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v(・∀・*)多発性硬化症の話


(@_@。題名:多発性硬化症の話

・概念

・多発性硬化症multiple sclelosis(MS)は、中枢神経系の白質部に複数の脱髄巣を生ずる脱髄性の疾患であり、神経興奮の伝導の遮断または遅延が生じ、その結果発症するものと考えられている。

・臨床的には、中枢神経(大脳、脳幹、小脳、脊髄など)症状やそれに引き起こされる障害が二つ以上見られ、緩解と憎悪を繰り返す慢性疾患である。

 

1.概要

1)脱髄とは

・中枢神経は無数の神経細胞で構成されており、複雑な神経機能を可能とする。

この神経細胞には、働きによりいろいろな形態のものがあるが、基本的には神経細胞体とそれから伸びる神経線維からできている。この神経線維は中心にある軸索(axon)と、それを幾重にもとりまく髄鞘(myelim)から成り立っている。

・神経細胞間の興奮伝達は軸索を伝わるが、髄鞘はこの伝導が速やかに行われるために重要であるとともに、隣接する神経線維間における絶縁の働きももっている。

・脱髄とはこの膜構造物である髄鞘が崩壊する現象をいう。炎症反応を介する急性期の脱髄では、脱髄神経のみならず周辺の神経線維の伝導も低下するため症状が強く出現する。しかし、炎症症状が沈静化すると周辺の神経伝導は回復するため、脱髄神経の回復の程度によりその症状が決まることになる。

・多発性硬化症は、髄鞘が一次的に脱落する病気をいうが、この一次的というのは、神経細胞や軸索はあまり冒されずに髄鞘のみが選択的に障害されることを示している。但し、軸索の変化の程度は原因・症例・部位などによって異なり、軸索変性が全くみられないものからウォーラー型変性に近いものまである。

 

2)発症

・前述のように、髄鞘が侵されると神経興奮の伝達は正常な跳躍伝導はできず、電流が脱髄間をシャントしてしまい末梢に流れる電流は減弱し、伝導遅延や伝導ブロックが生じ、その結果神経脱落症状が出現、すなわち、発症となる。

・中枢神経系(大脳、小脳、脳幹)、視覚系(視神経交叉)、脊髄(特に皮質脊髄路、後柱)および大脳白質(神経線維や髄鞘が存在する)に限局性の脱髄病変で始まり、幾つかの型を示す休止期を経る。

・また神経核が侵されることは少なく、中枢神経系のみならず、末髄神経系も高頻度に障害されるという傾向がある。

・その後、多彩な神経症状を示す寛解期-remission(症状の軽減)と再発-exacerbation(増悪)を繰り返す(時間的多発性)。また脱髄巣は多発するため多彩な神経症候が重複して起こる(空間的多発性)。

・寛解の程度、休止期の長短、再発の回数は症例によって異なる。

 

3)原因

・病因としては、長時間の潜伏期後に発病する、いわゆるスローウイルスslow virus感染と自己免疫疾患、またはその両者が関与しているという可能性が考えられているが、その本体はいまだ明らかにされてはいない。また、発症の誘引として過労、外傷、感染があげられている。

 

4)発症頻度

・わが国での多発性硬化症の有病率は人口10万人に対して1~4人と少ない。好発年齢は30歳台をピークに15~50歳代で若年成人に多い。小児や高齢者には比較的稀である。また男女比では、女性の発症が多い傾向がみられる。

・世界的に見ると有病率は欧米白人に高く、アジアでは比較的まれな疾患である。北米、北ヨーロッパでは10万人に対して30~70人である。

 

5)診断確定

①特異な臨床経過

②髄液検査;総蛋白の軽度ないし中等度増加、免疫グロブリンG(IgG)が高値、オリゴクローナルバンドの出現が参考。

③CT、MRIによる脱髄斑(demyelinating plaque)の確認

④電気生理学的検査法(誘発電位);体性感覚誘発電位(SEP)、視覚誘発電位(VEP)、聴性脳幹反応(ABSR)などであり、これらにより視神経、体性感覚路、脳幹の顕在性病変、潜在性病変の検出に有効である。

⑤磁気刺激運動誘発電位(錐体路障害の評価);病巣の推定

・多発性硬化症診断のための特異的な症状や検査所見はない。しかし近年の画像診断、特にMRIの普及により細かな病巣の確認が可能となり、従来の神経学的診察や、電気生理学的検査法ではあきらかにできなかった病変の診断や治療効果の分析が可能になってきた。しかしこれらの検査所見が臨床症状や経過と必ずしも一致していないことには留意しなければならない。

・以下に代表診断基準として用いられる厚生省特定疾患免疫性疾患調査研究班の診断基準とPoserらの多発性硬化症診断基準を示す。

 

表 多発性硬化症の診断基準

主要項目1.中枢神経系に2つ以上の病巣がある(症状、理学的所見、検査所見を合わせて)2.症状の寛解・再発がある(時間的多発性)

3.他の疾患(脳血管障害、血管腫、ヒトTリンパ球向性ウィルス脊髄症、膠原病、Behcet病、脊髄空洞症、脊髄小脳変性症、頸椎症性ミエロパシー、SMON、梅毒など)による神経症状を鑑別しうる

診断分類

1.剖検確認例

2.臨床的に診断確実なMS:主要項目の3つをすべて満足するもの

3.視神経脊髄炎(Devic病):両側性視神経炎と急性横断性脊髄炎が数週間以内の間隔で相次いでおこるもの

4.MSの疑い:主要項目の3つを完全に満足するわけではないが、MSが強く考えられるもの

参考事項

1.成人に多く発症し、小児や高齢者には比較的稀である

2.髄液の細胞、蛋白とも軽度増加することがあり、IgG増加、オリゴクローナルバンド、塩基性蛋白を認めることが多い

3.CT、ERI、誘発電位にて潜在性病巣が検出されることがある

 

表 PoserのMSの診断基準

分類 発作回数 臨床上の病巣数 検査上の病巣数 髄液OB/igG
A.臨床的診断確定(CDMS)CDMS A1CDMS A2

 

1および2

B.検査参考診断確定(LSDMS)LSDMS B1LSDMS B2

LSDMS B3

1または1

1および1

C.臨床的MS疑い(CPMS)CPMS C1CPMS C2

CPMS C3

1および1

D.検査参考(LSPMS)LSPMS D1

 

2.分類

・症状の寛解の程度や、休止時間の長短、再発回数などは症例によって異なるため、一般的な臨床像を示しにくく、予後の判定は困難であることが多い。しかし臨床的には障害の蓄積がない良性型から、重篤な再発を繰り返すことによって障害度が増加し、早期に死にいたる悪性型まで、各種の経過が知られている。

 

1)良性型

頻度:20~30%

特徴:症状が軽度、完全寛解、障害の蓄積がない。

 

2)増悪/寛解型―完全寛解と不完全寛解がある

頻度:40~60%

①完全寛解

特徴:増悪/寛解型のうち1/3を占める.ほぼ完全寛解で長期間安定する。

②不完全寛解

特徴:増悪/寛解型のうち2/3を占める.不完全寛解で慢性進行型に移行する。

 

3)慢性進行型

頻度:20~30%

特徴:潜在性の発症、治療に関係なく進行、2~10年で重度障害となる。

 

4)悪性型

頻度:5%以下

特徴:症状が重篤で速い進行、しばしば数週間~数ヶ月のうちに死亡。

・長期的な予後では、約2/3の患者が発生後25年生存するといわれており、臨床場面で長期的のかかわりをもつことも少なくない。

・また我が国の多発性硬化症は、視神経、脳幹、小脳、脊髄が障害されやすいという傾向にあるものの障害像は変化に富んでいる。このような生存期間の長さに加えて、病巣の部位と広がりという空間的多発性と、増悪と寛解という時間的多発性が、多発性硬化症の予後予測をより困難なものにしている。

 

3.症状

・発症は主に急性、亜急性であり脱髄病変の部位により、錐体路症状、知覚障害、視力障害、小脳症状、精神症状など多様な神経症状を呈する。

・運動麻痺、運動失調、感覚障害、深部腱反射亢進、病的反射、視力障害、眼振、複視、構音障害、嚥下障害、知能低下、膀胱直腸障害などがみられる。さらに筋力低下、易疲労性、自発運動や外的刺激による有痛性強直性痙攣、Lhermitte’s sign(頸前屈による背部の電撃痛)、温浴による症状増悪がみられる。

・また神経核が侵されることは少なく、基底核障害による錐体外路障害の症状・所見や失語・失行・失認は極めて稀であるという傾向がある。なお中枢神経系のみならず、末髄神経系も高頻度に障害されるという傾向がある。

 

1)初発症状

・初期の症状としては、視力障害、運動機能障害、知覚障害、歩行障害(錐体路障害を伴った下肢筋力低下)が多く見られ、進行すると対麻痺や四肢麻痺となる。

表 主な初発症状と頻度

視力低下   35%

運動麻痺   22%

感覚障害   20%

歩行障害   8%

複視    5%

排尿障害   1%

構音障害   1%

その他   7%

 

2)経過中になられた主な神経症候

視力低下     64.9%    視野欠損     30.8%

排尿障害     55.9%    体幹失調     29.1%

痙縮      50.5%    Lhermitte徴候   27.4%

視神経萎縮    45.9%    構音障害     26.1%

対麻痺      44.2%    複視       24.9%

四肢麻痺     34.9%    有痛性強直性痙攣 24.3%

髄節性感覚障害  34.3%    精神症状     17.8%

横断性脊髄炎症候 34.2%    顔面神経麻痺   16.5%

片麻痺      33.2%    嚥下障害     16.2%

肢節失調     32.4%    末梢神経障害   10.4%

眼振       32.0%    失語・失行・失認  4.3%

片側感覚障害   31.7%

 

4.多発性硬化症による障害

・多発性硬化症により引き起こされる障害は多彩であり、これは中枢神経系の多巣性病変での寛解と増悪を反映している。

1)対麻痺

・運動麻痺では下半身が両側製に麻痺する対麻痺が最も多い。脊髄障害による痙性麻痺で起こる。

 

2)四肢麻痺

・上頸部脊髄障害や脳幹部障害で起こる痙性麻痺である。

 

3)片麻痺

・身体の一側の麻痺は大脳障害で起こることが多い。

 

4)単麻痺

・脳あるいは脊髄障害で起こり、一肢の部分麻痺を示すこともある。

 

5)感覚障害

・一側の上下肢または顔面に多く出現し、自覚症として錯覚感が多い。また多くの場合、表在覚より深部感覚が傷害され、後索障害型運動失調を示す。

・その他頸部を前屈した時に電撃痛が脊柱に沿って下行放散するLhermitte徴候や体動や外部刺激により四肢に疼痛と痙攣が放散する有痛性強直性痙攣をみることがある。

 

6)小脳障害性失調症状

・小脳・脳幹障害により失調性歩行・四肢の協調性運動障害を示し、上肢では企図振戦、下肢では失調性歩行がみられ、失調性の構音障害もみられる。脳幹症状を伴うことも多く、眼振、めまい、複視などを伴うことが多い。

 

7)視覚障害

・一側または両側の視力障害を示す症例がある。

 

8)膀胱障害

・失禁や頻尿が多く、慢性期には膀胱が自動能となり、反射性排尿をみる。

 

9)精神障害

・早期には情動障害を示し、多幸的、抑うつ的、無関心になることも多い。慢性期にはこれらの症状に加え、記憶障害や痴呆をも認めるようになる。

 

10)その他

・呼吸障害、褥瘡、関節拘縮などを認めることがある。

(^O^)参考文献

医療学習レポート.多発性硬化症


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