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v(・∀・*)前十字靭帯損傷の話


(~_~メ)題名:前十字靭帯損傷の話

■受傷機転

 最も多い受傷種目はスキーである。スキーではそのスピードと長いスキー板が受傷原因となる。次にバスケットボール、サッカー、アメリカンフットボール、バレーボール、ラグビーなどが続く。これらの種目はいずれも前後、左右あるいは上下方向への加速・減速力が伴うスポーツであり、サッカー、アメリカンフットボールな、ラグビーなどでは他の選手との接触あるいは衝突も加わってくる。

受傷者の申告に基づく受傷機転をみると、総計では着地の24、7%と最も多い機転となり、続いてスキーで転倒の22、3%、続いてタックル、ブロック、のしかかられの15、1%、ひねりの9,8%、次いでストップ、ジャンプ・踏み切り、カットなどが続く。これらの受傷機転は着地、ひねり、ストップ、ジャンプ・踏み切り、カット、ふんばった、後傾などの相手や物体などとの接触なしで生じる非接触損傷とタックルされたり、ブロックされたり、のしかかられたりして生じる接触損傷、さらにはスキーの転倒時のようにスキー板による回旋、内・外反などのモーメント力によって生ずる介達力型などに分けられる。前十字靭帯(ACL)損傷では非接触型の損傷がほぼ半数を占め。これがACLの受傷機転の特徴である。

非接触型の受傷機転では、着地、ストップ、カットなどのときの減速力、あるいはジャンプ、踏み切りなどのときの加速力とその瞬間の脛骨顆および大腿骨顆の位置関係が関わっているものと思われる。減速、加速時には大腿四頭筋力が強く作用し、それによる脛骨顆の前方引き出しが受傷の1つのメカニズムであろうと想像される。それは大腿四頭筋の測定中にACL受傷した症例や、スキー走行中の後傾位からの立ち直り時に受傷する症例などがそのメカニズムを示唆している。またMRIで明らかにされる大腿骨外顆中央部と脛骨外顆後部にみられる骨挫傷像およびX線上大腿骨外顆にときにみられるいわゆるabnormal lateral notch(異常外側切痕)は受傷時の大腿骨外側顆と脛骨外顆の異常な位置関係と外側への強い片側荷重を物語っている。今後この非接触型のACL損傷のさらなるメカニズムの解明が望まれる。

接触損傷はスポーツ種目上からほとんど男性で起こり、膝あるいは下腿の前面、外側、後面に相手が衝突あるいはのられて過伸展、外反、外旋あるいは大腿の前方押し出しなどの力によって生ずる。一般に非接触損傷よりも受傷のエネルギーは大きく、したがって側副靭帯、半月、関節軟骨そしてときには後十字靭帯あるいは骨の合併損傷を伴うことが多くなる。

 前十字靭帯(ACL)の損傷機転は多彩であるが、膝に外反ストレスが加わった状態で大腿四頭筋の筋力が作用して、脛骨の回旋と前方移動が同時に起こったときに生じることが多いと考えられている。すなわちACL単独損傷は、身体の接触による外力によっても生じるが、膝関節の他の靭帯損傷と異なり、大腿四頭筋の自家筋力による非接触型の損傷の頻度が高いのが特徴である。このため、急激なストップや方向転換(カッティング、サイドステップ、pivot shift動作)、ランニングからのジャンプや着地を繰り返すバスケットボール、サッカー、バレーボールなどの球技での受傷頻度が高い。スポーツ活動中の膝関節の外傷で関節血症を伴う症例の約60~65%に前十字靭帯損傷が存在するといわれている。また、いったん前十字靭帯が損傷すると、膝関節の前外側回旋不安定性による不安定感のために競技の継続が困難になることが多い。

 

■臨床症状

 非接触の損傷機転ではその瞬間、膝が「ガクッとなった」あるいは膝が「横にずれた」ような感触とともに受傷する。受傷時、断裂音(pop)を聞くあるいは感じることが多い。受傷時あるいは直後に疼痛を感じることはむしろ少ない。膝は力が入らない不安定な感じとなり、スポーツ活動の継続は通常不可能でリタイアする。

受傷後2時間後くらいから徐々に腫脹し始め、熱感が生じ同時に疼痛が生じてくる。これは関節血症のためであり、それによって運動痛、ROM制限、跛行などの運動障害、ADL障害が生じてくる。

湿布や局所安静などで自然経過にまかせた場合は、腫脹、疼痛などの局所症状は受傷翌日から2日間くらいが最大で、1週間後くらいから消退し始め、4~6週間くらいでADL活動はほぼ支障がなくなる。もしスポーツ活動を再開した場合はランニングなどの直線走行は支障はないが、加速・減速力のかかる動作ではACL不安定性現象である膝崩れ(giving way)が生じ、この現象あるいはそれへの不安感のために十分なスポーツ活動は行えなくなる。

 

急性期には疼痛と関節血症による腫脹を認め、多くの症例では関節可動域制限を生じる。また疼痛に対する防御反応で筋収縮が生じ、関節の弛緩が得られないので徒手検査による関節不安定性の検出は困難なことが多い。ただし、これらの急性期の症状はきわめて軽度のこともある。

通常数週間の局所の安静により疼痛、腫脹などの急性症状は消退し、その後スポーツ活動などに復帰すると膝崩れ(giving way)を自覚するようになる。日常生活動作が障害させることは少ない。急性期をすぎて関節可動域が正常に近づくと徒手検査により関節の前方不安定性、前外側回旋不安定性の検出は容易となる。

初回受傷時に診断されずに放置された場合、膝崩れの頻度が増すにつれて、活動中の脛骨の異常な前方移動や回旋により半月板に剪断力が生じ、半月板の後節が損傷され、日常生活動作でも疼痛、関節水腫、嵌頓などが生じ機能障害が出現する。この時点ではすでに関節軟骨にも変性が生じていることが多い。

 

■診断

・徒手検査法:前方引き出しテスト

Lachmanテスト

Jerkテスト(pivot shiftテスト、Nテスト)

 

・器械を用いた定量的前方不安定テスト

 

KT-2000という機器を用いて、脛骨前方偏位を測定することができる。同様に後方への偏位量も測定することができるため、後十字靭帯損傷にも用いることができる。

 

・関節可動域検査

①膝蓋骨の滑動性

②過伸展の有無の確認

 

■画像診断

 単純X線では大腿骨外側顆遠位関節面に側面像で見られるlateral notchが異常に深い(2mm以上)いわゆるabnormal lateral notchがある場合ACL損傷が強く疑われる(図3-21)。また外側中央1/3の関節包脛骨付着部の剥離骨折であるSegond骨折がある場合もACL損傷が疑われる。

MRIはACLの診断にきわめて有力であり、不安定性を呈していない不全断裂でも描出可能という意味ではあらゆる診断法のなかで最も鋭敏といえるだろう(図3-23)。またACL断裂のときに生じるbone bruise骨挫傷とよばれる骨傷は受傷3週間以内では100%近い頻度で描出され、その意味で診断価値がある。

 

 ACL損傷の画像診断には、単純X線写真、ストレスX線写真、MRIなどが用いられる。

単純X線写真では、ACL脛骨付着部の剥離骨折や、ACL損傷に特有な外側関節包脛骨付着部剥離骨折(Segond骨折)に注意する。Segond骨折が認められればACL損傷が合併していると考えてよい。陳旧例では、脛骨の内側顆間隆起の尖鋭化が特徴的な所見である。

ストレスX線写真は、膝関節(脛骨顆部)に徒手的に、または械器を用いて前後方向のストレスを加えて側面像を撮影し、大腿骨に対する脛骨の移動比を計測する方法で、野沢法、中点計測法(村瀬)などがある。

近年最も利用されているのはMRIによる診断である。撮影条件としては、T1、T2強調画像や、プロトン密度強調画像が用いられる。新鮮損傷ではACLは実質内の浮腫や出血などにより、膨化した高輝度の画像として描出され、受傷時の骨挫傷による骨髄内の輝度変化も鋭敏にとれえることができる。陳旧例では靭帯は消失したり弛緩した画像として像として認められることが多い。

 

■関節鏡検査

陳旧性ACL損傷では、画像と徒手検査により病態の把握がほぼ可能であるが、新鮮損傷では損傷靭帯の評価や他の関節構成体の合併損傷の検索のために診断的関節鏡検査を行うことも有用である。MRIでは診断できない関節軟骨損傷が関節鏡で初めて判明することもまれでない。

 

■治療

≪術前のポイント≫

術前に注意すべき点が2つある。急性期損傷例では通常ROM制限がある。そのままで再建術を行うと術後のROM制限に苦しむことがある。手術の方針が決まったらただちに積極的な(active、self-passive、またはassistive)ROM訓練を行わせ、ROMが全域になるまで待たなければならない。通常2~6週間かかる。第2に陳旧例では必ず大腿四頭筋萎縮があり、そのまま再建術を行うと術後の筋力回復に手間どる。術前に積極的にハーフスクワット、負荷step-up訓練、自転車エルゴメーターなどで1~3ヶ月間筋力訓練を行わせなければならない。

 

筋力は大腿四頭筋もハムストリングスも健側の約80%に低下している。大腿周径も差が出ていることかが多いため炎症症状の鎮静化を待って術前から筋力トレーニングを行う。

 

≪ACL損傷の治療法≫

*移植腱の引っ張り度強度は、移植後数週で移植前の10~15%にまで低下し、以後漸増するものの、正常靭帯と同等にまで回復するのは期待し難い。

 

①再建術

手術法には関節に小切開を加えて行う方法と、関節鏡視下に行う方法がある。

再建法には多くの方法がある。

①再建材料を選択する方法

②骨孔製作法

③substituteの骨への固定法

によって大別される。

substituteとしては腸径靭帯、骨付き膝蓋腱(BTB:bone-tenddon-bone)、半腱様筋腱(St)と薄筋腱(G)(STG:semitendinosus-glacillis tendon)などの自家組織、同種組織移植、人工靭帯などが用いられているが、それぞれに長所・短所がある。

自家組織

同種腱

人工靭帯

BTB

STG

初期強度

≧正常ACL

≧正常ACL

≧正常ACL >正常ACL

採取部位

膝伸展機構

膝屈筋腱

健常組織の犠牲なし 健常組織の犠牲なし

採取可能な量

限られている

限られている

供給が限られている

十分

再建後の強度低下

あり

あり

あり

少ない

主な合併症

graft採取部位の疼痛 自動的膝屈曲角度の低下採取腱の個体差 Disease transmission wear particleの発生

 

骨孔の作製法には1皮切法と2皮切法がある、また骨への固定法としては種々のstaple、interference screw、endobuttonなどがある。実際の手術はこれらの組み合わせによって行われ、その選択は個々の術者によって異なっている。現時点では

・BTBをinterference screwで固定する方法

・STGをendobuttonを用いて固定する方法

・STGと人工靭帯を組み合わせて用いる方法

・STGをinterference screwで固定する方法

などを選択する術者が多い。

interference screw

骨付き膝蓋腱(BTB)を骨孔内で固定するする方法としては、1987年Kurosakaらは骨孔内でsubstituteの骨片部分を骨孔壁にpress fit させるscrewを開発し、その力学的強度が従来のscrew、staple、buttonと縫合糸などによる固定法よりも優れていることを報告した。従来よりBTB法はsubstitute自体の強度が優れていること、靭帯骨付着部を温存できることなどの利点が指摘されていた。さらにinterference screwの導入により強固な初期固定力が得られていることから、BTBをinterference screwで固定する方法はACL再建術の“golden standard”として広く行われるようになった。その後、手術法は2皮切法から1切法に発展し、interference screw自体もguide wireを介して挿入可能なcannulated typeとなり、さらに最近では吸収性素材のものも開発されている。

interference screwによる固定法の最大の利点は靭帯再建直後の固定間距離が短いことである。再建材料の力学特性と断面積が等しければ、加わる伸展負荷に対する再建靭帯の伸び(変形)は固定間距離に依存する。骨孔の関節外開口部付近で固定する他の方法では、骨孔内に生物学的固定が起こるまでの期間は、再建靭帯の固定間距離は正常ACLに比べて長くならざるを得ない。この点interference screwによる固定では、より正常ACLに近い靭帯長で固定できる利点がある。

interference screwの問題点としては、挿入時にsubstituteを傷める可能性があること、再再建術時に抜釘が困難な場合があることなどが指摘されているが、いずれも本法の利点を打ち消すほどのではない。BTBを用いた再建法は、substituteの採取部位に疼痛が残存する症例が存在することから、近年STGを用いる再建法が行われているが、interference screwはSTGとの組み合わせでも用いられている。

 

endobutton

1994年Rosenbergらは、大腿側の初期固定に特殊なボタン(endobutton)を用いる1皮切法のACL再建手技を報告した。

この方法の最大の利点は、大腿骨側の皮切を必要とせずに、さまざまなsubstituteを用いた再建術に被殻的簡便に応用可能な点である。

endobuttonの導入で大腿側の初期固定方がより容易になったことにより、一部の症例に採取部位の疼痛が残存するBTBを用いる手術法に代わって、STGを用いた1皮切法によるACL再建術が普及した。

endobuttonによる固定法の問題点は、ブラインド操作のためにⅩ線コントロールを要することがあること、および再建直後の固定間距離が長い点である。再建直後の固定間距離が長い場合、術直後から関節運動を行う近年のリハビリテーションプログラムでは、substituteが骨と癒合前に骨孔内でmicromovementを生じ、いわゆるバンジー効果によって骨孔の拡大が起きる可能性が指摘されている。このためSTGにinterference screwを応用する術式も用いられているが、骨孔拡大と臨床成績は関連がないとする報告が多く、今後の検討課題となっている。

 

近年のACL再建術は、半腱様筋腱、薄筋腱を用いた三重法が行われている。本法の特徴は

①膝伸展装置に影響を与えないハムストリング腱を用いること

②できるだけ太い再建靭帯を作ること

③大腿骨側はinsidr-to-out法により、ワイヤーを狙った場所に刺入しやすいこと、また大腿外側部への手術侵襲を最小限にすること

④人工靭帯を再建靭帯の長さの補助として用い、かつ再建靭帯を短くするのに役立たせるということ

ステップ1:半腱様筋腱(St)・薄筋腱(G)の採取。

下腿下端内側に5㎝の皮切を加えtendon stripperを用いて半腱様筋腱(以下St)および薄筋腱(以下G)を採取する。通常21~27cm程度採取できる。脛骨付着部はそれぞれ切離する。

ステップ2:大腿骨目標点へのガイドKワイヤーの刺入。

鏡視は脛膝蓋靭帯孔を用いる。骨孔を設ける大腿骨外顆顆間窩壁の遺残ACLや滑膜をシェーバーなどで郭清する。膝蓋下内側穿刺孔よりKワイヤーの外套をさし入れ大腿骨目標点に先端をあて、直径2、4mmのガイドKワイヤーをinside-to-outに刺入する。

このとき膝は屈曲130~135°程度の深い屈曲位にしておくKワイヤーの先端は大腿骨外側の適切な位置に出てくる。

この刺入時刺入開始からKワイヤーの先端が皮質にあたるまでの距離を計測しておく。目標点は大腿骨後顆関節面の軟骨・骨境界から顆間窩の屋根に平行に前方へ7~8mm、屋根から下方へ5mm程度の点である。

 

ガイドKワイヤーを刺入したら、Kワイヤーの尾端の穴に1号糸を結びつけ、後のlength change計測用とする。

このKワイヤーは尾端がちょうど大腿骨外顆顆間窩面に至るまで外側へ抜いておく。この時点で計測用糸は内側穿刺孔から出ている。

 

ステップ3:脛骨へのガイドKワイヤーの刺入。

市販のガイドを用いてoutside-to-inでACL脛骨目標点に2。4mmKワイヤーを刺入する。目標点は外側半月前角の内(遊離)縁の延長線よりも2~3mm程度で、かつ内・外顆間隆起の中央よりも内側よりである。

この脛骨骨孔は伸展位で再建靭帯が顆間窩の前面の出口および大腿骨外顆の顆間縁にあたらない(インピンジ)位置につくることも1つのポイントである。このことに留意して脛骨骨孔の位置決めを行えばいわゆるnotch plastyは不要である。

ステップ4:X線撮影。

膝最大伸展位で前後、側方向のX線を撮影する。この目的は脛骨側ガイドKワイヤーの位置を確認するためである。前後像ではKワイヤー先端が内・外顆間隆起の中央よりも内側にあること、側面像ではKワイヤーの先端がBlumensaat線の延長よりも4~5mm後方に位置することを確認する。不適切な位置であればKワイヤーを再刺入する。

ステップ5:length changeの計測。

脛骨に刺入したガイドKワイヤーを抜き、その2、4mmの穴から大腿骨目標点を刺入したガイドKワイヤーの尾端に結びつけた1号糸を引き出す。

そのときSuture Retrieverを用いると便利である。Isometerを糸につけ0°~120°の間でlength changeを計測する。それが5mm以上のときは大腿骨側Kワイヤーを再刺入再計測する。この計測糸の脛骨出口までの長さを計測しておき、脛骨部分の長さから関節骨孔間長さがわかる。

 

ステップ6:triple-St・Gの作製。

St・Gを三重に折り返し両端に幅3mmのポリエステルテープ(Telos)をとりつけて、ステップ5で計測した関節内骨孔間長に骨孔内長2㎝を加えた再建靭帯長=(骨孔間長+2。0×2)cmの長さで再建靭帯を作成する。骨孔間長は通常2㎝前後であるから、再建靭帯長は6cm前後となる。

ステップ7:骨孔の作成。

大腿骨のover drillingはガイドKワイヤーをもう一度尾端を膝蓋下内側穿刺孔から外へ引き戻し、屈曲135°位の深屈曲でinside-to-outに行う。再建靭帯の太さを直径ゲージで計測し、その太さで(通常8~10mm)2。0cm大腿骨をover drillする。さらに直径4。5mm穴あきドリルビットに変えて、残り大腿骨皮質まで穿孔する。骨孔ができたら、ガイドKワイヤー尾端の穴に5号糸でループをつくっておく。

次に脛骨を再建靭帯の太さでoutside-to-inにover drillingする。大腿骨用ガイドKワイヤーを大腿骨側へ押し込みKワイヤー先端を大腿骨外側皮膚外へ出す。Kワイヤーを皮膚上から触診して大腿骨骨孔出口を同定し、その部位に尖刃にて8mm程度の穿刺創をつくり、コッヘル鉗子などで鈍的に骨孔まで通路を設ける。

ステップ8:再建靭帯の関節内への導入と大腿骨側の固定。

大腿骨ガイドKワイヤー尾端につけた5号糸ループを鏡視してプローブを用いて脛骨骨孔から外へ引き出す。この5号糸ループに再建靭帯のポリエステルテープを取り付けて、大腿外側に出ているKワイヤー先端を引き、5号糸ループが皮膚外まで現れるまで引き、その時点でコッヘル鉗子を大腿外側の穿刺創からさし入れて5号糸ループを把持する。5号糸ループをガイドKワイヤーの尾端で切り、次にコッヘル鉗子を穿刺孔から引き出す。5号糸ループに引き続いて今度はポリエステルテープが穿刺孔から引き出される。膝屈曲30°にてポリエステルテープを十分に緊張させる。特製の金属製ボタンにポリエステルテープを通し、穿刺創の小さな創に特製のノットプッシャーを用いて三重結紮する。3回目の結紮には2号縫合糸をかけて、ポリエステルテープがゆるまないように結紮する。

ステップ9:脛骨側の固定。

次に脛骨孔出口から出ているポリエステルテープを十分緊張をかけたうえでdouble staplingによって固定する。

 

②保存的(放置)療法

保存的療法とは断裂ACL自体にはなんら手をつけないいわば放置療法である。内容は、受傷直後は積極的なアイシングにより局所の腫脹の消退を図り、同時にROM訓練と等尺性筋力訓練を行わせて急性期症状を早期に鎮静化させる。ギプス固定は拘縮を作り、筋萎縮を早めるため行わない。その後は等張性筋力訓練により筋力低下を防止し、同時に加速・減速を含むスポーツ種目を避け、生活とスポーツ活動をACL不全膝に合わせていこうとする方法である。

③保存的修復術

保存的修復術とは、急性期に関節鏡下に最小限の侵襲による断裂端の整復・固定を行って可及的にACL断裂の自然修復を期待しようとする方法である。適応は

①軽い不定期なスポーツ活動を行う者

②再建術の適応だが、スポーツ活動に期限のある者

のようである。保存的修復術の場合は術後2ヶ月後からランニングが再開できる。

方法としては、通常受傷後2週間以内、最長3週間以内に行う。それ以後は断裂部の萎縮があり不可能となる。その損傷形態で最も多い大腿骨付着部および近傍の断裂では、ACL線維束をプローブにより修復し、灌流液を排除し、代わりに空気を入れフィブリンを断裂部に注入しACL線維束を大腿骨付着部に押し付け、1分間くらい保持する。

ACLの前面の滑膜に断裂があり、その部から断裂線維が花が咲いたように噴出している場合は、その線維を破れた滑膜孔から内部へ還納し、破れた滑膜孔を同様にフィブリンでシールする。

ACLの大腿骨付着部、中間部などズタズタに断裂がある場合は、可及的に断裂線維を1つにまとめ(空気関節鏡下で行うとまとまりやすい)、全体にフィブリンをかけて固める。屈曲30°、後方押し込み位でLMBで外固定する。

術後療法

術後3週でLMBを可動とし、徐々にROMを拡大し術後6週で除去する、ランニングは8週後から許可する。

 

④一次修復術

一時修復術とは、急性期に関節鏡下に糸をかけ(通常3糸)大腿骨側にpull outして縫合する。保存的修復術よりも術後の安定性はよいが、いまだ長期結果は明らかでなく、適応については慎重を期すべきである。

 

≪術後療法≫

再建術後の治療プログラムのポイント

・自家移植でのACL再建術後早期は、その強度が正常ACLよりかなり低下している。

・ACLの緊張は大腿四頭筋を収縮させると、膝関節伸展位において受動的な屈伸より明らかに高まる。また、OKCで大腿四頭筋に負荷を与えるとACLは強く伸張されるが、squatのようなCKCではその伸張は少ない。

・術直後も術前と同様な対処を継続し、早期に0~130°の関節可動域を確保する。特に伸展制限は歩容などに大きく影響するので他動的には早期に確保する。

・再建ACLに与えるストレスは荷重量の増加よりは膝の屈曲角度や体幹の前傾角度の違いが影響する。下腿の前方移動を抑制しながら、大腿四頭筋の筋力強化運動を行うには、①膝屈曲域(70°以上)で行う

②抵抗を下腿の遠位ではなく近位にかける

③ハムストリングスとの同時収縮で行う

④CKCで行う

などが考えられる。

・術後に内側広筋の萎縮が認められることが多く、特に速筋線維の萎縮が強いといわれる。

・術後にextension lagが認められる症例も多い。

・ハムストリングスの収縮はACLと共同的な働きを持つため、積極的な筋力強化運動が必要である。

・半腱様筋腱・薄筋腱を使用した再建術後には膝屈曲域での筋力低下が認められる症例が多い。

・ACL再建術後の理学療法に限らず、ゴールをスポーツ復帰とする者には早期から有酸素運動を行わせることが必要である。

 

ACL再建術後の理学療法プログラムはその術式によっておのずと異なり。同じ術式でもそのプロトコルは加速化されてきている。どのような術式であれ、 ACL再建術後の理学療法において重要なポイントは再建靭帯へのリスク管理であり、特に膝伸筋強化の際に注意が必要となる。再建に用いられる移植材の強度は報告されているが、術後における不安定性再発の予防という点からは「大腿骨一移植材一脛骨」という複合体で考える必要がある。つまり移植材の強度だけでなく、移植材の大腿骨・脛骨への固定力や骨孔の位置の違いによる再建靭帯の長さの変化などが問題となる。さらに、各種の訓練によって加わるストレスとこの複合体としての強度やその回復過程の関係は明確にされていない。以上のことと症例のスポーツレベルや運動能力の違いなどの関係もあり、単に再建術後の経過時間でプログラムを決定することはできない。理学療法士としては術式を十分理解するとともに、医師からの情報を得ながら個々に対応する必要がある。筆名の病院での半腱様筋腱・薄筋腱を用いたACL再建術後での理学療法プログラムを紹介する(表6)。術後の経過時間とプログラムの関係は一つの目安であり、その内容も試行錯誤を重ねながら現在も変化している過程である。

①RICE処置

ACL再建術に限らず術後の炎症症状が強い時期にはアイシングを主体としたRICE処置を行う。以前は電動ポンプにより冷水を循環させる冷却機器を使用しアイシングしていたが、経済的理由(当院の場合対象者が非常に多く、故障も多い)、騒音などの問題から現在は通常のアイスバッグを使っている。

②関節可動域訓練

ギブス固定は行わず、術後2日目より病棟においてCPM(continuous passive motion)によるROM 訓練を20~90°より開始する。術後7日目より訓練室にて愛護的なROM訓練を0~130°目標に開始する。この時期のROM訓練の具体的な方法としては、背臥位で壁に足底をつけ下腿の自重を利用し膝蒲の屈曲を行う方法(wall slide)や長座位で足底の摩擦が少ないような状態にして自分の于で膝の屈曲を行う方法(heel slide)を行わせている。また最終伸展可動域の改善目的にはrocking motion

を利用した簡易的膝矯正器を作製し使用している。この機器は半楕円形をしており、それが倒れることで下肢に牽引力が加わり、膝関節の伸展域の改善が効果的に行える。

③荷重・歩行訓練

術後7日目より1/3荷重より歩行訓練を開始し、2週間程度で全荷重としている。荷重量が再建ACLに与えるストレスは明確ではなく、それよりは。膝の屈曲角度や体幹の前傾角度の違いが影響するので荷重量は一つの目安とし、腫脹が軽減し、荷重に耐えうる能力が準備されていれぱより加速してもよいと考える。

④筋力強化訓練

下肢の筋力強化訓練はスクワットやレッグプレスのように足底に荷重をかけた状態で行うCKCとレッグエクステンションやレッグカールのように足部が接地せず自由になった状態で行うOKCに大別される。膝不安定性に対して、動的安定要素である膝屈伸筋を強化することは非常に重要となる。しかし、レッグエクステンションのような方法で大腿四頭筋を強化すると伸展域で脛骨の前方移動を引き起こしてACLを伸長し再建靭帯を損傷しかねない。大腿四頭筋単独収縮訓練を行う場合、膝屈曲70°以上であれば前方引き出し力は生じないといわれており、大腿四頭筋の筋力強化訓練はこの角度を考慮した屈曲位での等尺性収縮から開始することが安全な力法といえる。さらに、大腿四頭筋の筋力強化訓練を伸展域で施行する暢合、通常のような下腿遠位抵抗で・なく、近位抵抗が推奨されている。具体的にはゴムチューブのような弾性力のあるバンドを下腿近位に強めに掛け、これを抵抗とする。このような弾性バンドは膝が伸展するほど伸ばされ、より強い張力が・発生するので前方剪断力を抑える効単が期待できる。大麗四頭筋の筋力強化訓練における膝関節の前方剪断力を減少させるもう1つの方法として膝屈筋を同時に収縮させる方法がある。膝屈筋の収縮は膝関節の前方剪断力がCKCがOKCより少なくなる要因の1つに挙げられており、同時収縮を行うことで単独収縮よりもさらに伸展域で前方剪断力を生じず人腿四頭筋の筋力強化訓練が可能といわれている。しかし、OKCの状態で強い同時収縮を得ることはかなり難しい。そこで筆者はバネばかりを利用した膝屈伸筋の同時収縮訓練をサスペンション・レッグプレスと称して施行している。具体的な方法は、ベッド上に長座位となり、両手でベッドの端を握り骨盤を固定する。次にオーバーヘッドフレームなどに吊した100kg用バネばかりを介したパッド(訓練用吊帯を改良)に大腿遠位部を入れ、股関節伸展動作でバネばかりを引き下げる。さらにこの状態を維持しながら膝関節を伸展する。「①股関節の伸展で膝屈筋でもあるハムストリングスの収縮、②膝関節の伸展で人腿四頭筋の収縮」という同時収縮を得ることができる。筋電図での解析の結果では、膝屈伸筋ともに筋力強化が可能な収縮が行われていることが確認されており、この方法はOKCでありながらCKCに類似した筋収縮様式の筋力強化訓練としてACL再建術後の訓練だけでなく、積極的に行っている内側広筋の萎縮の問題に対しては、積極的に運動負荷ができない時期は、許容できる範囲で電気刺激を高出力にして施行している。ハムストリングスの単独収縮は膝屈曲角度に関わらず常に後方引き出し力として作用するので弾性力のあるバンドを使用したレッグカールを積極的に行わせ、筋力強化のレベルに合わせてマシンを使用したレッグカールヘ移行する。しかし半腱様筋腱・薄筋腱を用いた再建術の場合、膝の屈曲を行うことでハムストリングスが収縮し、腱の採取部に疼痛が発生することがある。このような症例に対しては、疼痛が軽減するまで膝伸展位のまま股関節を伸展する動作でハムストリングスの収縮訓練を行わせる。 荷重が可能な状態になればレッグプレスやスクワットのようなCKCでの筋力強化訓練を開始する。  CKCでの訓練は膝関節での前方剪断力が少ないという理由だけでなく臨床的な評価からもその有用性は認められている。しかし、通常のスクワットでは膝屈伸筋の取縮が弱く、筋力強化という観点からはOKCより劣る。そこで筆者は重量負荷を増加させずにCKCの状態で、より強い筋収縮を得ることを目的に、不安定阪上でのスクワットや片脚立ちでの反対脚のスウィングなどを行わせている。筋電図を用いて検討した結果からも、安定した状態で行うよりもより強い収縮が確認されており、不安定板を使用した訓練は、 CKCでの効果的な筋力強化という視点からも施行されてよい訓練と考える。マシンを使用したレッグプレスにおいては同じ抵抗量でも股・膝関節の屈曲が大きいほど関節にかかるトルクは大きくなる。そのため開始肢位が適当抵抗量であれば。それより伸展することで適当以下の抵抗量となる。また最大抵抗量で行っても、股・膝関節の屈曲角度の違いにより参加する筋の活動量が変化する。この点を考慮して、開始肢位(股・膝屈曲角度)をいくつかに分けて行う。半腱様筋腱・薄筋腱を使用した再建術の場合、膝関節屈曲域でのハムストリングスの筋力低下が 認められる症例が多い。そこで足底に荷重しながら、膝屈曲位でのハムストリングスの筋力強化訓練として背臥位から患側下肢と両上肢で体重を支持して、さらにハムストリングスの収縮を意識しながら膝を深く屈曲することで体重を下肢で支える方法や下腿部をロールに乗せ、そのロールを引くように膝を屈曲させながらのbridgingなどを行わせている。さらに、再受傷予防の観点から重要であるtwistingを行わせる。この際、母趾球に体重を乗せ膝関節と足尖方向が常に同じ方向に向くように意識する。開始当初は床面の摩擦を少なくした状態で行っている。また、膝に回旋ストレスが加わらないような方向転換の練習としてwalk and turn を行わせる。ACL再建術後の大腿四頭筋の機能障害の1つとして伸展不全(extension lag)が認められることが多い。これに対して、 OKCの訓練では弾性バンドによる下腿近位抵抗での膝最終伸展域訓練 (terminal knee extension exercise)を行わせている。この方法は伸展域での大腸四頭筋の収縮で生じる膝関節での前方剪断力を抑制しながら行えるものである。さらにCKCの訓練としては、大腿遠位郎lこ弾性バンドを掛けて、これを引き伸ばすように最終伸展を意識したスクワットを行わせている。

⑤有酸素運動

ACL再建術後の理学療法に限らず、ゴールをスポーツ復帰とするアスレチックリハビリテーションにおいて、早期から有酸素運動を行わせることは必要である。訓練室内で行う有酸素遷動としては自転車エルゴメーターやトレッドミルを使用する方法が一般的であるが、ACL再建術後の早期におけるCKCでの有酸素運動として「階段登高型トレッドミル(step machine)」を使用した足踏み運動を行わせている。この運動様式はスクワットに近く、筆者らの研究では、同等の運動負荷時の走行と比較すると股・膝・足関節の運動域が小さく、上下の加速度が小さいことから走行よりも下肢閥節への垂直反力が少ないことが推察されている。

⑥スポーツトレーニングと筋力

ランニングなどのスポーツ基本動作の開始は再建術後おおよそ4ヵ月後としているが、等速性筋力の評価値も併せてスポーツトレーニングの開始の指標とする。ジョギング開始の値としては健側比(患側筋力の健側筋力に対する比率)で40%とする報告や60%とする報告などがあり一定でない、筆者らは建側比70%をジョギング開始の目安としている。その後、膝の不安定感や疼痛などに留意しながら、ランニング、ステップ、カッティングなどのスポーツ活動に必要な卜レーニングを進めていく。

⑦競技復帰と筋力

競技復帰は、再建術後約10ヵ月を目安としているが、疼痛や不安定感などの自覚症状とともに等速性筋力の評価値を競技復帰の指標の1つとしている。健患比のみで筋力を評価すると健側の筋力低下によっても比率が向上してしまい不適切な評価となるので絶対値での評価が必要である。膝伸筋を中心にスポーツ選手としての等速性筋力の指標が報告されている。それらによると、60deg/secのピークトルク値で体重比(ft・lbs単位で筋力の体重に対する比率)が男性1.2.女性1.0とする報告やスポーツ活動には体重比0.8以上の最大等尺性収縮筋力が必要で、競技スポーツとして1.3以上を獲得しなければ傷害の危険があるとする報告がある。しかし、等速性運動器には機種が多く、機種によっての測定値のばらつきが認められておりスポーツ復帰の筋力指標を画一的に決めることは難しい。

⑧ACL損傷と膝装具

膝装具はその目的から受傷を避けるための予防用、運動範囲を制限するりハビリテーション用、不安定膝に安定感を与える機能用などに分類される。多くの種類が販売されるなかで、静的な効果判定ではシェルタイプのものに前方動揺に対する制動効果があるとされる。しかし、膝関節の自動伸展運動時のACLの伸長に対する抑制効果は認められておらず、さらに固有受容性という面からの効果も否定的な意見がある。このようにACL損傷における膝装具の客観的効果は疑問視されているにもかかわらず、臨床ではACL再建術後において膝装具が使用される場合がほとんどである。この理由として、患者自身が安心感をもつこと、さらに多数の患者に対応しなくてはならない臨床において、装具を装着することで監視下以外でも運動制限期問であることを患者に常に認識させることで、安全に理宇療法を遂行したいという願いがあるからであろう。筆者の病院では再建術直後はいくつかのサイズ別に用意されたシェルタイプの既製の膝装具を貸し出しし。腫脹が軽減し、荷重下で積極的な理学療法が可能となる時期に採型をもとに作製した患者本人用のシェルタイプの膝叢具を処方している。この装貝は術後4ヵ月頃から歩行時のみの装着とし、6ヵ月頃から本人の不安感がなければスポーツトレーニング時も非使用としている。

(^_-)参考文献

医療学習レポート.前十字靭帯損傷


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