スポンサード・リンク

o(^o^)o変形性関節症と運動療法の話


(^_-)題名:変形性関節症と運動療法の話

具体的な理学療法プログラム(ADLへのアプローチも含む)

Ⅱ.股関節症に対する理学療法の流れ                       (文献2)

前股関節症・初期股関節症・進行期股関節症・末期股関節症

          保存療法               手術療法

評価:

ROM,MMT,下肢長,周径,XP,疼痛,アライメント,歩容,ADLなど

 

保存治療目的の確認           ・手術目的と適応手術の確認

・OAの進行抑制            ・術前評価  ・術前訓練

・time saving              ・術後合併症の予防

・ADLの維持・拡大              脱臼予防(THA)の指導

・除痛                   呼吸訓練,calf pumpingの指導

 

治療プランの立案

関節の適合性向上,アライメントの補正,関節負荷の軽減など

 

術後理学療法

・医師,手術記録,XPからの情報

収集

理学療法の実施              ・リスクの管理

・ROM訓練                ・院内ADL動作指導

・筋力増強訓練              ・院内移動能力の早期獲得

・アライメント,歩行訓練

・杖・補装具の処方

・ADL指導

・体重コントロールの運動処方

図5-1 股関節症に対する理学療法の流れ

 

Ⅲ.保存療法

・適応:股関節の痛みの始まったときで,なるべく早い時期から行う.年齢や病期(前期・初期・進行期・末期)に関係なく行う.

・この治療方法は,初診時の年齢・病歴・生活環境・躯幹筋・股関節周囲の筋・下肢の筋の筋力テスト・股関節運動範囲の計測値を参考に,筋バランスの改善,関節運動範囲の改善・保持を目的としたもの.

・初診時の年齢・病歴・生活環境・躯幹筋・股関節周囲の筋・下肢の筋の筋力テスト・股関節運動範囲の計測値などの諸因子を考慮し,患者別のリハビリテーション処方を行い,外来通院で訓練を行う.始めの2週間は毎日訓練し,運動方法の要点を覚えるように指導する.痛みの程度によっては薬物療法も併用する.外来通院の困難な人には入院を勧め,持続牽引療法と運動療法を行います.

・運動療法は筋力強化8種,関節運動3種からなり,いずれも体重をかけないようにする.

・     補助的手段:初診時,経過観察中における患者の苦痛,不自由な状況,種々の不安要因を詳細に聞き助言することが重要.具体例としては,適宜薬物療法,下肢長差のあるものに補高,杖の使用,ガードル等によるサポーターの使用,入院では,過度の内転筋拘縮による股関節の外転制限のあるものには局所麻酔下での内転筋の切離などを行う.

 

1)  ADL指導(装具療法を含む)                         (文献2)

原則:疼痛を誘発させる運動を極力避ける.

過度の階段昇降や長距離歩行は避けたほうが良い.

重量物は原則的に持たないように指導するが片手で持つより同重量を分けて持つことで関節への負担は軽減される.軽量物であれば患側上肢に持ったほうが中殿筋への負担が減る.

和式生活は股関節にかかる負担が大きい.

あぐら・正座や和式トイレの使用も望ましくない.

適度の歩行は筋力維持と骨萎縮の防止に不可欠であるがアライメントや重心動揺性を補正した上で行わなければ,逆に症状を進行させる危険性がある.

アライメントの補正と股関節への負担軽減に有効な手段であるとされる装具や杖の使用は,着脱の煩雑さや美容上の面で敬遠されることが多いので,年齢・病期と症状を良く考えた上で患者への十分な説明が必要である.

脚長差は歩行中のエネルギー効率を低下させるだけでなく症状を増悪させる.適切な補高を行うことにより症状の軽減をみることがある.補高には手術目的を熟知した上での対応が必要.(骨切り術後は安易な補高は避ける)

テコ理論上,体重1kgの減少は股関節への負担を3kg軽減させる.したがって股関節への負担軽減には体重のコントロールは必須.

 

2)  運動療法                                  (文献2)

(1)   関節可動域訓練

ROMの減少は,跛行だけでなくADLを大きく制限する因子となる.

股関節症では関節内圧の上昇で疼痛を生じるため,それを緩和するために屈曲・外転・外旋位での拘縮傾向があり,末期には骨棘形成のため屈曲・内転・内旋位の拘縮に移行することが多い.

①     前・初期

・拘縮発生のスキーマを崩すことが重要.           拘縮の発生

・反射性の防御筋収縮が生じないように,

ゆっくりと十分なストレッチングを行う.    疼痛の増強    不動・逃避肢位

・腸骨・恥骨大腿靭帯のストレッチングを

目的に過伸展位での持続性伸張を実施する.   関節の安定性↓

・distractionと同時に関節包をストレッチング

を意識した関節包内運動を加える.                関節内圧↓

・可動域訓練前の温熱療法は有効.温熱効果は   関節合力↓

軟部組織の伸張性を増すだけでなく,筋リラ

クセーションによる筋性圧の低下と疼痛閾値            軟部組織の短縮

の上昇を図ることができる.          筋力低下    筋・関節包・靭帯

・可動域維持のために,中・小殿筋,梨状筋,

外閉鎖筋の強化も必要.                痛みの発生(関節症の進行)

 

図5-2:股関節症の拘縮発生スキーマ

②     進行・末期

・関節間隙の狭小や骨棘増殖によりストレッチングを行う十分な運動範囲が得られないことが多い.しかし末期股関節症で疼痛が自制内でも,高度な可動域制限のための跛行やADL低下を来し,手術療法を選択する症例を経験する.したがって正確な可動域測定とX線評価を行い可能な限り可動域拡大にトライする.

※全期を通して注意しておくこと

アライメントや歩容の変化が脊椎の可動性に大きな影響を与えていることである.

腰椎部の屈曲伸展と胸椎部での回旋レンジの低下は,ADL制限に直結する.可動域訓練は椎間関節の方向を考え,各脊椎レベルへ丁寧に可動域増大を図らねばならない.

 

(2)   筋力訓練

・関節の構築学的破綻や疼痛および不動により,股関節症の病期進行と筋力低下は相関を示す.

・筋力低下により股関節周囲筋の機能不全は,関節(骨頭)の安定性と荷重機構を損なう.これらの変化は関節軟骨の負担を増大させ,さらに股関節症の進行を早める.したがって筋力は術後の集中的な時期に限らず保存療法中も極めて重要である.

・関節を安定させる筋:梨状筋,外閉鎖筋,中殿筋,小殿筋,内転筋(内転筋は過内転位や臼蓋形成不全のある場合は脱臼方向へ作用するので注意がいる)

 

Ⅳ.THA後の理学療法

1. 術後のリハビリテーション目的と手段                      (文献4)

①術後の下肢の浮腫や循環障害,特に深部静脈血栓予防のための足関節自動運動によるパンピング訓練

②筋力維持,強化のための大殿筋,中殿筋,大腿四頭筋などの等尺性筋収縮,等張性および等速性による漸増的抵抗訓練

③疼痛の軽減:温熱・寒冷療法

④関節可動域の維持・増加のためのCPM訓練,水治療法(運動浴・歩行浴)など

⑤股関節周囲の筋力強化:自動運動,介助自動運動,懸垂療法,抵抗運動

⑥過重負荷の調節

⑦歩行練習:歩行訓練(歩行器・平行棒・松葉杖・T杖)

⑧免荷・脚長差の補正:補装具(杖・補高靴・股関節装具)

⑨ADL訓練

⑩退院後の生活指導

 

2.リスク管理                                  (文献2)

THA後の重篤な合併症

①     感染(早発性・遅発性)

②     深部静脈血栓症

③     肺塞栓

④     術後脱臼

軟部組織の修復を遅延させ,人工関節破損の原因ともなる.頻回の発生は患者の精神的ストレスも大きく,引きこもりや誤ったADL規制の原因にもなり,QOL向上に及ぼす手術効果を無にする.

不良肢位によって発生する.一般的には「(過)屈曲・内転・内旋」の混合動作が危険.

⑤     異所性骨化

⑥     Loosening(ゆるみ

原因:感染・磨耗粉による化学反応,人工関節にかかる物理的ストレス=アライメント異常・跛行(Duchenne-Trendelenburg)による股関節内の前額面運動と歩行中の衝撃.

 

3.入院時術前理学療法                              (文献2)

1)     目的

術後の早期理学療法をスムーズに行うためのオリエンテーションが主体と成る.その際,深

部静脈血栓症や,THAでは脱臼などの術後合併症に対する説明も行う.

 

2)理学療法

①ROM:脊柱の可動性拡大

②筋:代償運動の分離

足関節自動運動・大腿四頭筋セッティングのマスター            (文献14)

術後の合併症で多い深部静脈血栓症の予防策としてのmuscle pumping

③歩行:免荷および部分荷重での松葉杖歩行訓練

④アライメント:骨盤傾斜(引き下げ,下降)運動の指導

⑤ADL:脱臼肢位の指導に相応した起き上がりなど動作訓練

車椅子指導(移乗・操作),リーチャーの作成

⑥リスク:脱臼肢位の教育,呼吸訓練,muscle setting ,calf pumpingの指導

 

4.術後早期理学療法

1)ROM

・医師から手術情報を十分に収集し,脱臼の方向や角度の確認を行う

・関節可動域の最終的目標角度は手術最終時の麻酔下で得られた角度を参考.   (文献14)

THAでは概ね屈曲90°,内転0°外転25~30°としているが,症例によって安定性に差があるので,過度にしすぎて脱臼を起こさないように注意する.

①CPM(continuous passive motion)機器の使用                 (文献1)

関節周囲筋活動を要さない他動介助運動器.関節組織の癒着防止と可動性訓練,軟骨化生促進,代謝物の関節外への排泄促進などの効果が期待できる.

②愛護的他動運動(軟部組織が未修復の時期のため)

股関節屈曲:膝が肩関節に向かうイメージで行う.

外旋:屈曲域が十分に確保できるまで下垂座位(臥位)で行う.

伸展:Thomas肢位で行う

外転:骨盤の代償を抑えながら実施する.対側を外転位に保持しておくと

骨盤の固定が得やすく,両側同時に行うのも良い.

③自動運動

四脚キャスター型不安定板での訓練                     (文献1)

・起坐位にて患側を板に乗せ,痛みの程度に応じて板を前後,左右,円形,8の字に動かし自動可動域訓練を行う.

・術後や症状が強い場合は両側を乗せ,健側で誘導しながら徐々に患側へ促通していく.

・PTが不安定版をいろいろな方向に動かし抵抗を加えれば筋の抵抗訓練にもつながる

③関節モビライゼーション                          (文献1)

生理的関節包内運動と関節構成組織の柔軟性獲得

④Thomasストレッチ

屈曲拘縮に対する伸張運動

2)筋・筋機能訓練

・収縮感覚の再教育

・他動介助運動→自動運動→抵抗運動の順に行う

・手術側だけでなく非手術側にも積極的に行い,スムーズに部分体重負荷から全体体重負荷へと移行できるようにする.

・非荷重期の筋力トレーニングは,股関節への多大な筋性荷重を避けるため,以下の三点に留意する.                                  (文献14)

①     関節運動を伴う筋力トレーニングはゆっくり行う.

②     筋収縮の種類に関わらず最大努力下では行わない(低負荷・高頻度).

③     A・SLRは体重の1~2倍の負荷が股関節にかかるため全体重負荷開始までは行わない.

・剥離,切離再縫着がどの筋に行われているか,また骨移植部位に対する筋性荷重を十分に考慮し,術式の特徴をよく踏まえた上で行う.

(1) 足関節自動運動・大腿四頭筋セッティング

深部静脈血栓症の予防

他に弾力包帯の利用や,間欠的空気圧加圧装置の利用も推奨されている.  (文献14)

(2)中殿筋+補助筋群強化

①PNF: 疼痛,可動性,筋力に応じて利用できる最適の運動療法.         (文献1)

図5-    PNFの訓練

  1. 等尺性のhold-Relaxによる股関節周囲筋強化
  2. 対角回旋パターンによる訓練

(3)徒手的CKCの利用(SLRや外転運動で足底へ圧迫力を加える)

(4)外旋筋群の代償筋強化(大殿筋,縫工筋の強化:脱臼肢位の回避に効果的)

(5)SLR可となれば病室での自主訓練許可

3)歩行

(1)平行棒内接地歩行

術側非荷重下では軽く足底を接地させるタッチダウンが,股関節に負担がかからないことを説明し,指導する.

 

(2)立位での下肢制御訓練

患肢による台への上げ下げ,スケートボードの移動,描写軌跡の追動など

4)アライメント:座位・平行棒内立位での骨盤傾斜訓練

腹背筋の強化

5)ADL:脱臼肢位の再確認と動作確認

脱臼予防位での動作訓練(寝返り・起き上がり・移乗など)

6)リスク:脱臼(介助時・体動・移乗時・車椅子座位・トイレなど)

 

5.荷重開始以降の理学療法

1)ROM:立位荷重位での内転可動域の獲得

体幹のストレッチング

2)筋力強化

(1)関節周囲筋の積極的な抵抗運動(ゴム・チューブの利用)

(2)中殿筋の筋力強化

荷重位での骨盤の側方安定性に関与するのは中殿筋の活動が大きい.

(方法①)                                 (文献4)

a             b               c              d

図5-3   立位及び歩行時の下肢筋力強化と教育法

   a,b.患側に重鎮を持たせたり,患側上肢を側方に挙上させ,中殿筋の筋力が小さくてもある程度保持できる環境にし,筋収縮の学習をさせる.

C,d.正中位感覚を覚えさせる方法.ビーチボールや重鎮を落とさないようにさせ,荷重位で正中位を認識させる.

(方法②) 代償抑制に中殿筋は腹臥位で実施する.

(3)体幹筋の強化(バルーンを利用したブリッジなど)

(4)大腿四頭筋の強化

①立位や坐位での足指把握動作                       (文献1)

大・中殿筋,大腿四頭筋,ハムストリングス,下腿三頭筋に強力な連鎖収縮が生じる.

(5)自宅トレーニングの指導

3)歩行:松葉杖での荷重歩行訓練

荷重位での下肢制御訓練

Double knee actionの誘導訓練

D-T跛行の軽減・除去訓練

患側上肢への重錘負荷訓練

4)アライメント

①荷重位での骨盤傾斜訓練

②足底挿板療法                               (文献4)

術後患者は支持脚の骨盤が挙上位にあるpositive trendelenbrg’s signか,または骨盤が下制位にあるnegative trendelenbrg’s signを呈する.そのため足部を安定させ疼痛・跛行の改善を行う.

(方法)アーチパッドの使用(図5‐4 )

アーチパッド装着により距骨下関節での踵骨の内反が下腿を外旋させ,膝関節を伸展させ,効率よく股関節に伝達するために安定する.

③テーピング療法                 (文献4)

5)ADL:靴下着脱動作の自立

脱臼予防のADL指導

杖の処方,靴の指導

図5-4  アーチパッド

6)リスク:脱臼(起居動作訓練時など)

腰痛・膝関節痛の出現

Looseningの予防

 

6.退院前理学療法

ADL訓練                                   (文献4)

①杖の使用

②肥満の予防

③できるだけ物を持たせない

④しゃがみ動作を制限する(この動作は股関節の屈曲・外旋運動をすることから,looseingにつながる)

⑤過激な運動を行わない

 

退院時には以下のような日常生活の注意事項を記入したパンフレットを手渡す(表5-2 )

(文献15 国立名古屋病院)

表5-2  退院時に渡す注意事項のパンフレット

人口股関節手術を受けられた方へ

  退院おめでとうございます.人口股関節は自然なものではありませんが,次のことに

注意し大事にしていけば,いつまでも使用可能なものです,そのためにも是非下記

のことをよく読んで手術後の生活を快適なものにしましょう.

日常生活について

*     杖は一生,必ず使いましょう.

*     杖を使って疲れない程度なら,どれだけ歩いても結構です.

*     正座はしないようにしましょう.

*     トイレはできるだけ洋式トイレにしましょう.

*     地下鉄,バスなど公的交通機関は利用できれば利用しても結構です.

*     階段の昇降には手すりを使用しましょう.

*     山登りはやめましょう.

*     重たいものをもつのはやめましょう.

*     スポーツは控えましょう.

*     農作業はやめましょう.

*     自転車は平坦なところなら乗ってもかまいませんが,坂道はやめましょう.

*     旅行は構いませんが,長歩きはやめましょう.

*     入浴は歩ければ結構です.滑らないよう注意しましょう.

*     夫婦生活は構いませんが,痛みがあるうちはやめましょう.

*     妊娠については主治医に必ず相談してください.

外来通院について

*     手術後3ヶ月

*     手術後6ヶ月

*     その後6ヶ月毎,必ず来院し,先生の診断を受けてください.

*     医師より受診日の指定がある方は,それに従ってください.

*     その他以上があれば

急に痛みが出た

痛みが強くなってきた

歩き難くなった

場合などは連絡して下さい.

 

Ⅴ.各術後の理学療法

1.人口骨頭置換術(骨セメント使用)

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

脱臼傾向があるときは回旋防止ギプス固定を2~3週.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.起坐練習開始.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始(屈曲,内転の複合運動は避ける:注1)

またはCPM訓練の開始.端座位および車椅子練習開始.

10日~2週:歩行器で起立練習開始.徐々に歩行訓練.

2~3週:部分荷重歩行開始.

注1:術中の脱臼を起こす肢位,角度を記録して主治医に伝え,術後は十分に注意する.

後方侵入では内転・内旋位を強制しないこと.前方側侵入では外旋位をとらないように注意する.Dallの侵入法の場合は肢位による脱臼の危険は少ないが,術前より外旋拘縮がある場合回旋防止下腿ギプスで外旋を防止する.

注2:ステムをセメントで固定していない人工骨頭では全過重の時期を6週間以後に遅らせ,両松葉杖を3~4ヶ月使用,さらに一本杖を長期間使用させる.

 

2.寛骨臼回転骨切り術(村瀬法)

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.

2週:車椅子を許可.

5~6週:両松葉杖で免荷歩行.ついで10~20kgの部分荷重歩行.

8週:一本杖歩行.

 

3.寛骨臼回転骨切り術(田川法)

術後肢位:ベッド上に外転位

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.

3週:膝・股関節の自動介助運動開始.車椅子を許可.

5~6週:Kirschner鋼線を除去.

両松葉杖で免荷歩行開始.

7~8週:20~30kgの部分荷重歩行.

12週:両松葉杖で四点歩行か片松葉杖歩行.

16週:一本杖歩行または杖なし歩行.

 

4.大腿骨骨切り術

①     Bombelli手術

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.起坐練習開始.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.

端座位および車椅子練習開始.

ついでsuspension therapyを開始.

10日~2週:松葉杖で免荷歩行開始

3週:10~15kg荷重開始.内転外転運動.

骨癒合に応じて荷重量を増加.ついで自転車運動.次第に股外転運動へ.

4~6ヶ月:全荷重歩行,さらに一本杖2~3ヶ月使用.

注意:Bombelli手術では大転子を切離反転しているので,外転筋の自動・抵抗運動は術後3週間以後とする.3週以後,臼蓋外縁の骨棘の形成を増進させるための内転外転運動を行う.全荷重は6ヶ月以後にする.さらに2~3ヶ月一本杖の使用を励行させる.

 

②     内反骨切り術

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上,足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.起坐練習開始.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.

10日~2週:松葉杖で免荷歩行開始

5週:部分荷重10~20kg開始

4ヶ月まで両松葉杖歩行

4ヶ月:一本杖歩行,1年間は一本杖携行.

 

5.Chiari骨盤骨切り術(PLLA螺子による固定)

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.起坐練習開始.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始(外転筋の自動・抵抗運動は3週まで避ける)

またはCPM訓練の開始.

10日~2週:端座位.

3週:免荷歩行練習.外転筋の自動介助運動.

4週:10~20kgから部分荷重歩行.

5~8週:全荷重歩行.一本杖へ移行.外転筋の抵抗運動.Trendelenburg現象が消失するまではT字杖にて歩行.

6.股関節固定術(AOコブラヘッドプレート)

術後肢位:ベッド上仰臥位安静,必要に応じてソフト・ブラウン架台上.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の内がえし,外がえし運動による股内転外転筋の緊張訓練.

4日:ベッド端で膝関節の自動介助運動開始.

10日~2週:斜面台における免荷起立練習.

3週:両松葉杖で免荷歩行開始.

5週:補高靴作成,部分荷重10~20kgより開始.脚長差計測,以後3ヶ月までに全荷重.

 

7.人工股関節全置換術

①     骨セメントを使用する人工股関節

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

股関節に不安定性のあるときは,下腿の翼つき回旋防止ギプス.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.45度までの起坐.

2日:足関節の背底屈,内がえし,外がえしの抵抗運動.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.(膝関節は完全屈曲.股関節は90°屈曲までは許可.ただし股関節の内転,および外旋は禁止.)

端座位練習.ついで車椅子訓練.

回転防止下腿ギプスがあるときは,シャーレにして,自動介助運動を開始する(訓練時以外はシャーレを装着)

10~12日:回旋防止ギプスがあるときはギプス除去.部分荷重開始.外転筋の自動運動,徐々に抵抗運動へ.

2~3週:全荷重歩行に徐々に移行.脚長差の計測(立位で).脚長差のあるときは補高靴を    注文.徐々にステッキ歩行へ.

 

②     セメントレス人工股関節

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上にやや外転位.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.

2日:足関節の背底屈,内がえし,外がえしの抵抗運動.

1週:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.ただし股関節の内転,外旋は禁止.斜面台で起立訓練.

6週:部分荷重歩行開始.

注意:臼蓋縁に骨移植を追加した症例では荷重開始は術後8週とする.

術中所見で置換後の不安定性がある場合はスピードトラックで3~6週の牽引を加える.

 

③     バイポーラ型人工股関節

術後肢位:ソフト・ブラウン架台上に軽度外転位,回旋中間位.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

股関節に不安定性のあるときは,下腿の翼つき回旋防止ギプス.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.30°までの起坐.

2日:足関節の背底屈,内がえし,外がえしの抵抗運動.

4日:膝・股関節の自動介助運動開始.またはCPM訓練の開始.(膝関節は完全屈曲.股関節は90°屈曲までは許可.ただし股関節の回旋,および外転は禁止:外転するとアウターヘッドが内転したままロックすることがあるため)

回旋防止ギプスがあるときはシャーレにして自動介助運動を開始.訓練時以外は装着.

2週:回旋防止ギプスのあるときはギプス除去.部分荷重開始.外転筋の自動運動.徐々に抵抗運動.

2~3週:全荷重運動まで徐々に移行.

注意:①臼蓋をリーミングした場合は以下のように変更する.

術後肢位:やや外転位でスピードトラック牽引.

2週:自動介助運動,またはCPM訓練.さらに夜間は牽引.

4週:牽引除去.

8週:部分荷重歩行.

②ステムがセメントレスの場合は荷重は6週から開始する.

 

8.人工股関節再置換術

術後肢位:balanced tractionあるいはスプリングによるsuspension.

覚醒後,ただちに足関節の自動運動.

1日:四頭筋の等尺性運動を開始.下肢のスリングを使った自動介助運動.

4日:起坐練習開始.

10日~3週:牽引除去.端座位にて膝・股関節の自動介助運動,またはCPM訓練の開始.

3週:歩行器で部分荷重歩行開始(20kgまで)ついで両松葉杖歩行.

脚長差計測,補高靴作成.

3~4ヶ月:30kgまで荷重量増加.可動域増加訓練開始.

5ヶ月:40kgまで荷重量増加.

6ヶ月:全荷重許可.一本杖歩行開始.

一本杖は長期間携行させる.

注意:再置換術で臼蓋に骨移植を加えた場合は部分荷重開始は術後3ヶ月より始め,6ヶ月で一本杖歩行に移行する.

 

Ⅰ.治療目的                                  (文献3)

変形性膝関節症の治療目的は,疼痛の除去,関節可動域や筋力の維持・増大を図り,ADL上の障害を少なくすることにある.

 

Ⅱ,保存的治療としてのリハビリテーション的アプローチ

保存的治療:膝関節症の危険因子や手術所見を十分認識した上で指導すると,膝関節症の自然経過の進行を遅らせ,症状を軽減させることに効果的である治療.

 

1.物理療法

・ホットパック,極長短波療法をはじめ,様々な温熱療法が除痛を目的に用いられている.ホッ

トパックは皮膚の湿潤化をもたらすので,関節可動域訓練の前処置として適している.

・いずれも腫脹や熱感の強いときは行わない.

・膝関節の屈曲拘縮が強い症例には,ベッド上臥床にて滑車,重錘を用いた持続的介達牽引を行うこともある.

2.装具療法

a,膝装具

サポーター:保温性があり疼痛に効果的.側方に不安定性のある例には,膝継ぎ手付き支柱入りのサポーターも用いる.

膝OAの治療目的に作製された装具:荷重時に内側の関節狭小部にかかる力を外側に移す仕組みになっている片側支柱付きの旭川医大式膝装具,ロック付き膝継ぎ手を持つ両側支柱付き装具の横浜市大式膝装具などがある.

b,外側楔状足底板

内側型関節症に対して処方される.軽症から中等症の患者に効果がある.厚さ7mm程度のものが使いやすい.

作用機序:足底板装着によってもFTAは変化しないものの,機能的下肢軸が直立化方向へ変化することにより,内足関節面への負荷を減少して症状の改善をみるとした報告が多い.

3.運動療法

下肢の筋力増強訓練と膝関節の可動域訓練に主眼が置かれる.準備運動に引き続いて,物理療法を併用しながら訓練を実施する.

a、  筋力増強訓練

筋力増強訓練は膝周囲筋のほか,股関節,足関節周囲筋に対しても行われる.その中では特に大腿四頭筋の強化に主眼が置かれる.

関節の動きを伴う等張性あるいは等運動性訓練は関節の痛みを発生,増悪させることがあるので,炎症所見が軽い場合を除いて等尺性運動を主体とした筋力増強訓練を指導する.

b、  関節可動域訓練

膝OAでは徐々に膝関節の可動域制限がみられてくる.屈曲拘縮は立位歩行姿勢へ影響して歩行率を悪くし,他関節への負担を増す.また夜間の膝関節痛の原因にもなる.

歩行可能な患者では筋力は通常MMT3以上に保たれており,自動的関節可動域訓練を中心に実施する.訓練室で他動的で行う場合には,膝関節の運動学の知識に基づいた方法,特に屈曲・伸展運動における転がりとすべりの要素や回旋運動などを十分理解した上で行う必要がある.炎症所見が強くなければ温熱療法を併用し疼痛をできるだけ減じた上で愛護的な手技で行うべきである.暴力的な手技は関節の破壊を招くし,患者に訓練に対する恐怖心を起こさせてしまうので逆効果である.

c、  運動療法施行時の注意事項

①     膝関節穿刺を行ったときや,ヒアルロン酸ナトリウム剤などを関節注入した場合には,注射後の運動により出血性関節炎を起こすことがあるので当日の訓練は中止させる.

②     肥満傾向のある高齢者では,循環器や高血圧などの内科的合併症を有する場合が多い.このような患者に対してはリスク管理の下に運動療法を行う.

4.患者指導

患者指導のポイント

①     肥満の予防

・食事療法と運動療法の併用

②     自宅での運動療法の正確な実施

・来院時に実際の訓練の方法を確認

③     日常生活動作上の諸注意

・     正座や和式トイレの使用などを禁ずる

・     長距離歩行や階段昇降をなるべく避ける

・     膝に負担の少ない運動を勧める

 

Ⅲ.手術的療法

手術療法:保存療法で症状の改善が得られない場合行う.

1、置換手代表的手術法

a、  関節鏡視下手術

b、  高位脛骨骨切り術

c、  人口膝関節術

 

2、手術前後のリハビリテーション

どんな手術が行われるにせよ,手術前に関節の可動域や下肢筋力をなるべく高めておいたほうが臨床成績がよい.手術後のある期間に患側免荷が必要になる場合には,その術前に松葉杖での免荷歩行訓練を,応用歩行も含めて十分に行っておく.特に高齢者では杖使用の修得に時間を要する患者がいる.

 

3.術後の理学療法の目的と方法

①浮腫や循環障害に対するパンピング訓練

②筋力維持・改善のための筋力増強訓練(特に四頭筋の等尺性運動は今後の可動域改善や筋力回復に大きく関わってくるので術直後より十分に指導し行わせる.)

③関節可動域訓練(ドレーン抜管後,直ちにCPM訓練を開始する.術後膝伸展障害を残すと荷重位での支持性の低下や,膝関節への負荷が増し変形の再来や人口関節置換術であればlooseingの原因になる.)

④荷重負荷訓練

⑤歩行訓練

⑥ADLの生活指導(変形の再来予防や人口関節長期保護のためにもなるべく膝関節に負荷が少ない動作を習得させ,生活様式を様式に変えることが望ましい.)

⑦肥満防止のための全身的運動療法と食事療法                   (文献7)

 

Ⅳ.各種手術療法

手術後のリハビリプログラムは,手術法や施設によって異なる.その中で免荷期間の設定は最も重要な事項の一つである.免荷の必要性の有無や免荷期間は手術法により異なる.さらには患者の状態なども考慮して決められるので,リハビリ開始前には術者の意向を必ず確認しておく.術後免荷期間が長い場合にはプール内歩行訓練を行うこともある.

 

a、  高位脛骨骨切り術のリハビリテーション

手術日(1日)

術後2日~ ベッドサイド訓練開始

①患側CPM ②両側大腿四頭筋等尺性訓練(疼痛自制内で)

術後4日~ 鋼線入り軟性膝装具使用で車椅子移動

術後6日~ 訓練室での訓練開始

①両側膝関節可動域訓練・筋力強化訓練

②患側免荷での歩行訓練(平行棒から開始両側松葉へ)

③症例により創治癒後プール内歩行訓練

④患側免荷での下衣更衣動作,トイレ移乗動作などの指導

術後4週~ 1/4体重部分負荷歩行(以下PWBと略)

術後5週~ 1/2PWB

術後6週~ 3/4PWB

術後7週~ 片松葉杖歩行

術後8週~ 全体重負荷歩行

 

b、  人工膝関節置換手術のリハビリテーション

人工膝関節置換手術のクリニカルパスから理学療法士(PT)の動き

入院当日

入院翌日~手術2日前 術前評価

筋力測定/歩行分析

術前PT計画/実施(下肢筋力・ROM訓練,歩行訓練などのほか,術後を想定した車椅子操作やADL訓練)

手術前日 術前最終評価

術前PT実施

手術当日

手術翌日(1病日)

2~3病日 下肢筋力強化訓練

関節ROM 訓練

4~6病日 下肢筋力強化訓練

関節ROM 訓練

装具なしで平行棒内立位訓練(全荷重)

装具なしで歩行車歩行訓練(全荷重)

7~13病日(2週目) 下肢筋力強化訓練

関節ROM訓練

平行棒内立位訓練

歩行車歩行訓練

一本杖歩行訓練(10病日より)

階段昇降訓練(10病日より)

14~20病日(3週目) 下肢筋力強化訓練

関節ROM訓練

一本杖歩行訓練

階段昇降訓練

床からの立位訓練

自宅での入浴想定訓練

家族指導

21~27病日(4週目) 下肢筋力強化訓練

関節ROM訓練

持久歩行訓練

家庭での訓練プログラム指導

退院後訓練計画

退院前筋力測定/歩行分析

家族指導

退院時指導

日常における注意事項を徹底することが重要.生活指導の目的で以下のようなパンフレットを作成し,退院時に患者指導を行う.

図5-5  退院時患者指導パンフレット

 

Ⅴ.術後のリスク管理                              (文献3)

1.DVTについて

1)発生頻度

下肢手術のDVT発生は,THAで27%,TKAでは50%にも達する.

2)臨床症状

急性期の症状は患肢の浮腫,腫脹,表在静脈の怒張である.他覚的所見では,足関節背屈を強制すると腓腹部の自発痛を訴えるHomans徴候と,腓腹部をマンシェットで加圧すると疼痛を訴えるLowenberg徴候が有名である.

 

図5-6  DVT対応プロトコール

 

3)予防

術前よりcalf pumping指導,術直後より術側下肢に間欠的空気圧迫(メドマー)を行い,術後1

週間で立たせることが大事である.DVT(+)であれば血栓溶解療法,抗凝固剤の内服治療が行われ

る.

 

2.転倒について

屋外よりも屋内のトイレ,風呂場など水周りでの転倒が多い.また,昼間より夜間に多く発生す

る.転びやすい人の特徴として,肥満傾向,下肢筋力低下,動脈硬化が上げられる.足の感性をき,

筋力を強化することが大切.足にあった滑りにくい靴を勧めるなど日常的な指導が必要である.


スポンサード・リンク