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(p^-^)p脳血管障害の話


具体的な理学療法プログラム (ADLへのアプローチも含む)

急性期の具体的アプローチ

目的

・拘縮・褥創などの合併症予防=機能障害の最小化。

・従って、体位変換、不良肢位を防ぐ、自動/他動ROM―exが行われる。

・さらに、ベッドサイドでのリハビリテーションとして、起居動作訓練(早期坐位、坐位バランス)、ベッド上訓練が始められる。

・廃用症候群をできるだけ進行させない。

大まかなプログラム

・体位変化

・ROM訓練

・早期坐位

・ベッド上動作訓練

・健側ベッド上体操

・麻痺肢の運動

・体力低下の予防

注意 : 易疲労性のため短時間(30分程度)とする。

体位交換、坐位、体操などはNsなどと役割分担しながら行う。

ベッド上動作訓練は麻痺の回復促通、ADLの導入などに時間をかけるようにする。

全身状態に変動をきたしやすい時期なので中指基準などDrと確認しあう。

 

1.不良肢位予防

・急性期CVAでの良肢位=整形外科的良肢位、ではない。

・背臥位…患側下肢足関節には砂嚢を当て、中間位に保つ(尖足予防)。

大腿・下腿の外側から長めの砂嚢を置く(股関節外旋予防)

上肢をクッションに乗せ、手先が心臓より高くなるように置く(浮腫予防)

腕を外上方に曲げた肢位を取らせる(マン・ウェルニッケ肢位の予防)

殿部に枕を入れる(股関節屈曲拘縮予防)

肩甲骨を十分引き出して小さい枕を入れる(肩甲帯屈曲拘縮予防)

手先にはハンドロールを握らせる(MP関節伸展拘縮予防)

・側臥位…患側を上に(肩関節脱臼予防)

患側下肢足関節には砂嚢を当て、中間位に保つ(尖足予防)。

膝の間にクッションを挟む(安定性)

上肢をクッションに乗せ、手先が心臓より高くなるように置く(浮腫予防)

 

2.自動/他動ROM-ex

・異所性骨化のきっかけとなるので絶対に痛みを起こしてはならない。肩手症候群などの原因ともなりうる。

痛みがある場合は温熱療法(ホットパック)

・ゆっくり気長にやる。結合組織を伸展させることが目的なので、1動作の時間は上肢で3~5秒、下肢5~10秒を休み休み行う。

・肩関節に注意。他動運動では肩甲骨が動きにくいので正常ROMの半分に抑えて行う。

・毎日行うが、意識レベル高いならば自動介助訓練を教育する。やりすぎ、痛みに注意。

 

肩関節屈曲

・弛緩期には肩関節他動的屈曲は正常可動域の約半分の90度に留める。

・肩甲骨を片手でつかみ、それを前上方に持ち上げるようにしながら上肢を屈曲させる。

・肩甲骨関節窩に上腕骨頭を軽く押し付けるようにして動かし、脱臼させない。

肩関節外転

・外転も90度程度にとどめておく。

・肩甲上腕リズムを考慮し、片手で肩甲をつかみ静かに上前方に動かしつつ上肢を外転。

 

肩関節の内外旋

・弛緩期:脱臼、損傷を避けるため半分程度の可動域にとどめる。

・肩関節部を片手で押さえ、脱臼を起こさないよう注意。

・上腕を関節窩に対して軽く押しつけ行う。

 

前腕回内外

・回外拘縮を起こしやすい。

・手首を持ち上腕肘近くを固定して前腕を十分回転。

・正常可動域いっぱいにする。

 

MP関節屈曲

・伸展位拘縮を起こしやすく治癒困難。弛緩期に最も拘縮の危険が大きい。

・他動的な屈曲を行う。PlP・DlP関節屈曲も同様に重要。

 

MP・lP関節伸展

・筋緊張が高まってきて指と手関節が屈曲位をとる傾向かでてきたら伸展に特に注意。

 

母指の運動

・母指は屈曲・伸展・掌側外転・橈側外転・対立などの複雑な運動をするので全て行う。

・MP関節以遠の動きだけにならないようCM関節を十分に動かす。

 

股関節伸展

・Thomasの肢位で患側膝を下に押すと股関節か十分伸展される。

 

ハムストリングス伸長

・SLRにより伸長、手で膝を押えて伸ばしなから肩で押しつけるようにする。

・もう一つの方法として、健側の膝を片手で押える代りに大きな砂嚢で固定。片手で膝を押えて伸展させつつゆっくりと下肢全体を上げていく。

 

股関節外転

・健側膝を大きな砂嚢で固定し患側下肢を両手で支えゆっくりと股関節外転をさせる。

・健側を少し外転ぎみにしておき患側の内転も十分に行う。

 

股関節内旋

・毎日股関節屈曲位で、下腿を両手で支えつつ股関節内旋をゆっくり行う。

 

足関節背屈

・前足部を上に押し上げるだけでは足内部小関節群を緩め扁平足を作るだけの結果に終わるので必ず右手で踵部をつかみアキレス腱を下に引き下げるようにし、加えて右前腕部で足底前部を上に押し上げるようにする。

・この時左手で足首を固定。左手を膝近くに置くと右手にカを入れるあまり膝を上から押えて反張膝を作ってしまうことがある。

 

足指の届伸

・槌指、鷲爪変形などを起こしやすい。

・筋緊張異常による事が大きいが拘縮も関係する例で、他動的にMP・lP伸展で拘縮を防ぐ必要がある。

 

3.体位変換

・2~3時間後との体位変換(褥創予防)

・嘔吐があるとき、側臥位にして嚥下性肺炎を防止する.

・骨突起部に圧が集中するやわらかいマット,小さい傷を作るシーツのしわや皮膚湿潤を避ける.

 

4.早期坐位

・廃用性症候群(特に起立性低血圧の予防),体幹筋の活性,立ち直り反応活性化のため行う.

・ベッド上安静との示指が出ていない場合,なるべく早期に行う.

・行う条件として,意識レベルが高く(JCS:1桁),生命徴候が安定している場合,2,3日目から行う.

・ギャッジベッドの使い方は,頭だけを上げるのではなく,膝窩にクッションを置いてずり落ちないようにする.

・はじめは30°で5分間から初め,毎日10°ずつ,時間は5~10分程度ずつ交互に増してゆく.

・最終的には3食の前後の各1時間の坐位保持可能まで持ってゆく.

・ある程度の時間,直立位に近い状態を保持できるようになったら坐位バランス訓練に移行する.

・以下に開始基準,施行基準,中止基準を記す.これらに合わせて行う.

 

座位耐性訓練の基準

座位耐性訓練の開始基準

意識清明または意識障害があってもそのレベルが1桁であること.

全身状態が安定していること.

障害(意識障害,運動障害,ADLの障害)の進行が止まっていること.

座位耐性訓練の施行基準

開始前,直後,5分後,15分後,30分後に血圧と脈拍を測定する.

30°,45°,60°,最高位(80°)の4段階とし,いずれも30分以上可能となったら次の段階に進む.

まず1日2回,朝食・昼食時に施行し安定したら食事ごととする.

最肩位で30分以上可能となったら車椅子座位訓練を開始.

座位耐性訓練中止の基準

血圧の低下が10mmHg以上のときは5分後の回復や自覚症状で判断,30mmHg以上なら中止.

脈拍の増加が開始前の30%以上か120拍/分以上

起立性低血圧症状(気分不良など)がみられた場合

起立性低血圧について

・臥位から立位姿勢になると,約700mlの血液が下肢に移動し交感神経系の昇圧反応が障害されると静脈還流が減少する結果,1回心拍出量・心拍出量が減少し収縮期血圧は低下.

・正常では交感神経系の活動により心拍数の増加と下肢の持続的な血管収縮が起こり血圧の低下を防ぐ.

・症状としては立ちくらみ,めまい,頭重感,失神,収縮期血圧低下,頻脈と脈圧減少がある.

・腹帯や下肢への弾性帯の使用,さらには交感神経系に作用する薬剤を用いて早期より座位,立位姿勢をとらせることが必要.

・起立性低血圧が起これば,臥位になり下肢を挙上して休む.

 

5.坐位バランス

・ギャッジベッドの背もたれから離し,その肢位を保持させる.その際の健側上肢はベッド手すりを持たせ左右に倒れる時は介助者が助ける.

・長時間できるようになったらベッドの脇で端坐位を取って行う.環境条件は,ベッドを低くし足底が床につくように.

・肩関節脱臼防止の為,三角巾などで固定する.

 

布団の上での起こし方

・自宅療養の場合もできるだけ早くから坐位をとらせる.

・斜めだとかえって疲れるので真直に坐らせる.

・下肢は長坐位で膝下にクッションを置くかあぐらをかかせる.

・2,3分から始め,様子を見ながら延ばしていく.

 

ベッドからの起き上がり

・ペッドからの起き上がりは、はじめは介助で行うが,健手はベッドの柵を握らせ患側下肢は健側下肢.で下から組んで支えてペッドの脇に出し,なるべく患者自身の力を利用して行わせる.

・慣れてくればある程度はずみをつけて自力で起き上がれるようになる.ベッドの縁に腰掛けた場合,足底が床につかないと安定して坐れないのでベッド自体を低くするか図のように足台を置くかする.また坐位では始めは患手を健手で支えて肩の脱臼を防ぐ.

 

安定した坐位姿勢

・肩関節脱臼を防ぐため健手で支えるか三角布で支える.

 

坐位バランス(前後)

・前に介助者か立ち,患者はゆっくり前屈する.前にのめるぎりぎりで止め,ゆっくりと戻すことを繰り返す.

 

坐位バランス(回旋と横方向)

・介助者が患者の上半身に軽くカを加え,回旋または左右に動かしてバランスを崩す.患者はそれに耐えてバラソスを保つように練習.

・初めは僅かで徐カに増していく.

 

坐位バランス(自力)

・自力で体斡を左右にひね.り,十分動かしてもパランスを失わないようにする.

・顔は正面を向いて上肢と体幹だけ廻す.

 

6.ベッド上訓練

・主目的は体幹と健側上下肢の筋の廃用萎縮の予防と筋力強化.

・積極的な運動であるのでわずかな血圧上昇などは伴うが,臥位であるため休み休み行えば負荷としてはわずかなものであり,かなり早期から始められる.

・安静によって低下した全身体力の回復にもよく,次の段階への準備として役立つ.念のため訓練最初と最後には血圧と脈拍を測定し,途中でも適宜脈拍をチェックする.

・各動作とも初めは介助をして正しいやり方を覚えさせ,次第に介助を滅らして自力でする量を増していく.

・麻痺肢は低緊張状態にあることが多いので,上.肢では肩の脱臼に注意.しかし一部の患者で上肢全体(手先にも及ぷ)の筋緊張亢進と,それに伴う肩甲帯の後退と肘屈曲が表れ始めることがあり,その場合には健手と患手とを組み合わせる.患手の母指の外転が十分起こるように患手の母指の方が上になるようにする.肘を十分伸ばして前方につき立てた肢位を常時とらせるようにするのがよい.特にブリッジ,その他下肢に力を入れる時に上肢に連合反応で’屈筋共同運動パターンが起こりやすい場合には肘の伸展位保持が重要.

 

下肢の持ち上げ

・健手でベッドの頭上の支えにつかまり健側下肢を患側下肢の下に入れて支え,両下肢をもち上げる.

・この時健側下肢の力だけでもち上げるのでなく患側の方にも力を入れるように努める.これは健側の上下肢筋・腹筋の廃用萎縮予防・強化に役立つだけでなく患側下肢の回復促進の刺激にもなる。

 

横への移動

①健側下肢を患側下肢の下に入れて支え,健側の肘をついて

②下肢を横に動かし

③ついでブリッジで腰を横にずらし

④最後に上半身をその方にずらす

という順序で体全体を横に移動させる練習.

・はじめは健側に向う移動が楽だが,患側への移動も練習.

・始めは介助して行い,徐カに介助を減らして自力で行えるようにもっていく.

 

健側下肢の強化・ブリッジ

・健側下肢伸筋に対する抵抗運動を徒手抵抗①,またはベッドの足部においた台の踏みつけ②で行う.これは健側下肢の廃用萎縮予防と患側上下肢への刺激に役立つ.

・また両足を揃えて腰を上げるブリッジ練習③も同様の効果.始めは介助で行うがこれか介助なしで行えるようになれば患側下肢運動が膝届曲位での股伸展という分離動作である点で意味が大きい.

・ブリッジが可能となれは横への移動ができるようにもなるし便器使用も楽に.

 

寝返り

・両手,下肢を組み合わせて上肢を上に伸ばしはずみをつけて寝がえりをする.

・はじめは患側が下にならないように健側への寝がえりと,そこから背臥位へ戻ることを練習.徐カに両方向にできるように持っていく.はじめは介助するがまもなく自力でできるようになる.

・両手を組み合わせる時は患手の手指を伸展・外転位に保つため,患手母指を上にするように組むのは母趾の内転を防ぐため.

・またこのように患側上肢を前方に伸展させつつ寝がえりを行うと正常立ち直リ反応〔患側肩甲の前方突出と肘伸展〕を促通し,ATNRやその他による屈曲傾向(肩甲の後退と肘屈曲)を抑制できる.

 

回復期の具体的アプローチ

目的:精神身体能力の向上,ADL自立,社会参加拡大

 

・残存能力,機能を最大限に引き出す.

・正常動作に基づく基本動作の自立,特に歩行を中心に移動動作の自立を高め,ADL自立性を高める.

・体力の増強を行い,社会復帰に向けて準備する.

・片麻痺の回復過程を見ながら理学療法の目標に向かって段階的な起居動作・歩行練習を実施.

・評価項目…起居・移動動作,ADL,非麻痺側の運動機能,病棟での生活状況など.

・定期的に機能障害,能力低下の評価を実施し理学療法の進捗度の確認,目標設定やプログラムの変更をする.

・臨床上,動作障害については理学療法士の指導や介助による患者の動作の変化を理学療法実施と同時に評価していることが多い.

・片麻痺では姿勢・動作の左右の対称性の乱れが大きな評価視点に.

・運動が実行できても機能的に不十分で自重を支えきれない.非麻痺側に対して運動が遅れる,運動範囲が狭くなるといった状態が動作のなかで観察される.

・臨床的には座位や立位の静止姿勢,重心を移動したときや歩行中の四肢・体幹分節の位置関係,筋の収縮状態の左右差を観察・触診して姿勢・動作の対称性を評価し理学療法の方向づけをする.その際,痙性や連合反応など不随意的な筋出力の影響,非麻痺側や比較的患者が随意的に動かしやすい身体部位の過剰な代償的動作に注意.

・歩行は歩行能力(杖や装具の使用,手すり,平行棒の使用など)によって段階づけされる.歩行や階段昇降ではそれらの動作パターン,立脚相や遊脚相の特微などを観察する.立脚相では麻痺側骨盤の後退,膝折れ,反張膝,棒足などが,遊脚相では分回し歩行,引きずり歩行,麻痺側骨盤の引き上げ挙上などが観察される.10m歩行時間などを継時的に測定すると歩行の実用性の目安や歩行能力の改善度の指標として利用できる.

・理学療法の治療・指導は対象患者の退院後の生活に合わせて実施される.起居・移動動作の要求される自立ベルや実施方法も患者・家族の家庭環境や家屋状態によって変化するので患者の生活の場となる家庭・家屋環境をより具体的に調査する.

 

大まかなプログラム

・移動手段の獲得

・基本動作訓練

・ADL訓練

・麻痺の回復促通

・健側筋力低下の予防

・体力低下の予防

・疼痛の軽減

注意:重度麻痺,Double Hemiplegiaなどで坐位バランス不良のとき,傾斜台を使ったり介助立位・歩行を早期から行う.

1.移乗動作と車椅子

・移乗動作はADLの基本的なものとして重要.車椅子を基本としてベッドと車椅子との間,椅子や腰掛け便器と車椅子との間などの移乗がスムーズにできるように練習.

・基本的には健手でつかまって健足で立ち上がることさえできればよく,かなり早期からでもできる動作である.最初は介助者が前に立って助けるが段々に介助量を滅らし,自カでできる.ようにもっていく.

・介助者にとっては患者を抱きかかえて乗り移らせることに比べ楽であり,患者にとっては健側の廃用萎縮を防ぐのにも役立つ.

・片麻痺の際の移乗動作の基本は健側の斜め前方に向って動くこと.そのためペッドから車椅子に移る時とその逆とではベッドと車椅子の位置関係が全く逆になることに注意.トイレのように狭い場所ではこの原則が守れないこともありその場合はより難しくなる.

・移乗がスムーズに行えるためには車椅子のシート面とベッド・椅子・便座などの高さが同じであることが理想.ベッドは普通では高すぎて足を切る必要があり,便座は逆に低すぎることが多い.病院の車椅子用トイレでは便器を約10cm床部で高くした方がよい.

・.初期の移乗では立ち上がりはほとんど健側上下肢だけで行われるが下肢の麻痺の回復を促進するためには危験がない範囲で患側下肢にも少しは体重をかけ,力を入れさせるの.がよい.そのためには患足を健足よりもやや引き気味にして上半身をやや前かがみにし,両下肢に体重がかかるようにするのがよい.

・車椅子は片麻痺患者では普通は標準型でよい.健手でハンドリムを回し,健足を床につけてこいで移動することは少し練習すればすぐできるようになる.はじめは床をけってバックする方が容易だが危険なので前方移動を早く習得させる.体の小さい人にはシートの低い片麻痺用車椅子がよいが立ち上がりはそれだけ困難になる.

*以下の図では自力で行っているが,はじめは介助して行う.

 

ベッド→車椅子

・まずベッドに腰掛け車椅子を健側の斜め前につけて置く.

・ベッドに手をついて立ち上がり,立ったところでの手を車椅子のアームレスト(遠い方)に移す.

・そこから体を半回転して坐る.

・主に健足で立つのであらかじめ腰をできるだけ前にずらし健足を前に出しておく.

 

車椅子→ベッド

・上記のものとはベッドと車椅子との位置関係が逆.

・ペッドか患者の健側斜め前方に来るように車椅子をつける.腰を前に出し、アームレストに手をついて立ち上がりペッドの上に手を移して半回転してベッドに腰掛ける.患足にも少しは体重をかける.

 

トイレでの便器への移乗

・ベッドの場合と同様,一度立ち上かって行う.

・戻りは患側方向に動くのでやや難しい.垂直の手すりがよい.

 

健側肢で車椅子を漕ぐ

・慣れれば健側手足だけでも上手に車椅子を漕げる.

・シートが低い片麻痺用車椅子だと漕ぎやすい.

 

2.マット上訓練

・マット訓練を始める基準は、車椅子上の耐久性が30分以上続けて30分以上腰掛けていられるとする.

・従来は車椅子に乗って訓練室に来られるようになったら直ちに平行棒の中で立って訓練に入り,そのまま歩行へと進めて行くという考え方が強かったようであるが,全身の体力の乏しい老人の患者などで一度にたくさんの訓練はできずまたぐずぐずしていると体カを低下させてしまい結局立てなくなってしまう恐れの大きい例ではそのようなアプローチの方が現実的である.

・麻痺が非常に強く下肢の伸展パターンすら十分に出てこないような場合にも長下肢装具・膝装具を用いて早期に立位にもって行く方が伸展パターン促通することができ,うまく行けば歩行にもって行くことができる.そうしないでいて時機を失するとこのような患者は結局歩行不能のままになってしまう.

・以上のような例でない,体カもかなりあり下肢の麻痺も中程度(グレード5から7)には回復して来ている(そして下肢の固縮がひどくない)例では立位・歩行を急がずに図に示したような基本的なマット訓練を行って体幹の運動機能やバランス、下肢の機能をある程度高めてから立位・歩行に移った方が結局より良い安定した歩行パターンが得られる.

・マット動作が完成しないうちは歩行訓練に移ってはならないというように機械的に考えてはおらず,適当な時期に歩行訓練に移りマット訓練も平行して進めて行くような柔軟なやり方をすべき.

 

マット上での起き上がり

①健足を患足の下に入れる.

②健側の肘をマットについて上半身を起こす.

③健側の肘を伸ばしつつ上半身をまっすぐに起こし,手掌をついて支える.

④健手を離し正面を向いて坐るようにする.

・はじめは上半身にはずみをつけて起き上がるようにするのもよい.

・この他にベッド上での起き上かりには柵を使う方法,べッド足もとに結んだ紐で

健手で引張って起き上がる方法などもある.

 

膝立ちバランス

・両膝で立ち,股関節を十分伸展させる.介助しつつ少しずつ左右

に体重を移動し患側下肢に十分体重をかけるようにする.

・股関節伸展と膝屈曲とを同時に起こさせる点において分離運動

であって,平衡反応促通でもある.

・この際,患手は伸展回外位に保ち同様に腰を回旋させるような

力に抗して膝立ち位を保持させる.

 

 

片膝立ちのバランス

・健側を立てて患側で主に体重を支える片膝立ち,逆に患側

を立てて健側で体重を支える片膝立ちを練習する.

・前者の方が難しいので介助して行う.般関節・膝関節が屈

曲してしりもちをつきやすいので腰を十分伸ばして立たせる.

これは膝立ちよりも難しく立ち上がりの練習につなかる.

 

 

膝屈曲位の保持およびいろいろな角度の保持(ボバース)

・腹臥位で膝を屈曲させることは共同運動パターンを崩し歩行時の伸筋緊張持続予防にも役立つ.

・はじめは他動的に両下肢をそろえて屈曲し,.自力で保持させる.

・同じ目的で腹臥位=股伸展位での膝屈曲を種々の角度で行わせる.

・いずれも始めは他動的・介助自動運動である肢位をとらせ,それを保持させる.ついで自力でとらせる.

 

3.上肢回復訓練

 

・ 回復の可能性が残されている限り、健手でのADL訓練と平行して患手の機能回復訓練を行うべきで’ある.

・上肢の回復は下肢に較べやや遅れ,特に手指の機能回復にはかなり限界があるが,ほとんどの日常生活動作は片手でも遂行可能であり,早期から必要な自助具を与え,残されたものをいかに活用するか,という積極的な姿勢に早くもっていくことも重要.

・早期にADL上の自立=能力障害の軽滅を達成し,さらにできれぱ復職・家庭内の役割の再確立などハンディキャップの軽滅を達成することが重要であり,早期からこの方向での努カが始められなけれぱならない.

 

上肢の伸展促進

・患側を上にした側臥位でできる限り力を抜いて楽な姿勢を取らせ,患側上肢を他動的に伸展し手指を伸展,手関節を背屈させて手掌から長軸方向に軽い抵抗在加えつつその抵抗に抗して手掌で押す=肩甲前方突出.

・腹這いで両肘をつき肘の伸展で上半身を支える.はじめは介助し左右に揺らして患手に体重をかける.

 

 

坐位での肘伸展促進

・早期からなるべく患手をつくように指導.

・はじめは自力ではできないので手指伸展・手関節背届位で支え肩関節も保護して

少しずつ患手で体重在支えるようにする.

 

 

四つ這い位訓練

・上肢伸展力がかなりついて来たら四つ這い位を取らせ上半身重心を移して

患側上肢に体重をかける.

・肩を保護し手先を固定.

 

さまざまな角度での上肢の保持

・背臥位で肘を伸展したま肩関節を90°屈曲,あるいは種々の中間

的な角度に保持.

・始めは肘屈曲が起こり易く肩関節部も不安定になり易いので介助し,
徐カに介助を減らし自カでできるようにしていく.

 

 

背臥位での肘伸展

・上肢保持の訓練(上)が十分できるようになったら上腕を垂直位に保持し,

手先を顔につけそこから自力で上に肘を伸ぱさせる.

・.膝はなるべく揃えて屈曲させておく.

 

 

腰掛け位で手先を背へ

・共同運動から分離した動作としては一番早くできるようになるもの.

・体幹をあまりねじらずにできるように練習.

・この姿勢で手指が伸展しやすくなることもある.

 

4.立位バランス

 

・患者の状態で老齢・重度の麻痺などによっては一刻も早く歩行にもって行かなければならないが,その場合にも最低限の立位バランスの訓練は不可欠.

・それほど急がなくてもよい場合には立位バランスと立ち上がり動作を十分練習し,基礎を固めてから歩行訓練に入った方がよい.

・運動学的に歩行とは,いわば「絶えずバランスを崩し(倒れかかり)同時に絶えずバランスを取り戻すことの運続」であり,「高度に組織化された平衡反応連鎖」ともみることができる.すなわち、立位パランスは歩行の安定性=安全性の基礎である.

・よい立位バランスの前提はこれまで練習してきた坐位バランスであり,坐位バランスが完成しないうちに立位に移るのは適切でない.両膝立ち,片膝立ち位でのパランスもなるべくならすでに十分練習してあることか望ましいがこれには共同運動からの分離の程度などバランス以外の因子も影響し,立位バランスと比較しての難易度もケースによって差がある.特に片膝立ちは立位よりも難しいことが少なくない.

・したがってこれらが不十分であっても立位バランスの練習に入ってよい.立位と平行してこれら膝立ちのバランスの練習をも続ける.

・片麻痺でのバランス不良の原因 : ①患側下肢の麻痺②体幹の麻痺③平衡反応の障害④体カの低下,健側下肢の筋カ低下(廃用萎縮)⑤空閤認知の障害.

・特に坐位でも立位でも患側に体幹が傾き易く矯正しても,すぐまた傾いてしまうような場合には⑤が最も疑われる.特に左片麻痺・半側空間失認を伴っている例に多い.

・立位バランスは以下の図のような順序でバランスそのものの練習として行われるが,原因がはっきり確認できる場合には個々の原因に対する訓練に戻って,または平行して行う.

 

腰掛け位からの立ち上がり

・立ち上がりははじめは健足だけでせざるを得ないが,なるべく早期から患側にも少し体重をかけ力を入れるようにする.両足を後ろに引き,腰を少し前に出してお<.

・平行棒・手すりにつかまって上半身をやや前に倒し,両足(主に健足)の上に重心が乗るようにしながら立ち上がる.足元を見ないよう胸を張って立つ.

 

つかまっての自力バランス訓練

・平行棒または手すりにつかまって立ち,両足を軽く開き体重をできる限り患足にもかける.

・手すりにしがみつかず軽くつかまるだけでほとんど両足だけで立っていられるような状態を目標に

練習.

・静かに立つだけでなく体重を前後左右に揺らしたり上半身を左右に回旋させたりすることを早期から練習.

・上肢が弛繧期にある場合,三角布を用いて肩を保護.

 

介助での立位バランス(ボバース)

・つかまらずに立ち,左右前後などに体重を移す練習をする.

・上肢に固縮・屈筋パターンが出てきていたら介助して伸展位に支える.

 

手を離しての立位バランス(ボバース)

・最終的につかまらずに立位が取れ,両足を閉じたり両手先を握り合わせて上半身を回旋させたりできるようにしていく.

 

5.立ち上がり訓練

 

・立ち上がりの時にはバランスを失いやすく,立位保持よりも難しいので,立ち上がり訓練は歩行訓練と平行して行い,場合によっては歩行がほぼ完成するころに行われる.

・始めは平行棒・手すりにつかまって行うが,最初は介助も必要.介助や平行棒・手すりにたよることを徐々に減らして行き,つかまらずに立ち上がれるようにもって行く.

・杖歩行の患者では安全のため通常は杖をついて立ち上がる方がよいが,訓練としては手を放して立ち上がることも練習.

・始めは普通の椅子の高さよりも高いところから立ち上がる方が楽であり,次第に高さを低くしていく.西洋式の生活なら最低限椅子の高さから立ち上がれればよいが,わが国の生活様式ではしゃがみ位・畳上の坐 位から立ち上がれるところまで行かなければ実際上ADLが自立したとはいえない.

・退院前には畳からの立ち上がり(台を利用して,手をついて)を十分練習し,実用性のある状態にまでしておく.

・立ち上がり訓練にあたっては転倒を防ぐため,始めは患者の腰に転倒防止バンドをつけ介助者は患者の患側に立ち転倒防止バンドに手をそえて行う(立位バランス,歩行などでも同様).

 

台からの立ち上がり

・つかまらずに立ち上かるために腰をできるだけ前カにずらしておき,体幹を前傾して下肢に十分体重をかけて立ち上がる.

・この段階になれば患足でも健足と同じ程度の体重を受けることかできるようにして行かねぱならないので患足の方を健足よりやや後方に引きぎみにしておく.

・台の高さはなるべく高いものから始め,次第に低くしていく.入れ込み式になっていて場所を取らない立ち上がり練習台が便利.

・はじめは介助者か患側について行う。

 

台を使っての畳からの立ち上がり

・健手を台について患足を前に出し,主に健足で立ち上がる.最後の段階では患足の力も使う.

始めは高目の台を用い,徐方に低くして患者の家にあるテーブルの高さに.

・この方法は台なしの方法に比べれば安定性はよくやりやすい.家ではいろんなものにつかまることもできるが病院では最低限テーブルなしでできるようにする.

 

台なしでの畳からの立ち上がり

・健手で畳につき健足を曲げて尻を下に敷き,患足は前方に出す.この姿勢で健足の膝を伸ばし健手で支えて中腰となり健手で体重のほとんどを支えつつ立ち上がる.

・バランスを崩しやすく難しいがこれができないと本当にADL独立とは言えない.

 

6.平行棒内歩行,階段昇降

 

・重症な患者ほど長下肢装具や膝装具を用いての歩行訓練を急ぐ必要があり,前者の場合には健足の筋力が十分あって健足で体重を支えることができ,長下肢装具・膝装具と足関節部の弾力包帯固定を用いれば患足でも短時間は立てることが歩行訓練の条件となる

・余力のある患者の場合にはなるべく装具なしで立てる=著明な内反尖足・膝折れ・反張膝がないことが望ましいが弾カ包帯・訓練用短下肢装具で尖足・内反尖足を矯正すれば立てるのでもよい.

・長下肢装具・膝装具でようやく立てる場合でもいつまでもその状態でいることは少なく,立位=患足への体重負荷により伸筋共同運動パターンが促通・強化されてやがて短下肢装具(尖足の矯正)だけで十分になってくることが多い.

・階段昇降は平地歩行よりは難しいが手すりを用いての歩行という点では杖歩行よりは易しい面もあるので訓練としては杖歩行と平行して開始してもよい.

・階段昇降のはじめは2足1段で,昇りは健足から,降りは患足から(体重を昇降きせるのは健足)にする.

 

平行棒内3動作歩行

・平行棒内歩行では3動作歩行か常時2点支持歩行.

・はじめは患足の振り出しに時間が掛かり,患足での

体重支持が十分できないため患側立脚期が短いが次第に正しい歩行様式に近づいて行く.

・始めは健足が患足より前に出ない後ろ形であるが,やがて同じ所までくる揃い形となる.

・平行棒の高さはほぼ大転子の高さでよい.

 

階段(登り)

①健手を手すり上方に進め

②健足を1段上にあげて健側手足の力で体を引き上げ

③患足を健足と揃える.

・体重を上げる主な動作は健足でしている。

・2足1段で階段を昇る時には健足から先に昇る.

 

階段(降り)

・2足1段で階段を降りる時には患足から先に降りる.

・体重を支えているのは健足.

①健手を手すり下方に進め

②患足在先に出して健側手足で支えつつ体を下げ

③その後,健足を患足にそろえる.

 

7.杖歩行訓練

・平行棒内歩行が安定したら杖歩行に.

・平行棒と杖との根本的な違い…平行棒は引っ張っても横方向に力を加えても安定しているが杖は上から下へ押すこと以外には役立たない.

・横方向への安定性はロフストランド杖や4点支持杖では普通のT字杖よりずっと良いが,これらも上方に引っ張ったのでは全く無力なので,歩行の準備としては平行棒内歩行を,平行棒を握らずに手指を開いて手掌で棒を押えただけでもできるようにする必要がある.

・歩行練習初期には転倒防止バンドを患者の腰につけ,介助者が患者の患側に立って転倒しないよう気をつける.平行棒内歩行も同様.

・杖歩行も平行棒内歩行と同様に,始めは3動作歩行から始めるが,健足で立った時の片足立ちバランスが良くなるにつれて2動作歩行に移っていき,「後型」→「揃い型」→「前型」という点でも進歩していく.

・一部例外的には杖→健足→患足ひきずり,という「ひきずり歩行」型もある.患側下肢は股関節で外旋位を取り骨盤帯も患側が後方にくる=健側が前方になるようにねじれる(体幹全体がその方向に斜に構えていることも多い)のが普通である.これは下肢の麻痺が重い場合に多い.

・杖の長さは個人の身長で決まってくる.また杖歩行の練習初期にはロフストランド杖を用いるのがよく,それに馴れてからT字杖に移る.老人・肥満・その他バランス不良の場合には多脚杖を用いるのがよい.

・杖歩行はまず平地で練習.初めは距離やスピードよりも安定性に重点をおいて練習し,安定性が向上して(転倒の危険がなくなって)から徐々に耐久性(休まずに歩ける距離),ついでスピードに訓練の重点を移していく.

・平地歩行が実用的になったら斜面(昇りよりも降りの方がバランスが取りにくい),階段(手すりに頼らず杖をついて昇降する練習),溝またぎ,敷居越えなどの応用歩行を練習し,一部の患者ではさらにできれば杖なし歩行にもっていく.

 

3動作杖歩行

・3動作歩行は杖→患足→健足の順で前に出す.

・健足が患足より前に出るか否かで後型・揃い型・前型に分れ,後者ほど良い.

・これは患足で体重支持時間の長さを示す.

 

2動作杖歩行

・3動作歩行の第一段階・第二段階が一緒になったもので,

「杖・患→健」,①杖と患足を一緒に出す(健足では支持なしに立って

いられる)

②健足を出す   という順.

・後型・揃い型・前型の区別がある.

 

8.ADL訓練

 

・ADLとは,一人の人間が独立して生活するために行う基本的な,しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群を言う.

・ADL訓練も他の訓練と平行して早期から始められなければならない.

・ごく早期から,たとえ一つでも自力で出来ることがあることを認識させ次々とできることの範囲を拡げて行くことは心理的な自立性を養うのに役立つし,基本的な運動訓練で獲得した機能を直ちに日常生活動作に応用してその実用性を証明して行くことも患者の意欲を高めるのに役立つ.

・ADL訓練は病室でナースの手でごく早期から始める.作業療法士が病室に出張して行ってもよい.

・普通最も早期に自立させうるのは摂食動作であり,訓練もそれから始める.坐位耐性が不十分で’ある時期には側臥位で,坐位が20分以上とれるようになったら坐位(もたれた半坐位でも可)で健手を用いてスプーンまたはフォークで食事をさせる.コップ(握り付きのプラスチック製)または湯呑で液体を飲むことも早くからやらせる.

・排泄動作に関して,ベッド上で尿瓶やおまるを使うのをできるだけ早く切り上げ,坐位の安定と共にポータプル便器使用に馴れさせる.はじめは介助するが次第に自立して行えるようにする.歩行が実用的になればトイレで,はじめは洋式便器を用い最終的にはなるべく和式便器を使えるようにもっていく.

・整容に関して,洗面と歯みがきは早期から必す’行わせて,少したったら整髪・ひげそり・化粧も行わせるようにする.いずれも準備さえしてやれば十分片手で可能.

・坐位バランスが良くなれば更衣動作を練習させ,時間が掛かっても自分でやらせる.靴下・靴も自分でやらせるようにする.前提として車椅子に乗るようになった時期から朝に普段着に着替えさせ,昼に寝まきのままでいないようにする.これは体カ作りにも大きな意味を持つ.

 

自助具による日常生活動作の向上

・ADLの9割以上は片手で行えるが,患手が使えないと困難・不可能な動作を適切な自助具を用いれば可能となる.たとえば

①          ネクタイはスナップタイを用いる.

②          健手の爪切りは大きな爪切りを足または患側の肘で押さえる.

③          健側のワイシャツ・ブラウスのカフスポタン止めは最も難しい動作の一つだがカフスボタンを糸でなくゴム紐で止めるようにすれば解決.

・この他にも傘の先端を壁・柱・樹木に押しつけて開く,傘の柄を患側の肩・腕に引っ掛けて開くなどの方法もある.

・自助具はできるだけ早期から与える方が「最後の手段」という印象を与えなくて済み,かえって受け入れがよい.

 

家事動作の自立

・主婦にとって,例え部分的にもせよ家事動作ができるようになることは大きな喜ぴであり,心理的な自立性の向上につながる.炊事動作は両手を用いるものが多いが一方はほとんど固定に用いているだけであり,その部分を工夫すれば片手で十分行えるようになる.

・例えば,①まな板に2本の釘など錆びないものを立て,それで食材を固定し皮むき・きざみなどをする.

②ゴム製の両面に吸盤のついたサクションで容器などを固定する.

③引出しを利用して缶詰を固定して缶切りで切る.

④鍋は片手鍋を用い,かきまわす場合には柄を固定する.

・掃除は電気掃除機を用いる.

・洗濯は洗濯機で洗うこと自体は容易だが干すことに工夫がいる.

 

ポータブル便器の使い方

①ペッド柵につかまって起き上がり,ベッドの縁に腰掛ける.トイレットペーパーを近くに置いておく.

②ポータプル便器の蓋を開き,下着をずりおろす.はじめは介助者がついて助ける.

③ペッド柵につかまって立ち,体を少し回転させて便器に背を向ける.始めは介助者が患.側から支えて行う.

④腰を掛け排泄し,尻をずらして拭き立ち上かり,ベッドに腰掛けて下着を上げる.介助の場合は排泄後に柵を握って前かがみに立たせ拭き,下着を付けてからベッドに戻る.

 

着衣・脱衣動作

・着衣(上着)

①患手を袖に通す

②肩まで服を十分に引き上げておく(手が袖□からつき出る位に)

③健手を後に回して袖を通して着る.その後患側の肩のあ.たりを整える,というようにする.

 

・脱衣(上着)

①患側の肩を脱いでおき

②健側の肩を脱ぎ上衣の裾を尻に敷く.

③健手を脱ぐ.

④患手を脱ぐ

 

・着衣(ズボン)

①患足を上に膝在組み患足に通す.

②健足に通す

③立って引き上げる

 

入浴動作

・浴槽への出入りは危険なことが多いので浴槽の蓋を大きな動かないものにし,一旦腰かけてから下肢を一つずつ入れるか

浴槽緑と同じ高さの台を使う.

・手すりがあると安全だが軽症の人なら浴槽緑につかまる.

 

・体を洗うのはなるべく洗い台に腰掛けてする.

・背中は柄付プラシを用い健手は膝の上にタオルを置いてそれにこすり付けて洗う.

・健側上腕・腋下を洗うのが一番難しい.タオルしぼりは腋下または水道栓を利用.

 

体力増強運動

・運動麻痺が軽くても精神力・筋カ・体力がなければ歩行の異常パターンは著明になる.異常パターンをなすのは中枢神経障害による影響だけではないのでADLを自ら積極的に行うこと,座位時間や歩行距離を長くすることなどによって体力を向上する.

・エルゴメーターや距離歩行などを行い,運動負荷による最大酸素摂取量は心拍数とほぼ比例するので負荷量の管理は脈拍を参考にする.

・中止の際は,以下の表(土肥改訂,アンダーソンの中止基準)を参照に判定する.

 

運動療法の中止基準

1.Pa02が運動時50Torr以下になるとき,安静時より20Torr低下したとき

2.PaC02が運動時60Torr以上になるとき,安静時よりも10Torr上昇したとき

3.Sp02が85%に低下したとき

4.1回換気量(TV)/肺活量(VC)が50%に達したとき

5.分時換気量(MV)が最大換気量(MVV)に達したとき

6.年齢別予測最大心拍数の85%に達したとき(心疾患を伴わない慢性呼吸不全では70~75%,肺性心を伴う慢性呼吸不全では65~70%)

7.息切れ,胸痛,動悸,疲労,めまい,チアノーゼが出現したとき

8.呼吸数が30回/分以上になったとき

 

・椅子からの立ち上がりを日常的に繰り返す,床からの立ち上がりを繰り返すといった運動も効果的.

・ゲームの要素を取り入れることも考える.
例)いくつかのボールを床に適当に配し,それぞれのボールに一つのボールを手で転がして当てるゲームを行なうとする.ボールを拾い上げ中腰で狙いを定めてボールを転がす動作を繰り返すことによって床からの立ち上がり動作や立位で装具を装着する補助的な練習,歩行バランスや体力の向上に役立つ.ボールの数,ボール間の距離,ボールの種類,道具の利用などを工夫することによって症例に応じた負荷量加減が可能.

例)屋外の傾斜のついた凸凹の庭でパットゴルフをするのも実際的な歩行練習になり,患者の受け入れもよい.

 

※補足 痛みの問題に対して

・肩の痛み…発症1週間も早ければ生じ,原因は不明.

対策 : ホットパックなどの温熱療法を行ってから運動療法を行う.

愛護的ROM-ex(自己他動運動は行わない)

体位変換時に上肢の管理に注意.

坐位で求心的肩関節屈曲をしない.手掌での体重支持による肩周囲・上部体幹の自動収縮を促し,徐々に遠心性収縮へ.

臥床期間を短くし,体幹・骨盤体の柔軟性,抗重力活動を促す.

・片手症候群…反射性交感神経性ジストロフィ(通常,一肢に起こる広範な持続性の痛みで血管運動障害,栄養障害,関節の運動制限や不動化を伴う.局所の損傷に続いて起こることがよくある).

対策 : 温熱療法,愛護的ROM-ex

浮腫に関しては,マッサージ・伸長運動を丁寧に行う.

・痙性…安静時の筋緊張亢進の一型.受動的伸展に対する抵抗があり,速度依存性で屈筋と伸筋で異なる(肘では屈筋に強く,膝では伸筋に強い).深部腱反射の亢進とクローヌスもみられる.

対策 : 寒冷・温熱療法,薬物療法,神経ブロック注射など.

 

ADL訓練(セルフケア含む)

 

急性期…寝返り,起き上がり,ベッド上の移動

回復期…立ち上がり動作,トランスファー,家屋内での移動,トイレ動作,食事動作,更衣動作,整容動作,入浴.

 

寝返り

 

・ベッド上訓練の下肢の持ち上げ後,患側の手を健側の手で腹部に乗せる.

・顔を寝返るほうに向ける.

・健側の手で患側の手を引き寄せ寝返る.

 

起き上がり

 

・ベッドで : 坐位バランスのベッドからの起き上がり参照.

・床で:・健側を下に側臥位になる.

・上体を前方に回転させるようにし,健側の肘をついて起きる(On elbow)

・肘を伸展させながら,手掌をついて起き上がる(On hand)

・手部を徐々に殿部に近づけて,両側殿部に荷重し,長坐位姿勢となる.

※膝関節の屈曲拘縮やハムストリングスの短縮がある場合は,長坐位をとることが困難.

 

ベッド上の移動

背臥位

・横移動:ベッド上訓練の横への移動参照.

・上への移動…殿部を持ち上げ,健側膝を伸展.

・下への移動…① 頭頸部伸展で肩をずり下げる.

② 殿部を浮かして,健側膝を屈曲させる.

・左右への移動…同様に殿部と肩を持ち上げて,健側上下肢の内外転によって移動.下半身と上半身の移動を別々に行ってもよい.

・上半身の左右移動:頸の伸展で両肩を浮かし,さらに頸の左右屈曲,回旋を加える.

・コツ:① 健側下肢の伸展,肩の伸展・内外転が重要.

② 健側下肢を股膝屈曲位に保ちながら股伸展を行って殿部を持ち上げること.

③ 大殿筋の筋力,腹筋,背筋の同時収縮が必要.

 

坐位

後方移動

・健側膝伸展,股屈曲→伸展または外転位→内転および肩屈曲で行う.

・軀幹筋による坐位バランスがとれていることを前提とする.

・頸は前屈位で行った方がやりやすい.後方へ倒れるのを防ぐことにもなる.

 

前方移動

・後方移動とほぼ同じだが側膝屈曲,股屈曲・外転をさらに増強し,健側肩の伸展を行う必要がある.

・頸は前屈位で行うと安定して行いやすい.

 

側方移動

・側方移動は,前方移動よりも困難(特に患側側方移動).

・健側上肢・下肢・殿部に体重をかけ,頚部屈曲し健側の肩を内転して進む.健側肩周辺の筋力を必要とし,特に上腕三頭筋,大胸筋,広背筋などがかなり強くなければならない.

・代償法として前方移動しながら漸次進行方向を変え側方成分を加えていく.またあらかじめ90°方向を変えておいて,後方・前方移動を行う.

 

立ち上がり動作

・次の段階の移乗,歩行動作などの前提になるもので,脳卒中後3週くらいまでには行う.24時間以内に行った方がよいという意見もある.

・初期にはベッド,椅子は高めがやりやすい.

・健側下肢をなるべく体幹に近く引き寄せて,体重を十分かけられるようにする.

・患側下腿の位置は健側下腿のやや前方においたほうが立ち・座りともに安定してやりやすい.

・患側足部が前方・内側にすべり出ることがあり,また患側の膝折れがみられることがあるので介助者は自分の足を患足の前外側に,また膝を患側膝にあてがいながら立たせる.

・患者の腰に介助ベルトを着用させておくと介助が楽.

・一度に立つことが困難な場合には半立位に留め,もとに戻るという具合に繰り返して練習を行い,漸次立位まで導くようにしてもよい.

・前半,健側下肢に体重を移動していく段階では頸を屈曲位にし,後半下肢を伸展する際には頸を伸展しながら立ち上がるとやりやすい.逆に立位から坐位をとる場合には頸を屈曲しながら行わせるとよい

(緊張性頚反射射による下肢筋の促通).

 

ベッド,床からの立ち上がり

①膝立ち→片膝立ち→立位

・まず膝立ちを可能にすることが先決.ついで片膝立ちをとらせる.

・患側下肢の支持性が悪い場合は健側下腿を前方へ抜き出すことが困難であるので健側上肢を利用して体幹を安定に保持すれば可能になることがある.健側上肢はマット上に手をついたり近くにある机・椅子などにつかまる.

・健側下肢に体重を移しながら伸展し,同時に健側上肢も伸展して立ち上がる.健側下腿を抜き出すことが不可能な場合には, まず患側下腿を抜き出し,健側足部をやや前方へ移動しながら膝を持ち上げ,健側上肢に半ば体重をかけながら健側膝を伸展し,立ち上がる.

 

②片手・片脚這いずり姿勢→患側下肢伸展位のまま片膝立ち→立位

・いざり移動の姿勢からそのまま立ち上がる場合や患側膝の屈曲困難な場合に都合がよい.

・体幹を健側に回転しながら健側股関節を伸展し,手をついた片膝立ちの姿勢をとり(患側下肢は伸展したまま),手の位置を漸次膝の位置に近づけバランスを保ちながら健側膝を伸展していく.

・その途中で健手は健側膝に移して肘伸展を加える.傍らの机や椅子につかまってもよい.

 

③椅子に腰かけてから立つ方法

・いざり移動で椅子に近づき, 健側上肢をそれにかけ,その伸展と健側股伸展で片膝立ちになり,膝伸展をしながら患側回りで椅子に腰かける.その後の立ち上がりは上記.

・途中で一休みでき,より安定して行える.

 

④立位からマット・布団・畳などに座る動作

・杖を持っていれば,そばの机か椅子に立てかけるかしなければならないが,後でまた立ち上がったとき取りやすい場所を考えておかねばならない.

・患側下肢に十分体重をかけ,次第に膝を曲げながら健側手を下げていくと途中で手がマットに届くようになる.体重の一部を健側上肢に移動すれば,後半の膝屈曲が安定する.

・以上の方法が不安定な場合,健側手をマットに下ろす前にそばの椅子などにつかまって支持.一度椅子に腰かけてから改めてマット上に腰を下ろしてもよい.

 

移乗動作

①ベッドから車いすへの移乗,およびその逆

・移乗動作と車椅子参照.

・介助する際は,患側の膝・下腿が前方に出ないよう,かつ患者の腰部に手を当てて行う.

・特に骨盤は患側が後退しやすく歩行パターンに悪影響を与えるので重点的にコントロールする.

②ベッド→椅子,椅子→車椅子,またはその逆

・                      ①と同様

③その他,車いすからトイレ,風呂などの移乗に関しても同様の方法で行うことができる.

 

家屋内の移動

 

家屋内の歩行

・日本の家屋構造は,段差や凹凸があって洋間よりはつまずきやすい.また装具の必要な患者は室内用装具を屋外用のものとは別に作らねばならないことが多い. AFOを用いての畳の上の生活がよい.

・著明な内反足・尖足は神経ブロックでコントロールできるようになるが,それで無理なものは,足関節再建術に.

・家屋の改造.歩行に関係するものとしては,部屋,廊下,階段などの手すりの設置,部屋と廊下の間の段差の除去,敷居の平坦化,廊下のじゅうたん使用などは,経済的,その他の事情が許す限り実施.歩きやすくなるだけでなく,転倒の危険が減少する.

 

家屋内の車いす移動

・歩行に実用性のないもの(転倒の危険を含めて),膝,足関節の変形や,不安定性が歩行によってさらに悪化する危険がある場合などが適応.

・車いすはユニバーサル型のもので十分.片手片足で操作することは少し練習すれば難しいことではなく,慣れれば片足だけでも目的を達しうる.

・片麻痺用のワンアームドライブ型は,なんらかの理由で健側下肢が使えないときのみの適応.そのためには,ワンアームドライブを行うだけの健側上肢の能力と運転空間の認知・判断能力などを検討してから処方.

・車いすによるADLで最も問題になるのは日本の家屋の構造.多くは大幅な家屋改造をしない限り家屋内での車いす移動は実用性がない.

 

家屋内いざり移動

・歩行の見通しが立たず,車いす使用も望めないときにはいざり移動を早期から指導.

・歩行の阻害因子がそろっている場合(例えば,両側性片麻痺,高度の視空間失認,高度の感覚障害など)早期からいざり動作に重点を置く.立位・歩行訓練などはむしろ意欲を高めることに主目的をおいて行われる.

 

トイレ動作

 

・介助する側からも,される側からも,最も嫌なものの一つで,なるべく早期に自立させたい動作.

・入浴同様自立に対するニーズが最も高い.   ADL周辺pp67

・坐位バランスが安定していれば,排泄行為可能. ADL周辺pp67

・家庭内での自立のための条件=つかまって立ち上がれて数歩でも歩ける ADL周辺pp67-68

 

ベッド上での尿器使用

・長坐位保持が可能であれば,独力に近い状態で可能.

・女性の場合,尿器を運ぶことと尿器の当て方が難しい.

・介助が必要な点 :排泄後の尿便の始末,尿器の管理

 

ポータブル便器の利用

・かなり重度の障害でも手すりにつかまり立ち可能が多いため,精神機能低下がなければ自立の可能性あり.

・自立の条件=立位と移乗動作が確実に自立.

・ズボンは,安全を考えベッド上で下げておき,排泄後もベッド上で上げる.

・立位が安定していれば立位で.

・ポータブルトイレを利用する際は,患者の麻痺側に置く.

 

トイレに行っての排尿・排便

・自立の条件=自立立位が可能

立位で体幹前屈位になって手で操作すること.

体幹を捻って手を操作し,腰の回り全部に手が届く,リーチが拡大していること.

・トイレ動作の分析

1)ベッドからトイレまでの移動動作.

2)便器へ,あるいは便器からの移乗動作.

3)排便,排尿のための衣服の上げ下ろし.

4)排便,排尿後の局所の清拭,およびフラッシング

・便器へ,あるいは便器からの移乗動作の留意点

①男性の排尿は,和式も洋式も使用に大差ない.

②和式,列車式便器は,軽症片麻痺以外は使用できない.

③便器の高さ:通常は床からの高さが40㎝のものが用いられているが,10㎝程度高くする

④立ち,座りはなるべく両側下肢で行い,手すりは軀幹のバランスを保持するものとして利用.

手すりを引っ張っての立ち上がりをさせない.

 

・排便,排尿のための衣服の上げ下ろし

方法①:①体の向きを変え,手すりの側にしっかりと立つ.

②健側手でゆっくりと行う.

③便器に座る.

方法②:①便器に座る.

②患側下肢に体重を移し,健側殿部を便座からやや浮かし,半分ほどズボンと下着を下ろす.

次いで,健側下肢に体重を移して,患側殿部を浮かして,必要なだけ下ろす.

方法②の方が,安全であり,確実であるが,時間を要すが,方法①の方が,一般的であり便利.

ただし,安全に安定した状態で立位姿勢が保持できることが条件.

立位バランスが悪い場合

①健側下肢で体重を支え,背中や健側の肩部を壁に安定性を保持する方法.

②前方の壁に額をつけて支える方法.

ズボンや下着は,膝下まで下がってしまわないように,ベルトはゴム製のものを使用した方が便利.

 

・排便・排尿後の処理

・トイレットペーパー

設置場所:健側上肢が十分届きうる場所にする.

紙の長さを切り取る動作:中指,薬指でカバーを押さえながら,母指,示指で紙をはさんで切り取る.

・局所の清拭

前方から行うか,後方から行うかによって,腰をそれぞれ後方あるいは前方にずらす.

女性は,尿路感染予防のために,前方から後方に向かって拭き取る.

・フラッシング

健側手が楽に届きうる場所に設置する.

押しボタン式は.強い力が必要なものがあり,老人には適当ではない.

一般には,便器から立ち上がる前にフラッシングを行った方がやりやすいが心理的抵抗も少なくない.

 

食事動作

 

・最も早く習得すべきADL.

・バックレストかギャッジベッドで坐位をとる段階になれば健側上肢で食事をとる練習を始める.

・食事が自立できないものは,ごく少数.

 

発症初期(背もたれ坐位がとれるようになった段階)

・食事を口に運ぶことは独力でできる.

・介助点=魚の身を剥がしたり,肉を切ったりする .

利き手が麻痺側の場合

・軽症か,回復が良好な場合を除いて,利き手交代が必要.

・麻痺手での箸の利用は,よほどの軽症でない限り成功しない.

・利き手交代をしても健側手に箸の使用を強いる必要はない.適当な自助具使用の方が効果的で実用的.

 

・麻痺した利き手が,利き手として残るための必要条件

① 上肢・手指ともにBRS6または正常.

② 深部感覚障害がない.

③ 小脳性失調や不随意運動がない.

④ 痙性,固縮の改善状況.

⑤ 筋群の相互バランス(動作筋,共同筋,拮抗筋,固定筋)

 

非利き手が麻痺側の場合

・廃用手の場合はある程度回復が良好な場合でも,茶碗を持つことは実用的にはならない

・食器類を机上に安定して固定保持することの方が実用性が高い.

 

仮性球麻痺の場合

・嚥下困難があり,飲食物でむせやすく,こぼれやすく,噴き出して思うように食べられない上に周囲の人にも迷惑を及ぼす.

・対策:① 一度に大量の食べ物を口の中に入れない.

② 落ち着いて急がないで食べる.

③ 水分の多い食物はむせやすいので避ける.

④ 液体を口にする場合は,ストローを用いる.

 

嚥下障害

 

・両側性の延髄以上の上位運動ニューロンの障害で起こる延髄の脳神経運動核の機能障害,偽性球麻痺.

・咽頭反射や咳嚇反射のような誤嚥を防ぐ反射は残存している.

・嚥下あるいは咳嚇の随意的開始は困難であるが感覚刺激により誘発される.

・患者の行動特性として

①注意散漫のために咀嚼嚥下ができない.

②判断能力障害,視覚認知障害のために過剰に大きく噛んだり速く食べる.

③半側空間無視がある場合には口の中に食べ物を残したり食膳の片側の食べ物に手をつけない.

④食べることの重要性が分からないためにうつ状態と間違われたりする.

などがある.

・このような認知障害がある場合には,その代償法を考慮して治療計画を立てる.

・固体よりも液体を嚥下することが困難であり誤嚥することが多い.

・半固形食物(ゼリー,ヨーグルト,プリンなど)が好ましいが,寒天は簡単に噛み砕けるが砕けるだけで粘性がなく好ましくない.最近ではベッドサイドで簡単に粘度調節のできる添加物(トロミアップ,トロメリン)を利用.

・摂食訓練での姿勢は身体を起こして頸部を前屈させて顎を胸に引き寄せる.

・環境としては,患者の注意が向けられるように外部からの刺激が最小となるようにする.

・訓練では,まずスプーンにのせた食物を患者に見せ,匂いを嗅がせる.患者が口を開けば,スプーンを舌の中央におき,唇で食物をとるように介助.スプーンで舌を圧迫すると患者は口唇を閉じて食物を取り込みやすくなる.食物が取り込まれれば,スプーンを下方に軽く押しながら(圧をかけながら)取り除き,嚥下の状態を観察.

・喉頭の挙上がみえなければ,手で触って確認する.嚥下後に口腔内に食物が残っていないか確認し,残っていれば再度嚥下を促す.

・半固形物の摂食や嚥下が可能となれば,濃い液状の飲物(濃厚なスープなど)を試みる.最初はスプーンを用いて行い,次いでコップを用いて行う.コップは鼻が当たる部分をカットしたものを用いる.またスルメなどによる咀嚼訓練を行いながら固形食の摂食訓練へと進める.

 

更衣動作

 

・着衣動作参照.

・食事や整容と比べると難度が高い.

・介助に際して力を要せず,頻度も低いことから在宅生活における自立のニーズも低い ADL周辺pp66

・身体の必要条件=坐位バランス良好.

・好ましい衣服=多少ゆるめで身体にぴったりしていないもの.

開きは前部あるいは左右にあるもの.後部にあるものは避ける.

背中で開閉するものでも,装着してから身体の周辺を回転できるものは使用可能.

開閉方法は,ベルクロかジッパーが使いよい.

ボタンは適当ではないが,使う場合は大きめのものがよい.

伸縮性のある生地の方が更衣しやすい.

 

・靴下,靴,ブレースなど

方法①:ズボンの場合と同じく,患側を上にして,膝を組んで行う方法.最も普遍的

方法②:高さ20㎝ほどの足台の上に患側足部を載せて行う.

靴下:健側手の指で,はき口を広げ足尖部にかぶせ,後は漸次引っぱり上げ,最後に修正.

あらかじめ靴下を裏返しにロールしておけば,やりやすい.

 

洗面・整容動作

 

・生活にメリハリをつけてリズムを整えることとなり,痴呆の予防にも重要.

・急性期に,意識が明瞭となり,症状が安定したときに行える動作

…顔をふく,電気カミソリで髭をそる,髪をとかすなど.

・坐位が安定する段階

…慣れるまでのぎこちなさや不満足感はあるが,実生活上あまり問題とはならない.

ベッド端,車いすに腰掛けて,片手動作による洗顔可能.

車いす坐位では,上半身を洗面台上にかがめることが困難,周囲を水で汚すことが多い.

・吸盤付きのブラシ等の自助具の利用で健側の手・爪を洗える.

・口腔衛生:顔面神経麻痺の場合,頬と歯列間に食物残渣がたまりやすいので注意.

電動ブラシも便利だが,通常の歯ブラシも十分可能.

練り歯磨きをブラシにつける操作…机上に歯ブラシを置き,その上に搾り出す.

義歯の清掃も行う.

・濡れタオルを絞る:①蛇口に巻き付けてしぼる ②L型の取っ手を利用する

・爪の管理:衛生的見地だけでなく,外傷予防の意味からも重要.

特に手指の屈曲拘縮が高度な場合は,爪が手掌に食い込む.

健側の爪を切る場合,一般に困難

⇒①自助具により,肘や足で操作する. ②台に固定したヤスリで爪を削る ADL周辺pp66

足の爪が,巻き爪や著明に肥厚している場合(白癬菌など)は,無理に自分でやらせない.

感覚障害が高度の場合,深爪になることがあるので注意.

・皮膚の管理:廃用部位や感覚障害部位に対しては十分な管理が必要.廃用上肢の腋窩は皮膚炎を起こしやすい.

・髪の管理:通常の櫛で十分可能

髪型はなるべく簡単なものを選ぶ.

洗髪は,男性は片手動作で可能でも,女性は介助を要する場合が多い.

・ひげの管理:ひげを剃った方がADLを簡便にするために都合が良い.

使用後の電気カミソリの掃除が困難なので器具を選ぶことが重要.

・立位ができる段階:洗面の際,洗面台に腹部を押し付けて姿勢の安定を図る.⇒上半身を洗面台上にかがめて洗顔できる.

 

入浴

・入浴動作参照

・最も自立困難な動作

理由:①危険度が高い ②動作がよりダイナミック ③移動・移乗・更衣動作を伴う

・入浴の分析

1)浴槽までの移動

2)浴槽の出入り動作 …最もむずかしいADLの一つ

浴槽をまたぐことが困難,浴槽内が滑りやすい

3)身体を洗う,拭く動作

・立ち上がることができない場合…車いすのまま浴室へ入り,浴室用のリフターを利用し浴槽への出入りを援助.

・つかまり立ちが可能な場合

素足では不安定になる場合(内反尖足など)は入浴用プラスチックブレースを利用する.

浴槽への出入りは,バスボード,手すりを利用する.滑り止めも必要.浴槽の高さは40~50㎝

・方法:①バスボードに腰掛ける.

②手すりにつかまって,90°回転しながら,健側下肢を浴槽内に入れる.

③健側手で患側下肢を持ち上げて浴槽内に入れる.

④前方の手すりにつかまって立ち上がり,一歩進んで静かにしゃがみこむ.

⑤出るときは,この逆を行う(患側から浴槽外に出す)

左片麻痺,ADL周辺pp69

・介助:患側下肢を持ち上げて浴槽内に入れるだけで済むことが多い. ADL周辺pp69

・身体を洗う場合の問題点:背中および健側上肢が洗いにくく腰掛けて行う.椅子の高さは浴槽の高さ.

右片麻痺,青pp119

・背中の洗い方は,ループ付きタオルを患側手に引っかけタオルを背部に回し,健側手で握って健側上方へ引っぱる方法や,長い柄のついたブラシを利用.

・健側上肢を洗う方法:吸盤付きブラシを浴室壁に取り付け.

・洗髪:長髪でない限り片手動作可能.

頭を下げた坐位姿勢を,閉眼して安定保持できるが問題.

 

・麻痺が軽症な場合

手すりにつかまれば,従来通りに跨いで浴槽内に出入りできるが無理に椅子に座らせることはない.

 

発表後の補足

 

1.急性期・回復期・維持期の定義

 

・脳卒中最前線 p.2

…脳浮腫が存在する時期=急性期,浮腫の消失=慢性期

発症1ヶ月で慢性期になる. (平井)

また,機能障害の進行期=急性期,回復が見られる=回復期,能力障害のみ=慢性期.

・したがって,各時期の目標は以下のようになる. 臨床理学療法マニュアル p.342

急性期 : 廃用性症候群をできるだけ進行させないこと.

急性期では褥瘡,拘縮,起立性低血圧予防を中心にベッド上動作,坐位を可能とし,早期離床を目指す.

回復期 : 残存機能・能力を最大に引き出す.

正常動作に基づく基本動作の自立(特に歩行を中心とする移動動作の自立性を高めADLの自立性を高める.

体力を増強し社会復帰への準備をする.

慢性期 : 社会復帰後の生活,活動性の維持,体カを維持し家庭内の役割を担い何らかの社会参加に

よりQOLを維持向上する.

2.訓練の開始基準

・「急性期なので○○の訓練を行う」ではなく,Aが出来たらBの訓練へ,と移行.

・例;坐位訓練→坐位バランス訓練→立ち上がり訓練→平行棒内訓練….

  肩手症候群に関して

・原因不明であるが,反射性交感性ジストロフィー(RSD)であるという説が一般的である.

・症状…上肢の循環不全による浮腫,疼痛,腫張.

一方に発症すると最終的には他方も巻き込まれる.

皮膚萎縮,色素沈着,過剰発汗,多毛症,爪の変化,

血管運動神経の不安定な徴候と症状

同側の肩の痛みおよびROM制限

CVA,外傷,心筋梗塞などを促進する出来事の存在

  したがって,リハビリテーションの大きな阻害要因になりえる.

・変容…

肩の制限

交感神経系                循環障害-浮腫-瘢痕形成-凍結(Frozen shoulder)

手指関節の屈曲制限-手関節屈曲-側副靭帯短縮

図.RSDなどからFrozen shoulderに進む順序

 

・出現時期

表.肩手症候群の出現期間とその比率

患者の比率(%)

0-1

0

1-2

28

2-3

37

3-4

16

4-5

17

5-6

2

 

治療

・交感神経ブロック(星状神経節)

・理学療法…肩以下の自動他動ROM-exによっての可動域維持

浮腫に対しての弾性包帯や患側上肢挙上維持(心臓より上に),メドマー.

疼痛に対しては温熱療法(ホットパック,パラフィン)や光線療法(レーザー療法で星状神経節に照射),極超短波療法を行う.

・姿勢の改善と筋緊張のバランスの改善など    (*14 理学療法学 pp.188-189)

① アライメントの矯正 → 肩甲上腕関節における骨頭のアライメントを崩しやすいため

② 局所的な可動性の改善

③ 他動的なモビライゼーションや姿勢矯正で痛みを軽減

④ 能動的な動きへ誘導

⑤ 患者自身で姿勢をコントロールできるようにする

※ 患者の痛みに対する恐怖感が強い場合,肩甲帯のリラックスを図り,動きを引き出す

 

1.上肢の動きは体幹の動きや連合反応に左右されやすいので,上肢活動はまず両手動作から始める

2.両手動作を通して体幹のコントロールの能力が向上すれば,患側上肢のみの活動もやりやすくなる

3.患側上肢のみでの最小の機能を有効に活用する

・段階づけ

段階1 : 疼痛のある,またはない肩ROM制限.

手指,手指関節,手関節背側に硬い浮腫を認める.

しわを失ってつやがあり,色は蒼白で冷たいかピンク色で湿っている.

手指の関節の全屈曲制限があり伸展時に極度の痛み.肘には問題なし.

症例によっては皮膚は接触,圧迫,動作,温度に非常に敏感になる.

段階2 : 肩の疼痛が治まりROMが増大することがある.

手の浮腫は少し残るが指はさらに硬直.

皮膚は段階1よりさらに萎縮的な外観を示し,感受性の低下が見られる.

段階3 : 骨,筋,皮膚の進行性萎縮.

疼痛のないまま関節の制限が増大するが役に立たず,萎縮し,鷲手様になる.

 

予防

・ベッド上,車椅子での正しいポジショニング.上肢に失認がある場合,車椅子であればテーブルをつけて載せ,意識がそちらに向くようにし,良肢位を保持させるよう指導する.

・患側に体重負荷を必要とする場合は注意.ROM制限があるため介助者はそのことを念頭に置き介助.

・ポジショニングに注意 ⇒ 安楽性を増すような姿勢にする

→ 急性期から行なっていればそれほどの痛みがないが,懸垂固定を行なうことは注意が必要

・手関節の掌屈の防止 ⇒ 手指機能訓練

・能動的な運動 → 筋の収縮が,浮腫軽減のためにもっともよいポンプ作用を与える

→ 片麻痺の上肢の機能回復を刺激する活動を行なう

・他動運動

・物理療法:温熱療法を行なう ⇒ 痛みの軽減など

 

維持期の理学療法プログラム

Ⅰ.目的

①在宅や復職,施設入所などによる社会復帰後の生活により,活動性を維持し体力を維持

②家庭や職場,施設内の役割を担い,通所施設や機能訓練事業,患者会活動などの社会参加によりQOLの維持向上をはかる

③通院での外来治療や地域の通所施設,在宅ケアで機能維持をはかる ← 脳損傷が重度であったり,高齢者や合併症が重度

④家族関係や介護者の負担の考慮

 

<退院後の問題>

(1) 障害者自身の問題

① 生活意欲の低下

・「できないこと」により自信喪失,活動の場の縮小

・社会や家庭での役割の消失,減少

・将来の具体的目標,生活目標を設定できない

・社会,家庭への所属感の希薄

② 性格,人生観,価値観などの問題

・障害を持って生活しなければならないことに対する心理的葛藤

③ 身体機能および身体能力

・活動量の減少による身体能力の低下

・老化による身体機能の低下

・健康に対する不安

 

(2) 家族の問題

① 心理状態

・障害者を抱えることへの不安と困惑,心理的負担

② 家族関係

・障害者の家族的地位の変化

③ 介護者および介護能力

・毎日続く介護による精神的抑圧と疲労および身体的疲労

・核家族化による介護力の低下

・介護者の高齢化

・介護方法がわからない.介護技術が未熟

④ 経済的問題

 

(3) 環境の問題

① 家屋

・障害者の能力を考慮した家屋改造,生活環境の整備がなされていない,またはできない

・生活環境の整備をしたくとも,その方法を知らない

② 近隣地域

・障害者を考慮した環境整備がなされていない

・地域住民同士の向流が少ない

 

Ⅱ.方法と技術

1)   在宅介護あるいは施設介護対象者

負担を減らすために

①歩行不可能者:

・ 介助・介護のやり方を指導し確認(毎日の体位変換,清拭,更衣介助などによるROM維持)

・ ベッド上坐位保持時間を確認 ⇒ 体力に応じてできるだけ増やすよう指導

・ 起坐やトランスファー方法の確認(車椅子や他の椅子を使用し坐位を行なっている場合)

・ できるだけ残存能力を引き出すよう適切な方法を指導

・ ベッドなどがその人に適切であるかを確認(不良姿勢や褥瘡などが生じないように)

・ 介護機器や家屋改造などについて実際に使用した結果を確認し指導

・ 在宅者では定期訪問,または数回訪問後,訪問看護や保健婦に移管し維持をはかる

②監視介助歩行者:

食事,排泄,入浴などで,その場までの歩行

・ 歩行能力

・ 体力の維持

・ 臥床時間の制限による体力の維持をはかる

〈日常の起居動作〉

独力で可能なことは介助しないで保つよう指導するもの

・ 動作能力

・ 筋力

・ ROMを維持

・ 起居動作や歩行能力

・ 起居動作や歩行の介助方法を確認

・ 安全かつ介助が楽で残存能力を最大に引き出すような方法を指導

・ 在宅者では定期訪問,または数回訪問後,訪問看護や保健婦に移管し維持をはかる

 

2)通院通所者(歩行,車,車椅子を利用)

・ 歩行能力を維持するため毎日の散歩が重要

・ 経路や休憩,散歩時間などを確認

・ 万歩計による歩数を記録し励みになるように指導

・ 自宅での過ごし方を指導(通院通所頻度が週1回以下ならば)

・ ホームプログラム(日中臥床時間の制限,身の回り動作の独力励行,散歩の習慣化,徒手体操など)を指導(通院通所頻度が週1回以下ならば)

・ 歩行や更衣の自立 → ADL上必要なROMは維持

3)職業復帰(予定)者

応用歩行訓練

・ 階段(手すりある場合,ない場合)   安全な指導や練習の必要な点を確認指導

・ 坂道

・ 屋外散歩道

・ 交通機関(電車,バス,タクシーなど)

 

復職している場合

・ 通勤での階段昇降 体力維持(歩数が目安)

・ 通勤での歩行

 

主婦の場合

・ 家事の実施内容を確認 疲れすぎない適度な運動量となるように指導

・ 歩行機会を確認

歩行や更衣の自立 → ADL上必要なROMは維持

 

 

Ⅲ.理学療法上の問題点

① 廃用性症候群

・ 体力低下

・ 精神機能の低下

・ 意欲の低下  など

閉じこもりが生じやすい ⇒ 社会参加によるQOLの維持向上を図る

② 回復期と同様の対応

・ 麻痺の回復の固執

・ 抑うつ傾向(意欲の低下として表出)

③ 施設入所者の場合など

・ 障害需要の知識を持つPTが職員教育を行なう

・ 本人との対応について職種間で方針を確認

 

 

<職業復帰の阻害因子>

① 仕事遂行が困難(麻痺そのものの回復が悪い)

② コミュニケーションが困難(失語症のため)

③ 知的能力の低下(痴呆などによる)

④ 障害の受容ができない

⑤ 企業(職場)の受け入れ態勢が整っていない

⑥ 職業的リハビリテーション施設要員の不足

⑦ 個人の能力に合う職業がない(保護雇用)  など

 

①~④は患者個人の問題

⑤~⑦は社会的受け皿の問題

 

 

Ⅳ.理学療法プログラム(項目と実施ポイント)

<目標>

①社会復帰後の生活

②活動性の維持

③体力を維持 ⇒ 家庭内の役割を担いなんらかの社会参加によりQOLを維持向上

 

<プログラム>

1)歩行不能の場合

①日常生活の中でのROMの維持の指導 ⇒ 困難にならない介護法で四肢体幹の可動性維持

②体力の維持 ⇒ ・ 坐位時間を可能な範囲で多くする

・適切なベッド,椅子,介護機器を選択

・車椅子駆動やいざり這いが可能であれば積極的に行なう機会を設定

③ADL訓練 ⇒ 可能なことを維持するよう指導

2)歩行可能な場合

①歩行訓練 ⇒ 監視あるいは介助歩行 → 機能を維持,歩行機会(転倒に注意)

監視あるいは介助歩行の方法 → 家族などへの指導

<歩行自立の場合>

・散歩や通院,仕事の中での歩行に通じて歩行能力

・体力の維持

→ 歩行量の指導

<反張膝や異常姿勢が目立つ場合>

・          矯正可能か

・          訓練や装具をつける

②          ADL訓練 ⇒ 独力で可能な範囲を維持 → できることは介助しない,してもらわないよう

に指導

注意:・ 家屋改造に問題はないか確認し指導

・ ADL機器,介護機器について問題はないか確認し指導

 

1.                   機能障害

①          関節可動域制限:関節可動域訓練

○初期の弛緩性麻痺時;他動的に動かす

○自動運動の出現;自動的に動かす

○他動運動において

・          愛護的に患者の痛みのない最大可動域で行なう

・          ゆっくりとストレッチをかけつつ可動域を拡大

②          片麻痺:・ 共同運動,連合反応からの分離

・ 神経筋再教育訓練(神経筋促通手技)

○初期の弛緩性麻痺期;筋の収縮成立を早期に訓練する(共同運動,連合反応,姿勢反射などを取り入れる)

○痙性の出現;・異常運動を抑制(分離)

・正しい協調的運動

・神経筋再教育

○神経筋促通手技;・ PNF(固有受容性神経筋促通手技)

・ ブルンストローム法

・ ボバース法       など

◎          脳の運動プログラムの正しい再構築を目指すもの

◎          深部覚,視覚によるフィードバックを行なう

③          筋力低下:筋力増強訓練

④          肩関節亜脱臼について: 予防策として

・ 坐位維持の上肢の位置調整(アームレストの利用)

・ 立位時のスリングの使用

・ 三角筋や棘上筋の筋促通  など

◎ 痙性による関節可動域制限 ⇒ 十分な可動域訓練を行なって予防

 

2.                   能力障害

①          起居移動能力障害:・ 基本動作訓練(寝返り,起き上がり,坐位保持など)

・ 車椅子駆動訓練

・ 移乗動作訓練

・ 歩行訓練(必要に応じて装具処方)

◎          内反尖足と反張膝には短下肢装具を処方 → 放置すると

・膝の動揺性痛み

・足関節の変形

②          ADL障害:・ セルフケア訓練

・ 利き手交換

・ 片手動作訓練

・ 様々な自助具(スプーン,すくいやすい皿,安楽尿器など)の利用

 

Ⅴ.外来リハビリテーション期のプログラム         (*1 標準リハ医学 P.356-)

1.外来リハビリテーションの定義

・外来機能訓練(メニュー化された一律のグループ体操やレクリエーション)ではない

・地域で生活して,ADL,ASL自立,社会的QOL向上を目指す(個別化されたプログラム)

・自宅での「しているADL,ASL」の確立,向上

・社会生活の拡がりとともに必要になる「どこでも行なえるADL」の一層の拡大

・目標の設定と達成などを患者・家族の努力とリハビリチームの援助による実現

 

<利点>

・ 自宅・地域で家族とともに生活し,社会的生活を拡大する(通院もする)

・メリハリのきいたプログラム

 

2.外来リハビリテーションの内容

・在宅生活内容指導と在宅自己訓練指導を中心とする定期的外来指導

① 退院後間もない時期で,入院中に立てた主目標を達成するために行なう

・          現職復帰の実現(訓練以外に会社側への折衝を含む)

・          その他の職業復帰(転職,自営,職業訓練など)の実現

・          主婦業への復帰(完全あるいは部分的)

・          その他の社会生活レベルの主目標達成

② ・社会生活範囲の拡大を主とする第2,第3の主目標の設定

・副目標としてのADL,ASL,ASなどの副目標の設定

・能力向上に向けたプログラム

・新しい主目標の達成

③ ・ 補装具・補助具の定期チェック

・ 修理

・ 製作   など

④ 機能・能力低下の予防・回復

 

3.外来リハビリテーションの実際

① 退院前の準備:退院時までに自宅での24時間の生活の仕方

・          ADLの方法(自立してできるものと介助を受けるものの方法を明確に)

・          自己訓練

・          家具の配置

本人・家族に指導し同意を得,習熟させる(病院での訓練と外泊訓練を通して)

② 外来で上記の実行状況をチェック:

理解の不十分なところは追加指導あるいは一部修正 ⇒ 一層能力レベルを上げるように指導

③ 社会生活範囲を広げる:

本人の潜在的ニーズを引き出しながら具体的な指導

動作・行為遂行上の新しい問題点の発生 ⇒ 先取り的に外来訓練または自己訓練指導

加齢では必要な対応をとる

④ 集中的な訓練(短期入院を含む)を必要とする時期をいち早く認識 → 早急に必要な手を打つ

⑤ 補装具・補助具:

・          定期チェック

・          補修

・          再製作

・          モデルチェンジ

社会活動範囲拡大時 ⇒ 頻繁なチェックが必要

 

Ⅵ.外来から在宅ケア

①          機能障害に対して:痙性の亢進防止

・          薬物療法の指導

・          物理療法の指導

・          運動療法の指導

・          ブロック療法(軽快しない場合や増悪傾向)

・          手術適応(最終的に)

②          能力低下に対して:

・          PTによる訪問訓練の指示

・          短期入所しての再教育を考慮

・          車椅子や装具の使用状況

・          適合性などの補装具のチェック

③          社会的不利に対して:

・          家屋環境の改善

・          社会資源の活用

 

Ⅶ.訪問リハビリテーション     (*18 PTジャーナル 第28巻 p.103-)

1. バイタルサイン,身体・生活状況のチェック:

① 清潔管理

② 皮膚の状態のチェック

③ 家族の健康状態のチェック

2.本人・家族への精神的支援

① 不安感の解消

② 本人・家族の話を傾聴

3.起居動作訓練および指導

① 立ち上がり訓練

② 介助方法の指導

③ アクシデントの防止

4.住環境のチェック

① 家屋改造指導 (身の回りのもので代償するなど)

② 介護機器の利用

5.屋内移動動作訓練

① ADLに直結した屋内移動の自立度の向上 (介助量の軽減)

② ADLの質を高める (生活習慣を定着させる)

6.ROM訓練  (痛みの緩和としても)

① 廃用性機能低下の防止

・          非活動性的なための容易なROM制限(介護負担の増大)

ⅰ.躯幹の可撓性の低下

ⅱ.股関節の開排制限

ⅲ.膝関節の著名な屈曲拘縮

ⅳ.股関節の伸展拘縮 ⇒ 坐位が不可能 (活動性の著しい低下)

7.介助方法の助言・指導

・家族およびヘルパーに対して行なう

・押し付けにならないように配慮する

<家族に対して>

① 介護負担の増大につながる危険性のため慎重に行なう

② 家族の介護力を考慮

③ 精神的キャパシティーを考慮

8.屋内外の出入りのチェック

① 閉じこもりの防止

② 出入りに必要な関連起居動作の訓練

③ 本人・家族ともに外へ目を向ける意欲付け

9.車椅子での屋外散歩

① 本人・家族の意欲の向上

10.瘡処置および入浴介助

訪問看護の役割

<入浴に関して>

① 浴室へのアプローチの検討

② 浴室内での移動についての介助法

③ 構造面での検討

④訪問看護と同伴しての入浴介助

 

Ⅷ.リハビリプログラム     (*19 脳卒中のリハビリテーション p.189)

1.日常生活動作および関連動作維持・改善に関するもの

○ 食事動作訓練(食事姿勢や摂取の方法について指導)

○ 嚥下訓練(咀嚼筋,舌に対する運動の他咀嚼嚥下を改善する指導)

○ トイレ動作訓練(トイレへの移動,移乗,ズボンの上げ下げなどの指導)

○ 入浴動作訓練(浴槽への出入りや洗体の仕方など指導)

○ 着衣動作訓練(洋服や靴の着脱を指導)

○ 整容動作訓練(歯磨き,洗顔の仕方などを指導)

○ 家事動作訓練(調理,選択などの方法を指導)

2.基本動作維持改善に関するもの

○ 寝返り訓練(ベッド上などでの寝返りの方法を指導)

○ 坐位訓練(ベッドや椅子で座る練習)

○ 起き上がり訓練(ベッド上などでの起き上がりの指導)

○ 立ち上がり訓練(椅子や床から立ち上がる方法を指導)

○ トランスファー訓練(ベッドから車椅子などへの乗り移りの指導)

○ 歩行訓練(屋内や屋外での歩行の指導)

○ 応用歩行訓練(階段や坂道などの歩行を指導)

3.廃用性予防・改善に関するもの

○ 関節可動域訓練(関節拘縮の予防,改善)

→ 関節拘縮の予防は,肺症症候群の予防として,良肢位を保てるようにすることと,動作における広範囲な可動域獲得のため,筋力低下の予防としても行なう.

○ 筋力増強訓練(筋力低下の防止,改善)

○ 全身調整訓練(体操などにより全身持久力の改善)

4.QOL向上,社会参加,閉じこもり防止に関するもの

○ 外出訓練(家に閉じこもることによる廃用症候群を予防,社会参加への糸口とする)

○ 通所サービス紹介,導入(閉じこもりを解消し,生活にリズムをもってもらい,孤独感の解消,QOL向上や社会参加への糸口とする)

○ 他のインフォーマルな会への参加促進(閉じこもりを解消し,生活にリズムをもってもらい,孤独感の解消,QOL向上や社会参加への糸口とする)

○ 患者の会などの紹介(閉じこもりを解消し,生活にリズムをもってもらい,孤独感の解消,QOL向上や社会参加への糸口とする)

○ アクティビティ導入(絵画や書道,陶芸など様々な作業活動の指導をしQOL向上を図る)

5.家族指導に関するもの

○ 介護方法の指導(起こし方や車椅子介助の方法など様々な指導)

○ 在宅サービスの紹介(介護者の介護負担の軽減のため様々なサービスを紹介)

○ 家族会や介護教室の紹介(介護者の介護負担の軽減,教育を目的に様々な会を紹介)

6.住環境整備・福祉用具に関するもの

○ 住環境整備の指導(住宅改造の指導,家具の配置の変更,その他安全で快適な移住空間の整備への助言・指導)

○ 福祉用具の指導(介護用の機器や装具,自助具などの利用者の生活や介護を支援する用具の助言・選定・指導などを行なう)

 

Ⅸ.ホームプログラム

<短期間の集中訓練時に見られる問題>

① 肩の可動域の低下による痛み

② 肘屈筋の短縮

③ 手指を完全に伸展したときの手関節の完全な背屈が困難

④ 前腕の完全回外が他動的にも不可能

⑤ 肘を伸ばして上肢を外旋した時の,肩の水平外転の可動域の低下

⑥ 膝の伸展痙性が強まり,歩行や階段昇降のような機能的動作のために痙性を緩和することが困難

⑦ アキレス腱が短縮(踵で床に体重負荷がかけられない,クローヌスの亢進)

⑧ 足指の掌側にうおの目や痛みのある領域ができる(足指が強く屈曲・内転し,床に圧迫される)

 

<筋の短縮の防止や可動域の維持>

1.肩のこわばりを予防: ① ベッドもしくは床に背臥位になる

② 両手の球部をつけた状態で両手を組み,頭上に上げる

③ 組んだ手を健側にのばす(患側の肩甲骨を十分に前方に引き出す)

④ 上肢を挙上して両手の母指が支持面につくまでのばす(肘は常に伸展)

 

2.下肢の伸筋痙性の抑制: ① 背臥位で両手の球部をつけたままで両手を組む

② 屈曲した両膝を両手で抱える

③ 両膝を胸のほうへ引き上げ,同時に頭も持ち上げる

④ 股関節をわずかに伸展し,両肘を伸ばす(両肩を十分前方に引き出す)

⑤ 下肢を再び屈曲する

この動作を繰り返す

患側下肢だけで行なうこともある.

3.前腕の回外を維持: ① テーブルの前に座り,両手の球部をつけたままで両手を組む

② 両上肢を前にのばしてテーブルにのせる

③ 体を患側方向に傾けながら,母指がテーブルに触れるまで患側上肢を回外方向に健側上肢で押す

④ 身体を左右へ傾けることを繰り返す

手指を伸展したまま健側の手を患側の手の上に平らにのせておけるようになるま

で,痙性を緩和する

4.手関節の完全な背屈を維持: ① 両手を組んで腕を曲げる

② テーブルに両肘を平行につき,両手を顔にもってくる

③ 健側の手で患側の手関節を十分に背屈する

④ 正しい肢位で繰り返し手関節を動かす

手のあいているときに行なう

5.肘・手関節・指の屈筋の短縮を予防:

(a) ① 両手を組み手掌が外側を向くように回転する

② テーブルやその他のしっかりした支持面に押し付ける

③ 上肢を伸展して,手関節をできる限り完全な背屈位になるように体重を負荷する

(b) ① テーブルか,2つの椅子を並べてつけてその一方の椅子に座る

② 健側の手で患側の手指と手関節を他動的にのばす

③ 手を体側のしっかりした支持面につく

④ 痙性が強い場合,他動的に手を開くとき,健側下肢の上で主肺を大腿におしつけて行なう.

⑤ 患側上肢に体重を移動するとき,健側の手で肘を完全伸展位に保つ

(手指が屈曲しないように注意)

 

6.アキレス腱と足指屈筋の短縮を予防: ① 巻いた包帯の上に注意して足をのせる

② 包帯が足指の真下にくるようにする

③ 膝を下方に押して踵を床につけてから殿部を持ち上げる

④ 安全のために椅子の背もたれに手を当てて立つ

⑤ 立位をとり,全体重を患側下肢に負荷して膝を屈伸する

⑥ 健側の足を空中に持ち上げておく

股関節が後退しないように前方に保つ

7.上肢をのばした状態で水平外転の完全な可動域を維持:

上肢を伸展して,完全な水平外転する(介助が必要)

① 背臥位で手を組んで,前方に挙上する

② 介助者が患側の手を握り,肘を伸展したまま手掌が上を向くようにする

③ 上肢がベッドに平らにつくまでゆっくりと側方に動かす

④ 上肢と体幹の角度が90°になるようにする

⑤ 介助者は,患者の母指を伸展・外転位に開く

⑥ もう一方の手で他のすべての指を伸展する

手関節と5本の手指が十分に伸展するまで持続する

患者の胸郭の下に枕を置くと効果が増す

 

※ 体力,運動機能の維持,改善のための生活方法   (*20 維持期リハビリテーションマニュアル p.61-)

Ⅰ.関節変形・拘縮予防のための運動

1.肩・肘関節 ― 腕の前方挙上 ―

ア.坐位で行なう方法

①          手を組む

②          前方に挙上する

③          上に上げる

イ.臥位で行なう方法

①          手を組む

②          手を持ち上げる

③          手を頭の上の方に持っていく

④          手を持ち上げはじめの位置に戻し,運動をくり返す

 

ウ.滑車による方法(ア,イが困難な人が行なう)

注意:両腕に力を入れて行ない,無理に引っ張ることは避ける.腕が肩から外れている時は,専門家の指示を仰ぐ.

 

2.前腕

ア.健手で患側前腕を回す

①          良い方の手で悪い方の手を持つ

②          悪い方の手のひらを下方に向けるように回す

③          悪い方の手のひらが上に向くように回す

 

イ.やってもらう方法(時々肘を伸ばしても行なうこと)

①          手のひらが上に向くように前腕を十分に回す

②          手のひらを下に向けるように前腕を十分に回す

 

3.手指,手関節

ア.坐位で健肢により患肢を動かす

1)          母指 ― 伸展・外転・対立 ―

①          母指を伸ばして開く

②          開いたまま手掌側に回す

 

2)          手指と手首 ― 手指伸展・手関節背屈と手指屈曲・手関節掌屈 ―

①          手指を伸ばし手指を上に反らす

②          手指を曲げ手首を下方に曲げる

 

イ.両手指を組んで行なう手首の運動

 

ウ.やってもらう方法(ア,イができても毎日行なう)

1) 母指を伸ばして開く ― 伸展・外転 ―   (図は母指の運動を参照)

 

2) 手指と手首 ― 手指伸展 ―

① 手指を伸ばして首を手の甲側に反らす

② 手指を曲げ手首を手掌側に曲げる

 

4.足関節,足指(アキレス腱)

ア.体重を利用する方法

1)          起立板で立つ(壁または柱に寄り掛かって立つ)

足底にクサビを入れて10~20分立つ

 

2)          しゃがみ位で踵を床に付ける

両足を10~20cm離してしゃがみ,秒保持し,繰り返す

 

3)          立位で健肢を前に出し後方の患肢の膝を伸ばし踵を付けたまま保持する

 

イ.やってもらう方法(アができない人は必ずやる必要がある.アができても時々やってもらう)

1)          足首を反らす(アキレス腱伸張)   (図は足関節背屈を参照)

踵を握ったまま,足尖部を上方に反らす(膝は伸ばしたまま行なう)

 

2)          足外がえし,内がえし

①          足を外側にねじるようにかえす

②          足を内側にねじるようにかえす

3)          足指       (図は足指の屈伸を参照)

①          足指を上に反らす

②          足指を下に曲げる(足首は直角にしたままで行なうのがよい)

 

5.股関節,膝関節

ア.臥位で自分でできる範囲で行なう(左,右)

①          両下肢を十分に伸ばす

②          一側を十分に曲げ他側は伸ばしたままにして数秒保持する

イ.やってもらう方法(アができる人でもやった方がよい)

①          膝を十分に伸ばしておく

②          股,膝共十分に曲げる

1)          股,膝屈曲 ― 伸展

2)          膝を伸ばしたまま挙上する

 

6.股関節・外転

ア.自分で行なう方法

①          患肢踵部(右)をベッド端に下ろし引っ掛かりをつける

②          健肢(左)を外側に十分に開く,数秒開いたままにしておく

イ.やってもらう方法(アが十分にできない人はやってもらった方がよい)

①          膝の下に片手をさし込み,他方の手で踵を支える

②          足を自分の方に引っ張る

③          足を元の位置に戻す

 

Ⅱ.筋力維持・改善のための運動

〔筋力維持・増強運動〕

①          肩・肘関節

1)          肩・肘関節:前方挙上位で10秒位保持しゆっくり下ろす

2)          肩・肘関節:上方まであげ10秒位保持しゆっくり下ろす

3)          肩・肘関節と体幹:前方に挙上したまま身体を左右にねじる

4)          肘関節

①          肘を伸ばした肢位

②          肘を曲げる

 

②          股,体幹の伸展と回旋

ア.自力で行なう方法

  1. ブリッジ(膝立て腰上げ):膝を深く曲げた状態で始める

②          膝を立てる

③          腰を十分に上げ数秒保持する

上手になったら膝の曲がりを少なくしていくとよい (健側のみで行ってもよい)

 

  1. 下半身の回旋

① 両膝を立て腰を浮かし下半身を右方へ回す

② 同様に左方へ回す

 

イ.介助で行なう方法(アが困難な人)

1)   ブリッジ(膝立て腰上げ)

上がりが不十分なら膝を深く曲げて行なう

①          両膝を立てて固定してやる

②          腰を十分に上げ保持する

 

2)   下半身の回旋

①          両膝を立てて固定してやる

腰を浮かし,下半身を回してもらう

できない部分を最小限に介助する

②          同様に反対方向へ回旋してもらう

 

③          股・膝関節(健側に行なう場合と,患側に行なう場合の両方あり)

ア.抵抗を与え巣に自力で行なう方法

1) 膝,伸展位挙上

ゆっくり上げ,保持し降ろす

膝が曲がってきたら止めて,もう一度膝を伸ばし保持する

 

2) 股,外転,内転

両足を十分に開き,数秒間保持し戻す

 

3) 膝伸展

 

4) 股屈曲

 

イ.抵抗を与えて行なう方法

1) 膝伸展挙上

足首に重りをつけて行なう

 

2) 股外転

ゴムバンド(自転車チューブなど)を巻き力一杯開く

両下肢を床においたまま開く

ゴムバンドは膝より上に開脚は少しに

 

3) 膝伸展

足首に重りをつけて膝を伸ばす

 

4) 股屈曲

足首に重りをつけて膝を胸に近づける

 

Ⅲ.日常生活動作訓練

1.臥位で体をずらす

1) 上方(頭の方)に体をずらす

① 膝を立てる

② 腰を上げる

③ 足で蹴り上げる

2) 下方(足の方)に体をずらす

① 膝を立てる

② 腰を上げる

③ 膝を曲げ,肘でも支え,下にずる

3) 側方(右,左)に体をずらす

① 膝を立てる

② 腰を上げる

③ 腰を側方に移動させて下ろす

④ 頭を持ち上げ肩肘で浮かし上半身を側方に移動させる

 

2.寝返り

1) ベッド柵を使用し寝返りする

健手で引っ張り寝返りする

 

2) ベッド柵なしでの寝返り

① 健側上下肢で患側上下肢を健側肢にもってくる

 

② 健側上で肘の力で寝返る

※ 患側を下にしての寝返りもある. → 患者自身,不安があるためあまり行なうことをしないが,訓練上では行なうこともある

 

3.起き上がり

ア.自立での起き上がり

①          患肢を健側に持ってくる

②          健肢が下側になるように寝返りする

③          両下肢をベッドから垂らす

④          肘を立てて上体を起こす

⑤          手を突いて肘を伸ばし起き上がる

 

イ.介助での起き上がり

①          患側上下肢を健側方向に交叉させる

②          健側を下に寝返りする

③          両下肢をベッドから垂らす

④          肘を立てて上肢を起こす

⑤          手をついて肘を伸ばし起き上がる

 

4.坐位訓練

ア.坐位バランス(イができてから行なう)

1)    重心を患側に傾け上肢で支持する

 

2)    お辞儀をし重心を前方に移動する

 

3)    斜め前方にお辞儀をし重心を移動する

麻痺側に移動するとき → 転倒に注意して行なう

良い方の手で悪い方の肘を支える

 

イ.坐位での移動

1)    坐位での側方移動

①          健手をついてお辞儀する

②          立ち上がるように腰を少し浮かす

 

2)    坐位での前後移動

お辞儀をし腰を浮かして前方(後方)に移動する

 

ウ.坐位バランス(健側中心に)

①          健側上肢で支える

②          健側上肢を大腿部におく

③          坐位での首・上肢の運動

 

5.車椅子・ベッド間移乗訓練

ア.独力で行なう方法

①          車椅子を正しくパークしブレーキをかける

車椅子の前部をベッドにぴったりつける

②          車椅子の足台を上げる

初めは健側下肢で健側の足台を上げ,次に健側下肢で患側足を下ろし,足台をあげる

(危険だから手は用いないように)

③          腰を前方にずらし,足底が床につき浅くかけた状態

バックレストに背をもたれ,剃るようにしてずらすほうが初めは安全

④          立ち上がりやすいように両膝関節を約90°まで曲げ,健側足を後方に引く

⑤          健手で肘掛けを持ち上半身を前方へ傾ける

⑥          健側上下肢で体重を押し上げ立ち上がる

健側足二重唇を移しバランスを保つ

⑦          健側上肢をベッドに移す

⑧          健側下肢を軸にして腰を回す

⑨          上半身を前傾して腰掛け,坐位を整える

 

イ.介助で行なう方法

1)   ベッドから車椅子へ

①          車椅子をやや斜めにとめ,健手で車椅子の肘掛けを握る

②          従手で肘掛けを握り上体を前傾し,介助で立ち上がる

③          健足を軸にして立ったまま介助で回る

手をもう一方の腰掛けに移す

④          立位のまま車椅子のシートに腰を向けるまで十分に回る

⑤          お辞儀して膝をまげ座る準備をする

⑥          膝・腰を十分に曲げ腰を下ろす

 

2)   車椅子からベッドへ

①          腰を前にずらし浅く腰掛ける

②          肘掛けを握り立ち上がる

③          上体を曲げてをベッド上につく

④          手に体重をかけ腰を回す

⑤          お辞儀をして腰を下ろす

 

6.車椅子での移動(ほとんどの人が可能)

1) 片麻痺の人が駆動できる車椅子

① 大車輪がついている(後に)

② シートが低い(約40cm:腰を下ろし足底が床につく)

③ できたら足台が外開き,はめはずしが可能

④ ブレーキは両側共,健側上肢で届くことができる

 

2) 駆動方法

① 健側上肢ハンドリムを握り車輪を回す

② 健足を床につけたまま前後左右に屈伸

・内外転させると駆動できる

 

7.車椅子,便器間移乗方法

1) 車椅子から便器へ

2) 便器から車椅子へ

 

8.椅子から立ち上がる

ア.手の支持無しで立ち上がる

イ.手の支持で一人で立ち上がる

 

ウ.介助で立ち上がる

①          健手で支える

②          お辞儀をして腰を上げる

③          上体を起こし立ち上がる

④          直立位になる

9.床から立ち上がる

軽症者

 

中等症者

比較的重い症例

10.歩行

ア.3動作歩行:常時二点歩行(ゆっくりした歩行)

1) 杖歩行

(介助)

2) 手すりにつかまって歩く

① 健側上肢を出す

② 患側下肢を出す

③ 健側下肢を出す

 

イ.ニ動作歩行:二点一点歩行(普通の歩行)

①          杖と患側下肢を同時に出す

②          健側下肢を出す

 

11.昇降,またぐ

ア.階段の昇降

昇り方              降り方

①          杖を上げる           ① 杖を下ろす

② 健側下肢を上げる        ② 患側下肢を下ろす

③ 患側下肢を上げ揃える      ③ 健側下肢を下ろし揃える

 

イ.またぐ

小さい場合

②          杖を出す

③          患側下肢を出す

④          健側下肢を出す

 

大きい場合

①          杖を出す

②          健側下肢を出す

③          患側下肢を出す

 

12.乗降

1) 乗用車

乗り方:座席に腰掛けてから良い足で悪い足を車の中へ運び入れる

 

降り方:座席の端に寄り,両側を先に下ろしてから,立ち上がる

2) バス

乗り方                降り方

 

13.入浴

① 腰掛けても折れないフタをわたす

②          悪い方の足をフタの縁につけて斜めに腰かけ  る

③ 良い手で悪い足を抱えて浴槽に入れる

④ 良い足を入れる

⑤ 浴槽に腰を下ろす

(出るときは逆の順になる)

 

Ⅳ.良い姿勢を維持・改善させるためには

1)    首をすくめるように肩を上げたり下げたりする

 

2)    胸を張ったり,すぼめたりする

(1)   日中は坐位をとる

(2)   良い坐位姿勢を保持する → シート高が床面から35~40cmの肘掛け椅子か車椅子

(3)   時々背を背もたれから離して背筋を伸ばすように心掛ける

(4)   1日に1分間は良い立位姿勢をとる

(5)   肩の運動を行なう

 

Ⅴ.歩行の維持,改善のためには

1) 足踏みや中足立ち (図1)

2) ステップ練習(できたら後方へのステップも)

(図2)

 

3) 立ち座り練習(図3)

(1)    毎日一定歩数以上歩く

(2)    室内では歩行の維持が困難なので外出を心掛ける

(3)    歩行の基本訓練を続ける

(4)    装具ははずさずに,できるだけ長時間使用した方がよい

 

Ⅵ.麻痺肢の改善のためには

1.下肢の伸展力が弱い場合

1) 足底に抵抗を与えて蹴ってもらう

2) 抵抗を与え両足をつけてもらう

2.下肢の外転力が弱い場合

3.下肢の屈曲力,伸展力共に弱い場合

・両膝を立てて固定しておく

・患側が外側や内側に倒れないように自分でコントロールさせる

4.下肢伸展は強いが屈曲できない場合

患側下肢の膝下をベッド端に垂らしたところから曲げてもらう

5.上肢がほとんど動かせない場合

手を大腿から,①へその高さ,②乳頭の高さ,

③口の高さへと順に上げる

 

6.肘が伸びにくい場合

1) 手のひらを下について健側上肢で肘を伸ばし体重をかける

2) 壁面に手のひらをつけ肘を伸ばし壁を押す

 

〔体力維持・改善のための運動負荷量〕

ア.生活活動としての運動

<配慮>

①          日常生活動作の自立度の改善

②          生活リズムの調整

③          生活圏の拡大

④          1日の総臥位時間の調整

⑤          余暇活動の活性化

⑥          家族や社会における役割

⑦          対人向流の確保

⑧          障害の受容にかかわる援助

 

<環境上の問題>

①          周囲(家族や社会)の理解や協力を得ること

②          必要な介護力の確保

③          物理的環境(住宅や街)の整備

④          その他の必要な社会・経済的資源の整備

 

イ.運動負荷量について

中等度の運動負荷 ⇒ 長時間続けることにより体力の改善

中等度の負荷 = 心拍数が1分間に110~120回程度の負荷

 

◎ 脳卒中による障害者や高齢者の体力維持・改善のための運動負荷量法目安

→ 心拍数が1分間に120回までとし,それ以上になったら休止

◎ 自覚的な運動強度の目安

→ “きつくはなく楽である”(=“ややきつい”と“かなり楽である”の中間)

◎ 運動負荷後の疲労

→ 2~3時間後に取れる程度が適当

⇒ 翌日までに疲労が残る場合 → 負荷量が多いので,少なくする

◎ 運動時の状態を客観的に把握する

・          脈拍数や脈拍の不整

・          動作が下手になる

・          表情の変化

・          呼吸数の増加

・          血圧の変動   など

  • バイタルチェックは元に戻るまでチェックをする

 

◎ 運動プログラムの決定

現在の生活動作で行なわれている運動量を概算する → 必要な運動の種類と量を定める

大まかな目安:1日に1回15分程度の軽度~中等度の運動から始める

→ 結果から1回の時間,1日の回数,1週間の頻度を段階的に増やす

バイタルチェックを行なって,安全を確認する

 

ウ.運動負荷の与え方

(1)    日中ふとん・ベッドにいる時間が多い人

・          1日の総臥床時間と1回に続けてできる坐位時間を調べる

運動プログラム

○          1回の坐位時間の延長 → 1日の総臥床時間を健常な時の状態に近づける

○          坐位時間の延長には,椅子移乗動作の訓練を介助方法も含めて行なう

○          立ち上がり運動を5回くらいから,立位保持練習を1分くらいから始め,徐々に増やす

(注)廃用性症候群が進行しつつある状態 ⇒ 関節運動が不十分であれば介助

 

(2)    日中はふとんやベッドで休むが坐位時間の方が多くなっている人

○          戸外に出られるように改造をする

・ 段差解消機器

・ スロープ

・ 手すりと腰掛け台

・ 階段と手すり     など

○          通所サービスを利用する

 

<歩行が可能>

○          30分くらいの散歩を目標とする

通院や買い物などの実生活の歩行

交通機関の利用

 

(3)    日中起きていられる人

○          発病前の自立した生活を目標とする ⇒ 基本的生活や余暇活動などができるように工夫

○          機能訓練やデイケアのみではなく,趣味活動などを積極的

 

<自立してできないこと>

○          本人の意欲を実現する便宜をはかる(他人による介護)

○          社会的役割としてアドバイスをする

○          歩行量が増えない場合は,散歩で補う

 

 

<運動療法を行なう上でのリスク管理>   (*21 早引き検査値 事典)

○          血圧 → 正常値としては140/90以下であり,200/110以上の場合は危険とされ,訓練

を行なわず,身の回りの動作の無理なく行なえる動作を行なう.

○          脈拍 → 正常値としては60~80回であり,(210-0.8×年齢)×0.4~0.6の計算が適性

運動における基準となる.

○          呼吸 → 正常値としては12~20回

○          顔の表情やチアノーゼ  → 視診により確認

○          合併症の注意 → 運動療法の進行を阻害しやすい

 

1.脳卒中再発作について

①            再発防止のための薬物療法

②            精神・神経症状のための薬物療法

頭痛,頭重,めまい,不安,焦燥,不眠,記憶障害,見当識障害,意欲低下,うつ状態などに使用する

③            基礎疾患の管理

高血圧,糖尿病,心疾患,腎疾患および高脂血症などの基礎疾患がある場合,食事療法や薬物療法による管理が必要.

危険因子としての高血圧は重要であるので肥満にならないようにカロリー制限を行なう.

降圧剤を使用することがあるが,脳血流量の減少により,様々な症状がみられるので,徐々に日数をかけて降圧を行なう.

糖尿病は再発予防のために血糖値の管理が必要.

抗血小板薬や抗凝血薬を使用する(血液の凝固線溶系の検査により)

 

2.感染症,心疾患

片麻痺で臥床していると,感染に対する抵抗力が弱くなり,膀胱炎や肺炎を起こしやすくな

る.

排便,排尿後には局所を清潔に保つようにし,水分や食物の摂取の際は,座位をとらせ前かがみの姿勢で誤嚥しないように注意する.

定型的な肺炎の症状を示さないことがあるので,呼吸困難,脱力,意識障害などの症状に注意する.

脈拍,呼吸,血圧,発汗などの観察を怠らないようにする

 

3.運動に関するリスク管理

転倒による骨折によりADLの自立度低下をもたらすため,寝たきりになる危険がある.

転倒しないための介助法を家族や関係者に指導することが重要.特に下肢の筋力低下,深部知覚障害や視空間失認では転倒の危険性が増すので注意.

⇒ 種々な工夫(杖,手すり設置,段差の解消,ポータブルトイレなど)が必要

 

維持期においては,介助者の重要性が示唆されているように考える.介助者の能力によって廃用性症候群や再発の危険性が変化するからである.つまり,セラピストの指導がしっかりしていないと廃用症候群や再発の確率が高くなります.また,家族に対する心理的なアプローチも怠らないようにすべきである.在宅に戻ってから介助などを行なうことにより,様々な問題や困難が生じてくるためである.できる限り,患者を縛り付けることのないような環境にすべきである.そのために様々なインフォーマルな会に参加させたり,社会参加,趣味などを持たせるようにする.入院中などに様々な会への参加や趣味としてできそうなことを試みて,興味を持ってもらうようにするなどを,訓練としても取り入れるべきであると考える.


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