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(*ToT)術後の合併症の話


●術後発熱

術後38℃以上の発熱がある場合は、その原因検索が必要である。必ず、臨床経過と身体所見を調べる。

発熱の原因はさまざまで、発熱すなわち感染とはかぎらない。とくに、術後早期(36時間以内)の発熱は無気肺や輸血後の反応熱などによることが多い。

 

●肺合併症

①無気肺:疼痛による体位変換の減少や呼吸運動の抑制、過剰な鎮痛薬投与による咳嗽反射の減弱などが誘因となり、気道分泌物が貯留し肺胞が十分に拡張せず無気肺となる。39℃以上の発熱とともに頻脈と呼吸数の増加、胸郭運動の左右差、酸素飽和度の低下を伴うことが多い。聴診上、呼吸音の減弱と湿性ラ音などをみとめる。無気肺部位には細菌が繁殖しやすく、結果として肺炎になる。手術後72時間以上経過してから38℃以上の発熱、白血球数の増加、膿性たんの喀出がみられる場合には肺炎を疑う。深呼吸・咳嗽・離床などの保存的治療で肺を再膨張させる。

②肺炎:無気肺から進展して手術後3~5病日に発症することが多い。臨床的には高熱・頻脈・多呼吸などがあり、聴診では呼吸音の減弱・湿性ラ音・気管支呼吸音が聴取される。喀痰を培養し、適切な抗生物質を投与する。

これらを予防するためには、手術前から呼吸訓練や、インセンティブスパイロメトリー(トリフロー・インスピレックスなど)を利用した呼吸理学療法を行う。また手術後には、疼痛コントロールを行うことにより呼吸や排たん行動を促すこと、ネブライザーや含嗽により気道内を加湿して排たんしやすくすること、手術前に引きつづき呼吸訓練と呼吸理学療法を実施することにより、無気肺と肺炎を予防する。

 

●手術創感染

別の痛みが強くなり第3~4病日から微熱が出現したら創感染を疑う。創周囲に浮腫や発赤があらわれる。腸内細菌によるものは痛みのわりに発赤が少ない。手術中に細菌による創汚染が著しかった場合や、局所的あるいは全身的に細菌抵抗性が減弱し細菌が増殖すると創感染が発症する。手術創を大きく開放し有効なドレナージを行い、壊死物質や異物があればデブリドマンを行う。抗生物質の全身投与が必要なこともある。

 

●縫合不全

消化管吻合部の一部または全周に癒合しない部分が生じ、ここから内容物が消化管外にもれる状態をいう。無症状のこともあるが膿瘍形成や腹膜炎、さらには敗血症にまで進展する場合がある。術後5~10日頃発症することが多い。縫合不全の原因として、吻合部の血流障害、吻合部の感染、吻合部にかかる過剰な張力などがある。長期間のステロイド薬の使用や血液凝固第ⅩⅢ因子欠乏などの全身的な要因もある。

術後は肺合併症の予防につとめ、創傷治癒に必要な酸素が十分に細胞に送られるようにする。糖尿病がある場合には、血糖コントロールを行う。早期発見するためには、ドレーンからの排液の量と性状、発熱、白血球数の増加、吻合部付近の疼痛・圧痛の有無を経時的に観察する。ドレーンからの排液を観察し、必要に応じて造影検査やCT検査などを行い診断する。

 

●腹腔内膿瘍

ダグラス窩・横隔膜下・モリソン窩などに膿が貯留した状態をいう。

ダグラス窩は立位でも仰臥位でも腹腔内で最も低い位置になるため,あらゆる滲出液がたまりやすく膿瘍形成の好発部位である。消化管穿孔による腹膜炎・縫合不全・子宮付属器炎などが原因となる。発熱・白血球増多・CRP上昇などの一般的な症状に加え、残尿感・テネスムス(しぶり腹・裏急後重)・粘液性下痢といった骨盤内臓器に炎症が波及することによる特有の症状を伴うことがある。直腸診や膣内診を行い、試験穿刺にて診断を確定する。

横隔膜下膿瘍やモリソン窩膿瘍はおもに胃・十二指腸潰瘍穿孔、胃がんや肝胆道糸の手術後など上腹部疾患に合併しやすい。横隔膜下膿瘍ではしばしば吃逆や胸水貯留がみられる。

腹腔内膿瘍の診断には、超音波検査・CT検査・シンチグラフィーなどが有用である。治療は抗生物質投与とドレナージが主体となる。

 

●後出血

後出血は手術直後から2日までに、手術操作が原因となっておこる可能性がある。また出血性素因のある患者や、抗凝固薬を常用している患者におこりやすい。ドレーンや胃管からの排液量と性状を経時的に観察するとともに、血圧低下や頻脈の出現・チアノーゼ・末梢の冷感の有無を観察して早・期発見につとめ,後出血をみとめたらすみやかに医師に報告する。

 

●術後イレウス

手術操作に伴う腸管への機械的刺激、腹腔内の感染症、手術後の癒着、術後胆嚢炎などに伴い、イレウスをおこすことがある。イレウスをおこすと腸管内にガスや液体が貯留することにより、体液の喪失、経口摂取不能、腸管内細菌や細菌毒素の循環系・リンパ系・腹腔への移行がおこり、その結果、脱水・循環障害・敗血症などに陥る。

通常は、手術による機械的刺激や麻酔により運動麻痺(生理的イレウス)になった腸管は、手術後48~72時間後には自然に回復して腸蠕動がみられる。しかし手術時間が長い場合、高齢者、くり返し開腹手術を受けている場合、イレウスの既往がある場合には術後イレウスのリスクが高くなるので注意が必要である。早期発見のためには、手術後の腸蠕動の回復過程を観察するとともに、腹部膨満・腹痛・吐きけ・嘔吐などの症状の有無、および手術後72時間後の排便・排ガスの有無を観察する。

術後イレウスを予防するためには、早期離床が効果的である。そのほか、腰背部の温罨法によって副交感神経優位の状態にする方法、腹部温罨法によって血液循環を促す方法、腹部マッサージによって腸管を機械的に刺激する方法がある。ただし腹部温罨法は、腹膜炎をおこしている場合には禁忌である。治療としては胃管を挿入して保存療法を行うが、軽快しない場合には再手術となる場合がある。


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