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(*^O^*)間質性肺炎と肺線維症の話


特発性間質性肺炎(IIP)

IIPとは、臨床的には以下に要約される臨床像を呈する疾患群を指す呼称である。

①労作時息切れに始まる呼吸困難と胸部Ⅹ線所見上のびまん性陰影が主徴である。

②病理組織学的には、肺胞間質(肺胞壁)を病変の主座とする間質性肺炎の像を呈するが、その病理像はきわめて多様である。

③臨床経過としては、急性型、亜急性型、慢性型に分類される。慢性型においては急性悪化をきたすことがある。

④治療としてステロイド薬が有効な症例もときにはあるが、多くの症例においては無効である。

特発性間質性肺炎研究の歴史

特発性間質性肺炎(IIP)という用語自体は、厚生省特定疾患肺線推症調査研究班の“原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線椎症”に関する1974年以来の研究成果を踏まえて、1981年、問質性肺疾患調査研究班によって提唱された病名であるが、“原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線維症”に関する研究は、1935年のHamman、Richの報告以来60年以上の歴史のあることである。

呼吸困難を主訴とし,急激に進展する肺の線維化病変を主徴とする急性疾患として注目されていたが,1960年前後から,同様に肺の線維化病変を主徴としながら慢性に経過する症例の存在が明らかになり,また,実際の臨床の場では,慢性疾患としての原因不明のびまん性問質性肺炎および肺線維症が数多いところから慢性疾患例に関心が寄せられるようになった。特に,1976年,Crystalらによって,慢性疾患としての特発性肺線維症(IPF)の臨床病理学的概念が確立されて以来,“原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線維症”の研究はIPFを中心に進められてきた。しかし,その後,IPFとの関連疾患として器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)の疾患概念が提唱されたり,またHamman,Rich以来の急性症例も急性間質性肺炎(AIP)として,あらためて再検討されるようになった。加えて,最近では,臨床所見と病理組織学的所見との対比検討から,非特異的間質性肺炎(NSIP),呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患(RB-ILD)などより新しい疾患も注目されるようになった。

  わが国では,1974年に開始された厚生省難病班の“原因不明のびまん性問質性肺炎および肺線推症”研究の主たる対象は慢性疾患例,病理組織学的には通常型間質性肺炎(UIP)像を呈する症例“特発性肺線維症(IPF)症例”を中心に進められてきたが,1981年には,原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線椎症に代わる病名として,米国などで用いられていたIPFの用語を用いず,IIPを提唱され広く用いられるようになった。ただ,わが国におけるIIPの診断根拠には病理組織所見は必須とされていない。したがって,IIPは臨床診断名である。このような経緯から,わが国ではIIPの病名がIPFと同義で用いられるという,いささかの混乱が生じてきた。一方,“原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線維症”に関する広範な研究の進展とともに,“原因不明のびまん性間質性肺炎および肺線維症”を意味するものとして,米国などで,IIP用語が用いられるようになり,結果として,IIPに広義と狭義(=IPF)の2つの定義があるという状況になっている。

  主なる疾患は,急性の経過をたどるAIP,慢性の経過をたどるIPFである。加えて,亜急性の経過を示すBOOP,NSIPがある。また,病理組織学的には,AIPの病理所見であるびまん性肺胞傷害(DAD),BOOP,IPFの病理所見であるUIP,剥離性間質性肺炎(DIP),また,これらのいずれとも判断できないNSIPもIIPに含まれている。ただ,BOOPは,病理組織所見では細気管支病変が主徽であるところから間質性肺炎に含めるべきではないとの見解が一部にはある。しかし,BOOPに間質性病変が存在することは確かであり,また,上述のIIPの概念に含まれる疾患であることも確かである。同じような意味では,細気管支炎病変のあるRB-ILDをIIPに含めるのには疑義があることになる。さらには,RB-ILDはDIPとともに喫煙者にみられる疾患であるところから,IIPに含めるべきではないかとの見解もある。IIPの分類に関しては,ATS,ERSによる国際分類委員会によって討議が進められ,2002年に,公表されている。

急性間質性肺炎(AIP)

 AIPとは急性の経過をとる原因不明の間質性肺炎で,1986年Katzensteinらにまとめられた比較的新しい疾患概念である。多くの間質性肺炎(IPF,膠原病肺など)は潜行性に始まり徐々に肺機能の悪化をきたし,数年以上の経過を経て死に至ることが多い。これに対し,AIPはそれまで健康と考えられていた人に急激に発症し,数日の経過で呼吸不全に陥り,数週間ないしは数か月の経過で重篤な転帰をとる原因不明の間質性肺炎である。

  この疾患はHammanとRich(1944)がacute diffuse interstitial fibrosis of the lungsとして,進行性の息切れ,胸部Ⅹ線のびまん性浸潤影,亜急性の肺性心を主症状とし,6か月以内に死亡した4症例を報告したことにはじまる。

病理学的にはDADの像を呈し,臨床的には急性呼吸促迫症候群(ARDS)を呈する。

  文献的にはHamman-Rich症候群,accelerated interstitial pneumonia,Organizing stage of diffuse alveolar damageと報告されているものと同一のものと考えられる。AIPをIPFに含める見解もあったが,Katzenstein,OlsonらはIPFとは明確に区別するべきであるとしている。

  注意をしなくてはならないことはAIPとARDS,DADとの異同であるが,ARDSはあくまでも臨床像で定義されたもので,DADは病理像で定義されたものである。すなわち,ARDSとは

①呼気終末陽圧(PEEP)レベルと関係なくPao2/FIo2<200mmHg,

②肺動脈楔入圧が18mmHg以下,

③胸部Ⅹ線所見として両側性にびまん性に浸潤影を認める。これらを満たす病態をいう。

一方,DADとは間質浮腫,肺胞への滲出,硝子膜形成を特徴とする急性期,線維化をきたす器質化期を特徴と  する。DADをきたす疾患をあげた。AIPはARDS,DADの原因の1つではあるが同じ疾患を指さしているわけではない。

厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班によると,原因不明の間質性肺炎はIIPとして包括され,臨床的診断基準とそれに付随する胸部Ⅹ線診断基準,Ⅹ線所見の記述についての取り決めおよび病理学的診断基準一急性型が提示されている。これによるとAIPはIIPの急性型に該当する病態とされている。

(病態生理)

  AIPの病態は胞隔炎とそれに引き続いて起こる器質化であるが,発症機序は不明である。OlsonらはほとんどのAIP症例にウイルスによる上気道感染様症状が先行することを指摘している。KatzensteinらはAIPの肺生検組織においてH3-TdRの取り込みが上皮細胞や間質に存在する細胞(多くは線維芽細胞)で著明であるとし,肺胞傷害が生じたあとの修復過程において肺胞を被覆する細胞(Ⅱ型肺胞上皮細胞),間質に存在する細胞(多くは線維芽細胞)の増殖を報告している。

  病態が胞隔炎とそれに続く器質化という点でIPFとAIPは同じであるが,IPFの発症には好中球,肺胞マクロファージ,活性化細胞傷害性T細胞の関与が重要である。肺胞隔壁周囲への好中球の遊走と同部位における活性化において肺胞マクロファージは種々の遊走・活性化因子を産生,放出し,その病態にかかわっている。IPF症例では好中球の接着因子のリガンドである血中循環ICAM-1抗原が増加しているという報告やIPFの亜急性の経過をとる症例では気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球%の増加,ことに活性化細胞傷害性T細胞の増加が認められ,なんらかの標的細胞(ウイルス感染を受けた細胞など)を活性化細胞傷害性T細胞が認識し攻撃している可能性が報告されている。

  しかし,AIPについてはどのようにして胞隔炎が起こり,どのような細胞,液性因子が重要であるか,IPFとどのような差異があるのかは解明されていない。

(病理学的所見)

  急性期の肺の割面は暗赤色で含気に乏しく肝臓様である。数週間以上DAD病変が持続し線椎化をきたした場合の肺は1mm大の小嚢胞を形成してスポンジ様に見える。

病理組織像は標本の採取時期により異なるが主たる病理所見は以下のとおりである。

1)急性期

  肺傷害因子への曝露あるいは発症から1週間以内に認められる。

①硝子膜の形成

  硝子膜は剥離上皮細胞の壊死部分と少量のフィブリンなどが,混合された好酸性膜状の病変であり,主に肺胞管に沿って形成される。肺傷害の3~7日後には硝子膜形成が著明となる。

②肺胞腔を被覆するⅡ型肺胞上皮細胞の増殖

3~7日以降になると傷害された肺胞隔壁はⅡ型肺胞上皮細胞により被覆される。Ⅱ型肺皮細胞の胞体の大きさは多様で核は大きく,細胞異型性がある。肺胞腔にはさまざまな数の急性あるいは慢性炎症細胞が存在する。

2)器質化期

  肺傷害から1~2週間以降にみられる。

①胞隔の著明な肥厚と線維芽細胞の増殖

肥厚した胞隔には紡錘型の多数の線維芽細胞の増殖を認め,しばしば星状の細胞突起を認める。その中にリンパ球,形質細胞などの炎症細胞が埋没している。好中球も認められるがリンパ球,形質細胞に比べるとはるかに少ない。肥厚し胞隔に押し潰されたように不整型の気腔が存在する。大小不同でスリット状を呈する。

②呼吸細気管支,肺胞道への線維芽細胞の増殖と器質化

線維芽細胞増殖は局所的には細気管支を含めた気腔内にも起こる

③硝子膜の器質化

肺胞腔内滲出物が肺胞隔壁に粘着して肺胞隔壁に取り込まれ,間質性肥厚の原因となる。

④その他の所見

細気管支上皮細胞の扁平上皮化生,小肺動脈の器質化した血栓などが認められる。

(臨床所見・検査所見)

  原因不明で突然に起こる重篤な呼吸困難を特徴とし,動脈血ガス分析ではⅠ型の呼吸不全に相当する所見(Pao2≦60TorrでPaco2は正常もしくは低下),胸部Ⅹ線所見では両側びまん性に浸潤影を認め,ARDSと呼ばれる病像を呈する。その他,多くの症例で上気道のウイルス感染症様の前駆症状が認められる。咳欺,発熱などを伴うこともある。白血球数増加を伴うものも多い。発症1週間以上を経過すると,急性期の病変に器質化が起こり,細気管支を含む末梢気道に閉塞性変化が出現するため,呼吸不全はⅠ型からPaco2の上昇を伴うⅡ型へと移行する。

(診断)

  AIPに特異的な検査所見はなく基本的には除外診断である。

 除外診断として膠原病肺,ウイルス性肺炎・放射線肺炎,薬剤性間質性肺炎などがあげられる。したがって,健常者に急激に発症し,胸部Ⅹ線所見で両側びまん性に浸潤影を認め急激に低酸素血症の進行をみる症例ではAIPを疑う。現病歴,既往歴,放射線治療,薬物治療の内容などの問診,喀痰の細菌培養,ウイルス抗体価などについて検討し,膠原病肺,ウイルス性肺炎,過敏性肺臓炎,放射線肺炎,薬剤誘起性肺炎などを除外する。

  胸部Ⅹ線所見では両側性のびまん性スリガラス様陰影を認めるo。CT所見ではスリガラス様の肺野濃度の上昇がびまん性にあるいは散在性に認められる。これは胞隔の肥厚や肺胞内への硝子膜形成を伴う急性変化すなわちDADの所見を反映する。分布は両側性で,上中下肺野のどこに多く病変が局在するという傾向はない。限局性の淡い肺野濃度の上昇は肺胞内,肺胞道の器質化によって生じると考えられている。スリガラス様の陰影の他に両側肺底区に蜂巣肺陰影を伴う場合はIPFの急性増悪と考えられ,AIPとの鑑別に有用である。

IPFの急性増悪の初期の段階では過去の胸部Ⅹ線所見との比較,病理組織像からAIPとの鑑別から可能である。しかし,IPFがウイルス感染,薬剤などによる急性増悪をきたし高濃度酸素療法や人工呼吸管理を受けたあとではAIPとの鑑別は病理組織学的にも困難である。

 経気管支肺生検(TBLB),開胸肺生検,胸腔鏡下肺生検の適応については

①AIPでは肺傷害の進展が著しく速く,

②病態に関する情報は限られている,

③生検を行っても治療方法の選択,予後の改善に寄与する情報は得られないことが多い,などから慎重でなければならない。

(管理・治療)

AIPの病態はARDSに相当することから,その治療もARDSに準じた方法がとられる。

1)呼吸管理

  AIPの急性呼吸不全は,単に酸素投与するだけでは対応できない。気管内挿管とそれに続く人工呼吸管理がほぼ全例必要となる。まず調節機械呼吸(CMV)にした状態で,吸人気酸素濃度(FIo2)が0・5以下,Pao2が60Torr以上を最低限の目標値としてPEEPを加える。人工呼吸中の気道内圧の安全上限は70cmH20前後といわれているが,PEEP圧は最大でも20cmH20までとし,気道内圧が40cmH20を超えないようにする。高い換気圧はそれ自体で圧損傷(barotrauma)を肺に与えてウイーニングを困難にするとの考えから,Paco2に関して生命に影響しない範囲で高炭酸ガス血症を容認して(80~100mmHg)急性期を可能な限り低い換気圧で乗り切ろうとするのが最近の考えである(permissive hypercapnia)。なお,最近は量損傷(volutrauma)についても注目されている。

2)薬物療法

  AIPの薬物療法もARDSに準じており,これといった特効薬は今のところ見つかっていない。ステロイド薬のパルス療法〔ソル・メドロール(P2U:Solu medrol)1日,1,000mgを3日間連続投与〕あるいは,少量持続投与,蛋白分解酵素阻害薬,好中球エラスターゼ阻害薬,好中球や血小板の機能抑制が期待されるプロスタグランジンEl,人工サーファクタントなどが試みられているのが現状である。その他,必要に応じて抗生物質の投与が行われる。

(経過・予後)

  予後はきわめて不良である。Katzensteinらの報告では8例中7例が死亡,Olsonらの報告では29例中17例が死亡し,死亡率は60%もしくはそれ以上でありARDSによる死亡率とほぼ同一である。

特発性肺線維症(IPF)

IPFはIIPの慢性型で,臨床的には最も症例数の多いIIPの代表的疾患である。1976年,Crystalらによって臨床病理学的に疾患概念が初めて確立された。

  臨床的には,徐々に進行する呼吸困難・乾性咳に始まり,胸部Ⅹ線所見ではびまん性の線状網状影が認められる。病理学的には,胞隔炎,肺胞隔壁の線椎性肥厚から肺胞領域の構築の乱れをきたし,線維化と小嚢胞(蜂巣肺)形成が主徴となる末期像を一連の経過とする予後不良の経過をたどる。

1)疫学・頻度

  人口10万対3~4の頻度でみられる数少ない疾患である。しかし,AIPほどまれな疾患ではない。中高年の男子に多い。喫煙との関連性は認められていない。

2)病理組織所見

  病理組織学的には,UIP病変を示すことが多い。まれに,DIP病変が認められる。

・UIP病変

  きわめて変化に富む構造を示し,しばしば同一の組織標本内に正常肺胞隔壁から線椎性終末期痛変が含まれる。

 病変の特徴は,

①病変が斑状である。

②肺胞壁への好中球・好酸球の浸潤などいわゆる炎症所見には乏しい。

③臨床的にいずれの時期を見ても病理組織所見に違いはみられない。に要約される所見である。

・DIP病変

  肺のほぼ全体にわたって病変が比較的均等で,末梢気腔内に多数の大単核細胞が充満し,肺胞隔壁は線維性に肥厚するとともに,大型円形細胞で被覆されている。

  病理組織所見がUIP,DIPと異なっても,臨床像・臨床経過が異なるわけではないと理解されてきたが,最近,DIPの予後はUIPに比較してやや良好であり,完全回復例も報告されているところから,IPFはUIP痛変例のみに限定すべきあるとの見解がある。

(病因・病態生理)

IPFの病原物質を求めて,数多くの探索が行われたが,外因性物質は確認されていない。病変成立機序としては,主としてBALFの検討から得られた成績から,

①病原物質は不明であるが,なんらかの抗原によって形成された免疫複合体が,肺胞マクロファージを刺激する。

②活性化された肺胞マクロファージは,好中球遊走因子を産生・遊離し,好中球を毛細血管から局所に引き寄せる。

③活性化肺胞マクロファージ,好中球は,ともにオキシダント,ミエロペルオキシダーゼ,蛋白分解酵素を産生し,肺胞壁を傷害する。

④活性化肺胞マクロファージは,ポリペプチドである各種の成長因子を産生・遊離し,線維芽細胞などの間葉系細胞に作用して,細胞の増殖,膠原線推の産生を促し,結果として線維化病変の形成に働く。

(臨床所見)

1)発見動機

  労作時呼吸困難で発見されることが多いが,健康診断の普及しているわが国では,胸部Ⅹ線所見から無症状の時期に発見されることも少なくない。しかし,無症状例においても数年後には呼吸困難を訴えるようになる。

2)症状

 労作時呼吸困難に始まり,次第に増強する。乾性咳を伴うことも多い。喫煙者で慢性閉塞性肺疾患(COPD)

病変を合併した場合には疾を伴うことがある。約30%の症例では,軽度の肺高血圧症を呈する。

3)理学的所見

 ベルクロ・ラ音はほとんどの症例で聴取される。病変の進展とともに,細かい音から粗い音に移行する。

 バチ指は症例の2/3以上の症例で認められるが,病変の進展とともに著明になるような傾向ない。

(検査所見)

1)胸部X線・CT所見

  両側性のびまん性陰影が主徴。下肺野,特に肺底部に始まる線状網状影の増加・拡大,肺野の縮小所見を認めることが多い。胸膜直下の蜂巣肺所見が特徴的である。通常の胸部Ⅹ線写真では認められなくとも,CTではほとんど

すべての症例で認められる。

2)肺機能検査・血液ガス検査所見

  拘束性換気障害(%VCの低下)・拡散障害(DLco%)の低下が,初期から認められ,進行する。低酸素血症(Pao2の低下)は,病変のかなりの進展をみてから出現,進行する。初期には,労作負荷によってPao2の低下することが,病変の存在を示唆する。

3)血液検査所見

  赤沈値の軽度~中等度亢進,γ‐グロブリンの増加,1/3程度の症例でRA因子(+),抗核抗体(+)

の所見が認められるが,病期とともに高値になる傾向はない。

4)BALF細胞所見

細胞数%の増加がみられることがある。好中球・好酸球の若干の増加はみられても,リンパ球%の増加のみられることは少ない。健常者と変わらないBALF細胞所見は本症を疑う根拠となる。

(診断)

1)臨床診断

呼吸困難で受診したびまん性肺疾患症例を対象とした場合,胸部Ⅹ線・CT所見上の蜂巣肺を含むびまん性陰影,ベルクロ・ラ音,BALF細胞所見は,IPFを疑う根拠となる。

2)病理組織学的(確定)診断

外科的肺生検による肺の線維化病変,UIPあるはDIP病変の存在の確認が必要である。病理学的にIPFと診断される要件は,両肺びまん性に線維化病変の認められることと,線維化をきたす病因物質あるいは線維化の先行病変である肉芽腫などの病変が認められないことである。

3)鑑別診断

①サルコイドーシスの肺野病変進展例,石綿肺

鑑別困難な症例である。サルコイドーシスでは既往の胸部Ⅹ線所見,石綿肺では,BALあるいは組織からのアスベスト小体の確認が鑑別上の有力な情報となる。

②膠原病の肺野病変先行例

  他の臓器病変の出現を含めた膠原病特有の症状・所見の出現まで鑑別は不可能である。

4)合併症

  男子症例では,高い頻度(20~25%)で肺癌あるいは悪性病変の合併がみられる。女子症例ではま

れである。

(管理・治療)

1)原因療法

 病因不明の疾患であるので,原因療法は・現状では困難である。

 2)病態療法

 炎症の抑制,線維化の抑制が必要である。

①抗炎症薬

  ステロイド薬が標準療法として用いられている。しかし,有効性,特に延命効果を期待できるものではない。有効例では,一時的には,臨床症状・所見の若干の改善がみられる。

 免疫抑制剤の単独あるいはステロイド薬との併用投与も試みられているが,有効性についての確証はない。

②抗線維化薬

 現在の段階では,有効性の確認された薬剤はない。

3)対症療法としての酸素療法

  酸素投与によって,Pao2(安静時)の改善がみられ,QOLの改善が期待される。また,本症の進展期にみられる肺高血圧症の進展を防止する効果が期待される。

4)対症療法としての肺移植

 欧米では,IPFには片肺移植の有効性が確認され普及しつつある。

5)管理・治療の実際

①安定期の管理

  胸部Ⅹ線像上の急激な変化はみられず,肺機能検査および動脈血酸素ガス分圧の有意の変化もみられない場合,安定期とみなして対応する。

・定期的な外来受診:肺癌の併発に注意する。

・患者教育:病気の性質をよく理解させ必要以上の労作負荷を加えない。感冒に罹患しないように注意する。

②進展期の管理・治療

  Pao250Torr以下,あるいはPa02の急激な低下,胸部Ⅹ線陰影の増加がみられ,自覚症状の変化が並行する場合,進展期としての対応が必要である。

・生活指導の徹底

・酸素療法

・ステロイド薬の投与:経口投与を試みる。症状の激しいときには,パルス療法を行う。

③急性悪化時の対応         7

IPFのいわゆる急性悪化時の病理学的所見はDADである。基本的病態は,AIPあるいはARDSと同様である。治療は,AIPと同様である。

(経過・予後)

  5年生存率は40~50%,10年生存率は20~30%程度である。IPF病変の進展による死亡例は,慢性呼吸不全による死亡例と急性悪化による死亡例に大別される。急性悪化による死亡は,感冒に罹患しないことを目標とする生活環境の整備で,ある程度は防ぐことができる。男子では肺癌の合併による死亡例が少なくない。

非特異的問質性肺炎(NSIP)

NSIPとは,病期がほぼ一様な慢性間質性肺炎で,DAD,BOOP,UIP,DIPのいずれとも判断できない症例に対して,1994年,Katzensteinによって提唱された病理組織学的概念である。NSIPは3群に分類されている。

①Ⅰ群:細胞性間質性肺炎と表現される病変で,間質の炎症性病変が主体であり,線維化病変は比較的低い。

①Ⅱ群:リンパ球,形質細胞の間質性浸潤に加えて,肺胞構造の消失を伴う線維化病変が混在する病型である。

③Ⅲ型:病期のそろった線維化病変がびまん性あるいは斑状に認められる病型で、蜂巣肺病変の認められることもある。

 Katzensteinの報告ではIIPに含まれる症例のみでなく、膠原病性の間質性肺炎をも含んでいるが、以下、特発性NSIPについて記載する。

 臨床的には、呼吸困難・咳・発熱を主徴として亜急性に発症することが多い。

 胸部X線所見上、肺野のびまん性陰影は、CT上、軽度の蜂巣肺が認められることがあるが、主な所見は肺野の濃度上昇と微細粒状影である。

 BALFでは、リンパ球%の増加、CD4+細胞′CD8+細胞の低下を認めることが多い。

治療の面からは、ステロイド薬に反応し、経過は比較的良好であるが、ときに予後不良の経過をたどる症例もある。

このように、特発性NSIPの臨床所見・検査所見・経過はBOOPに類似したところが多い。ときにIPF(UIP)に類似の所見・経過を示す症例もあり、全体としてみれば、BOOPとIPF(UIP)の間に位置している。最近、IPFと診断されていた症例の病理組織所見を再検討したところNSIP症例が14%含まれており、このような症例の経過・予後は良好であったとの報告が行われている。しかし、NSIPの疾患概念は確立した状況ではなく、今後の検討課題とされるところも多い。


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