障害される

Ⅲ度

日常生活に全面的な介助を要し,独力では歩行起立不能 Stage5

介助がない限り寝たきりまたは車椅子の生活を余儀なくされる

 

 

Ⅱ. 評価項目

<一般的情報>

1.カルテ・他部門からの情報

収集

・            診断名,現病歴,既往歴、合併症、愁訴,自覚症状,家族歴,投与薬剤

・            身長、体重

・            投与薬剤の服用時間・投与薬剤の有効時間

・            家族構成・患者のライフスタイル・患者の日常生活レベル・職業・レクレーション・趣味

・            パーキンソン病についての患者の知識

・            家族構成(キーパーソン)、同居に関する情報、家屋構造、周辺状況

・            Drからの禁忌事項

・            Dr programとgoal setting

2.問診 ・            主訴・要望

・            自覚症状

・            意識状態、理解力、コミュニケーション能力の確認

・            生活上の問題点、ADL状況

・            患者に対する理解度(→患者教育における配慮)

3.視診・触診 ・            姿勢、表情の評価

・            運動機能評価

<理学療法的評価>

4.全体像 ・            表情、心理状態(抑うつ傾向、依存的、引っ込み思案、融通が利かない)

・            移動方法、姿勢、認知障害など

5.バイタルサイン ・            高血圧、心疾患、自律神経障害、など(リスク管理上重要)
6.パーキンソンの重症度分類 ・            Yahrの重症度分類、生活障害度の分類
7.固縮の評価(筋トーヌス検査) ・            歯車様、鉛管様の種類を部位別,頭部落下試験,筋ト-ヌスの状態(静的・動的)
8.振戦の評価 ・            安静時振戦、また姿勢振戦の出現部位と時期、程度など
9.無動の評価 ・            仮面様顔貌、随意運動の開始や運動速度の低下または動作緩徐、運動リズムの消失

・            言語緩慢、小字症、両手同時動作能力、反復変換運動

10.異常姿勢及び姿勢反射の検査

(静的姿勢、動的姿勢)

・            立ち直り反応、平衡反応、突進現象(立位時の外乱刺激で、前方、側方、後方)

・            異常姿勢による二次的な拘縮・変形、転倒傾向など

11.関節可動域テスト(ROM-T) ・            膝関節の屈曲拘縮、足関節の底屈拘縮、顎関節・頸部・体幹の屈伸回旋能力の評価
12.徒手筋力テスト(MMT-T) ・            四肢体幹の粗大運動で筋力を把握(上下肢の伸筋群&頸部体幹の伸展筋に弱化をきたす)
13.知覚検査 ・            感覚検査、しびれ、感覚麻痺の有無
14.呼吸機能の検査 ・            スパイロメーターによる拘束性換気障害の把握、肺活量測定、

・            胸郭変形の有無の確認、胸隔拡張収縮差の確認

15.精神機能評価 ・            長谷川式知能簡易スケール、WAISなど
16.自律神経障害の評価 ・            脂顔、過剰発汗、便秘、排尿障害、起立性低血圧、体温調節障害、睡眠障害など
17.病的反射検査 ・            口尖らせ反射、手掌下顎反射、マイアーソン徴候等の左右差や出現部位、経時的な変化
18.腱反射の評価 ・            上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋、膝蓋腱、アキレス腱
19.VF、水飲みテスト(※1)(※2) ・            嚥下障害、誤嚥のリスク管理、口腔相、咽頭相の評価
20.ADL評価

 

・            Barthel Indexや機能的自立度評価法(FIM)など

(時間的要素、正確性、安全性、実用性の面に着目)、介助の程度

21.歩行能力評価 ・            歩行形態(杖、補装具など),歩行自立度,歩行スピード(10m歩行時間など)歩行耐久性

・            歩行時の症状(すくみ足、小刻み歩行、開始時のつまずき、突進現象、加速歩行など)の有無と状態、手の振りの減少、体幹回旋の欠如、

・            階段昇降、障害物の乗り越えや白線をまたぐ際のスムーズ度など

22.起居移動動作 ・            介助・監視・自立の程度、動作時の時間的因子や安全性、実用性など
23.運動年齢テスト(MAT)上肢用 ・            上肢運動機能の評価(小字症等)治療、訓練計画の策定の評価
24.運動年齢テスト(MAT)体幹・下肢用 ・            体幹、下肢運動機能(特に動的バランス)の評価
25.基本的動作能力 ・            基本的動作能力の評価 治療計画の策定、評価

・            寝返り、起き上がり、四つ這い、膝立ち、片膝立ち、床・椅子からの立ち上がり等

26.IADLスケール ・            役割行動、家庭内活動性の評価
27.高次脳機能検査 ・            自発語、自発書字、検者の行う動作を模倣させる、線分2等分テスト、Albertの線分抹消テスト、絵の模写、語音弁別検査(※3)、純音聴力検査(※4)、環境音テスト(※5)

 

(※1) ビデオ嚥下造影(Videofluorography:VF)・・VFは被検者に造影剤(硫酸バリウム等)を含ませた液体(水)あるいは固形・半固形物(食物)を食させ、口の取り込みから、嚥下の終了までの過程(嚥下動態)を、口腔、咽頭、喉頭、食道の範囲についてX線透視装置と録画装置(ビデオデッキ)を用いて録画し、観察するものである。嚥下動態の観察では、食塊の動きをとらえること、嚥下関連臓器の運動の程度や時間的な相互関係を知ることが中心となる。VFは①嚥下関連器官の形態異常、機能異常の観察②嚥下障害の原因検索③誤嚥の有無の観察④訓練あるいは治療効果の判定などの診断・評価的目的のほか⑤嚥下障害が存在した場合の嚥下代償法の発見およびその効果の判定などの治療的目的で行われる。

(※2) 水飲みテスト

手技:冷水3mlを口腔前庭に注ぎ、嚥下を命じる

もし可能ならば追加して2回嚥下運動をさせる

最も悪い嚥下活動を評価する

もし評価基準が4点以上なら最大2試行(合計3試行)を繰り

返し、最も悪い場合を評価として記載する

判定基準:

1)嚥下なし、むせるand/or呼吸切迫

2)嚥下あり、呼吸切迫(silent aspirationの疑い)

3)嚥下あり、呼吸良好、むせるand/or湿性嗄声

4)嚥下あり、呼吸良好、むせない

5)4)に加え、追加嚥下運動(空嚥下)が30秒以内に2回可能

改訂水飲みテストは3mlの水を口腔内に入れ嚥下させ、嚥下を観察するテストである。むせや声の変化に注意をして観察する。

(※3)オージオグラムを用いて各周波数における聴力レベル(dB)を調べる

(※4)濁音を含む約50個の単語をヘッドホンから聴覚呈示し、聞こえた音を解答用紙に記入する

(※5)動物の鳴き声、楽器の音などを聞かせ、何の音かを判断させる検査。回答方法には口頭で答える方法と4枚の絵の中から選択する方法がある。

 

Ⅲ.問題点

<impairment level>

予想される項目

具体例

♯1 平衡機能障害 ・          姿勢反射障害,すくみ足現象,運動切り替え困難,長軸での回旋運動困難

・          左右非対称性運動の障害,加速現象

・          立ち直り反応障害、重心制御困難、立位バランス不安定

♯2 ROM制限 ・          ベッド上安静、低活動性による廃用性症候群(二次的機能障害)

・          随意運動の減少による制限

♯3 不随運動 ・          安静時振戦
♯4 筋力低下 ・          ベッド上安静、低活動性による廃用性症候群(二次的機能障害)
♯5 心肺機能の低下 ・          ベッド上安静、低活動性による廃用性症候群(二次的機能障害)
♯6 精神機能障害 ・          抑うつ,無気力,精神緩慢,失念,集中力低下
♯7 高次機能障害 ・          認知障害,記憶障害
♯8 自律神経機能障害 ・          脂顔,起立性低血圧,流涎,頑固な便秘,四肢循環障害
♯9  筋トーヌス異常 ・          歯車様固縮,鉛管様固縮
 

<disability level>

♯10 歩行能力低下 ♯16 食事動作困難
♯11 寝返り動作困難 ♯17 衣服着脱動作困難
♯12 坐位保持困難 ♯18 入浴動作困難
♯13 起き上がり動作困難 ♯19 排泄動作困難
♯14 立ち上がり動作困難 ♯20 整容動作困難
♯15 立位保持困難
 

<handicap level>

♯21 社会復帰困難

職場、隣接関係等

♯22 家庭復帰困難

 

 

※症例・環境に応じて適宜評価

 

 

Ⅴ.ゴール設定

短期目標・歩行能力の向上、動作緩慢の改善、ROMの維持改善、筋力増強、ADLの維持改善

・姿勢反応障害、歩行障害の改善、下腿筋群の筋力増強(姿勢反射障害に対する短期ゴール)

・抑うつ症状の改善,日常生活水準の向上,起居動作能力の維持改善,監視下つたい歩きの獲得(日常生活動作能力の低下に対する短期ゴール)

・監視下つたい歩きの獲得(歩行障害に対する短期ゴール)

長期目標・社会的レベル(職場復帰、家庭復帰)

・屋内歩行自立、T字杖使用による屋外歩行自立

・抗パーキンソン薬の現状量で止め、ADL自立期間の延長を図る(姿勢反射障害に対する短期ゴール設定)

・日常生活水準の向上、起居動作能の改善(日常生活動作能力の低下に対する短期ゴール設定)

・監視下屋内歩行の獲得にて家庭復帰(歩行障害に対する短期ゴール)

 

Ⅵ.治療プログラム

表 3  パーキンソン病に対する理学療法プログラム

 

障害度

理学療法の目標

治療プログラム

機能・能力障害に対して

補装具・家屋環境

社会的不利

初期:身辺動作自立期

(Hoehn&Yahr StageⅠ~Ⅲ)

 

日常生活,通院にほとんど介助を要さない

 

 

職業や主婦業など社会生活の継続

歩行を中心とした動作能力の維持

・          立位バランス,平衡機能の強化

・          陰性化しやすい運動パターンの促通

・          歩行練習(歩容指導や側方,後方,方向転換など応用歩行)

・          スポーツなどを通じたaerobic conditioning

・          パーキンソン体操の指導

・          デイサービスの利用

杖・靴型装具の検討

段差解消

和式トイレの場合

→(簡易)洋式化

ベッドの導入

固めのマットレス

軽量な掛け布団

・          疾患に対する正しい知識をもたせる

→不安軽減,心理的支持

・          身障者手帳の申請

・          患者団体の紹介

 

中期:要介助期

(Hoehn&Yahr StageⅣ)

日常生活,通院に介助を要する

 

屋内での生活自立度を高め,介助量軽減を図る.

廃用症候群の予防

・          筋固縮に対する筋伸張運動

・          抗重力筋活動の活性化

・          座位,立位バランス訓練

・          起居動作訓練

・          歩行訓練

・          呼吸理学療法

・          顔面表情筋の運動療法

・          home ex.などによる日常運動量の確保→廃用助長因子の除去

・          起居,歩行,移乗動作などの動作方法や介助法指導

・          すくみ足対策

・          転倒による外傷予防

-頭部保護帽の検討-

・          腹臥位の指導

 

歩行器・車椅子

手すりの設置

浴室に手すりや滑り止めマット

シャワーチェアを準備

補高便座

ポータブルトイレ

・          厚生省特定疾患認定による医療費公費負担制度の活用

 

後期:全介助期(Hoehn&Yahr StageⅤ)

日常生活に全面的な介助を要する

 

二次的合併症の予防

(拘縮・褥瘡など)

座位耐久性の向上

介護負担軽減

除圧用エアマットやフローテーションパッド ・          在宅訪問看護,訪問リハ,ホームヘルプ・入浴サービスなどの利用

・          日中無為に過さぬ工夫

① 呼吸訓練 姿勢の異常により、胸郭の可動性が低下し、肺活量が減少しやすい。姿勢矯正訓練とともに、徒手胸郭伸張法や上肢・体幹の関節可動域訓練を行う。また、日常生活より深呼吸や発声訓練を行うよう指導し、肺活量維持に努める。重症例においては、胸郭の可動性の制限(拘縮)により、重度の拘束性障害を生じ、呼吸器感染症発生の危険性が増大する。上記の訓練に加えて、必要に応じて体位排痰法などの排痰訓練を行う。
② 関節可動域訓練 固縮に起因する筋短縮がハムストリングス、下腿三頭筋、腰背筋、腸腰筋、大腿直筋などに起こりやすい。これに対して伸張訓練を行うが、より能動的なものが望ましい。また、将来的に拘縮を起こす可能性のある関節(股・膝関節屈曲拘縮、足関節底屈拘縮、頸、体幹、胸郭の可動域制限)に対しては、自動あるいは他動運動を十分に行う必要がある。必要により温熱療法などの物理療法も取り入れる。
③ 体重移動訓練・

平衡機能訓練

立ち直り反射や平衡反応の障害が認められる。例えば、体幹が側方に傾けられると、頸部・体幹ともに傾いた状態となり、立ち直ることはできない。下肢の防御反応も障害されている症例が多く、突然の外力に対して反応が出現せず、棒のように倒れてしまったり、突進現象を認める。臥位から立位までのさまざまな肢位における正しい姿勢から、あらゆる方向への体重移動訓練を行い、立ち直り反応を促進する。最初はわずかな動きから始め、徐々に体重移動範囲を拡大し、ダイナミックな動作を行わせる。他動的にバランスをくずし、上下肢の防御反応を促通することも行う。これらの訓練は、転倒防止策としても重要である
④ 起居移動動作訓練 患者の障害度に合わせた起居移動動作の確保とともに、動作の構成要素として頸部や体幹の回旋・伸展運動、四肢の交互運動を取り入れる。また、その動作の日常化を図る。

頸部や体幹の回旋運動とリラクゼーションによりスムーズな体重移動を促し、寝返りから起き上がり、四つ這いから横座り、横座りから膝立ち、さらにこれらの動作の逆の運動を行う。これらの訓練は頸部や体幹の回旋運動と同時に、頸部や体幹の立ち直り反応を促通することができ横座りから膝立ちにおいては体幹と股関節の伸展運動も促通できる。

交互運動としては、両上下肢の相反運動パターンを用い、四つ這いや膝歩きを練習する。

椅子からの立ちあがりでは、体幹の前傾により足部に十分荷重させ、さらに体幹や股・膝関節の伸展運動を促通するようにする。床からの立ち上がりについては、本疾患ではしゃがみ立ちが困難になるので、四つ這いから高這いになり、そこから立ち上がるパターンを指導する。

⑤ 歩行訓練 本疾患の歩行の特徴は、前傾姿勢で前方に倒れぎみで歩行することにある。腕の振りや体幹の回旋は減少し、すくみ足や小刻み歩行、加速歩行、突進現象、すり足歩行を呈する。また、一時停止や方向転換も困難となる

体幹回旋や腕の振りの減少に対しては、歩行に合わせて、両肩から体幹の回旋を入れた操作を行うとよい。患者はリラクセーションを図りやすくなり、腕の振りも容易になる。歩き出し困難やすくみ足には、まず、その場で足踏みをさせたり、号令を掛けたり、リズムに合わせて歩かせたりする。一定間隔に障害物を置き、それをまたがらせるのもよい。歩行中は、合図により方向転換や一時停止を行う訓練も取り入れる。椅子に近づき座るというような姿勢変換を伴う訓練も必要である。すぐ物につかまろうとすることは、逆に転倒につながりやすいので、まず目的物に十分近づくことを指導する。

⑥ 精神・運動機能訓練 無動の関連要素である運動速度,反応時間,運動開始時間,運動パターンの変換時間,リズム形成,反復変換運動,両手同時動作能力等の精神・運動機能を賦活させるような運動学習プログラムを各要素で設定
⑦ 筋力増強訓練 立位姿勢で認められるように、抗重力伸展活動が低下し、特に各関節の最終可動域において、伸展運動が低下している。これらに対する筋力増強訓練は、徒手抵抗や重錘などを用いた訓練より、立位での体幹・下肢の伸展姿勢保持や椅子からの立ち上がりなど、動作を通して行うことが多く、その中で抗重力筋を活性化させていく。また、日常生活に介助が必要となる障害レベルでは、廃用性症候群の予防目的の意味においても重要となる。
⑧ 日常生活動作訓練 訓練室だけでなく病室や家庭そのものにおいて本人の能力に応じた訓練課題を指導していく.
⑨ 家族指導 病態の特徴,介護の基本方針および方法,ホームエクササイズ,家屋改造,福祉制度,QOL,パーキンソン病友の会などの情報について系統的な家族指導を実施.
⑩ 心理的サポート 慢性、進行性の経過をたどることから、抑うつ的で、依存的傾向になりやすく、治療が長期にわたるため、闘病意欲を失わせないように、訓練場面などを通しての心理的支持が重要である。また、精神的不活発が身体的不活発と相俟って症状の悪化を招くことを理解させ、訓練意欲の向上や動作の自立性を促すことも重要である。症状の進行に伴って日常生活動作の障害が重度化してくると、患者や家族の身体的負担だけでなく、心理的負担も多大となる。患者や家族の訴えやニーズを十分に傾聴し、把握する姿勢が大切である。

訓練内容

 

1)パーキンソン体操

<方法とポイント>

パーキンソン体操は、体力の低下を防ぎ、筋肉や関節を軟らかくして、動作をなめらかにするための体操です

順序どおりに全部の運動を遂行する必要性なく,自分に合った運動を選択し取り入れていく。

①最初は、一つひとつの運動を2~3回ずつ繰り返し、徐々に増やして、最終的には8~10回繰り返せることをようにする。

②特に断りがないものは、立位や、座位のどちらでもよい。

(1) 顔の運動

顔の筋肉のこわばりやしゃべりにくさを改善します

1、口を大きく開けたり閉じたりする 2、顔をしかめたりゆるめたりする 3、両頬に息をためてふくらませる 4、口をすぼめて息を吐く 5、舌で唇の周囲を舐める 6、口を左右に引き、引いた側の目を閉じる

 

 

(2)頸部の運動

頸部の運動は痛みがでない程度に行います。

7、頸部の側屈運動 8、頸部の回旋運動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)肩・腕・手・指の運動

関節の可動性を高めて動きやすくします。

9、両手をあわせ腕をゆっくり挙上する 10、手を背中の後ろで握り上げ下げする 11、両手を胸の前であわせ手首を左右に倒す 12、腕を上げ、手を握ったり開いたりする

 

 

(4)立位姿勢で行う運動

両足を10~20cm開くと体が安定する

柔軟運動

背筋群や膝屈筋群を伸張する。

回旋運動

体幹の回旋筋を伸張する。

背筋を伸張する運動

背筋群や肩関節周囲筋を伸張し、姿勢を整える。

13、立ったまま体をゆっくり前に曲げる 14、立ったまま体をゆっくり左右にひねる 15、壁を背にして立ち背中を壁につけるようにする 16、壁に向かって立ち、両手を壁について、胸を壁につけるつもりで背筋群、肩関節周囲筋を伸ばす

 

 

(5)坐位で行う運動

着席するときは椅子に十分に近づき、体幹をできるだけ前屈させ、ゆっくり殿部をおろす。

17、椅子またはベッドの端に座り、両手を頭の後ろに組み、体幹をゆっくり屈曲、伸展させる 18、両手を頭の後ろに組み、体幹、胸腰部をゆっくり左右に回旋する 19、顎を引き体幹を前屈させ立ち上がり、体幹を前屈させて座る

 

 

(6)背臥位で行う運動(一部腹臥位)

坐位姿勢保持、立位姿勢保持が困難な患者さんでも畳や布団の上で行える運動です

20、背臥位に寝て自転車をこぐように、両足をクルクル回す 21、背臥位に寝て両足を曲げ起き上がる 22、背臥位に寝て両足を曲げお尻を上げる 23、背臥位に寝て両足を曲げ左右にゆっくりひねる 24、背臥位に寝てゆっくり上体を起こす

 

 

 

 

 

2)拘縮予防と姿勢矯正を目的とする訓練

身体の動きが少なくなると、関節や筋肉が硬くなり拘縮が起こりやすくなるので(図2),拘縮予防のためには、関節の屈伸運動や前屈姿勢を矯正する訓練,バランス訓練等が大切である。(ゆっくり行い痛みのない範囲で行う。)

 

図2 変形関節を起こしやすい部位

 

(1)体幹の伸張訓練
壁に向かって立ち、両手を壁について、背筋群や肩関節週胃筋を伸張する 背臥位に寝て床に両手をついて、ゆっくり上体を起こす

 

 

(2) 関節可動域訓練と伸張訓練
●両手を頭の後ろに上げて胸を広げる ●肩関節の屈曲、伸展運動 ●肘関節の屈曲伸展運動 ●股関節の外転 ●ハムストリングス、下腿三頭筋の伸張
●片方の手で、股関節と膝関節曲げ,次に反対の手で大腿部を下に押す ●手関節の掌屈、背屈運動 ●片方の手で足部を固定し、反対側の手で踵部を握り、腕で足の裏を押す ●母指を外転、他の指を伸展する

 

3) 症状改善を目的とする訓練

(1) バランス障害

ステージが進むと体幹のバランスが悪くなり、転倒の危険性が高くなるためバランスを保つ訓練を行う。

交互に足を台にあげるバランス訓練 四つ這い位での

バランス訓練

片膝立ち位でバランス訓練 ボールを使ったバランス訓練 前後・側方への外乱刺激で保護伸展反応を誘発
一人の時はバランスを崩したときのため、すぐ捕まれるものがあるところで行う 四つ這い位で片方の手を上げ、次に反対側の足を上げる。その際できるだけヒジとヒザをまっすぐに伸ばす。簡単にできるようになったら同じ側の手と足を上げる 片方のヒザを立ててヒザ立ちをする。次に左右の手を前に上げたり横に広げたりする。 二人組のものは、医師や理学療法士の指導で行う。

 

 

(2) 歩行  ※転倒に注意(リスク管理)

歩き始めると歩幅がだんだん小刻みになり次いで早足になる「突進歩行」や「すくみ足」などに有効な訓練

【ポイント】①姿勢を整える ②踵をしっかり地面につけて歩く

聴覚・視覚刺激を取り入れた練習 狭いところを歩く練習 スラローム歩行 坂道を歩く訓練 階段昇降訓練
一定の間隔の目印をまたぎ、音や合図に合わせて歩く 立位姿勢で1・2・3!と号令をかけ足踏みをする 台や椅子、壁などを利用して狭い場所をつたい歩く。上達したら、徐々に間隔を狭める 等間隔に目印を置き、縫うようにして歩く。上達したら徐々に狭める 下り坂では突進歩行に注意が必要 転倒しないように、必ず手すりのある階段で行う

 

(3) 方向転換
歩きながらの方向転換の訓練 立ち上がりと方向転換
両足を肩幅くらいに開き、足を交差させないように歩行し方向を変える 立位開始、坐位姿勢をとるときに顎を引きおじぎをするのがポイント。

 

(4) すくみ足

「すくみ足」は、足があたかも地面に張り付いたように離れなくなる状態であり,このときの姿勢は、前屈位で身体のバランスが崩れ、視線は足元を見ていることが多い。更に踵接地がなく、膝関節が過度に屈曲している状態に注意する。

●視線を足元から遠くへそらす ●深呼吸をする ●足をつま先から上げ、踵から接地するように出す ●床に目印となる線などがある場合は、目標にし股越すようにする ●介助者がいる場合は、具体的に動作を指示し号令などをかける

 

(5)ベッドへのアプローチ

すくみ足により、ベッドの前まで行って、倒れ込んでしまう場合があるので,このような時は、ベッドの側方から弧を描くようにして近づき、更に両手をついてベッドに上がる方法が望ましい。

1、ベッドの側方から弧を描くように近づく 2、膝の裏がベッドに触れるのを確認したら、上半身をまげながらベッドに手をつく 3、頸部体幹を屈曲させ、ゆっくり殿部をおろす 4、体幹を伸展しゆっくり起こす

1、①の方法が困難な場合、前方より膝前面がつくまで近づく 2、両手をついて、片足づつベッドにあがる 3、四つ這い位でベッドの中央に移動する 4、片側の殿部からゆっくりおろす
(6)椅子の立ち座り

立位

坐位

1、椅子にできるだけ近づき膝の裏が椅子に触れるようにする 2、体幹頸部を全屈し両手を椅子の端あるいは肘掛けに置く 3、そしてゆっくり殿部をおろす

坐位

立位

1、殿部を椅子の端までずらす 2、足部をできるだけ手前に引き頸部体幹を屈曲し次に手掌面で椅子を押しながら立ち上がる 3、介助してもらう時は、前方から引くのではなく、後方から背中の上方を押し上げるようにする

 

 

 

 

会話

しゃべりにくい患者さんには、正しい呼吸運動の練習が大切である。腹式の大きな呼吸をすると、発声しやすくなります。また、胸部の筋肉が硬くなると、呼吸が浅くなり、肺の中での空気の入替が不十分になりがちです。そのため、風邪をひくと肺炎なりやすいので、風邪の予防および治療も重要となる。

一人の場合 二人の場合
●鼻からできるだけ深くゆっくりと息を吸い込み、次いで、口から思いきり息を吐き出す ●背臥位で、枕(本等でも良い)をお腹の上に置き、鼻から息を吸って、口から息を吐く。その際枕が上下に動くように腹式呼吸をする ●ア、イ、ウ、エ、オの音を大きな声ではっきり発音する ●口に空気をため,左右に動かす ●胸に手をあて深呼吸する ●長めのタオルやさらしなどを胸に巻き、息を吐く時に両手で引き深呼吸する ●背臥位で胸に手をあて深呼吸する。正しい呼吸では、呼吸のたびに胸郭が風船のように拡張、収縮を繰り返すので胸隔の動きに合わせ圧を加える
●唇のまわりを舌で舐める

 

4)日常生活上の指導と住宅環境整備

パーキンソン病により日常生活に困難な問題が生じることがある。人に頼らず、「自分のことはできるだけ自分で行う」ことは、身体機能維持になり、主体性や自立を促す意味でもとても大切なことである。また家族の方には、必要時に手を貸すことを心掛けて頂き、患者さんの悩みや不安をよく理解し、温かい態度と励ましの言葉で患者さんをサポートして頂くように家族への理解と説明を行う。

 

(1) 食事の時

ステージが進むと、食べ物の嚥下が悪くなりやすい為、固いものは食べやすい大きさに刻み、液状のものはトロミをつけるなど食べやすいように調理方法を工夫する。また食事の姿勢や食器の使い方にも注意して、時間をかけても自分で食べられるようにすることが大切となる。

食事中 食器 料理
●茶碗を左手に持ちながら右手でおかずを取るなど、2つの動作を同時にすることが困難な場合が多いので、一つひとつの動作を確実にするようにする。 ●食器は、置いて使う場合は安定性がよく、すくいやすいものを選ぶ。 ●スプーンやフォークは握りが大きく、使いやすいものを選ぶ。 ●食器は、置いて使う場合は安定性がよく、すくいやすいものを選ぶ。 ●スプーンやフォークは握りが大きく、使いやすいものを選ぶ。 ●食べ物をうまく飲み込めない場合は、食物を細かく刻んだり、柔らかく煮たり、すりつぶしたりする。

 

(2) 入浴の時

狭いところでは急に動きが悪くなる場合があるので、お風呂やトイレに入る時は、近くの人が声をかけて安全の確認をすることが大切である。また、安全のため、浴槽の環境整備は早めに行います。

入浴のポイント 1、 入浴はできるだけ体調の良い時間帯を選ぶ

2、 お湯の温度は40度くらいが適当

3、 特に冬場などは、脱衣所を温かくしておく

4、 入浴時間は10分くらいが適当。体力や好みにより

少しずつ時間をのばす
5、浴槽への出入りを容易にし、手すりや踏み台、滑り

止めマットなどを整えるなど、住宅環境を整備する。

浴槽の出入り(やりやすい方法を選んでください)
1、壁に取り付けた手すりあるいは簡易浴槽手すり(バスルーム)等を握り片足ずつ浴槽に入る。 2、浴槽のエプロン部または台などに手をつき、片足ずつ浴槽に入る。 3、浴槽のエプロン部または台や椅子などにひとまず腰掛け、片足ずつ浴槽に入る。
注)パーキンソン病の方は、特に後方へのバランスが悪いので、一般に指導される3の方法は難しい場合があるので注意する

 

(3) 更衣

着替えの動作はバランスを崩しやすいので、坐位で行うようにする。

●衣服はゆとりのある前開きのものを選ぶ。マジックテープやファスナーで簡単に着脱できるものもある。
●靴は、着脱が容易で足に合ったものを選ぶ。踵やつま先を高くして重心を調整する場合もある。
(4)トイレ

トイレは洋式の方が立ち座りが容易で,動作が緩慢な場合はなるべく早めにトイレ行くよう指導する。

●立ち座り動作や座位の安定を得るために、手すりを設置する。
●便器の高さは、足がついて立ち上がりが容易な高さにする。一般的に40cm前後がよい。

 

(5) 寝具

敷き布団やマットレスは、固めのものを選び,褥瘡予防のエアマット等を使用する場合は、安定性が得られにくいので注意が必要です。

●ベッドの高さは、足底が床について立ち上がりが容易な高さにする。 ●掛け布団は、軽くて体にまとわりつかないものを選ぶ。

 

(6)      住環境整備

家事や家庭内での作業は,楽に身体を動かせるように家具類の配慮を調整することが重要である。また転倒防止のためにも,患者本人がよく歩く場所へ物を置かないよう指導する。

 


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