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(/o\)胃癌の話


「胃癌」の画像検索結果

(´◉◞౪◟◉)題名:胃癌の話

●解剖生理

<胃の構造>

(1)胃の形状

胃は、左上腹部にあり、消化管の最も広がった部分である。

第11胸椎の高さで食道からつながり、右下方で十二指腸につながる。

全体として左側に向かってふくれた形をしているが、生体内での大きさと形は、内容の量により、また個体によりきわめて多様である。

胃の食道につながる部分を噴門、十二指腸につながる部分を幽門といい、右側の短いへりを小彎、左側の長いへりを大彎という。

胃の大きく膨らんだ本体の部分は胃体で、右下の細くなった部分は幽門部である。

胃体の上端で、噴門の左側に盛り上がった部分を胃底という。

X線でみると、胃体と幽門部の境目には深いくびれがあり、これを角切痕とよぶ。

胃の小彎と大彎は、胃に分布する血管の通路になっている。

小彎には小網という薄い膜が付着し、肝臓下面の肝門との間をつないでいる。

大彎に付着する大網は、脂肪とリンパ組織を含む薄いエプロン状の膜になり、腹部内臓の前面に垂れ下がっている。

 

(2)胃壁と胃液

胃壁は、粘膜、平滑筋層、漿膜の3層からなる。

胃が空虚なときには、胃の粘膜は多数のヒダをつくり、その多くは縦走する。

小彎沿いのヒダは胃に内容が満ちても消えずに残る。

胃の平滑筋はかなり厚く、斜走・輪走・縦走の層が重なっている。

胃の運動は、筋層の間にあるアウエルバッハ神経叢(筋層間神経叢)がつかさどる。

幽門では、輸送筋がとくに発達して幽門括約筋をつくっており、十二指腸への食物の輸送が調節される。

胃粘膜の表面には、胃腺に開口部である胃小窩が、1cm2あたり100個ほど開いている。

食道に近い噴門部と十二指腸に近い幽門部では、胃腺は主に粘液を分泌する。

胃の大部分の胃腺(胃底腺)は、粘液を分泌する副細胞のほかに塩酸を分泌する壁細胞、ペプシノゲンを分泌する主細胞を有する。

ペプシノゲンは、塩酸の働きで分解され、ペプシンというタンパク質分解酵素になる。

 

<胃の機能>

消化における胃の役割は、①食べたものを一時的に収納して十分に消化するとともに少しずつ腸へ送る、②胃酸による殺菌作用・酵素の活性化・鉄の還元、③ペプシンによるタンパク質の消化、④粘液分泌による胃壁の保護、⑤消化管ホルモンの一種であるガストリンの分泌による胃液分泌促進、⑥内因子放出によるビタミンB12の吸収促進、などである。

なお、胃では少量の水とアルコールが吸収されるのみで、その他の物はまったく吸収されない。

(1)胃の運動

噴門から胃底部を含む胃の近位部は律動的な収縮を行わず、食塊が胃にはいってくると弛緩して食塊を貯蔵する。

大彎上部(胃体中部)に筋原生のペースメーカーがあり、ここから発した興奮が幽門方向へ伝わるとともに収縮(蠕動)を引き起こす。

この蠕動波は毎分約3回の頻度で発生し、胃の内容物を胃液と混和するとともに粉砕する。

胃の内容物(ドロドロになるため、かゆ状液とよばれる)は幽門方向へ押し出されるが、幽門は収縮して閉鎖するため、かゆ状液は通過できずに押し戻され、これを繰り返すうちに、かゆ状液の消化がさらに促進される。

胃の蠕動はアウエルバッハ神経叢にあるニューロンによって調節されるが、このニューロンはさらに迷走神経による調節を受ける。

食塊は胃の消化作用によって細かくなり、固形物の直径が1mm程度になってはじめて十二指腸に送られる。

十二指腸への排出は液体では比較的速い(10分ほど)が、固形物では遅く3~6時間を要する。

栄養素別にみると、胃から排出されるまでにかかる時間は脂肪が最も長い。

胃から十二指腸へのかゆ状液の排出は、幽門部の内圧上昇による排出促進と、十二指腸からの神経性刺激およびホルモン性刺激による制御によって調節される。

大彎上部に生じた収縮(蠕動)が蠕動波となり幽門へと移動する。

この運動により、胃の内容物は胃液と混じり、粉砕される。

 

(2)胃液の分泌とタンパク質の消化

胃の2/3を占める胃体部には多数の胃底腺があり、1日1~2ℓの胃液を分泌する。

胃腺を構成する細胞には主細胞、壁細胞、副細胞の3種類がある。

壁細胞は塩酸(HIC)を分泌する。

この分泌液は胃酸ともよばれるが、成分は塩酸そのものである。

この塩酸のために、胃液はpHが約1の強酸となっており、食物とともに胃に入った細菌を滅菌するはたらきがある。

また胃酸は、タンパク質を変性させると同時に、主細胞が分泌するペプシノゲンに作用して、これを活性型のペプシンにかえる。

ペプシンはタンパク質を分解してポリペプチドにする。

さらに胃酸は、十二指腸に排出されると、十二指腸粘膜を刺激してセクレチンという消化管ホルモンを分泌させ、膵液の分泌を促進する。

副細胞は、弱アルカリ性の粘液を分泌している。

この粘液は、胃の上皮細胞表面をおおい、胃酸やペプシンによって上皮細胞が傷害されることを防いでいる。

しかし、なんらかの原因によって胃酸の分泌が亢進したり、粘膜の分泌が不足したりすると、胃壁や十二指腸の粘膜が消化されてしまい、消化性潰瘍を生じる。

これが胃十二指腸潰瘍である。

ヘリコバクターピロリとよばれる細菌は、炎症を引き起こす。

アンモニアを産生する、胃酸分泌を亢進させるなどのため、胃十二指腸潰瘍の原因菌として注目されている。

 

(3)胃液の分泌調節

胃液の分泌調節は、頭相、胃相、腸相の3つに分けられる。

●頭相:

頭相は、視覚・嗅覚・味覚などが刺激となり、迷走神経を介しておこる胃液分泌の促進である。

●胃相:

食塊が胃の中にはいると胃相が始まり、幽門部にある幽門腺のG細胞から、ガストリンという消化管ホルモンが血液中に放出される。

ガストリンは血液にのって循環し、胃底腺の壁細胞からの胃酸の分泌を促進する。

ガストリンの分泌を刺激するのは、アミノ酸やペプチドによる胃粘膜の刺激、胃壁の機械的伸展、迷走神経の興奮などである。

また、ヒスタミンも胃酸の分泌を促進させる。

●腸相:

腸相は、十二指腸に胃から排出された酸性のかゆ状液がはいることでおこる胃酸分泌の抑制である。

胃抑制ペプチド(GIP)や、その他エンテロガストロンと総称されるいくつかのホルモンが十二指腸粘膜から血液中に放出され、胃液の分泌を抑制する。

酸性のかゆ状液が刺激となって放出されるセクレチンや、脂肪やタンパク質分解産物に刺激されて放出されるコレシストキニン(CCK)も、胃液の分泌を抑制する。

 

●病態生理

わが国における胃がんの頻度は世界的に見ても高く、最近では減少傾向にあるとはいえ最も頻度の高い癌の一つである。

わが国における胃がんの男女比はほぼ2:1であり、50~60歳代に最も好発する。

検診の普及に伴って、無症状の状態で発見される頻度も増加している。

好発部位は前庭部・胃角部で、胃体部がこれにつぐ。

上部胃での発生頻度は比較的低い。

なお、組織型はほとんどが腺癌である。

胃がんの発生原因は、いまだ明らかにはされていない。

しかし、一部の腺癌では、遺伝子が関与していることが明らかになっている。

前癌病変としては、胃潰瘍・胃腺腫性ポリープ・慢性胃炎・悪性貧血などがあげられる。

最近では、ヘリコバクター・ピロリが関与しているとの報告もなされている。

 

■病型・進行度

(1)病型

がんの浸潤が粘膜内または粘膜下層に限局しているものは、早期胃がんと呼ばれる。

がんの大きさやリンパ節転移の有無は、早期胃がんの定義には関係しない。

早期胃がんの手術成績は非常に良好で、5年生存率は粘膜内癌では90%以上、粘膜下層癌では80%以上である。

一方、癌の浸潤が粘膜下層をこえるものは進行がんと呼ばれ、術後成績は、深達度やリンパ節転移の有無にもよるが、早期癌に比べると非常に劣る。

 

●胃がんの肉眼型分類(基本分類):

胃がんは肉眼的所見から、次のように分類される。

0型(表在型):病変の肉眼形態が軽度な隆起や陥凹を示すにすぎないもの。

1型(腫瘤形成型):隆起性でかつ限局性であり、周囲粘膜との境界が明瞭なもの。進行がんのうち最も少ない。他の型よりも予後は良好である。

2型(潰瘍限局型):潰瘍を形成し、潰瘍の周囲辺縁が隆起して周堤を形成している。周堤と周囲の正常粘膜との境界は明瞭である。よく分化した癌が多い。

3型(潰瘍浸潤型):潰瘍を形成し、潰瘍の周囲辺縁が隆起して周堤を形成しているが、一部は浸潤傾向を示し周堤と周辺粘膜との境界が不明瞭なもの。最も多い型であるが、予後は2型よりも不良である。

4型(びまん浸潤型):びまん性に浸潤する型。明らかな潰瘍形成も周堤もなく、胃壁を硬化し、進行すると萎縮する。硬癌(スキルス)とよばれる種類が多い。最も予後不良である。

5型(分類不能):上記の0~4型のいずれの型にも属さないもの。

 

●0型(表在型)の亜分類:

表在型胃がんは肉眼的所見から、次のように分類される。

Ⅰ型(隆起型):胃内腔に向かい隆起が明らかなもので、ポリープ状の形態をとる。

Ⅱ型(表面型):表面にあまり凹凸がないもので、さらに3型に分類される。

Ⅱa型(表面隆起型):表面にわずかに隆起しているもの。

Ⅱb型(表面平坦型):肉眼的には周囲粘膜から隆起も陥凹もしていないもので、まれである。

Ⅱc型(表面陥凹型):表面がわずかに陥凹しているもので、早期の癌のなかでは最も頻度が高い。

Ⅲ型(陥凹型):胃壁での陥凹が明らかなもの。潰瘍があって、その辺縁の粘膜下層まで

にがんの浸潤がみられるもの。

胃がんは肉眼的に0~5型の6型に分類される。0型には早期癌の大半と一部の進行がんが含まれ、3型に亜分類される。1~4型のほとんどは進行がんである。

0型(表在型)胃がんの亜分類

(2)進行度(ステージ分類)

胃がんの進行度(ステージ分類)

N0

N1

N2

N3

T1

ⅠA

ⅠB

T2

ⅠB

ⅢA

T3

ⅢA

ⅢB

T4

ⅢA

ⅢB

H1,P1,CY1,M1

<壁深達度>

T1:がんが粘膜または粘膜下層にとどまる

T2:がんが固有筋層または漿膜下層にとどまる

T3:がんが漿膜に接するか遊離腹腔に露出する

T4:がんが直接多臓器に浸潤する

<腹膜転移>

P0:腹膜転移がない

P1:腹膜転移がある

PX:不明

<腹膜細胞診>

CY0:腹膜細胞診でがん細胞をみとめない

CY1:腹腔細胞診でがん細胞をみとめる

CYX:腹腔細胞診を行っていない

<リンパ節転移>

N0:リンパ節転移をみとめない

N1:第1群リンパ節のみに転移がある

N2:第2群リンパ節まで転移がある

N3:第3群リンパ節まで転移がある

NX:不明

<遠隔転移>

M0:肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診以外の遠隔転移をみとめない

M1:肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診以外の遠隔転移をみとめる

MX:不明

<肝転移>

H0:肝転移がない

H1:肝転移がある

HX:不明

(3)進展形式

①水平方向および垂直方向への浸潤:粘膜から発生したがんが胃壁内に広がっていく(水平方向に進展)とともに、粘膜筋板を破って粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜へと浸潤していく(垂直方向に進展)。さらに漿膜をこえて膵臓や横行結腸などの隣接臓器に直接浸潤していく。

②腹膜播種:がんが漿膜を超えると、腹腔内にがん細胞が散布される。散布された癌細胞が腹膜に生着した状態を腹膜播腫という。腹膜播腫が広範囲におこるとがん性腹膜炎の状態となり、腹水を生じたり腸閉塞の原因になる。ダグラス窩にがん細胞が及ぶと、直腸指診によって腫瘤を触知できるようになる。この状態をシュニッツラー転移とよぶ。

③リンパ行生転移:がん細胞がリンパ管に進入し、広がっていく状態をいう。胃の周囲の所属リンパ節から遠隔のリンパ節へと広がる。左鎖骨上リンパ節への転移をとくにウィルヒョウ転移とよぶ。

④血行性転移:まず胃の周囲の静脈から門脈にがん細胞が入り、肝転移をおこす。また全身の血中にがん細胞が入り、肺・骨・脳・腎臓・皮膚などに転移をきたす。肝転移の頻度が最も高い。

●症状

①自覚症状:胃がんに特有の自覚症状はない。早期胃がんでは約半数が無症状である。一般には、心窩部痛・腹部膨満感・胸やけ・吐き気・嘔吐・食欲不振などの症状から始まる。病気の進行とともにこれらの症状は悪化し、背部痛などが出現することもある。また、体重減少・貧血などがあらわれる。痛みは潰瘍を形成するために出現することが多いが、食事とは無関係である場合が多い。

 噴門部のがんが進行すると嚥下困難をきたす。また、幽門部のがんが進行すると頻回の嘔吐をきたすようになる。なお、出血の頻度は胃潰瘍に比べると低い。

②他覚症状:早期がんではほとんどない。進行がんである程度以上の大きさになると、上腹部に腫瘤を触れるようになる。腫瘤はかたく可動性があるが、進行すると周囲臓器への癒着や浸潤によって可動性がなくなってくる。さらに進行すると腹水が貯留したり、シュニッツラー転移・ウィルヒョウ転移を触知する。なお、便潜血反応は陽性である場合が多い。

●診断

①X線検査:進行がんでは、陰影欠損、狭窄、粘膜ヒダの断裂、悪性ニッシェ、胃壁の硬化像などがみられる。早期がんでは扁平な隆起、浅い陥凹、粘膜ヒダの集中と断裂などがみられる。CTによって原発巣だけでなく、肝転移の有無や所属リンパ節の腫大を確認する。

②内視鏡検査:進行がんでは、不整な隆起や潰瘍が存在している。早期がんでは、低い隆起や浅い陥凹がみられる。また、粘膜の色調の変化が存在する場合も多い。

 早期がんの進行度と治療方針を決定するために、超音波内視鏡検査が行われる。超音波診断によって、胃内腔からがんの壁深達度を決定する。鑑別診断としては、早期がんでは良性潰瘍・胃炎・腫腺性ポリープなどとの鑑別が必要である。また進行がんでは、肉腫・粘膜下腫瘍・悪性リンパ腫などが鑑別の対象となる。

●治療

 基本的な治療方針は切除であるが、進行度によって切除方法と切除範囲は異なる。

□内視鏡的治療

 早期胃がんのなかの粘膜内がんで、長径が2cm以下の分化型のものは内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われる。この方法は入院期間も短く、粘膜だけの切除であるため患者にとっての恩恵は大きいが、局所切除であるため、適応の決定には慎重でなければならない。また、レーザー照射などが行われる場合もある。

 近年、内視鏡処置具の発達により、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われるようになった。ESDは、病変の周囲の粘膜を切開したのち、粘膜下層を剥離して病変を一括切除する方法である。リンパ節転移のない早期粘膜内がんや粘膜下層にわずかに浸潤したがんに行われる。

 EMRやESDは開腹手術を行わずに病巣を切除できる方法であるが、出血や穿孔などの合併症をきたす可能性がある。

□腹腔鏡下手術

 内視鏡的治療が困難な粘膜内がんに対しては、腹腔鏡を用いた治療が行われる。全層局所切除が最もよくおこなわれる。この方法は切除範囲を大きくとれること、また周囲のリンパ節の標本採取ができることが利点である。

 最近では、腹腔鏡補助下にリンパ節郭清を伴った幽門側胃切除なども行われるようになった。

□開腹手術

 一般には、次のような術式がある。

①幽門側胃切除術:最も多く選択されている。がんが胃の末梢側の1/2に限局している場合には、胃の約80%と十二指腸起始部を切除する胃亜全摘術が行われる。吻合はビルロートⅠ法・Ⅱ法、あるいはルーY法(残胃が小さく胆汁の逆流のおそれがある場合)が行われる。

幽門側胃切除後の再建法

②噴門側胃切除術:がんが胃上部の1/3に限局し、比較的早期の場合に行われる。

③胃全摘術:がんが胃全体に広がっていたり、上部に限局していても進行している場合に選択される。リンパ節郭清との関係で、膵臓や膵尾部が合併切除されていることもある。吻合はルーY法、あるいは空腸間置術が行われる。

④姑息手術:転移があったり高度に進行して根治性が得られない場合には、姑息的な切除を行ったり、バイパス術を行う。

胃全摘術後の再建法

□内科的治療

 化学療法が主体となる。フルオロウラシル(5-FU)とその誘導体、さらにマイトマイシンC・シスプラチン・エトポシド・塩酸イリノテカンなどが用いられる。

●合併症

(1)手術による合併症

 手術による合併症には以下のようなものがあるため、予防・早期発見につとめる。

□早期合併症

①術後出血

②縫合不全:経口摂取を中止し、高カロリー輸液と適切なドレナージによって治療を行う。長期間胆汁や膵液が漏出する場合には再手術が必要な場合がある。

③通過障害:吻合部の浮腫などが原因で一時的に通過障害をきたすことがある。吻合不全が治癒したあとの狭窄に対しては、内視鏡的ブジーなどの拡張術を必要とする場合がある。

④イレウス:手術後の癒着によってイレウスをきたす場合がある。

⑤急性胆嚢炎:細菌感染や胆汁うっ滞が原因でおこる場合がある。

(2)晩期合併症

①ダンピング症候群:食後30分でおこる早期症状と食後2~3時間でおこる晩期症状がある。

[早期症状]全身倦怠感・めまい・頻脈・発汗・動悸・腹部膨満感・腹痛・吐き気・嘔吐・下痢などの症状がある。胃切除疾患の10~20%に発生する。食事の1回量を減らして回数を多くするなど、食事の摂取法に注意すると軽快することが多い。

[晩期症状]胃貯留能の低下によっておこる。一過性の高血糖に続く低血糖が原因である。全身倦怠感・めまい・心悸亢進・発汗・吐き気などが症状である。安静を保ち、血糖を補うため糖類を摂取する。

②貧血:胃切除後は鉄の吸収障害による鉄欠乏性貧血がおこりやすい。また胃全摘後はビタミンB12がほとんど吸収されず、放置すれば5~10年後に巨赤芽性貧血を発症する。

(3)再発形式

 再発形式は、腹膜播腫・リンパ節再発・他臓器への血行性転移が主である。早期胃がんの再発率は約2~3%で、予後は非常に良い。早期がんの再発は血行性転移が多く、進行がんでは腹膜播腫が多く予後は不良である。

●看護

 胃がんは、深達度により早期がんと進行がんに分けられる。症状としては、早期がんの場合は、上腹部痛・腹部膨満感・食欲不振などがみられるが、無症状であることも多い。一方、進行がんの場合は、体重減少・消化管出血による貧血・吐き気・嘔吐・嚥下困難などがあらわれる。

 治療は、日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」に基づいて胃がんの進行度やQOLを考慮して選択され、早期胃がんに対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡的治療法が行われる。外科的手術は、病巣切除と周囲リンパ節郭清を目的として、幽門側胃切除術・噴門側胃切除術・胃全摘術などが行われる。

 ここでは侵襲の大きい外科的手術を受ける患者の看護について述べる。

<手術前の看護>

 手術前の患者は、食欲不振・吐き気・嘔吐・嚥下障害などの症状に伴って、食事を十分に摂取できないことにより、栄養状態が低下している可能性がある。また中心静脈カテーテルの挿入や経鼻胃管の挿入など、苦痛を伴う検査や処置が多いことに加え、手術や麻酔という未知のできごとに対する不安も大きい。そこで手術前の看護は、患者の栄養状態、病気に伴う不快症状を改善して、心身ともに最良の状態で手術を受けられるようにすることを目標とする。

□アセスメント

(1)全身状態:バイタルサイン、顔色、全身倦怠感の有無、脱水の有無

(2)栄養状態:食事摂取量、体重の変化、皮膚の状態

(3)疾患の状態:病巣の部位と大きさ、転移の有無、狭窄の有無、出血の有無

(4)疾患に伴う症状:上腹部痛・腹部膨満感・食欲不振・吐き気・嘔吐・嚥下困難

(5)検査データ

①血液検査:赤血球数・白血球数・ヘモグロビン・ヘマトクリット・アルブミン・総タンパク

②診断のための検査:胃内視鏡検査・X線検査(胃造影)

③手術のために必要な検査:肺機能検査・心電図・胸部X線検査・血液型・肝機能検査・腎機能検査・血糖測定

(6)手術や手術後の経過に影響するような既往歴の有無

(7)治療・処置:これまでに行われてきた治療・処置、予定術式、麻酔法

(8)機能障害の有無と程度:呼吸器系・循環器系・運動器系、ADL

(9)病気の理解と受け止め:医師の説明内容、患者が理解している内容、病気や治療に対する気持ち

(10)社会的環境:家族構成、家族内での役割、職場での地位と役割、職場・学校・地域・

家庭での生活の様子

(11)家族の病気や治療に対する反応

□看護目標

(1)不快な症状が緩和され、安楽になる。

(2)栄養状態が改善し、手術を受けるために身体状態を整えることができる。

(3)検査・処置に伴う苦痛が緩和される。

(4)疾病、手術・麻酔に関する不安が緩和される。

□看護活動

●症状の緩和:

 早期がんの場合には無症状のことがあるが、一般に噴門部付近に病変がある場合には吐き気・嘔吐やつかえ感、幽門部付近に病変がある場合には腹部膨満感や吐き気・嘔吐などの不快な症状を伴う。このような場合には食事摂取を控え、できるだけ安楽な体位をとり、膝を曲げるなどして腹筋をゆるめるようにし、患者がゆったりと落ち着いて過ごせるよう環境を整える。

 痛みが緩和されない場合には鎮痛薬の与薬について医師と相談し、患者の痛みの状況をみながら効果的に鎮痛できるように与薬の時間を調整する。

 吐き気・嘔吐がある場合には、制吐薬の与薬について医師と相談する。嘔吐が続いたり、幽門部の病変のために通過障害がある場合には経鼻胃管を挿入することがある。

●栄養状態の改善:進行がんの場合には、吐き気・嘔吐・嚥下困難・食欲不振などの症状により食事や水分が十分に摂取できず、低タンパク血症・貧血・脱水・電解質のアンバランスが生じることがある。

 このような状況は患者にとって苦痛なだけでなく、手術中の循環動態や手術後の回復に悪影響をもたらすため、手術前に改善しておかなければならない。しかし病巣により幽門狭窄などの器質的な変化が生じている場合には、経口的に栄養や水分を補給することは困難である。したがって中心静脈カテーテルを挿入し、中心静脈栄養法により栄養改善を図ったり、輸液により水・電解質の補給を行う。貧血がある場合には、手術に備えて改善するために輸血を行う。

●検査・処置時の苦痛の緩和:

 胃内視鏡検査や胃造影のような苦痛を伴う検査を行う際には、禁飲食や鎮けい薬の与薬などの検査前の処置を確実に行い、検査が円滑に行われるように援助する。鎮けい薬は、蠕動運動を低下させ、胃を伸展させやすくするために用いられる。通常は抗コリン薬(ブスコパン)が用いられるが、この薬剤は副交感神経を抑制・遮断するため、既往に緑内障・前立腺肥大・心疾患がある場合には症状を悪化させる可能性があり、禁忌である。

 患者が安心し、リラックスして検査にのぞめるようにするためには、検査前のオリエンテーションを行うとともに、検査中は深呼吸を促し、身体の力を抜いてリラックスできるように声をかける。

 胃内視鏡検査では検査前に咽頭麻酔を行うので、検査後は麻酔が切れたら水分の摂取が開始され、異常がなければ食事をとることができる。胃造影では、検査のためにバリウムを飲むので、検査後は緩下剤を与薬し、2~3日以内にバリウムが排泄されたことを確認する。バリウムが排泄されている間は便が白いので、便の色で確認することができる。

●不安の緩和:

 胃がんで手術を受けることになった患者は、がんに罹患したことや食べられなくなったことにより、死への不安をいだいたり、手術や麻酔という未知のできごとへの不安をいだいたりしている。このような患者の不安を緩和するためには、医師のからの説明の内容、患者が病気や手術をどのように理解して受け止めているか、過去の手術体験、社会における役割などの情報収集を行い、患者の感情表出を促し、不安を受け止めるようにつとめる。

 病名や病状に疑念を持っている患者に対しては、医療者が一貫した態度で接することができるよう、説明内容を統一し、患者とその家族が納得して手術にのぞめるようにする。

 手術や麻酔などの未知のできごとへの不安に対しては、手術前の準備、手術後の状態、手術後の経過、痛みに対してとられる治療・処置などについて説明し、患者が具体的にイメージできるように促す。

<手術後の看護>

 手術後は、麻酔や手術による機械的刺激により腸管が麻痺しており、創部痛のために動かないでいるとイレウスなどの術後合併症をおこす可能性がある。また食事が開始されると、胃切除に伴う消化吸収障害やダンピング症候群などの合併症をおこす可能性があるため、長期的な食生活の変更をしいられる。

 そこで手術後の看護は、術後合併症を予防し、異常の早期発見につとめること、食生活を手術により変化した消化管の構造に合うように再調整することに、患者が主体的に取り組めるよう援助することが重要である。

□アセスメント

(1)手術に関する内容:術式(幽門側胃切除術・噴門側胃切除術・胃全摘出術・姑息手術)、再建方法(ビルロートⅠ法・Ⅱ法、ルーY法、空腸間置術など)、リンパ節郭清の有無、浸潤の状況、出血量、ドレーンの挿入部位、麻酔時間、手術時間、手術中の循環動態

(2)全身状態

①手術後24時間以内:バイタルサインの経時的な変化、麻酔からの覚醒状態、水分出納のバランス

②手術後24時間以降:バイタルサインの経時的な変化、水分出納のバランス

(3)疼痛:疼痛の有無・部位と程度、疼痛コントロールのための治療・処置

(4)術後合併症の徴候

①早期合併症

・後出血:血圧低下、頻脈、顔面蒼白、ドレーン・胃管からの排液量と性状

・無気肺・肺炎:肺音の聴診(呼吸音とリズム・呼吸回数・副雑音の有無・左右差)、胸郭の動き、痰の量と性状、酸素飽和度、頻脈、発熱、白血球数の上昇

・創部・ドレーン挿入部の感染:腹部正中創・ドレーン挿入部の発赤・腫脹・痛み

・吻合部の縫合不全:ドレーン・胃管からの排液量と性状、炎症反応(発熱、白血球数・C反応性タンパクの上昇)の有無、胃造影の結果

・術後イレウス:腸蠕動運動の有無、排ガスの有無、腹部膨満感・吐き気・嘔吐の有無、排便の有無

②後期合併症

・ダンピング症候群(早期症状:食後30分前後におこる):血管運動性症状(全身倦怠感・めまい・頻脈・発汗・動悸)、腹部症状(腸蠕動亢進・腹部膨満感・上腹部不快感・腹痛・吐き気・嘔吐・下痢)

・ダンピング症候群(後期症状:食後2~3時間でおこる):全身倦怠感・めまい・心悸亢進・発汗・吐き気

・吻合部通過障害:腹部膨満感・胸やけ・噯気・吐き気・胃部停滞感

・胃食道逆流症:胸やけ・背部痛・心窩部痛・嚥下障害

(4)手術の理解と受け止め:手術に対する気持ち、手術後の経過についての理解、回復への意欲、家族の反応

□看護目標

(1)術後合併症が予防・早期発見される。

(2)痛みや苦痛が緩和される。

(3)手術により変化した消化管の構造に合った食行動をとることができる。

(4)回復への意欲をもち、主体的に合併症の予防に取り組むことができる。

□看護活動

●早期合併症の予防・早期発見:

①後出血:後出血は、原因によって発症する時期が異なる。手術後24時間以内の場合には、手術操作が原因となっている可能性が高い。また出血性素因のある患者や、抗凝固薬を常用している患者におこりやすい。一方、膵臓を一部切除した場合に、手術後1週間以上経過して発症するものは、膵液瘻による可能性がある。

 いずれの場合にも、ドレーンや胃管からの排液量と性状を経時的に観察するとともに、血圧低下や頻脈の出現、チアノーゼ・末梢の冷感の有無を観察して異常の早期発見に努め、後出血をみとめたらすみやかに医師に報告する。治療としては、血管造影を行って出血点を確認したのちに塞栓術を実施したり、止血薬の与薬などが行われるが、改善がみられない場合には再手術となる。

②無気肺・肺炎:胃切除術では腹直筋を切開するために、呼吸時に横隔膜の動きを制限する。このため浅表性呼吸になり、換気-血流比の不均衡が生じて低酸素血症をきたす。また、咳嗽やたんの喀出時に痛みを伴うために排たん行動を抑制し、分泌物が蓄積して気道閉塞を引き起こす。その結果、肺胞が虚脱して無気肺になる可能性がある。また無気肺をおこした部位に細菌が繁殖すると肺炎になる。

 無気肺の症状としては、39℃以上の発熱、頻脈、呼吸数の増加、胸郭運動の左右差(患側の運動低下)、患側の呼吸音の減弱・消失、酸素飽和度の低下などがみとめられる。

 また肺炎の場合には、手術後72時間以上経過してからの38℃以上の発熱、白血球数の上昇、膿性たんの喀出がみられる。

 無気肺や肺炎を予防するには、手術前から禁煙指導を行うとともに、呼吸訓練や、インセンティブスパイロメトリー(トリフロー・インスピレックスなど)を利用した呼吸理学療法の必要性についての理解を促し、実施することが効果的であり、術後肺合併症の発症率を低下させるといわれている。また手術後には、疼痛コントロールを行うことにより呼吸や排たん行動を促すこと、ネブライザーや含嗽により気道内を加湿して排たんしやすくすること、手術前に引き続き呼吸訓練と呼吸理学療法を実施することが重要である。

③創部・ドレーン挿入部の感染:胃切除術では、滲出液や血液などを体外に排泄することを目的として、ウィンスロー孔や左横隔膜下腔(全摘術後)にドレーンが挿入される場合がある。手術後の患者は手術侵襲などにより易感染状態にあるため、ドレーンからの逆行性感染をおこしやすい。したがってドレーン挿入部の清潔を保つため、ガーゼ交換時には手洗い・手袋の着用・無菌的操作を徹底して行う。また感染の早期発見のために、ドレーン挿入部の発赤・腫脹・疼痛の有無を観察する。排液が消化液のような場合には皮膚に炎症やびらんが生じることがあるが、このようなときには創傷被覆剤で皮膚を保護するとよい。

④吻合部の縫合不全:縫合不全は手術後5~10日ころに発症することが多い。消化管の縫合不全では、吻合部から消化管内容物が漏出する。

 縫合不全をおこす要因には全身的要因と局所的要因がある。全身的な要因としては、低栄養、呼吸・循環機能の低下による組織への酸素供給不足、糖尿病や肝機能障害などの代謝障害、膠原病、ステロイド薬の投与などがあげられる。また局所的要因としては、手術手技、縫合部の血流障害がある場合、縫合部が組織の癒着などによって物理的に牽引されて緊張が高い場合、チューブ・ドレーンにより縫合部が圧迫されている場合、消化管内容物が停滞することにより内圧が亢進している場合などが考えられる。

 縫合不全を予防するためには、手術前に縫合不全の全身的要因についてアセスメントし、可能なかぎり改善することが重要である。そして手術後は肺合併症の予防につとめ、創傷治癒に必要な酸素が十分に細胞に送られるようにする。糖尿病がある場合には、血糖コントロールを行う。早期発見するためには、ドレーンからの排液の量と性状、発熱、白血球数の増加、吻合部付近の疼痛・圧痛の有無を経時的に観察する。

縫合不全の治療としては、絶飲食として胃管を挿入してドレナージを行う、高カロリー輸液で栄養を補う、抗菌薬の投与などが行われる。胆汁や膵液の漏出がある場合には、再手術をすることがある。

⑤術後イレウス:手術操作に伴う腸管への機械的刺激、腹腔内の感染症、手術後の癒着、術後胆嚢炎などに伴い、イレウスをおこすことがある。イレウスをおこすと腸管内にガスや液体が貯留することにより、体液の喪失、経口摂取不能、腸管内細菌や細菌毒素の循環系・リンパ系・腹腔への移行がおこり、その結果、脱水・循環障害・敗血症などに陥る。

 通常は、手術による機械的刺激や麻酔により運動麻痺(生理的イレウス)になった腸管は、手術後48~72時間後には自然に回復して腸蠕動がみられる。しかし手術時間が長い場合、高齢者、繰り返し開腹手術を受けている場合、イレウスの既往がある場合には術後イレウスのリスクが高くなるので注意が必要である。早期発見のためには、手術後の腸蠕動の回復過程を観察するとともに、腹部膨満・腹痛・吐き気・嘔吐などの症状の有無、および手術後72時間後の排便・排ガスの有無を観察する。

 術後イレウスを予防するためには、早期離床が効果的である。そのほか、腰背部の温罨法によって副交感神経優位の状態にする方法、腹部温罨法によって血液循環を促す方法、腹部マッサージによって腸管を機械的に刺激する方法がある。ただし腹部温罨法は、腹膜炎を起こしている場合には禁忌である。

 治療としては胃管を挿入して保存療法を行うが、軽快しない場合には再手術となる場合がある。

●後期合併症の予防・早期発見:

①ダンピング症候群:食事が開始後、手術によって形態・機能が変化した消化管を食物が通過することによりおこる。食後30分前後でおこる早期症状と、食後2~3時間におこる後期症状がある。

 早期症状は、高張な食物が一気に腸内に入るために体液が腸管内へ移行して、循環血漿量の減少と末梢血液量の増加がおこり、さらにセロトニン・ヒスタミンなどの体液因子の増加により腸蠕動が亢進することによって発症するといわれている。

 予防するためには、1回の食事量を減らして食事回数を多くし、よくかんで時間をかけて食べる。過度に甘いものや味の濃いものを控えるなど、食事の摂取方法を工夫する。また食後は安静にし、上体をあまり高くしないように注意する。噴門や幽門を切除している場合は、消化液が逆流しやすく、胃食道逆流症をおこす可能性があるため、体位はファウラー位やセミファウラー位が望ましい。自律神経機能調整薬・末梢血流調整薬・抗セロトニン薬の投与が有効なこともある。

 後期症状は、手術によって胃の貯留能が低下・喪失することにより大量の食物が急激に十二指腸や空腸に送られ、グルコースの急激な吸収による高血糖となり、これに反応してインスリンが過剰に分泌されて、低血糖症状がおこると考えられている。

 この症状は、食後の安静、食事の回数を多くして少量ずつ時間をかけて摂取するようにするなどの方法により軽減することができる。また低血糖を予防するために、食後1時間半~2時間経過後にあめを口にするなどの工夫をする。

②吻合部通過障害:創の治癒過程で一過性にみられるもので、浮腫や瘢痕形成により吻合部が狭窄し、通過障害をきたすものである。手術後7日目以降に食事が開始され、徐々に食事量がふえると生じることが多い。

 嘔吐を繰り返すような場合には、内視鏡的拡張術を行う場合もある。通過障害をおこしている患者には無理に経口摂取をすすめず、少量ずつよくかんでゆっくりと摂取するように指導する。患者は食べられなくなることに対して不安を感じるので、創が治癒する過程でみられる一過性の症状であり、吻合部の浮腫が改善すれば食べられるようになることを説明し、理解を促す。

③胃食道逆流症:手術により胃の逆流防止機構である噴門や幽門の切除が行われたり、形態が変化した場合に胃液・胆汁・膵臓などの消化液が食道へ逆流する。幽門側切除の場合には小腸の内容物が胃に逆流しやすくなり、噴門側切除の場合には胃の内容物が食道へ逆流しやすくなる。食道が消化液にさらされると粘膜が炎症を起こし、胸やけ・背部痛・心窩部痛・嚥下障害などの症状が出現し、食事を摂取できなくなることがある。

 このような場合には、消化液が食道に逆流するのを避けるために臥位にならない、食後は消化液の分泌が増加して逆流しやすくなるため食後2時間以上経ってから就寝する、就寝時はセミファウラー位をとる、胸やけがおきたら水分を摂取してしばらく座位をとるようにするなどの対処をする。治療としては、粘膜保護薬・タンパク質分解酵素阻害薬などで内服治療を行うが、効果が得られない場合には逆流防止のための手術を行うこともある。

●食行動の再調整:

 腸蠕動と排ガスが確認され、水溶性造影剤(ガストログラフィン)を用いた消化管透視により吻合部の縫合不全がないことが確認されると、飲水開始となる。はじめは水やお茶を少量ずつ飲み、腹部症状がないことを確認しながら、1日おきに重湯→五分がゆ→全がゆの順に段階的に普通食に近づける。途中で腹部症状が出現した場合には、同じ形状の食事で食べ方を工夫するなどして様子をみる。

 この時期の食事は、身体の維持に必要な栄養や水分を摂取することが目的ではなく、あくまでも手術によって形態・機能が変化した消化管を使って食事をすることに慣れることが目的である。したがって無理に摂取量をふやすのではなく、腹部症状やダンピング症状の有無を確認しながら徐々に量をふやしていくことがたいせつである。

 患者には食事が開始される前に、手術により胃の消化機能が減退・消失していること、胃の容積が小さくなっていること、術式によっては幽門が切除されているために食物が直接腸内に入り、ダンピング症候群をおこす可能性があることを十分に説明する。そして食事が開始される際には、一口量を少なくし、一口30回以上を目安によくかんで、少なくとも30分以上かけてゆっくり食べること、食後は上体をあまり高くしないようにして安静にすることなどを事前に指導する。

 手術前の身体状況、術式や再建方法、手術後の回復状況により、ダンピング症候群のあらわれ方には個人差がある。また患者の中には、食事が開始されると、手術前の食習慣にしたがっていきなり早食いやどか食いをする者もある。したがってダンピング症状がおきたら同じことを繰り返さないために、なぜおこったのか、どうしたら予防できるかを患者とともに考え、患者が主体的に食行動を変容できるように援助することが重要である。

<回復期の看護>

 患者が手術による身体的な変化を理解し、退院後に向けて食生活の再調整を行うこと、退院後におこると予測される合併症を知り、予防的な行動をとることができるように援助することが重要である。

□アセスメント

(1)手術後の状況

①腹部の状態:腸蠕動、排ガスの有無、便の回数・性状

②通過障害の有無と食行動との関係

③その他の合併症・二次障害の有無

(2)食事の摂取状況

①食事内容と回数、摂取量、食欲、体重の変化

②ダンピング症状の有無と食行動との関係

(3)退院後の状況

①社会復帰の状況:仕事内容、勤務時間、食事のとり方、休養のとり方

②家族の支援体制:食事をつくる人はだれか、手術後の状況に関する理解度、患者への協力度

□看護目標

(1)手術による身体的な変化を理解する。

(2)退院に向けて生活の再調整を行う。

(3)退院後に予測される合併症と予防方法について理解する。

□看護活動

●食行動を中心とした生活の再調整:

 消化管の形態・機能的変化に合わせて、ダンピング症候群やイレウスなどの合併症の予防のために、入院中に習得した食事の摂取方法を退院後も継続して行う必要がある。

 退院直後は食事の1回量を少なめにし、1日6回の分割食をするが、腹部の症状や消化器症状のあらわれ方と、食事内容や食べ方との関係をみながら、徐々に1回量を増やし、回数を減らしていく。社会復帰した場合どのようにして食事をとったらよいかということについては、仕事内容や勤務時間等の条件を加味して患者とともに検討する。

 食事内容については入院中の献立を参考にして、栄養価が高く、消化のよいものとする。術後イレウスをおこした患者は、消化の悪いものを摂取するとイレウスを再発することがあるので、注意を促す必要がある。

(1)栄養価の高い食品

①糖質:米は軟飯・おじや、小麦粉はパン・うどん・そうめんなどでとる。

②タンパク質:牛乳・乳製品、半熟卵、脂肪の少ない魚、むね・ヒレ・もも肉、豆腐など

③脂質:バターや食用油を少量ずつ摂取する。

(2)消化のよい食品・消化がよくなる調理法

消化のよい食品とは、かたくなく、線維が少なく、胃内停滞時間が短い食品である。

①タコ・イカ・貝類・干物などのかたい食品は生食せず、やわらかく調理する。

②根菜類・海草類・きのこ類などの線維の多い食品は細かくきざんだりミキサーにかけるなどする。

③油を多く使った料理は胃内停滞時間が長いため、煮る・ゆでる・蒸す・焼くといった調理法に切り替える。

 食べ方は、胃の消化機能の減退・消失を補うために1口量を少なくし、よく噛んで唾液の分泌を促して、ゆっくりと時間をかけて食べるようにし、消化管への負担を避けるためにつねに腹6~7分目を目安にする。摂取エネルギーが不足して体重が減少したり、倦怠感があるようであれば、間食として少量で栄養価の高いものを摂取し、栄養とエネルギーを補うようにする。

 腸蠕動を促してイレウスを予防するためには、食事に注意するだけでなく、適度な運動も重要である。ウォーキングなどの適度な有酸素運動を日常生活のなかに取り入れるようにするとよい。また消化管は自律神経系の支配を受けており、精神的なストレスが消化管へ悪影響をもたらすこともあるので、ストレスを発散し、リラックスできるような時間をつくるようにする。

 胃切除後になんらかの症状がついてまわることは避けられないということを受け止め、生活行動と症状との関係を自己分析して、なにがいけなかったのか、どうすればよいのかを考えて適切に対処しながら、自分の身体と上手に付き合っていくことが大切である。

●社会復帰への援助:

 退院後1ヶ月程度の自宅療養のうち、体力の回復に合わせて徐々に社会復帰をするようにすすめる。仕事内容や職場環境により、完全にもとの状態に復帰できる場合、配置転換が必要な場合など、状況は多様なので、患者にとって最もよい状況をみずから選択できるよう支援していく。

●退院後に予測される合併症の予防:

 ダンピング症候群とイレウスについては前途した通りである。ここでは栄養障害・骨代謝障害・胃切除後貧血について述べる。

①栄養障害:胃の消化機能が減退・消失することにより、小腸の消化・吸収機能が低下すると、必要な栄養を吸収することができなくなり、結果として低タンパク血症、浮腫、血清コレステロールの低下、倦怠感などがみられる。また小腸のはたらきが不十分になると、大腸の通過時間が短くなり、下痢になる。

 予防としては、消化がよく、栄養価の高い食品を摂取するようにする。

②骨代謝障害:胃酸の減少や小腸の細菌の異常によりカルシウムの吸収障害がおこり、骨の代謝異常をきたして骨粗鬆症や骨軟化症に類似した症状を引き起こすことがある。

 予防としてカルシウムとビタミンDの摂取を心がける。しかし胃切除後は小腸粘膜の乳糖分解酵素が欠乏するため、乳糖不耐症がおこることがあるので、ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品(原料の酵素が乳糖を分解する)、小魚などを多くとるようにする。またビタミンDは紫外線によって体内での合成が促進されるため、適度に日光浴をするとよい。

③胃切除後貧血:胃切除後は胃酸の減少により鉄分とビタミンB12の吸収障害がおこり、赤血球の合成に支障をきたし、貧血になる。胃切除後貧血は、手術後3年以上経過してからおこることが多い。

 手術後早期から鉄剤・ビタミンB12製剤・葉酸を服用することで、ある程度予防が可能である。食事で心がけることは、鉄分やビタミンB12を多く含む食品を摂取することである。鉄分を多く含む食品としては海草類やレバーなどがあげられるが、海藻類は消化・吸収能が低下している胃切除後には適さない。レバーは、鉄分とビタミンB12を一度に摂取することができるという点ではすぐれているので、多くとるようにすすめる。レバーの鉄分含有量は豚>鶏>牛の順に多く、ビタミンB12の含有量は牛>鶏>豚の順に多い。

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( ̄□ ̄;)!!参考文献

医療学習レポート.胃癌


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