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v(・∀・*)アルツハイマー型痴呆の話


(・。・)題名:アルツハイマー型痴呆の話

 1907年ドイツのアルツハイマー博士が最初に記載した疾患である。記憶力障害を中心とした知的機能の低下を主症状とする疾患であり、病理学的に大脳皮質の萎縮と老人斑、神経原線維変化を特徴としている。特に脳(脳回)の萎縮は、老化と深い関係があることを示している。65歳以下での発症をアルツハイマー病、65歳以上での発症をアルツハイマー型老年痴呆とよぶ。(以下総称してアルツハイマー型痴呆とする。)

A.解剖・生理

1.解剖・生理

アルツハイマー型痴呆は、組織生理学的にアルツハイマー病性変化に基づくものと考えられている。組織病理学的変化としては神経細胞の脱落、老人斑の出現、神経原線維変化が特徴的である。

アルツハイマー型痴呆では、精神機能(記憶、理解、判断 など)をつかさどる神経細胞が分布している脳の灰白質(皮質)に病的変化が現れる。この病的変化は、脳の海馬を中心とする部位から側頭葉に強く、痴呆が進行するにつれ、頭頂葉と前頭葉にまで及び、最終的には一次運動野などを残して変性が広範囲となる。この灰白質の神経細胞の中では、神経原線維変化と呼ばれる物質が形成されていたり、また、神経細胞と神経細胞の間の空間にはβ-アミロイド蛋白質と病気で変化した神経細胞や軸索や樹状突起の残骸、ミクログリア、アストログリアからなる老人斑ができる。この神経原線維変化や老人斑などによって神経細胞自体も消えてなくなる。その結果、脳は萎縮する。

異常は神経細胞の形に現れるばかりでなく、神経細胞の中で作られる神経伝達物質とその関連物質にも現れる。特に、アセチルコリン、セロトニン、ソマトスタチンの働きに異常が出る。

1)神経細胞の脱落

ニューロンの脱落は、大脳皮質や皮質下全体に見られるのではなく、選択的にある特定の部位の特定のニューロンが脱落するのが特徴である。

(1)大脳皮質:連合野第3,5層の錐体細胞、海馬傍回第2,4層の錐体細胞、海馬の錐体細胞の脱落がみられる。

(2)皮質下:中隔野やマイネルト基底核のコリン作動性ニューロン、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロン、縫線核のセロトニン作動性ニューロンの脱落が認められる。

*マイネルト基底核・・・中隔野、ブローカー対角帯核とともに、前脳基底野を 構成する。特に霊長類ではよく発達し、肥大化した大脳皮質に長いコリン作働性神経線維を送り、皮質ニューロンの機能を支えている。中隔野とブローカー対角帯核の垂直部は、旧皮質に属する海馬にコリン作動性の線維を送っている。

 

*コリン作動性ニューロン・・・アセチルコリンを神経伝達物質としているニューロン。末梢神経系では副交感神経に多い。中枢神経系では前脳基底野、線条体に多い。脊髄では運動ニューロンがそうである。アルツハイマー型痴呆では前脳基底野のマイネルト核のこのニューロンの脱落がよく知られている。

2)神経原線維変化

神経細胞体に嗜銀性の神経構造物が蓄積するものを指す。必ずしもアルツハイマー型痴呆に特異的ではない。

神経原線維変化内では多数の線維が平行に走って束をなしており、その単位となる線維はきわめて特徴的な形態をしていることがわかった。80nmの周期でくびれがあるのが大きな特徴で、直径は腹の部位で20nm、筋の部位で10nmである。ちょうど2本の10nmフィラメントがお互いにより合わさったような形をしており、対状らせん線維 paired helical filament(PHF)と名づけられた。PHFは正常にない構造の線維で100Åの線維が2本ねじり合わさっているような構造をもつ。このユニークな形態をした線維は、神経細胞内の正常線維構造物である微小管およびニューロフィラメントと容易に区別できる。この中にみられるタウ蛋白(微小管結合蛋白の1つ)は異常に燐酸化されており、胎児の脳に多いものであることがわかっている。

3)老人斑

β-アミロイド前駆体蛋白(APP)の一部が切れたもの。ほとんどのアルツハイマー型痴呆に特異的である(他にみられるとすると、ダウン症候群脳や正常加齢脳に少量)。

また、老人斑の数と痴呆の程度は必ずしも一致しない。唯一強く相関するのが、シナプスの数の減少と痴呆の程度との正相関である。

* APP・・・21番染色体の長腕部に局在して存在し、選択的スプライシングにより3種類のmRNAが産生する。通常は、もっとも短いβAPP695だが、アルツハイマー型痴呆には長いβAPP751、βAPP770をはじめ、微量異性体βAPP714などが存在する。これは、セリンプロテアーゼ・インヒビターに似たアミノ酸配列を示している。

2.神経原線維変化と老人斑の関係

以前からPHFは非常に多くの神経疾患で出現することが知られていた。これに対してβ蛋白を成分とするアミロイドは非常に限られた疾患にしか見られない。このことから、アミロイドのほうがアルツハイマー型痴呆に特異的であろうという考えがすでに存在した。2つの病変を知るために各年齢のダウン症の脳が調べられた。

ダウン症は21番染色体が3つある疾患であり、40~50歳以降になると必ずアルツハイマー型痴呆の病理像を示すことが知られていた(ダウン症が痴呆化することは稀である)。とすると各年齢で亡くなったダウン症患者の脳を調べれば、2つの病変の時間軸上での関係がわかる。その結果、ダウン症では30歳でアミロイドの沈着(び漫性老人斑)が始まるが、神経原線維変化は40歳以降にならないと出現しないことがわかった。

すなわちアミロイド形成がアルツハイマー型痴呆の初期病変と考えられる。以上のことは多数の一般老人脳の免疫染色結果と一致する。一般老人脳の多くに老人斑が見られたが、神経原線維変化が認められた例はごくわずかであった。また老人斑を伴わず、神経原線維変化のみを認めた例はなかった。

このようにして、アミロイドの形成がアルツハイマー型痴呆の初期病変であり、おそらく病因に関係していると思われた。

*び漫性老人斑・・・アミロイド沈着はこれまで考えてきたよりもはるかに広範であることが明らかとなった。アミロイド沈着の中にはその程度が軽く、変性神経突起を伴わないものがある。そこでは、アミロイド線維は密集せず、細胞突起間にパラパラと存在するのみである。これは、び漫性老人斑と名づけられアミロイド形成の初期像と考えられている。

3.アルツハイマー型痴呆と遺伝の関係

アルツハイマー型痴呆の多くは、孤発性のものであるが、稀に家族性アルツハイマー病(FAD)と呼ばれ、染色体優性遺伝性を示すものが見られる。

FADは、少なくとも発症が2世代に渡る場合あるいは血縁関係者に発症が確認された場合になされる。日本では、ほとんどが早期発症型であるが、欧米では晩期発症型は珍しくない。

1)疾患の成り立ちにかかわる遺伝子

(1)単一遺伝子病

その疾患の原因となる特定の遺伝子が1つ存在し、その遺伝子に何らかの変化が生じると発症するような疾患。

(2)多因子遺伝病

発症にかかわる遺伝子が複数存在し、その1つ1つの遺伝子の異常だけでは疾患の発症につながらないが、いくつかの遺伝子の異常が重なり、あるいはこれに環境因子が加わることによって発症する。

一般に、単一遺伝子病は頻度が少なく稀な疾患であることが多く、多因子遺伝病は、頻度の高い、いわゆる「ありふれた病気」であることが多い。アルツハイマー型痴呆を例にして説明すると、家族性アルツハイマー病は単一遺伝子病ととらえることができ、孤発性のアルツハイマー型痴呆は多因子遺伝病であると考えることができる。

2)家族性アルツハイマー病の遺伝子座に関する現在の知見

(1)早発型家族性アルツハイマー病

①21番染色体長腕上のAPP遺伝子に変異のある群

②14番染色体に遺伝子座のある群

③上記のいずれでもない群

(2)遅発型家族性アルツハイマー病

当初19番染色体に遺伝子座があると考えられてきたが、この19番染色体上の問題となる遺伝子はアポリポ蛋白E(apoE)遺伝子であり、現在では遺伝性のないものを含めてアルツハイマー型痴呆に共通する危険因子と考えられるようになってきており、遅発型家族性アルツハイマー病の原因遺伝子がさらに別に存在するかどうか、検討を要する段階にきている。

*apoEとADとの関連

apoEは3つの遺伝子型( ε2,ε3,ε4)があり、そのうちε4がアルツハイマー型痴呆の危険因子である。

a.ADではapoE対立遺伝子頻度が高い

b.ε4はADの発症年齢を若年化する。

c.ε4ホモ接合体とε4ヘテロ接合体の問題

d.遺伝子異常の確認されているAD家系ではε4は関連しない

f.ε4の疾患特異性

*ε4はどのような機序でAD発症に関係するか

a.apoEとAβ蛋白との関係

b.apoEとタウ蛋白との関係

c.apoE受容体の動態

e.神経細胞内のapoE

B.画像所見

1.X線CT所見:著明な脳の萎縮が認められ、側脳室下角の拡大が著明である。

2.MRI所見:前頭葉、側頭葉を中心とする脳溝の拡大、側脳室の拡大が認められる。また、海馬の萎縮も特徴的であり、海馬周辺の側頭葉内面の萎縮も著明である。

3.PET所見:一次感覚野・運動野の血流・糖代謝は保たれるものの、頭頂連合野、側頭葉、側頭・頭頂・後頭移行部の血流・糖代謝の低下が特徴的で、前頭葉の代謝の低下も認められることが少なくない。しかし、小脳、基底核の代謝は比較的保たれる。海馬の萎縮と大脳皮質の糖代謝に関連が認められる。軽度の記憶・知的機能障害時に頭頂葉の相対的な代謝の低下を示すが、認知機能障害が明らかになる以前も認められる。進行した例では、右半球の連合野の代謝低下とウェックスラー成人知能検査(WAIS)の動作性知能、特に視空間認知・構成能力の低下、左半球の連合野の代謝低下と言語性知能の低下が相関する。糖代謝量が中等度に障害されている部位では、多くの老人斑とそれを取り囲んだグリオーシスが主な所見であるのに対して、高度に障害されている部位では、神経細胞の高度の脱落、高度のグリオーシスが認められるが、老人斑は減少している。

4.SPECT所見:基本的にはPETと同じ所見が得られる。側頭・頭頂・後頭移行部の両側性の血流低下がみられる。重症になると前頭葉の血流低下も生じる。アルツハイマー型痴呆のほうが脳血管性痴呆よりも頭頂葉の血流低下が目立つことや重症度との関連も認められている。

5.脳波:病初期には目立った変化は見られないが、次第にα波の出現量と周波数が減少し、α波が乏しい印象を受けるようになる。さらに低振幅θ波の混入が見られるようになる。変化の程度は異なるが、加齢に伴う変化と同一方向の変化となる。痴呆症状と脳波の徐波化との間には相関を認めたとする報告は多く、α波の周波数の減少が著しいものほど、また徐波の混入が目立つほど脳の障害が重篤であると考えられる。痴呆が進行するとα波の出現はほとんど見られなくなり、速波もほとんど消失する。

C.症状

 1.症状

1)見当識障害

見当識障害は視空間的見当識が早期から著名となり、迷子や鏡現象が出現する。

2)人格の崩壊、幻覚・妄想・精神興奮

脳血管性痴呆との最も著名な相違点が人格の崩壊である。まるで精神病的な様相を呈し、気に入らないと暴れたり奇声を発したりして、本人だけでなく家族の日上生活にも支障をきたすようになる(何らかの問題行為を有するものは全体の約40%以上に達する)。特に問題となるのは、排泄した便をもてあそぶなどの不潔行為を行うことである。

3)作話・多弁

多くの人は多弁であるが、その内容は漠然としていてつじつまの合わないところは作話でごまかしたり、周囲の人に対して意地悪になったりする。自発語では保続が出現し単語や短い文章を繰り返したりする。その他反響言語や語間代(単語の最後を反復すること)も出現する。

4)進行性変化

漸増的に進行性であり、悪化の一途をたどる。薬剤などの治療で進行を食い止めることはできない。経過中進行が時に停止することもあるが、これはむしろ例外と考える。又、内科疾患での長期臥床がアルツハイマー型痴呆の発症のきっかけとなることもある。

5)病識

初期のアルツハイマー型痴呆の人は、初期から病識が消失しているため、極めて楽天的な場合が少なくない。

6)予後

ケアのあり方によって異なるが、後半の数年は目が離せない状態となる。

2.アルツハイマー型痴呆の進行と症状

 期 間

      症 状

第1期

(1~3年)

記憶:健忘(新しい事の記銘障害、学習障害、古い記憶の再生障害)

   失見当識(日時・場所・人の顔)

   コルサコフ症候群

   視空間能力低下

   構成力低下

人格:無気力

   抑うつ

運動系:正常

脳波:正常

C T:正常

第2期

(2~10年)

記憶:近時記憶、遠時記憶および記銘力の著名な障害、構成失行、

   着衣失行、観念運動失行、視空間失認、人物誤認、失計算、

   鏡現象、夜間せん妄、幻覚、妄そう状態

言語:代名詞失行、錯語、理解能力の障害、会話に参加し続ける事

   が困難

人格:無関心、無欲、無頓着、多幸症、人格の形骸化

運動系:落ち着きのなさ、徘徊、姿勢異常

脳波:基礎律動の徐波

C T:正常あるいは脳室の拡大、脳溝の開大

第3期

(8~12年)

知能:高度の認知障害、失禁

言語:目的の言葉と関連が遠い錯語、反響言語、構音障害

人格:無欲、無動、人格崩壊

運動系:ねたきり、四肢固縮、屈曲姿勢

脳波:全般性徐波

C T:著名な萎縮

3.アルツハイマー病型痴呆のリスクファクター

1)性格

・仕事が命のまじめで融通のきかない人

・社会性に乏しい人

・友人と付き合いの少ない人

・物事にこだわりやすい人

・マイナス指向の人

2)親の年令

老化とともに染色体異常が出現する可能性が高いことはよく知られており、高齢の親により染色体異常が出現することで、何らかの影響を子供に与えてしまう。

3)ペット

ペットなどからのウイルスの感染ではなく、ペットを飼う人の「ペット中心の物の考え方」によることが多い。脳の老化を防ぐためには、脳の働きを活性化することが大切である。そのために、ペットを飼っている人は、他人や近所の人の迷惑にならないよう気配りをするとよい。

4)利き手

アルツハイマー病とアルツハイマー型痴呆を比較した結果、アルツハイマー病は左利きの人に多いという統計があるが、その説明は病理学的にも明らかにはなっていない。

5)指紋

H.J.ワインレブらはアルツハイマー型痴呆の患者の指紋を調査した。アルツハイマ-型痴呆では指紋の内方流れ紋(C) の頻度が非アルツハイマー型痴呆の場合と比較して有意に高いという結果がだされた。これはダウン症にもみられる所見である。指紋は生まれる前からあるので、リスクの生物学的マーカーのひとつと言える。但しこの指紋は、頻度が高いというだけで、この指紋があるからといってアルツハイマー型痴呆になるわけではない。

6)喫煙

ニコチンの長期摂取はニコチン受容体の感受性を低下させ、痴呆を誘発する可能性がある。

(^_-)参考文献

医療学習レポート.アルツハイマー型痴呆


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